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カミガリの初陣、あるいは終焉
ゾディアック・ミラー
これは2章構成の期間限定シナリオです。10/25(日)16時頃までに完結したシナリオの結果により、宿敵の運命が変わります。なお、期間中に宿敵主によって倒された場合、通常のルール通り宿敵は絶対死します。
アスファルトから立ち昇る雨上がりの匂い、いまだ陽が射さない薄暗い空。
暗い建物に囲まれジグザグに切り取られた天の中に、それはいた。
まるで白い龍のように見えた。
いつまでも冴えない日々の中に、吉兆をもたらしてくれるのではないかと夢見た。
……しかし、自分は|警視庁異能捜査官《カミガリ》という超常現象と隣り合わせの職業のことも、世界がそんな甘っちょろいものでは無いことも、最期まで理解することができなかったのだった……。
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「というわけでこの彼、新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》さんは怪異に襲われ亡くなってしまう未来が見えました。残念なことです」
さらりと悲惨な予知を語る星詠みは|誉川《ほまれかわ》・|晴迪《はるみち》(幽霊のルートブレイカー・h01657)。
黄泉との境界線が曖昧なユーレー曰く、ここで"逃げる"の選択ができなかった事実こそが、彼の命運を分けたのだという。
「強者の陰謀を察知する大きな丸鏡"ゾディアック・ミラー"を用いたことにより、"見た者に厄災をもたらす能力"を持つ怪異『荒魂ノ辻』が捕捉されました。……そう、今のはこれから起こる事件のお話。新人さんは生きていますよ、今はね」
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最初に遭遇するのは新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》が、厄災に引き寄せられ宙を浮遊する異形のクラゲ怪異『|泡沫水母《ホロウ・ジェリー》』の群れに襲われている場面だという。
彼自身も√能力【|霊震《サイコクエイク》】で対抗しているが、大分苦戦を強いられている。
「助けたいと思うかもしれませんが、こちらのクラゲは生存本能で生物を襲撃し捕食する相手。弱みを見せた相手を優先して狙います。混乱して碌な動きをしない新人さんはハッキリ言って足手まとい。無視するのが効率的ですよ」
そんな無慈悲な! と言いたげなEDENの表情を見て、ならばと頑張って首をひねり……更に首をひねり……ついに空中で逆さまになるユーレー。
「う~ん、そんなに気がかりならば…………やはり経験少なく、判断も察しも悪い彼自身に、動いて逃げてもらうのを待つしかないでしょう。その間、多少の苦戦は覚悟できますか?」
──新人に向かう敵を優先して倒し生存時間を伸ばす。|警視庁異能捜査官《カミガリ》を続けるならば恐れるなと叱咤激励する。ここは任せろ君は報告しに帰る義務がある、と逃げの罪悪感を取っ払う言葉をかける。
EDEN達が手間暇をかけてなお、無事逃げおおせる確率は五分五分。
彼に降りかかった厄災とは、それほどにも凶悪な代物なのだ。
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「怪異殲滅の後、無自覚にも此度の元凶となった白龍『荒魂ノ辻』と対峙することができるでしょう。予知では、犠牲となった新人さんの|魂《インビジブル》を喰らっており、三種全ての√能力が同時に使用できる状態となっております」
怖いですね~などと軽く続けるが、そこらの|王権執行者《レガリアスグレイド》ですら出来ない超芸当である。
地・天・水による天変地異を同時、……もしも運命を変えられていたら、どれかひとつずつとはいえ自然災害を、避けて押し通って倒して鎮めなければいけない。
途方もない戦いとなるだろう。
「なおこの白龍、一定期間内に連続で倒し続ければ、出会った者に厄災を見舞う力……"厄災伝播能力"の一部を吸収し剥ぎ取ることができます。多くのEDEN達が尽力すれば、理論上は完全な無力化も可能となるはずです。頑張ってみるのも、楽しいと思いますよ」
それでは、どうぞ武運を。
ユーレーが導く先は仄暗い薄暮をまとう世界、√汎神解剖機関の路地裏へと繋がっていた。
これまでのお話
第1章 集団戦 『泡沫水母』
「目撃者を見捨てろ、か……。生憎、死亡者を出すのは、私の方針に反する」
厄災に巻き込まれ、怪異の残骸を内包する異形『|泡沫水母《ホロウ・ジェリー》』の群れに襲われる新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》の青年。 、壮年のドラゴンプロトコル、リオル・グラーヴェルター(|葬竜《ドラゴンゾンビ》・h01271)が、その惨劇を見過ごすはずもなかった。
職業から来る矜持があるのだろう、青年はクラゲの怪異に囲まれながらも必死の面持ちで√能力【|霊震《サイコクエイク》】で応戦している。
しかし……見るからに相性が悪い。
浮遊するクラゲ怪異はプルプルと激しく震えはするもののダメージは微弱で、その効果は足止めにしかなっておらず、決定打に欠ける。
迫る口腕と触手、無数の刺胞がリオルの肉体を鋭く切り裂き、血を濡らす。
だが、その巨躯は微動だにしない。
傷を負いながらも一番槍として立ち塞がる190cmの背中が真っ直ぐ青年と怪異の間に入り、絶対の防壁となる!
「──!? あなたは……」
「良い足止めだ。この群れは私が引き受ける。──君は息を整え、生きて報告に戻りたまえ」
逃避の罪悪感を拭い去る静かな叱咤。
直後、葬竜の眼が鋭く光る。
「|灰は灰に塵は塵に《Asche zu Asche, Staub zu Staub.》。悔い改めたまえ……ただし赦しは、品切れだ」
発動するは√能力【|罪過葬送《ツミオクリ》】。
刹那、外から激しく揺さぶられていたクラゲは、残骸を閉じ込めた細胞一つ一つの内側から震え出すように|戦慄《わなな》き始める!
罪の幻影に捕らわれたクラゲの群れを、リオルの振るう|方尖柱《オベリスク》がまとめて串刺しにし、地よりせり上がる無数の無記銘墓碑が破裂させるように突き上げ磨り潰す!
バシャバシャと、水と怪異の亡骸の欠片を撒き散らし、クラゲ群の陣にわずかな空間が出現する。
「走れ!」
「は、はい!!」
足をもつれさせながら移動する青年を、またクラゲが追う。
補助せんと背中を見せたリオルの死角から、また別のクラゲが襲いくる。
どうやら青年は格好の獲物なだけでなく、強者の隙を作る最高の餌として機能しているようだ。
「なるほど、だから庇うなと。──だがこの苦難を経た彼は、良い|警視庁異能捜査官《カミガリ》に成長してくれると思わないか?」
それは|つながりを求める限り無き欲望《EDEN衝動》から。
なにより虐殺を生き延びてここにある、リオルの願いから。
魂葬の|格闘者《エアガイツ》は迫りくる骸の水母群を正しく埋葬せんと、静かに|方尖柱《オベリスク》を構え直した。
暗い建物に挟まれた薄暮の路地裏。
ゆらゆらと宙を漂うクラゲ怪異の群れは、まるで不気味な水族館の様相を呈していた。
解剖された怪異の残滓が不気味に溶け合う群れ──『|泡沫水母《ホロウ・ジェリー》』。
必死に逃げ道を探して右往左往する新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》の青年へ、群れをなす触手が襲い掛かる。
絶体絶命の危機。
だがその猛威のただ中へ、一筋の黒影が鋭く割り込んだ。
「ここは僕が引き受けます。生きて戻って、見たことを報告していただけませんか」
動揺する新人と怪異クラゲの間に颯爽と立ち塞がったのは、不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)。
新人よりも若いだろう17歳の学徒動員兵は、黒縁眼鏡の意匠をしたバトルゴーグル"蓮眼"を滑らせ、背後の青年のバイタルと敵の死角を即座に把握していく。
怯える者を咎めることなく、その報告に重要な価値を見出す温かな声掛け。
逃避の罪悪感を拭い去る言葉が、新人の失われた正気を呼び戻してゆく。
直後、覚悟の全身から強烈な覇気があふれ出す!
「必要な力はすでに内にあります。それを導き出します──!」
発動するは√能力【|阿頼耶識《アラヤシキ》】。
大切なものを守りたいという純粋な信念が覚醒を促し、彼の速度は即座に跳ね上がる!
驚異的な立ち上がりで宙を蠢くクラゲ達の先手を取り、頭上に浮遊する半自律砲台"念砲従機"から精密な連射を叩き込んだ!
青年に迫る個体は空間ごと弾幕に洗われ、肉片を撒き散らして後退を余儀なくされる。
入れ替わるように新たな列からクラゲ達が、触手と胎鐘内の肉片を肥大化させ急加速で蹂躙せんと迫る。
危険な間合いの変化に対し、覚悟は深追いを避けて即座に距離をとり直した。
しかし、それを待っていたかのように、新人の青年に向かっていたクラゲが死角から急接近。
覚悟の側面を容赦なく捉え、鋭利な刺胞で貫く。
「──っ!!」
原始的な生物怪異が不意に行う、まるで計算尽くの奇襲。
鋭い痛撃が走り、切り裂かれた肉体から鮮血が舞う。膝を折りかけるほどの衝撃と痛感。
だが、少年の眼光から光が消えることはない!
血管を自力で閉じるがごとく筋肉を引き締め、痛みを追いやり意識を取り戻す。
次いで迫る触手を高密度合金の屠竜大剣"滅巨鋼刃"の一閃で一断し、さらされた胎鐘を"念砲従機"の追撃で叩き潰す!
勢い付き掛けた捕食者を決して有利には立たせない。冷徹な戦闘術で危機を脱してみせた。
「絶望の中でも光は消えません。この戦場に希望を取り戻します──!」
次いで展開するは、戦場を揺るがす√能力【|戦場の支配者《センジョウノシハイシャ》】。
覚悟を中心に、蒼い炎の波動が波紋となって路地裏全域へ広がっていく!
炎が触れた瞬間、怪異たちの猛攻で負傷し絶望に沈んでいた青年の心身に、溢れんばかりの生命力が注がれる!
外部から受けた一切の負傷と状態異常を打ち消す治癒の領域──戦場の理を書き換えるような蒼炎の閃光は、まるで滅びの淵から救い出してくれる、温かな陽の光のようであった。
「さあ、行ってください!」
「あ……はいっ! ありがとうございます!」
再び託された役割と退路を得て、青年は震える足でしっかりと地を蹴り、無我夢中で走り出す。
追撃を企てる水母群に対し、自身も蒼炎で回復した覚悟は"滅巨鋼刃"を低く構え直す。
誰かの笑顔を守るため、少年は揺るぎない覚悟を胸に、送り出した青年の希望として戦い続けるのだった。
重く湿り気を含んだ大気が漂う、見慣れた路地。
日頃からこの街で賞金稼ぎを営む橘・あき(人間(√EDEN)のフリークスバスター・h00185)にとって、異能の脅威そのものは別段珍しいものではない。
だが、視界を埋め尽くす群勢──解剖された怪異の残滓を孕むクラゲ怪異『|泡沫水母《ホロウ・ジェリー》』の不気味な蠢きは、流石に骨の折れる仕事を予感させた。
その視線の先で、新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》の青年が恐怖に呑まれ、浮遊する異形の標的と化している。
「一般人なら助けるけれどね。√能力者でしょう、死に戻りなさいな」
金髪のボブショートを揺らし、あきはクールに言い放つ。
口ではそう冷たく言い捨てるものの、敵が集団で弱者を優先して貪る習性を持つ以上、話は別だ。
格好の獲物として狙われる彼の前へ、パンツスーツ姿の公認会計士にして|屠竜騎士《ドラゴンスレイヤー》は迷いなく滑り込み、あえてその標的を自ら引き受ける。
助ける気など毛頭ないと言い張りながら、身体が勝手に盾となって割り込むのは、彼女の性分ゆえか。
「ちからをかして」
得物である詠唱魔導槍"thunder*"へ呟くように密やかに呼びかけ、発動するは√能力【|これこそ愛《ヘルプ》】。
夫のイニシャルが刻まれた槍内部の文字が覚醒し、あきの身体に過酷な防衛戦を耐え抜く爆発的な耐久力が満ち溢れる!
「私、愛されてるから」
間髪入れず、展開するは√能力【|愛雨霰《アイ・アメ・アラレ》】。
顕現した630本もの"thunder*"のうち、240本を念動力で組み上げて15個の簡易盾を形成。
あき自身の周囲と背後の青年を覆う防壁として展開し、残る390本を一斉に全方位へ射出する!
だが、クラゲ怪異の群れも増殖させた口腕と触手で全方位から殺到。
猛烈な多重攻撃が簡易盾の隙間を穿ち、あきの腕や肩を次々と刺してゆく。
激痛と衝撃に思わず膝を折りかけるが、覚醒した耐久力と執念があきの体を繋ぎ止めた。
深手から血を流しながらも彼女は冷たい笑みを崩さず、押し寄せる質量を強靭な軸で真正面から受け止めてみせる!
猛攻を耐え切った瞬間、嵐のような390本の銀槍が死角を埋め尽くすように炸裂!
すぐさま回復を図ろうとしたクラゲ怪異すら針山と化し、捕食者の戦列を完全に瓦解させた!
「さっさと走って、どっか行って」
敵を完全に押し留めたまま、あきは背後の青年に冷たく言い放つ。
圧倒的な攻防と不屈の背中に後押しされ、青年はハッと正気を取り戻すと、拓かれた退路へと無我夢中で走り出した。
助けるつもりはないと強がりながらも、完璧な仕事ぶりで戦場を掌握してみせるクールな姿。
あきは大振りの金色のピアスを揺らし、残党を迎え撃つべく槍を構え続けるのだった。
──出口が、遠い!
焦りと緊張からか、薄暗い路地裏が更に暗く、視界がしぼんだように狭い。
僅かに見える端を不気味に蠢くは、歪で白く濁った胚胎の群れ。
生物の解剖残滓を内包するクラゲ怪異『|泡沫水母《ホロウ・ジェリー》』が、追い詰めゆく新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》の青年へ向け、捕食の触手を一斉に伸ばす。
死線に晒される青年の後ろへ、白衣の裾を揺らした一人の男が、音もなくスルリと滑り込む。
「……|水母《くらげ》か。形取る生き物は似ているが、|水怪《うちの》とはえらい違いだ」
そう静かに感想を呟くのは|白片《しらかた》・|湊斗《みなと》(溟・h05667)。
己の視界を不気味に泳ぐ水怪|硝子箱の海月《シーワスプ》の脈動を感じ取りながら、冷徹な研究者は眼鏡の奥の青い瞳で冷ややかに青年を見る。
(目撃者は見捨てるのが推奨と。なるほど、得意分野だ)
そっと内心で自嘲する湊斗。
“助けられるかも”が限界と称する身。
期待されるのも、他人を助けること自体も恐ろしい。
──だが、見捨てる恐怖はそれ以上だ。
不愛想な表情の裏に葛藤を隠し、彼は偶然を装って新人へ向かうクラゲの群体を引き受け、戦闘を開始した。
「見るなと言ったのに」
詠唱と共に解き放たれるは、√能力【|燐泡海《バイオルミネセンス》】。
周囲が一瞬にして蒼く光る毒泡の海へと塗り替えられる!
無数の泡が弾け飛ぶや、猛毒がクラゲ怪異の肉体を細胞単位で苛み始める!
劇物の侵食を受けた胎鐘は歪に収縮し、断末魔の破裂音を奏でて次々と潰れ落ちていった。
だが、クラゲ怪異の群れは毒に蝕まれながらも、胎鐘内から未成熟な怪異の肉片を召喚。
溢れ出す肉片の力で回復しながら、死角に回り込ませた鋭利な触手を殺到させる。
「くっ──!!」
湊斗の肩が深くえぐられ、鮮血が銀髪を濡らした。
傷の中で次々と刺胞の毒針が炸裂し、思わず顔を歪める。
だが、怪異解剖士としての観察眼が鈍ることはない。
迫る新たな触手を|海月《シーワスプ》の傘による|防御《オーラ防御》で冷酷に弾き返すと、肉片が回復・融合を図る間隙を狙い澄まし、こちらも己が水怪の毒、硝子の|弾丸《シリンジ》"剣状棘"を射出!
組織の再結合を許さぬ毒属性を乗せた強烈な攻撃の連続で、クラゲの捕食能力を削ぎ落としてゆく!
押し戻された死線。
背後で広がった圧倒的な余裕に気付いた青年が振り返ると、首を振って精一杯の一礼。
そして再び、先程よりも明るく広くなった視界で、退路へと最後の力を振り絞って走り抜ける。
──もう新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》の姿は、裏路地に無い。
この世界で歩んでゆく者への手痛い洗礼だったと、後にEDEN達の姿と共に思い出すのだろう。
人助けへのトラウマと恐れを抱えながらも、見捨てることなど決してできない性分。
不器用な優しさを背中に滲ませ、湊斗は残るクラゲ怪異を殲滅すべく、静かに次の毒泡を充満させてゆく。
第2章 ボス戦 『荒魂ノ辻』
雨上がりのアスファルトが放つ、少し冷たい土の匂い。
裏路地を抜けた先に広がるのは、日常が唐突に途切れた、どこか切なくがらんとした空間だった。
そこに降り立つは、白き災害の化身──『荒魂ノ辻』。
自身が運命を狂わせている自覚すらなく、ただ無意識に災いを振り撒き、魂を貪ろうとする本能のまま佇んでいる。
だが、本来喰らうはずだった命は、EDEN達の手で無事に繋ぎ止められた。
肥大化を阻まれた無垢なる厄災を前に、大気が激しく軋み出す。
交差する理不尽な災いを完全に断ち切るため、いま、決戦の火蓋が切って落とされる。