月杜・音哉

嘗て夜神を祀り、輪廻を守る一族に仕えていた宝刀。夜の祝福を宿した一振りの太刀。仕えていた主は遠い√で月影と共に命絶え、主なき世を揺蕩っていた。己は何処へ向かい、何処へ往くのか。現在は身を置いている月守の家で一人の娘の護衛の任に就いている。☽.*娘の聲は宵に唄い、死ぬまで眠らぬ。授かった御魂が天上へ還る迄。生への実感なき娘は何処へ辿りつけるのか――と。懐かしい月宵の歌は無邪気にも、危うくて――。