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和牛パワーで元気いっぱい!

#√仙術サイバー #ノベル #夏休み2026 #おたくの子に飯を食わさせろ!

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黄・夜巡

「あー、腹減ったー」
 √仙術サイバー、喫茶店『喫茶ぺとりこ』のカウンターに突っ伏して|黄・夜巡《こう・よじゅん》(夕立巡り・h13090)はぐうぐう鳴る腹をなだめていた。
 先ほどまではお昼のピークタイム、『喫茶ぺとりこ』の軽食目当てに賑わっていた店内も今はがらんとしている。
「ちょうど暇になったし、お昼ご飯食べに行きなよ」
 『喫茶ぺとりこ』の店主の娘、虹子がそう声をかけてくる。
「おー、何か食ってくるわー」
 声をかけられたならその厚意に甘えないわけにはいかない。店主に頼んで賄いのサンドイッチを作ってもらうのもいいが、なんとなく違うものが食べたい気分で、夜巡は「じゃーちょっと出かけてくる」と立ち上がり、店を出た。
 名古屋Vに位置する、『喫茶ぺとりこ』も含めた商店街。
 もはや庭も同然の商店街をぶらぶらと歩きながら夜巡は何を食べようかと考える。
「外食もたまにいいだろ。頑張ってるんで自分へのご褒美ってヤツ」
 『喫茶ぺとりこ』の裏の顔、「事前的な何でも屋」の活動は楽しいが結構疲れる。その分名古屋Vの治安が維持されていると考えれば頑張る気にはなるが、たまには普段あまり食べないようなものを食べて元気を付けたい。
 ――と思っているところで、夜巡の視線が一軒の店を捉える。
「……焼肉」
 その店はカウンターを仕切った一人用焼肉の店。しかも食べ放題メニューもあると『喫茶ぺとりこ』の常連から聞いている。
 普段は「ちょっと高そう」とついつい避けていたが、ちょうど給料日直後で懐は温かい。それに肉は元気が出る。
 そう思った夜巡の決断は早かった。
 とはいえ、値段がべらぼうに高いと怖いのでちら、と軒先のメニュー看板を確認する。
「……意外と安いな」
 国産和牛一頭買いによる低価格を強調した看板。
「よさそうな店じゃん。ここにすっか。すんませーん、おじゃましまーす、食べ盛りひとりでーす」
 お財布にも優しい、と判断した次の瞬間にはもう店の中に入っていた。
 店員の案内で仕切られたカウンターに入ると、目の前に焼肉用のコンロが置いてある。
「食べ放題お願いします! あとドリンクバーも!」
 サクッと注文、店員がカウンターのタブレットの使い方を教えてくれる。
 肉はタブレットから好きなものを選ぶと店員が持ってきてくれる、とのことで夜巡はぽちぽちとタブレットを操作して気になる肉を選び始めた。
「カルビと、ハラミと、ロースにホルモン! 意外と種類あるな。あ、サンチュも頼もう」
 自分が知っている肉を一通り注文して少し待つと、カウンターに肉の入った皿が並べられる。
「おーし、焼くぞー!」
 網に肉を置く。
 高火力の炎で炙られた肉から脂が滲み、ぽたりと垂れるとひときわ大きな炎がぶわりと上がる。
 トングで何度かひっくり返し、程よい色が付いたところで辛口のたれを絡ませ、サンチュで包む。
「いただきまーす!」
 口に運ぶとこんがりとした肉の旨味が口いっぱいに広がって心がほわん……と舞い上がってしまう。
 肉に絡んだ辛口のたれもコチュジャンをベースにしているのだろうか。辛みの後から甘味が染み渡り、白米が欲しくなってくる。
 慌ててタブレットを操作して白米をカートに入れる。
 注文ボタンをタップしようとして、夜巡の手が止まった。
「……期間限定、飛騨牛朴葉味噌……?」
 食べ放題メニューではなく、追加料金を払って頼むタイプのメニューだったが、タブレットに表示された写真に夜巡の目が釘付けになる。
 サシの入った赤身肉が大きな朴葉の上に乗せられている。他にきのこやししとうも乗せられており、彩も鮮やか。
 ごくり、と夜巡の喉が鳴る。
 これを注文すれば確実に予算オーバーする。しかし、限定メニュー。しかも五大和牛の一つ、飛騨牛。
 迷ったのは一瞬だった。
「ええい、毒喰らわば皿まで!」
 思い切ってタップし、カートに入れ、注文ボタンをタップする。
 少し待つと、先に白米が来たので他の肉を白米で楽しんでいると、本命の飛騨牛朴葉味噌が届いた。
「うお……」
 室温で溶けかけ、艶とテカリを出す飛騨牛。その下に微塵切りにした玉ねぎと、味噌だれが敷かれている。
 コンロの肉を一通り食べ終え、朴葉ごと飛騨牛をコンロに置く。
 少し待つと、熱せられた味噌がぐつぐつと煮え、飛騨牛にも火が通ってきた。
 色が完全に変わったところで味噌だれと玉ねぎのみじん切りを肉で包み、口に運ぶ。
「んー!!!!」
 心はもう完全に天に上る心地。
 飛騨牛の脂がたっぷり絡んだ味噌だれは甘辛い。飛騨牛は口の中でとろりととろける。
「や、やべえ……」
 先ほどまで食べていた国産和牛と全然違う。脂の甘味も、肉の柔らかさも、全て。
 これがブランド和牛……と肉の底力を見せつけられ、夜巡は夢中で飛騨牛を食べる。
 一口食べるごとに元気メーターがぎゅんぎゅん上がっていくのはやはりブランド和牛パワー。いや、先ほどの肉も元気が出ていたが、その比ではない。
 あっという間に朴葉に残っていた味噌も玉ねぎも野菜も全て食べ、夜巡はふぅ……と満足そうに息を吐いた。
「これだけで幸せになるわ……」
 とは言ったものの、食べ放題タイムはまだ終わっていない。夜巡もまだまだ食べ盛りのお年頃。
 ここからはしっかり食べて元気チャージ! と、食べ放題メニューからさらに肉を頼み、焼いては食べる。
 そうすること制限時間いっぱいの90分。
 カウンターに肉皿タワーを築き上げた夜巡は満腹になった腹をぽんぽんと叩いた。
「腹いっぱい! 動きたくねー! 動くが! あー、美味かったなあ」
 普段なら食べない飛騨牛も食べた。デザートにソフトクリームも食べた。
 ソフトクリームで口直ししたはずだが、口の中はまだ肉の香りが残っている。
 元気いっぱいになり、夜巡はレジに向かって会計をする。
 支払った金額は見なかったことにする。
 それでも、支払った金額以上の満足感で夜巡は店を出た。
「いやー、うまかったなー! また食べたいな!」
 こんな商店街にこんなうまい店があったなんて、と思いながら、夜巡は上機嫌で『喫茶ぺとりこ』に戻るのだった。

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