シナリオ

非日常の始まりはダンジョンと共に

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●ダンジョン出現
 それはなんの前触れもなく突然現れた。
 世界のバグか、はたまた暇を持て余した神々の遊びか。
 平和な|√EDEN《この世界》に突如現れた|黒と金の城《ダンジョン》。
 そのダンジョンの出現は穏やかな日々に刺激を求める人々の好奇心を煽り、興味本位の野次馬を呼び寄せる。
 無邪気な好奇心に駆られて一目ダンジョンを見ようと集まる野次馬は知らない。
 自分達の行動がいかに危ういかという事を――。

「√能力者の皆さん、呼びかけに応えてくれてありがとうございます」
 集まった√能力者達に十二宮・乙女(泡沫の娘・h00494)が挨拶をする。
「とある街の住民がモンスターに変わってしまうという予知を|詠み《み》ました。原因はその街の中央に突然現れた黒と白のお城です。勿論、突然現れた建物が良いモノのはずはありません。見た目はお城ですがその中はモンスターが徘徊するダンジョンなのです」
 そしてダンジョンを放置すればその影響により近辺の住人がモンスターへと変貌してしまう。それ所か好奇心に駆られて集まってくる他の人達もモンスターになりかねないのだ。
 そうなってしまえばパニックに陥り、最悪の事態が起こってしまうだろう。そうなる前に何としてもダンジョンを消さなくてはいけない。
「誰が何の為にこの世界にダンジョンを発生させたのかは分かりませんが、どうか人がモンスターになってしまうと言う悲劇を変えて下さい」
 よろしくお願いします。そう締めくくって乙女は一礼した。

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第1章 集団戦 『暴走インビジブルの群れ』


●ダンジョンを徘徊するモノ
 ダンジョンに一歩足を踏み入れた瞬間、貴方の背にひんやりとした寒気が走った。
 黒と金の煌びやかな外観とは違いダンジョン内部は薄暗く、時折獣の咆哮や奇声、呻き声が聞こえて来ては貴方の不安を煽る。
 貴方はその恐ろしい声に不安を掻き立てられたかもしれない。または強い意志でもって不安を吹き飛ばしたかもしれない。あるいは倒すべき敵が居る事に闘志を燃やしたかもしれない。それでもやるべき事は決まっている。
 そうして周囲を警戒しながらダンジョンを進む貴方の前にソレは現れた。
 最初は壁か、または何かの扉のように見えた。だが√能力者の勘か、今までの経験か。直ぐに壁でも扉でもない事に気付く。
 一見、ソレは魚のように思えた。だが、魚ではあり得ない尾鰭の数。まとう赤い霊気。
 魚の姿に似たソレは幾つもの個体が集まり群れと化したモノ。理性も無く、目的も無く、ただ人に害をなすだけの存在。暴走インビジブルの群れが貴方の行手を阻む。
 貴方は暴走インビジブルの群れを完膚までに叩きのめして先に進んでも良い。または奥の敵を見据えて余力を残し、前に進める程度に暴走インビジブルの群れを切り捨てて先に進んでも良いだろう。
 武器を構える貴方に√能力者の勘が告げる。目の前の敵を倒せばそれだけダンジョンの奥に居るナニかの力を減らせるのだと。
 貴方と暴走インビジブルの戦いが始まるーー。
御門・雷華


 ダンジョンのいたる所から聞こえてくる恐ろしい声は|御門・雷華 《みかど・らいか》(エルフの|精霊銃士《エレメンタルガンナー》・h00930)の不安を煽る事も、ダンジョンを進むその足を止める事も無かった。
「この世界にもダンジョンが……。面倒なことになる前に、核を仕留めるわよ」
 ツインテールを揺らしながら進む雷華の声に応えるように傍らには|雷鳴の申し子《ライトニングブラッド》で呼び出した少女型の雷の精霊が握り拳を作り、やる気満々な表情で雷華に笑いかけている。
「そうね。私達にかかれば直ぐに仕留められるわ」
 雷の精霊に雷華も笑い返しながら見えてきた赤色に精霊銃を構えた。
 この程度の敵にやられる自分達ではないと――。

「悪いけど、纏めて薙ぎ払わせてもらうわ」
 精霊銃から放たれた雷の魔弾が密集していた暴走インビジブルを撃ち貫く。攻撃された事で雷華の存在に気付いた暴走インビジブルが攻撃に転じたが素早い動きでその場を離れた雷華の残像を掻き消すだけで雷華を捉える事が出来ない。
「流石にあの数を正面から相手するのは無謀ね」
 近くに居た暴走インビジブルを瞬脚で蹴り飛ばし、群れを掻き回して行く。この群れを越えなければ先に進む事は出来ないが全て倒す必要も無い。
「おっと」
 群れを掻い潜り抜けた先で後方から無数のインビジブルが突撃してくるのを壁を蹴って場所を変えながら避けるが多勢に無勢。何体かの攻撃を受けた上で近づいて来た暴走インビジブルを地面に叩きつけて気付く。瞬脚による攻撃の威力が落ちていると。
(|雷鳴の申し子《ライトニングブラッド》の効果で威力は上がっているはずなのに)
「いくわよ。相棒」
 追い縋ってくる暴走インビジブルを引き離す速さでダンジョンを駆けながら精霊銃による射撃を群れに打ち込んで怯ませる。|近接攻撃《蹴り》が駄目なら|遠距離攻撃《精霊銃》で攻めるだけ。
「格闘戦は不利。このまま、鬼ごっこに付き合ってもらうわよ」
 勝気に笑って放たれた雷の魔弾は暴走インビジブルの群れを貫き、薄暗いダンジョンに一条の光となって弾けた。

エイル・スリック


 赤く轟く魚の胴体。宙を揺れる無数の尾びれ。暴走インビジブルの群れがエイル・スリック(沈黙の|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h03885)の行く手を阻む。
(障害は排除せねば)
 エイルが目指すはダンジョンの奥。まだ地上に近いこの場所で足を止めるわけには行かない。ならば敵は切り捨てるのみ。|闇鳥降臨 《アンチョウコウ》で純白の翼に闇の魔力を纏う。これで準備は完了だ。
(暴走しているのなら僕が姿を見せるだけでいいだろう)
 理性も、目的も無く。ただ本能のおもむくままに暴走し、人に害をなす暴走インビジブルの群れ。これならばエイルの姿を認識しただけでエイルを獲物と判断して襲ってくるはずだ。
 エイルの思惑通り、エイルの姿を認識した暴走インビジブルの群れは今までの大人しさが嘘のように大きく口を開けてエイルへと襲い掛かる。自身へと向かってくる暴走インビジブルを瞬殺斬で一体、また一体と切り捨てながらエイルは進んで行く。排除すべき敵が自らやって来るのだ。動きを読みやすく対処しやすい。
(だが、数が多い)
 |闇鳥降臨 《アンチョウコウ》のおかげで暴走インビジブルを避けるのは容易いがやはり数が多く、確実に仕留める事が難しくなってくる。目の前に迫る暴走インビジブルを切り捨て背後から襲いかかて来る別の暴走インビジブルを返す刃で切り捨てる。このままではいずれ囲まれるだろう。足に力を込めて床を蹴り、一気に暴走インビジブルの群れから距離を取って追いついた敵を瞬殺斬で始末する。
(……なんだかおかしい。戦闘中だというのに心が乱れる)
 淡々と暴走インビジブルを瞬殺斬で処理しては距離を取り、また敵の隙を見ては間合いを詰めて攻撃をしていたエイルの視界を赤いナニかが映り込んだかと思えば心が千々に乱れる。安定しない思考。乱れる心。それらは積み重なり、やり場のない憤りをエイルに抱かせ、比例するように敵への攻撃が激しくなる。
「おかしい。僕は目的を淡々と達成することが得意なはずなのに」
 最後の暴走インビジブルを切り捨ててエイルは天を仰いだ。あんなに荒々しく、狂暴だった感情は暴走インビジブルを倒した事で徐々に収まり、冷静さをエイルにもたらす。これで目の前の障害は消し去った。あとは、奥へと進むだけだ。

雪月・らぴか


 足元から這い上がって来るような寒気。薄暗い視界。時折聞こえてくる不気味な声に|雪月・らぴか 《ゆきづき・らぴか》(えーっ!私が√能力者!?・h00312)は不安を煽られながらもダンジョンを進んで行く。
「ひええ、思ったより雰囲気怖ぃ……」
(でもでも、ここは在るだけでも良くない場所だから、びびってないで進まないとね!)
 思っていた以上の雰囲気に怯んでいたがそもそもホラーは好きだし、なんなら事故物件にだって住んでいるのだ。こんな薄暗くて変な呻き声とか獣の咆哮とか奇声が聞こえて来るダンジョンがなんだ。
「どうせこっちの√に来るなら、迷惑なダンジョンよりも、あっちの√のお店とか来てくれればいいのにね!」
 何の前触れも無く響いた獣の咆哮にビクッと肩を跳ねらせて、逸る鼓動を落ち着かせながら明るい事を考えつつらぴかはダンジョンを進む。
「あっ」
 そうして進んだ先で視界に映り込んだ赤に少し安堵した。見えないナニかより見えて倒せる化け物のが怖くない。
「よーし、ささっと攻略しちゃうよ!」
 気合を入れながら気持ちを切り替えてらぴかは大きく息を吸い込んだ。

(私は声がでっかい! そしてこそこそするのもそんな得意じゃない!)
「こっちだよー!!」
 暴走インビジブルの群れとの距離を測りながら出せる限りの大声で叫べばらぴかを認識した暴走インビジブルの群れが我先に|らぴか《獲物》へと襲い掛かった。
「よしっ!」
 暴走インビジブルの群れが迫って来る前にとらぴかは来た道をダッシュで引き返す。これで良い。大声を出す事で敵に自分を認識させて引き付け、ある程度敵がまとまった所で一網打尽にするのだ。撃ち漏らしがあればその時に対応すれば良い。だが敵の攻撃が問題だ。汚染されたらどんな状態になるか分からない。けれど――。
「先手必勝だよね!」
 らぴかに攻撃しようと触手を伸ばした暴走インビジブルの胴体を硬い何かが勢い良くぶつかり床へと叩きつけた。そしてらぴかを追って来た暴走インビジブルの群れはいつの間に現れたのか叫び声を上げる無数の死霊に取り囲まれ、室内で自然に起こるはずのない暴風が吹き荒れる。
 暴風に巻き上げられて身動きの取れない暴走インビジブルの群れに硬い雪が石礫のようにぶつかり、死霊達がその身を引き裂かんとばかりに絶叫しながら群がる。
 【|霊雪叫襲ホーンテッドスコール《レイセツキョウシュウホーンテッドスコール》】
「本日の天気はーっ、霊と雪が降ってぇ、風が強いでしょー!!」
 死霊の叫びと雪が固いモノにぶつかり合う音。そして激しくも涼しい風がダンジョンを吹き荒れる中、元気ならぴかの声が響くのだった。

夜縹・熾火


 獣の咆哮、ナニかの奇声。おどろおどろしい呻き声。本来であれば薄暗いダンジョンで不気味に反響しながら聞く者の不安を煽り立てるそれらはけたたましい爆発音にかき消されて景気良く即応式グレネードを投げる|夜縹・熾火《よはなだ・おきび》(|精神汚染源《Walker》・h00245)の耳には届かない。
(見た目と内部が一致しないっていうのは良くある話)
 視界に入った扉を素早く開けて即応式グレネードを投げ込んで扉を閉め、足早に扉から離れる。
(テレビゲームだってそう)
 すぐさま熾火の背後で爆発音が響き、熾火が曲がり角を曲がった所で炎が通路を走る。
「人間災厄たる身からしてみれば、モンスターよりも恐ろしいのは好奇心だと言えようか」
(恐れ知らずで、死ぬと分かっていても尚、首を突っ込むのが人心という物だから)
 二又の分岐路であからさまに怪しい雰囲気の通路にも即応式グレネードを一つ。
(そして混乱の渦を起こして他者を死に至らしめるのが人という群れの悪い癖)
 響く爆発音、踊る爆炎。何も知らない人が見たら熾火が|ダンジョン《建物》を爆破しているように見えるだろう。けれど核があるのなら頑丈であるはずだと熾火は推測している。爆発物で簡単に崩れるのであれば、彼の√がダンジョン関係で苦労する事も無かったはずだ。それに全て爆破して灰燼に帰せば罠にかからなくてすむ。
「来たね」
 次は何処に即応式グレネードをを投げ込もうかと辺りを見回していた熾火の視界に赤がちらついた。どうやら爆発音に釣られた暴走インビジブルの群れが本能のままに向かって来たようだ。

「愚直に来るのは動きを読みやすくて良いな」
 自身に向かって来た暴走インビジブルの群れの攻撃を避けながら近づいて来た敵はGAU-801で攻撃しつつ即応式グレネードで罠まで爆発した場所まで誘導する。爆発により壁は黒く煤けて残り火がパチパチと弾けては消えていく。そんな周囲の状況など一切目に入らないとばかりに暴走インビジブルの群れは熾火だけを見据えてまっすぐに向かって来る。こちらから動かずに相手が来てくれるのは好都合。暴走インビジブルの群れとの距離も十分。これなら派手に攻撃しても大丈夫だろう。
「火遊びも程々に」
 【|Divinity Nova《ディヴィニティ・ノヴァ》】
 熾火の言葉と共に炎獄の弾丸が射出されて着弾地点の付近にまとまっていた暴走インビジブルの群れが胴体をくねらせて床に倒れ込み、ピクピクと痙攣したかと思えば動かなくなる。それでも炎獄の弾丸を逃れた残りの暴走インビジブルの群れは仲間の死骸を乗り越えて熾火へ襲い掛かる。暴走インビジブル達には熾火が獲物にしか見えていないのだ。獲物を喰らいつくす事しか考えていない。
「面倒だな。悪いけど封じさせてもらうよ」
 我先にと迫りくる暴走インビジブルの群れを見据えて熾火はGAU-801を赫怒の機関砲へと変形する。
 【|Breakout《ブレイクアウト》】
 【|Divinity Nova《ディヴィニティ・ノヴァ》】の強化の恩恵を受けらる熾火の更なる√能力。
 相手が向かって来るのなら迎え撃つまで。逃げる気も退く気もさらさら無い。
「弾幕の嵐で挽肉にしてやろう」
 冷ややかな言葉が熾火の口から発せられる。そう、好奇心と言う人の群れの悪い癖。
(興味を失わせるには既知にするか、無に帰す必要があるだろう)
 その為に熾火はここに居る。通路を塞ぐように密集しながら襲って来る暴走インビジブルの群れ。それを貫くように赫怒の機関砲が火を噴いた。

第2章 ボス戦 『『DEEP-DEPAS』』


●インビジブルを狂わす存在
 暴走インビジブルの群れを退けた貴方は再び薄暗いダンジョンを進んで行く。
 時折聞こえていたおどろおどろしい声は他の大きな音にかき消されたのちに聞こえなくなった。
 もしかしたら貴方と同じ√能力者がダンジョンに居るのかもしれない。
 |√能力者《仲間》が居るかもしれない事実に貴方は勇気を貰ったかもしれない。
 もしくはダンジョン攻略の一番乗りは自分だと気が逸ったかもしれない。
 あるいは自分一人で充分だと先を進む速度を速めたかもしれない。
 胸に飛来する様々な思いを抱えたまま貴方が奥へと進めば下へと降りる階段を見つけた。奥からは不気味な存在の気配がする。
 躊躇いながら、あるいは気合を入れて貴方は階段を下りて行く。
 階段を下りた先には重厚な扉が有り、其処彼処から狂った甲高い女の笑い声が響き異様な雰囲気が漂う。
 貴方は甲高い女の笑い声を警戒しながら扉を開いた。
「uisdgcuilgasuilsakhytykx-as!!!」
 扉を開いた瞬間に耳が痛くなる程の叫びが広い空間に広がり、貴方は叫ばれた言葉を理解する事が出来なかった。
 否、貴方でなくても理解出来る存在は居ない。それは言語不可能な言葉だ。
 広い空間の中央に居る人型のナニか。強敵である事は間違いないがこの空間の更に奥の方で大きな力を貴方は感じた。
 そう、目の前に居る存在は奥に居る真の敵の前の前座でしかない。しかも暴走インビジブルの群れを倒した事でその力は削がれている。
 今、|謎の存在《エンティテ》『DEEP-DEPAS』との戦いが始まろうとしていた――。
雪月・らぴか
御門・雷華


 広い空間内をビリビリと震わせる叫び声に|雪月・らぴか《ゆきづき・らぴか》(えええっ!私が√能力者!?・h00312)は思わず肩を竦め、|御門・雷華《みかど らいか》(エルフの|精霊銃士《エレメンタルガンナー》・h00930)は耳を塞ぐ。
「ひええ、DEEP-DEPASじゃん! 相変わらずやばそうな雰囲気してるね……」
「周りのインビジブルを狂わされる前に叩くわよ」
 あまりの気迫に怯みそうになるらぴかに精霊銃を構えた雷華の冷静な声がかかる。かつてらぴかが対峙した敵と同じ固体かは分からないが一度は戦った事のある相手。その攻撃の厄介さはらぴかも身を持って体感している。
(初めて戦う相手じゃないから見た目ほどやばくないのは分かってるよ! 油断しなければ大丈夫だよね!)
「行くよ!」
「援護するわ」
 『DEEP-DEPAS』が攻撃をする前にとらぴかが間合いを詰める為に走り出し、雷華が精霊銃による射撃で『DEEP-DEPAS』を牽制してらぴかの攻撃を避けられないようにする。
「あまり攻撃に夢中にならないようにしないとね!」
 力を込めた拳で『DEEP-DEPAS』を殴りつけ、相手が反撃しようと動いた所を雷華による射撃で阻止されている隙にダッシュで距離を取る。いくら雷華による援護があったとしてもあまり『DEEP-DEPAS』の近くに居るのは得策ではない。敵の攻撃はどれも厄介なのだ。
「えっ……」
「そこっ!」
 移動しにくくなれば良いと足を狙って攻撃していたらぴかだったが拳を振り下ろした瞬間、確かに目の前に居たはずの『DEEP-DEPAS』の姿が消えて雷華の鋭い声と射撃音が耳に飛び込む。そして、らぴかの視界に映るのは暴走したインビジブルの姿。
「くっ!」
 『DEEP-DEPAS』が雷華の近くに居たインビジブルと自身の位置を入れ替えたのだとらぴかは瞬時に悟った。そして『DEEP-DEPAS』と入れ替わったインビジブルが僅かな間暴走してしまう事も。こうなってしまったら暴走したインビジブルが落ち着くまで自身に引き付けて雷華から遠ざけなくては。
「キミ、ごめんね!」
「私の事は良いから自分の事を気にして」
 『DEEP-DEPAS』を雷華一人に押し付ける形になった事を謝るらぴかに『DEEP-DEPAS』から視線も銃口も外さないまま雷華は落ち着いた声で返す。敵との戦いで不測の事態は付き物だ。慌てるような事は無い。
「このまま素直に倒されてくれたら良いのにね」
 暴走したインビジブルをかわしながら走るらぴかを横目で確認して雷華は小さく笑った。

「uisdgcuilgasuilsakhytykx-as!!!」
 言語不可能な言葉が叫び声となって響き渡る。それは大きな振動となって雷華に片膝を付かせた。
「厄介な攻撃ね」
 けれどこのまま『DEEP-DEPAS』の攻撃を許す雷華ではない。すぐさま姿勢を安定させて戦闘補助スマートフォンを起動し、振動の揺れと敵の動きを計算に入れた弾道の数値をメガネ型魔道具の画面に表示して目を走らせる。
「誤差修正、完了」
 数値に合わせて構えた精霊銃に契約精霊のカノンをチャージして準備完了。厄介な攻撃のお返しに痺れる程の雷光をお見舞いしてやろうではないか。
「逃がさないよ!」
 契約精霊がチャージされた精霊銃に何かを感じた『DEEP-DEPAS』が再度インビジブルとの位置を変えようと動いた瞬間、暴走したインビジブルの対処を終えたらぴかの拳がその動きを阻止する。この期に及んで逃げようなんて見過ごせるはずもない。ここで一気に叩き込まなくては!!
「行くわよ。相棒」
 雷華の言葉と共に放たれた【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】
 凄まじい雷光が『DEEP-DEPAS』に向かって走り、大きな爆発音を響かせ敵の動きを止める。
「今よ!」
 敵が動きを止めた一瞬。その一瞬さえあれば雷華には十分だ。片膝をついた姿勢から一気に【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】のもう一つの能力で強化された瞬脚と妖精の靴で蹴りを叩き込む。
「続くよ!」
 雷を纏った強烈な蹴りを叩き込む雷華にらぴかも続く。雷華の√能力で強化されるのは雷華だけではないらぴかにも恩恵があるのだ。
「狙って狙って口から雪玉ドーンっ!」
 らぴかによって発動される【|砲雪玉砕《スノーキャノン ホウセツギョクサイスノーキャノン》】は幾つもの雪だるまを召喚し、雪だるまがその口を開けば雪だるまの口よりも大きな雪玉が『DEEP-DEPAS』に向かって一斉に発射されて広い空間には雷光と共に巨大な雪玉が宙を舞うのだった。

パトリシア・ドラゴン・ルーラー
柊・冬臣
シェラーナ・エーベルージュ
継萩・サルトゥーラ


 炎が宙を走ったと思った瞬間耳に痛い爆発音が響き渡る。『DEEP-DEPAS』がインビジブルと位置を交換する度に暴走したインビジブルが近くに居る者に襲い掛かるがその都度、炎を宿した拳が鮮やかな軌跡を残して脅威を消し去って行く。
「無茶をするね。大丈夫かい?」
 暴走インビジブルをその拳で消し去り、置き土産とばかりに爆発を間近で受けたパトリシア・ドラゴン・ルーラー(竜帝・h00230)に声をかけながら|柊・冬臣《 ひいらぎ・ふゆおみ》(壊れた器・h00432)は自身の近くに現れた『DEEP-DEPAS』に精霊銃による一撃を放って距離を取るべく後ろへと下がる。
「心配は無用だ。あの程度の爆発、余にとってはそよ風も同じ。傷一つとて余に負わせる事は出来まい」
 冬臣の言葉に爆風で前に流れた金の髪を後ろに流しながら答えるパトリシア。
「それなら良かった」
「ああ、だが余を案じるその気持ちはありがたく受け取ろう」
 炎を宿す拳を握りしめながら『DEEP-DEPAS』を見据えるパトリシアの援護に回れるよう冬臣は精霊銃の銃口を再び『DEEP-DEPAS』へと向ける。

「流石、ドラゴンプロトコル。私なら吹き飛んでいたわ」
「一度は行ってみたいセリフだな」
 強者の貫禄が漂うパトリシアにシェラーナ・エーベルージュ(野良猫の配膳ロボライダー・h02970)は感嘆の声を上げ、継萩・サルトゥーラ(|百屍夜行《パッチワークパレード・マーチ》・h01201)が目を輝かせた。
「uisdgcuilgasuilsakhytykx-as!!!」
 瞬間、響く言語の理解できない『DEEP-DEPAS』の叫び声。そして現れるインビジブル。
「!! 急に叫ぶのは良くないと思うわ……」
 急な『DEEP-DEPAS』の叫び声にシェラーナの毛が一気に逆立つ。猫の耳に突然の大声は良くないのだ。ちらりと横目にパトリシアと冬臣を見やれば二人は『DEEP-DEPAS』と戦闘中。ならば呼び寄せられたインビジブルは近くに居る自分と継萩で対処しなくては。シェラーナと継萩の間でアイコンタクトが交わされ、にゃ~と一声鳴いてシェラーナは|LUMBA《るんば》に飛び乗り、素早く動き回ってはインビジブルを翻弄していく。
「やったろうじゃないの!」
 シェラーナの誘導で近づいてくるインビジブルにソードオフショットガンを構えた継萩がタイミングを計って強烈な一撃を叩き込むのだった。

「戯れもここまでだ。そろそろ終わりとしよう」
 『DEEP-DEPAS』の叫びにより起こされた振動が止み、パトリシアは告げる。
 その言葉に待ってましたとばかりに継萩は『DEEP-DEPAS』へと走り出し、冬臣に支えられていたシェラーナも|LUMBA《るんば》に乗って『DEEP-DEPAS』へと向かう。
「二人の邪魔はさせないよ!」
 向かって来る継萩とシェラーナに攻撃しようとする『DEEP-DEPAS』を冬臣の放った【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】が防ぐ。
「受け取って!」
 冬臣の精霊銃から放たれた雷属性の弾丸は違わず『DEEP-DEPAS』に命中して爆発を起こし、迸った雷が帯電となって他の三人を強化する。
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
 爆発を耐えた『DEEP-DEPAS』が近づいて来たシェラーナに狙いを定めるがシェラーナよりも近くに迫っていた継萩がその腕を蹴り飛ばす。
「いっちょハデにいこうや!」
 そうしてそのままに【|危険地帯《デンジャーゾーン》】を発動してソードオフショットガンによる銃撃を加え、止めとばかりに蹴りを放ち『DEEP-DEPAS』の体勢を崩す。
「にゃ〜!!」
 『DEEP-DEPAS』の体勢が崩れたのを好機と見たシェラーナは|ライダー・ヴィークル《ルンバ》から跳躍して高く舞い上がり、空中できりもみ回転して必須にゃんコキックをお見舞いし、その体積に見合わない威力の攻撃を受けた『DEEP-DEPAS』に止めを刺すべくパトリシアは力を開放する。
「余の真の姿を見せてやろう!」
 炎が勢い良く巻き上がり、空中で霧散するとそこには黄金色の髪の美女の姿は無く、輝かしい黄金色の鱗を持つ黄金竜が口から炎を躍らせていた。
 【|真炎竜帝覇《ドラゴン・ブレイズ・エンペラー》】
 大きく息を吸った黄金竜は『DEEP-DEPAS』を焼き尽くさんとばかりに炎のブレスを放つのだった。

第3章 ボス戦 『リンドヴルム『ジェヴォーダン』』


●ダンジョンの奥に潜みしモノ
 暴走インビジブルの群れ、『DEEP-DEPAS』を撃破した貴方はついにダンジョンの奥に辿り着いた。
 目の前の扉を開けばダンジョンの核とも言えるボスとの戦闘が始まる。
 貴方はここに至るまでの苦難を振り返るかもしれない。
 もしくは、この扉の奥に居るボスを倒せばダンジョンは崩壊して全て終わると気合を入れなすかもしれない。
 あるいは、ボスを倒した後の事に思いを馳せたかもしれない。
 どちらにしろ目の前の扉。その先に居るボスを倒せば終わりである。
 貴方はそっと扉を開く。

「そうさ、全ては俺の仕業!」
 扉の先で飛龍を名乗る謎めいたドラゴンプロトコル型のモンスターが貴方を迎えた。
 さぁ、ダンジョンの核。リンドヴルム『ジェヴォーダン』との戦いが始まる――。
ガザミ・ロクモン
青空・レミーファ


 牛の頭に鬼蜘蛛の胴体と牛の頭に鬼の胴体の姿をした巨体がリンドヴルム『ジェヴォーダン』に見事な連携で攻撃を繰り出して相手の隙を誘う。
「ちょこまかと鬱陶しい!」
 二体の攻撃を余裕を持って防いでいた『ジェヴォーダン』だが、あまりの猛攻ぶりに攻撃を捌き切れずに傷を負ってしまい、ダンジョンのボスとしての余裕は何処へやら怒りの為に大きく黄金色の鋭い爪を振るった瞬間に隙を作ってしまった。
「そこです!」
 『ジェヴォーダン』が見せた一瞬の隙。二体の巨体――牛鬼「ニライ」と「カナイ」が作り出したその隙を彼らの主。ガザミ・ロクモン(葬河の渡し・h02950)が見逃すはずもない。カザミ自ら縛霊手を腕に纏い「ニライ」と「カイナ」と共に息を合わせて拳を叩き込む。
「くっ!」
「それで終わりじゃないよ。今!」
 『ジェヴォーダン』の隙を見逃さなかったのは後方で援護射撃をしていた|青空・レミーファ《あおぞら・れみーふぁ》(ややこしい子・h00871)も同じ。カザミ達が攻撃を仕掛けている間に『ジェヴォーダン』の近くに移動させていたファミリアセントリーに攻撃命令を下し、ファミリアセントリーの攻撃に合わせて自身もモーゼル・ミリタリーによる一撃を放って追撃する。
「僕達はこのまま前で攻撃を続けます!」
「分かった。援護は任せてね!」
 前衛で主の為にと猛攻を続ける「ニライ」と「カイナ」。二体が作り出す攻撃のチャンスを見逃さずに会心の一撃を叩き込むカザミ。カザミが『ジェヴォーダン』との間合いの為にバックステップで後退すれば、その動きを補助するようにレミーファのファミリアセントリーが射撃で『ジェヴォーダン』を牽制してレミーファがモーゼル・ミリタリーで援護射撃を行う。
「調子に乗るのもここまでだ!!」
 カザミの攻撃を防いだ『ジェヴォーダン』が一喝する。その気迫に思わず怯みそうになるが「ニライ」と「カイナ」。レミーファのファミリアセントリーが自分の身を盾にせんとばかりに主を守る為に二人の前へと躍り出る。
「吹き飛べ!!」
 カザミとレミーファを見下して『ジェヴォーダン』は【偽竜創造】の能力を発動した。
「小僧の次はお前だ。小娘」
 触れた者を圧し潰す勢いで迫る『ジェヴォーダン』の攻撃をカザミは後方に飛退く事で回避を試み、「ニライ」と「カイナ」はその身を盾にカザミの動きを手助けする。
「カザミさん、大丈夫?」
「ええ、なんとかすり傷程度ですんでいます」
 『ジェヴォーダン』の攻撃が|ターゲット《カザミ》を圧し潰せなかった代わりに地面と衝突した事で起きた風圧でレミーファの元まで吹き飛ばされるカザミ。自身も風圧でよろめく体を何とか立たせてレミーファが問えばカザミは立ち上がって苦笑する。『ジェヴォーダン』の【偽竜創造】による攻撃は一度のみのようで追撃が来ないが次が無いとは限らない。このまま【偽竜創造】による攻撃を受ける訳にはいかない。
「しぶとい奴らだ……」
 思ったよりダメージを受けていない二人に『ジェヴォーダン』は悪態を吐く。
「今度こそ、終わりだ」
 【ジェヴォーダンの烙印】によって召喚された獣型モンスターの群れが唸り声を上げて二人に襲い掛かる。
「厄介な攻撃をして来ますね」
「全部相手にするのは大変だよね」
 敵の数は多く。本命の攻撃も厄介。別々に対処していては押し切られるだろう。ならば纏めて対処するまで。
「行きますよ。レミーファさん」
「うん!」
 カザミの言葉にレミーファは頷いてBMXに跨って『ジェヴォーダン』へと向かう。途中にモンスターの群れが居るが心配する事は無い。
「骨の髄まで後悔させてあげます!」
 カザミが【|大蟹之咆哮《ダイカイショウ》】を放てば、何処からともなく現れた死霊達が潮津波となってモンスターの群れと『ジェヴォーダン』に襲い掛かってその動きを止め、最大級の振動をその身に与えて脳を揺らす。
「怒りの拳を受けてみろ!!」
 最大級の振動により満足に動く事も出来ない『ジェヴォーダン』とモンスターの群れに向かってBMXから跳躍して三回転スピンしたレミーファが風を纏ったパンチ。【|疾風拳《スーパーナックル》】を放った。

雪月・らぴか
御門・雷華
エイル・スリック


 苦労の末に辿り着いたダンジョンの奥。そこに居たリンドヴルム『ジェヴォーダン』に思わず|雪月・らぴか《ゆきづき・らぴか》(えええっ!私が√能力者!?・h00312)が声を上げた。
「おおお、ジェヴォーダンじゃん! やっぱりダンジョンの奥にはキミみたいな強そうな奴が待っていて欲しいよね!」
「ほう、良い事を言うじゃないか小娘!」
 らぴかの言葉に気を良くした『ジェヴォーダン』は豪快に笑いだす。
「厄介な相手なの?」
「割と厄介かな? 生半可な攻撃は通用しなかったよ」
 気分が良くなって隙だらけな『ジェヴォーダン』を視界に入れたまま御門・雷華《みかど らいか》(エルフの|精霊銃士《エレメンタルガンナー》・h00930)がらぴかに問えば以前の経験を思い出しながららぴかは答える。あの黄金の爪による一撃を避けきれなかったらどうなっていた事か。
「油断ならない相手と言う事だな」
 らぴかの言葉にエイル・スリック(沈黙の|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h03885)も雷華と同じく『ジェヴォーダン』を見やる。『ジェヴォーダン』は未だに上機嫌のようだ。
「でもでも、初見じゃないからびびることはないっていうのもわかってるよ!」
 『ジェヴォーダン』に背を向けて雷華とエイルに笑顔を向けるらぴか。らぴかのその行動によって事態は動き出す。

「今回もしっかり倒しちゃおう!」
 黄金色の鋭い爪を無防備にも背を向けているらぴかに振り下ろそうとする『ジェヴォーダン』の攻撃をエイルの運命の剣が弾き、これ以上仲間への攻撃を許さないとばかりに雷華が精霊銃で追撃する。そして『ジェヴォーダン』に背を向けていたらぴかは『ジェヴォーダン』の背後に回らせた彷徨雪霊ちーくちゃんとタイミングを合わせて攻撃を放つ。
「小賢しい真似を」
「あなたもね」
 先ほどの上機嫌から一気に不機嫌丸出しで吐き捨てる『ジェヴォーダン』に弾丸と共に雷華は言葉を返す。この場に居る者全てが|理解して《分かって》いたのだ。お互いが隙のある振りをして相手を誘っていた事を。無防備に会話していた訳では無い事を。
 仲間と何気ない会話をしながらちーくちゃんを『ジェヴォーダン』の背後に忍ばせていたらぴか。腰に手を当てるという何気ない動作で何時でも精霊銃を撃てるように引き金に指をかけていた雷華。二人と会話しながらも意識を『ジェヴォーダン』に向け続けて相手が動けば直ぐに剣を抜けるように腕を組んで利き手を剣の近くに置いていたエイル。そして三人が何か企んでいると分かっていて敢えて攻撃を仕掛けた『ジェヴォーダン』。扉を開けてお互いが対峙したその時から戦いは始まっていたのだ――。
「俺の前から消えろ!」
 【ジェヴォーダンの烙印】により獣型のモンスターの群れが召喚されて三人に向かって牙を向く。
「二人とも行って」
 向かって来るモンスターの群れを冷静に見つめながら雷華はエイルとらぴかに告げる。そうして二人がモンスターの群れの先に居る『ジェヴォーダン』へと駆けて行くのを視界に入れたままブレなく精霊銃を構えた。狙うは二人の行く手を阻むモンスターの群れ。
「悪いけど、まとめて止まっていてもらうわ」
雷華が放った【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】は雷の軌跡を残しながら宙を走り、そしてモンスターの群れが進む先に落ちて大きく爆発した。
「二人とも受け取って!」
「ありがとう!」
「感謝する!」
 雷華の放った【エレメンタルバレット『雷霆万鈞』】は敵を攻撃するだけでなく味方の強化もする。雷を纏いながらエイルとらぴかは『ジェヴォーダン』へと向かう。
「覚悟はできたか」
 モンスターの群れを抜けた先には【ミステリアス・ジェヴォーダン】で大狼に変身した『ジェヴォーダン』の姿が有り、攻撃を仕掛けるも縦横無尽に空間を使って避けられてしまう。ならばと【|闇鳥降臨《アンチョウコウリン》】で移動速度を上げたエイルが肉薄し、エイルの攻撃を手助けする為にらぴかはちーくちゃんと合わせて『ジェヴォーダン』の進路を妨害して行動を制限する。
「一つ訪ねたい。お前は自ら望んで核になったのか?」
「だとしたらなんだ」
 『ジェヴォーダン』と並走しながら時に剣で切りつけ、時に相手からの攻撃を避けながらエイルは問う。
「核になって何を成し遂げたいと思っている」
「そんな事を聞いてどうする?」
「その心理に興味があるだけだ」
 言葉の通りエイルはダンジョンの核になった者の心理に興味が有り、核の自分を全肯定する敵の考え方を知りたいと感じていたのだ。
「はっ、物好きと言うか。なんと言うか。成し遂げたい事なんて無いさ。俺がダンジョンの核になったのは何も考えずに無鉄砲にやってくる奴らの絶望に歪む顔が見たいから。ああ……、ダンジョンの影響を受けてモンスター化した奴らがお互いに殺し合うのを見るのも最高だったな!!」
 話に応じてくれるとは思えないが聞くだけ聞いてみようと投げた問いのあまりの答えに運命の剣を握るエイルの手に力が入る。
「最低……」
 『ジェヴォーダン』の答えた内容の酷さにらぴかも同様に雪月魔杖スノームーンを握る手に力が入り、ちーくちゃんの攻撃も激化していく。
「……そうか。倒される覚悟はできているということだな」
「さて、倒されるのは果たしてどちらか……」
 冷静さを欠いてはいけない。こちらの動揺を誘う敵の罠かもしれないのだ。一つ息を整えてエイルは意識を切り替える。らぴかがちーくちゃんと共に『ジェヴォーダン』の動きを制限してくれているが奥義を放つにはもう一手足りない。
「雷光一閃!」
 金色の残像が視界をチラついたかと思えば頭上から雷を纏った雷華の蹴りが『ジェヴォーダン』へと炸裂し、体勢を崩した『ジェヴォーダン』は駆けていた勢いも相まって相当な衝撃をその身に受ける事となった。
「今よ!」
 着地と同時に後方へと飛び退いて魔弾を放つ雷華にらぴかが応える。
「勝つのは私達だよ! 振って縛ってカッチンコッチン、ピンクの氷で真っ二つ!」
 体勢を立て直そうとする『ジェヴォーダン』へらぴかの【|変形惨撃トライトランス《ヘンケイサンゲキトライトランス》】が決まる。雪月魔杖スノームーンを振るって牽制し、次に氷の鎖で凍結させる魔杖鎖鞭形態によって動けないように捕縛、最後に氷の刃がピンクに輝く魔杖斧形態になっての連続攻撃が繰り出される。
「ここで終わってたまるか!!」
「させるか!」
 これには『ジェヴォーダン』も堪らず、らぴかの√能力を【偽竜創造】で複製しようとしたがそうはさせまいとエイルの運命の剣が『ジェヴォーダン』の体を貫く。
「これで終わりだ!!」
 剣を抜こうと藻掻く『ジェヴォーダン』の体から剣を引き抜き、『ジェヴォーダン』がこちらの動きに気付く前にエイルは【闇ノ剣・瞬殺斬】を放った。

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挿絵イラスト