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なぞなぞイースター
――君の笑顔を守りたいから。
僕も挑戦しようと思ったんだ。
●イースターを楽しもう!
春の暖かな風をあびた時、僕と妹はたまらなく嬉しくなった。
カラフルに飾られたカフェから、優しい音楽と一緒に友達たちの笑い声も聞こえてくる。
今日は特別な日。|復活祭《イースター》。
キリストの復活を祝う楽しいお祭り。
でも宗教の話はちょっと横に置いていて。復活祭をモデルに、子供向けの宝探しのイベントが、カフェを使って開かれていた。
「さぁ皆さんいらっしゃい! ラビットカフェの『なぞなぞイースター』イベントへようこそ!」
僕が妹とやってくると、お店のお姉さんが明るい声で出迎える。
彼女の頭にはうさ耳付きのシルクハット。テールコートを着込んでマジシャンみたいな格好だ。
待っていたよ、と屈託のない笑みで案内してもらうと、すでに他の子供たちも待っていた。
「それではイベントを説明しますね。みなさんには、イースターにちなんで『エッグハント』に挑戦して頂きます! 卵を使った宝探しです!」
ルールは簡単。
ラビットカフェの庭にかくされた、オモチャの卵たちを探し出せばゲームはクリア。
卵をカゴに入れてくれば、お菓子と交換してくれる、とお姉さんは笑って語った。
「卵の見つけ方は2種類あります。自分の手や足を使って『自力で探す』か、近くにある『なぞなぞを解いて見つける』か、です。どちらでも好きな方でみつけてみてくださいね!」
なぞなぞの答えは、そのまま隠し場所を表している。
大きな窓から見えたカフェの庭には、風船に動物、風になびくパステルカラーの紙テープなどが見え。
まるで優しい色で飾られたアリスのお茶会みたいだ。
「そして、疲れた時はカフェでぜひ休憩を。美味しいエッグタルトや春の果物を使ったジュースもありますからね。ウサギ型アイスの乗ったラビットクレープが当店の一押しですよ!」
バニーのお姉さんが可愛くウィンクすると、子供と付き添いの大人たちが笑った。
カフェとしての商売を忘れないのが、やり手の彼女らしい。
「お兄ちゃん! 私も参加したいわ! 早く行きましょ!」
「うん。そうだね。僕たちも挑戦しようか」
妹――ハルが庭を指でさす。
待ちきれないという様子に微笑んだ後、タイヤを転がす彼女と僕はゆっくりとエッグハントに挑戦するのだった。
●答えの先にある言葉。I solved the 〇〇〇〇〇〇!
「みなさん、なぞなぞはお好きですか?」
√マスクド・ヒーローの大きなカフェでイベントがあるので、よかったら参加してみないか。と話し出したのは星詠みの壱洲乃・てぃてぃ(黄金のカブトムシ・h08656)だ。
カブトムシの彼はお店までの地図を広げようと、人間の姿に化ける。その顔には遊ぶのが待ちきれない、子供みたいな笑みを浮かべていた。
「イベントで行われるのはエッグハント。つまり、宝探しならぬ卵探しです!」
子供向けのイベントなのだが、大人だって歓迎だ。
なぞを解くもよし、歩いて探し回るもよし。
参加すれば景品のクッキーがもらえるし、なにより楽しい時間になる。
でも、なんで、なぞなぞ?
「ふっふっふ。実は|花時《はなどき》・ヒカルさんという少年のアイデアなんです。このイベントには、近くの病院に入院している子供たちもご招待されているんですよ」
しかし、中には体を動かすのが大変な子もいる。
そんな子供たちも参加しやすいよう、身体だけでなく知恵を使ってもクリアできるように――と、工夫した。
その結果が、なぞなぞを取り入れた『なぞなぞイースター』だった、という訳だ。
チャリティーイベントでもあるので、お店の売り上げは子供たちの治療に役立てるため寄付される事になる。
「でも、ひとつ心配なお知らせもあるのです。この花時さんは、魔法少女の素質を秘めた子でもあるんですよ――」
|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》。
√マスクド・ヒーローで発生している、子供たちが男女問わず魔法少女に覚醒してしまう、謎の現象だ。
魔法少女に覚醒して戦えるならまだいいのだが、実際はそうもいかない。
覚醒直前や、覚醒したばかりの上手く魔法の使えない子供たちを狙って、デザイアモンスターが襲ってくる事件が多発していた。
今回は花時さんを狙い敵がやってくるので、助けてあげて欲しい。
「花時・ヒカルさんは、車いすに乗った妹のハルさんとイベントに参加していますから、すぐ見つかると思いますよ」
襲撃までは時間があるので、みんなもイベントを一緒に楽しんでみてもいいかもしれない。
エッグハントはもちろん、カフェで美味しい食事をしたり、ヒカルさんと話をしたりする事もできるだろう。
「敵が襲撃してきたときは……みなさんが花時・ヒカルさんと現場にいる子供たちを守ってあげてくださいね!」
みんなの命は君たちにかかってます。と星詠みが期待の瞳を向けてくるのだった。
●なぞなぞイースター!
広々としたカフェの庭はパステルカラーの装飾に色どられていた。
木々にはカラフルなテープや風船が飾られて、お化粧をしてるみたいだ。
庭には動物をモチーフとした置物や、秘密基地みたいなテント、アンティークな飾りもある。手入れの行き届いた花壇では春の花々が咲いていた。
「どこに卵があるのかなー」
「見つかんないよぉ」
他の子たちがしゃがみ込んで卵を探す。
僕も妹とやってくると、彼女の瞳がキラキラと輝いたのが分かった。
このエリアの問題には「森林や草原、月にもいるよ。ジャンプが得意なあの子はだーれだ?」と書かれている。
そばには沢山のお花が咲いた花壇と、可愛い動物たちの置物がある。
猫、しか、大きなウサギ、子供のキツネ、黄色いヒヨコにシマエナガ……。
「私、答えがわかったわ!」
妹がスタッフに話しかける。「卵があるのは……」とないしょ話をするように答えを伝えると、正解です、とカゴに卵を入れて貰えた。
「すごーい!」
「いいなー!」
とうらやましがる子供が寄ってくると、妹も一緒にやろうよって笑う。あっという間に友達になって一緒に次の卵を探し始めた姿をみて、僕もほっと息をついた。
君が喜んでくれたなら。このイベントを開催した甲斐がある。
事故に巻き込まれ、手術と聞いた時は妹が塞ぎ込んでしまい、どうなることかと思ったけど。
「大丈夫。今度は何が起きたって、必ず僕が守るから」
心の中で誓うと、妹が「また、なぞなぞを見つけた」と手を振るので、僕も歩きだす。
春うらら。今日を素敵な日にしよう。
第1章 日常 『今日はカミサマもお昼寝してるよ』
ラビットカフェでは、エッグハントを始めた子供たちの弾むような声があちこちから聞こえてきていた。
参加します、とくちにすれば、君にもカゴを渡してもらえる。
庭は大きく3つに分かれていて、それぞれでおもちゃの卵がかくれんぼしていた。
最初にやってくるエリアは、色んなお花が飾られたエリア。
『森林や草原、月にもいるよ。ジャンプが得意なあの子はだーれだ?』
『春の原っぱに咲いていて、最初は黄色い派手な服。次に白い服に着替えて、風に乗って旅立っていく子はなーんだ?』
見渡すと周りには、素敵な花壇と可愛い置物。
チューリップ、タンポポ、桜に菜の花と春のお花が咲きほこり。
そばには、猫や鹿、ウサギといった、柔らかな色合いの陶器の飾りがみんなを笑顔でお出迎え。
この中に卵は隠れているのだろうか?
次に来たのは人気のエリア。
まるでおとぎ話に出てくるヘンテコな御茶会みたい。
『火では燃えない、水の上に浮くものはなーんだ?』
『今は白くて硬いもの。でも、いつかはふわふわ黄色いもの。ときどき冷蔵庫やカゴの中にもいるわ。さぁ、私はいったい誰でしょう?』
長いテーブルにはお洒落なテーブルクロスがかけられて、その上にはお茶会のセットが並べられている。
それが可笑しいのなんのって。
紅茶をイメージしたティーポットは子供が入れるくらい大きくて。隣には同じくらい大きなプラスチックのカップの中に、氷に見立てた透明なオモチャがギュギュギュっと詰まっている。
かと思えばティーカップは眠りネズミにちょうどいい小さなもの。とても卵は隠せない。
お皿の上のケーキや、お菓子も、大小めちゃくちゃなサイズになっている。
1番目を引くのは中央の席のパンプティダンプティの置物。彼は大きすぎてカゴには入らないけれど、背中のフタを開けると中に何かがあるらしい。
最後のエリアは秘密基地。
テントの中では多くの子供が苦戦していた。
『眠っているのに、みれるものってなーんだ?』
『朝になると窓から部屋に飛び込んできて、夕方になるといなくなる。窓を開けなくてもガラスを壊さず入ってくるものってなーんだ?』
大きなテントの中に入ると、そこに日差しは届かない。
代わりに箱の上に飾られた大きなランタンが、まるでお日様の光みたいに穏やかなオレンジ色で周囲を照らしていた。
壁には星や月のモチーフが散りばめられている。目を擦って眠たそうなフクロウや、ムササビの置物もいろんな場所に置いてある。
けれどネズミの親子だけは、すでにベットに入って夢の中。
この薄暗い中で、卵を探すのは一苦労だ。
この庭で君は何個の卵を見つけられるだろうか。
1つでも見つけたら、ウサギのお姉さんが美味しいクッキーをプレゼント。
でも、全てを見つけたら。ぜひあの言葉を言って欲しい。
花時兄妹もなぞなぞとエッグハントに挑戦中。
君が手伝ってくれたなら、きっと笑顔になるだろう。
さぁ、素敵な時間を心行くまで楽しんでほしい。