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虞・心妍
ヨーキィ・バージニア
橘・ユリカ

●√EDEN水着コンテスト会場、博多『シーサイドももち海浜公園』の片隅
 ボク、|虞《ユゥ》・|心妍《シンイェン》! 8月29日、このシーサイドももち海浜公園で開催されるっていう水着コンテストに参加するんだ。
 訳あって今は高校生のお姉さんくらいの見た目なんだけど……実はボクの本当の年齢は9歳。今年の4月の末頃に1つお姉さんになったばっかりなんだ。
 だから、付き添いで父上と母上が一緒にいたんだけど、大事件発生!!
「父上と母上が迷子だ!!」

 ——心妍はそういう解釈をするタイプの女の子であった——

「迷子ですか? それは大変です!」
「ん? アナタは?」
 父上と母上を早く見つけてあげなくちゃ、と思ったボクの前に現れたのはチェック柄の水着の女の子。見た目的には今の姿のボクと同い年くらいかな。
 チェック柄でも色合いがシックで大人しくて本人が黒髪ロングヘアなのも相まって大人っぽく見える。ボクも同じくビキニタイプだけど、この人の方が体が細い感じがする。おなかの辺りがきゅって締まっているこれは……たしか「くびれ」っていうんだっけ。ボクの水着姿を見ながら父上が母上のくびれはすごいぞって話をし始めて母上にエルボーされていたからよく覚えているよ。
 スレンダーボディっていうんだっけ。カッコいいなあ。
「どんな謎も捜し物も探し人も、この美少女名探偵ユリカちゃんに出会ったからには忽ち解決です! ボクは橘・ユリカ。あなたのお名前は?」
「虞・心妍だよ」
「では心妍さん、あなたのお父さんとお母さん、一緒にお捜し致しましょう。特徴を教えていただけますか?」
 おお、さすが探偵、本格的だ。
 ボクの父上は金髪に赤い目。ちょっとナンパなところがあるけど、母上一筋なカッコいいヒーロー。母上は白い髪に青い目。父上とはラブラブで、父上からもらった黒いスカーフをいつも身につけているんだ。
 そう説明すると、ユリカはふむふむ頷いた。
「赤い目と、白い髪。心妍さんの色はお父さんとお母さん両方からそれぞれ引き継いでいるんですね」
「そうだよ。だからきっと、すぐ見つけられる」
「ですね!」
 ユリカはニコッと笑った。……けれど、ちょっと違和感。
「ユリカの父上と母上はどんな人?」
「へ? えーっと、ボクはよう……いえ、母のことは知っていますが、父のことはよく知らないんですよね」
「そうなんだ」
 違和感は家族のことじゃないか。まあ、話したくないことかもしれないし、聞かないでおこう。
「ところで『よう』って、なんて言おうとしたの?」
「秘密です! 探偵とて一匙の隠し事くらいはするものなのですよ」
「そうなの? なんか小説に出てきそうなフレーズだね」
「んんっ」
 咳払いすると、ユリカは行きましょう、と思い切り話を逸らした。これは照れてるね、たぶん。もしかして小説が好きなのかな。
 好きな話のワンフレーズ使うなんて大人っぽくてすごく憧れるなあ。

 ——心妍は見た目こそユリカと同じくらいだが、年上っぽさを感じたりして、羨望のまなざしを注ぐのだった——

「ところでユリカ。随分人の多い方に来たけど、迷子センターみたいなの、こっちにあるの?」
「いいえ。迷子センターは探していませんよ?」
 ボクがそう告げると、心妍さんは「ええっ!?」とかなりいいリアクションをくれました。心妍さんは同い年くらいの子とは思いますが、時々幼げな感じのかわいい反応をくれるので、楽しくなっちゃいます。
 とはいえ、名探偵ユリカちゃん、困っている人を弄んでいるわけではありません。ちゃーんと考えているのですよ?
「ここでは今日、水着コンテストが開催されています。そのため、宣伝用のテナントがいくつも出ているのですが、やはりコンテスト主催者が設置したステージが一番大きく、音響設備も充実、広報も十全に行われているということがボクの事前調査で確認できています」
 何を隠そうこのユリカちゃん橘探偵事務所所長でございますからね! 探偵事務所の優秀な助手と連携して会場の状況は把握済みなのです。
 虫眼鏡を出せば√仙術サイバー東京IIにある橘探偵事務所と即座に繋がります。√能力「ようこそ、橘探偵事務所へ」というわけです。事務所に待機している助手も優秀ですし、追加情報もすぐに共有できちゃいます! ここシーサイドももち海浜公園は√EDENの博多ですが、√を跨いだ調査もお茶の子さいさいなのです。ボクは名探偵ですので!
「るーと? ええと」
「んんっ、つまりは全国、いえ世界各地どこであろうと、ボクは謎をたちまちに解決できる正真正銘名探偵なのですよってことです。どーんと大船に乗ったつもりでいてください!」
「ふふ、ありがと、ユリカ」
 ま、まさか心妍さんが非√能力者というのは想定外でしたが、捜査に支障はありません。ご両親の特徴もはきはきしっかり話せる方ですし、ボクの目論む方法で確実に見つけられるでしょう。
「こほん。それで、この水着コンテスト会場で最も広いあのステージではランウェイをはじめとした参加者によるパフォーマンス・ショウが開催されているのです。それに参加すれば、多くの人の目に留まります。参加者の多くは、コンテストでの|♡《いいね》を獲得するためにステージに上がりますが、それはあそこが一番目立つから、なのです」
「……! つまり、パフォーマンス・ショウに参加すれば、父上と母上にボクがここにいるよって知らせられる」
「そのとおり!」
「ユリカすごい、天才だね! さすが名探偵!」
「それほどでもあります!」
(それほどでもありませんじゃないんだ)
「ですが、その推理を言い当てるあたり、心妍さんもなかなかやりますね」
「だけどそのやり方には穴があるよっ」
 なんですって!?
 第三の声に驚いて振り向くと、そこにはブロンドの髪をさらりと靡かせた少女が一人。
「だ、誰ですか!?」
 ボクや心妍さんのオシャレ重視の水着とはベクトルの異なる水着。競泳水着のようなシンプルさ。シンプルながら完成されたデザイン性。水着本来の着用目的である「泳ぐ」ことへの機能性に優れていることが一目でわかります。その上から夏らしく爽やかな白いパーカーをゆるっと羽織る彼女はもしかしなくても水着コンテスト参加者なのでしょう。
 はっ、まさかこの美少女名探偵ユリカちゃんと素質抜群の心妍さんをライバルとして潰しに!? この人自身も結構な美少女なのに。いやしかし、コンテストに本気だからこそあり得……
「ないからないから! もーっ、ヨーキィちゃんは人に笑顔を振り撒きこそすれ、人から笑顔を取り上げるようなことはしーまーせーんー!」
「おっと、失礼しました。すみません、推理が全部口に出ていたんですね」
 ヨーキィちゃん、と名乗ったその方に素直に頭を下げますと、その方はからりと笑っていいよいいよ、と。なんと懐の広い。
「それで、改めまして、どちら様ですか? ボクは橘・ユリカ。探偵です。ボクの案の穴とは?」
「ヨーキィ・バージニアだよ♪ 陽気なヨーキィちゃんって覚えてくれると嬉しいな。話は聞かせてもらったよ。そっちの子が心妍ちゃんだっけ」
「うん」
 よろしくね、と心妍さんにもしっかり挨拶。安心させるようなあったかスマイルと軽くふりふりとした手はアイドル級にかわいいです。ファンサのような抜かりのなさ。
 そんなヨーキィさんから指摘されるボクの提案の穴とは……と思っていると、飛行機のような形をしたドローンが数機、ヨーキィさんの方へ向かってきます。
「大勢に向けて行う運営ステージのパフォーマンス・ショウは動画配信も行われて確かにたくさんの人に観られるよ。でもね、観られる状況に心妍さんのお父さんとお母さんはいるかな?」
「え?」
 ボクと心妍さんが仲良く首を傾げると、ヨーキィさんは指を一つ立てて諭すように続けました。
「大事な家族がいなくなって、必死になって捜しているのはお父さんお母さんの方もだよ。名前を呼ばれたりするけど、それを聞き逃しちゃうこともあるだろうし、何より、全然別の場所を見ていることだってある」
 それもまた然りです。ボクもすっかりその可能性を見落としていました。冷静さを欠くと、必要な情報を拾いきれない。だからこそ探偵は常に冷静であれ、というのが基本なのです。その基礎の基礎を失念するとは、ボクとしたことが……という反省は程々に。つまりボクの案ではパフォーマンス・ショウを観られない場合のフォローができないというわけですね。
「それはわかりましたが、ではどうしましょう。んー、妙案が浮かびません。ボクの助手は事務所から出られませんし……」
「ふふーん、そこはこのヨーキィちゃんにまっかせっなさーい♪」
 探偵として心妍さんに手を差し伸べたからには自分で解決策を、と頭を悩ませようとしたところで、ヨーキィさんが自らの胸をとんと叩いて示しました。
 ボクと同じくらい自信に満ちた佇まいはとても頼もしく感じられます。
「ヨーキィちゃんがレギオンスウォームでステージから離れた場所の探索をしておくよ♪」
 レギオンスウォーム。確か、ドローンを飛ばして探知と微弱攻撃を行う√能力だったはずです。√能力の中でも探索に特化した能力。なるほど、飛行機型のドローンがヨーキィさんのレギオンなのですね。それならこの穴も埋められるでしょう。
「でも、アナタとは今初めてここで会ったばかりよね? どうして見ず知らずのボクのためにそこまで?」
 これはユリカにも言えるけど、と心妍さんが不思議そうな目をします。ボクとヨーキィさんを交互に見つめました。
 それを受けて、ボクとヨーキィさんは自然と目を合わせました。思うところは同じらしく、クスッと笑うと同じことを言いました。
「そんなの、答えは一つです」
「「困っている人を放っておけないから!!」」

 ——これがEndless Desire for Essential Nexusなのである——

 そんなわけで、心妍さんのご両親捜しをユリカさんと手分けして始めることにしたヨーキィちゃんだよ!
 ユリカさんの提案も滅茶苦茶名案だと思うし、やっぱりイベントは楽しまなきゃ損だからね! パフォーマンス・ショウへのエントリーもすることにした。
 ヨーキィちゃんも出場しようと思っていたからちょうどよかったよ~。せっかくだし、三人でグループエントリーしちゃおうよってことで、一緒に受付まで来たんだ~。二人共誘ったら食い気味にOKしてくれてかわいかった♪
 いやぁしかし、改めて見るとユリカさんがすらっとして見えるのに対して、心妍さんは女の子らしいふっくら感とか柔らかさが感じられていいね。
 ブルーはヨーキィちゃんも好きでよく身につける色だけど、ヨーキィちゃんは空母艦の少女人形だから空を彷彿とさせる青が多いかな。対して心妍さんの今回の水着はなんとなく海って雰囲気のある青だね。深みのある感じ。高校生くらいかなーって思うんだけど、大人びた雰囲気と時折垣間見えるいたいけな眼差し。矛盾した印象が共存する絶妙なバランスの調和にこのブルーはぴったり。トップス、ボトムス共に布の質感とふりふり感が波を連想させるね。
 左足に巻いたリボンもキュート。まったく、こんなかわいい娘さんをほっぽって、ご両親はどこに行っちゃったんだろうね。かわいい子を一人にしていたらナンパ男が群がっちゃうよ。むんむん。
 そうなる前にユリカさんが合流してくれていてよかったな、なーんて思いつつ、エントリーシートを記入する。三人の名前とグループ名と……ひとこと欄の記入があって、ふと手を止めた。
「このひとこと欄、出番のときに読み上げられるんだって。心妍さんのお父さんとお母さんに呼び掛ける感じにしちゃう?」
「いいですね!」
「でもそれちょっと恥ずかしくない? だって大勢の人に観られるし、聞かれるんだよ?」
 うーん、ユリカさんはノリノリだけど、心妍さんが難色を示す。年頃の女の子だもんね。思春期だとそうなるか……。
 頭を悩ませていると、ユリカさんがピコーンと閃いたみたい。
「それなら『お父さんお母さんにサプライズ! この会場で新しいお友達ができました!』みたいなひとことにするのはどうですか!? グループ組んだ理由の説明にもなって、なおかつ呼び掛け式、これならあんまり恥ずかしくもないと思います!」
「おおっ、心妍さん、どう?」
「……とってもいいかも!」
 心妍さんの目がきらきらし出した。なんだかこっちまで嬉しくなっちゃうね。
 ではひとこと欄はユリカさんの案にして、二人の名前を書いてもらおう。
 ……と、ペンを持たせたら、心妍が悩ましげに眉を寄せた。
「カタカナでもいいかな。ちょっと苗字が難しくて」
「ふりがな振るくらいなら、カタカナの方がいいかもね。読み上げてもらうんだし。ところで、心妍さんの苗字って何?」
「|虞《ユゥ》。虞・心妍っていうんだ」
 ん?
「ヨーキィさん? 固まってどうしたんですか?」
「えーと、ひどく聞き覚えがあるなーって……ち、ちなみにお父さんの名前は……?」
「|虞《ユゥ》・|無限《ウーシィアン》だよ」
 な、なんてこと!
「めっっっっちゃ知り合いだよ……」
「え、そうなの!?」
「うん、ヨーキィちゃんのいる真珠湾秘密基地の仲間の一人だよ。……なるほどぉ、心妍さんの目、無限さんによく似てるね」
 髪の色が全然違うから気づかなかった! 最初からフルネーム聞いておけばよかったよ。
 でも、知り合いだから連絡が取れるし、これで迷子じゃないから一安心。無限さんにも連絡を入れて、と。
「あとは心置きなくコンテストを楽しむだけだね!」
「うん。ヨーキィとユリカのおかげ。ありがとう」
「じゃ、さっきのひとこと欄は取り消して……」
「「えっ?」」
 親に連絡がついたのだから、存在を知らせる一言は変えてもいいとヨーキィちゃんは考えたのだけれど、心妍さんだけでなくユリカさんからもきょとんとした目を向けられる。
「別にそのままでいいよ? だって新しいお友達ができたっていうのは本当だもん。ね、ユリカ」
「そうですよ! お友達ができた報告はきっとご両親も喜ぶはずです。そのままにしましょう!」
「二人共……!」
 えへへ、感動してじーんときちゃった。思わず二人をまとめてぎゅーっと抱きしめちゃう!
 新しいお友達。それなら、
「二人のこと、呼び捨てにしてもいい? 二人もヨーキィちゃんのこと、好きな呼び方してくれたら嬉しいなっ♪ 心妍、ユリカ」
「もちろんだよ! ありがとう、ヨーキィ」
「ボクも大歓迎です。じゃあボクはヨーキィちゃんって呼ばせてもらいます。心妍さんもちゃん付けで呼んでいいですか?」
「うん! ユリカ、敬語取っていいよ?」
「そう? じゃあそうしようかな」
 えへへ、なんだかあっという間に距離が縮まって仲良しになれちゃった♪ 嬉しいな♪
「じゃあ、ショウで披露するパフォーマンスはどうする? ヨーキィちゃん、歌いたいな」
「三人で歌ったり、踊ったりするの? アイドルみたいだね」
「ふふん、ヨーキィちゃんはアイドル活動もしているんだよ♪」
「なんと!」
 ユリカが少し納得顔で声を上げた。
「道理で、一目見たときからただならぬ美少女と感じたわけです」
「え、そう思ってくれてたの!?」
「ええ。まずこのコンテストに競泳水着系統で参加しようとする姿勢は着飾らずとも己を表現できるという確信を持った自信の表れですし。実際似合っていますし、ナイスプロポーションって思います!」
「ユリカ、敬語……」
「はっ、推理を披露するときはつい」
「それはそれでかわいい!」
 んでもってすごく褒められて照れちゃうなあ。
「アイドルさんが一緒なら、歌もダンスもノープロブレム! コンテスト一位も夢じゃないかも」
「一位狙うの!?」
「夢は大きく、その方が楽しいですよ! 心妍ちゃん」
 ユリカの言葉にヨーキィちゃんも大賛成! 心妍を見守っていると、ぎゅっと胸元で手を握って「夢はおっきく」と小さく繰り返したようだった。
 それから、弾けるような笑顔を咲かせる。
「うん! 二人となら目指したい!」

 ——その笑顔は夏の太陽を浴びて咲く花くらい輝かしく——

 そうして、三人はパフォーマンス・ショウの出番を迎えた。
『続いてのパフォーマンスはヨーキィ・バージニアさん、虞・心妍さん、橘・ユリカさんの三人組! グループ名は『夏爛漫ガールズ』!! なんと、このコンテスト会場で偶然出会って、意気投合して、このステージへのエントリーを決めたそうですよ!! お父さんお母さん、見てますか? 娘さんたちからお友達ができたというサプライズライブ、スタート!!』
 司会の軽快なナレーションからポップなサマーソングのイントロが鳴り出す。駆け込むようにして夏爛漫ガールズの入場! 中央に立つのは心妍が右手でユリカに、左手でヨーキィにハイタッチ! からのアイコンタクト。イントロの盛り上がりに合わせて三人一斉に、ジャンプ!
 歌い出しはヨーキィ! イントロの終わり際に自然と前方に出た彼女。可憐さと清廉さを兼ね備えた歌声が会場を震わせる。まだ暑さ止まぬ夏の終わりに響く爽やかな歌! 灼熱の太陽の下にもたらされた一服の清涼剤は見る間に観客を魅了していく。
 レギオンスウォームをライブ仕様に改変して、戦闘機型ドローンが会場の空を舞う! 時折低空飛行を見せるそれを足場に心妍が魅せる!! 素人とは思えない超絶アクロバット!! 三人の中では最も小柄な心妍、その軽やかかつ豪胆な体捌きには誰もが目を奪われていく。
 そんな心妍の大技が決まったところでボーカルのバトンタッチ。ユリカがヨーキィと腕を組みながらくるりと入れ替わりセンターへ。
 歌唱力はややヨーキィに劣るもののクールな見た目からギャップのある茶目っ気漂うカワボ系の歌声は一部客層に突き刺さったようだ。黄色い歓声が上がる。それに応えるようにウインクバチコーン★
 会場のボルテージが最高潮に達したところで曲の山場、三人の歌声が重なる。入れ替わり立ち替わりで位置を入れ替え、センターポジションの人物を固定しないことで、三人みんな仲良しをアピール。一般的なアイドルユニットならば、この先センター争いや固定ソングなどでこの在り方は崩れ去ってしまうが、夏爛漫ガールズはこのシーサイドももち海浜公園でのコンテストその場かぎりのユニット。仲良しほんわか美少女三人組のほのぼのライブステージを観るのは、ガチファンとしてアイドルを追うよりある意味で気楽なのかもしれない。
 曲が終わると三人揃って。
「水着コンテスト、このあとも楽しんでね!」

 結果、
「みてみてすごーい! コンテスト一位の子、ヨーキィちゃんのお友達だよ。お知り合いさんと合わせで水着仕立てたんだって」
「知り合いさんが入賞!? ヨーキィちゃん顔広ーい」
「合わせで仕立てた水着かあ。いいね、そういうの」
 ボクもそういう友達できるかな、なんて呟きかけた心妍だが、一呼吸置き、言い直す。
「二人とそういうの、できたらいいよね」
 その言葉にヨーキィとユリカは目を見開き、息を合わせたように同じタイミングで破顔した。
「やりたいです」
「心妍のお父さんが知り合いだってわかったから、いつでも遊べるしね!」
 ウキウキとした二人からの視線をくすぐったそうに受け止め、心妍もてらいない笑顔を返した。

「さて、コンテストも終わったし、ヨーキィちゃんが一緒だって言ったら、無限さん真珠湾秘密基地で落ち合いたいって言ってたから、もうちょっと遊んでいけるよ」
 ヨーキィからの申告にほっと胸を撫で下ろすも、すぐ首を傾げることになる心妍。
「遊ぶって言っても、コンテストは終わったし、たくさんあったイベント出店も撤収が始まってるよ?」
「ふふふ、実はですね心妍さん。撤収後の有志ビーチ清掃と共に、ビーチコーミングが行われるんですよ!」
 訳知り顔のどやどや感マシマシでユリカが告げる。その手には虫眼鏡と√能力で取り寄せた資料。そこには『ゴミ拾い・ビーチコーミング参加者募集』という広告が。
「ビーチコーミングって?」
「砂浜で流木や貝殻といった海からの漂着物を拾う採集活動みたいな感じです。砂を掻いたりして探すシーグラスなんか結構綺麗なんですよ」
 ユリカが再び資料を取り寄せ、シーグラスの写真を心妍に見せる。それは様々な色合いのガラス片であった。透き通ってはいるわけではないが、綺麗な色をしている。
「へー、きれい……」
「漂着物は波に浚われたらなくなってしまうし、別の誰かが持っていくかもしれない。だから、一期一会って感じが堪らないってビーチコーミングを楽しむ人もいるみたい。ですよね、ヨーキィちゃん」
「そうそう! さっすがユリカ、よく知ってるね。今このときの思い出づくりにぴったりでしょ? もちろん、清掃もしっかりやるよ」
「うん!」
 ユリカの説明とヨーキィの言葉に、心妍は少し気合いの入った表情で頷いた。
 今、このとき、この場所でしか出会えないものを。ヨーキィやユリカとはこの先も会えるかもしれないが、今日この日に出会ったんだという|証拠《おもいで》が形としてあったら、それはきっと、とても素敵なことだから。

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