シナリオ

墓場ダンジョン~死者の~

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 √EDENのとある墓場にて、それは突如として現れた。
 墓石を組み換え地下を掘り、天上界の遺産は瞬く間にダンジョンを形成する。
 それは、そこで眠る者だけでなく、周囲でさまよう者たちも呼び寄せた。そして力も与えてしまう。
 善良だったインビジブルすら邪悪に書き換えられ、彼らは時にダンジョンの外へと繰り出し周辺住民に襲い掛かろうとしていた。
 そのままダンジョンを放置すれば更なる死者を呼び寄せ、取り返しのつかない魔境へと生まれ変わってしまうだろう。
 そこは、インビジブルにとっては居心地のいい場所だ。さまよう果てに見つけた安住の地であり、その存在を肯定して後押しまでしてくれる。
 けれど死は覆していいものではない。
 とはいえそれを解決するのも、理から外れた者なのだろうが。


「√EDENにダンジョンが出来まして、その影響で周辺のインビジブルが凶悪化しているようです。早急の対応をお願いしますよ」
 星詠みは√能力者たちに語り掛ける。
「すぐにでも向かってもらわないと、周辺住民に被害が出そうなんですよね。困ったものです。インビジブルたちは、二度目の人生とばかりに楽しんでいますが、ええ、容赦はしないでくださいな」
 きっと死者の中には同情したくなる者たちもいるだろうが、被害の事を考え星詠みは厳しく告げた。
「内部も恐らく、精霊とか亡霊とかの類が待ち受けていると思います。十分に気を付けて下さいね」
 そうして扉を開き送り出す。
「それでは、よろしくお願いします」

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第1章 集団戦 『地元の不良の亡霊』


神代・神雲

 神代・神雲は溢れる亡霊たちに呆れたように宣告する。
「はーい、一回死んでそれっきりになってたんならそのまま大人しく死んどけー。」
 バットを握る不良が襲い掛かってくるが、泰然としたままだ。
 背に生じる『翳りの翼』を『手爪の諸相』に変化させ、殴りかかってくるバットをつかみ取る。そうしてそのバッドごと不良を怪力任せに振り回し、他の奴にぶん投げた。
 まるでボウリングのピンのように倒れる亡霊たち。思わずバットから手を離した奴には拳を握った『手爪の諸相』で殴り飛ばした。
「オラぁぁあああ!」
 威勢だけは良く突っ込んでくる敵だが、懐に入れさせることもなくその足をひっつかんで振り回す。手の先で絶叫が鳴り、そのまま彼方へと旅をさせてやった。
 √能力を使うまでもない。圧倒的な実力差を見せながらも引き下がらない相手に、神代・神雲はにやりと挑発した。
「翼は何枚でも出せるからねー、何人でもかかってこいや。」
 戦いは一方的だった。

リベンジマン・花園守

 リベンジマン・花園守は星詠みの情報に心を熱くし、現場へと向かう。
「死者を蘇らせるダンジョン…俺も家族を亡くしてるから想うところがある…このまま放っておくなんてできない!」
 そうして亡霊群がるその場所で、堂々と宣言をした。
「√EDENに生きる人たちも!亡くなった人たちの魂も!俺が守る!」
 特装圧縮銃である『リベンジ・ガン』とブローバック・ブラスター・ライフルの『リベンジ・ブラスター』を取り出し、亡霊が振り回す釘バットの届かない距離から射撃する。
 計算された弾頭は的確に敵の武器を壊し、更には弾幕を張ってその動きを封じて見せた。
 そうして敵が残り少なくなったところで、リベンジマン・花園守は√能力【リベンジ・フルバースト】を行使する構えをとる。
「これが俺の!全力全開!!」
 召喚されたリベンジ・キャノンによる一斉射撃が、最後の一人へと殺到する。極大ダメージを受けた敵は瞬く間に蒸発し、ダンジョンを塞ぐ道は切り開かれた。

日南・カナタ

 日南・カナタは見上げる構造物に興奮のあまり声を上げた。
「こんなダンジョンがー!√ドランゴンファンタジーの力すげぇ!」
 墓場を再構築させた迷宮は、辺りのインビジブルを引き寄せ配下にしている。異世界の神秘を目撃して、平常を保ってはいられなかった。
 とはいえそんな風に感心している場合でない事は、彼自身も分かっている。
「周囲のインビジブル達が住民達を襲うなんて…警官としても√能力者としても放ってはおけない!」
 自身の役目を思い出しロングハンマーを握りしめるが、亡霊たちの姿にその胸は怯えを生み続けていた。
「それにしてもあのインビジブル見る限りヤバイんですがーー! なんていうかお化けで怖いとかそういうレベルじゃなく…マジ不良じゃないですかーーー!!」
 不良亡霊が誘うように視線を送ってくる。しかし動かない日南・カナタに、それはしびれを切らして声を上げた。
「ひよってんじゃねぇだろうなァァ!」
「ひやぁぁ!ひよってんのバレてるぅーー!!」
 叫びを浴びた途端、体が硬直し敵に接近を許す。しかし怯えて逃げていたおかげで、ギリギリのところで敵が瞬きをして防御を割り込ませることに成功した。
 情けなく攻撃を受けながら、襲い来る不良の顔を見つめる。すると、なんだか不思議な感覚を覚えた。
「で、でもなんだろう…初めて会ったような気がしない…」
 自分の記憶にないという事は意識を失ったもう一人の自分のものか。しかしその答えはどうやっても出て来ない。
 相手の体を麻痺させる力は連続では使えないらしい。それを見切った日南・カナタはこの隙に蹴りをつけようと、即座に√能力を繰り出した。
「くらえ!【超絶気合撃】!!」
「上等だ!オレが、一番になんだよぉッ!」
 勢い良く振りぬかれたハンマーめがけて、張り合うようにバットが振るわれる。しかしやる気満載超絶気合をチャージした一撃は容易くバットをへし折った。
 そして、不良の体を軽々と吹き飛ばした。
 戦いはそれで終わり。そのはずだったのに、日南・カナタはなぜだかまたその胸に疑問を抱いていた。
「やっぱり…俺、こいつとやりあった事ある気がする…これは…『彼方』の記憶…?あれ…涙が…」
 互いの得物をぶつけ合った瞬間、対峙した不良の浮かべた笑みが、どうしてか頭の中にこびりついている。それが侵食するように自分の存在が曖昧になっていき、感情が大きく揺さぶられた。
 もう一度、吹き飛ばした不良を見た時、既にそこにはもう亡霊はいなくなっている。
『決着、ようやくつけられたな』
 ただ、そんな声が聞こえたような気がした。

第2章 集団戦 『光晶の精霊』


 ダンジョンの中に、その光は浮かんでいた。
 それは、迷宮を形作った精霊。亡霊を愛する者たち。
 インビジブルの楽園を守るため、それらは侵入者を排除する。
日南・カナタ

 日南・カナタは先ほどの戦いを思い出していた。
「あの亡霊がなんだったのか、詳しくは俺には分からずじまいだったけど…胸の内の『彼方』が…どこか悲しくもすっきりしている気がするんだ。だって俺もそれに釣られて今はそんな気分だもん」
 知らず内に宿敵との決着をつけた彼は、目の端に涙を浮かべている。しかし足を止めてもいられないと涙を拭って先を急いだ。
 ダンジョン内に待ち構えていたのは光晶の精霊たちだ。亡霊を愛すそれらは、楽園が踏み荒らされることに怒りを示している。
「そっか、その光晶の精霊は亡霊の為に、ここを守っているんだね、でもね、ここはこのままにしておくわけにはいかないんだ。俺達は√EDENを守らなくちゃならない」
 こちらにも事情はあるのだと、戦いの構えをとった。
「今なら『彼方』と一緒に行ける気がする…! いこう…、彼方!」
 √能力【|彼方《オーナー》】を行使し、自身の能力を向上させる。その直後、精霊から閃光を放ち、牽制して敵を捕らえようと光の鎖を伸ばした。
 しかしいつも以上に軽くなった体は容易く敵の攻撃を掻い潜る。絶え間ないビームも全て躱し、ハンマーを振るった。
「君たちには…帰って貰うよ!」

リベンジマン・花園守

 ダンジョンへと踏み込んだリベンジマン・花園守は、待ち構えていた敵に少したじろぐ。
「この精霊たちはこのダンジョンを守っているのか?」
 光が形となった姿は、一見神秘的に見えた。しかしそれらが侵入者を快く思っていないのは見るに明らかで、敵意の起こりにすかさず戦闘態勢をとる。
「お前たちが何者なのか、亡者たちのことをどう思っているのか、何も分からないけど…ここをこのまま放っておく訳にはいかないんだ…!」
 先手を取ろうとすかさず√能力【リベンジ・コンビネーション】を行使。重甲で強化された格闘連撃は、絶え間なく精霊に叩き込まれる。
 研ぎ澄まされた拳に掴み技なども混ぜ、接近戦で圧倒した。命中する限りそれは続けられ、しかし精霊もやられてばかりではないと魔法を唱える。
 周囲全体へと散った光が突き刺さるが、肉体改造された体は多少の攻撃ではびくともしない。
「悪いけど邪魔するなら、全員倒す!」
 リベンジマン・花園守は果敢にダンジョンへと押し進んだ。

神代・神雲

 神代・神雲は、浮かぶ光の精霊を見つめる。
「守護者ってところかぁ……ま、ダンジョンが出来てるならあり得なくはないわな」
 それらは侵入者を前にして、通路を塞ぐように立ちはだかった。しかしその先に用があると、冷徹に告げられる。
「——悪いけど、邪魔をするなら斬って捨てるよ」
 √能力【|終焉の鳥《ジズ》】を発動。自身に憑りつく死神と完全融合し、顕現させた死神の大鎌で手当たり次第に斬りつけた。
 精霊もすかさず閃光を放ち視界を奪おうとするが、その射程距離の外から、死神の力が空間を引き寄せ間合いを殺す。
「これで|牽制《目つぶし》も意味なくなるでしょ」 
 とっさに動けなかった精霊を容赦なく切り伏せ。その隙をついた別個体からのビームは盾の諸相にした翳りの翼で防いでみせる。
 だが敵の数も多い。迷宮を進むごとに、守護者が立ちはだかる。
「さて、どうにかなるかねぇ?」
 神代・神雲はそう浮かべながらも、足を止める事はなかった。

鳳・楸

 ダンジョンに踏み入った鳳・楸は冷静に、状況を観察する。
「あれらが道を塞いでいるようですね」
 対峙するのは光晶の精霊たち。インビジブルの楽園を守るそれらは、侵入者には容赦しなかった。
 閃光が広がる。迷宮内を白に染めた光が視界を奪い牽制するが、それと同時、鳳・楸は√能力【|狐式変身術《コシキヘンシンジュツ》】を行使し、その姿をシマエナガへと変化させた。
 小さな体は機動力を増し、視界が眩んだ瞬間も生かして敵への接近に成功する。遅れて変化に気付いた精霊は光の鎖やビームを放つが、小鳥の回避性能はそう簡単にはとらえられない。
 そうして懐に入り込み、変化を解いた鳳・楸はその小柄な体躯に似合わない中大型の刀を危なげなく操った。
「容赦はしません。急がせてもらいます」
 敵の群れの中にあっても彼女は年齢に不釣り合いな落ち着きを保ちつつ、敵の挙動に合わせて攻撃を繰り出した。
 裏をかいた超至近の銃弾が、光の体を穿つ。そうして道は開いた。

第3章 ボス戦 『『元S級冒険者』崩天』


 ダンジョン最奥で待ち構えていたのは、冒険者の骸だった。
 最上級の称号を得るまでに至ったその肉体は、死しても依然変わらず、最後の砦として立ちはだかる。
「————」
 死者の刃が閃いた。
日南・カナタ

 日南・カナタは立ちはだかる亡者を前に呟く。
「ダンジョンを冒険し攻略する側の者がダンジョンの主となるなんて…」
 もはやダンジョンに対する執念がその元冒険者を動かしているのかもしれない。哀れに思えるが、ダンジョンが彼の全てだったのだろう。
「もうあんたはただただ自分が得たものを手放したくないだけでそこに留まってるんだろ。でもここで引き下がるわけにはいなかい」
 せめてもの手向けとして、向けられる刃と対峙する。自前のロングハンマーを構え、亡者の最期に付き合った。
「|ここ《√EDEN》を守る為にも…、そしてあんたの元冒険者だった誇りの為にも…戦うよ! あんたの冒険譚、聞かせてくれよ!」
「——!」
 得物を交わす度に、冒険の記録が流れ込む。主人公となった彼の攻撃は全て必中となり、防御を強要した。
 しかし日南・カナタは痛みを感じる事が出来ないシャドウペルソナだ。多少の傷をも無視して一歩踏み込んだ。
「ぶっ飛べー!【|全力振り《フルスイング》】!!」
 渾身の√能力が、躯の体を吹き飛ばす。

リベンジマン・花園守

 リベンジマン・花園守は既に戦闘の始まっているその場へと遅れてやってくる。
「この雰囲気、ただ者じゃない…名のある冒険者だったんだろうか…?」
 先行していた別の√能力者の一撃を受けた躯は、その不死性を生かして再び立ち上がる。しかし不死だけがその強みでないというのはすぐに分かった。
「相手がどれだけ凄腕の冒険者だったとしても、ここで折れる訳にはいかない!」
 俊敏な立ち回りを前に、自身も前に出る。
 割って入った√能力者に、元冒険者はその刀を振るう。あまりに重厚で防御困難な斬撃が、リベンジマン・花園守へと炸裂した。
 しかしヒーローは倒れない。彼の発動した√能力【|リベンジ・リベンジ《人類の怒りの一撃》】がその場に足を留まらせ、そして60秒。
「喰らえ! 俺からの"リベンジ"だ!!」
 最大限までチャージされた拳が、もろくなった躯の体を打ち抜く。吹き飛ばしダンジョンの壁をも崩す。
 けれど結果も見れず、リベンジマン・花園守は、後回しにしていたダメージに膝をついた。
「…あとは他の能力者たちに託す!」

ジェイ・スオウ
フォー・フルード
白帽・燕

 『元S級冒険者』崩天は、それでも倒れなかった。
 ダンジョンに敗れて死して、ダンジョンの力によって蘇り、そして立ちはだかった√能力者にその体を吹き飛ばされた。
 胸部には風穴が開き、左腕は千切れている。死者とて立っていられないような姿でありながら、それはまだ得物を握った。
 彼は諦める事を知らない。
 だから上り詰め、そして散った。
 最後の最後まで、その者は刃を振るう。


「そんな体なんだかもう休んでクダサイ」
 ジェイ・スオウは呆れながら語り掛ける。
 しかしそれでも足を止めない敵に、仕方ないと√能力【|自動処理機能オートマチックキル】を発動した。
「オット、失礼」
 刃が閃く——その直前で、放たれた跳躍して躱す。がら空きとなった背中に、後先制攻撃を仕掛けた。一瞬動きが鈍る骸。それが標的を見失っているうちに、光学迷彩機能を果たす霧を纏い、その暗殺者は闇から攻撃を続けた。
「さあ、オレはどこにいるデショウ? 残念。そこじゃないデス」
 声を頼りに刃を振るう元冒険者。しかし見当はずれな攻撃に、闇夜から微笑みが浮かべられた。
 ジェイ・スオウはそうして弄ぶように追い詰めていく。


「さて、アタシは歌でも届けようかね」
 白帽・燕は、万全を期して周囲のサポートへと舵を切る。
 ダンジョン内を自由にはばたく鳥は、そのくちばしから音楽を奏でた。
 √能力【|生義発破《セイギハッパ》】
 一括するような声は、√能力者たちが本来持つ生きようとする力を増幅させ、これまでに外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常を全快させた。
 小鳥のさえずりに、元冒険者は気にも留めない。と言うよりも意識する余裕もないのだろう。
 死者には歌を楽しむ感性も残っていない。今まで自分が与えてきた攻撃が無に返っていることも気付かなかった。
「少し哀れだけどね。まあ、しょうがないよ」
 ダンジョンに囚われ続けている元冒険者に同情しながらも、白帽・燕は歌い続けた。その敵が、朽ちる瞬間を、空中から見届けようと。


「もう終わらせましょう」
 誰よりも遅れてダンジョン最奥にやってきたフォー・フルードは、狙撃銃を取り出した。
 黒々とした2mほどの体を持つベルセルクマシンは、未だに抗い続ける敵を標準に定める。
「!」
 銃口を向けられていると悟った元冒険者が、すかさず向かってくる。しかしその進行には他の√能力者が邪魔し、その隙にフォー・フルードは√能力【|予測演算射撃機構《セルフ・ワーキング》】を発動する。
 彼が内蔵するコンピューターが、周辺状況から未来予測を行った。その計算が終わる前にと刃は伸びるが、僅かに遅い。
「算出完了、誤差許容範囲内、射出FIRE。」
 淡々と、引き金が引かれる。
 ————!
 目の前、銃口を切りつけんと迫った刃を、いち早く弾丸が砕き、そして死体の首を打ち抜いた。
「———」
 死者は、それでも動こうとする。しかし、穴の開いた首は頭を支えきれず、徐々に筋肉をちぎって傾いていき、最後には地面に落ちる。
 それと同時、骸はついに崩れて。
 ダンジョンは消滅した。

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