ル・ヴェルドール
ヴェルドールの「喉」は、時に言葉よりも雄弁である。感情に鈍い自覚のある彼にとって、よろこびとは、他者の期待に応えるための定型句に過ぎない……だが、仮に、そう語った彼の指先が喉に触れていたならば、あるいは彼が喉について、自身の体感を叙述したならば(疼く / 渇く / 慄える など)そこにひとかどの人間らしさを見出してみるのも、悪くないのかもしれない。


