古本屋『月の海』
いらっしゃーい。本探し?本売り?さて君はどっちかな
細い路地を幾つも通ったその先の、正面。誘うように歩む野良猫に謀られたか、それとも運命か。
<|新刊《企画》あり〼>
綺麗な古硝子の嵌った引き戸を引けば、驚くほど本の詰まった壁並び立つ。
本棚の間は薄暗く、まるで迷路のよう。吐息さえ聞こえそうなその空間に息を呑めば、ふわと香しい茶が鼻腔を擽った。
『おや、お客さん。やぁやぁようこそ。きみは本を売るのかな?それとも探しに?』
視線を巡らせれば、“こっちだよー”と斜め上から声がする。
そちらを見やれば、二階――と言うべきか、回廊の欄干にしなだれかかり手を振る店主が、猫のように笑っていた。
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