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資料群[『夜凪』に関して]

#√汎神解剖機関 #ノベル #人間災厄「トラペゾヘドロン」 #人間災厄「夜凪」

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沈々曲・螺江

……
……

 この報告書を開く為に、最大レベルの医療補助が必要だった。
 結論だけ書く。
 奴に気を許すな。
 奴はヒトの形をした、災厄そのものだ。

……
……


█月█日

 委任状
 下記の者を担当者と認め、下記の通り権限を委任します。

 1 代理人
   氏名 ████████殿
   職責 管理官 兼 上級職員

 2 委任する事項
   『夜凪』の管理
   その他付随する業務


────────
────


《個人日誌》
20██/██/██
記録者:████████管理官
詳細:人間災厄『夜凪』の到着及び経過について
█████棟に収容されてから僅か数週間の間に、『夜凪』は飛躍的に現代社会へコミュニケーション能力を適合させた。実際の所、人としての歴史が赤子や幼児のそれに近いが故に急速な発展を示すケースは存在する。だが今回は違う。私が面会の度に顔を合わせるのは、豊かな知識や教養を身に着けた青年なのだ。もっとも奴は自身の出自に感じては冗談めかした数語しか我々に語らなかった。
どちらのケースにせよ、生得的な情感が乏しかったとしても、知識を後天的な道具として駆使する程、他者との会話において正答を導き出す確率は高くなっていく。我々の中にもそうした人間が居るし、『夜凪』がしている事も、おそらくそれに近い。私には実感出来ないが。
奴は職員の指示に対して一貫して従順だった。担当者としては、既に手の入れ所が無い。これから更に厄介な相手になると、私は確信する。


第█回インタビュー(20██/██/██)
担当者:████████管理官
監視者:上級職員 計3名
被験者:人間災厄『夜凪』
[記録開始]
[『夜凪』が視聴覚室で映画を視聴している。荒れ狂う海が映し出されているが、映像元は特定されていない]
『夜凪』:お久しぶりでございます。お元気そうで何よりです。
[████████管理官が入室する]
『夜凪』:この世界は娯楽に溢れて楽しい場所ですねぇ。
████████管理官:私にはつい数十分前から、映像が切り替わっていないように見えるが。
『夜凪』:おや、言いませんでしたか? この『海』は私の元から知っていたそれよりも、遥かに明るく清らかですよ。
████████管理官:海の底よりも?
『夜凪』:どこまでも静かで、それでいて絶えず水圧に晒されるのです。この世で、あれほど陰湿な場所も存在しないでしょう。
████████管理官:まるで体験したような口ぶりだな。
『夜凪』:これは失礼致しました。
████████管理官:君の『人間災厄』としての警戒度を下げるよう、上から通達があった。
『夜凪』:ああ、社会奉仕ですか。良いですね。
████████管理官:私は反対しておいた。
『夜凪』:私を災厄とするなど、恐れ多い事です。そこまでの脅威は無いでしょうに。
████████管理官:『当該人間社会に対して必ずしも破壊的な性質を持つ訳ではない』──実に幅広く、曖昧な定義だ。
『夜凪』:そうですか。そうでしょうとも。
████████管理官:管理は今まで通り続けていく。
『夜凪』:承知いたしました。ええ──。
[記録終了]
※特記事項:担当者及び監視者同士の、実験中における視覚的認識に齟齬がある事が、インタビュー終了後のミーティングによって確認されました。原因は未だ不明です。


《個人日誌》
20██/██/██
記録者:████████管理官
詳細:経過報告
現時点において『夜凪』は一切の問題行動を起こしていない。物腰はより洗練され、話題の豊富さが加わった。与えられた自由時間の多くを勉学に費やし、貪欲に知識を吸収している為だろうか。『真面目で丁寧な物腰の青年』───奴と初対面の人間は十中八九、そうした印象を抱くに違いない。
私が言いたいのは、表面的な与しやすさをそのまま受け取る程、我々職員(少なくとも私の部下のうち一部)は馬鹿では無いと言う事だ。収容から数か月経ち、奴との関わりが浅い者と深い者とが分かれて来た。後者に近ければ近い程、私の意見に同意してくれると思う。
どのような時であれ、奴の目が笑っていた試しがないと。奴の友好的な物言いの端々には、他者を見下す感情が滲んでいる。その根源は察するしか無いが、おそらくは知識による傲慢さ故と言うよりは、元々の性質、例えば(人間と同等のものを持つとすればだが)性格傾向であったり、あるいは、奴自身が心の中でいとも簡単に思いつく判断や思考や想像が、我々職員にとって全くの盲点である事、等による。間違いなく言えるのは、奴は我々を等しく、僅かな憐みと共に軽蔑しているという事だ。
プロファイラーや刑事の手を借りるまでもなく、こう結論付けることが出来る。奴は人を殺して愉しむタイプだ。故に、決して油断してはならない。それが、私が奴と過ごして得た結論だ。


《日報》
20██/██/██
医務室で精神安定剤を数錠分けて貰った。
幻覚が酷く、巡回もままならない。


《日報》
20██/██/██
**未編集**


《報告書》
20██/██/██
記録者:████████管理官
詳細:先日承認された『夜凪』の監視体制緩和に対し、危惧を表明する
**未編集**


……
……


[録音開始]
[]海鳴りの音がずっと離れない
[]冷たく、暗い海だ。
[]波の流れと、視線を感じる。
[録音終了]


……
……


《捜査報告書》
記録者:███████警視
詳細:失踪した████████検査官に関する捜索状況について
████████検査官について……断片的な録音を遺したのを最後に、未だ行方不明。現在捜査チームが行方を捜査中。
『夜凪』について……本人は関与を否定。事件当時、その身柄は収容棟内に存在しており、少なくとも物理的な事件への関与は不可能。
捜査状況……難航。超常現象関連特別対策室への捜査打診は未定。このまま新たな進展が無い限り、迷宮入りの可能性あり。

《医療報告書》
20██/██/██
記録者:███████████博士
詳細:『夜凪』への医療捜査に対する結果報告
精神鑑定:正常
生体試料分析:収容当時と比較して変化なし
徹底した分析にも関わらず、『夜凪』による事件への関与は認められませんでした。
本人は診断に対して快く応じた上で、自身は████████検査官に対して何もしていないと言っています。


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█・█・█・█・█《ファイル破損済》█・█・█・█・█
【収容時の留意点】
『夜凪』の影響は、幻覚、妄想、暗闇、海洋及びその内容物に関連した物事への執着といった病的な心理状態として発現します。それらの多くは視界に現れ、眩暈、鬱病、空間失調などを引き起こします。また波音の幻聴、潮の香りなどの幻嗅、波や水圧を思わせる幻触覚などが発現する事もあり、それらが複合的に作用する事もあります。症状が進めば、希死念慮や認識汚染、大きな行動の変化、さらなる幻覚など、長期に渡る悪影響を────

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