シナリオ

ぶっとばせ!妖怪軍団

#√妖怪百鬼夜行 #√EDEN

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 #√妖怪百鬼夜行
 #√EDEN

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 √EDEN。
 それは他の√世界にとっては一番豊かで一番弱い世界。
 そう、つまりは――他の√世界からの侵略者にとっては、有り体に言ってしまえばまさしく、『格好の餌』なのだ。
 そしてその侵略者は、今まさに√EDENに侵入を完了し、虎視眈々と獲物に狙いを定めている。
 まあ、つまるところ――√EDENは、いつも通り世界の危機を迎えているのだ。

「今回、キミたちに頼みたい仕事は妖怪退治だ」

 星詠み――|氷室《ひむろ》・|冬星《とうせい》(自称・小説家・h00692)は、机に座り、手を組んで顎を乗せながらあなたに話を持ちかける。

「√妖怪百鬼夜行から、この√EDENに古妖が侵入した。どうやら、どこかで『入口』が開いてしまったようだね。まあ、よくあることではあるんだけど」

 そんな頻繁に他の√世界との通路が開かないでほしい、とあなたは思うかもしれない。
 冬星も微苦笑を浮かべながら、話を続ける。

「キミは古妖、ってやつとは遭遇したことはあるかい? あいつらはとにかく厄介でね。配下の妖怪たちを引き連れてその場にあるものを食い尽くす――まあ、生きた災害みたいなもんだよ。√EDENにいてもろくなことにならない。なにしろ、人間のことなんて肉袋としか思ってないからね」

 放置すれば、古妖はその場にいる全ての人間を戯れに殺し尽くし、喰い尽くしてしまうだろう。
 そんな惨劇を起こしてはならない。

「妖怪退治も小説の題材としてはいいかもしれないね。お土産にキミたちの冒険譚を楽しみにしているよ」

 冬星がひらひらと手を振って、あなたを送り出す。
 こうして、あなたは悪しき古妖を√妖怪百鬼夜行に追い返すことになったのだ。

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第1章 集団戦 『悪い百鬼夜行』


 あなたは星詠みのお告げに従い、古妖の現れたという『入口』のもとへ向かった。
 そこにはおびただしい数の百鬼夜行が群れをなしている。
 どうやら、彼らは古妖に洗脳されているらしい。
 諸悪の根源である古妖の姿はそこにはない。
 まずは百鬼夜行を倒して正気に戻し、話を聞く必要がありそうだ。
十枯嵐・立花

「洗脳されてるっていうんなら叩いて直すしかないね」

 |十枯嵐《とがらし》・|立花《りっか》(白銀の|猟狼《ハウンドウルフ》・h02130)は猟銃を構え、戦闘態勢に入った。

「妖怪だし多少のケガは大丈夫……だよね?」

 きっと大丈夫だと信じよう。
 おびただしい数の百鬼夜行に向けて、閃光音爆弾――フラッシュグレネードによる目潰しと音響弾により妖怪の群れを怯ませ、その場に留める。

「私の尻尾は……こう使う!」

 立花自身の狼の尻尾による薙ぎ払い――【|狼神の尾斬剣《ルプスレクス・テイルブリンガー》】により、ほどほどに手加減をしつつまとめて吹き飛ばした。
 百鬼夜行はグオウグオウと唸りながら、妖気から妖怪料理を創造し、立花に放つ。
【万夜大宴会】――その料理を食らったものは行動不能になる代わりに防御力10倍・毎秒負傷回復状態になるのだが、この状況で食らいたくはない。

「ちょっと興味あるけど……ごめんね!」

 立花は野生の勘や第六感をフル活用して躱していった。

「料理の詳細はやっつけたあとで聞かせてもらおう!」

 妖怪料理なるもの、果たして常人が食べて大丈夫なのかどうか。

シャル・ウェスター・ペタ・スカイ
見下・七三子
花片・朱娜

「百鬼夜行、妖怪の大行進かあ。ちょっと混ざってみたいかも?」

 シャル・ウェスター・ペタ・スカイ(|不正義《アンジャスティス》・h00192)はそんな軽口を叩きながら、妖怪の群れを観察した。

「ん~、お喋りできる相手だったら良かったんだけど、悪い古妖に洗脳されてるなら、会話は難しいかもね」

 妖怪とお喋りしてみたかったな、とシャルは少し拗ねたような顔を見せる。

「まあ、その洗脳ってやつを解けば、お喋りできるんだよね? じゃあ、悪いやつじゃないみたいだし、ちょっとしたイジワルをしつつ目を覚まさせてあげようか」

 そうして、シャルは悪属性の魔力を放った。
 ――【|我こそは状態異常の邪神なり《アンジャスティスゾーン》】。シャルがオーラを放つと、自分含め敵味方関係なく状態異常に弱くなる。
 その魔力に気圧されたのか、百鬼夜行は動きを鈍らせていった。

「せーのっ、そこですとーっぷ!」

 さらに【|キミの自由は戴いた《ミンナトマーレ》】。視界に入る全対象を麻痺させる。これも敵も味方も無差別の√能力である。

「とりあえず、百鬼夜行をこれ以上行動させなければ、誰も被害は受けないでしょ?」

 それがシャルの言い分であった。

「うわーん、シャルさーん!? 私たちまで状態異常に巻き込まないでくださいよー!」

 |見下《みした》・|七三子《なみこ》(使い捨ての戦闘員・h00338)は【キミの自由は戴いた】に巻き込まれていた。
 シャルが目を閉じたことで麻痺からは解放されたが、百鬼夜行は怒り狂っており、完全に√能力者たちを目の敵にしている。

「ひぃぃ、ただの下っ端戦闘員に何を期待してるんですかー!?」

 襲いかかる妖怪軍団に【|作戦開始、集合《イー》】で事前に招集しておいた12人の戦闘員を呼び、百鬼夜行の群れを食い止めた。さらに【|団結の力《カズノボウリョク》】で協調の思念を接続し、味方全員の反応速度を上げて百鬼夜行を取り押さえ、あるいは囮となって周囲に被害が出ないように尽力する。下っ端戦闘員ゆえ、集団戦術は得意技であった。

「私たちが囮になっている間に、よろしくお願いしまーす!」

「はーい」

 七三子に応えたのは|花片《はなひら》・|朱娜《しゅな》(もう一度咲って・h03900)だ。

「とにかく敵の動きを止めればいいんですね。鬼さん……いや鬼以外も含まれてますね。妖怪さんたちこちらですよ」

 パン、パン、と手を叩き、百鬼夜行を引き付ける。
 妖怪の群れが突っ込んでくれば、【|薔薇の花棘《イザヨイノバラ》】でインビジブルと自分の位置を入れ替え、自分がいた場所には棘の生えた花の壁になったインビジブル。そこに突撃した妖怪変化たちが悶え苦しむ。

「ごめんなさいね、洗脳されてると聞いたので手加減したいんですけど……動かないでくださいねー」

 さらに雪椿の破魔弓に矢をつがえ、百鬼夜行の先頭に向けて放った。
 射止めたあやかしがビキビキと凍りついていく。

「……まあ、妖怪だし、多少手荒にしても大丈夫でしょうか」

 百鬼夜行の大群から、少しずつ妖怪が地面に落ちていった。

クラウス・イーザリー

「壮観だね……」

 クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は、百鬼夜行を構成しているおびただしい妖怪の群れに目を見張る。
 妖怪の大行進。あるいは古妖のために喚ばれ、編成された大軍団。
 戦いになるのは避けられないとしても、できるだけ早く洗脳を解くことで楽にしてやりたい。

 クラウスはファミリアセントリーとレイン砲台による制圧射撃と牽制射撃で、まずは遠距離から軍団の隊列を崩していく。
 列をはみ出し、こちらを噛み砕こうと向かってくる妖怪にはスタンロッドで殴りつけ、高圧電流で麻痺させた。
 数々の攻撃を食らい続け、百鬼夜行は最後の猛攻――妖怪大行進で最後の抵抗をする。
 クラウスになだれ込むように向かってくる百鬼夜行の一斉突撃。
 それを彼は躱すことなく――先頭の妖怪に右手を差し出した。

「ルートブレイカー……!」

 それは、右掌で触れた√能力を無効化する能力。
 連続攻撃を防ぎきり、レイン砲台を妖怪の群れに向ける。

「雨に呑まれて散れ」

 妖怪大行進で全ての妖怪が突進し、クラウスのもとに集まった今。
【白雨】により、全てのあやかしを照準に入れたレイン砲台は、そのレーザー光線で呑み込んだ。

「――手荒な真似をしてごめん。君達を洗脳した古妖のことを聞かせてくれないかな」

 百鬼夜行に参加していた全ての妖怪の目を覚まし、クラウスは謝罪をしながら妖怪たちに事情を尋ねる。
 そこで彼は、古妖の狙いを知ることになる――。

第2章 冒険 『何者かに追われる一般人』


 百鬼夜行を鎮圧し、古妖の真の狙いを知る√能力者たち。

 古妖が√EDENに来た理由は、√妖怪百鬼夜行において百鬼夜行をおさめるものが新しく誕生することを聞きつけ、自分たちの百鬼夜行のライバルとなるものを赤ん坊の時点でさらって、√EDENでよく似た容姿の赤ん坊と取り替える――いわゆる『|取り替え子《チェンジリング》』を行うためであるという。

 √EDENから√妖怪百鬼夜行に連れてこられた人間の赤ん坊は当然妖力がないので取り替えられたことに気づかれたら周囲の妖怪に殺されるし、√妖怪百鬼夜行から√EDENに捨てられた妖怪の赤ん坊も幸せには生きられないだろう。

 そんな身勝手な理由で不幸な赤ん坊を増やしてはならない。あなたは古妖の企みを止めなくてはならない。

 倒した百鬼夜行の教えてくれた通り、その赤ん坊のもとに向かったあなたたちは、古妖に狙われている赤ん坊と、その母親に接触することに成功する。
 姿を隠している古妖に急き立てられるように追われている親子。
 古妖に襲われる前に、なんとか助けよう。
クラウス・イーザリー

「させないよ!」

 クラウス・イーザリーは親子と古妖の間にダッシュで割り込み、武器を構えて古妖がいるであろう場所を睨む。
 古妖の潜む先は夜の暗がりで、はっきりした姿は見えない。親子を追い詰めるまで、姿を現すつもりはないらしい。
 しかし、産まれたばかりの生命を身勝手な妖怪の犠牲にさせるわけにはいかない。

「説明している暇が無くて申し訳ない。今は逃げて欲しい」

 レーザーライフルによるレーザー射撃やスローイングカードによる投擲などを暗闇に向けて放ち、古妖を怯ませている間に親子に避難を促して共に逃げた。
 母親は訳が分からない様子で、赤ん坊も怖がっているのか泣いている。
 だが、クラウスには説明している暇がない。ゆえに、穏やかな声音で話しかけ、少しでも安心して逃げて貰えるように努めた。

 逃げる親子とクラウスを、古妖らしき影が追いかける。
 今はまだ黒い影のまま、古妖が子どもをさらおうと手を伸ばした。
 が、クラウスが親子を庇い、さらに電撃鞭で悪しき妖怪を追い払う。
 電撃を食らい、麻痺した妖怪が悲鳴を上げて、足止めに成功したうちにさらに逃げる。

 クラウスは子供の命が失われることを嫌う。
 守るために全力を尽くすつもりだ。

山中・みどら
十枯嵐・立花

「赤ん坊が妖怪に狙われてる? そりゃ大変だねぇ、助けないと!」

 山中・みどら(レンズの奥に潜むのは・h00207)は空中移動、空中ダッシュを駆使して屋根から屋根へと飛び移る。

「さて、ここなら周囲の地形が把握できそうさね」

 10階ほどの高さのマンションの屋上から地上を見下ろし、一般人や敵の位置を目測で確認した。

「ちょっとお時間よろしいですかぃ?」

 彼女の√能力【|そこにある幻想《パペットーク》】により、周辺地形に詳しいインビジブルを自在に話し動く子ども向けのかわいいぬいぐるみに変化させ親子への道案内を頼む。
 そして、ぬいぐるみの誘導に合わせて逃げる一般人に追いつくように、パルクールでさらに移動。

「――追いついた! ああ、大丈夫。あたしは悪いもんじゃないよ」

 妖怪に追われたと思えば謎のお姉さんが現れて驚きっぱなしの親子に敵意がないことを伝えれば、「このぬいぐるみが安全な逃げ道を教えてくれるから、安心してついていってくんな」と指示、刀と銃を持ちながら親子を守りつつ古妖を足止めする。

「子どもを笑顔にするのが人形型妖怪の本分さね。その為ならばやってみせましょ大立ち回り! ってね」

 可愛らしいぬいぐるみのおかげで、母親と赤ん坊もいくらか安心したようだ。

「要するに百鬼夜行同士の派閥争いに巻き込まれたような感じ? どっちの世界の子にとってもはた迷惑な話だよね」

 十枯嵐・立花もみどらと一緒に護衛に回りながら古妖の足止めをしていく。
 敵の姿は暗闇に紛れ、影のように実体を見せないのが厄介だ。
 殺気と威圧を放ち、妖怪を牽制する立花の鬼気迫る姿はさすが狼の妖の血が流れている賜物か。
 姿形がぼんやりしている古妖の行動を野生の勘と第六感で察知し、赤ん坊に手を出そうとすればすかさず|狙撃《スナイプ》。今はまだ倒せる状態でなくても時間稼ぎをすれば――。

「ン~~~……なんなんですかアナタたち? 百鬼夜行とは関係なさそうですが……なんでさっきからワタクシの邪魔をするんですかねェ?」

 ――痺れを切らした古妖も姿を現すであろう。

第3章 ボス戦 『八尾白組本部長・傾奇者のドッペルゲンガー』


 一般人の親子を無事に避難させたあなたたちの前に、ついに古妖がその姿を現す。

「お初にお目にかかります、ワタクシ八尾白組本部長・傾奇者のドッペルゲンガー……あ、名刺いらない? あっそう」

 ドッペルゲンガーは名刺をしまうと、あなたたちを見つめて、「フーム」と唸る。

「ライバルの百鬼夜行からの刺客……ってわけでもなさそうですねェ。なぜ邪魔をするのでしょう? アナタたちには関係のない話ですよねェ? 要するにィ――邪魔だ、引っ込んでろ」

 ドスのきいた声で威圧するドッペルゲンガー。さすが組の本部長は脅しが上手い。
 だが、そのふざけた外見のせいでいまいち迫力はない。

 あなたたちはこの古妖の企みを阻止しなければならない。
 √妖怪百鬼夜行に追い返すか、封印もしくは倒してしまってもいいだろう。
クラウス・イーザリー

「お前が人々を襲おうとする限り、無関係ではないよ」

 クラウス・イーザリーは意志の強い目でドッペルゲンガーを見据える。

「俺は人々を守るために来ているんだ。戦う理由なんてそれだけで十分だ」

 彼は決して怯まない。それを見て、ドッペルゲンガーは「ほほう」と嗤った。

「退く気はありませんか、ならば仕方ないですねェ。こちらも妖怪の流儀で……テメェを八つ裂きにしてでもここを通るしかねェなァ!?」

 古妖がその本性を曝け出す。紳士ぶっていてもその中身は獣じみたそれだ。

「――アクセルオーバー、起動」

 クラウスはその恫喝にも動じることはなく、身体能力を強化する電流をその身に纏った。
 上昇した速度を乗せたダッシュで踏み込み、一瞬で間合いに入る。
 手にしたスタンロッドに電流を纏わせ、紫電一閃。

「ン~~~~~しびびび、電撃、厄介ですねェ!」

 道化のようにおどけた反応を返して、ドッペルゲンガーが己の仮面を外すと、そこにはクラウスによく似た顔があった。

「ご存知です? ドッペルゲンガー、自分と同じ顔の人物に出会うと、不幸があるとか死ぬとかァ?」

 クラウスの顔でニタリと嗤ったドッペルゲンガーは、掌のハテナから土蜘蛛の糸を飛ばしてクラウスを捕縛、うさぎちゃんぬいぐるみ型爆弾を炸裂させて攻撃する。
 クラウスは冷静にそれをセラミックシールドで受け流す。

「ヒヒヒ! 自分と同じ顔にはビビらないですかァ! じゃあ――もっとやり難い相手がいいですかねェ?」

 クラウスの記憶を読み取ったドッペルゲンガーは、今度は17歳ほどの若い男の姿に化けた。
 ――その顔は、クラウスの今はなき親友のもの。
 しかし、それを見てもクラウスは顔色を変えず攻撃を続ける。

「えっ、ひどォーい! 俺達親友だったのに武器を向けるのォ!?」

「俺を揺さぶろうとしても無駄だよ。だいいち、口調も違うし服装も変わってないし」

 クラウスはスタンロッドの先端を向けて、冷淡に告げた。

「大人しく√妖怪百鬼夜行に帰るならそれで良い。もしも退かないのなら、倒してしまうのもやむを得ないな」

「……ン~~~怖い怖い」

 ドッペルゲンガーはニヤニヤ笑ったまま、足は自然と後退りをしていた。

山中・みどら
十枯嵐・立花

「妖怪への風評被害撒き散らしてよく言うねぇ、組名乗るなら堅気に迷惑かけるんじゃないよ」

 山中みどらは半ば呆れたような口調でドッペルゲンガーを睨む。
 トリッキーな相手にはこちらも搦め手を。
 √能力【|お祭り好きのなかまたち《パペットリカルパレード》】により、実に24体もの生きたぬいぐるみの眷属を召喚。

「さぁお前たち、やーっておしまいってねぇ!」

 ぬいぐるみたちは一斉に魔法を使い、ドッペルゲンガーに襲いかかった。

「おおっと、これはこれは……こういった召喚・使役は大本を叩くのが定石ですかねェ?」

 ドッペルゲンガーも負けじと√能力【エンターテインメント・クリミナル】を発動、仮面の下の顔をみどらのものに変え、両掌から土蜘蛛の糸を出して絡め取ろうとする。
 その蜘蛛の糸を火の魔法で焼き払い、ドッペルゲンガーがとどめに使おうとするうさぎちゃんぬいぐるみ爆発は氷の魔法で凍結。さらにぬいぐるみたちの魔法攻撃で近寄らないうちに迎撃した。
 その間にみどらは得意の早業で銃撃しながら見切りでドッペルゲンガーの攻撃を躱し、ダッシュで敵に突っ込んでいく。
 蜘蛛の糸が飛んでこようが予め腕に掴まらせておいたぬいぐるみ眷属が火の魔法で焼き、敵の懐に潜り込むと「そのあたしの顔に化けるのさっさと解除しな」と地の底を這うような低い声で脅した。
 彼女の顔に化けたドッペルゲンガーの瞳はキラキラと少女漫画の主人公のように輝いている。

「こっちはそれ気にしてサングラスしてんだそこ触れちゃ戦争だろうがぁ!」

 キレたみどらが刀で居合一閃。
 ドッペルゲンガーは「おっと、ヤブヘビ!」と冷や汗をかきながら顔に仮面をつけ直した。

「傾奇者っていうより道化師って感じ? ピエロ系のヴィランとかまぁ王道だよね」

 十枯嵐・立花は冷静に敵に銃口を向ける。
 ドッペルゲンガーは「こちらのお嬢さんはどうでしょうねェ!」と今度は立花の顔に化けた。

「一度ネタの割れた手品がそう何回も通用すると思ってる?」

 立花は一切動じることもない。
 土蜘蛛の糸の捕縛には落ち着いて射撃姿勢を保ったまま対処して、捕縛されても撃てるようにする。
 そして、うさぎちゃんぬいぐるみが起爆する前に|射撃《スナイプ》し部位破壊。
 頭の上でぬいぐるみが大爆発し、ドッペルゲンガーは「オギャーッ!?」と悲鳴を上げた。
 髪はチリチリ、服は焦げて、いかにも道化師のギャグ補正のようになっている。

ルエリラ・ルエラ

「妖怪退治だね。この美少女エルフルエリラにおまかせだよ」

 ルエリラ・ルエラ(芋煮とサメの美少女エルフ・h00389)はドッペルゲンガーに対峙する。
 ドッペルゲンガーは「くぅ~、次から次へと邪魔者が……ワタクシ、赤ん坊の|取り替え子《チェンジリング》をしなければならないので忙しいんですけどねェ……」と歯噛みした。

「安心して、すぐ終わるんだよ。全ては芋煮とサメと武力で解決できるからね」

「芋煮……サメ……?」ドッペルゲンガーは不可解な単語に首を傾げる。

「なんだかよくわかりませんが、要はテメェもワタクシの邪魔するってことですよねェ!? ふざけやがって、ワタクシ忙しいって言ってるでしょ!? テメェらの相手してるヒマねえんだよォ!!」

 口調が不安定になっていくドッペルゲンガー。本部長なりに、色々と組で苦労することもあるのかもしれない。

「そんなに先を急いでいるんだね。わかったよ、すぐに終わらせよう」

 ルエリラは頷くと、「ところで、こないだ面白いサメ映画を見たんだけどね……」と不意に話を始めた。

「だァかァらァ、テメェの世間話に付き合ってるヒマは――」

 ドッペルゲンガーはそこで言葉を切る。違和感に気づいたのだ。
 ルエリラの周囲、そしてドッペルゲンガーの周囲が何かに侵食されていく。
 地上であるにもかかわらず、何か魚のようなものが目にも留まらぬ速さで彼らの周りを泳いでいた。

「――サメ?」

「そう。君は生き残れないよ。なにせ相手はサメだからね」

 ――【|生還不可能な世界《シャーク・パニック》】。ルエリラが少しでもサメ映画や空想上のサメ物語を語ることで発動し、周囲をルエリラだけが鮫を自由に生み出し使役できる世界に変えてしまう√能力。
 そして、サメに不可能はない。地上であろうと空中を泳ぐことができるし、砂や地面の中を潜って移動することだってできる。壁をすり抜け、どこに隠れようと何で防ごうと、サメから逃れることはできない――。

「言ったろう? 全ては芋煮とサメと武力で解決できるって」

 サメの大群が一斉にドッペルゲンガーに襲いかかる。
 断末魔の叫びを上げる間もなく、サメの牙がその身体に食い込んで――。

「も、もう√EDENはこりごりだァ~!!」

 さすが道化師――いや傾奇者だが――、ギャグ補正でなんとか生きて√妖怪百鬼夜行に逃げ帰ったのだった。
 こうして、√EDENの赤ん坊を狙う古妖の野望は阻止されたのである。

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