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西谷・いずみ
多摩川・あさか

 がたん、がたん。
 線路をゆく列車の音がだんだんと小さくなって、駅の改札から多くの人が流れ出る。
 |西谷《にしや》・いずみ(人間(√EDEN)のルートブレイカー・h00916)は、改札の前に立ってきょろきょろと改札から出て来る人の顔を伺っていた。
 神奈川県、相模鉄道相模本線、鶴ヶ峰駅。掲示板には遅延情報もない。
 もうすぐ見つかるはずだ。時間に間違いが無いのなら――。
「おまたせー」
 そう言って、改札からいずみに近付いてくる女性に、いずみはぱっと顔を明るくした。
 |多摩川《たまがわ》・あさか(西谷・いずみのAnkerのそっくりさん・h06650)。事情を知らない誰かが見れば、双子か、あるいは姉妹と思うだろう。
 それほどまでにそっくりな二人だが、あくまでふたりはそっくりさん。けれど、二人は家族のように仲の良い親友同士であった。
 二人は並んで歩きだし、駅を出ると軽く背伸びをした。
「あれから……4年ですか」
 駅前を歩きながら、いずみがあさかに語り掛ける。
「そうね」
 いずみの言葉にあさかが頷き、そして遠くを見つめると、ちょうど相鉄本線を通る電車が迫ってきているところであった。
「東急・相鉄直通から3年……」
「色々あったね」

 二人の出会いは2022年。
 鶴ヶ峰駅からは遥か50kmほども距離のある、東武東上線鶴ヶ島駅から始まった。
「へぇ、鶴ヶ島……」
 いずみは、この後相鉄線と直通することになる東急線の路線図を眺めていた。そこに『鶴ヶ峰』によく似た『鶴ヶ島』という駅があることを知っのだ。
 なんとなく興味の生まれたいずみは、乗り継ぎに乗り継ぎを重ねて、鶴ヶ島へと向かうことにした。
 まずは横浜、続けて東急東横線・副都心線・東武東上線――。
 約2時間の小旅行。だけれどそんなのまるで苦にならない。鉄道が好きないずみには、むしろご褒美のような時間だったろう。
 がたん、がたんと揺れる座席を楽しみながら、いずみはとうとう目的の駅『鶴ヶ島駅』へと到着した。
「ん~、着きましたっ」
 半ば目的は達成したようなもの。あとは軽く散策をして……と思っていたところ、ホームの端に立つ一人の女性に目が留まる。
「……?」
 いずみが目をこする。続けて眼鏡の曇りを確認した。
 その女性は、ボブヘアで、眼鏡をかけて、今のいずみと同じような姿をしていたのだから。
 カメラを電車に向けて、写真を撮っていたその女性は、レンズから目を離してきょとんとした顔をした。
「……あれ?」
 二人の目が合う。同じような顔、同じような出で立ち、そして。
「あ、あの。あなたも鉄道が好きなんですか?」
 これがいずみとあさかの出会いだった。

「へぇ、鶴ヶ峰から」
「そうなんですよ、似た名前があるって知って、気になっちゃって」
 あっという間に意気投合した二人は、お互いがどういう経緯でこの駅に来たのかを語り合っていた。
「私は相鉄線ユーザーで」
 いずみの言葉にあさかも返す。
「私は東武東上線」
 お互いよく使う路線のことであれば、人一倍詳しい。互いの異同点を語り合い、うんうん頷きあって。
 これまでに撮った写真を見せたり、電車の乗り心地や見える景色を語ったり。
 楽しい時間はあっという間に過ぎ、いずみは「あっ」と顔を上げた。
「もうこんな時間。帰らないと」
 再び片道2時間近い旅が待っているのだ。苦ではないが、鶴ヶ峰駅に着くころにはすっかり遅くなってしまう。
「それじゃ、また語り合いましょう?」
「もちろん!」
 こうして二人は約束を交わし、あさかはいずみを見送った。

 ――そして、その約束は、今もまだ続いている。
「それじゃ、今日は私が案内します」
 2026年。いずみの先導で、鶴ヶ峰周辺を二人は歩き出す。
 似た顔、似た趣味。かけがえのないAnker。
 重なり、繋がり合った二人の路線は、これからもずっと、続いてゆく――。

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