シナリオ

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想憶のムーン・ポジー

#√マスクド・ヒーロー #√EDEN #ゾディアック・ミラー #‪√‬ドラゴンファンタジー #9/22(火)13:00まで受付中 #プレイング受付中

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 #9/22(火)13:00まで受付中
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ゾディアック・ミラー

これは2章構成の期間限定シナリオです。09/23(水)16時頃までに完結したシナリオの結果により、宿敵の運命が変わります。
なお、期間中に宿敵主によって倒された場合、通常のルール通り宿敵は絶対死します。

●魔法少女の迷走
 冒険王国『カトルヴェア』――現れては消えていく四季の|夢《ダンジョン》を擁する王国の一角にある街『ルナドール』の湖の畔に、ひとつの人影があった。
「……いた……!」
 幹の陰から、魔法少女アンテロスがそっと顔を覗かせる。
 森の向こうへ沈みゆく夕陽の淡い金いろが、湖の穏やかな水面に溶けていた。岸辺に広がる庭園では、白花の群れが秋の気配を孕み始めた夜風に柔く揺れている。
「やっぱり今日も一緒だ……!」
 声を押し殺しながら悶える視線の先には、2羽の鳩。その距離が少し縮まっただけで、アンテロスは胸元でぎゅっと両手を握った。
「もう、これ絶対そうだよ!」
 艶やかな純白の子と、首元がすこし濃い凜々しい子。
 数日前に見かけてからというもの、そのビジュアルの良さに一目でハートを撃ち抜かれたアンテロスは、毎日欠かさずこの庭園へと足を運んでいる。
「昨日だって、あっちの噴水のところで――」
 ちょうどそこへ、よく似た鳩が1羽。
「……あれ?」
 その後ろからもう1羽。
「…………えっと…………」
 更に1羽、2羽、3羽――。
「…………ま、細かいことはいいよね! ビジュが良ければそれで!」
 そう!
 あと必要なのは、ほんのすこしの勇気だけ。
 まだ自分たちでも気づいていない想いなら、気づかせてあげればいい。
「待っててふたりとも! この日のために密かに編み出した√能力『ハートクエイク・アロー』で、私が想いを叶えてあげる!」

●想いの切欠
「――なんと! このままだと最終的には、庭園にいる鳩さん全員に『ハートクエイク・アロー』が刺さっちゃいます!」
 三角関係どころか泥沼の関係ですね! と、先のゾディアック継承戦争で獲得した大鏡『ゾディアック・ミラー』にて得た予知を語りながら、ヴァロ・アアルト(Revontulet・h01627)が眸を燦めかせた。まだまだ人間の世情に疎い霊的存在が故、どうなるのか想像もつかないことに対する純粋な興味のようだ。
 ハートクエイク・アロー――ひとたび射られれば、本人の心とは無関係に相手への好意を忽ち増幅させられる√能力だ。そんなものを浴びれば、鳩とはいえ本来ない執着や追尾などを強制されることになる。
「あっ。アンテロスさんが大人しく撤退してくれればそれでOKなので、どう対処するかは皆さんにお任せします」
 とはいえ、彼女は簒奪者だ。戦闘になってその場で討たれたとしても、どこかで再び蘇る。そしてそのときは確実に、EDENたちと対立することになる。
 一方、会話で平和的に撤退させれば、一歩踏み出せぬカップルだけをアローで支援しつつ、殺戮の生じる事件は防ごうとする――そんな比較的平和な性格へと変わるはずだ。

「そうだ。もし会話で解決できたら、お月見でも愉しんではどうでしょう?」
 湖の畔にある大きな球状の温室では、この時期にだけ『|月の花束《ムーン・ポジー》』と呼ばれるジェルキャンドル作りが催されている。
 道具や準備は全部整っているから、あとは球体硝子の器に好きな素材を入れるだけ。花や色をただ好みで選んでも、届けたい心や手放したい想いを込めてもいい。
 完成したら、持ち帰るもその場で灯すも自由だ。

 もし灯すのならば、消えるころにはきっと、あなたの裡に芽生えているだろう。
 誰かに届けたいと願ったなら、“届ける勇気”が。
 手放したい想いを込めたのなら、“手放す決意”が。
 そして、誰かと同じ夜に灯し、同じときに炎が消えれば、その願いは同じ場所へ辿り着く――そんな伝承が残っている。

「どんな想いも、なにかの切欠で生まれたり変わったりするものですよね」
 それはアンテロスでさえも、変わらない。
 ――だから。
「皆さんなら大丈夫って、信じてますっ!」
 そう花笑みを向けながら、ヴァロは秋の街へと仲間たちを送り届けるのだった。
これまでのお話

第2章 日常 『夜空の下で』


 この街で神聖視されている月は、古くから不思議な魔力を持つと信じられてきた。
 故に人々は、1年で最も大きく美しく耀くこの季節の月へと託すのだ。
 届けたい心を――手放したい想いを。

 そうして夜の帳が降り始めたら、庭園の傍らにある球体の温室にも柔らかなひかりが灯り始める。
 花々の傍らやテーブルの上で揺れるのは、手のひらほどの大きさのジェルキャンドル――『|月の花束《ムーン・ポジー》』たちだ。

 温室内でのんびりと作れるというジェルキャンドルは、一通りの材料が揃っている。
 ジェルキャンドルそのものは、基本は透明ながら、自然から抽出した着色料で好きな色に染めることもできる。種類も豊富だから、きっと目当ての色が見つかるだろう。何色かをあわせて層を作ったりグラデーションにするのも面白そうだ。
 それと、花。
 腐らず崩れぬよう魔法の掛けられた花々も、季節問わず様々なものが揃っている。花を好むと謂われる月へと届けるものだから、と入れる人も多いらしい。

 器の縁に掛けるためのフックのついた、金や銀の月相チャームもある。半月や三日月、満月などの形によって次のような意味はあるが、ただ好きな形を選んでも良いだろう。
 𝐍𝐞𝐰 𝐌𝐨𝐨𝐧...............始まり/秘密/まだ見えないもの
 𝐂𝐫𝐞𝐬𝐜𝐞𝐧𝐭 𝐌𝐨𝐨𝐧.....願い/成長途中/これから
 𝐇𝐚𝐥𝐟 𝐌𝐨𝐨𝐧...............選択/境目/迷い
 𝐅𝐮𝐥𝐥 𝐌𝐨𝐨𝐧................成就/満ちたもの/今ここにあるもの
 𝐖𝐚𝐧𝐢𝐧𝐠 𝐌𝐨𝐨𝐧……手放すこと/別れ/記憶
 ほかにも、貝殻や柔らかで目の細かい砂など、火に弱くなければ好きなものを入れて構わない。勿論、素材の持ち込みも差し支えない。
 砂や不透明なジェルで底を覆い、中になにかを隠す者もいる。それを見たければ、キャンドルを最後まで使い切れば良い。なにを隠すのか、それをいつ再び目にするのかも人それぞれだ。

 完成したキャンドルは、その場で灯しても持ち帰っても構わない。今夜でも、いつか訪れる特別な日でも――あるいは、ずっと灯さぬままでも。
 灯せば柔らかな金色のひかりが硝子の内側に溢れ、ちいさな月のようにも見えるという。

 穏やかに揺れる灯が消えるころにはきっと、あなたの裡に芽生えているだろう。
 誰かに届けたいと願ったなら、“届ける勇気”が。
 手放したい想いを込めたのなら、“手放す決意”が。
 そして、誰かと同じ夜に灯し、同じときに炎が消えれば、その願いは同じ場所へ辿り着く――そんな伝承が残っている。

 温室の大きな硝子越しに。
 はたまた、外へと出て星々の天蓋の下で。
 清かなる月とともに、涼秋の夜はふけてゆく。

 ✧   ✧   ✧

【マスターより】
・9/23(水)16時頃までに完結できる範囲での採用となります。
 ※後日、本章と同じシチュエーションを『秋祭りノベル』企画として受付予定です。
・あわせてマスターコメントもご参照のうえ、ご参加いただければ幸いです。
賀茂・和奏

●月へ灯す想憶
 桃色のツインテールを軽やかに揺らして去ってゆくその背を見届けながら、賀茂・和奏(火種喰い・h04310)は硝子越しの眦をふと緩めた。
 どこか憎めないひとりの魔法少女。
 平和的に解決できたことへの安堵に、次にまた逢うときへの希望も密かに混じる。どうなるかは分からない。異能捜査官として、未来に期待しすぎぬ理性も持ち合わせている。――それでも。
 そこで思考を止めると、ちいさな笑みを零して和奏は踵を返した。ゆっくりと紫紺を帯び始めた空の下、ひとつ、またひとつと内から灯り始めた球体温室へと足を向ける。
 硝子の扉に軽く手を掛け中へと入れば、夜気よりもほんのり暖かい空気が躰を包む。月を愛し、月へと祈る街の人々の想いを映すかのように優しく揺れるキャンドルの灯を眺めながら奥へと進み、手近なガーデンチェアへと腰を下ろす。
「……ふむ、俺もひとつ作って行こう」
 誰ともなく独りごちた声が、ぬくもりに溶ける。一度席を外し、ジェルキャンドルの素材一式を手に戻ってくると、早速テーブルに広げてみた。
 こういった類いにおいて、自分好みのものを選ぶのは得意ではない。だからこそ、贈り物にすると決めていた。その姿を想い描きながら、交わした言葉と心を振り返りながら選んだ特別なものたちが、柔らかな木目のテーブルの上に静かに佇む。
「さて……まずはジェルキャンドルの色かな。……うん、青の濃淡グラデにしてみよう」
 花好きの月ならば、夜空めく彩を。月相チャームを添えたら一層綺麗だろう。
 まあるい硝子のなかにそうっと入れるのは、銀木犀とカランコエ。秋に景色を彩る、愛らしい白の花たち。そこへ、|天色《あまいろ》、紺碧、そして瑠璃紺――ちいさな香水瓶のようなボトルに入った染色剤を混ぜたジェルワックスを重ねて注ぎ、好きな三日月のチャームを飾る。
「あとは固まるのを待つだけだね」
 口許を自然と綻ばせながら、和奏はゆるりと硝子越しに夜空を仰ぐ。
 いまこの温室を包むひかりたちに、自分も安らぎを覚えているように。
 このキャンドルの灯を眺めて、心|解《ほど》け――そうして日々の穏やかなひとときの供となって、あの子の夜を守れますように。