あまおとでら
雨音のよく響く場所。
草木が茂る丘の中、木板を並べて作られた細い道。
多少の起伏、多少の曲がり道を乗り越えて進むうち、
次第に風と虫と鳥の声しか聞こえなくなってくる。
更に進むと見えるのは、少しばかり開けた高台とその中央に建つ古びたお堂。
中身の殆どが持ち出されているが、建物そのものはさほど傷んではおらず、
その閑散とした様が一層寂寥感を増している。
お堂の横には少し傾いだ倉庫が二つと、雨風に削られ文字の薄くなった石碑。
魚や獣を供養するためらしい石碑は十数体の小さな石像に囲まれており、
その下には小さな花と水が添えられている。
道も建物も石碑も石像も、誰かが幾らかの手入れをしているようだ。
捨てられたこの場所に出入りしている者が居る。
どんな変わり者か興味があるなら、周囲を探してみるのもいいかもしれない。