リア充炎上作戦
「皆々様方、お集まりいただきありがとうございます」
とあるルートの某所、会議室として借りた一室の中でヴェイカー・ベークス(目指せパン罪者・h01060)は集まった能力者達に一礼すると、資料を広げて。
「えー、世の中には徐々にバレンタインの気配が漂い始めておりますが、案の定、√マスクド・ヒーローにて敵さんがやらかしてくれやがりましてね……」
スッ……何故か星詠みは炊飯器を取り出して。
「町中のバレンタインイベントに合わせて大量に仕入れられたチョコレートを、カレールーとすり替えてしまったようです。これにより、チョコ菓子はスパイスの塊、チョコレートスイーツは香辛料が砂糖を塗り潰して、恋人たちの手作りチョコは激辛オンリーで口から火炎放射待ったなし……それはもう阿鼻叫喚なバレンタインにされてしまうようです」
なんかもー、しょうもないような結構洒落になってないような……何はともあれ、簒奪者が湧き出したのなら潰しに行くのが能力者というもの。
「まずはカレールーの拡散を抑える事が必須。要所はチェックしております故、こちらに向かい、チョコレートと入れ替えられてしまったカレールーを回収、及び消費して市民の手に渡る事を阻止してください。手段はまぁ、食べ物ですから食べるのが一番ですが、さすがに全部食べ切るのは不可能だと思われますから、チョコレートアートと言い張って、カレールーでおしゃれな料理を作って展示してもいいかもしれません……まぁ、チョコと違って冷やして固めるモノじゃないから、ちょっと苦労しそうですが」
そこまで言い切ると、星詠みは部屋のドアを開く。
「それでは皆様、ご武運を」
扉の向こうは、事件現場になる商店街になっていた……。
第1章 冒険 『チョコを(正義と平和のために)奪え!』

「辛いのは大好きなアタシにお任せねっ」
というわけでやってまいりました商店街。意気揚々と戦地に降り立った(?)アーシャ・ヴァリアント(ドラゴンプロトコルの竜人格闘者・h02334)はグッと拳を握り、使命感に燃えて……。
「まったくチョコが無かったらサーシャからチョコが貰えなくなっちゃうじゃない」
煩悩に塗れてたわ。
「まぁ√が違うからいいけど、√EDENで同じ事されたら迷惑だからとっちめてやる……わ?」
急に動きを止めたアーシャは耳元に手を添えて。
「むむっ、サーシャの助けを呼ぶ声が聞こえるわ」
は?(部隊編成チェック)いやいやいや、お前の義妹は出撃してないやろ。仮に依頼とは別件で現場に来ていたとして、どこがどう繋がるかも分からない√の狭間が、奇跡的にこの場に繋がるだなんてそんな……。
「ちょっと行ってくる」
ちょい待てぇ!?……ダメだ、あの姉馬鹿、依頼ほっぽり出してどっか行っちまいやがった……しゃーない、カメラ追跡してみるかー。
「何々?チョコと思って買ってみたらカレールーだった?」
……本当に義妹が来てただと?依頼の部隊には編成されてないから、プライバシー保護の為にモザイク加工しておかないと……。
「片っ端から買っていけば?何処かに本物のチョコ残ってるかもしれないし……食べるのはアタシが全部食べてあげるから」
えー、記録をご覧の皆様にはアーシャがブツブツ独り言を繰り返す危ない人に見えるかもしれませんが、彼女の隣には金髪紅眼の少女がいます。安心してください、彼女のメンタルは正常です。
「……何でこの娘、地元√じゃなくて違う√に迷い込んで買おうとしてるのかしら。まぁそういうところも可愛いんだけど」
ごめん、割と異常な頭をしているのかもしれない。なんか目がグルグルになってるし……謎のバステ付与されてない?気のせい?
「そうね、お店にあるだけ買ってみて、一個ずつ味見してみましょ。任せておきなさい、店一軒分くらい、余裕で平らげてあげるわよ」
駄目だコイツ、もう放っておかないと仕事が進まない。
「そこは何とかする所じゃないの!?」
ツッコミの時だけ正気に戻るんじゃねぇ!はい次!!
「バレンタインはおんなのこ達のふわふわした大事なイベントなのにゃ。甘い思い出をスパイシーにしてはダメなのにゃ」
猫……だと?後ろ足で直立するココ・ナッツ(猫ねこ子猫・h01906)は前脚を丸めて掲げ。
「解決にいくにゃー!」
で、何をするのかと思ったら器用に三角巾とエプロンをつけると、ご都合主義的に用意してあった特製の猫用キッチンに飛び乗ったココは猫の手(文字通り)で包丁を取り。
「カレールーはやっぱりカレーを作る為にあるものにゃ。ルーも結構消費出来るしカレーは作るにゃよ」
うん、まぁ、カレールーだしねぇ……そんな商店街の片隅、の隅っこのベンチで春埜・紫(剣の舞姫・h03111)が板チョコにハグッと噛みつくと、目を丸くして。
「あれぇ~?チョコレートを買ったと思ったらカレールーだった」
ある意味犠牲になってしまったか……。
「……まぁいいか、バレンタインのチョコレートなんて製菓会社の陰謀なんだし、それがインドの陰謀に差し替わったとしても世の中なんて誤差でしかないわ」
誤差かな……誤差かも……?
「それに某製菓会社なんて最高責任者がインドに乗っ取られてるんだし、某魔法の粉がカレー粉になったとしても誰も気にしないわ!」
おいバカやめろ、場合によっては洒落にならない時事ネタをぶっこむんじゃない!!
「まぁ間違って買ったとしても、捨てるわけにいかないから普通にカレーを作るわ……猫ちゃーん!私にもキッチン貸してー!!」
というわけで、唐突に子猫とロリによるクッキングタイムが始まってしまった……調理系教育番組かな?
「まずはお野菜をカットしていくのにゃ」
「業務ス パーの冷凍カット野菜とか使えばあっという間に簡単に作れるわよ」
伏字に意味があるのかないのか怪しい紫がお鍋に冷凍野菜をコロコロ入れて、ココが水を計量していると。
「なんならご飯もパックにすればもっと簡単に……」
レンチンするタイプのご飯を取り出して、ふと気づいてしまう。
「それならカレーもレトルトで……え、じゃカレールーどうしよ?」
「カレールーを使わないとお仕事にならないにゃよ?」
そーね。チョコとカレールーが入れ替えられてるから消費して来てねって案件だったね。野菜を切る手間が省けたココがカレールーをまな板で切り始めると、紫はピコン!何か思いついたようだが。
「ラッピングしてバレンタインに嫌な人に間違って上げれば良いか〜」
やめたげてよぉ!?ていうかそれ、敵さんがやろうとしている作戦と似通ってない!?さてはおめー、プラグマのスパイか!?
「わざとやってる時点で、間違っていない気もするのにゃ……」
野菜を煮込んでいる間に、刻んだカレールーを少量の水で溶かし、ソース状にしてから溶き卵と混ぜて中華鍋に突っ込むココ……少し混ぜてふんわり固めながらご飯を投入。混ぜ合わせながら炒めていく。いや器用だなこのニャンコ!?
「次はカレーサンドにゃ。ホットサンドの亜流なのにゃ」
前脚で包丁使ってた時点でツッコミどころの塊のような存在のココだが、カレーと具材を食パンで挟み、蝶番系フライパンに突っ込んで焼け待ちしている間にカレーチャーハンをハフハフ……猫なのに猫舌じゃない、だと……!?
「猫は猫舌だなんて、偏見なのにゃ」
出来立て熱々のカレーチャーハンを食べる子猫という不思議な光景を眺めていると。
「いや、手作りチョコする時にカレーとチョコの違いがわからないってどう言うこと!?」
決して触れてはならぬ禁忌に踏み込んだ巨海・重吾(虚構の巨人【ゲイジークラフター】・h02176)……ルールを破ったあなたはSAN値チェックです。
「どの辺がどうルール違反なの!?どっからどう考えても常識的な話しかしてないよね!?」
うるせえな、ネタ依頼だって言ってんのに一々常識を説く方が間違ってんだろうが、常識的に考えろや。
「非常識の塊みたいな外的存在に言われると納得できないなぁ……!」
腑に落ちないらしい重吾がもやもやしていると、何かに気づいたのかハッとして。
「……いや、これはもしや男女の感じるものにズレをもたらす毒電波が出ている?メシマズや味覚の不一致を助長して将来的に男女間の不和を拡げようとしている?」
そういうことかな!?と振り向いた重吾だが、そこには商店街の路地裏が伸びているだけである。
「……あれ、僕達さっきまで会議室にいたよね?」
キョロキョロ辺りを見回す重吾、脳裏にフラッシュバックするのは今回の案内人が扉を開いたところ。
「って、ちょっと待ってパン屋さん。さっきのどうやったの!?√移動は徒歩ないし、自前移動手段だよね?どんなイリュージョンした!」
フフフそれはですねぇ、 が と を見極めて、そこから して、その が と 瞬間に が ようにしているだけですよ。
「ほっとんど聞き取れないんだけど!?」
うるせー!『こっち』を気にしてないで仕事しろやァ!!
「本当に信用できないなぁあの人は……」
それこそこっちが納得いかないんだが、その辺の私事は置いといて、近所のパーキングに停まっていた愛車を広場まで持ってきた重吾はサッとエプロンをつけて。
「カレールーをどう消費するか、そう、フェアだねぇ」
などと『問屋がカレールーとチョコを取り違えたトンチキ記念カレーフェア』なる幟を立てる。
「商品の大量消費にはそれ相応の需要が必要だからね。僕とカレー大食いチャレンジで勝負してもらう形なら、大食い自慢の一般人にも協力してもらえる」
というわけでVS重吾のフードファイトイベントがスタート……する為に、でっかい鍋に大量のカレールーをぶち込んでぐーるぐーる……すると。
「たのもー!」
▼カレーの匂いに釣られて、野生の黒木・摩那(異世界猟兵『ミステル・ノワール』・h02365)が現れた!
「野生の能力者ってなんですか!?」
え、そこを気にする?しかし、ツッコミを入れた事で摩那に重吾から可哀想な生き物を見る視線が向けられる。
「あっちが見えてるって事は、その、御愁傷様です……」
「脈絡もなく謝罪するのはやめて頂いていいですか!?私はまだネタ堕ちなんてしておりませんので!!」
などと本人は言い張っているが、こんな案件に来ている辺り……まぁ、はい。
「コホン……チョコをカレールーに変えて、激辛とするとは。プラグマの分際で、なかなか味のあることをしますね!チョコでも、カレーでもどちらでもいける口ではありますが、一般市民にとっては刺激が強すぎるでしょう。さすがに食べてしまわないと危ないですね」
出鼻をくじかれた(?)摩那は気を取り直すと、重吾に対して宣戦布告。一般人の協力者を巻き込んでしまうことへのリスクを考慮し、自ら挑戦者に立候補。決して、自分が食べたくて手を挙げたわけではない。なんかめっちゃ目がキラキラしている気もするが、絶対に自分が食べたかっただけではない……はず?
「さ、カレーができたよ。結構スパイシーだけど……」
「辛い方は大丈夫。ちょっと刺激的なのが癖になりますね」
漂ってくる香りから使われている香辛料を特定するくらいには激辛好きの摩那は、深く頷き。
「いい調味料を使ってます。これは後で欲しいかも」
「キッチントラックを乗り回している身としては有難い言葉だね」
元のカレールーにアレンジを加えていたらしい重吾は微笑みつつ、摩那の顔の二倍くらいの面積がありそうなデカ皿によそったカレーを持ってくると。
「それでは、いざ尋常に……」
「いただきます!!」
さぁ始まりました大食い対決。外見的には重吾が圧倒的に優位。事実大口を開けてバクバク食べ進める彼のスピードは凄まじいものがある。しかし、対する摩那も一口こそ彼に比べれば小さいが回転率が高く、一歩も譲らぬ摂食速度。両者ともに皿を空にして。
「「おかわり!!」」
などと、激しい戦いが繰り広げられている傍らで。
「カレーか。また食ベルンカ……マア、今回も助っ人呼ビマスカ……オネエサマ、今日はカレーを奢ルヨー」
などと、義姉を呼び出したスノードロップ・シングウジ(異端の末裔・h01215)が笑っていたのがかれこれ五分ほど前のこと。
「ねえ、愚妹。カレー奢るって言ったのにどこ連れていくの?あんた」
呼び出されて「へぇ、たまには気の利いたことするじゃない」などとやや上機嫌『だった』新宮寺・結里花(神を喪失した少女・h02612)がどう見ても食事処なんてなさそうな商店街に連れて来られて、何かを察しジットリ半眼になる。対してスノードロップは無言で調理器具を取り出して。
「おい、その鍋は何だ。何させるつもりよ」
「実はかくかくしかじかデ、カレーをネ?ウン。ソウナノ。マタナンダ」
「あー、はいはい。成程。またか。クリスマスといいバレンタインといい、何でコイツ等は忙しい時期にバカなこと起こすのよ」
てへっ☆っと妹スマイルでごまかそうとするスノードロップから鍋を受け取る……と見せかけて、地面に弧を描くすり足で踏み込み、彼女の顔面に裏拳を叩き込む結里花。体を反転させながらぶん殴った腕の反対に回した手で落ちる鍋を掴み、逆回転の慣性でもう一発、今度は鍋で脳天をぶん殴る。度重なる頭への衝撃で目を回し、頭上でピヨピヨとヒヨコと星が追いかけっこしているスノードロップがノーガードになった瞬間を見逃さず、握り固めた拳を愚妹の胸の中心から、拳二つ分ほど下の位置に叩き込み、モロに突き刺さった一撃に空気を吐き出したスノードロップがダウン!お腹を押さえて丸まりプルプルしながらワン、ツー、スリー……カンカンカンカァン!試合終了のゴングが響く!!
「……」
「ウェイト!ウェイト!オネエサマ!マッテ。無駄ニ鍛エタ喧嘩殺法ヲ披露スルノハヤメテ。オネエサマダケヨ、ワタシ殺せるノ。死ンジャウカラヤメテ!!」
ほっといたら胸倉掴んでもう一発行きそうな勢いで、背後に般若の幻影を浮かべる結里花に割とガチ泣き寸前のスノードロップが両手をブンブン。
「んで?カレー作り?そりゃあ作れるけど、私がやっても家庭料理レベルよ」
長い、ながーいため息をついて、拳を降ろして鍋が変形していない事を確認する結里花にスノードロップは生命の危機(?)を脱したことを察してサムズアップ。
「オネエサマ料理得意デショ?全部和風ニナルケドサー」
「全部和食は余計なお世話だ。このアホ妹……しゃーない。食材買ってくるか。おい、荷物持ちしろ、愚妹。鍋だけでどうやってカレー作れると思ったんだ愚妹」
「OKOK!モチロンお手伝いシマース!」
と、にこやかに立ち上がるスノードロップだったが。
「食材費は全部お前持ちな」
「エッ……」
突然の寒波がスノードロップのお小遣いを襲う!!
「さーて、それじゃ食材を……?」
とりあえずその辺のスーパーに入ってみる結里花だが。
「カレールーがない……?」
お菓子売り場のチョコレートが一つ残らず品切れしている。何事かと思ったら。
「あーん……んー、これもカレールーね」
金髪の少女に、チョコレート(カレールー)を食べさせてもらってるアーシャがいた。
「……」
その山積みのチョコレート全部食べるつもり?とか、なんでカレールーだって分かってるのに直接食べてるの?とかツッコミどころは色々あったが、結里花が溢したものは。
「それ、辛くないの……?」
アーシャの口周りが香辛料にやられて赤く変色してる事へのツッコミだった。
「辛いわ。でも幸せよ。義妹が食べさせてくれることに代わる幸福はないわ」
キリッと真顔で言い切るアーシャをスノードロップが指さして。
「オネエサマも見習って!もっとワタシに優しくしてくれてもいいンデスヨ!?」
「黙れ愚妹」
「Oh……」
一刀両断されて撃沈したスノードロップをほっといて次のお店に向かう結里花。そこで見たモノは。
「郷に入っては郷に従え、ということで、今回はネタ行動に徹します!」
茨の道を通り越して、地獄への下り階段でダンボールスライダーするミンシュトア・ジューヌ(エルフの古代語魔術師・h00399)の宣言。
「進めー!!」
わー!お財布を掲げて、バタバタバタ。お店の中を走ってお菓子売り場に突撃すると、予算が許す限りのチョコレート(中身はカレールー)を掻き集めて、うぉー!っとレジへ。
「……新手の犠牲者を見てしまった気がするわ」
「オネエサマ、それは言わないお約束デース」
物凄い勢いで駆け抜けていったミンシュトアの背中を見送って、カレールーを入手した結里花が店を出ると、重吾と摩那の大食い対決も佳境に入っており、用意されていた大鍋の中身が大分少なくなっている。
「まだまだ食べられそうなら、こっちで作ったのも提供しておけばいいかしら……」
「フレー!フレー!オ、ネ、エ、サ、マ♪」
スノードロップの応援歌を背に、ちょっとイラっとしながらも手元は寸分の狂いもなく動かす結里花は鍋に食材とカレールーとだし汁と醤油を加えてじっくりコトコト。
「相変わらずカレーと肉じゃがの中間みたいな味しますネー」もぐもぐ
「なんでシレッと食べてるのよ愚妹。ていうかカレーも肉じゃがも似たような物でしょうが」
「オネエサマ!?それはさすがにとんでもない暴論じゃないデスカ!?」
漫才やってる間に大食い対決の鍋にカレーを補充すると、重吾と摩那がビクッ!
「美味い!甘味と塩味がルーの強い刺激を和らげながら香りを高めている!?」
「それでいて辛さをごまかすのではなく、辛味と旨味が並列する複雑な味わい……まさに日本食と呼ばれる味ですね……」
などと、二人があっという間に和風カレーを平らげて、次の鍋のカレーに手を出すと、ピタッと止まる。というのも。
「イ~ッヒッヒ……」
ミンシュトアが無駄に禍々しい影絵状態で大鍋の中身をグルグルかき混ぜているから。しかもまー、ブクブク言ってる鍋の中身が瘴気と悲鳴を吐き出しながら、時々鍋から脱出を試みてはミンシュトアのお玉に捕まって鍋の中に引き戻されていく……。
この場面だけ見てしまうと、奴は一体何を作っているのか心配になって来る気持ちも分かるが、今混ぜてる『カレーとカレの華麗なる錬金薬』とかいう謎の薬物はさておき、提供されたカレーの方は安全なのでご安心ください。
「安全ってなによ!?ちゃんと美味しくできてるわ!!」
などと供述しており……。
「私の信用を落とすような地の文はやめてもらえるかしら!?ちゃんと友人に協力してもらって美味しく作ったわよ!!」
っていうけどさぁ……その調理シーンがこちら。
「本当に美味しいカレーが作れるのかって?できらぁっ!」
重病の迷走……間違えた、十秒の瞑想(という名の謎宣言)を経て、うにょーん。ミンシュトアの体から過去の思い出の幻影が生えてくると厨房に立ち。
「カカカー!料理は勝負なのです!」
幻影にじゃが芋の皮むきをしてもらっている間に自分は玉ねぎを刻む事で、二倍速で調理を進めるミンシュトア……だ が し か し !
「あぁっ!お友達の思い出がっ!?」
ミンシュトアのお友達は十七秒しか存在できない。あっという間に消えてしまったため、結局一人で作ることになるミンシュトア【おもしれー女】。
「私の名前に変な読み仮名をつけていないかしら!?ていうか、なんで美味しく調理できたシーンじゃなくってちょっと残念な所の記録を公開してるの!?」
「みんな大変そうだにゃ……」
「私、あんな大人にはなりたくないわ……」
ちゅるちゅる~……カレーうどんをすするココと紫が、カオスる仲間達から距離を取っていると、リヤカーを引く惟吹・悠疾(人間(√EDEN)の妖怪探偵・h00220)がガラゴロガラゴロ。
「……放っておけばいいんじゃないか……?」
どこか遠くを見つめる彼が引く荷車には、大量の偽装チョコレート。中身は香辛料の塊というそちらに視線を向けると。
「食べたら死ぬような毒物を撒かれた訳でも無し、ちょっとバレンタインが刺激的になるだけだろう……まあ、激辛チョコ【カレー】を贈られた男性は色々と試されることになるし、その相手は作った料理の味見をしないタイプだからそのまま付き合うと苦労しそうではあるけどな……」
無論、バレンタインが台無しになる、という意味では結構問題っちゃー問題ではある気もするが、少なくとも命に関わるような危険性はない事は、重吾と摩那が大食い対決で証明している。
「なんにせよ、大量のカレールーを無理に俺達が消費する必要は何処にもないんだ。だったら、この劇物の山は必要としている人達の所へ寄付するだけさ……」
クールな微笑みを残して、悠疾は食事が足りていない子ども達にカレーを提供するべく、荷車を引きながら去って行くのだった……。
―完―
第2章 集団戦 『潜入工作用改造人間『スニーク・スタッフ』』

「待てぇい!!」
なんかいい感じに話が終わりそうなところだったのに、黒服の集団が現れて能力者達を取り囲む。
「我々の計画をよくも邪魔してくれたな……許さん、絶対に許さんぞ」
ス……懐から出てくる、カレールー。
「このいざという時の為に用意していた、超濃縮激辛カレールーの餌食にしてくれる……!」
※敵さんは攻撃行動とは別に激辛カレールーを口にねじ込んできます。激辛耐性を貫通するレベルの辛味に襲われるため、意地でも躱すか何らかの形で対処しましょう。次回執筆は十八日の夕方の予定。十六時くらいまでにプレくれると嬉しいな!
「誰が頭のおかしくなった異常者よっ!?」
『ほぎゃー!?』
突然のツッコミと共に天より墜ちる赤き流星。敵陣のど真ん中にダイナミックフライングキックで着弾したアーシャが衝撃で本日の集団系簒奪者、スニーク・スタッフをまとめて吹き飛ばし、乱れた髪をまとめてかきあげる。
「この能力、他の記録が上る前に出ないといけないから面倒だけど、此処の場合は纏めてだから確実に発動できて楽ね」
チュドーン!!メタメタしい発言と共に大爆発が続き、高速反復横跳びして三人に分身するアーシャは腕組みをしてドヤッ。
「ふふんっ、アタシの隙を見つけても、そこを突ける身体能力がなければ意味ないでしょ。三倍になったアタシに追いつけるかしらっ」
「こいつ……スピードじゃなくて人数が三倍になってやがる!?」
いやまぁ、実際にはちゃんと能力値の方が三倍になっているのだが、速度に物を言わせて文字通り目にもとまらぬ速度で動き回る事で狙いを定めさせないアーシャ。対応しきれずに動きを止めた簒奪者達の後ろで悠疾がぽつり。
「……まあ些細な問題ではあるけど……今回のプラグマの方々は全員チョコを貰えない側なんだろうな……これでもし上役が激辛好きの恋人に悩まされていての八つ当たりとかだったら、色々と笑えないんだけどな……」
「やめろぉ!?」
思ったより悲痛な声をあげる怪人に、悠疾の方がビックリしていると。
「我々は立場上、その手のイベントと無縁なのは当然として、いざ改めて言葉にされるとみじめな社会人男性みたいに聞こえて来てメンタルに刺さる……!」
怪人として悪の道に生きる以上、そういうお日様が当たってそうなイベントとは自ずと無縁になる……仕方のない事だが、わざわざ口にされると辛いものは辛いらしい。が、そこでわざわざ配慮するような真っ当な奴がこんなヒッデェ依頼に来るわけがない。
「怪人としてこんな作戦の工作員にされている辺り、みじめかどうかはさておき、残念な社会人なのは間違っていないんじゃないか?」
「ごっはぁ!?」
悠疾の正論めいた一撃が無慈悲に敵さんの心を抉る!!
「き、貴様ァ!決して言ってはならない事を!!」
「俺達だって好きで出世街道から外れたわけじゃないのに!」
「我々と同じ苦しみを物理的に味合わせてくれる!!」
滂沱の涙と共に突っ込んでくる敵さんが、悠疾の口に市販品っぽく固められたカレールーをズボッ!その瞬間、彼の顔は瞬く間に真っ赤に染まって、おろろろろ……。
「か……かっら!?」
辛すぎて咳き込むどころか、凄まじい吐き気に襲われてダウンしてしまう悠疾。意地でも嘔吐するまいと何とか嚥下すると、少しでも口腔内を冷やそうと舌を出して、ヒーヒー言っていると手元にポンとラッシーが現れる。一気に飲み干して、それでもジリジリと舌を焼かれるような痛みに耐えきれず、舌を出したまま棺桶をぶん回して、スパァン!
「「「ぐぁーっ!?」」」
敵さんをまとめて吹き飛ばし、ついでに繋がってた鎖でグルグル巻きにすると、棺桶の中から取り出したのは調理時に同意書が必要になるタイプの香辛料。
「とんでもなく刺激的な体験をありがとう……お礼にお前等にも似たようなもんをくれてやるよオラァ!!」
これは酷い……髑髏が描かれた瓶を敵さんの口に突っ込んで、ぐりぐりと喉奥まで捻じ込み、一滴たりとも溢すことなく飲み干させている……ここだけ見たらどっちが悪党か分からない拷問シーンの完成である。
「超濃縮激辛カレールー!それは聞き捨てなりません。是非ともゲットしてコレクションに加えたいですね」
「えっ」
かたやカレールーを突っ込まれてブチ切れて、かたやカレールーに期待の眼差しを向ける能力者に、敵さんも困惑が隠せない。なんかヤバい連中に目をつけられてしまった事だけは察して後退るものの。
「直接口に入れられるのは願い下げですけど……いくら辛いのに強いと言っても、自分のペースで適量に食べてこその調味料。容量用途は適切に扱いたいものですね……というわけで」
摩那はにっこりと微笑み。
「まずは色んなパターンで食べて一番美味しい食べ方を探したいので、持ってるカレールー全部出してもらえます?」
「お前は何を言っているんだ……!?」
言ってる事だけ切り取ったら、完全にカツアゲの構図である。コレはまともに相手をしてはいけないと、警戒する敵さんだったが、そこへ高速で駆け抜けるヨーヨーがスパァン!手元を叩いてカレールーを弾き飛ばし、ギュルッとまとめてワイヤーで回収されてしまった。
「まさか一個だけなんて事はありませんよね?ほら、ちょっとその場でジャンプしてみてくださいよ」
「こいつ、我々よりも悪党してないか!?応援!応援を要請する!!」
と、他の工作員に招集をかけている間に通信機持ってた手をヨーヨーのワイヤーで絡めとられて。
「数の暴力はちょっと怖いので、まとめて吹き飛ばしますね……っと!」
「おわぁあああああ!?」
そのまま駆けつけた追加戦闘員に向けてシューッ!ストライクッ!!綺麗に四散した敵さんの末路を見届けて、ミンシュトアはマスクを着用。
「さて、気持ちを切り替えて、真剣と書いてマジと読むモードなのですよ。魔法使い【マジックユーザー】だけに!」
ドヤ顔でこっち見てんじゃねぇよ。既に半分ネタ堕ちしかかってる自覚あるのか?ギャグ時空に汚染されつつある彼女は、マスクくらいでネタ感染を防げるとでも思っているのかと思いきや。
「とりあえず、口に入らなければカレールーは怖くないですし。時期柄、感染症が怖くて持ち歩いていたのが功を奏しました……そもそもこの連中も病原菌みたいなものですよね?」
だから何やってもいいよね?と言わんばかりの悪い笑みを浮かべるミンシュトアに、敵さんがプンスコ。
「我々が病原菌だと!?むしろ世界を征服して新たな秩序を築かんとする、√の免疫機能のようなもので……」
って、敵さんが喋ってるのに指鉄砲から風の弾丸を発射。セリフの途中で吹っ飛ばすと同時に、周囲に暴風が吹き荒れて工作員のスーツをズタズタにすると内ポケットからカレールーを巻き上げてしまう。
「いたたたたたた!?貴様!喋ってる最中に撃つのは卑怯だぞ!?」
「卑怯?いえいえそんな……」
吹き荒れるかまいたちに切り裂かれる敵さんに向けて、ミンシュトアは降って来たカレールーを片手に歩み寄ると。
「わたし、残酷ですわよ」
実に禍々しい微笑みのままに、敵の口に突っ込んだ。
「もぐぁああああ!?」
辛さのあまり、体中に刻まれた傷跡から血を噴き出してぶっ倒れた簒奪者……戦場に広がる惨状を目の当たりにして、なんかもう工作員側がドン引きである。
「な、なんだこいつ等……正義感とか倫理観とか、そういうものはないのか!?」
「そういうのを気にしないといけないのは、むしろそっちじゃない?」
有給申請をして今日という日を休暇にしなかった事を後悔し始めた敵さんへ、紫は不敵な笑みを浮かべると。
「ふ、超濃縮激辛カレールーって言うけどね、今のご時世にはコンプライアンスというものがあるのよ!」
「え、それを悪の怪人側の我々に言うの……?」
「悪の怪人以前に、いい年こいた大人でしょうが!そんなだから社会から爪弾きにされるのよ!!」
「ごっふぅ!?」
うわ幼女酷い……大人達のガラスのハートを土足で踏み砕きやがる……崩れ落ちた工作員たちを前に、片手を腰に当てて前屈みに、お説教ポーズをとった紫曰く。
「売れなくて体を張るしかない芸人とかエキストラじゃないんだから、超濃縮激辛っていっても、大した辛さじゃないって知ってるわ。特に未成年で、しかも小三の私にホントの超濃縮激辛カレールーを食べさせてショック死させたら、もう今世じゃ再起できないわ。今の小学生でもそれくらいわかるの、でも私は大人のレディーだからそこまで言うのなら少し付き合ってあげてもいいわよ?」
これに対して、怪人側は頭を突き合わせてひそひそ……。
「これはアレか?押すなよ、絶対押すなよのアレか?」
「だが、実際にやったらやったで映像記録とか取られててあーでもないこーでもないと騒がれるのも厄介だぞ?最近の子どもはメスガキとか言うバケモンなんだ、関わらないのが一番だろう」
「かといって、フルシカトこいて後ろ指さされるのも癪だしな……」
頭を悩ませた怪人達は小さく唸り、ある結論に行きつく。
「「「ていうか俺達、悪の怪人なんだから子どもを虐めてナンボじゃね!?」」」
悪の矜持というか踏み外してはいけない道というか、大人には大人の事情があるモノだが、そもそも目の前の幼女は明確な敵である。むしろ痛めつけなくて如何とするのか。
「そうと決まれば調子こいたガキには痛い目に遭って貰わねぇとなぁ!」
「今更泣いても許さねぇぜぇ!!」
「大人をナメるとどうなるのか、思い知らせてやんよぉ!!」
と言いつつも、カレールーのまんまだと紫の口に入んない為、小さく砕いた欠片を、あーん、ぱくり。
「!?!?!?!?!?!?」
うん、わっかりやすく撃沈したね。
「ッ……!?」
あまりの辛さに声も出せなくなり、涙と鼻水とその他諸々でそれはもー、大洪水の地盤沈下を起こした顔になる紫は、ガッ!と残りのカレールーをぶんどると。
「なんてものを食べさせてくれてるのよーッ!!」
「んぁーっ!?理不尽!?」
相手の顔面にゴリゴリゴリゴリ……黒歴史を擦り消す消しゴムよろしく敵さんの顔面に押し付けて、目と鼻と口を同時攻撃する暴挙に出た。この様子を眺めていたアーシャ、すっかり呆れかえってしまい。
「激辛っていってもカレーでしょ?お子様には刺激が強すぎたにしても、大袈裟過ぎない?」
などと、高速移動について来られずあたふたしていた怪人から逆にカレールーを奪い取ると、自分からパクッといった。
「ちょっとやそっとの辛味程度へっちゃらよ」
と、余裕綽々に咀嚼、嚥下して見せた所からきっかり三秒。スパイス特有の時間差で舌と喉に浸透するヒリつく辛さが這い上がってきて、グーンとアーシャの顔が真っ赤に染まっていくと。
「……辛ーーーーーいっ!!」
「あぢゃーっ!?」
絶叫と同時に業火を吐き出し、カレールー持ってた怪人を消し炭にしてしまった。
「か、からっ、か、かーっ!?」
あまりの辛さにやられて舌がマヒしているのか、呂律が回らないアーシャがドタバタしながら涙目で暴れ回っていると、例の義妹がにっこり微笑んでペットボトルの水を差しだしている。
「ひ、ひひひ、ひふっ……!」
救われたような顔で受け取った水を一気に飲み干すアーシャ……しかし、それこそは彼女の義妹の罠。
「ひひゃぁああああああああああああ!?」
甲高い悲鳴を遺し、アーシャは力尽きた……ぶっ倒れて逃れ得ぬ辛さに悶える彼女の姿を見下ろし、金髪の少女がゾクゾクしながら興奮しているような気もするが、きっと気のせい。
「あぁ、うん。辛味は味じゃ無くて痛覚だからね……辛い物を食べた時にお水なんか飲んだら、傷口に高圧水流を当てたみたいな事になるんじゃないかな……」
無惨な末路を辿ってしまったアーシャを見送った重吾は、改めて敵さんに視線を向けると。
「しかしどうしたものかな……相手が何言ってるかわからない」
むしろ、ネタ依頼に出てくるような敵さんの思想を理解できると思ってるなら、お前は相当ヤバい領域に足を突っ込んでいると思うよ?
「動機とか考え方がこちらには許容出来ないヴィランは幾らでもいたけど、ここまで本格的に主張ともしもの時の用意が噛み合ってないのは……こう、説得とか反論の糸口って、何?」
考え込んでしまった重吾の横から、スノードロップが結里花の背中を押して最前線に押し出していく。
「ここはオネエサマ。可愛い可愛い妹ヲ守る場面デスヨー。無駄にキレッキレな暴……ジャナイ、棒術の出番デスヨー。ワタシはバフを入レマスノデ、ホラ、頑張ってネー」
「えっ、今回このまま巻き込まれるの?ったく、しゃーないわね……それはそれとして、愚妹、今なんて言いかけた?」
「な、ナニモイッテナイヨー?」
肩越しに向けられる鋭い眼光から目を逸らすスノードロップに、結里花はため息をつきながら。
「っていうか、私はあんたらと違って変な力ないんだからね。そこんとこよろしく。ただの公立高校に通うJKに何ができるっつーんだか」
などと言いつつ、鞄から三本の棒を取り出すと、その端を重ねてクルクル……噛み合わせて一本の長い棒に組み立てる。軽く振るって使用に問題ない事を確かめる結里花の後ろで、スノードロップは地面に魔剣を突き立て、その柄のマイクをチェックしながらドス黒い笑みを浮かべた。
「フッフッフ。ブラクマの馬鹿共ヨ。ワタシが日頃味わってイル、オネエサマのオソロシサを存分に味ワウとイイネ……」
「そもそもあんたが余計な事をしなければ、私もその恐ろしさとやらを見せる必要はないのだけれど?」
「アーアー、マイクテス、マイクテス!」
戦闘中にお説教されそうになったスノードロップがごまかしながら歌い始めれば、結里花を非戦闘員と見た怪人が集まって来る。
「どうやらこいつは能力者ではないらしい」
「しかも親戚だとか」
「ついでに体も丈夫、と……」
チェックリストにマークをつけていく怪人達はグッと拳を握り。
「つまり人質にしてもセーフ!行くぞオラァ!!」
とまぁ、わっかりやすく四方八方から突っ込んでったもんだから、棒を地面に真っ直ぐ叩きつけて直上に跳んだ結里花に躱されて、お互いの頭を打ちつけてしまう。跳ね返って尻もちをついたところで、宙で身を捻り、棒をぶん回した結里花から脳天への一撃。一人ダウンしたところで着地した彼女は横薙ぎに棒を振るって敵さんの顔面をスパァン!脳震盪を起こして目を回せば、鳩尾目掛けて刺突。体を丸めて悶絶している間にカレールーをぶんどると、呻いている口にズボッ。
「ほぁああああ!?」
「自分が用意したんだから責任取って自分で食べるのは当然よね」
ビクンビクンしながら白目剥いてる敵さんにため息をつくと、棒をぶん回して軽く演舞。自分の体が軽い事に一つ頷く。
「いやぁ、よく分からんが体のキレが良いわね。愚妹の歌を聞いていると」
ソウデショウソウデショウ!と歌いながら得意げな顔になるスノードロップだったが。
「まあ、危なくなったら愚妹シールドを使えばいいし、気楽っちゃ気楽ね」
「ホワッツ!?」
全力でサポートしているのに、扱いがいつもと変わらないか、下手すると悪化していることに衝撃を受けてしまっていた。これが日頃の行いってものだろうか……。
「くっ、なんて連中だ……ここは一先ず、体勢を立て直し……」
敵さんがイカレたメンバーに冷や汗を流しながら撤退を試みた瞬間である。視界がグリンと大回転。
「おわーっ!?」
思いっきり転倒した視界で頷いていたのは、重吾。
「バレンタインカレーを広めても駄目となると……後はもう、蹴り転がすしかないよね」
「こ、この、何をす……いってぇ!?」
起き上がった瞬間にローキック。両手をついて慎重に、警戒しながら立ち上がろうとした時にもローキック。一旦地面を転がってちょっと離れてから立ったとしても長い脚から放たれるローキック。
「執拗に脛を狙いすぎじゃないか!?」
「いやほら、僕、このガタイだから自ずと下段攻撃が一番楽だし、過剰な暴力に走らずに転倒を狙うなら脚が一番かなって……後はほら、他の人が何とかしてくれるから……」
と、散々ローキックを連打して敵さんを転ばせていた重吾が示した先には。
「激辛ソースの悠疾!」
「暴力……じゃなくて、棒術のオネエサマ!」
「オイコラ愚妹、今なんつった?」
「残酷拷問系カレールーのミンシュトア!」
「顔面カレールーおろしの紫!」
「「「「さぁ、どんな末路を辿りたい!?」」」」
「シレッと私を物騒な四天王みたいなポジに詰め込むんじゃないわよ」
「うわ……うわぁ……!?」
結里花だけ呆れ顔だったが、他三名の殺意ガンギマリな顔を前に、敵さんはそれはもう恐怖したそうです。
第3章 ボス戦 『ダンジョンプラグマ』

カレールーによる地獄絵図が展開されてしまったが、工作員が全滅した辺りで、カレーが煮込まれていた大鍋からグツグツグツグツ……黒フードの簒奪者が湧き出てくる。
「ダーンジョンジョンジョン!物の見事に罠にかかってくれたダンジョンね!!」
敵さんが高笑いすると同時に、そこら中にとっ散らかったカレールーが増殖、商店街を侵食してカレーの洞窟に作り変えてしまった。
「お前達は工作員を倒したつもりかもしれないが、実際には全身と周囲にカレールーの粒子を浴びさせられていただけでダンジョン!そしてこの戦場はカレーダンジョンと化したダンジョン……お前達を片付けてから、ゆっくりと作戦を進行してやるのでダンジョン!!」
というわけで何か知らんうちに、物凄く不利な戦場が出来上がってしまった!
※戦場はカレーのダンジョンと化しており、床から天井まで、流動するカレーでできた洞窟のような環境です。単純に足場が悪い事もそうですが、そこにいるだけで「カレーが食べたい」という欲求に襲われ続けますが、食ったら悲惨な事になる辛さです。いかにしてカレーの誘惑に耐えながら戦うのかが重要そうです。
なお、次回執筆は十九日の夕方以降の予定。十六時くらいまでにプレくれると嬉しいな!
「あーはいはい、どうせわたしはネタキャラ扱いですよ」
すっかりやさぐれてしまったミンシュトアはダンジョンの隅っこに生えてたラーメン屋の屋台で突っ伏し、カレー餃子をつついて遊びながらジョッキに入ったカレーカラーのなんかブクブク言ってる物騒な液体をグイッと一飲み。
「まったく、飲まなきゃやってられませんよ……おかわり!」
空になったジョッキに錬金術に使った大釜から這い出して来た、流動性を失い人の形を模した疑似生物がフラスコの栓を抜き、生成された薬物を注ぐ。泡立ちながらスパイスの香りを振りまくそれは、カレールーと色んな物を混ぜて作っていた例の錬金薬らしい。それをまたゴッキュゴッキュやって飲み干したミンシュトアは、派手に空ジョッキを屋台に叩きつけ。
「薬!飲まずにはいられないッ!!」
こんなに酷い事になるくらいなら、こんなゴミみたいな依頼に来なければよかったろうに……。
「ゴミみたいな依頼だからこそ、大抵の事は何やっても通る楽な案件だって聞いてたんですもん!装備を充実させたいわたしとしては、楽に星座の導きが得られる依頼とあったらとりあえず突っ込んでみたかったんですもん!こんな雑な扱いをされるなんて思ってなかったんですもん!!」
わっと泣き出してしまう、人生にくたびれたOLみたいな事になってるミンシュトア……雰囲気酔いしてないか、あいつ?
「……おい、カレーを踏ますな……」
とまぁ、恐らく本当はネタ枠ではなかったのであろう為に悲惨な事になってる能力者がいる一方で、ブチ切れてる奴もいるわけで。
「カレーダンジョンを作るなら最低限全部美味しく食べられるようにしておけ。どうやら食べ物を粗末にする方は、物理的に地獄に叩き落とされるということを身を持って知りたいらしいな……」
完全にプッツンしている悠疾に、敵さんことダンジョンプラグマは独特の高笑いをしながら。
「もちろん、踏んじゃった所も不思議と食べられる超ご都合主義衛生管理が施されたダンジョンだから安心するダンジョン!というわけで……」
口角の上がる簒奪者に、視線を滑らせる悠疾。そこかしこからダンジョンが膨れ上がるようにして、カレーダンジョン怪人が湧き出している……!
「たっぷり、存分にカレーを味わうといいダンジョン!」
「なるほど、そういうことなら……」
手にとんかつやら温泉卵やらコロッケやら、カレーの味変(?)に使うのであろうトッピングを装備したカレーのバケモンに対して、悠疾は激辛ソースを構えて青筋浮かべながら爽やかに微笑み。
「ボスがカレーダンジョンを作る位だし、カレーは好きだよな、ん?」
ぶつかり合うソースとトッピング。激辛と揚げ物がカレーと混ざり合い、チキンカツレツスパイシーサルサソースカレー風味を錬成するという新手の錬金術の紛い物みたいな調理対決している上空にて。
「はー……まだ舌がヒリヒリするわ、よくもやってくれたわねっ」
思いっきり自爆っていうか、フレンドリーファイアならぬシスターファイアされてKO状態だったアーシャが復帰。足場までカレー塗れになった為に翼を広げ、滞空する彼女は逆恨みも甚だしい視線を敵さんに向ける。
「癪だけど、あんな目に遭った後でもこのカレー、匂いはいいのよね……とっても香しい匂いで美味しそう……でも食べたらさっきの二の舞よね」
食欲を刺激するスパイスの香りと、現在進行形で舌を刺す痛み。二つの狭間で揺れているために何とか耐えられているアーシャは小さく唸り。
「真竜になれば平気と言いたいけど、食べさせられたら中からの影響なのでって、辛さで七転八倒する未来が星詠みでなくても見えるわ。辛さでブレスはさっきやったし」
同じネタの使い回しはできれば避けたいアーシャ……普通はここで天丼(同じネタをぶつけて笑いを重ねる事らしい)をするもんだろうが、新鮮なネタを狙いに行く辺り、コイツも頭ネタキャラになってきてるな……。
「……何かしら、今、凄く不名誉な評価をされた気がするわ」
ぶるっと身震いして自分の体を抱くアーシャ。ここで敵さんを見つめて。
「カレーが美味しそうに見えるからいけないのよね」ひゅーん
「ダンジョン?」ガシッ
「つまり食べられないって事が分かれば耐えられるかしら」バッサバッサ
猛禽類の狩猟よろしく、急降下したアーシャは尻尾を振るって敵さんの足首を絡めとると、逆さ吊りにして低空飛行。敵さんの顔面をカレーに沈めて飛び回る暴挙に出た!
「ダジョダジョダジョダジョ!?」
「つまり、相手をカレー地獄に叩き落して食べたらこうなるって事を確認して我慢するしかないわ」
市中ならぬ咖喱引き回しの刑に遭う敵さんがそれはもう凄い勢いでカレーを詰め込まれて、あっという間に膨れ上がっていくと。
「カレーのダンジョンですか。さっきカレー食べたばかりですから、さすがにこれ以上カレー食べたくないですね。体がカレー色になってしまいそうです」
結構えげつない拷問のような光景のはずなのだが、強制摂食状態の敵さんを眺めて、「よく食べますね……」みたいな顔で口元を隠す摩那。全身カレー塗れになっていく怪人を見て、自分の服をチラチラと左右からチェック。
「それにこのままだと全身カレーまみれになるし、なにより髪にカレーが付くのは勘弁願いたいです」
というわけで傘を広げればふわり、摩那の体が宙へと浮かぶ。風もないのにふわふわ揺れながら、宙ぶらりんになった摩那は恨めしそうに匂い立つカレーと、食べた分だけ火を吹くダンジョンプラグマを睨み。
「カレーの誘惑が強い……呪詛や毒への耐性で耐えられませんかね……」
カレーは呪詛でも毒でもなくカレーであるため、カレー耐性がないと耐えられませんね。
「そんな技能ありましたっけ!?」
ツッコミを入れた拍子に空腹感に駆られて、悠疾と怪人のバトルで生み出されたスパイシーカレーピザトーストに目が引っ張られる摩那……。
「はっ!いけないいけない、アレを食べたらあんなことに……!」
と、引きずられながら火を吹いていた敵さんを改めて目視すると。
「ダーンジョンジョンジョン!お前等もキーマカレーにしてやるダンジョン!!」
めっちゃ巨大化してた。
「えぇーっ!?」
デカすぎてカレーダンジョンから上半身だけが生えてる、どっかのボス戦みたいな事になってる怪人を前に、アーシャが頬をポリポリ。
「ごめん、カレー食べさせてたらカレーパワーとか吸ってでっかくなったみたい」
「そんなスポンジみたいな展開ありですか!?」
などと、開いた口が塞がらない……と、カレーを突っ込まれそうなので慌てて口を塞ぐ摩那の下。重吾が口の端を引くつかせながら。
「巨大化か、悪くないんじゃないかな?俺相手じゃなければ」
……なんか、キャラ変わってない?
『説明しよう!』
うわっ、誰だお前!?
『重吾は激怒した』
しかも勝手に話を進めてやがる!?
「さて、そこのバイトテロ野郎、何してくれてるかな?」
とはいえ実際に怒ってはいるらしい重吾はネクタイを緩めると拳を鳴らし、こめかみに血管を浮きだたせて痙攣させながらコキリ、首を傾け真正面から見下す。うーん、外見が完全にヤのつく怖いおじさんである。
「その鍋も中身も、うちの商売道具だが、何してくれてる?」
『説明しよう!重吾の怒りが天元突破した時、スーツの挿し色はイエローへと移り、重吾がかつて暴力の権化っぽく邪悪【ヤンチャ】していた頃が顔を覗かせるのだ』
やんちゃで済ませていいレベルか?顔がもうカタギのそれじゃねぇぞ?まぁ、ネタ依頼だし、過去に関わる事は基本スルーで行こうか……って、重吾?なんか、デカくなってない?気のせい?気のせいじゃないよね?風船よろしくドンドン大きくなってるよね!?
『説明しよう!重吾は巨大ロボをステゴロでスクラップにする。ゲイジーシューターにより圧縮高温酸素と炸薬による第二宇宙速度を凌駕した蹴りと用意された壁に壁打ちされ』
うるっせぇ!
『ぐぁー!?』
謎の文字列を打ち消したところで重吾の巨大化は止まらない……ゆーても敵さんの半分くらいのサイズだろうか。とはいえ、あっちはダンジョンの天井に阻まれて上半身しかないから、ちょうど真正面から対峙できる大きさである。
「ダーンジョンジョンジョン!ただ大きくなっただけで勝てると思っ……」
「オラァ!」
「てゅっふ!?」
えげつない速度で放たれるトーキックが敵さんのお腹を襲う!!
「ちょ、さっきあんなに無理やり食べさせておいてお腹を狙うのは卑怯でダンジョン!?」
「うるせぇ!!」
「ダンッジョン!?」
さっきもこんなことやってた気がするが、執拗なまでのローキックで腹パンならぬ腹キックを繰り返す重吾。
「飯屋の調理器具と料理に手ェ出すたぁどういう了見だ?あァ!?」
「ちょ、痛、やめ……こんな展開、その手の趣味がある人しか喜ばないダンジョンよ!?」
途中から前蹴りも加えて、文字通り敵さんを足蹴にする重吾……なんかもう、どっちが悪党なのか分からないヒッドイ構図である。
「今回は私、最後まで巻き込まれるのね」
大怪獣バトル(という名の状況だけ見たらただのイジメ現場)の傍ら、戦線離脱する前にカレーに呑み込まれてダンジョンの内側に残ってしまった結里花は、改めてため息をつくと半眼ジト目で能力者の面々を眺め。
「ってか、カオスすぎるんだけど。ツッコミ追いつかないんだけど」
うちの現場でツッコミが間に合ってた事ってほぼなくない?消耗品だからか、ツッコミ役の奴からいなくなっていくしな……。
「カレーダンジョンね。ダンジョンなんて珍シクも何ともナイヨ」
スプーンでカレーの壁をつついて遊んでいたスノードロップの横から、とててて……。
「私、私立小学校に通うJS!よろしくお願いします♪」
さっきまで敵さんの顔面でカレールーおろししてた紫が、何もなかったかのような顔に返り血ならぬ返りカレールーくっつけて結里花に向かって、にぱー。
「一般人ぽいお姉さんが使う愚妹シールドって私にも使えます?」
「HAHAHA!どっちかって言うと、お姉ちゃんシールドデース!」
「まぁ、愚妹なら死んでもその内帰って来るからいいんじゃない?」
「オネエサマ!?」
スノードロップが笑ってたら結里花からとんでもないコメントが飛んできて、ズガーン!するスノードロップだが。
「あ、年齢が足りない?高校生より若いですからね〜……おっと、FFは敵を盾にするのが基本ですよ♪」
などと、年齢をネタにして結里花を煽りながら敵の陰に回り込もうとする紫だが。
「なんとも可愛らしい悪戯ね……」
「あれ!?」
怒るどころか微笑みを浮かべる結里花に、紫の方がビクッ!?
「日頃愚妹にかけられている迷惑に比べれば、この程度の口の悪さだなんて……」
「オネエサマ?なんでバカにされているハズなのに、いつもより穏やかな顔してるんデスカ!?」
普段のスノードロップは一体どんな迷惑をかけているのだろうか……。
「そ、それにしても、一瞬で商店街をプロジェクトマッピングして、映像だけかと思わせればインドカレーの食べ放題も用意するなんて」
想定外の空振りをくらった紫は気を取り直して、戦場を見回す。
「ただマジシャンとしての技術は高いけどダンジョンダンジョンとか語尾にするのはユーモアのセンスないわー……まぁこれがインドの資本力とIT技術、凄いのは確かね……」
これは……どっちだ?マジで怪人をマジシャンだと思っているのか……?
「ダン……ジョン……?」
思いっきり蹴り続けられて、お腹の中身が上がってきている敵さんも困惑してしまっている。実はこの幼女能力者じゃな……あれ、マジで能力者じゃねぇぞコイツ!?
「ユーモアのセンスが足を引っ張らなければ 田製菓以外も乗っ取られたかもしれないわね。まぁだから私は越 製菓を応援するけど!」
だから戦闘系のアレコレじゃなくて社会的な方向性から攻撃するのはやめろって言ってるだろう!?下手すると怪人じゃなくて『こっち』に飛び火すんだろうがよ!?
「ンー……オネエサマが居るし、アレやるか。オネエサマには知ラセてナイケド、マア、平気デショ。オネエサマ戦闘民族【シングウジ家】出身ダモン」
スノードロップがギター立てながら、シレッと物騒な事言ってない?
「ソレジャア、特別なナンバーヲ歌イマス。この歌はオネエサマが主役。Are you ready?準備デキテなくテモ歌イマース」
「へ?」
急に話を振られた結里花の反応が遅れるも、聞こえてくる曲を聞いて片眉をあげた。
「新曲……いや、あんたの新曲聞けるのは嬉しいけど。私が主役ってどういう事だ愚妹!」
説明を要求するも既に歌い始めたスノードロップは答えてくれない。
「それにこの曲……いつものロックじゃない。神楽舞?」
首を傾げている間に、ギターの音色に混ざって聞こえる鈴の音が響く度に、結里花は光に包まれていくと。
「何だこの姿。説明は……あー……何となく分かったわ」
いつの間にやら白衣に緋袴を重ねた巫女服姿になっていた結里花に、そっと稲妻を編んだ羽衣がかけられた。棒の先端で地面を叩けばカレーが蠢き、怪人を中心にして渦を描く。
「あばばばばばばば!?」
渦潮ならぬ渦カレーに絞り込まれ、体を捻じりながら動きを封じられてしまう。そこ目掛けて、ばちゃちゃちゃ……素早く距離を詰めた結里花が打撃を叩き込みながら螺旋型に衝撃を叩き込み渦の中へと沈めていくと、強引に圧縮されてパンッパンに膨れ上がった敵さんを思いっきり打ち上げ、片手持ちに切り替えた棒を後方へと大きく引いた。
「こんなものかしらね」
ゴッ……打ち出された一撃に怪人の巨躯が吹き飛ばされると、その後方からカレーで構成された巨大な蛇がかぷっ……パァン!!
(ぶっつけ本番ナノニ能力使イこなしテル……怖ッ。本当に戦闘民族ナ姉ダー……)
蛇の牙で体に穴が開き、カレーの香りと空気(?)が抜けてダンジョン内で暴れ回りながら吹き飛んでいく怪人を眺めながら、自分で加護をかけておいてドン引きするスノードロップ。実に勝手な義妹である。
「え、コレ、ワタシが悪いんデスカ!?」
スノードロップがショックを受けている間に、べちゃっ。落ちてきた怪人さんが元のサイズでピクピクしていると、影が落ちる。
「こ、今度は何でダンジョン……?」
「お注射Death☆」
両目をまん丸に見開いてついでに瞳孔も全開になり、ハイライトが『探さないでください』の置手紙を残した、毒沼みたいな双眸のミンシュトア。その手には巨大な注射器、シリンジには例のカレーっぽい謎のお薬。
「それ何でダンジョン!?」
「こ、これはただのビタミン剤じゃ……」
「どう見てもビタミンの色じゃな……(ブスッ)ダンジョンッ!?」
問答無用で背中から刺された怪人に、ぢぅっと怪しげなお薬を注入されると、ぷくーっとまん丸に膨れ上がる敵さんが、ポヨン……ポヨン……デッカイボールのように跳ねていく。
「このままダンジョンに飲まれてカレーになるのも嫌ですし、そろそろ脱出しましょうか……」
ふわふわ浮いていた摩那が傘の柄からヌルッと抜き放った鮪包丁を振るう。斬撃の剣閃は真っ直ぐ飛んで、敵さんのデコにスパァン!命中すると同時に風船状態だった敵さんはどんどん膨らんで……。
「せ、せめて普通に倒されたかったダンジョォオオオン!!」
チュドーン!!
「最後の最後で爆発オチかー……」
キャンプ用の小さい鍋でレトルトカレー温めてた悠疾は、敵が爆散すると同時に消えていくカレーダンジョンを見送りながら、パックご飯にカレーをかけながら遠い目をして、一口ぱくり。
「……うん、やはりカレーの辛さは程々が一番だな」
「ふ、ふふ……」
そんな彼の後方で戦闘が終わった途端に、なんか変な声を上げ始めるミンシュトア。
「お薬……お薬……私の錬金薬はカレーなんかよりも素晴らしいものなの……」
カラカラ……カラカラ……空っぽになった錬金釜の中を、お玉でかき混ぜるミンシュトア。カレーに対抗する為に自身に催眠をかけたらしい彼女は、自身の錬金薬のジャンキーになってしまったようだ……まぁ、そのうち治るやろ!
「あれ、放置でいいのか……?」
そっと距離を取る悠疾だが……依頼の後の事は知らん!!