シナリオ

怪人達のきぐるみショー!

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 √マスクド・ヒーロー。
 秘密結社『プラグマ』の大首領に忠誠を誓っている悪の組織の怪人達が世界征服を企むという世界。
 今日も世界を手に入れるために、彼らは悪の限りを尽くす!
 √能力者達は星詠みの話を聞いて、この世界で起きるであろう怪人達の悪行を止めにいかなければならない。
 そうしなければ彼らは√マスクド・ヒーロー以外の√全ても巻き込んで世界征服を行うのだから。

 ……が。
 星読みである時谷・美雨(ふつーだった大学生・h03910)は集まってくれた者達に向けてこう言った。

「ちょっとデパートのきぐるみショーに参加してほしいんだよね」

 なんて? と。誰かが言ったかもしれない。
 なんで?? と。誰かが声を上げたかもしれない。

 それもそうだ。普通に考えてマスクド・ヒーローなのだから、いきなり怪人と戦うことだってありうる。
 なのに。美雨はきぐるみショーに参加して欲しいと言ってきた。一体これはどういうことなのだろうか。

「どうにも開かれているきぐるみショーの中が怪人達の策略だったみたいでね?」

 美雨曰く、とあるデパートの屋上全体を使い、きぐるみ達が溢れるきぐるみショーが開かれるという。
 可愛らしいきぐるみ達がたくさんいて、何処にいても抱きしめられたり写真を取られたりと大忙しの状態。子供達は特にきぐるみ達と遊ぶのが楽しいという声が多く、皆長時間居座っている。

 だが実態は怪人達によって作られたきぐるみショー。『ベンジャミン・バーニングバード』を主に、様々な怪人達がきぐるみに扮して一般人を騙しているのだ。
 ショーが終わり次第、安心しきった全員を攫ってしまう。それが怪人達の作戦のようだ。

「幸いにも、今の時間帯はまだショー開催前だからさ。こっそりときぐるみを着て、イベントに参加して情報収集してイベントをぶっ潰すのが1番だと思うんだ」
「あ、もちろんお客さんに扮して探るのもありだよ。イベント中はどうやら怪人達も人を集めるのに必死みたいだし」

 つまり、イベント開催中は怪人達は客へ手出しすることはなく、調査のために自分達がきぐるみを着て自由自在に演出してもいいという。
 きぐるみを着ないままに客として探るのもいいが、その場合はベンジャミン・バーニングバードの居場所を探るのが主になってくるそうだ。

「……あ、流石にイベントショーだから子供達の夢は壊しちゃダメだよ? 高らかに『これは罠』って言って、成敗するところをみせるのは有りだと思うけどね」

 美雨の軽いアドバイスを受けながらも、指定されたデパートへと向かう√能力者達。
 まず手始めに行うのは、情報収集。さて、きぐるみを着るか、お客になるか……どちらで情報を探ろうか?

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第1章 日常 『怪人組織の年中行事』


十枯嵐・立花

●罠なら仕方ないよね。
「別にちょっと着てみたいとかそういうんじゃないよ。うん。これは怪人達の罠なんだ。調査しなければいけないんだ。うん」
 ぽてぽてと、可愛らしいネコのきぐるみを着てショー会場内を歩いているのは十枯嵐・立花(|白銀の猟狼《ハウンドウルフ》・h02130)。口ではいろいろと言っているが、本心はどうなのかは誰にもわからない……。
 ともあれ、きぐるみショーの実態を知っている以上、色々と情報を探る必要がある。うっかり敵であることを悟られることがないように立ち回りつつ、立花はこのショーの現実を探っていった。

 業務をこなしつつも、近くの怪人達の話に聞き耳を立てる立花。『あの辺りに人を集めろ』だの『向こうの親子が出ていきそうだから止めてくる』だの、碌な話しか聞こえてこない。
 だが彼らの話をよく聞いてみると、『クマのきぐるみ周辺に人を集めろ』という声が多く聞こえてくる。何故クマのきぐるみなのかまではよくわからなかったが、確かにクマのきぐるみ周辺は他のきぐるみが集まる様子が見当たらない。
(なんだろうな……? ちょっと見てみるか……)
 近くの怪人に休憩すると告げた後、√能力『|獣の眼光《ワイルズディテクト》』を使って右目を集中させる立花。視界に捉えた全員の隙を見つけるこの能力は、客はだいたい隙だらけで、きぐるみ達もそこそこ隙が作られている。
 だが、彼らが通達した『クマのきぐるみ』だけは少々違った。隙という隙がまるで鉛筆で描かれた点でしか見当たらず、ショーから逃さないという強い意志のもとに隙を消失させていることがわかった。
(あー……まさかとは思うが、次の相手になるか? アイツら……)
 嫌な予感がする、と小さく呟いた立花。集中している間は右目が激しく燃え上がり敵に認識される可能性が高くなるため、能力の使用もそこそこにして再びきぐるみショーのスタッフとして立ち回る。

 後に、スタッフルームからわらわらと出てくるクマのきぐるみ達の数に驚いたりしたのは……ココだけの話である。

黒木・摩那

●客側の視点
「わかってはいるけど、プラグマは恐ろしい組織です。子供達が楽しむきぐるみショーを利用して人さらいを企むとは……」
 ショーの客に扮しながらも黒木・摩那(異世界猟兵『ミステル・ノワール』・h02365)は辺りを見渡し、きぐるみショーの全容を確認する。
 見た目には至って普通のきぐるみショーで、大人も子どもも楽しめる最高のテーマパーク。しかしその実態を知らされた今となっては、全てが怪人達によって作られた偽り。摩那にとっては恐るべき知略の檻なのだと実感していた。

 その証拠に、客に扮した摩那の周りで辺りを見渡す客がチラホラと見受けられる。
 どうやってショーに訪れた客を全員攫うのかと考えていたが、観客の中にも怪人達の手先が潜り込んでいれば確かに客を一網打尽に出来るだろう。
(後は敵がどう動くかを見てみたいところ、だけど……)
 あまり辺りを見渡しては怪人達に気づかれてしまう。故にドローン『アルバトロス』を使い空からの状況把握を行いつつ、スマートグラス『ラプラス』で客と怪人を見分けて配置を確認していく。
 客が外へ出るのを阻止する係と、客を妨害する係。それぞれで分かれているようで、現場から離れようとする客を中心に妨害してから、外へ出ることを阻止している様子が伺えた。
「なるほど……それならあとは……」
 待ち合わせをする素振りを見せつつ、もう一度ドローンのカメラで地上全体を確認していく摩那。誰が何処にいるか、どのように動くかの予測をスマートグラスで計算しつつ、次の動きを待ち続けた。

 やがてクマのぬいぐるみ達がショーの周りで踊りだす様子が映し出される。
 これは普通に踊っているようにも見えるが……真相は今は定かではなく。

千堂・奏眞

●子どもの夢を守るため
「着ぐるみかぁ……」
 滅多にない機会に巡り会えて意気揚々とネコのきぐるみを着込んだ千堂・奏眞(千変万化の錬金銃士・h00700)。サイボーグ化しているため内部で熱暴走が起こる恐れもあったが、それを乗り越えてでも着てみたい! となっていた。
 きぐるみを着た後は√能力『|√通信《バーベントン》』を使い、ショー内にいるであろう√能力者との通信網を接続しておいた。後から来たとしても、彼が集めた情報を適切に渡せるように。

(さて、状況だが……)
 ネコのきぐるみを着ているからか、子供達がたくさん集まってくる。『可愛い』や『抱っこして』などの声が聞こえてくる中で、何かしらの情報がないかを探っていく。
 自分の正体が怪人達にバレないように動かなければならないため、子供達とのスキンシップには特に注意を払いつつになっていたが……そんな中で聞こえてきたのは『このネコさんは優しい』という言葉。
 どういう意味なのか首を傾げてみると、子供達は素直に教えてくれた。クマのきぐるみさんは抱っこもしてくれないし、遊んでもくれなくて感じが悪かったと。
(クマのきぐるみ……あれかな?)
 ちらりと視線を向けた先にいるクマのきぐるみ。まるで誰もショーから出さないように配備されているようで、有り体に言えば感じが悪い。
 きぐるみの中の人の雰囲気というのは子供達は特に敏感になってしまうものだ。だからこそ奏眞に懐かれていると言っても過言ではない。クマのきぐるみは確実に怪人側のきぐるみであり、重要な仕事を任せられていると言っていいだろう。

 ある程度子供達から情報を集めたところで、別のきぐるみと交代。
 そっと子供達の傍を離れた奏眞は怪人達に感づかれないように、√能力による情報網で情報をばら撒いておいた。
 あまり時間はないが、避難経路も探しておく必要があるかもしれないと判断をつけた奏眞はそのまま別の場所へ向かうふりをしつつ、客が逃げ出せそうな経路を探しておくのだった。

第2章 集団戦 『クマぐるみ怪人』



 ショーも中盤の盛り上がり。
 しかし家族連れの客が一組、外に出ようとした時にそれは起こった。

 周りに配置されていたクマのきぐるみ――もとい、クマぐるみ怪人達がわらわらと客を取り囲んでいく。
 絶対に帰らせない。絶対にここから出さない。ショーを見ていけ。ショーは楽しいだろ。
 そう言わんばかりに群がって、客を外へと出さないようにしていた。

 これに恐怖した子供が大きく泣き出して、辺りが騒然となり始める。
 自由に出ることが出来るはずのきぐるみショーで、まさか外に出られないなんて誰が予測しただろうか。
 せっかく見つけた小さな楽しみが、こんな恐怖に変わるなんて誰が予測しただろうか。

 けれどそんな恐怖を消し去ろうとするように、無数のクマぐるみ怪人達が現れる。
 クマぐるみ怪人達はキラキラおめめの可愛らしい姿のままに、与えられた任務を行う。
 『人々をショーの中に閉じ込める』。ただそれだけの任務を。
 人々が自分に恐怖しようが、もうどうでもいい。
 とにかく今は、家族を、一般人を、押し留めておかないと。

 ――皆連れて行くには最適じゃん。今の状況はさ!


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 プレイング受付:2/11 8:31~
 受付開始前のプレイングは一度お返しさせていただきます。

 集団敵『クマぐるみ怪人』が登場しました。
 現在は無数に現れており、成功数に達するまでは無限湧きの状態となっております。

 現場はデパートの屋上全体。ショーで使用される舞台や小道具などが転がっています。
 客による大混乱を極めていますが、ヒーローや√能力者達が現れると『ヒーローが来た!』と安心して落ち着いてくれますので気にしなくて大丈夫です。
 またこの章からきぐるみを着なくてもOKです。きぐるみのままで戦ってもOKです。
 思う存分、ヒーローショーのように振る舞っていただいて構いません。

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黒木・摩那

●怖いものは何処か遠くへ
 帰ろうとする家族の前に、わらわらと集まるクマぐるみ怪人。可愛らしいきぐるみだと言うのに、その姿から溢れる悪意というのは子供にとっては怖くてたまらないものだ。
 一般人の家族が一刻も早くここから出たいという要望に対しても、クマぐるみ怪人達はなんの反応も示さない。それどころかまだショーは終わってないと言わんばかりにぐいぐいと押し込んで、無理矢理ショー内に止めようとしていた。
「可愛いふりしてやることがえげつないですね、ホント」
 摩那は様子を窺っていたが、こんな状況になっては怪人達の暴走は止まらないだろうと判断。家族とクマぐるみ怪人がいざこざを起こしてしまう前に、ちりん、と1つのコインを指で弾いて――。
「――|解放《リベラシオン》」

 恐怖に飲まれた子供は、早く出たいと泣いていた。怖くて、嫌な思いが一杯胸に詰まってしまって、両親に抱きつくしか出来なかった。
 そんな様子にクマぐるみ怪人は何やら曲を歌い始め、周りにミニクマを呼び出して楽しいショーの中に家族を引きずり込もうとしていた。
 ここは怖くない場所。着ぐるみたちがたくさんいる楽しいショー。ここにいればどんなことでも、楽しく――。
「……出来るわけないでしょ!!」
 大声とともに誘惑するような音楽が鳴り止む。何が起こったと子供が目を開くと……いつの間にか目の前には赤と黒の綺麗なヒーローと、吹っ飛んで壁にもたれかかるクマぐるみ怪人の姿。
 その姿に子供は「ヒーローだ!!」と声を上げ、摩那――もといミステル・ノワールは振り向いて、子供の無事を確認する。
「さ、ここから離れて。ちょっと過激なバトルが始まりますから」
 家族にここから離れるように声をかけ、クマぐるみ怪人達を引き受けたミステル。その様子にむしろ『好都合』といったような笑顔を浮かべると、手に持っていた超可変ヨーヨー『エクリプス』を構える。
 もう一度、|ヨーヨー《これ》で吹っ飛ばせるんですよ。なんて言いたそうな表情だったが、それを告げる前には|2回ずつ《・・・・》の範囲攻撃がクマぐるみ怪人達に直撃する。

 √能力『|紅月疾走《リュヌ・ルージュ》』。エクリプスを用いた攻撃は自分を中心とした範囲内の敵全員に2回攻撃が当たり、一気に吹き飛ばす。
 爆発なんてしていないのに、まるで爆発したかのような綺麗な吹っ飛び姿勢をクマぐるみ怪人達は見せてくれたのだった。

千堂・奏眞

●子供にガチは厳禁。
 辺りが騒然とする中で、奏眞はきぐるみのまま戦場を走っていた。
 曰く、『小さい子にガチの戦闘を見せるの厳禁だよなっ』という理由から。今ここには大人だけではなく、きぐるみと遊んでいた子供達もいるのだから、あまりにもリアルすぎる現場を見せるのは後の成長にもよろしくないと判断してのこと。
 なので、奏眞はネコのきぐるみにちょっとだけヒーロー感を演出するため、マントを装着して戦場を走る。クマぐるみ怪人達がその様子に何事かと思ったが、|ネコのきぐるみ《それ》がヒーローであることに気がつくと奏眞を追いかけ回し始めた。

「ここはやっぱり、正義のヒーローっぽくかっこよくいきたいところだよね!」
 きぐるみを着ていれば、本来なら動きが制限されてしまって動くのも大変だ。けれど奏眞はそんなことは全く気にすることはなく、普段と変わらぬ動きで走り、普段と変わらぬ動きで√能力『|千変万化の錬金弾《アルケミカル・ブラスター》』を使った弾丸をクマぐるみ怪人に向けて放つ。もちろん、子供達に聞かれることのないように詠唱は極限まで小声にして。
 逃げ惑う人々を追いかけるクマぐるみ怪人を主に、自分を追いかけてくる者、外との繋がりを絶とうとしている者、全てに弾丸を発射。衝撃属性を高めているおかげで、1人に当たれば周りをガンガン吹き飛ばす。
「――リロード! どれだけ出てくるんだ、このクマ達!」
 何度も何度も弾丸を射出し、何度も何度も吹き飛ばす。けれどクマぐるみ怪人達は騒動が収まるまでは何処からともなくやってきて、一般人を閉じ込めるのに必死だ。
 ただ、奏眞や他の√能力者がクマぐるみ怪人を倒して道を切り開いているおかげで少しずつだが一般人達も脱出がしやすくなっている。彼らの去り際に『ありがとう』の声がちらほらと届いて、奏眞のやる気を一層引き出していく。

「ヒーローってのは、かっこよくいかないとな!」
 時にはアクロバティックに、時には華麗に。ヒーローとして立っている以上、子供達に無様な姿は見せることは出来ない。
 ネコのきぐるみによって射出される鮮やかな連弾は、クマぐるみ怪人達を打ち破り、吹き飛ばし、子供達を救うのだ!

十枯嵐・立花

●尻尾も立派な武器
「……ん……チャックが引っかかって外れない……」
 なんとかチャックを外してきぐるみを脱ごうとする立花。どうやらきぐるみの毛を噛んだ状態でチャックを閉めてしまったらしく、着る時には問題なかったのに今になって大事故に発展してしまっていた。
 その間にもクマぐるみ怪人達は暴れまわり、逃げた家族を追いかけようとする始末。このままでは一般人への被害は計り知れないだろう。
「……仕方ない。このままで戦うしかない」
 脱ぐのを諦めた立花。普段なら銃で戦うところだが、今回ばかりはきぐるみの手で握れないため別の戦法を使ってクマぐるみ怪人を倒して回ることにした。

 クマぐるみ怪人達逃げずに戻って楽しもうよと、非√能力者達である一般人たちにミニクマを呼ぶためにくまくま行進曲を歌おうとしていた。
 しかしその発動は唐突に発せられる音響弾によって妨害。歌を歌っても辺り一面に響き渡るモスキート音が邪魔をして、歌としての形を失わせる。
 これではミニクマを呼び出せず、一般人を撮り逃してしまう。それはまずいと一歩前へ出た時、ネコの着ぐるみ――もとい立花が前へ出た。
「――私の尻尾は……こう使う!!」
 くるりと一回転し、尻尾で連続してクマぐるみ怪人達を叩きつけた立花。√能力『|狼神の尾斬剣《ルプスレクス・テイルブリンガー》』によって強化されているおかげできぐるみと同化している狼の尻尾の一撃は広範囲にわたり衝撃を奔らせ、クマぐるみ怪人達を吹き飛ばす。
 その勢いはまさに自由奔放なネコのヒーロー。遠くから見ていた子供達が応援してしまうほどにかっこよくて、負けるなと応援の声が上がっていた。

「いい応援の声だ。が、みんなもちゃんと逃げ切るんだぞ!」
 自分の応援にかまけて、逃げられなくなったなんてなったら助けた意味がなくなる。
 故に立花は一般人達をさっさと逃がしつつ、手を伸ばそうとするクマぐるみ怪人をはたき落としながら周辺を一掃していった。

 なお、ある程度一般人が逃げたところできぐるみから尻尾がにゅるんと出ているに気づいた立花。
 最初から破けばよかったか、と気づいた時には……大体のクマぐるみ怪人が床に倒れ伏していたときだった。

ガザミ・ロクモン

●あの日の恩返しを
「うわー! クマがいっぱい!!」
 現場に駆けつけたガザミ・ロクモン(葬河の渡し・h02950)はきぐるみショーと聞いて楽しみにしていたのだが、時既に遅しの大混乱状態が目の前に広がっている。
 子供達は泣き叫び、この場から逃げようと親が子供の手を引いて、だけどクマぐるみ怪人達はファンシー力を増幅しながら一般人達を追い込んでいく。
 その様子はさながら、追い詰められた獲物と捕食者だ。その光景に幼い頃の光景――獣妖狩りに追われていたあの時を思い出したガザミは、決心してクマぐるみ怪人と一般人の間へと割り込んで一般人達を逃がしていく。
「今のうちに逃げてください! この怪人達は僕がなんとかします!!」
 あの日、幼い頃に追われていた自分を助けてくれた人のように、自分もまた誰かを救いたい。あの人じゃない別の人だけど、困っている人がいたら助けるのは当然のこと!
 逃げ出す一般人達を追いかけようと、クマぐるみ怪人達はガザミの横をすり抜ける。しかし数歩進んだところで彼らの身体は大きく揺れ始め、そのうち立てなくなるほどの揺れが襲いかかる。

「――骨の髄まで、後悔させてあげます!!」
 ガザミの√能力『|大蟹之咆哮《ダイカイショウ》』によって、ガザミを中心とした半径22メートル内にいるクマぐるみ怪人の足元に死霊の潮津波が流れ込む。
 まるで腕が絡みつくかのような感覚にクマぐるみ怪人達は難を逃れようとするが、その波は簡単には抜け出せない。逃走すらも阻止するほどの強い力に阻まれて、やがて大きな揺れが彼らを襲う。

「一般人の皆さんに手を出して、ただで済むと思わないことですね!」
 自分の能力で押し留められる範囲は少ない。
 けれど、自分が今出来ることで救われる人がいるのなら。

 ――今は伸ばせる手を伸ばしていこう!!

逢沢・巡

●どっかんどっかん!
 クマぐるみ怪人の数が減った頃、それは起こった。
 予想外の爆発。最初はショーで使うための火薬が暴発したか? とクマぐるみ怪人達は誰もが思っていた。
 しかし爆発した箇所には火薬は存在しておらず、これも√能力者によるものだと判明した時にはもう大半の怪人達が爆発に巻き込まれていた。

「よっこいしょ」
 爆発の正体は逢沢・巡(散歩好きなLandmine・h01926)がせっせと設置していた地雷。一般人を巻き込まない形でクマぐるみ怪人達だけを的確に狙った地雷の設置が、はからずも残りのクマぐるみ怪人達を一網打尽にしていたのだ。
 もちろんクマぐるみ怪人達も爆発に巻き込まれないように色々思考を巡らせた。設置された場所を探れば問題ない! と先んじてボールを投げ込んだりして起爆させておけば怖くはないだろうと。
「――どんどん行ってみよぉ~!」
 だが、クマぐるみ怪人達を襲う地雷はただの地雷ではない。√能力『mine field』による対人地雷、しかも現在耐久力が激減しているクマぐるみ怪人達にとっては最悪の相性となる爆発物。
 その対人地雷は普段は大した威力は出ない。骨を折るほどの威力もない微弱なダメージを与えるもので、踏んだ側も意識するようなものではないからだ。
 しかしこの対人地雷、耐久力を3割以下まで減らした相手には劇物へと変化する代物。どうせ微弱なものだろうと油断したところで、触れた相手を一発ドカン! とやっちまうのだから。

 ある程度地雷を設置し終えた巡が顔を上げると、そこは対人地雷の攻撃を受けたクマぐるみ怪人達の爆発で木っ端微塵になったきぐるみショーの現場があった。
「もともとがどんな場所だったかわからないほどになってるような……て、てへぺろで許されるかな……」
 ちょっぴりドキドキしている様子の巡。怒られないかな……と不安になっているが、実際は問題ないようだ!

第3章 ボス戦 『ベンジャミン・バーニングバード』



 一般人が避難を終え、クマぐるみ怪人達が成敗された後。
 きぐるみショーのあったはずの会場に、ヤツは現れた。

 ベンジャミン・バーニングバード……今回のきぐるみショーを企画し、一般人を攫おうとした怪人。
 本人がきぐるみっぽいのに加え、クマぐるみ怪人という適切な怪人がいたことから今回の計画をひらめいたようだが、すべてが水の泡となってご乱心のようだ。

「最高の計画を邪魔したお礼に、鉛玉をくれてやる!」
「ショーの設置費用とかきぐるみ代とか、洒落にならないほど高いんだぞ!? どうしてくれるんだ!!」

 割と生々しい諸事情がベンジャミンから飛び出しながらも、彼は自動小銃を構える。
 この怒り、√能力者で晴らしてしまうしかねぇ!! と。

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 プレイング受付:3/5 8:31~
 受付開始前のプレイングは一度お返しさせていただきます。

 ボス敵『ベンジャミン・バーニングバード』が登場しました。
 生々しい諸事情を叫びながら√能力者たちに襲いかかってきます。逆恨みとも言う。

 現場はデパートの屋上全体なのですが、第2章とは違い更地になっています。
 ショーの小道具などはすべて吹っ飛びました。
 今回はお客は1人もいません。なんとか脱出することに成功していますので、気にせずベンジャミンを殴りつけてOKです。
 ヒーローショーは終わりました。あとは、ご自由に。

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十枯嵐・立花

●死ぬと問題ない?
 ベンジャミン・バーニングバードが逆恨みの言葉を放ちながら、事前に招集していた12体ものゆるキャラ達を指揮していく。このゆるキャラ達もそこそこの資金を投入しているので、彼らが倒れるとその分の資金も無駄になることはベンジャミンは気づいておらず……。
「大丈夫。死んで相続放棄すれば借金はチャラになるって聞いたことある」
 そんな中で立花は冷静なツッコミを入れる。いったいどこで聞いたのか、相続放棄さえしてしまえば今回使った分の費用とか考えなくて良いのではないかと。
 更に立花はこの作戦が実は相続放棄が織り込み済みで、最初から計算された設置費用だったのではないかと気付いた。莫大な費用を使うだけ使った後、√能力者に倒されることですべてをチャラにしようとしていたのでは!? と。
 なお実際そういうわけではないのだが、流れ的には多分そうなるので最初から計算されていたのかもしれない。
「さすが悪の組織だ……倒れた後まで悪……」
 資金の行方についてまで徹頭徹尾悪を貫く姿勢のベンジャミン。倒されても悪でしかないが……放っておいたほうがより悪なコトをやらかしそうなので、ここで討伐しておきたいところ。

 幸いにも屋上は更地になっているため、遮蔽物はない。だがその分12体ものゆるキャラ達の小銃に囲まれてしまうと形勢不利に陥ってしまう。
 囲まれないようにゆるキャラ達を飛び越えつつ、自分を攻撃しようとしたゆるキャラに√能力『|獣の猟技《ワイルズハント》』を発揮して距離を詰め、小銃で先手を打った。
 その後風を纏うことで隠密状態になるため、より素早く、より的確にゆるキャラ達を倒してベンジャミンを圧倒していった。

「なんか反応速度が遅い……けど、好都合だね」
 ベンジャミンとゆるキャラ達の反応速度の遅さに気付いた立花だが、こちらに不利になるようなものでもないしと気にせずベンジャミンとゆるキャラ達を小銃で撃ち抜き、手早く片付ける。
 小銃で撃ち抜かれたゆるキャラ達は立花を攻撃する間もなく消滅、残されたベンジャミンもまたその身体に大量の銃痕を残しふらつきながらも√能力者への反撃の意志を見せ続けていた。

黒木・摩那

●倒されれば全部終わり
 ベンジャミン・バーニングバードは再び自動小銃を装備したゆるキャラ達を12体呼び寄せた後、周囲警戒を促す。√能力者達に(一切使われたことはないが)使われた(という体の)資金を取り戻し、失敗しそうなこの現場を修復しなければ悪の組織という面目が丸つぶれだ!

「いやいや、あんな杜撰な計画立てといて、潰されて文句を言われる筋合いはないですね! むしろ損切りして感謝されたいぐらいですよ!」
 そんなベンジャミンの杜撰過ぎる計画に対して摩那がツッコミを入れた。そもそも自分達が資金を使った覚えはないので、そこもきっちりとツッコミを入れておく。
 右手に刀・白波残月を構えて、左手で和傘・飛天御前を盾として使い次々にゆるキャラ達を圧倒していく摩那。時々開いた傘を瞬時に畳み、傘の柄でゆるキャラを引っ掛けて盾のように扱い射線を遮る。
 指にかけた銃の引き金はそうそう簡単には外せない。仲間が敵の前に立ちはだかろうと、引いてしまった引き金を戻すには数秒ほどの時間が出来てしまい、その間にも摩那の前に立ってしまった者は次々に銃弾を受け穴だらけのゆるキャラへと化していく。
 まずい。このままでは非情にまずい。このまま帰ったらどうなるか。この計画は完璧だと言った手前何が起こるか。ベンジャミンの頭の中ではぐるぐるぐるぐる色々と考える。
 が、ベンジャミンが答えを出すよりも早く、ゆるキャラ達の壁を乗り越えてきた摩那。近づく間際に√能力『怪異解剖執刀術』による一撃でベンジャミンの足を使用不能にして身動きさせないようにしておいた。

「このまま帰ったらボスに粛清されるのは目に見えてますから、ここで倒されてはいかがです?」
 見下ろしながらも、このあと起こるであろうベンジャミンの未来を告げる摩那。
 手に持った刀を振り下ろし、ベンジャミンの頭を叩いて使用不能に陥れる。

 ……きぐるみを食べることが出来ないことだけが、ちょっと残念だが!

マイティー・ソル

●秘密組織のヒーロー、参上!
 この世界はヒーローとヴィランという、わかりやすく二分化された世界。
 ベンジャミン・バーニングバードが|悪《ヴィラン》で、√能力者が|正義《ヒーロー》。
 そう、この場は現在ヒーローとヴィランによるわかりやすい構図が広がっている。故に……。

「――この世に悪がある限り、十二の光で、世界に調和を齎さん! オリュンポス戦隊、トゥエルヴマキア!!」
 12人の戦隊ヒーロー『トゥエルヴマキア』を呼び出したマイティー・ソル(正義の秘密組織オリュンポスのヒーロー・h02117)は、ベンジャミンが呼び出していた12人の自動小銃を装備したゆるキャラ達に向けて突撃命令を下す。
 トゥエルヴマキアも、ゆるキャラも、マイティーも、ベンジャミンも、12人が呼び出されている間は反応速度が半減してしまう。しかしどちらも同条件故に、本来ならばデメリットとなりうる条件が打ち消されてしまうため、ここからは本人達の技能のみで行われるデッドヒートバトルとなる!

「きぐるみを利用し、人々を集め攫おうとする計画……。演芸事業側から情報を集めておいて正解じゃったな!」
 マイティーが現場に到着できたのは、正義の秘密組織「オリュンポス」が表事業側で集めていた情報の中から今回のベンジャミンの作戦を聞きつけたため。いろいろと邪魔が入ったが、ようやく大元であるボスのベンジャミンに辿り着いた。
 デパートの屋上が壊れない程度の重量攻撃を叩き込み、反応速度は限界突破させて強制的に上昇。後で肉体が悲鳴を上げることは自明の理だが、彼女にとっては『今』『この時』に力が必要なので無理矢理に負荷を上げる。
 対するベンジャミンはマイティーの攻撃に食らいつくが、銃を起点とした戦法を得意とする故に近接戦が苦手のようで、マイティーのクールナールブレイドを弾くことが精一杯。
 切って、薙いで、時には足払いをしてベンジャミンを転ばせて。大きな隙ができた時には一撃を叩き込んでいく。
 知らないうちに増えていく傷にベンジャミンはわけもわからず銃を乱射しては、マイティーの手のひらの上で踊らされていった。

 ――正義のヒーローってのは、秘密裏に動くのが大得意なんだ。

ラグレス・クラール

●許されないことは、誰だって許せない。
「きぐるみを利用して一般人を誘拐しようとしてた……って、めちゃくちゃ最低な奴らじゃん!」
 ラグレス・クラール(陽竜・h03091)はベンジャミン・バーニングバードを前に、怒りに震えていた。√マスクド・ヒーローの世界ではよくある話だとは言え、何も知らない一般人を可愛いもので惹きつけて攫おうなんてのは、倫理に反することじゃないかと。
 よくあることだから別にいいだろ、なんてベンジャミンは吐き捨てたものの、ラグレスには通用しない。徹底的に倒してやらないといけないと判断したラグレスは√能力『天照顕現』を使い、護霊「テラ」を呼び寄せた。

「――おいでませだぜ、オレの護霊!!」
 現れた護霊「テラ」はラグレスの欠損した角の周りをふよふよと浮かぶと、ベンジャミンの姿を確認。アレが敵だとわかると、すぐさま攻撃態勢に入り、天照光輪によってラグレスとの連携技を決める。
 相手が自動小銃による牽制を行えばテラは光輪の光量を増やして目眩ましを行い、素手による捕縛を決めようとすればラグレスに指示を出し、サバイバルナイフによる強撃でラグレスがダメージを受ければ即座に治癒の術で彼の身体を治療する。
「助かるぜ、テラ! コイツは絶対に倒すぞ!」
 ラグレスもまた、闘争心を剥き出しにしてベンジャミンに食らいついていく。距離が縮まっていない間は衝撃波でベンジャミンを攻撃し、距離が縮まったらグラップルによる一撃でデパートの屋上の床にベンジャミンを叩きつける。
 もう既にベンジャミンはいろんな√能力者の一撃を受けてフラフラの状態。しかしこの作戦だけは絶対に、絶対に、ここで終わらせてはならないと何度も立ち上がる。

「しぶといけど、アンタがやったことは許されることじゃないんだよッ!!」
 ラグレスが本気で叩きつける。一般人の恐怖の対象にもなったベンジャミン・バーニングバードは、ここで倒しておかなければならない。
 たとえこの出来事を人々が忘れたとしても、その事実だけは残ってしまう。故にラグレスは一般人達の代わりに、彼らの恐怖を晴らすようにベンジャミンへの一撃を叩きつけるのだ。

兎玉・天

●お持ち帰り~♪
 ぼろぼろになったベンジャミン・バーニングバード。終わりの近いきぐるみショー。
 そんな荒れ果てた光景の中に、|それ《・・》は現れた。

「んん~? きぐるみショーをやってるって聞いたんだけどナ~?」
 |兎玉・天《うさてんちゃん》(うさてん堂・h04493)はひたひたと、楽しげな様子で会場へと訪れた。
 しかし既にきぐるみショーは終わりを迎えており、デパートの屋上はなにもない更地の状態となっている。ここできぐるみショーがあった、という事実を残すかのように辺りにはきぐるみが散らばっているが、それ以外はボロボロのベンジャミンと彼が呼び寄せた12体のゆるキャラしかいない。
 せっかくニンゲンちゃん達の楽しい様子が見れると思ったのに、こんな状態は聞いてない。持ち帰れそうなものは目星がついたけれど、やっぱり彼女は「ニンゲンちゃん」の楽しい様子も見てみたかったわけで。
「も~~~! キミ達のせいでショーが見れなかったじゃんネ!」
 ぷんぷんと怒りをあらわにしたうさてんちゃん。実際はベンジャミンが開催したショーなのだが、そんなのは彼女にとってはお構いなし。見れなかったことに対する怒りをぶつけるだけ!

 自分の質量を自由自在に操れる彼女は√能力『兎玉天⭐︎質量操作』を使い、身体を大きく変化させる。大女へと変貌した彼女はまず真っ直ぐに12体のゆるキャラ達をビンタで張り倒して、吹き飛ばしていく。
 見たかったと駄々をこねる子供のように、ベンジャミンの手が付けられないほどに大暴れするうさてんちゃん。そのうち振り回している手がベンジャミンを叩き潰す形になりはじめ、フラフラな彼はやがてうさてんちゃんの手の下にて伸びてしまう。
 いとも簡単に倒せてしまったが、それでは気持ちは収まらない。どうしたもんかと悩む様子だったが、うさてんちゃんは閃いた。

「うさてん堂にきぐるみ飾っちゃえばいいや~♪ 可愛いし、いざとなったら誰かに着せてもいいしネ☆」
 そう言うと彼女は、屋上に落ちていたきぐるみを拾い集めていく。幸いにもきぐるみは戦闘だったにもかかわらず綺麗な状態のものがいくつか見受けられたため、それらを丁寧に拾い上げて埃を落として集めていくのだった。

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