逃亡する天使を助けてあげて
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「やあ少年少女諸君。「天使化」の病を知っているかな?」
アーマリア・アマクサ(人間災厄「カタリナカタリ」お姉さん・h01673)はそうカタリ始める。
√汎神解剖機関のヨーロッパ各地で、老若男女問わない「善良な人々」が、突如として「天使化」する事件が予知された。
天使化とは「善なる無私の心の持ち主のみ」が感染するとされるヨーロッパの風土病で、人心の荒廃した現代では既に根絶したものと思われていた。
「殆どの場合、感染者はオルガノン・セラフィムという怪物に変貌するのだけど……どうやら、怪物にならず真に「天使」と化すことの出来た人がいたようなんだ」
天使になったその人は……肉体は美しく異質な存在に変貌したが、理性と善の心を失っておらず、困惑している。
「天使」は今のところ√能力を使えないようだが、もはや一般社会で過ごしていくのは困難であり、またオルガノン・セラフィムは「天使」を捕食しようとしている。
「オルガノン・セラフィムや他の天使を確保しようとしている組織から、この『天使』を救出するのが今回の任務となるよ」
既に天使はオルガノン・セラフィムに追われている。
逃げる天使とどうにか接触し、保護する旨を伝えつつ迫りくる脅威を排除して欲しい。
「ただね。ヨーロッパには、「羅紗の魔術塔」と呼ばれる独自の秘密組織が存在するんだ。強大な羅紗魔術士『アマランス・フューリー』。彼女が参戦してくる可能性が高い」
羅紗の魔術塔という組織は、太古より続くヨーロッパ魔術士達の記憶を織り込んだ「羅紗(らしゃ)」を身にまとい、それを媒介にして戦う羅紗魔術士をメインとした勢力だ。
彼らは自国利益の為に汎神解剖機関と対立しており、今回もオルガノン・セラフィムを奴隷化すべく現れる。
もちろん、「天使」を発見すれば天使を奴隷化するつもりだ。
天使を保護する場合、かなりの確率で敵対することになるだろう。
「それでもこの善良無垢な天使少年、いや、天使少女かな?彼らを助けられるのは少年くん、少女ちゃん。君達だけだ。よろしく頼むよ」
そしてアーマリアは予知した天使の出現地点を伝えるのであった。
第1章 冒険 『路地裏を駆けるもの』

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「ほーん、なんか面白えことが起こってるみたいじゃねえの。天使化ねぇ」
レオン・ヤノフスキ(ヴァンパイアハンターの成れの果て・h05801)は天使化の症状を聞く。
「善なる無私の心の持ち主のみ」が感染するとされる病で、翼が生え身体が無機質なものとなり内臓も変わり身体が人間の肉体から美しくも異形の存在へと変貌してしまうというのだ。
「こちとら吸血鬼化させられた身でね。親近感も湧くってもんだぜ」
レオンはそういうが、天使化した少女はそれだけではすまない。
何故なら、天使は今、狙われているからである。
オルガノン・セラフィム。天使化の症状が出たにも関わらず変貌が上手くいかなかったもの……彼らは天使を捕食しようと襲撃してくるのだ。
未だ、戦う力のない天使たちではむざむざ殺されてしまうだけである。
「おっ、可愛い天使ちゃん発見♪助けますかぁ!」
そんな訳でレオンはオルガノン・セラフィムに追いかけられている天使を発見。
すぐさま救出に向かうのだった。
「どうして、どうしてこんな事に……!?あのバケモノ達は一体……!?
『アアアアッ!!』
皮膚が真っ黒になり背中から翼を生やした少女は、出来の悪い人型の偽物の、さらに失敗作のような見た目のオルガノン・セラフィムに追いかけ回されていた。
「嬢ちゃん、ここは危ねえから俺に付いてきてくんな!」
レオンは天使の少女を見つけるとそう声をかける!
「本当ですか!ありがとうございます!」
「……なにぃ、信用できねえってか?って、ええっ!?」
断れること前提だったレオンだったが、彼は天使ちゃんの善良無垢さを舐めていた。
「助かりますーぅ!!おじさん!あの怖いバケモノに追われてたんです!!」」
「いや、俺はまだおじさんって年じゃない」
いやどっちかというとこの少女がしたたかなだけかもしれない。
『アアアアッ!!』
「ちっ、早速来やがった!悪いが話はあとだ!」
しかしそんな間にもオルガノン・セラフィムはやってきた。
レオンは少々強引だが……と呟きながら天使ちゃんを肩に担ぐと走り出す。
「うひゃあっ!?なんかすごいはやーい!!」
「しっかり捕まってろよ!」
レオンはそのまま壁を蹴って空中ダッシュで屋根に登り、そのまま屋根伝いに逃げ出していく。
「これなら追手の動向もよく見えんだろ」
「おじさん!!後ろっ!!後ろから来てる!!」
「……ってやっぱ相手も天使もどきなら飛べるか!!」
振り向きざまにショットガンをぶっ放して撃ち落としていくレオン。
うひょー!!とテンションを上げて騒ぐ天使ちゃんを担いだまま、オルガノン・セラフィムから逃げていくのであった。
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「く、いったい何が起こっているんだ。大人しくヤラれてたまるか!!」
天使・純(エンドブレイカー・h06596)はその身に起きた現象を正しく把握できているわけではなかった。
己の身体が変貌した理由……天使化が発症したなどと言う事は、ゾディアックサインを詠む√能力者でなければ自覚できるともわからない。
「はぁはぁ、くそどこまでも追ってきやがる」
しかしそんな彼の元へも、オルガノン・セラフィムは舞い降りてくる。
「ん?あれは……」
そして純は自分以外にも己と同じように身体が変貌した少女らしき存在を、自分と同じように異形の天使もどきに襲われそうになっているところに遭遇する。
「ああ、くそくそくそ自分のことで精一杯だってーのになんで俺はあの娘を助けようとしてるんだ!!」
それは考えての行動ではなかった。
天使化の症状が発生する……つまり「善なる無私の心の持ち主」である純は理由などなく、己を顧みずに困っている少女を救いに走る。
「どりゃあー!!」
追いつかれそうだった少女にタックルをするように抱えて離脱。
ぎりぎりのところでオルガノン・セラフィムの爪を避けて逃げ出す。
「ああ?置いて逃げるなんてできるわけねぇだろが!!」
しかしその場での危機は回避できたが、2人になってしまったことで足はさらに遅くなってしまう。
「ち、ここまでか」
必死に走る純だが、どうにか振り切る術がなければこのまま捕まってしまうだろう。
「ヒャッハー!!」
だが、その少しの時間稼ぎが2人の天使の明暗を分けた。
「ヒャッハー!真綾ちゃんデース!今回は天使ちゃんの保護頑張るデース!」
迫るオルガノン・セラフィムに突如道端から現れた、やたらと邪悪な笑顔を浮かべた白い少女が飛び掛かっていったのだ。
「……なんだ?あの人達はいったい」
「ヒャッハー!真綾ちゃんが直々に守ってやるから安心しろデース!みんなまとめて面倒見てやるデース!」
現れたのは白神・真綾(白光の堕神・h00844)。
天使が襲撃されていると聞いて救出に来てくれた√能力者であった。
「やられる前に殺すデース!殺敵隠密」
邪魔者を排除しようと攻撃してきたオルガノン・セラフィムを逆にカウンターで反撃して打ち倒す真綾。
そのまま彼女は天使2人に安心するように笑みを浮かべて……あまりに邪悪過ぎるのでその気持ちは伝わらなかったが、それでも逃走経路を伝える。
「マルチプルビットを先行させてオルガノン・セラフィムがいないのは確認済みデース!!さあ行くデース!!」
「お、おお!?すまねぇ、どこの誰だかは知らんが恩にきる」
「もう大丈夫だよ。僕に捕まって!」
さらにそこにバイクに乗った白蹄寺・漣(ドライバーホワイト・h05748)も乗りつけてきた。
ここは走り屋の出番だと駆けつけてくれたのである。
「もう大丈夫、安心して」
純ともう一人の小柄な少女の天使をバイクの後部座席に乗せると、漣は真綾と違って本当に柔和な王子様スマイルで声をかける。
「お、おお……!?」
まるでキラキラ光ってるかのような笑みに気おされる純であったが、少女天使ちゃんには効果てきめんだったようだ。
安心するようにぎゅっと抱き着いていた。
「これでも闘志戦隊ファンダーズの走り屋なんだ。天使だろうが誰だろうが追い付かせないよ!」
「う、うおおおお!?」
新手のオルガノン・セラフィムに襲われそうになったところを、漣はバイクの『魔導式ウエポンエンジン』を起動させるとスタートダッシュ!
「もう少し進んだら休憩デース!それまでがんばれデース!」
真綾が防御フィールドを展開して守りながらもサプライズボムをばら撒いて敵を攪乱。
その間に漣が颯爽とバイクで駆け抜けていくのであった。
「しっかり捕まってて……あ、でもそこは!」
なお急な加速に思わず掴まれた漣は多少焦ったりしたものの、天使の安全優先で突っ走ったのであった。
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「どうして、どうしてこんな事に……!?あのバケモノ達は一体……!?
皮膚が真っ黒になり背中から翼を生やした少女は必死に走っていた。
彼女は天使化の症状が発症した一般人。
そんな彼女の後ろを出来の悪い人型の偽物の、さらに失敗作のような見た目の化け物が追い掛け回してした。
『アアアアッ!!』
それはオルガノン・セラフィム。
天使化が同じ発症したものの、人としての理性を失った存在。
彼らは本能的に完全な天使となったものを捕食しようと行動しているのであった。
「さて、行きますかぁ」
そんな場面に、雨夜・憂(百鬼斬り・h00096)が介入する。
「ここは通せんぼだ」
警官服を着た憂は気だるい様子で現れると、天使の少女とオルガノン・セラフィムの間を塞ぐように立つ。
『アアアアッ!!』
「良い暇つぶしだ。やったれ」
オルガノン・セラフィムは邪魔者を排除しようと動いて来たが、そこに憂は√能力を発動する。
「|介入者への報復《エンティティブレイク》」
決戦型ウォーゾーン自律移動型防弾盾 猿型がバリケードに変形するとその攻撃を防いで弾く。
更にそこに雉型や犬型が追撃を仕掛けて相手を攪乱していく。
「いまのうちに」
「あ、は、はい……」
憂はそのままオルガノン・セラフィムの相手を任せつつ、天使の少女を救助するのであった。
第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』

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教われている天使を助けた√能力者たち。
しかし逃げているばかりではいられない。
『アアアア……』
天使のなりそこない。
オルガノン・セラフィム。
天使化の症状が発症し、完全な天使に至れなかった元人間。
彼らは理性は残っておらず、執拗に完全な天使を捕食しようと襲い掛かって来る。
既に完全に化け物となってしまった彼らを救う術は今のところはない。
そして放っておけば、無垢な善の心を持つ完全に天使化した人を捕食してしまう。
彼らを助けるためにはここでオルガノン・セラフィムを打ち倒す必要があるだろう。
「オレはどこにでもいる只の私立探偵。揉め事でも厄介事でもいっちょ噛みさせてもらうぜ?
そこに四二神・銃真(そいつの名前は死神ガンマ・h00545)が介入しにやってきた。
「敵さん相手なら多少のことは……やっちゃっても? いいだろ?」
『アアアア……!!』
現れた銃真に対してオルガノン・セラフィムは邪魔な存在を排除しようと黄金の生体機械によって先制攻撃を仕掛けて来た。
「いきなりかよ!?変身っ!!」
攻撃を受ける瞬間、銃真は己のMHルートバレットをブラスターにセット!トリガーを引く!
「|ガンマ・MHバレット《ガンマ・マスクドヒーローバレット》」
爆発が治まるとそこには【√マスクド・ヒーローの力を宿した姿】に変身した銃真が立っていた。
「こんな世界でヒーローやるって奴が……正気なわけねェよなァ!?」
自身の【キック力・機動力・反射速度・語彙の汚さ】が2倍になった銃真は素早くジャンプすると、新武器【大型拳銃・グリムリーパー】を構える。
「ちゃんとしたヒーローならお行儀よくしてくれると思うけど…オレはどちらかといえば|ヒーロー《HELL-O》だから。容赦はしないぜ?」
虹色の燐光を纏って隠れようとしていたオルガノン・セラフィムであったが、とにかく乱射しまくった銃真の銃弾が相手に当たる!
『アアアア……!?』
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「舌かまないようにねっ!!」
「きゃーっ!!」
「うわぁぁぁっ!?」
ドン!!と激しい衝撃と共に3人乗りしているバイクが空中に躍り出る。
(今のでサラシ、ズレてないよね?)
後ろに天使を2人も乗せて走っていた|白蹄寺・漣《はくていじ・れん》(ドライバーホワイト・h05748)は胸にかかる手にドキドキしながらも爆走。
なんとかオルガノン・セラフィムから距離を離そうとする。
「天使の子達を一旦安全な場所に連れていければと思ったけど……中々難しいみたいだね!」
悪路を突破した甲斐があってか、空を飛行するオルガノン・セラフィムから何とか逃れ続けていけていた漣。
しかし彼女のドライビングテクニックでも、完全に引き離すには至れそうになかった。
『アアアア……!!』
天使を捕食せんとする天使のなりそこない。
オルガノン・セラフィムは執拗に彼や彼女を追い掛け回していた。
「仕方ない。こうなったら……」
このままバイクで進める道を選んでも恐らくは上空から発見されてしまうだろう。
漣はここで一旦バイクを止めると、背中に乗せていた天使たちを降ろす。
「下がってて。君達は僕らが守るから」
「ふぇ?貴方はどうするのですか?」
「ボクなら問題ないよ」
どうにか隠せそうな場所を見つけた漣は二人の天使をそこに押し込める。
『アアアア……!!』
そこへオルガノン・セラフィムが天使を探してやってきた。
「ボクも……闘志戦隊ファンダーズの一員さ!」
漣は戦う意思を締めると、腕輪を掲げる。
「ファンダーチェンジ!」
変身ポーズと掛け声によってファンダースーツ『ドライバーホワイト』を着用変身。
ライダー+一角獣(麒麟)がモチーフの白い戦隊戦闘服に姿を変えると、ジェットランス『ホーンストライカー』を起動させダッシュで突撃する!
『アアアア……!!』
オルガノン・セラフィムは√能力によって、自分を攻撃しようとしてきた者に【黄金の生体機械】にて跳躍からの先制攻撃を仕掛けて来る。
「くっ!!」
ドライバーホワイトはその機械をジェットランスで弾き先制攻撃を防いで見せる。
「と、そこまで都合よくはいかないか」
突き刺してやろうとしたのだが、流石に√能力を持っていない攻撃ではどうにかできそうにはない。
だが、攻撃が通らなくとも動きで翻弄することはできる。
「攻撃は受けないよ!!」
【虹色の燐光】を纏い隠密状態になったオルガノン・セラフィムに対して、攻撃の的を絞らせないようにジェット機構を駆使して高速移動を繰り返すドライバーホワイト。
ただしこれは攻撃を回避するだけの動きではない。
「うまく隠れたかもしれないけど、もう見えてるよ」
動き回って起こした土煙で、姿を消した敵を浮き上がらせたのだ!
「なっ、そっちか!?」
見えたオルガノン・セラフィムは……隠した天使二人の元へと行こうとしていた。
この天使もどきの目的はそもそも天使の捕食のみ。
本能的に動いているのもあって、脅威認定が高くない漣はそこまで攻撃優先順位が高くなかったのだ。
『アアアア……!!』
「ひゃああ、こっち来ましたよぉぉぉ!?」
少女の天使が傍らの少年の天使の腕をとってパニックになる。
(さて、本来ならこのまま終わるまで待ってるのが正解なんだろう)
腕をとられた少年の天使……|天使・純《あまつか・じゅん》(エンドブレイカー・h06596)はそんな自らの命も危うい状況でどこか冷静になっている自分を自覚していた。
彼もまた既にその身は人から離れ、完全に天使化が済んでいる。
オルガノン・セラフィムに襲われてしまえば捕食されるのは必須だろう。
そして、既に漣はオルガノン・セラフィムの姿を補足し、何やら不可思議な武装で攻撃を仕掛けようとしているのが見えた。
(どうにか、奥に逃げて時間を稼げば、多分あの怪物はどうにかしてくれるはずだ)
純は冷静に状況を見て、そう判断する。
先程までの漣の動きとその速度からすればきっとうまくいくだろう。
自分たちの逃げる速度が遅いともしかしたら自分の背中が切り裂かれてしまうかもしれないが。
(だが、あいつとは俺がケリをつけなければ!!)
純はしかし、冷静になった頭の中でこれだけは譲れないのだと覚悟を決める。
(おふくろも親父もおばさんもおじさんも俺を逃がす為にみんなあいつにやられた。俺の……幼馴染)
「見つけた。今、俺が止めてやる。おらぁ!!」
純は命の危険が迫る中で、だからこそ、オルガノン・セラフィムの動きがよく見えた。
そして一矢報いるために、腕にすがりついてきた天使の少女の生存率を少しでも上げる為に、恐怖をものともせずに前に飛び出す。
「おらぁ!!」
『アア……!?』
そのまま殴りつけてオルガノン・セラフィムを押し込んでみせる。
ダメージが通っているかどうかは問題ではない。
相手を一時的にでも押し込むことが大事だったのだ。
「喰らえっ!!」
そこに漣がジェットランスで突撃。
オルガノン・セラフィムを吹き飛ばす!!
「ヒャッハー!!お待たせしましたデース!!」
そこに天使たちと戦い暴れていた|白神・真綾《しらかみ まあや》(白光の堕神・h00844)が合流してきた!
どうやら彼女は追っ手となっていた他のオルガノン・セラフィムも撃退してきたようである。
「天使ちゃん達全部逃がしたら、ここからが本番デース!慣れないことして疲れたから気晴らしかねて派手に食い散らかしてやるデース」
そのまま吹き飛ばされてきたオルガノン・セラフィムを更に押し込み、天使や漣と距離を強制的にとらせる。
「ヒャッハー!皆殺しタイムデース!光の雨に消えろデース!」
使う√能力は|驟雨の輝蛇《スコールブライトバイパー》。
【レイン砲台】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃になるというもの。
マルチプルビットを展開すると、真綾はレイン砲台から粒子状のレーザーを降り注ぐ。
『アアアア……!!』
オルガノン・セラフィムもまた√能力を使用し、その身に刻まれる傷を急速に治癒していく。
だが、それをみても真綾は一向に止まらない。
回復されるのであれば、回復できなくなるまで撃ち続ければいいのだ。
「コレデスコレ!この血や肉が焦げる臭いと怨嗟の声!真綾ちゃん昂ってきちゃうデース!ヒャッヒャッヒャーッ!」
狂ったように笑いながら殲滅し続けるのであった。
●
「ちっ、これ以上撒くのは無理か……」
レオン・ヤノフスキ(ヴァンパイアハンターの成れの果て・h05801)は天使ちゃんを抱えながら逃走していたが、途中で足を止めることになった。
『アアアア……!!』
何故なら、前方から別のオルガノン・セラフィムが出現したからである。
「わわわわ……!!おじさん、やばそう、やばそうだよぉ。ダメだったら私を囮に、逃げて!!」
無垢な心を持つ天使ちゃんは逃げられないと悟ると自然と自己を犠牲にしてレオンを助けようとしてくる。
「はっ。なぁに、あれくらい大したことはねぇ。ちょっとばかしそこで待っててくんな!すぐ片付けるからよ」
レオンは軽快に笑い飛ばすと天使ちゃんを屋根に下ろして敵と対峙しにいく。
『アアアア……!!!』
「しっかしあのナリで元人間だってんだから驚きだぜ」
オルガノン・セラフィムは天使になれなかったなりそこない。
天使化そのものが肉体が人間からかけ離れてしまうのだが、オルガノン・セラフィムはそれに輪をかけて化け物感が強かった。
そんなオルガノン・セラフィムは本能的に天使を捕食しようとしているが、それを邪魔するレオンにも敵意を向けてくる。
「まともに取っ組み合うのは賢く無さそうだ。だったらこいつだぜぇ?」
レオンは接近戦は不利と考え、ショットガンを構える。
『アアアア……!!』
そこに、オルガノン・セラフィムが反応。
何処にそんな力があるのか、跳躍してレオンに接近すると、【黄金の生体機械】にて攻撃を仕掛けて来る。
「チッ」
「おじさんっ!?」
レオンはその攻撃を、敢えて避けず……だが己の攻撃を当てることを優先した。
「こいつは効くぜぇ?|喰い荒らす血の弾丸《ブラッディシェル・エロジア》」
√能力によって【血属性の弾丸】に変化させた【スラッグ弾】を零距離で発射。
知性を失っているオルガノン・セラフィムはそれをまともに受け、ダメージを与えるが、そのまま追撃をしてこようとする。
『アアアア……』
攻撃後、【虹色の燐光】を纏い隠密状態になるオルガノン・セラフィムはそのまま今度はレオンではなく、天使へと向きを変える。
「おいおい。そりゃねぇだろ。お前の相手は俺だろ」
そんなオルガノン・セラフィムの動きを……姿を隠したはずの相手をレオンははっきりと正面に見る。
「隠密状態になっても遅えよ。最初の弾丸から這い出た俺の血がてめえの体を食い破る!」
『アアアア……!!?』
状態異常【侵食】によって体内からダメージを与え続け、そして燐光の上から血液を出して居場所を示す。
レオンは動こうとしたオルガノン・セラフィムに逆にこちらから追撃のショットガンを撃ち込むのであった。
「こいつらもそれなりに綺麗な心ってやつを持ってたんなら、やりきれねえよなぁ。俺のほうがよっぽど汚れてんだろうぜ。……ま、運が悪かったと思って諦めてくれや! 」
第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』

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『まさか、本当に完全な『天使』がいたとは……』
オルガノン・セラフィムを退けた君達の前に、一人の女魔術師が現れた。
『天使化の発病条件は『善なる無私の心』。人類の進化が止まり、人心の荒廃した現代において、天使化は根絶されたと思っていたのだが……』
彼女の瞳に映るのはただ天使のみ。
そしてそこにあるのは善の心などありはしない。
ただ、己の奴隷にしようという悪意のみであった。
『オルガノン・セラフィムを捕獲しに来たつもりだったが、天使がいるのであれば話は別だ』
そして彼女の己の太古より続くヨーロッパ魔術士達の記憶を織り込んだ「羅紗(らしゃ)」を媒体に魔術を織り成す。
『邪魔をするというのならば、容赦はしない』
ヨーロッパの秘密組織「羅紗の魔術塔」。
羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』。
悪の√能力者である彼女を倒し、天使の安全を確保するのだ!
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「さてはて、お役に立てるでしょうか」
アマランス・フューリーを前に、幽霊の|誉川・晴迪《ほまれかわ・はるみち》(幽霊のルートブレイカー・h01657)が割って入ってくる。
幽霊は退魔道具で身体を縛って居ない限りはその姿が一般人には見えない。
未だ√能力に覚醒していない天使にはもちろん晴迪の姿は見えていないので、一般人救助という面では難しいだろう。
「つまりは戦闘で貢献しなくてはいけないようですね」
『邪魔立てするというのならば容赦はしない』
晴迪の登場にアマランス・フューリーは冷たい視線を向けて来る。
そして己の纏っている羅紗(らしゃ)を媒体に√能力を発動してきた。
『記憶の海の撹拌』
10秒間の瞑想により己の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。
それは強力な√能力を纏って晴迪を押し退けようとしてくる。
「これこれは、とっても興味深い……おっと、キチンとお仕事は致しますよ」
好奇心旺盛な晴迪は【知られざる古代の怪異】に興味を引かれながらも攻撃を喰らって即座に退場とされる訳にはいかないとゆらりと避ける。
「よっ、ほっ。インビジブル・ダイブですよ」
危ないところは√能力を発動。
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替え攻撃を回避してみせる。
「うんうん。今の内だねー」
そして晴迪が頑張って時間を稼いでいる間に 赤星・緋色(フリースタイル・h02146)が天使の元へと救助に向かっていた。
「私の仲間が敵の注意を惹いてる内にこちらへ」
更に√能力者が起こす事件に対する対処法を叩き込まれているアーサリン・ラッシュマン(アーマー・インダストリーズ √関連事件対策部:部長・h04071)が誘導にいく。
彼女も√能力者ではないので幽霊である晴迪は見えていないが、そういう存在がいるのは知っているのだ。
天使からすれば、襲ってきた謎の魔術師が何もいないところに執拗に攻撃を繰り出しているように見える。
ひとまず脅威が自分にすぐに迫っている状況からは脱していたが、次にどうすべきか迷っていたところに緋色とアーサリンが来てくれたのだ。
「仕組みは分からないけど目的が達成されればいい、って私が言ってたよ」
緋色はひょいっと√能力、|業:無罪《ワザ》でなんかよくわかんないような攻撃によって視界内のアマランス・フューリーを攻撃。
『んっ!?新手かっ!?』
誰もいない方向から攻撃を受けたアマランス・フューリーは不意打ちを喰らってそちらを向いた。
もちろんそこには誰もいない。
「さ、今の内!」
「こちらです!」
晴迪が主な攻撃を防ぎ、注目を集めて。
緋色が注意を惹いて視界から天使を外した間に、アーサリンが素早く行動。
そうしてアマランス・フューリーにダメージを与えつつ、天使を逃がすのに成功するのであった。
●
「ヒャッハー!ボス格の登場デース!こいつは強そうで真綾ちゃん楽しみデース!」
|白神・真綾《しらかみ まあや》(白光の堕神・h00844)はボスの登場に恐れを抱くどころか好戦的な笑みを浮かべて喜びの声をあげる。
『邪魔立てするというのならば容赦はしない』
真綾の登場に件のボス、アマランス・フューリーは冷たい視線を向けて来る。
そして己の纏っている羅紗(らしゃ)を媒体に√能力を発動してきた。
『純白の騒霊の招来』
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し真綾へと襲い掛からせにくる。
レムレース・アルブスたちは攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」を使ってアマランス・フューリーを援護する存在だ。
「ヒャッヒャッヒャー!いっぱい来ますデース!でもそれでは真綾ちゃんは捕らえられないデース!」
しかし真綾は焦る事なく、己も√能力を発動。
マルチプルビットを周囲に展開すると、レムレース・アルブスを全て巻き込めるように、全周囲からの砲撃とレイン砲台による上空からのレーザー砲撃を仕掛ける。
「さらに、絶対殺すデース!」
|真綾ちゃんの絶対殺戮連撃《フェイタリティヴォーパルコンボ》!
【足場を崩す様に仕掛けられたサプライズボム】で圧倒し、【死角からのマルチプルビットの電撃ワイヤー】による捕縛、【首を狙った最大出力のフォトンシザーズ】による強撃の連続攻撃を与える。
『く、まさか奴隷怪異どもがこれほど簡単に……!』
「ヒャッヒャッヒャッヒャー!先兵でこの強さならいつか羅紗の魔術塔と戦争するのがスゲェ愉しみデース!
相手の力を削ぎ落す真綾であった。
●
「保護した天使達はファンダーズのリーダーの赤龍院さんに相談すればいいかな?」
天使たちをバイクによって救助していた白蹄寺・漣(ドライバーホワイト・h05748)はそうぼやく。
ルート能力者の伝手で保護していたり、赤龍院財閥にも保護された異世界難民とかいるらしい。
「それも、この人を倒してからになるだろうけど!」
『その天使を渡しなさい。邪魔をするというのならば、容赦はしない』
漣のバイクを後ろから追って来るのは、悪の√能力者のひとり。
ヨーロッパの秘密組織「羅紗の魔術塔」所属、羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』であった。
彼女は己の纏う羅紗を媒体に魔術を行使してくる。
「ちっ、よくわからんが近づいたらまずい気がするぞ!」
漣のバイクの後ろに乗せて貰っている件の天使、|天使・純《あまつか・じゅん》(エンドブレイカー・h06596)が叫ぶ。
無防備に背中向けるのもまずい気がするし、何より逃げ切れる気がしない。
「いやまあわかっているけどね!」
「うわぁっ!?」
『輝ける深淵への誘い』
しかしそれが分かっていても√能力者でもない二人にはどうすることもできない。
羅紗から放たれる輝く文字列が飛来し漣の行く手ではぜる。
「やっぱり、ここは最低限の自衛をしつつ、誰かが撃退してくれるのをまつのが吉だろうか?」
「いや、√能力を使わなくても、戦いはいくらでもやりようがあるんだよ!」
アマランス・フューリーの攻撃をバイクを盾にどうにか走り抜ける漣と純。
しかし進路方向に狙いを定められたのを見て、漣はここで反転する。
「ホーンストライカー!」
バイクに乗せていた魔導ウエポンエンジンをホーンストライカーに装着。
「うおっ!?まじかっ!?」
「舌をかまないようにね!」
ジェット機構が唸り声をあげると、アマランス・フューリーへと反転突撃を仕掛けにいく。
『ぐぅっ!?』
急な攻勢にアマランス・フューリーもその突撃を受けるが……やはり倒すには至らない。
「やったkおっとこれを言うのはフラグだな」
『ほう。素直に渡せばいいものを』
「ファンダーユニコーン!!」
そのまま漣は最後の奥の手のパイルバンカーを射出。
追撃を仕掛けながらもその衝撃で離脱を計るのだった。
●
「インビンシブル・アーマーマン、現着!」
天使を逃している非√能力者の部下の元へ、須田悪・京矢(インビンシブル・アーマーマン・h01647)が駆けつけた。
「全然遅くないぞ、アーサリン!」
その姿は、重甲物に近いパワード・スーツを着用したヒーロー!
「アーサリンの作戦行動の通知は届いていたさ。彼女が呼べば当然私が来る!」
『邪魔をするならば、容赦はしない』
羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』は天使捕縛を妨害する京矢へと敵意を向けて来る。
「作戦概要は理解している。魔術師を殲滅、および目標の「天使」を救出する」
『純白の騒霊の招来』
アマランス・フューリーは羅紗を媒体に【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚。
逃げている天使を捕縛しようと差し向けてくる。
「そうはさせない!」
だが京矢はその動きを読んでいると、上空より【ヘビー・ブラスター・キャノン】を構える。
「ブラスターキャノン・フルバースト!!」
多数召喚したブラスター・キャノンの一斉発射によって、敵のレムレース・アルブスを一気に粉砕していく。
『ぐっ、厄介な相手のようですね』
「こちらインビンシブル・アーマーマン。ここは私に任せろ」
天使の救出は他のものに任せ、京矢は火力を集中させて叩き込む。
これにはアマランス・フューリーも対処せざるを得ないのだった。
「対怪異戦の体のいい実地実験の相手になってもらうぞ!」
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「仲間が戦ってるみてぇだから俺も行ってくらぁ。天使ちゃんは隠れてな!」
レオン・ヤノフスキ(ヴァンパイアハンターの成れの果て・h05801)はひとまず助けた天使ちゃんを安全そうな場所に運び入れると、彼女を狙ってやってきた悪の√能力者の元へ反転して向かう。
「あ、おじさん」
「礼なら後でお茶でも付き合ってくんな♪もちろんそれ以上でもいいぜ?」
「が、頑張ってね!」
天使ちゃんの声援を指を立てて背中で受けたレオンはそのまま敵の元へいく。
『天使を捕獲しにきただけだというのに、邪魔なものたちが多い』
そこに居たのは羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』。
ヨーロッパの秘密組織「羅紗の魔術塔」に所属しており、ただただ天使を己の奴隷にしようとやってきていたのだ。
「ヒュー♪こりゃまた美人の姉ちゃんだぜ!いいねぇ〜、胸元パックリのへそ出しスタイルか。オマケに体のラインがしっかりと……うおっとぉ!?」
『輝ける深淵への誘い』
美しい見た目をしているが、その身に纏う羅紗を媒体にして放たれる魔術は脅威そのもの。
輝く文字がレオンの腹に直撃する。
『チッ、爆ぜぬか』
「うお、やべぇ……けどま、威力自体は大したことねぇな」
√EDENから奪ったエネルギーで自らの√を支配せんとする、邪悪な√能力者であるアマランス・フューリーは当然のようにこちらよりも上位の力をもっている。
そのため微弱ダメージといってもそれなりに痛いのだが……レオンはそれを敢えてニヒルに笑って挑発する。
「その程度の攻撃じゃいくら撃たれても平気だぜ」
『抜かせ。邪魔をするなら容赦はしない』
アマランス・フューリーはそんなレオンの挑発に乗ると、再度同じ攻撃を仕掛けて来た。
あまり体力が減り過ぎた状態でこの技を食らうと、頭部が破裂して死亡してしまう。
「そいつはもう見切ってるんだよ!」
だがレオンは√能力を発動!
オートキラーによって自分を攻撃しようとした対象に先制攻撃を仕掛けに跳躍する!
「おら、もっとセンスいい服にしてやんぜ!」
『くっ、私の羅紗をっ!』
ハチェットを振り抜き、相手の羅紗を狙うレオン。
魔術の媒体となっているそれを傷つけられるのを嫌ったアマランス・フューリーは大きく避ける。
「おっと、それでいいのか?」
だがそれもレオンには想定済み。
√能力によって攻撃後に闇をまとって隠密状態になる。
『なにっ……どこへいった!?』
姿を隠され距離を一旦離されたアマランス・フューリーはレオンの姿を見失う。
「おらよ!【零距離射撃】でブチ抜くぜ! 」
そこに気配を消して近づいていたレオンが至近距離まで接近。
ショットガンをぶっ放すのであった。