来たる年、互いのこころと初詣
冬休み――それは、嬉しいものではあるけれど。
だが、十束・新貴(三度目の正直・h04096)にとっては、悩ましくもあるのだ。
だって、その間は学校に登校することがないのだから。
学校生活を送っていれば、図書館、教室、学食……校内は広くとも、それでも限られた空間内。大体どの辺りを探せば「彼女」がいるかの検討は、粗方つくから。
さり気なく声を掛けたり、どこかに誘ったりすることも、新貴自身は内心とても意識していても……きっとこれまで応じてくれた彼女の様子を見れば、ごく自然に行なえていたのだろうけれど。
学校が休みとなれば、自然と顔を合わせるなんて偶然に期待はできない。
だからまずは、先日古書店巡りの約束をドタキャンしたその埋め合わせをしたいと、そう口実を作って遊びにいけたものの。
では、次はどう切り出すか……誘わなければ恐らく、次に会えるのは新学期。
けれどなにぶんヘタレな性分もあり、密かに想いを寄せる後輩と会う自然な理由が何かないかと、頭を悩ませていた新貴であったが。
会話が年末年始の話題になれば、思い切ってこう切り出してみたのである。
「そ、その……平咲、初詣、一緒にいかないか? いや、よかったらでいいんだけど……」
そして彼女の反応を内心ドキドキと窺えば。
誰もが美少女だと頷くその顔に浮かぶ表情は、余り変化が無いように見えるものの。
「……は、はい、よろしくお願いします」
そう返って来た声に、ほっとして。
何とか初詣の約束を交わせたのが、年末のことである。
平咲・鳴衣(十束・新貴のAnkerの片思いの相手・h04101)は、とても迷っていた。
異性としても気になる憧れの先輩から、初詣に誘われて。
(「……!」)
内心、やった……! と舞い上がったのが、年末の話。
けれど、いざとなれば、何を着て行こう……なんて悩んでしまう。
いや、鳴衣は学内や近所で有名なほど、芸能人並の美少女で。
何を着たって、大抵似合うのだが。
一見大人しそうで、でも芯は強い彼女でも、憧れの人とのお出かけとなればそわそわしてしまうし。
服がようやく決まれば、次はバッグ、靴……髪型もどうしよう、なんて。
自宅ファッションショーを繰り返していたなど、誘った先輩は思ってもないだろう。
だがら当日も、逸る気持ちを抑えきれなくて。
随分と早く待ち合わせ場所についてしまった……はず、なのだが。
「……! 十束先輩? お待たせしちゃった、でしょうか」
すでに来ている先輩――新貴の姿を見つければ、慌てて駆け寄って。
「いや、俺も、今来たところだよ。まだ、随分待ち合わせ時間より前だし……平咲も、早かったんだな」
「え? あ……は、はい」
実は、楽しみで早く着いてしまった――なんて。
そう本当のことが言えないのがお互い様だなんてことは、ふたり揃って、思ってもいないのだけれど。
「じゃあ、行こうか」
「はい、行きましょう」
人で賑やかな新年の参道を、並んで歩き出す。
新年の神社は人で混雑していて、参拝まで長い行列が出来ているが。
他愛ないお喋りをしていれば、そんな時間も苦ではなくて。
むしろ嬉しく、楽しくて、あっという間で。
参拝の順番が回って来れば、ふたりで賽銭を投げた後、手を合わせる。
お互い、一生懸命神様に祈ったこともお揃いだなんて――知る由もなく。
そして参拝を済ませれば、境内を巡ってみて。
「折角だし、おみくじ引いてみないか?」
「はい、あとは……お守りも買いたい、です」
まずは、おみくじを一緒に引いてみれば。
「中吉だ、悪くなくてよかった。平咲は?」
「あ、私は、大吉でした……」
引いた運勢自体も気になるし、ふたりとも良い結果であったのだけれど。
でもやっぱり、一番気になるのは。
(「えっと、恋愛は……積極的にせよ。せ、積極的に、か」)
(「! 恋愛……この人となら幸福あり……」)
そう、恋愛の項目。
そして文面を目で追った後、互いに隣にいる人をさり気なくちらりと見つつも。
想いを込めて、引いたおみくじを隣同士にきゅっと結べば。
「平咲は、お守りも買うんだろ?」
「あ、急いで買ってきますね……!」
そう授与所に向かう彼女の姿を、新貴は最初こそ見送るも。
(「俺もひとつ、買おうかな」)
自分の分も買うために、その後を追うことにする。
そしてそれぞれお守りを買い終えた後、再び並んで歩き出せば。
「やっぱり人が多いな。それに、いい匂いがする」
「出店も、沢山出ているみたいですね」
「おなかすいたな、何か食べようか?」
「はい。わたあめも、たこ焼きも、どっちも美味しそう……」
「じゃあ、二つ買って、分け合おうか?」
「! は、はい、分けあいこ……しましょう」
逸れないようにふたり並んで、出店へと足を運ぶのだった。
互いに先程そっと買った――恋愛成就のお守りまで、実はお揃いだなんて。
やっぱりまだ、思いもしないままに。