シナリオ

トラップ・ハウス・RTA

#√ドラゴンファンタジー

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「キミたちはRTAって知ってるかい?」

 星詠み――|氷室《ひむろ》・|冬星《とうせい》(自称・小説家・h00692)が不意にあなたに尋ねた。
 あなたは知ってると答えるかもしれないし、知らないかもしれないし、知ってても知らないフリをするかもしれない。なんなら問いかけに答えなくてもいい。
 いずれにしろ、冬星が勝手に語り始める。

「RTA――リアル・タイム・アタックってやつだ。どれだけ早くゲームを攻略できるか、という意味合いで使われることが多いかな。近頃はタイムを競う大会もあるようだね。通常何時間も何日も時間をかけて攻略していくゲームを、24時間以内に突破してしまう猛者が集う。そのさまは圧巻の一言だ。それを生配信していて、ずっと見ていても飽きない。まあゲームの欠陥とかバグを利用した攻略法も多いのだが――」

 この男、ずっっっとべらべらひとりで喋り続けている。よくもまあこんなに長々と話せるものだ。あなたも呆れるかもしれないし、逆に尊敬の念を抱くかもしれないし、なんなら最初から話を聞かずに無視して別の作業をしているかもしれない。
 いずれにしろ、冬星は勝手に話を続けるし、無視されていてもまったく気にしない。

「つまり何が言いたいかというとだね、√ドラゴンファンタジーでダンジョンの攻略RTA大会が催されるのさ! しかも聞いてくれよ、なんとトラップまみれなんだぜ! その大会の名前も誰が名付けたか『トラップ・ハウス・RTA』! トラップの山をくぐり抜け、誰よりも早く最深部に到達できたものにはドラゴンステーキ1年分がもらえちゃう! いい話だろう? ボクはドラゴンステーキなんて食ったことはないので味は旨いのか分からないけれど、ドラゴンを食べられるのが貴重な機会であることはわかる! あ、ちなみにドラゴンの|尻尾《テール》のほんの一部分なので残酷ではないらしいよ」

 この男、話が長い。あなたは読み飛ばして構わない。以下に冬星の言葉を要約した、今回の依頼について記載する。

 ・√ドラゴンファンタジーでトラップだらけのダンジョンを踏破する攻略RTAが開催される。
 ・ダンジョンを見事に踏破できたものにはドラゴンステーキ1年分……のクーポンがもらえる。
 ・なお、今回の依頼は別に世界の危機とか陰謀とかではないので気軽に参加してほしい。

 以上の話を聞いたあなたは新たな冒険譚を綴るために『トラップ・ハウス・RTA』に参加する資格を得た。
 ちなみに冬星はずっとドラゴンステーキを食べたがっているが、あなたは優勝賞品を渡す必要はない。

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第1章 冒険 『凍結床を進め』


「さあ、始まりました、記念すべき第一回『トラップ・ハウス・RTA』! 栄えある初代優勝者はどの人物なのか、ドラゴンステーキ1年分は誰の手に――!?」

 実況らしき女性がマイクを握りしめ、熱心に出場者であるあなたを見つめていた。
 あなたはRTAの走者として出場し、優勝に向かってトラップまみれのダンジョンをひた走ることになる。

 まず、ダンジョンに突入すると最初の関門として凍結した床が広がっていた。
 これを上手いこと進んで扉までたどり着くのだ。

「まずはお手並み拝見といった、お手頃なステージですね!」

 実況は実際に走らなくていいから他人事で羨ましいな、とあなたは思ったかもしれない。
ソナスティ・ンナスティ

「氷が滑るものだと誰が決めましたの? いいですわね、あなたは滑りません! 氷などではなくってよ!」

 ソナスティ・ンナスティ(新妻・h01368)は説き伏せるようにそう言い聞かせた。床の氷に。
 彼女の攻略法は至ってシンプル。氷が滑らないと自己暗示をかけ――この場合、床の氷に向かって暗示をかけているわけだが――、そのまま床を走ろうとする。つまりは実質無策である。

「行きますわよ――!!」

 そして突っ走り、案の定、氷の上で転ぶ。尻もちをつき、背中を打って、仰向けの状態のまま滑っていく。

「痛い! 冷たい!!」

 おまけに頭もぶつけて、目から火花が散った。
 しかし、順調に反対の岸まで滑って渡れてはいる。

「すべりますわ! すべりますわ! 受験生には見せられない姿でしてよ!!」

 このように見た目は大惨事であるが、反対側には問題なく……問題なく? 着くことができた。
 あとは壁につかまり、よろよろと身を起こし、立ち上がる。
 それ以上氷に足を取られないよう、へっぴり腰ではあるが、慎重な足取りでゴールの扉にたどり着き、見事……見事? クリア。

 ちなみに、このRTA大会、トラップに対するリアクション芸も評価されるそうだ。これは高評価が期待できる。

六合・真理

「あぁる、てぃい、えぇ…ちゅうのは良く知らんけども、要は競争てことだね? それじゃあちょいと参加してみようかねぇ」

 |六合《りくごう》・|真理《まり》(ゆるふわ系森ガール仙人・h02163)は、観衆に「よろしくねぇ」と微笑みながら、朗らかに己の出番を待つ。準備運動は入念に。
 横文字は苦手ゆえ、RTAという単語についての知識はないものの、とりあえず速さを競うもの、という認識はある。
 さらに、この大会について教えてくれた星詠みの言葉を思い出した。

「何だったかね、構造の欠陥なんかも使って良いんだっけかねぇ? つまり思いっきり好き勝手にぶっ壊しちまっても良いって事だねぇ?」

 そうかな……そうかも……?
 星詠みの言葉をいい感じに解釈し、準備運動を終える。
 そうして真理の出番が回ってきた瞬間――彼女は大きく息を吸い、身体の中で気を練り上げる。
『神仙錬気・真髄五輪』。真理が独自に作り上げた錬気法により、炎を発生させた。
 震脚により、床ごと凍結した氷を砕き、先ほどの炎の錬気で氷を溶かし、さらにダメ押しとして『虚剄・三昧真火』と呼ばれる、真理が三昧真火の術で補強した破壊の炎で凍りついたダンジョンは氷が全て消え、熱した蒸気があたりに蔓延するサウナ状態になっていた。

 もちろん、真理は競走であることを忘れていないので全速力で駆け抜ける。
 途中、氷の中に封じられていたトラップとしてくくり罠が真理を襲った――が、彼女は足にワイヤーがかかったまま、何もなかったかのように普通に走り、くくり罠は引きずられて破壊された。

「んん? なんか踏んだかねぇ?」

 足首にワイヤーが絡みついているのに気づき、ゴミを取り除くようにちょいちょいと外す。
 他にも矢が飛んでくるなどのトラップがいくつか作動したが、真理は邪魔な虫を払うように徒手空拳で破壊の限りを尽くし、無事に扉に辿り着いたのであった。

 ちなみに、これだけの破壊活動を行っても、真理が到着したあと、ダンジョンは再び凍結し、もとのツルツルの氷の床に戻るのである。ダンジョンって不思議だね。

神薙・焔

「氷の床、ゲームだと滑って厄介なコトが多いけど……あたし短時間ならウィングド・ビートで飛べるのよね」

 |神薙《かみなぎ》・|焔《ホムラ》(ガトリングガンスリンガー・h00900)の装備しているウィングド・ビートは、胸の焔を動力に空駆けるインラインスケートである。空を飛べるので当然床が凍っていようが関係ない。
 RTAは解説しながら走るのがお作法、ということで、ここからは焔の解説を聞きながら攻略していく様子を見てみよう。

「はい、ゾディアックを消費して飛行アイテムを事前準備しておく必要があったんですね」

 ウィングド・ビートは準備完了、蒸気を噴射しながら浮遊している。

「地面スレスレを飛べば約4秒の節約になります、飛行速度でまっすぐ行けば発動するころには通り過ぎていますからトラップにも当たらない親切な作りですね」

 解説のとおりにインラインスケートで氷の床の3ミリほど上の空中を滑るように進んでいった。氷の床には障害物もなく、まっすぐ進むだけでトラップを素通りしていく。

「最後のモンスターだけは祈祷力が必要です、扉に近づかないことを祈って……あ、前に出ました、大変いいですね、横から回り込んで扉に入ってクリアです、ここまでのタイムはベストとタイですかね、記録更新も視野に入ります」

 こうして難なくゴール。ここまでの解説は非常に早口でRTAに慣れた様子である。
 さて、次はどんなトラップが待ち受けているだろうか……?

第2章 冒険 『トラップ! トラップ!! トラップ!!!』


「――さて、凍った床はお手並み拝見といった感じでしたが、いきなり難易度が跳ね上がりましたね!」

 実況の女性が言う通り、次のステージはトラップダンジョンが本格的に牙を剥いた、と言わんばかりのトラップまみれである。
 一歩足を踏み出せば床にひしめくスイッチを踏み、落とし穴が口を開けたり天井から金ダライが落ちてくる。ちなみに落とし穴に落ちてもふわふわのクッションが敷き詰められている安全設計である。金ダライはちょっと頭に響くかもしれない。
 壁にうかつに手を付けば、壁にもスイッチがあり、ポチッと押した瞬間に頭をめがけてピコピコハンマーが振り下ろされる。
 命に別状はない安心安全の罠ではあるが、引っかかると観客に笑われてちょっと恥ずかしいかもしれない。しかしリアクション芸を狙うならそれもありである。
ソナスティ・ンナスティ

「最初にいっておきますわ、わたくしリアクション芸人ではなくってよ!」

 ソナスティ・ンナスティは高らかに宣言した。
 彼女がそう言うのならそうなのだろう。

 ソナスティはほとんどの罠がスイッチに対応していることを見抜き、作戦を立てる。

「こういう時はローラ作戦ですわ!!」

 まず最初にステージを通過する人間が全速で進めば、その人間が通った道は安全ということになる。つまり、そこを通ればトラップも既に発動済みか、解除されているため、安全に通れるというわけだ。

 問題は、現状ローラ作戦を行うのはソナスティひとりしかいないということ。

「頼みましてよ最初のわたくし」

「お任せください後衛のわたくし……先行する方が危険ではなくて?」

「先行も後衛も同じわたくし、危険は変わりませんわ」

「成る程流石わたくし完璧な作戦」

 ここまでの会話のやり取りはソナスティ自身がひとりで話しているし、今回も変わらず無策である。

 その後、どうなったかというと、ピコピコハンマーにペコペコ頭を叩かれ、泣きながら「おやめくださいませ」と頭を抱えているソナスティの姿があった。

 なんとか大量の罠をくぐり抜け、出口にたどり着いた彼女は、エンターテイナーの如く、優雅にお辞儀をして扉を通り、退出する。
 観客席からも惜しみない拍手が送られ、彼女のダンジョン攻略を思わず応援したくなるだろう。

赤星・緋色

「次は私の番かな?」

 赤星・緋色(フリースタイル・h02146)は、準備体操を終えて位置についた。

「トラップまみれのダンジョンか~。罠を避けまくってスピード勝負でもいいけど、一度引っかかると連鎖的にトラップが発動して余計に時間がかかりそうだね」

 つまり、緋色の出す|回答《こたえ》は――。

「罠を解除しながら進むよ。一直線に扉に向かって進むだけなら、そんなに数は多くはないからね」

 そして、彼女には罠の解除に必要な技能は揃っている。
 まず、エフェクトパーツUAV――光を発しつつ編隊を組むことで文字や絵を表現できるドローンを操縦し、そのドローンの群れをこれから進む方向に飛ばして故意に罠を発動させた。
 これで、その場所を通過するだけで発動する空間系の罠は空振りになる。
 さらに、破壊工作や罠使いとしての技能をフル活用し、自分が破壊工作や罠を使うとしたらどこにどういうふうに仕掛けるかを看破。自分が通る道の分はすべて解除した。

「急がば回れってやつだね。思ってたよりスマートに時間を短縮できたんじゃないかな?」

 そして、難なくゴールを果たす。
 無駄のない動きに美を感じる観客は思わず見とれてしまうだろう。

ツバクロ・イットウサイ

「トラップだらけのダンジョン! 特に世界の危機とか関係ないですけど、冒険って感じでいいですね! 平和な大会みたいですし!」

 ツバクロ・イットウサイ(シャイニングミストブレイカー・h01451)は、さて自分はどう攻略しようか、と考える。

「うーん……【|神聖竜詠唱《ドラグナーズ・アリア》】で|神聖竜《ホーリー・ホワイト・ドラゴン》を召喚して、「困難を解決する為に必要で、誰も傷つける事のない願い」を叶えてもらうのはどうかしら? 例えば、ダンジョンのトラップを全て除去する……みたいな……」

 審議の結果、「RTAのレギュレーションとしては問題ないが、ゲームとしてはチート級の√能力かもしれない」という発表が大会主催側から出た。

「そうね、大会なんだもの、パフォーマンスも必要ですよね……!」

 というわけで、【古龍降臨】により、太古の神霊「古龍」をその身に纏ったイットウサイは、3倍に増した移動速度で次々と罠を回避。
 アクロバティックな身のこなしで飛んでくる吸盤付きの矢を躱していき、大いに観客を沸かせたのちに、無事にゴールの扉に辿り着けたという。

「さて、次は何が待ち構えているんでしょうね……?」

第3章 ボス戦 『ドロシィ・ロランス』


 さて、ダンジョン攻略RTA大会にて、次々と襲い来るトラップを退けた√能力者たち。
 次の扉を開いて、そこに待ち構えていたのは――?

「おめでとう。見事にトラップ・ハウスをくぐり抜けてきたのね。あなたたちが優勝よ」

 見慣れない金髪の女性が拍手とともに出迎えた。

「私はこの大会の主催者、ドロシィ・ロランス。優勝賞品のドラゴンステーキ1年分のクーポンを手渡すためにここで待っていた――のだけれど。私は√ドラゴンファンタジーの冒険者でもあるの。だから、あなたたちの実力、気になるわ」

 ドロシィは剣を抜き、雷光を身に纏う。

「私と勝負してくれない? 勝っても負けてもクーポンは約束通り進呈するわ」

 どうやら断るという選択肢はないらしい。
川西・エミリー

「作戦行動ですね、おまかせください」

 |川西《かわにし》・エミリー(|晴空に響き渡る歌劇《フォーミダブル・レヴュー》・h04862)は情報収集を行いながら冷静に戦況を観察する。

「主にメイスと剣、電磁力で戦うタイプのようですね。範囲攻撃や加速、連続攻撃など、冒険者としての実力は本物のようです」

 状況の分析を終えると、対策を弾き出した。

「|少女分隊《レプリノイド・スクワッド》の招集を要請します」

 事前に招集しておいた12体のバックアップ素体。
 エミリーと同じ顔をした|少女人形《レプリノイド》が、ドロシィを囲んで押さえつける。
 そして――。

「九九式二〇粍三号機銃、発射用意。3、2、1――」

 ――かつて大型機に致命的な一撃をもたらした兵器の概念を具現化し発展させた機関砲。
 それが少女人形たちに押さえつけられて身動きの取れないドロシィに一撃を食らわせた。
 少女人形のバックアップ素体、ゆえに機関砲に巻き込まれても痛くも痒くもない。

神薙・焔

「勝っても負けてもいいなら不戦敗で、これが一番早いと思います……というわけにはいかなそうね」

 神薙・焔はそう提案しかけてやめることにした。
 おそらく、それで大会主催者のドロシィが納得してくれるとは思えない。
 ドロシィが宵雷のサーベルで斬りかかる。彼女の√能力【サンダーエッジ・verトワイライト】で、範囲攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。

「味方いないみたいだし、時間かかっていいなら【|殲剣執行《レーヴァテイン》】でハメるのがラクかしら」

 威力100分の1の【9つの封印を解かれ、暴走する胸の焔】で300回攻撃するハメ技である。
 ドロシィの√能力は遠隔ダメージが2倍だが、焔の√能力は単純計算で3倍ダメージ。
 さらにRTAは既に終わっているので、いくら時間がかかっても成績には反映されないのである。

 【殲剣執行】で300回攻撃し続けながら、焔は「ドラゴンステーキは初めて食べるのよね、美味しいかしら?」と優勝賞品に思いを馳せるのだった。

ソナスティ・ンナスティ
六合・真理

「わぁ……。この方マジですわ……大人気ない……」

 ソナスティ・ンナスティは、まさかの優勝賞品を前に立ちはだかる大会主催者に少しばかり引いていた。
 しかも、戦闘は避けられないらしい。

「ふっ、わたくしごときに真剣になるとは底が知れておりますわね。こう見えてもわたくし戦闘にはまったく向いておりませんでしてよ!」

 なにしろ、地下帝国アリスアンティスの福利厚生幹部である。戦闘にはあまり縁がなかった。
 武器に使えそうなものを探して所持品を漁る。

「えっとなにか使えるものは……マルチツールガンとディーヴァズマイク位かしら? 向こうは……剣ですけどあれは絶対飛び武器にもなりますわ……」

 距離を取らないと電磁力で黒焦げにされるのがオチである。ゆえにマイク一択。

「マイクのコード(旧式)を持ってマイクを振り回せば1メートルは距離を稼げますわ!」

 しかし、無情にも剣で斬られたコードに「あっ……」と声を上げる。
 ドロシィは心なしか呆れた顔をしている気がする。

「えっと、いかがなさるのかしら? もう、まな板の上の鯉と申しますか、蛇に睨まれた両生類と申しますか……ええい、お好きになさいまし!!」

 そう叫んで斬られる覚悟を決めるソナスティをかばうように、六合・真理がドロシィの前に立ちはだかった。

「おやおや、これは驚いた。主催者さんも血が騒いじまったってところかねぇ? 分らんでもないし、それだけ熱心な主催者なら好感も持てるってもんさ」

 抱拳礼――拳にした右手を、左手の掌に当てて胸の前で合わせ、礼を尽くしてドロシィの挑戦を受け、構えを取った。

「わしは神仙、六合・真理。さぁ主催者のお嬢ちゃん、どこからでもかかっておいで」

 ドロシィは真理のただならぬ気迫に歓喜の身震いをするだろう。
 これぞ冒険者の誉れとばかりに剣を握り、打ちかかった。

 ドロシィの武器である斬撃と雷、そしてそのリーチの長さは徒手空拳で闘う真理にとって不利である。しかし、だから何だと言うのだ。真理はそんなことは百も承知で武術を修め、極めてきたのである。
 雷光とともに斬りかかるドロシィの剣に、右手で触れる。

「そいつは 邪魔だねぇ。」

 ――|剄打・雲散霧消《ルートブレイカー》。
 右掌で触れた√能力を無効化する、真理の能力。
 電撃も斬撃も、全ての攻撃を弾き飛ばし、お返しに痛烈な発剄がドロシィの脇腹に食い込んだ。

 相手の武器がどれだけあろうと扱う手は2本、こちらの武器は両手両足。
 例え武器がひとりでに動こうと、悠久の時を鍛錬に捧げたのだ。負ける道理も、つもりも無い。

「か、は……」

 ドロシィが真理の武術の前に身体を折り、膝をつく。勝負は決した。

「……ふふ……参りました。『トラップ・ハウス・RTA』、見事クリアおめでとう!」

 剣を地面に刺し、杖にして立ち上がったドロシィは何事もなかったかのように――実際は蓄積したダメージで立つのもやっとの状態のはずだが、冒険者として、そして主催者としての矜持であろう――優勝賞品のクーポンを√能力者たちに手渡したのであった。

「すてぇきの券は……一回食べたら冬星の坊ちゃんにあげようかね」

 真理の慈悲深さに、星詠みも大歓喜である。

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