魔法少女は安心安全清純ごく普通
「な、なんで……安心安全清純ごく普通の男子中学生の僕がこんな姿に?!」
愕然と驚き立ち尽くす元少年はまだ気づかない。
「デザァ」
「デザ……」
覚醒した魔法少女の気配を察知したかどこからか湧いて出てきた怪物、デザイアモンスターたちが近寄ってきていることに。
「と言う訳で、√マスクド・ヒーローで、子供達が男子女子問わず魔法少女に覚醒してしまう現象、|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》がまた起きて、魔法少女になってしまった元少年がデザイアモンスターに襲われそうになっていることが俺の予知に引っかかったんです」
本来こういった魔法少女は子供達を守るために造られたメカ「ロボトロン」達がその心を狙う怪物「デザイアモンスター」から守っていたものの、今は何故か各地で魔法少女現象が大量発生した為にロボトロンたちの手が回らなくなっているのだとか。
「流石に見過ごすことは出来ませんので、皆さんにはこの魔法少女の救助に赴いて欲しいんですが」
そう戸桜・リデル(人間(√EDEN)のルートブレイカー・h00081)は言う。
「現地に着くと件の魔法少女はもう一帯に溢れ返ったデザイアモンスターの群れに襲われそうになっていると思います」
救出するには迅速にこれを蹴散らしながら覚醒したばかりの魔法少女に合流しなければならないだろう。
「ただ、無事合流出来ても安心はできないようなんですよ。余程覚醒したばかりの魔法少女が魅力的なのか、デザイアモンスターの増援があらわれるみたいで」
この状況に件の魔法少女は既に強力な魔法の力を獲得しており、やる気はあるものの戦い方を知らないのだとか。
「逃がすにしても教えて手伝わせるにしても、見た感じまだ√能力者ではないようなので、可能な限り魔法少女が傷つかないよう守ってあげる必要がある感じですね」
ちなみに件の魔法少女が会得したのは、洗脳、認識改変、魅了、どんな場所でも温泉を召喚して入浴できる能力のほか、状態異常効果のある飲食物を瞬時に作りだして相手の口に放り込む能力なのだそうだ。ちなみに飲食物はかかっただけでもきっちり状態異常にしてしまえるとか。
「あー、言いたいことは解るつもりですが、この能力……元少年が善良で健全な一般人だからこそ発現したものみたいです」
本人の性質と真逆っぽいモノを発現させることで何らかのバランスが保たれているのだという。温泉召喚に関してはリデルもなんでこんな能力迄備えているかわからなかったらしいが、怖っ。
「そもそも安心安全清純ごく普通な人物なら力を悪用はしないでしょうし」
不安なようであれば保護して力を正しく使えるように監督してあげるのも一つの手ではあろう。
「話を戻しますね。デザイアモンスターの増援を撃破した後については俺にもちょっとわかりません」
魔法少女が疲弊しているようならアフターケアが必要になるかもしれないし、逆にまだ元気なようなら君たちの活動に同行を申し出るかもしれない、魔法少女現象は大量発生しているという。追加で起こった魔法少女現象によって誕生した魔法少女の保護に駆り出されることは十分ありうるのだから。
「最後に魔法少女になった元少年ですが、|顕然院・誠《けんぜんいん・まこと》と言う名前の中学二年生で、女の子と時々見間違われる容姿の持ち主だったようですよ」
なんだかこの時点でごく普通とかけ離れているがそれはそれである。
「元少年の保護、よろしくお願いしますね」
リデルはそう言って頭を下げた。
第1章 集団戦 『デザイアモンスター』
「あ、あっちへ行けっ!」
元少年が野良犬でも追っ払うように手を振ると、デザァと鳴きながらデザイアモンスターが離れてゆく。おそらく、中途半端に洗脳か魅了の力が効果を発揮しているのだが、元少年は知る由もない。
「はぁ……短期間なら追っ払えるみたいですが」
やがて効果が切れてデザイアモンスターは戻って来る。実際、元少年がデザイアモンスターを追っ払ったのはもう三度目であり、一時しのぎにしかなっていないことはもう元少年も気づき始めていた。
「あら? すごい行列。何に並んでるのかしら?」
首を傾げたナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)がとりあえず並ぼうと最後尾についたのは、前でうにょうにょうぞろうぞろしているモノが多数いたからにほかならず。
「んー。暇だし迷惑でなければお話したいなぁ」
やたら前の方を気にするうにょうにょしている存在の背中を見つめて、改良された試作強化戦闘モードのナマエハは思った。ナマエハが言うところの列は殆ど進まず、前方での用事が終わったかのように引き返してくる|うぞろうぞろしているモノ《デザイアjモンスター》が時々現れて。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
「デザァ」
声をかけて見たナマエハに振り返ったデザイアモンスターは鳴いた。
「うん、デザァとしか言わないから何言ってるのか分からないね」
「デザ―ッ!」
よっぱど前方に意識を向けていたのか、振り返るデザイアモンスターをアンブッシュするのは今のナマエハには容易かった。手にした戦闘用大型レンチでゴッてした直後にデザイアモンスターの頭部が千切れ跳び、身体はしめやかに爆散したからだ。
「掃除する人大変そうだなぁ……じゃなくて、分からないけど、分かった!」
一瞬思考が別方向に遊びに行きかけたナマエハだったが、閃くものがあったようだ。
「ふっふっふ、前、突っ走ってゴーイングマイウェイしたら壁のようなデザイアモンスターの群れに阻まれたからね。今回は並んでみました!」
「デザァ!」
そう得意げに答えたということは、先ほどの断末魔らしきナニカを「何故後ろに並んでいるんだ」的な質問と解釈したのだろう。真後ろの同胞が殺られて振り返ったデザイアモンスターも何か鳴いた。ナマエハの脳内では「まぁ」とか感嘆符付きで驚く様子に変換されたかもしれない。
「これでなんの行列か分かれ……あっ」
「デザイ」
「デザイヤ」
それでも一件落着とはいかず考え始めたナマエハは突然顔をあげる。前方のデザイアモンスターたちが寄り集まってごそごそしていてもお構いなしだった。
「『デザイアモンスターがいっぱいいる=魔法少女』じゃん! 行列の先に何があるのか分かったよ!」
実に晴れやかな顔で視線を前方にやると、複数のデザイアモンスターが完全融合したことで距離的には行列が随分短くなっていて。
「これなら思ったほど並ばずに済」
「デザァ゛ー」
仲間の仇とばかりに殴りかかって来る巨大デザイアモンスター、そして。
「デザァ」
「あ……横入り……」
魔法少女による洗脳か誘惑の効果が切れたようで引き返す途中で巨大デザイアモンスターとその前のデザイアモンスターの間に割り込むデザイアモンスター。
「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」
「デザボッ?!」
どちらにナマエハがブチ切れたかは定かでない。だが、ここから殺戮が始まって。巨大デザイアモンスターの胴が戦闘用大型レンチを叩きつけられて抉れ、くの字に折れ曲がった巨躯の頭部が次の瞬間には叩き割られる。
「次」
倒れてくる巨大デザイアモンスターだったものを足場に大きく跳躍したナマエハはもうそのデザイアモンスターしか見ていない。
「デ」
横入りしたデザイアモンスターが落下の勢いも載った一撃に叩き潰され倒れ伏すとぐずぐずと解けてゆく。あっけなく、実にあっけなく総合すれば十体近いデザイアモンスターが滅んだが、それはまだ始まりでしかなかった、横入り|撲滅者《スレイヤー》・ナマエハが作り出す惨劇においての。
「存在しないはずの記憶が、その人は『|愛され《いじられ》キャラ』だと告げているのです」
唐突に口を開いた|森屋・巳瑠《もりや・みる》(警察庁魔法少女課所属巡査・|魔法少女《プリマステラ》ガルディアーノ☆シリウス・h09067)の視界は当人が走っているからこそ揺れて。
「でも、いじっていいのはお友達であって、モンスターではないのです」
漸く視界内に捉えたのは、群れるデザイアモンスターたち。討つべき相手を前にして雷属性魔弾の装填を続行しつつ巳瑠は魔弾融合条溝銃をデザイアモンスターへと向け。
「思ったより減ってるのは、誰かが倒しでもしたかな」
遠方から観測中の|待雪・輝彩《まつゆき・きいろ》(警察庁特殊任務局魔法少女課怪異対応特務係所属魔法少女(階級:巡査)・h13071)にも巳瑠の姿は捉えられていた。ただ、その声が拾われることはなく、どちらかと言えばデザイアモンスターを注視しつつ輝彩は詠唱していた。焦燥感など微塵もなく、落ち着いているのは確信に近いモノがあったからだろう。
(デザイアモンスターが魔法少女に夢中でかの魔法少女が安心安全ごく普通の人物なら、戦闘に慣れていなくてもある程度の距離があるこの状況でモンスターの意識が無関係かもしれないこちらにむくような言動はしないだろうからね)
こちらはこちらでやはり件の魔法少女の人物像を理解しているかのような推測をしていて。
「そこなのです」
巳瑠の打ち出した魔弾がデザイアモンスターたちの群れの中に突き刺ささり、爆ぜる。
「「デザァッ」」
巻き込まれたデザイアモンスターたちがバタバタと倒れ伏し。
「そこを退いていただきましょう」
生じた突破口に飛び込んだのは|三日科・主也《みかしな・かずや》(警察庁特殊任務局、魔法少女課課長兼魔力注入担当官(階級:警視長)・h12629)。
「デザベ」
言い終えるより早く獣の頭部のように膨れ上がった影がアギトを開いて左手前のデザイアモンスターを食いちぎり。
「デザ、イア」
右手のデザイアモンスターは魔力と星力を込める事で斬撃武器と化した晴雨兼用の折り畳み傘をもって斬り捨てる。
「デ」
爆発の余韻の中に残っていた雷を帯びた主也の影は勤労意欲が豊富なようで次の瞬間には別のデザイアモンスターを貪り食っていた。
「デザイア―ッ!」
それでも怯まず仲間の仇をうたんと主也へ襲い掛かるデザイアモンスターも存在はしたが。
「つなげるよ!」
輝彩の創造した推理を導く光跡がデザイアモンスターの腕を用いた殴打を反射する。
「デベッ?! ビャ」
結果としてデザイアモンスターは敵を全力で殴りつけた場合に与えたダメージを自らに被る羽目になり。大きくよろめいた隙だらけの様は斬ってくれと言わんがばかりだった。
(この先に保護対象の少年は居るんだったか)
折り畳み傘を一閃すると、もはやデザイアモンスターだったものと化した残骸には目もくれず主也の視線はデザイアモンスターたちが群れの先へ。
(闘いになれていないとのことであるし、何かの折に目覚めるかもしれない。どちらにしても、身を護る方法は、憶えておいてもいいだろう)
突破後のことを、合流した後のことを考える内に影がまた一体のデザイアモンスターを食んだ。
「主也さんの邪魔はさせないのです」
前方にまだあるデザイアモンスターの集団にはたった今巳瑠が撃ち込んだ雷属性の魔弾が爆発を生じさせ。
「ここは、シンプルに殴るか……」
守護星たる冥王星の星力を纏った主也はさらに加速。
「「デザビュ」」
纏めてデザイアモンスターらを消し飛ばす爆発も味方にとっては帯びた雷が心身を強化してくれるだけのものでしかない。構わず飛び込む主也が生き残りを蹂躙し。
「順調すぎるくらいに順調だね。とはいっても」
輝彩にとっては予想の範疇であるのか。
「デザイアモンスターの意識はあちらに向いていて、ある程度モンスターの数を減らせる程度にはこちらの助けになってくれると推察できていたからね」
デザイアモンスターから見て動力源としての魅力と、魅了による後付けの求心力。結果として主也たちに仲間を殺され続けているにもかかわらず後方へ殆ど意識を割かないデザイアモンスターたちは被害を出し続けている訳だ。
「その推理は、バッチリ的中したわけだけれど。さて、この先はどうしようかな」
散発的な主也への反撃を反射しつつ輝彩は首を傾げ、やがて三人はデザイアモンスターの群れの突破に至る。
(ようやく対面か。しっかりと、護りながら、魔法少女が、出来ることが、どう役に立つのかを見極めてアドバイスをしていくことにしよう)
流石にあれだけ爆発させたり殴ったりしていれば、音は魔法少女の側でも聞こえていたようで。
「あ、あなたは……?」
「なんだ。キミもか。なら、ほら。おいで――」
「え?」
茫然としていた魔法少女は主也の言葉にキョトンとする。主也が無意識に振りまく魅了の力だが、明らかに目の前の魔法少女には効いている様子がない。それはこの魔法少女が芯の部分では男の娘のままであるからなのか単純に|魅了能力もちなので魅了されなかっただけ《毒のある生き物は毒にかからないようなもの》か。それとも、当人が口走っていたように安心安全清純ごく普通であるからなのか。ただ、まだデザイアモンスターの残っているのだから検証していられるような状況ではなく。
「あ、ああ。確かにここは危険ですよね」
どちらかと言えば包囲されているのは魔法少女の方という事実から、こちらに逃げてくるようにという指示だと受け取った魔法少女は主也たちの方へ走り出した。
「|ぷいぷいぷい……《あいつも突然力に目覚めて混乱してるんだ、今はオレさまたちが守ってやらないと!》」
他者にはただモルモットが鳴いているだけにしか聞こえなかったかもしれない、だが|天竺鼠・まる《もるもっと・まる》(げっ歯類なめんな・h13195)は走ってくる|魔法少女《顕然院・誠》を守護するつもりでいた。
「ぷいっ! おまえ、まもる! ちょっと、うしろぷい!」
「あ、はい」
片言の言葉を投げれば、誠は驚きに目を見開きながらも、ありがとうございますと言って従った。既にデザイアモンスターたちを倒した者たちが居て、その後に現れた|人語を話すモルモット《まる》。助けてくれる者が現れたことで誠も信頼することにしたのであろう。
「ぷいっ!」
誠が後方に下がったのを認識するや、まるは野生の勘に覚醒しながら駆け出した。
「デザ」
「デザア」
とびっきりの獲物である誠を逃がすまいと動き始めるデザイアモンスターらにとって駆ける小さなまるは認識しづらい様であった。だからこそ、平気で身体をとととっと登られて。
「|ぷいっ!《オレさまを見失ったのは失敗だったな!》」
噛みまくってやると一鳴きすると、デザイアモンスターの首へ前歯を突き立てた。
「|ぷぷい!《オレさまの前歯は結構痛いぜ?》」
「デッ」
まるの前歯の大きさからしたなら、傷口はそう大きくはなかった、だが。
「ザバ」
小さな傷を軽視して尚も誠を追おうとしたデザイアモンスターの首が落ちる。手当たり次第に噛みついた傷口がミシン目のようになっていたところに負荷がかかった結果であった。
「デザ?!」
だが、そんなことは他のデザイアモンスターには解らない。取るに足りない小動物が自分を殺しうる狩人と認識が変わるともう無視して誠を追いかけることなどできず。加えて先ほどデザイアモンスターたちを屠っていた者たちもまだこの場を離れていなかったのだ。誠を包囲していたデザイアモンスターの群れが蹴散らされたのは必然であったのかもしれない。
「ぷい!」
「あ、さっきは」
デザイアモンスターの死体の上から降りてててっとやってきたまるは礼の言葉を口にしようとしていた誠に足元にもふもふの身体で寄り添うと。
「ぷいぷい! おまえ、すごいちからもってる! きっとやくにたつ!」
誠を見上げて片言ながらエールを送るのだった。
第2章 集団戦 『デザイアモンスター』
「ありがとう……ございます」
ただ、ここで誠が応援に感謝して一件落着ともならなかった。
「デザァ」
「デザ」
星詠みの言葉通りに現れるデザイアモンスターの増援ら。誠は誠で先ほどのエールにやる気を貰ったかもしれないが、自身の戦い方をまだ理解したとは言い難く。誠を逃がすか戦い方を教えて手伝わせるか、選択はこの場の君たちに委ねられた。
「出遅れたー! でも、ヒーローは遅れてくるからねー☆」
えと声を上げ、|魔法少女《顕然院・誠》が振り返った先に|黄羽・瑠美奈《きば・るみな》(メイドイエロー・h05439)は居た。
「とりあえず|誠《まこ》っちゃんは星詠みに『元少年』って言われたけど……肉体は少年なのかい? 少女になっちゃたのかい? どっちなんだい!?」
「ほ、ほしよ……み? って、僕は男ーっ!」
驚きからまだ立ち直っていなかった様子の誠ではあるが、自身の問いかけへ反射的に叫ぶそんな魔法少女の身体を上から下まで見た上で、おもむろに近寄った瑠美奈はスカートを摘まんだ。自分のではなく誠のソレを。
「はい?」
何をするつもりなのかわからない誠が訝しむのもスルーして、瑠美奈はバッと摘まんでいたものをめくった。
「っ」
「さわっ……これは、少女の身体」
更に誠の骨盤あたりに手を伸ばすと、ひゃうという声が上がって。
「何すんですかーっ!」
「いや、見た目で分からなくてね?」
「『分からなくてね』って、ありますよね、胸? 自分で言うのも不本意ですけど、膨らんでますよねコレ?」
「服装マジックであるように見えることもあるから……まったく、性別不詳は魔境だよね」
涙目で叫んだ魔法少女がぽよんぽよん自分の胸の膨らみを軽く叩きつつ抗議するも、嘆息した瑠美奈は頭を振ってその側を離れた。
「気になるとこが分かった所で、お片付けの時間だー!」
「え? 結局僕の抗議スルー?!」
愕然とする魔法少女は気づかない、|鳥の翼の装飾の開き具合で射撃モードを調節可能なレーザー銃《ウイングシューター》を抜いて遮蔽物へ隠れようとする瑠美奈の顔が若干赤かったことに。たぶん骨盤を触られた辺りで魅了の力が漏れたか何かしてしまったのだろうが。
「デザッ?!」
瑠美奈の撃ち出したレーザーに貫かれたデザイアモンスターが傾ぎ、倒れ始め。次の獲物を探して動いた時には瑠美奈の顔の色はもう元に戻っていて。
「「デザイヤー!」」
仲間を倒されて侮りがたしと見たのか複数のデザイアモンスターが密集して一つになると、唐突に瑠美奈の身体を引き寄せようとして。
「やって来るってわかりきってればね☆」
「デベバッ?!」
引き寄せの勢いまでのっけて繰り出した蹴りをかまされた複数のデザイアモンスターの融合体は上体を泳がせたと思えばそのまま仰向けに倒れ込み。
「誠っちゃん、両方の手首に何かついてるよ。匂わない?」
「え゛?」
不意に瑠美奈から声をかけられた魔法少女はぎょっとしつつに乗せられて可愛いポーズを取るが。
(さっきも近くに居たままだったら危なかったし、アレで魅了の力とか出せんかな? 知らんけど)
半分くらいは割と思いついたままを口にしただけというのが真相、の筈だった。
「デザァ❤」
「デザ❤」
「え゛」
だが、瑠美奈の想定以上に効果はあったようで。
「|誠《まこ》っちゃん、そのまま怪物をやっつけるよう言ってみて?」
「あ、はい」
言われるがまま誠がお願いすると、デザイアモンスターたちは途端に同士討ちを始めるのだった。
「|ぷぷぷ……ぷぃ……《ここで誠に戦い方を教えられればモンスターたちとの戦いは有利になりそうだけど……しかしどう伝えたものかな……》」
先ほどまで誠の側に居たはずの|天竺鼠・まる《もるもっと・まる》(げっ歯類なめんな・h13195)がぷいぷい鳴きながらそう悩んでいたのは少し前のこと。味方にスカートまくられて骨盤触られ、誠が変な声を上げたり何やら叫んだりしていれば当然まるも気づく。ただ、先の問題の答えが出ないままに誠は自身の力の一端を発揮し始めたようであり。
「ぷ、まこと、あいつらちょっとあやつれるみたいぷい」
デザベッ、とか悲鳴を上げながらお互いに殴り合ってよろめくデザイアモンスターたち。まるが悩んでいる間に状況は移り変わっていたようだった、だから。
「ぷい、まこと!」
まるはたたっと誠の側に駆け寄って名を呼んだ。
「あ、さっきは――」
その姿を見てつい今しがたのことを誠の方も思い出したようだったが、今はまだ戦闘中。
「あいつらどうし、てきだっておもわせてけんかさせるようにねんじてみるもきゅ!」
「あ、はい、やってみます」
まるが指示を出せば誠は疑うことなく従って。
「デベッ」
「デザイ゛」
「あ……」
認識改変か洗脳か何が働いたかまではわからなくともデザイアモンスターたちが再び殴り合いを始めれば効果があったのは明らかで。
「ぷるるるる……」
デザイアモンスターたちが互いを殴り合う間にまるは誠の肩まで登ると消えざるげっ歯類の魂の炎をチャージしてゆく。
(うまいこといった……万が一の場合でもこの位置なら前に飛び出して誠も庇えるし、何より今のオレさまちょっと「ますこっと」ってやつっぽいな)
肩に乗られた誠の方は意図が読めずにええとと若干困惑気味ではあったが。
「ぷい!」
構わずチャージを終えたまるは誠を足場に大きく跳躍すると、鋼鉄の前歯で同士討ちの真っ最中だったデザイアモンスターに噛みついた。
「デザゲッ?!」
予期せぬ強襲に断末魔を上げたデザイアモンスターはぐらり揺れるとそのまま崩れ落ち。
「ぷぷい!」
「デザ……イビャ?!」
噛みついたデザイアモンスターが完全に倒れる前にこれも足場にして跳んだまるは更に同士討ちしていた相手を失い立ち尽くしていたもう一体のデザイアモンスターにも噛みついた。
「横入りはダメでしょ? ちゃんと並んでよ」
なんというか、ナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)はまだデザイアモンスターと揉めていた。尚、反論しようだとかでなく普通にナマエハに襲い掛かっていったデザイアモンスターに関しては戦闘用大型レンチでゴッってされて大体が地面のシミになったり爆散してもう動かなかったりするのだが。
「そういえば、デザイアモンスターって倒すと『デザァ!』って言って倒れるのね」
その残骸のうちの一つに目を落とし、ナマエハは呟き。
「しめやかに爆散する時はまた味のある感じになるけれど、僕、前から思っていたんだ」
「デザベッ?!」
顔をあげるとどこか遠くを見ながら襲い掛かって来たデザイアモンスターを殴って続けた。
「いつか翻訳機を作ってみるのも楽しいんじゃないかと……」
と。
「いや、やめておこう」
「デザ?」
その上で頭を振るナマエハを見て殴られたのとは別のデザイアモンスターが鳴く。それが「なんで」と尋ねているように聞こえたという訳ではないのだろう、だが。
「思ってるよりもまっとうなご意見で僕に文句を言ってるかもしれない。そうだった日には僕、悪者みたいじゃない」
「デザ……」
ほらと言われたデザイアモンスターはぐにょと身体を僅かに曲げた。
「社会人になってね。もっともつらいのは真っ当な説教をいただくことなんだ」
此処ではないどこかへ遠い視線を投げるナマエハだが、空気を読まず襲い掛かって返り討ちに遭った仲間のことがあったからか、ナマエハの言葉に反応しているように見えたデザイアモンスターが隙ありとばかりに殴りかかってゆくことはなく。
「でも、試してみようかしら……僕みたいな変わり者が一人くらいいてもいいと思うんだよね」
生じた時間的猶予にナマエハが顕現させた巨大な歯車と時計は何やらポケットサイズの機械をナマエハの手の中にポテっと落として去り。
「うーん、思ってたよりスマートデザイン」
「デザ……イヤ」
ナマエハは機械をぴこぴこ作動させると訳した後の出てくるディスプレイ部分に目をやって。
「ヒェ……」
息をのむと何故か機械をベストのポケットに仕舞い込む、即座に。結果として、どんなことをデザイアモンスターが言っていたかを知るのはナマエハだけなのだが、ナマエハの態度を見る限り知らないことこそ正解なのだろう。
「ぼ、ぼくは……戦いが好きなんじゃない! 勝つのが好きなんだよぉぉぉ!」
「デザンベッ?!」
炎のように暴力的に氷のように冷酷に暴れ出したナマエハは、とりあえず側に居たデザイアモンスターを殴り倒した。
「しゅわっち」
|安定した空中機動を可能とするブーツ《Astrivale》で空から現場に向かっている|戌亥・酉子《いぬい・ゆうこ》(警察庁特殊任務局魔法少女課怪異対応特務係所属魔法少女》(階級:巡査部長)・h06171)が眼下に見たのは、何体ものデザイアモンスターと戦う味方の姿だった。
「酉子、到着しました」
「来たね」
高度を下げて着地すれば、報告に応じたのは|三日科・主也《みかしな・かずや》(警察庁特殊任務局、魔法少女課課長兼魔力注入担当官(階級:警視長)・h12629)。
「光よ。貫け」
「「デザッ?!」」
援軍の到着に主也は光線銃形態に切り替えた晴雨兼用折り畳み傘で光をばら撒くように撃ち出し、命中したデザイアモンスターたちがひっくり返る。まるで唐突に上下が反転したかのごとく。
「今なのです!」
まともに動きようもなく隙を晒すデザイアモンスターたちへ雷属性魔弾の装填をし終えた魔弾融合条溝銃を|森屋・巳瑠《もりや・みる》(警察庁魔法少女課所属巡査・|魔法少女《プリマステラ》ガルディアーノ☆シリウス・h09067)は向け、発砲する。
「「デザ―ッ」」
避けようもないデザイアモンスターたちを着弾後の爆発が呑み込むが、デザイアモンスターたちが躱せなかったのは爆発だけではなかった。
「百発百中!」
|魔力の矢も射出可能な大型の弓《バリスタ》へ創造して装填された炎の矢が分裂して弾幕と化すと二度にわたりデザイアモンスターたちへ襲い掛かったのだ。
「「デデデデデッザザザザ」」
立て続けに炎の矢を受けてデザイアモンスターたちは滑稽な踊りを踊ることを強制され、燃えながら死んでゆき。
「さて、私にできることは、そう多くないのだけれど」
味方が生き残っていたデザイアモンスターの数をどんどん減らしてゆく光景を見つめつつ、|待雪・輝彩《まつゆき・きいろ》(警察庁特殊任務局魔法少女課怪異対応特務係所属魔法少女(階級:巡査)・h13071)は結論を出す。
「今回もスパークルトレーサーでサポートをしていくことになるかな」
と。実際として、魔法少女へデザイアモンスターを近づけず数を減らすだけならもう酉子と巳瑠とさっきから暴れ回ってる味方で事足りており。
(巳瑠だけでなく酉子も合流したし、近づけさせずに敵を駆逐する布陣は整っている)
詠唱しながら視線で味方の戦う様子を撫でた輝彩は推理を導く光跡をひとつ創造し。
「つなげるよ!」
「デザゴッ?!」
満身創痍でかろうじて生き残っていたデザイアゴーストが推理を導く光跡と引き換えの一撃で倒れ伏す。
(あとはこの調子で敵を駆逐し続ければいいはずだよ)
なぜなら、今の輝彩たちは全員でデザイアモンスターへ対処していないのだ。
「まず、指をこうして――」
「えーと、こ、こう?」
主也の真剣さに気圧されて、|魔法少女《顕然院・誠》は両手の指でハートの形を作る。
「そうそう。そして一度、左右に揺らしてから、身体の真ん中に持ってきて――」
動きを見ながらは誠へ指示を続けた。妥協なき指導に誠の方は半信半疑の態だったが。
「課長がレクチャーしている技は、直線系のレーザービームのようなものだと思うのです」
もし、巳瑠に二人の側まで行く余裕があったなら、誠へそう説明していたかもしれない。だが、まだデザイアモンスターが残っている以上、振り向くことさえなくただ残存のデザイアモンスターを狙撃しつつ耳を傾けるだけで。
「そう。動きは、そんなかんじでいいよ。それで、詠唱だけど……」
聞こえるのはやり取りだけでも主也が肯定しているからこそうまくいっている様子なのは伝わって来て。
「えーと」
「まぁ、やってみて?」
未だに困惑する誠の背を主也は押す。
「萌え萌えきゅんっ♪」
観念したのか元来ノリのいい性質だったのか。誠が指示された通りのポーズで詠唱を終えた瞬間。
「「デザ―ッ?!」」
デザイアモンスターたちの足元から超高温の温泉がハートの形に吹き上がってデザイアモンスターたちを空高く打ち上げ。
「「デベッ」」
地面へ激突したデザイアモンスターたちを絶命させる。
「なんでだーーっ?!」
思わず叫んで地団太を踏む誠の姿に腕を組んだ輝彩はこうなると思っていたよとばかりに頷き。
「……やっぱり、使えたね」
「いや、その間は何なんです?」
「語尾にハートマークを付けて、ウインクしながら撃つと効果がアップするのです」
誠ががジト目を主也に向けていると一気にデザイアモンスターが減ったことで負担も軽くなった巳瑠が口を挟んで。
「よーし、萌え萌えきゅんっ❤」
「「デデザッ?!」」
ウィンクしながら誠が手でハートを作ると、温泉が連続で吹き上がってまだ生き残っていたデザイアモンスターに多段ヒットしながら空へと打ち上げた。
「って、やらすなーっ!」
「なんやかんやでノリのいい人なのです」
ツッコまれはしたし、若干予想は外れたものの、そこは当人の持つ能力の方に結果が引き寄せられたからだろう、きっと。
(ちゃんと効果もアップしてたのです)
そもそもまだ初めの二回なのだ。このまま経験を積んでいけばレーザービームのようなモノだってその内出せるようになるのかもしれない、ただ。
「ひとまずの危険は去った訳だけど」
指導のおかげか誠の萌え萌えきゅんによって残っていたデザイアモンスターが全滅したのは事実でもあった。
第3章 集団戦 『デザイアモンスター』
「そこの近くで別の|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》が! デザイアモンスターも現れているようです」
無事窮地は切り抜け、これからどうするかというところで連絡が入る。どうやらこのまま救出した魔法少女と交流という訳にはいかないらしい、ただ。
「聞きました。僕みたいに魔法少女になってしまった人を助けに行くんですよね?」
だったら、と|魔法少女《顕然院・誠》は同行を申し出たのだ。
「いくらか戦い方も解ってきた気がしますし、ここで引き下がったら安心安全清純ごく普通の男子中学生を名乗れませんからね」
どこの世界に魔法少女になって同じ状況に置かれている誰かを助けに行く安心安全清純ごく普通の男子中学生が居るかは不明だが、決意は固いらしく。その先にもこれまでで切り抜けてきたのと同様の戦いが待っているのは間違いなかった。
「ここ、あのメイドが出かけてった先の近くだな」
応援の形で駆け付けた|黒虎・路明《くろこ・ろあ》(バウンサーブラック・h05749)は一つの気づきに何とも言い難い表情をする。一目置く相手と偶然に遭遇する可能性が頭によぎったのであろうか。
「やあ、どうかしたかい?」
ただ、代わりに居合わせたのは同じように応援として駆け付けた形の桐谷・要(観測者・h00012)だったが。
「いや、なんでもねえ。それよりも、|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》が起きたってのはこの辺だったな?」
「そのようだね。デザイアモンスターも現れていると聞くし、僕としては――」
「きゃーっ」
尋ねる路明に肯定した要がさらに続けようとしたところでだった、少女のものらしい高い声での悲鳴が聞こえたのは。
「ちっ、向こうか……待ってろよ!」
「戦闘はあまり得意じゃないんだけどね。そうも言ってられないかな」
走り出す路明に要が続き。
「デザ」
「そこかぁっ!」
「ザベッ?!」
漸く見えたデザイアモンスターの背中に|虎柄模様の入った黒い巨大斧《タイガーバスター》を路明振り抜くと放たれた斬撃波を受けて倒れ込むデザイアモンスターの向こうに怯えるおかっぱのような髪型をした少女の姿があった。
「間に合いはしたようで何より、とは言えここからだね」
要は降霊の祈りを捧げ、たまたま近くに居たインビジブルを生きていた頃の姿に変えると、尋ねる。
「そこの倒れてる化け物はどちらの方向から現れたかわかるかな?」
「向こうです」
「ありがとう。君の回答に感謝を。どうやら、手薄なのはあちらのようだよ」
インビジブルとのやり取りを終えた要は一方を指し示し。
「ならそっちに移動しつつ戦うべきか」
デザイアモンスターの死体を一瞥した路明は巨大斧を振りかぶってゆく手を遮るデザイアモンスター目掛け走り出した。斬撃波の間合いには遠いのか、それとも魔法少女より自分へ意識を向けるためか。
「彼を助けてくれないかな?」
魔法少女を救わんとする路明の姿に要も|語り合ったことのあるインビジブル《友達》へと助けを求め。
「デザビャ?!」
「デザンイ?!」
路明が戦わんとしたデザイアモンスターたちが|目に見えない死霊《要のオトモダチ》に襲われて悲鳴を上げ倒れ伏す。
「っ、ついてこい!」
「は、はい」
振り返り叫ぶ路明の声に魔法少女は即座に頷いて走り出した。
「新しい現場の魔法少女はあっちが何とかしてくれたっぽいし、誠っちゃんの可能性を色々検証しようか。うへへ」
唐突に足を緩めやがて立ち止まった|黄羽・瑠美奈《きば・るみな》(メイドイエロー・h05439)が|魔法少女《顕然院・誠》の方に向き直ってあやしく笑ったのは、新たに起きた|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》の現場へ向かう途中だった。
「え? 何かわかったん」
ですかとまで続かなかったのは、瑠美奈の表情を見て後ずさったからで。
「とりあえず、飲食物の能力の確認をしたいところかな?」
安心させる為か純粋に問題解決の為か、瑠美奈が真面目な表情を作れば誠もあれっと言った表情で距離を取るのをやめ。
「誠っちゃんは何か得意なことある? もしかすると、そういうのも魔法少女の力になってるかも」
「うーん、得意という程ではないですが、料理とかお菓子作りはしますね。食べた人に元気を出して貰い集ったり笑顔になって欲しくて作るんですが、それが何をどう間違ったのか、僕が料理に一服盛ったとかそう言う妙な方向の風評被害になったり」
恐らくはそう言う方向に弄られていた結果、魔法少女の状態異常攻撃として発現してしまったのかもしれない。
(メシマズ系キャラっていうのは、自分では料理が得意って思ってる場合があるから、もしかすれば……って思ってたけど、これは料理自体は普通に美味しいタイプかな)
状態異常も指定できるなら無害なタイプのものを実際に食べてみることで料理の味自体は確認可能でもある筈だが。
「デザ……」
「あ、ちょうどいいところに。誠っちゃん、とりあえずあのデザイアモンスターに調子がおかしくなる料理、ぶつけてみよー」
「え゛? あー、まぁ、なんとなくこうすればできそうって感じはしますから、分かりましたけど」
微妙の納得のいっていない様子で虚空に作り出したのは見るからに涼し気なフルーツゼリー。
「そぉい!」
「デッザー?!」
勢いよくゼリーをぶつけられたデザイアモンスターの身体から勢いよく血なのか体液なのかわからないモノが噴き出し、その身が毒々しい色に変わる。
「誠っちゃん、アレ、何?」
「え? 何かのゲームで『毒』と『出血』と『混乱』を同時に与える攻撃魔法があったので」
そのイメージでやってみたんですがと誠は言う。
「これ……無理なら他の手段を考えようって思ってたけど、普通に必要なくなくない?」
ちゃんと攻撃として成立してしまっているのだから。
「とりあえず、ウチもやっとくね」
「デザンベッ?!」
もちろん、瑠美奈自身もデザイアモンスターの掃討を手伝ったので現場の魔法少女を狙うデザイアモンスターはどんどん数を減らしてゆく。
「まだ油断はできないし、現場の魔法少女に合流できたわけではないけど」
誠の周辺については動くデザイアモンスターの姿もなくなり。
「しっかし、このデンジャラスな肉体で安心安全清純は無理があるっしょ」
「え、あ、ちょ?!」
後ろから抱き着かれてあちこちむにむに瑠美奈から揉まれた誠が悲鳴を上げて。
「変身解除して元に戻れるとしても、また変身する状況があるかもだし、ウチら闘志戦隊ファンダーズが助けるよ!」
「セクハラしつつ言うようなことじゃないと思うんですが?!」
瑠美奈の腕の中から上がる誠の抗議。魔法少女になっても弄られの運命からは逃れられないらしい。
「行け、負けるな誠っちゃん!」
「デザ!」
「それ、あなたが言います?! って言うか、あの化け物来てるじゃないですか!」
新たに姿を見せたのは現地の魔法少女の方を追いかけて行ったデザイアモンスターであろうか。ということはそちらの魔法少女との合流も遠くないのかもしれなかった。
「ぷ、まこと、えらいぷい! おれさまもいっしょにいくぷい!」
|魔法少女《顕然院・誠》が新たに起きた|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》の話を聞いたて動向を申し出た時、自身もそう表明した|天竺鼠・まる《もるもっと・まる》(げっ歯類なめんな・h13195)は味方とわちゃわちゃして誠がすぐに動けない状況であったから。真っ先に動いた。
「ぷぷーい! ぷぷぷぷぷ」
まるが喚び出したのは42匹のモルモットたち。
「みんなであのへんなのをやっつけるぷい!」
「「ぷい!」」
まるの指示に従って一斉にデザイアモンスターへ襲い掛かるがこの状況で喚んだのが何の変哲もないモルモットの筈もなく。
「デザ―ッ!?」
「デ、デザザ」
群がられたデザイアモンスターはあちこちを食いちぎられて崩れ落ちてゆき。
「デザ、イ……ヤ?」
モルモットたちを脅威と見て腕で薙ぎ払おうとしたデザイアモンスターは腕を振り上げた姿勢で固まる。まるが念動力で腕の動きをとめたのだ。
「きゅ!」
「デザ?! デッザー?!」
そのまま腕を引っ張って転ばせることで攻撃へと転用すると飛び掛かってまるが触れた部分からデザイアモンスターが燃え始める。
「ぷい! その調子ぷい! もしまこと以外の魔法少女を見つけたらその子を守るぷい!」
「「ぷぷい!」」
まるがそんな指示を出したからであろうか。
「え」
どこかから声が上がった。見ればおかっぱのような髪型をした魔法少女がまるたちの戦いを見て目を丸くしており。
「まこと、あいつら、まとめてこうげきできるぷい? さっきのぷるぷるみたいの、いっぱいだせるか?」
「え? あっはい」
いつの間にかじゃれ合いも終わって自由になっていた誠にまるが協力を求めればすぐに先ほどのフルーツゼリーを複数作り出し。
「そぉい!」
「「デザビャッ?!」」
投げつけられたゼリーを浴びたデザイアモンスターたちが身をよじりのたうち回り始める。
「す、凄い……」
「やっぱり、まこと、すごぷい。みんな、まもる、ちからになる!」
誠の攻撃が明らかに効果のある様におかっぱ髪の魔法少女がポツリ漏らす一方で、まるは仲間を狙うデザイアモンスターたち誠が倒してゆく姿へしきりに頷いていた。
「くすんくすん……僕にこの手を汚せというのか」
辺りを見渡して築地めいた光景にナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)は涙を流していた。マグロの代わりに横たわるのはデザイアモンスター。おいしそうとは真逆の色合いに染まってるのは|魔法少女《顕然院・誠》に状態異常フルーツゼリーをぶつけられた個体だろう。
「いや、悪の怪人ならここは笑うところなんだろうけれど」
ナマエハ自身、そうも思っていたし、ツッコまれそうな状況も理解していた。
「『こんだけ暴れておいて、もうすでに手は汚れ切ってるというか、その道のプロだろう』というツッコミはお控えください」
だから前もって周囲に伝え。
「えーと」
「よ、横入りはいけないことなんだ! あの流れるような横入り、僕でなきゃ見逃しちゃうね!」
何か言いたそうな魔法少女を前に強く主張すると、デザイアモンスターのマナー違反を思い出しつつ嘯いて見せ。
「さて、毎度のことながら悪の怪人が誰かの助けになろうとしている」
「なんだかまたさらっと流された?!」
仕切り直すナマエハは愕然とする誠の方へ向き直るとぴっと指さした。
「そこの魔法少女! 別にあんたのためでやってるんじゃないんだから! 仕事だから仕方なくだよ! 勘違いしないでよね!」
「この流れで勘違いする要素ありますっけ?!」
喚く誠をスルーしながらナマエハはほぅと息を吐き。
「これ言っとかないと『お前、正義側に躊躇なく足突っ込んでるぞ』と思われるからね」
「デザ?」
「デザァ」
危ないところだったと言わんがばかりに額の汗をぬぐう仕草をナマエハがすると困惑したようにデザイアモンスターたちが顔を見合わせ。そこでナマエハは気づいた、倒すべき怪物がまだ残っていることに。
「さぁ! 平和のために頑張るぞ!」
「もう僕はツッコミませんからね?」
空を見上げてぐっとこぶしを握ったナマエハは神の好感度ゲージを創造する。
「借り物の力でフルパワー!!」
「「デザンベッ?!」」
パワーアップしたナマエハの一撃を不幸にも叩き込まれたデザイアモンスターたちが爆散する。
「止められるかな? この僕をね!」
誠がツッコミを放棄したことでその後ナマエハ無双は調子へ乗りに乗ったナマエハがデザイアモンスターの体液に滑って転ぶまで続いたとか続かなかったとか。
「|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》、あの時以来かしら」
篠笛を取り出しながら|萩高・瑠衣《はぎだか・るい》(なくしたノートが見つからない・h00256)は呟いた。過去の記憶と比べれば魔法少女を守る味方は優勢で残存するデザイアモンスターはもう群れの態を為してない程にまばらだ。
「とは言え、目覚めたばかりの魔法少女には脅威ね」
「「デザァ?!」」
篠笛を鳴らし、注意を惹くような甲高い旋律を瑠衣が奏で始めれば生き残っていたデザイアモンスターたちの注意が一気に瑠衣へ集まる。
「さて、せっかく気を惹いてもらえたのだから僕もやることをやらないとね」
|自然に宿る精霊を魔弾に変えて射出する銃器型の竜漿兵器《精霊銃》を手に応援へ駆けつけた|柊・冬臣《ひいらぎ・ふゆおみ》(壊れた器・h00432)が動き出したことにさえデザイアモンスターたちはまだ気づいていないだろう。
「デザゲッ?!」
故に気づいたのは生き残っていたデザイアモンスターたちの一体が魔弾に貫かれて傾ぎ始めた段階であり。
「続けてゆくよ」
防衛本能や危機意識のようなものが欠如している冬臣は自身の存在をデザイアモンスターたちに気づかれても止まらない。
「デビャッ?!」
「「デザ……」」
二射目もデザイアモンスターを撃ち抜いて、一部のデザイアモンスターたちが冬臣に向かおうとしたところで瑠衣の篠笛の戦慄が流れ。
「「デザイア!」」
再びデザイアモンスターらは瑠衣の方に向き直る。
「そぉい!」
「「デザベッ?!」」
直後だった、放物線を描いて飛んできたフルーツゼリーが次々とデザイアモンスターたちに命中したのは。
「この分なら何とかなりそうかな」
魔法少女が加勢してきたことでデザイアモンスターの殲滅速度は向上した。そもそもが随分と数を減らされた後であったし、瑠衣による篠笛の演奏で度々気を逸らされたデザイアモンスターたちは無防備な背中や側面に致命傷を貰いどんどん数を減らしているのだ。冬臣が精霊銃で撃ち抜いたデザイアモンスターだったものたちはもう動かず。
「す、凄い……私も、いつか……あんな風に」
おかっぱのような髪型の魔法少女が|もう一人の魔法少女《顕然院・誠》の戦いっぷりを顔を赤くしながら見惚れているのは、魅了の力が漏れ出ているとかではきっと無いのだろう。
「雷よ、言の葉の力を射よ」
倒すべきデザイアモンスターもほとんどいなくなったことで冬臣は雷の精霊の助けを借りて近くに居たインビジブルを生前のものと思しき姿に変えると尋ねる
「そこに横たわってる怪物を前にも見たなら、どこからきてどちらに向かったか解るかい?」
と。はぐれたデザイアモンスターなどがいないかの確認の為だったが、見てはないか既に倒したデザイアモンスターの姿であったらしく。
「終わったようね」
気づけばすぐ近くに先ほど篠笛を鳴らしていた瑠衣の姿があった。とうとう陽動の必要もなくなったらしい。周囲を見回せば動いているデザイアモンスターは一体も居らず。こうして√能力者たちは魔法少女らの救出に成功したのだった。
(判定の結果、|黄羽・瑠美奈《きば・るみな》(メイドイエロー・h05439)が「|顕然院・誠《けんぜんいん・まこと》をAnkerとする権利」を手に入れました)