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正義より生存をただ謳え

#√ウォーゾーン #ノベル #決戦型WZ「カリギュラ」

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折木・龍也

 暗黒と鉄錆の匂いが充満する秘匿作戦。
 戦闘機械都市の地下というのは、総じて歪だ。
 内部は大抵、歪に入り組んでおり息を潜め進むのに向いている。
 ただし、作り上げた戦闘機械群の何らかの|派閥《レリギオス》が整備した交通網であることをこの場所を進軍経路に選んだチーム員、全員が承知していた。
 息を殺すとわかるオイルと焦げた匂い。
 そして、静かな連続音。
「――そこの通路の先、進めば鉢合わせだ。歓迎の挨拶にしちゃ、ちと騒々しい」
 経路の侵入に気づかれたか。数は少なくなど無いだろう。
 緊張感が一気にチームを侵食する。決戦型WZ"ユーサネイジア"を駆る|折木《おれき》・|龍也《たつや》(伏龍・h13162)は近距離型チームに配属されていた。WZの性能を鑑みて、単独行動の許可を得ていたものの、本来なら遥か後方から敵を射抜くための隠密狙撃機だ。
 ――こうも近距離が得意そうな奴らが多いとな。
 パリン。増援回避のために、最速で龍也が監視カメラを破壊した。カメラと並列展開されるセンサー網の死角に潜み、熱源を偽装し、破壊工作は、手回しとセットで行うのだ。近づく敵は至近距離からの精密狙撃で音もなく排除する。それが龍也のやり方。
 ――だからこそ、先手を撃てないのは命に関わるわけだ。
 狭隘な地下通路を、監視のない方へ進んでいく。
 迂回路を経て、目標を達成するにはこうするが最適。
 この通路を抜けて――心臓部の動力源を破壊しなければならない。

「お前さんらは予定通り裏から回れ。正面の『デコイ』は俺が引き受ける」
 通信回線に軽く投げかけてから、|わざと《・・・》光学迷彩をパージし、あえて自らの熱源を跳ね上げた。直後、通路の奥から無数の駆動音が迫り、急激に容赦のない銃撃の嵐が始まる。本来なら広大な戦場で真価を発揮するはずのユーサネイジアが、今や敵を引きつける肉壁として、その薄い装甲を激しく火花へと変えていく。
「おいおい、そんなに手荒く迎えるなよ。こちとら正義の味方じゃないさ。だが――これ以上殺させる気もないんでね」
 手早く、電子情報を狂わせるジャミング領域を拡大しながら、龍也はユーサネイジアを急加速させた。距離を詰められた狙撃機に勝ち目はない――それが戦術の常識だ。
 だが、龍也は慌てない。ロングライフルの銃身を、肉薄した敵の頭部に叩きつけてカメラを叩き割り、ゼロ距離から弾丸をねじ込む。

 更に被弾して駆動の怪しくなった左腕の装甲を強制パージし、迫るエネルギー弾の盾として前方に投げつけた。自らの機体を文字通り"使い潰し"ながら、泥臭く最短ルートを突っ切る。
「撃てる場所から撃つ。届かないなら近づく。最後に残る弾が俺ってわけだ。簡単な話だろう?」
 限界寸前のユーサネイジアを肉薄させ、動力核の冷却パイプへロングライフルを直接突き刺す。引き金を引くと同時に、胸元に仕込んだ指向性爆薬の信管を、機体の出力で遠隔起爆した。鋭く重い破裂音。
 的確に急所を穿たれた動力核が沈黙し、稼働中枢域の光がサーッと消えていく。

 ――数時間後。

 煙の燻る地上で、龍也は瓦礫に背を預けて座り込んでいた。愛機は少々大破したが、チームは生還し任務は完了だ。右頬の傷に触れ、生き残ったことを確認するように、深く煙草の煙を吐き出す。
「……あーあ、腹が減ったな」
 ポケットから取り出した携帯食料を無造作に口へ放り込み、眉を顰めてガムのように噛む。余りに美味しくない。
「相変わらず泥水の味だ。帰ったら、まともなステーキでも食うか。血の滴るやつを、たっぷりのニンニクでな」
 硝煙の中で美味い飯を想う。
 それだけが彼を人間の側に繋ぎ止める錨だった。

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