シナリオ

悪の組織の女幹部の華麗な転身、ではなく

#√マスクド・ヒーロー #デザイアモンスター #魔法少女現象

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「おーっほっほっほっほっほっほ、悪の組織の女幹部のコスプレ衣装のわたくしがニンゲンになるなんて世界は随分とふざけていらっしゃるのね」
 高笑いを上げるのはとある学生寮の一室にしまわれていたコスプレ衣装だったモノ。ひどく露出過多で下に肌色の肌着を着用しないと色々と危ないとまで持ち主の友人に言われていたらしいソレは、この日|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》によってなんと魔法少女になってしまったのだった。

「……ということが√マスクド・ヒーローの世界で起こるようでして」
 この間のバニースーツに続きこれですかと戸桜・リデル(人間(√EDEN)のルートブレイカー・h00081)は遠い目をしていた。
「あ、失礼しました。説明に戻りますね? 魔法少女が覚醒すると、その心を狙う怪物『デザイアモンスター』が現れ魔法少女に襲い掛かって来るんですよね」
 この化け物から魔法少女になってしまった子供達を守るために造られたメカ「ロボトロン」達が本来は戦ってくれていたのだが|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》が大量に起こったために手が回らなくなっているらしい。
「加えて今回のケースでは魔法少女になったのはコスプレ衣装ですからね」
 守護の対象外と言われてもおかしくはない訳で。
「皆さんにはこのコスプレ衣装もとい魔法少女を守るべく衣装のある学生寮の一室に赴いて欲しいんです」
 その時点では|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》は起こる前の為、まずは衣装を探す必要があるのだとか。
「衣装のある部屋と該当する部屋の鍵の隠し場所は教えておきますし、夏休みってこともあって学生寮は無人です」
 その後デザイアモンスターの襲撃があると思われるが、人的被害の出る恐れはない。
「ただ、件の魔法少女は既に強力な魔法の力を獲得していてやる気はあるものの戦い方を知りません」
 逃がすにせよ教えて手伝わせるにせよ、見た感じまだ√能力者ではないようなので、可能な限り魔法少女が傷つかないよう守ってあげる必要があるだろう。
「ちなみに魔法少女が獲得している魔法ですが闇の蔦を作り出して自由に操ると言ったもののようです」
 敵を拘束し締め付けたり鞭のように扱って打ち据えたりなどが主な活用方法だが触れられるため、建物同士の間に闇の蔦で橋をかけて向こう側に渡ったり、敵の武器や囚われた人質を絡め捕って奪うなど色々と応用が効きそうな魔法ではある。
「首尾よく魔法少女を守り切れたら……そうですね、学生寮の側に飲み物を提供するお店があるようなので魔法少女の今後の身の振り方などの相談に乗ってあげても良いと思います」
 尚、当然ながらこの日までコスプレ衣装だった魔法少女には名前が存在しない。君たちで名づけてあげるのもいいかもしれない。
「では魔法少女のことはよろしくお願いしますね」
 そう言ってリデルは君たちに頭を下げた。

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第1章 日常 『そんな衣装がここに』


ナマエハ・マダナイ

「さぁ、依頼の子を探してみようかしら……でも、目のやり場に困る」
 動き出そうとしてナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)が目を逸らしたのは隠し場所から鍵を確保してドアを開け件の衣装がある部屋に踏み込んだ後のこと。|魔法少女現象《プエラマギカ・フェノメノン》の発生自体はまだなので、救出対象はまだ悪の組織の女幹部のコスプレ衣装のままの筈ではあるが、ひどく露出過多で下に肌色の肌着を着用しないと色々と危ないとまで言われた品だ。部屋に置かれていた他の衣装単品でも色々凄かったのであろう。
「さて、魔法少女を見つけたらお話を聞いてみようかしら」
 魔法少女部分には疑問符を付けつつ呟いたナマエハはおもむろにクローゼットへ手を伸ばした。
「お、マダナイ。今回はマシンガントークなしか! えらい」
 そんなナマエハに称賛の声を送った誰かが居た訳ではなく、ここまでは一人二役での独り言。無人の学生寮、部屋の主が戻ってくることもない夏休みの静まり返った部屋は件の衣装が魔法少女にでもならない限り、孤独で静かすぎたのだ。追加で√能力者が来る可能性は残されていたけれども。
「違います。こんな悪の女幹部みたいな衣装と一緒に全身黒タイツの男がいたら職質待ったなしだからね?」
 ただ、あくまでもそれは可能性の話。開けられたクローゼットの中を示してナマエハは二人目の自分の言葉を否定するが、これ職質と言うか空き巣の現行犯で逮捕なのではなかろうか、状況的にも。
「忘れる力が働いていて良かったと思う」
 うんうん頷くナマエハ的には地の文のツッコミはスルーなのだろう。
「女幹部さんからはそうねー。魔法少女になったらどうしてそうなったのか覚えてるとか聞いたりして、デザイアモンスターというのが狙ってくるということも話してみようかしら。お話聞いてくれるか不安だけれど案外素直な子かもしれないし」
 まだ見ぬ、というか人型で言葉を交わせぬ衣装について思いを馳せながらナマエハは自分の荷物を開き。
「とりあえず、今の内に羽織るものでも出してあげよう」
 ごそごそとやってから視線に気づいたようにクローゼットの方を振り返る。
「か、勘違いしないでよね! 保身のためにやってるだけだからね!」
 そんなツンデレ風の否定にも衣装は何も話さない。だが、覚醒は間もなくの筈だった。

普川・庸

「ヒーローな世界、はサイコーとして……魔法少女? それも服が?? しかも悪のかんぶ????????」
 足を踏み入れた√に関しては感嘆符すらつきそうな勢いで歓迎しつつも、星詠みの話す状況に関してとなると、|普川・庸《ふかわ・よう》(新参者(ルーキー)・h13644)は背景に宇宙を浮かべた猫のような表情をせざるを得なかった。
「剣そのもののヒーロー、って作品もあったし。似たようなものだ」
 √能力者と発覚して数日のヒーロー志望の少年であろうと他の√能力者であろうと困惑なり混乱なりしそうなこの状況を庸が最終的にそう言った形で飲み込んだのはつい今しがた。
「でも戦とう員といっしょにかんぶを助けるって……俺がやってるのって正義のためなんだよね?」
 万が一にも一般人が部屋へ来た場合の対応に出入り口付近で待機する庸はぼやく。学生寮のドアは何も答えてはくれず、耳を澄ましても聞こえてくるのはまだ蝉の声ぐらいだった。いや、後方に意識を向ければ件の衣装を探しに部屋に入った味方の声が聞こえたかもしれないが。
「うーん」
 近年の特撮では「露出の多い女幹部」は出てこないので庸には悪の組織の女幹部のコスプレ衣装がどのようなモノかわからない。ただ、対面までにそう時間はかからなかった。
「おーっほっほっほっほっほっほ、悪の組織の女幹部のコスプレ衣装のわたくしがニンゲンになるなん」
 高笑いに続く言葉が途中で途切れたのは部屋の中に居る筈の味方を発見したから、とかなのだろう。
「あ、空き巣ですわー?!」
 響き渡る少女の声。ドタバタと走り回る物音が近づいて来て。
「きゃあ」
「わぷっ」
 外に飛び出そうとした魔法少女と庸は部屋の入り口でぶつかった。

第2章 集団戦 『デザイアモンスター』


「「デザァ」」
 その後、なんやかんやあって誤解が解けたり、どういう経緯で現状に至ったかを|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》に聞き出したりデザイアモンスターという化け物が襲ってくることを説明したりと部屋の中では色々終えた後のことだった。
 学生寮の外では件の部屋へ魔法少女を狙うデザイアモンスターたちが現れ、じりじりと近寄り始めていたのだ。
ナマエハ・マダナイ
普川・庸

「ご、誤解が解けて良かった。家探ししていたけど泥棒じゃないからね?」
 胸をなでおろしつつもナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)が|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》に念を押す一方で、物音を耳にした|普川・庸《ふかわ・よう》(新参者(ルーキー)・h13644)はドアスコープを覗き込んで思わず一瞬固まっていた。
「うおお、来てるっす来てるっす! 思ったよりも数が多いっす!」
 部屋の出入り口で待機していた位置関係上、庸が迫りくるデザイアモンスターの第一発見者となるのは順当な所で。
「安心してね。……めちゃくちゃ警戒されてそうね」
 ナマエハはこの間も何とか魔法少女との関係修復を図っているようだが、聞こえてくる内容を耳にする限り難航しているようなのは庸にもわかった。
「まぁ、フルフェイスメットの全身黒タイツの男が家の中にいたら、そりゃあね。いやらしい目で見ないでほしい? 見てません。もっと過激な服装を見慣れてますんで」
「か、過激?! どういうことですの?!」
 どことなく落ち着いたトーンのナマエハの声と比べて魔法少女の声は裏返りかけていて動揺も顕著で。
「よかったら、何か羽織る? お腹から風邪ひくよ?」
 チラチラ部屋の方を振り返る庸はナマエハの落ち着きっぷりに尊敬のまなざしを向ける。
「す、凄いっす! 俺、まだ自分の戦い方もはっきりわかってなくて戦えないかもって思ってるのに、あの落ち着きよう……」
 もしまだ部屋にいるであろう|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》が戦うそぶりを見せたら制止することさえ考えていた庸の元にそうしてナマエハ当人が現れる。
「そんなこんなでデザイアモンスターの御一行さまのご到着だね」
 庸が玄関から動かなかったことで概ね、察したのだろう。
「うーん、数が多いなぁ。ここはひとつ、ドアの入り口に陣取って踏ん張ろうかしら?」
 そのままドアスコープを覗き込んでブツブツ呟くと、じゃあここは任せたよと言ってナマエハはドアから外に出てゆく。
「え」
「ちょっと本気出そうか? そっちの方が楽しいよね?」
 閉まる玄関の扉の向こうから庸が聞いたのはナマエハのそんな声で。
「おーっほっほっほっほっほ、わたくしを置いてゆくとはどういうおつもりでして?」
 惚けていた庸が知覚したのは、部屋の方から近づいてきた魔法少女の高笑いと声だ。
「だーっ、待つっす! 生まれたばかりの魔法少女がいきなり戦えるわけないっす! やる気出すんじゃないっす! いったん座れっす!」
 そのままナマエハを追いかけて行きかねなかった魔法少女の行く手を塞いで叫ぶと庸にもいくらか冷静さが戻って来て。
「こうですの?」
「今回はサポートをやるべきっす」
 ととりあえず玄関の段差に腰を下ろした|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》へ断言。
「ほかの仲間が戦いやすいように……今回なら、通路を減らすっす。つたでマドやドアをふさぐ、ろう下なら片方の通路をつたで埋め尽くせば、みかたは前から来るテキをたおせばよくなるっす」
「それはつまり――」
「まずは挟み撃ちを防ぐために部屋の窓とかの封鎖っすね」
 真正面からこの部屋に向かって来るデザイアモンスターをナマエハが食い留めていても部屋の窓を突き破って裏手からデザイアモンスターが入って来れば二人でなんとかせねばならず、退路も存在しない。
「おーっほっほっほっほ、つまり頼りになるのはわたくしだけということですわね?」
「釈然としないけどそうっす。外の仲間に今どんな感じかチャット送って……よし、やれることはやったっす!」
 |悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》が台風への備えよろしく窓を闇の蔦で封鎖し始める様子を眺めつつ庸が連絡を入れようとした頃。
「デッザァッ?!」
「さて、ほどほどのところで広いところに戦いの場を移したほうがいいかもね」
 ナマエハはデザイアモンスターを戦闘用大型レンチで殴り倒し、周囲を見回していた。あちらこちらに倒れ伏すデザイアモンスターたちはもう二度と動かず。
「廊下にデザイアモンスターの行列ができてなければだけれど。では、いくぞ! ワッショイ!!」
「「デザァ」」
 嘯きつつ飛び出した先は入場待ちをするデザイアモンスターの行列と言うか団体さんが群れていて。
「そう言う要望には答えなくてもいいと思うんだ、僕は!」
「デザゲッ?!」
 叩き込んだ戦闘用大型レンチにデザイアモンスターは仰け反った。

顕然院・誠

「多少なりともお手伝いできるといいですが」
 呟きつつ件の学生寮に向かった|顕然院・誠《けんぜんいん・まこと》(安心安全清純ごく普通の弄られ系TS魔法少女ベラディーネ(仮)・h13346)が現地にたどり着いた時、戦いは次の局面へ突入していた。
「おーっほっほっほっほっほ! たった一人に戦わせて安穏と見ているなんてこの衣装を着用していた元キャラの名が泣きましてよ!」
 よくわからない理由を引っ提げてドアから出てきた|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》が戦場となって居るドアの外に出てきたのだ。暫くは内側に引きこもってステイしていた筈だが、窓などの封鎖である程度の自信が付いたのか、露出過多の衣装のようにじっとしていられない性格だったのか。
「デザアッ?!」
「っ?!」
「よし、行けましたね。遅ればせながら合流完了です」
 行く手を塞ぐデザイアモンスターを地面からの間欠泉で吹き飛ばし、生じた敵群の隙間から何とか味方が戦っているドアの前へたどり着いた誠は外からやってきた格好の自身へ身構える魔法少女へ慌てて声をかける。
「お、応援に来ました……あ、味方です! 黒っぽい衣装ですけど悪堕ち魔法少女ではなくごく普通の魔法少女です!」
 と。
「そこは疑っていなくてよ? 格好が問題なら、わたくしはアレでしょう?」
 お互い様名絵面であるからか|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》は気まずげに視線を逸らし。
「で、でしたら協力して戦いましょう」
「ふふ、よろしくてよ」
 自身の申し出に笑顔で応じる魔法少女へ誠は先輩として蔦で敵を縛ってもらうよう指示を出す。
「造作もないことですわ! それなりに、慣れてきましたの!」
「「デザッ?!」」
「そぉい!」
 数体のデザイアモンスターが闇の蔦に絡み取られると美味しそうなかき氷を数杯分創造した誠が身動きの取れなくなったデザイアモンスターたちにぶつけてゆく。当然、かき氷は猛毒を帯びたモノである。
「「デッザーッ?!」」
 避けられずにモロに喰らったデザイアモンスターたちは絡み取られたまま身もだえし、やがて息絶え。
「おーっほっほ、次に行きますわよ!」
「そう、その調……」
 高笑いをあげた|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》を褒めようとした次の瞬間、誠は闇の蔦に絡み取られ釣り上げられた。
「ウワァー!」
「デザッ?!」
 悲鳴を上げる誠を殴りつけようとしていたデザイアモンスターが標的を見失い、拳を空振りさせて驚きに動きを止める。
「僕は違いますって! あっ、変なところに食い込んで……んっ」
 闇の蔦に確保された誠の方が後輩に助けられたことへ気づいていない様子なのは、幸か不幸か。
「それ以上はやらせなくてよ!」
「デザアッ?!」
 動きが止まった方のデザイアモンスターも我に返る前に捕縛され。
「デザッ!」
「デザアッ!」
 宙づりにされた弾みで働いた誠の魅了の力によって周囲に居たデザイアモンスターたちは同士討ちを始める。
「は、早く解いて~」
「解いて差し上げてもいいのですけれど」
 デザイアモンスターたちが同士討ちを始めた原因が今の誠の状態にあると気づいたらしい|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》はぶらぶら揺れる誠と同士討ちでデザイアモンスターたちが数を減らしてゆく現状を交互に見て思わず唸ったのだった。

ナマエハ・マダナイ

「君がッ泣くまで殴るのをやめないッ!」
 そのナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)の|赤く光って点滅する武装剣《ソードブレイザー》捌きは太鼓をたたく|撥《ばち》の動きにも似ていた。
「おーっほっほっほっほ! この状況、中にとどまっているよう言われた意味が今更になって理解出来ましてよ」
 いつ戦闘用大型レンチを今の武器に持ち替えたのか、知りうるのはナマエハ当人を除くなら部屋の扉の前で戦い続けて尚生存している|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》と救出のために足を運んでこの場にとどまっている味方だけだろう。約一名、とどまっているというか闇の蔦に絡み取られて吊るされてる気もするが、そこはスルーだった。
「デザベッ?!」
 なぜなら、ナマエハの周囲にはデザイアモンスターの死体がもう両手の指の数で足りない程に転がっているというのにおかわりがまだ出てきていたのだ。
「デザイアモンスターはなんとなく友達になれそうだけれど」
 とするナマエハもそれに無限湧きされるかのように寄ってこられれば不機嫌もなるし、余裕もなかった。
「全然減らない……あァァァんまりだァァアァ」
「デザァ」
 急に号泣し出したナマエハへ近寄ってゆくデザイアモンスター。一見心配しているように見えもするがチャンスだと思って攻撃しに行っただけであろう、たぶん。
「デザビャッ」
「ふう、スッキリした。なんかね、サラリーマン時代の仕事を思い出したよ」
 ナマエハも解っていたのか無造作な一撃でよって来たデザイアモンスターを屠ると気持ち声も晴れやかになって。
「キレそうになる前に号泣して冷静であるように心がけているのだ。いや、号泣してる時点で冷静さを欠いてるだろ? そうね。くすん。だって、終わりがないんだもの」
「デザァ」
 相槌を打つようにデザイアモンスターが鳴いた。たぶん、なんとなく友達になれそうという根拠がこの辺にあるのだろう、きっと。
「そんなこと聞いておりませんわよ?」
 ジト目でツッコミを入れたのはつられていない魔法少女の方で。
「冷静になれ。素数を数えるんだ。心を無にして片付けるしかない。あ、回復はやめてー!」
「ザイヤッ?!」
 相槌を打ったのかと思えばデザイアモンスターが欲望のオーラを増幅させ始めていることに気づいたナマエハは声と共にオーラを増幅させていたデザイアモンスターを斬り伏せ。
「デザイアモンスターを倒す時はね。誰にも邪魔されず自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ」
 参考にしてよいのかしらと|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》が首を傾げる中、更にデザイアモンスターを倒し続けて数分後。
「ええい!」
 最後のデザイアモンスターをナマエハは斬り倒し、ナマエハの言うところの無限湧き状態は解除されたのだった。

第3章 日常 『此処が、あの噂のハウスね!』


「なんでかわかんないんだけど悪の女幹部みたいな格好のサイコブレイドさんが一瞬脳裏に浮かんだんだ」
 と誰かが言った。星詠みも言及していなかったので当然そんなことはなく、学生寮の側にあった飲み物を提供するお店へと足を運び、今はテーブルを囲んでいる訳だが。
「場違いではありませんの?」
 と少し不安がる魔法少女は元に戻ればコスプレ衣装なので魔法少女のままで入店せざるを得なかった訳だが。名前も存在しない|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》と何を話すべきか。カランとテーブルの上、出されたお冷の氷が音を立てた。
ナマエハ・マダナイ
普川・庸
顕然院・誠

「うぅ……こわいよぉ」
 一瞬脳裏にとんでもないものがよぎってしまったナマエハ・マダナイ(強化型試作怪人の戦線工兵・・・戦闘員だよね・h04923)はとてもそのままにはしておけず。
「サイコブレイドっていう人がいるんだけれどね」
 前置きすると|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》へと説明を始める。
「さいこぶれいどさん……前の戦いで暴れてたヒトっすよね」
「恐ろしい男なんだ。目的のためなら手段を選ばないどころか、場所も選ばない。見たものに恐怖を与える」
 その名を聞いて口を開いた|普川・庸《ふかわ・よう》(新参者(ルーキー)・h13644)へしかつめ顔を作って頷き。
「今回『は』|いない《採用されないデータ上の選択肢に存在するだけだった》。でも、サイコブレイドさん、連絡もなしにやってくるからね。つよいよ」
「ははは! そんなヒトがヘンなカッコウで現れるなんて、ソーゾーリョク豊かっすね! あ、オレンジジュースで!」
 冗談だと思ったのか、それともナマエハの言に凄みと恐ろしさを感じて庸は笑い飛ばそうとしたのか。笑い声をあげた上でやって来た従業員へ注文すると。
「さてと、冷たいミルクください」
「おーっほっほっほっほ! わたくしはあちらの方が呑んでいるのと同じモノをお願いいたしますわ」
「そ、それじゃ僕は――」
 ナマエハ、|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》、|顕然院・誠《けんぜんいん・まこと》(安心安全清純ごく普通の弄られ系TS魔法少女ベラディーネ(仮)・h13346)と続き。
「え、誰かって? 僕です。さっき一緒に戦った魔法少女です」
 自分に向いた視線の意味を誰何のものと認識した誠はそう明かして。
「とりあえず呼び名を仮でも決められればいいですかね?」
「そうっすね。魔法少女さん、名前いるっすよね」
 誰かと聞かれたことから発想を飛ばしたのだろう誠の言に庸はもっともだと感じて|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》を見れば。
「ごもっともですわね。魔法少女が複数いる場合、今のままでは困りかねませんわ」
 ちらりと誠をみてからこちらも頷いて。
「衣装に元ネタがあれば、そこから呼び名を拝借でもいいと思いますが、無ければ仮に衣装さんと呼びましょうか」
「それだと、バニースーツの子と居合わせた時に困らない?」
 一応あっちは名前決まってたけどとナマエハが口を挟んで来て触れたのは、バニーガール衣装が魔法少女になった一件だった。
「あ、そう言えば」
 これにもナマエハと共に関わっていや誠は思わず声を上げ。
「さいきんの特撮のかんぶの名前をもじって……グロリア・ブーケドールとかどうっすか?」
「……いいですわね」
 じゃあどうしようとなったところで、庸が案を挙げると|悪の組織の女幹部のコスプレ衣装《魔法少女》は気に入ったらしい。こうして新たな魔法少女の名前に関しては解決を見て。
「お待たせいたしました」
 タイミングを見計らったかのように注文していた飲み物が到着する。
「ではいただきましょ――」
 うか、とまで続かなかったのは誰かの視線がナマエハに向いていたからで。
「え? フルフェイスメットなのにどうやって飲むか? ストローです。隙間から差し込んで飲むのよ」
 視線を浴びた形のナマエハはストローの包装を剥いて実践して見せ。
「スホー!!!!」
 そのまま一気に吸い込んでコップを空にし。
「で、これから魔法少女さんはどうするっすか? 
 お出しされた飲み物を消費しつつ庸は話をグロリア・ブーケドールと言う名を得た魔法少女に振ると。
「よなおし? いや一人にするのはちょっと……でもここ、魔法少女さんの他には男しかいないっすよね……」
 誠を見てからグロリアを見る。
「誰かが、キワドイ服といっしょに帰らなきゃなんすよね……」
「き、きわどい? そんなにきわどいですの?! 場違いなだけでなく」
「ああ、魔法少女さん、場違いじゃないかとか心配しないでいいよ。僕は全身黒タイツだよ」
 衝撃を受けるグロリアのフォローにナマエハは回ろうとし。
「僕の場合は衣装を変えずに半端に変身する方法を見つけましたが、衣装から変身する場合だと勝手が違いますしね。付喪神さんが知り合いにいれば何かコツとか教えてくれるかもですが……」
 唯一女性になれることでお鉢が回って来るのを怖れたのか、純粋に問題解決の方法を探してか誠はうんうん唸り始め。
「何か緑のギザギザが浮かんだような」
 とも言ったが軽食は注文していないのでテーブルの上に料理を仕切るような緑のギザギザの姿はなく。
「戸籍とか生き方については怪人さんの方が詳しいでしょうか?」
「え? 僕?」
 かわりに誠が視線を向けたのはナマエハのほう。それがグロリアを誰が連れ帰るかの牽制と捉えたのか。
「やるっすか……ジャンケン大会……!」
「「「え?」」」
 だが、庸以外の三人が揃ってぽかんとした表情になったところを見るに考えすぎだったようで。
「で、では始めましょうか」
「はいっす」
 ただ、どうするかは結局決まっていなかったこともある。店を出て少し横に移動したところで三人は向き合って。
「「ジャンケン――」」
 こうしてグロリア・ブーケドールの身の処し方は一つの勝負に委ねられることとなり、その結果がどうなったかを知るのは、グロリアを含む四名のみ。まだ夏は終わらず、どこかでセミが鳴いていた。

(判定の結果、|普川・庸《ふかわ・よう》(新参者(ルーキー)・h13644)が「グロリア・ブーケドールをAnkerとする権利」を手に入れました)

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