シナリオ

友と思ひて3000里

#√妖怪百鬼夜行

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 #√妖怪百鬼夜行

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 1人の少女がたまたま見つけたそれは、開けてはいけない禁断の扉。
 よくあるオカルト雑誌に掲載されてる眉唾な噂話『トモダチサマ』という儀式。
 手順のとおりにことを運べば、『トモダチサマ』が地獄の果てまでお友達になってくれるとか……

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 話を聞いてくれている√能力者に語りかけるのは星詠みのタイオニノダタイラ・遥太。
 「どこにでもある普通の話だ。百鬼夜行ならそれほど珍しくない、普通の話」
 曰く、6つからの友情を育んだ男女が16にして離れて住むようになったという。
 女は痛く男を心配し、手紙を何通も送ったそうだ。
 しかし返事の頼りは1年も来ず、ようやくやってきた1枚の手紙は楽しそうに笑い合う男女混じりのグループの葉書1枚であったそう。
 女は喜ぶと同時に、胸の底で深く傷ついた。自分が埋められない隙間を、男は埋めている。何もなかった日常に日傘ひとつほどの影が落ちた。
 その影に入り込んできたのがオカルト雑誌で取り上げられた『トモダチサマ』
 なんてことのない児戯、実現するはずのない一人遊び。
 ただ、百鬼夜行では違う。
 そこに情念があるならば、どこからでも這い出てくる妖怪がいる。
 「眷属を増やしたい妖怪がこの『トモダチサマ』を名乗り女を拐っている。人と妖怪の交わりは健全でなければならない」
 それだけ聞き届ければ、君たちは事件であることを十分に理解して行動に移っただろう。

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第1章 冒険 『不可思議桜の舞い散る刻に。』


 『トモダチサマ』
 嘘か真か、オカルト雑誌に掲載されていたソレはどうやら本当に発動してしまったらしい。
 その痕跡を追いかける√能力者たちは、次々と不思議な現象に見舞われる。
 薄暗い小道、その先になにかがあるのは間違いがないという確信を皆が持つだろう。
 サテ、一体どんな怪現象に見舞われるのか……
オッター・リバーライツ

 オッター・リバーライツは小道を歩く。見た目は完全にかわうそだ。√能力者って何でもアリだなと思わされるね。
 薄暗い小道、怪現象の発生源の『トモダチサマ』を追いかけて歩く。
 「かわうそさんがねぇ、懲らしめちゃうんだからぁ」
 呑気にぽてぽてと可愛らしい音を立てて歩いているうちに、周りにぼんやりと何かが浮かび上がってくる。
 おやつだ。お団子、お饅頭、ドーナッツ、カステラ。かわうそさん……オッター・リバーライツが食べてきた中で特に印象に残っているおやつたち。
 焼き立て、つきたて、揚げたての美味しい匂いがふんわりとオッター・リバーライツを誘惑する。
 でも、かわうそさんは賢いかわうそさんです。今日もおやつを持ってきました。香ばしいバターの香りが食欲をそそるクッキー!
 袋をあけてクッキーを頬張ると、口の中にさくさくじゅわりと甘いバターの香りが広がって、香ばしい小麦の香りが広がって、かわうそさんは大満足!
 この間もまわりをぐるぐると取り囲む美味しいおやつの幻影。
 でもかわうそさんは偉いので、そんな物に惑わされずにまっすぐ小道の先へ進むのでありました。

裃・静夫

 薄暗い小道を進む裃・静夫。
 「怪談、怪現象、都市伝説。そんな類の話しかな。昨今だと美少女然とした姿に描く事でバズりつつ畏怖を削いで無力化する、なんて手段もあるけれど、私絵は駄目なんだよなあ……」
 などと思いければ、思い出されるのは若気の至り。拙い画力で絵に挑戦したあの頃の記憶。自己満足に浸り、インターネットの海へ落書きを投稿。そしてついたレスとリアクション……
 なんだか胸の痛くなるような記憶に、歩みも自然と重くなる。
 スマートフォンを開いてネットを見れば、偶然か必然か妙に気持ちの悪い噂話がぽろぽろと。妙に陰気な雰囲気にされてしまう。
 「……カメラとか回した方がいいのかな。なんか映り込んだらバズれるぞ」
 【出所不明の未知なるガラクタ】がちらちらとカメラの端に映り込む。これはこれでいい感じの映像なのだがイマイチ映えない。薄暗いからだろうか?
 まっすぐ小道を進む裃・静夫は、陰気な雰囲気に誘われ怪異の方へと誘われるのであった。

龠影・凛音

 薄暗い小道を龠影・凛音が進む。
 彼女は冒頭、星詠みから聞いた話を思い出していた。
 「幼馴染を心配してたのに楽しそうな葉書が送られてきて寂しかったんでしょうね。寂しいだけの日常の中、妖怪に眷属にしようと攫われて、果たしてどんな気持ちなの…?」
 今回の件について思いを馳せるが、考えれば考えるほどよくわからない。
 人の情念というのはとても複雑だ。仮に何かの方程式のように解明できたとしても、それは巨大な数値を示すだろう。ヒトの視界に収まらないほど大きすぎる景色のように。
 円周率を人間が完全に把握しきっていないように、どれだけ学んでもその本質には届かないのかもしれない。
 数字で解決できる世界ですらわからないことがある。なのに人間ときたら、オカルトだのというもっとよくわからないモノにまで手を出している。
 「流石に難しすぎないの?も〜こじらせないでほしいよ〜でもそう言う私も意味わからない存在になっちゃったな…」
 ここまで思いを馳せた龠影・凛音は幽霊だ。それこそ人間のいうオカルト的な存在そのもの。
 ずん、ずんと重たい足を引きずっていることにたった今気づいた。
 まるで思考の重さが足の重さになっているみたいだ。これは良くない兆候だと直感で理解した。
 「駄目だ、そこまで考えても意味ない。とにかく!人が行方不明になってる!助けなきゃ!」
 我に返ったことでふっと足の重さが消える。このまま重たい足を引きずっていたらこの小道はどこに続いていただろう?
 確立した自我を確かに取り戻した龠影・凛音は薄暗い小道の出口に向かって真っ直ぐ進むのだった。

三戸部・ジン

 薄暗い小道を三戸部・ジンが進む。
 天涯孤独のデッドマン、三戸部・ジンは『友達の重要性』というものがよくわからない。
 (それでも、今まで当たり前だったことをなくすと、喪失感はあるわな)
 ふぅ、とタバコを一服つきながら事の顛末に思いを馳せる。
 別に、人の気分気持ちが転がった先にあるモノが罪というわけではい。そこに付け入って怪奇を起こす古妖が悪いだろう。というのが三戸部・ジンの導き出した結論だ。

 小道を進む、進む。記憶の殻を1枚1枚剥がすように。
 誰かの屈託のない笑顔。泥のように過ごした過酷な訓練の日々。体中を何かが突き抜けて蜂の巣にされる激痛……
 "眠っていた記憶"だろうか?継ぎ接ぎの"元"だった人の記憶。
 タバコの火種が落ちて地面を焼いた音がとても遠くに聞こえる。
 何かを誤魔化すようにタバコを携帯灰皿に潰し入れて、<即効性鎮痛剤>を口に放り込む。がりがりと薬剤を砕く音が頭の中に響く。数秒の遅れをして、考えていることが今に引き戻されてきた。
 「まったく悪趣味な怪奇だな」

 √能力者たちが小道を進んだ。その先にあるものを目指して。

第2章 冒険 『親友の為ならば』


 不思議な小道を進んだ先。女の目撃情報があった周辺に近づいてきた。
 なるだけ早く、手遅れになる前に女の足取りを掴みたいところだ。
 √能力者たちは各々行動を起こす。
オッター・リバーライツ

 ●かわうそ大行進~人生の先輩説~
 さっそく聞き込みに参加したオッター・リバーライツ。【カワウソ大行進】でなんと20体に分裂しての1人人海戦術を決行!女の子のいそうな場所を片っ端から回って調査するかわうそ海戦術が繰り広げられた。

 目的の女自体はあっさり見つかった。いや、たぶん物量の賜物。デモクラシィの目も届かないような辺鄙な場所に1人で立っている。
 √能力者なら感じ取れる、不可視の妖怪の束縛に囚われ虚ろな目で地面を見つめていた。
 「お嬢さんお嬢さん、なんだか悩みがあるみたいだねぇ。このもふもふなかわうそさんに話してみたら、楽になるかもよぉ」
 オッター・リバーライツが声をかければ、虚ろに「1人だけ楽しんでいるだなんてずるい」「私もあの写真の中にはいりたかった」と女が呟く。
 「そっか、お嬢さん。こんなオカルトじゃなくて、直接男の子と確かめに行こう?もちろんかわうそもついていくからねぇ、寂しくないよぉ」

 そっと寄り添うかわうその姿は、歳に関係なく人生の先輩のように見えた。

三戸部・ジン

 ●タバコの炭と感情の鮮度
 小道を歩ききった先で『女』とかわうその会話に耳を傾けた三戸部・ジン。彼も女に近寄る。自動販売機並の体格に感情を取り戻しつつある女は圧倒されかかったが、外見より優しい声色で話しかけられたことで落ち着きを取り戻す。

 「なあ、俺は他人のアンタの事なんて知らないから教えてくれ。幼馴染と離れて感じたのは寂しさだけか?憎しみに押し潰されて本当の気持ちを見失ってないか?」
 女は見上げて聞いた感情探しの言葉に、涙で答える。女自身も言われて初めてこの事に気づいたのだろう。

 「混ざりたいなら行けばいい。寂しいなら言えばいい。アンタには健全な両足と口があんだろ?」

 つとめて冷静に、かといって責めることもなく。優しく言葉をかける。そして、胸元から1本タバコを取り出し火をつける。煙がふんわりと立ち上り、香ばしい匂いが充満する。返しの言葉を待つ間の三戸部・ジンなりの気遣い、なのかもしれない。

 チリリ、と先端の灰が風に撒かれる頃に女は口を開いた。

 《私、なんで何も知らない人たちにこんなに励まされてるんだろう…本当になんで、こんなに優しい人たちにもっと早く出会えなかったんだろう。どうしてあの写真の友達みたいに、笑顔の写真を送り返せなかったんだろう……》

 ぽろぽろと大粒の涙が溢れる、『トモダチサマ』にすがるしかなかった女はやっと思いの丈を等身大に受け止められたようだ。
 「よく言えたな」
 三戸部・ジンがそっと女の肩を叩く。
 女が待っていたのは、こういう優しい大人だったのかもしれない。

裃・静夫

 ●ガラクタは白物家電の夢を見るか?
 ふらふらと、心当たりの1つや2つを当たれば当事者に行き会う、というのは√能力者の特殊能力だろうか?とにかく裃・静夫は件の女と話を聞いている√能力者たちのところへ合流することに成功した。
 『トモダチサマ』の話に乗ったことを後悔し始めている女へ近寄り、掛ける言葉を探す。
 o0(人生は長い!忘れろ!時間が解決してくれる!なんて言うのは簡単だけど、乱暴だ。その時忘れてもさっきの小道みたいにふと思い返した時の苦しみが生まれうるしなあ)
 しっかりと言葉を探し、女の目線に合わせて声を掛ける。
 「直接会ってかたをつけるというのはどうだろうか。送るよ?」
 これも乱暴な解決方法だけれど、と自嘲はするが、女にとって親身になってくれる√能力者たちは砂漠の水のように染み入ることだろう。
 女が顔を上げて歩き出し、裃・静夫と他の√能力者が連れ立って進む。
 道の脇にデモクラシィに乗り遅れ打ち捨てられたレトロ家電がおいてあるのが見えた。いつもの裃・静夫なら引き取って帰るのだろうが、今は仕事中だ。
 きっとこの女もあのレトロ家電と同じ、行き場を求めているだけなのだろう……

第3章 ボス戦 『外国妖怪『狼狼』』


 √能力者たちが女の情念の一部を晴らし、解決のために見送る途中。豪と風が吹いた。
 君たちが巻き上げられた風に目を閉じれば、女はその場から空のように消え、後には妖怪が1体残っていた。
 「もうちょっとで眷属化できたのにどうして邪魔するネ!あんたらひどいネ!」
 精一杯文句をつけてきているようだが、こちらの道理ではあちらが悪い。
 あちらの道理ではこちらが悪いようなので、穏便に暴力で解決することになった。
 「ここであんたらをふっとばして眷属ゲットするネ!」
 なんとかして阻止しなければ……!
オッター・リバーライツ
三戸部・ジン
ヒルデガルド・ガイガー

 風に巻かれ消えた女の代わりに現れた妖怪『狼狼』。
 相対するは3人の√能力者。
 オッター・リバーライツ
 三戸部・ジン
 ヒルデガルド・ガイガー

 「あらあら、可愛いワンちゃんですね。たっぷりと可愛がって差し上げましょうか?」
 ヒルデガルドが安い挑発をしてみたが、『狼狼』は簡単には乗らない。
 「犬じゃない!狼!」がおー
 乗った、すごいぷんすこしている。煽り耐性0かもしれない。
 その瞬間にヒルデガルドは【呪詛領域】を展開、
 オッターは【カワウソ大行進】で鋭い爪をしたカワウソを20体召喚、
 三戸部は<術式回転式拳銃>にリロードされた弾丸を確認し<御用警棒>を伸ばす。

 「犬呼ばわりしたこと、後悔させてやるネ!」
 【吸血鬼の本分】で【呪いの牙】に変形させた犬歯をむき出しに『狼狼』が【呪詛領域】の展開で動けないヒルデガルドに飛びかかる。
 その間に三戸部ばさっと割り込み<御用警棒>を『狼狼』の口に轡のように噛ませて、空きっ腹を<術式回転式拳銃>の連射で狙う。BANBANBANと3発の速射の内1発は『狼狼』の脇腹を大きく削り、2発は空を切った。

 「チィツ!大人しくするネ!」
 「キーキーうるせえやつとはオトモダチなんて御免だね!大人しく自国に帰んな!」

 喧嘩っ早い『狼狼』は何を言われても反応するのかもしれない、大きく飛び退いた『狼狼』がカッと眼を見開いた。
 「【この眼を見るネ!】」
 「…………ッッッッ!」
 決して油断していたわけではない三戸部だが、敵とはいえそれなりに顔立ちの整った相手の顔を全く見ないというわけにもいかないもので、たとえそれが麻痺の魔眼であってもだ。
 三戸部の喉から声が出ない、瞳に気をつけろと渓谷を発したいが瞼の1つさえ動かなかった。
 この状況に割り込んできたのはカワウソ20体。
 鋭い爪をしたカワウソがだぁっと流れ込み、『狼狼』に飛びかかり体を手当たり次第切り裂いていく。
 「痛いアル!」
 「……動ける!」
 「かわうその強いところ、見せてあげちゃったねぇ」
 オッターがカワウソの群れを指揮しながらかわいい手で三戸部にサムズ・アップする。

 「この邪魔くさいカワウソめ!そっちが数ならこっちは質アルネ!」
 カワウソの群れを振り払った『狼狼』が念を込めると、その姿が【物理攻撃が貫通して無効化される血液の大狼】に変化する。それまで有効打だったカワウソの爪がすり抜けて無意味になり、大狼の爪や牙がカワウソを襲い次々と分身が倒されていく。
 「かわうそ……」
 「眷属にしたきゃ死ぬ気でかかって来やがれ。俺は生きたままテメーのような犬っコロの隷になるほど甘くはねぇぜ?」
 【呪詛領域】を展開していたヒルデガルドが【鬼哭砲】を発射し、√を跨いだ回避不能の一撃を大狼に与える。吹き飛ばされ変化の解けた『狼狼』に対して【呪詛領域】の力で周囲にある最も殺傷力の高い物体が追い打ちをかける。
 「お、おお~?!」
 それはかわうそだった。具体的にはオッター・リバーライツ本人だった。
 ごちーん!と痛そうな音がして『狼狼』とオッターの頭がぶつかる。

 「きゅぅ……」

 当たりどころが悪かったのか、『狼狼』は気絶してしまったようだ。

 気絶した『狼狼』の回りに3人が集まった。
 「海外から来たって?わざわざご苦労なこったな」
 「弱った心につけこんでなんて、わるーぃことしちゃだめだよぉ」
 「思ったより弱い犬っコロだなぁ」
 一段と強い風が吹いて3人が一瞬目を閉じた。その場にはさっき『狼狼』と入れ替わりに行方不明になった女が帰ってきていた。
 〈あれ、私生きてるの……?眷属になって、ない……?〉
 不思議そうにしている女に三戸部が倒れた『狼狼』を指して問う。
 「これが『トモダチサマ』だ。お前はどうしたい?」
 「同じ妖怪としては、メッてしなきゃねぇ」
 「気絶していますから、好き放題できますよ」

 しばらく女は考えて、答えを出した。
 〈私、この妖怪のお友達になれないかな?もちろん、眷属じゃなくて普通の〉

 3人は不思議な表情で顔を見合わせた。

 Fin

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