書籍の館
◇某月某日 -ひとりぶんの足音が響いている-
記無館──ここは語られることのなくなった物語の集う場所壁に並んでいるタイトルは不明瞭でよく見えない
設立:不明
位置:不明
状況:空気が揺らいでいる
近況:おひとり様に扉が空いています
管 理 者:絹更月 識
禁忌:書庫内で大声を出すこと
規則:忘れ物に気をつけること
自分を語りすぎないこと
帰りは同じ道を通ること
ほとんど色のない景色に記される赤は妙に鉄臭い
ひとり書机に佇む少年はあなたの顔を確認すれば
羽根ペンを持つ手を軽く上げて静かに話し始めた
「探し物があるなら覗いてみるといい」
「何を求めてるかは知らないが、此処を尋ねるというのはそういうことだから」