あなたの瞳色の飲み物を
シーサイドももちにおいて出会いとは運命的なものであるとアンミタート・アケーディア(愛を求める羅紗魔術士・h08844)は考え、女の子ウケする夏の飲み物をその両手に持っていた。
「もし、そこの」
白っぽい狐の耳を揺らすあなた、と声を掛けれた喫音・いなりが青い髪を揺らして振り向いた。泣きぼくろが魅力的で無言でふふと人妖は意味深に笑って見せている。
『どうかしました?』
「お嬢さん、炎天下では暑いでしょう?一杯奢りますよ」
これでよければどうぞ、とアンミタートが渡すといなりは首を傾げて、しかし断ることはしなかった。姿、容姿は見るからに年若い。しかし狐耳がある以上本来の年齢層は計り知れない。これはミステリアスだ、――面白いと話しかける心に火が灯る。
『良いんですか?』
「ええ、可愛らしい人には奢らないと」
『言葉が上手でいらっしゃるんですね』
面白い方、とのらりくらりと言われるとアンミタートは、これはもしや、押してみたら案外もう一歩いけるのはないか、と揺らいだ。
「海の方を見てらしたようですが、どなたか知り合いが?」
『いいえ、此処で波の音をただ聞いていただけですよ』
「そのわりには水着、着てらっしゃいますよね」
『暑さに飽きたら泳ごうかと思いまして。でも冷たい飲み物頂きましたから』
「日焼けなどされては大変です、その耳も、肌も。白いのですから」
日焼け止めオイルもってますよ、塗りましょうかと手持ちのチューブを取り出しはじめるアンミタートに、いなりはくつくつと笑って狐耳と尾をゆるりと揺らしながら答えた。
『偶然を装って出されました?わたし、日焼けは"在り"と思うので大丈夫ですよ、それに……今日知り合ったばかりの殿方にお願いするのは、ね?』
それは早すぎるというものですよ、とやんわり断られた。
狐の人妖の視線――笑う声はそのものだが、視線の本質は氷のように冷たい。
「はは、手厳しい」
『そうですよ、乙女心って案外鉄壁なのですから』
飲み物一杯分だけの身近な時間、いなりはアンミタートに付き合って、ごちそうさまでした、と一定の距離を保ったまま去っていく。引き止める事はしなかった。
乙女心は鉄壁で、女の言葉は華やかだが装飾が多い。
真実を突き止めるには、時間を駆けるのも必要だ――その学びをこの海でまたひとつ得たのであった。星の数だけ学びを今後、深めて行かなくては。
運命の――|あなた《・・・》に逢う為に。