シナリオ

心優しい天使に救いの手を

#√汎神解剖機関 #天使化事変 #羅紗の魔術塔

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 #√汎神解剖機関
 #天使化事変
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●逃げる天使
「はぁはぁ……なんなの?」
 パーカーのフードを深くかぶった少女が訳も分からず繁華街を逃げる。そして路地裏に逃げ込み足を止めて不安そうに辺りの様子を覗うと、ぬうっと曲がり角から顔が出てきた。その顔は人のもではない。機械で出来た感情の無い顔――。
「ひっ!?」
「天使……」
 怯えた少女は駆け出す。その背後からは機械人形のような異形の怪物『オルガノン・セラフィム』が全身を見せて追いかけてくる。
「天使……天使……食べる………」
 うわ言のように呟きながら、オルガノン・セラフィムが少女を追いかける。
「なんなのっ! なんなのよぉっ!!」
 恐怖に涙を流しながら、捕まったら食べられてしまうと逃げる少女が必死に駆け、ドンッと通行人にぶつかってしまう。
「うわっ!」
「ご、ごめんなさい!!」
 ぶつかった少女が謝り、すぐにまた駆け出す。
「たくさん人がいる……あの怪物が人の多い場所に行ったら……こっち!」
 怪物が人を襲う事を恐れ、少女は自ら人気の無い方へと繁華街を抜けていく。しかし、怪物は一体だけではなかった。次々と怪物があちらこちらに姿を見せ始め、お構いなしに邪魔な通行人を刃物のような爪で破壊し、血肉を撒き散らしながら少女を追う――。
「キャアアアアアアアア!!」
「化け物だ!!」
 繁華街はすぐに阿鼻叫喚の地獄絵図となる。
「天使……天使……」
「ああ………どうして、どうしてこんな酷いことをするの?」
 怪物達に道を塞がれて少女が立ち止まり、人々が血まみれで倒れる姿に涙を溢れさせる。
「私がなにをしたっていうの……こんな変な体になって、怪物に襲われるなんて……」
 さきほどぶつかった衝撃で少女の頭からフードが外れていた。その顔は見たこともない神秘的な金属で出来ていた……。

●星詠み
「√汎神解剖機関のドイツで、善良な少女が突如として「天使化」してしまったようじゃ」
 フェルネア・パスティーニ(白き氷の魔女・h00819)が予知した事件についての説明を始める。
「天使化とは「善なる無私の心の持ち主のみ」が感染するとされるヨーロッパの風土病なのじゃが、人の心が荒んだ現代では既に根絶したと思っておったのじゃがのぅ。どうやらまだ心の清らかな者が残っておったようじゃ」
 善人だけが感染する病気が現代に復活してしまった。
「殆どの感染者は「オルガノン・セラフィム」という怪物に変貌するんじゃが、怪物にならず真に「天使」と化する者も稀におる。最早人とは違う金属のような肉体を持つ天使となった少女がオルガノン・セラフィムに狙われておる。食われる前に救ってやってほしいのじゃ」
 天使化した少女をオルガノン・セラフィムが捕食しようと狙っている。
「それと、ヨーロッパには「羅紗の魔術塔」と呼ばれる独自の秘密組織が存在しておる。その羅紗魔術士はオルガノン・セラフィムを奴隷化するべく狙っておる。そんな組織が天使に気付けば、垂涎の的となろう。魔術師の魔の手からも守ってやらねばならん」
 太古より続くヨーロッパ魔術士達の記憶を織り込んだ「|羅紗《らしゃ》」を身に纏う魔術師がオルガノン・セラフィムを狙って現れる。その場にいる天使に気付けばそちらに狙いが移るだろう。

「まずはドイツのミュンヘンにある繁華街で天使化した少女がオルガノン・セラフィムに襲われる。もちろん繁華街には多くの一般人もおるようじゃ。そこで戦闘となれば多くの犠牲者が出よう。まずは少女を守りながら繁華街を抜けて、人を巻き込みにくい公園に出るのがいいじゃろう。公園にも人が居るが、呼びかければどこにでも逃げれる故に、建物に囲まれた場所に比べればマシじゃろう」
 建物の並ぶ場所ではどこに一般人が居るかわからない。公園の開けた場所ならば巻き込まないように戦うのも容易だろう。

「公園まで行けばそこで天使の少女を守りつつ、オルガノン・セラフィムを迎え撃ち全滅させるのじゃ。じゃが、全滅させるのに時間が掛かると、オルガノン・セラフィムを狙う羅紗の魔術士「アマランス・フューリー」が姿を見せるかもしれん。そうなればアマランス・フューリーはオルガノン・セラフィムを奴隷化していくので、出来る限り阻止せねばならん」
 アマランス・フューリーが現れるとオルガノン・セラフィムを奴隷化してしまう。可能であれば現れる前に速攻でオルガノン・セラフィムを殲滅してしまいたい。

「オルガノン・セラフィムが居なくなれば、アマランス・フューリーは残った天使の少女を奴隷化しようと狙ってくるじゃろう。それを阻止して、少女を守ってやるのじゃ」
 アマランス・フューリーは貴重な天使を何としてでも回収しようと襲い掛かってくる。これを返り討ちにして撃破せねば天使は奪われてしまう。

「助けた後じゃが、人ではない異質な存在である天使になった少女にもう今までの居場所はないのじゃ。保護して連れ帰ってやるしかないのぅ……」
 天使と化してしまった少女はもう普段通りの生活は送れない。天使としてどうやって生活していくかを確立するまで匿う必要がある。
「全く、善良な人間が不幸に遭うなどと、そんな不条理な話は放ってはおけぬ。天使となった心優しい少女を救ってやるのじゃ!」
 フェルネアの言葉に同意する√能力者達は、善良な少女を救ってみせると急ぎドイツのミュンヘンへと向かった――。

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第1章 冒険 『強行突破せよ』


雪願・リューリア
朝霞・風
朝霞・蓮
ミンシュトア・ジューヌ

●天使の少女
「いきなり異形の姿になってしまい、訳もわからず怪物に追われてさぞかし不安でしょう……」
 ミンシュトア・ジューヌ(|知識の探索者《ナリッジ・シーカー》・h00399)は少女の心中を思うと自然と足が速くなる。
「早く救出しなければ」
 √能力『邪風の棘』を発動して風妖「鎌鼬」をミュンヘンの街中に放ち、自らも【ウィザードブルーム「銀鷹ギンヨウ七三ニ式」】に乗って空から天使化した少女を探索する。
 鎌鼬は風のように素早く街中を飛び回り、フードでしっかり頭から顔を隠した情報通りの少女と、それを狙って蠢くオルガノン・セラフィムの姿を確認した。
「見つけた――」
 ミンシュトアは他の√能力者達に空から手振りで示し、鎌鼬が見つけた場所へと急ぎ向かう。
「天使化……話に聞いていた以上に酷い有様だ」
 |雪願《ゆきねがい》・リューリア(願い届けし者・h01522)は街のあちこちで天使を狙うオルガノン・セラフィムらが幽鬼のように迫っていく姿を見て、このままでは少女が喰われてしまい、周辺にも被害が広がるのが容易く想像できた。
「まずはオルガノン・セラフィム達から女の子と住人達を守らねばな」
 急ぎミンシュトアの示した追われている女の子の元へと走る――。

「はぁはぁ……なんなの?」
 パーカーのフードで顔を隠した少女「エッダ」は焦り繁華街を駆けていた。その背後からは気配を感じさせぬ人影がぬうっと追っている。
「天使……天使……食べる………」
「なんなのっ! なんなのよぉっ!!」
 追いかけてくる機械人形のようなオルガノン・セラフィムからエッダは泣きながら必死に逃げる!
 するとドンッと正面の人にぶつかり、柔らかく抱き留められた。
「ご、ごめんなさい!!」
「もう大丈夫だ」
 抱き上げたリューリアが優しくエッダに向かって声をかける。
「わたし達はあなたを守りに来ました!」
 そこへ地上に降り立ったミンシュトアも安心させるように笑顔で伝える。
「え……? 守りに? 今、空から……」
 地面に降ろされたエッダは不思議そうに二人を見上げた。
「ここだと被害が出る。近くの公園に向かおう」
 リューリアは近くの広々とした公園のある方を指差す。
「で、でも、怪物が、ひっ!」
 エッダが必死に危険を説明しようとすると、ちょうどオルガノン・セラフィムの無機質な顔が曲がり角からこちらを覗いていた。
「天使……天使……!」
「きゃっ!?」
 オルガノン・セラフィムが手を伸ばすが、その魔の手はエッダには届かない。
「我々には怪物と戦う力がある」
 リューリアが精神エネルギーと電力を合わせた【エレクトリカル・エナジー】を展開して押し留めていた。

「さあ、これに乗ってください」
「ひゃっ! 浮かんだ……? と、飛んでる!?」
 ミンシュトアがウィザードブルームの後ろにエッダを乗せて浮かぶ。そして障害物を無視して建物の上を通って一直線に公園へ向かおうとする。
「天使……」
 すると屋根の上にオルガノン・セラフィム達が登り、次々と飛び掛かってきた!
「邪魔だ」
 同じく屋根の上に立って先導するリューリアが自律式機械剣【ヴォルテクスブレイド】を遠隔操作して、宙を飛んで敵を薙ぎ払い道を開ける。
「キャアアアア!!」
「化け物っ!?」
 怪物が暴れ出すと、周囲の人々がそれに気付いて悲鳴を上げる。
「女の子達が見ている前で凄惨な光景は見せられないし、戦うのは最小限かな」
 とにかく被害を抑えて避難するのが最優先だと、リューリアは守りに専念して屋根から屋根へと跳んだ。
「ねぇ! 怪物が追ってくるよ!」
「追っ手を振り切って公園を目指します」
 次々と迫るオルガノン・セラフィムに怯えるエッダを背中に守り、ミンシュトアは箒を操作しながら鎌鼬を飛ばし、敵の注意を引いて空を飛ぶ。

●援護
「ひとまずはオルガノン・セラフィムという怪物を撃退しながら少女を公園に誘導すればいいのか」
 朝霞・蓮(遺失の御子・h02828)は既に動き出している仲間達に目を向ける。そこには屋根の上で天使のエッダを守りながら怪物達から逃れるミンシュトアとリューリアの姿があった。
「この怪物も感染する前は人だったと思うと、なかなかやるせないな……」
 天使化で機械人形のようになってしまった人々の事を思うと気が滅入る。それでも新たな犠牲者を出さない為にもやるべき事をしなくてはと蓮は倒す覚悟を決める。
「久々の実戦、張り切っていこうか」
 その隣で妹の朝霞・風(忘失の竜姫・h02825)はちらちらと見える怪物を視界にいれて、いつでも戦えるようにやる気に満ちて戦闘準備を整えていた。
「僕のやることはやることはいたってシンプル。蓮の指示通りに敵を斬るだけ」
 難しいことも敵の境遇も考えず。ただ命じられたままに斬ればいいと、背負った【大太刀『業物』】の柄に手を掛けた。

「援護として、怪物を倒しながら怪物の層が薄いところを突破すればいいのかな?」
 蓮は状況からどうすればいいかを考え、道を切り開く手伝いをしようと周囲を見渡し、進む先に居る敵を見つける。
「こういうのって【竜漿魔眼】で隙として認識されるのかな? 敵そのものじゃないから微妙かもしれないけど……その時はいつも通り」
 兎にも角にも使ってみようと√能力『竜漿魔眼』を発動し、蓮の右目が燃え上がり「隙」が見えるようになる。
「敵を群れとして認識してるから、群れの「隙」が見えるね。風、あそこの赤い屋根の家に登っている敵を斬って道を切り開くよ」
「わかった――」
 頷いた風が駆け出し、あちこちの凹凸を足場として利用して建物を駆け上がると、オルガノン・セラフィムの背中から大太刀を引き抜いて斬りつける!
「嗚呼、天使……」
 天使に向けて手を伸ばし、跳躍しようとしていたオルガノン・セラフィムが地上へと叩き落とされた。
「天使、天使、食べる……邪魔を……するな……!」
「邪魔なのはそっち。天使は食べ物じゃない」
 同じ屋根に登ってきたオルガノン・セラフィムに風は大太刀を浴びせて頭をかち割る!

「風! 次はあっちの青い屋根の建物だよ!」
「次――」
 俯瞰するように高い建物から蓮が指示を出すと、風は跳躍して屋根を渡り、大太刀を浴びせてオルガノン・セラフィムの移動を阻害する。
「強引なやり方だけど、結局はパワーだね」
 一般人などが関りその場の状況で動かねばならないなら、作戦はわかりやすいシンプルな方がいいと、蓮は次々と指示を出し、時折自分も飛竜狙撃銃で狙撃して援護し、弾丸が当たってオルガノン・セラフィムの動きが止まったところに、風が大太刀を一閃して吹き飛ばした。
「風、一般人には被害が出ないようにするよ」
「うん、任せて」
 息の合った連携で天使を狙うオルガノン・セラフィム達を妨害し、敵の注意を屋根の上に引きつけ、一般人への被害を減らし仲間の移動をスムーズに行わせることに成功した。
「無事に敵の追撃は抜けられたようだね。敵を迎え撃つ公園に僕らも行こう」
「公園で本番だね、行こう」
 自分達の仕事を果たした蓮と風は、二人一緒に天使を避難させる仲間と合流するべく公園に向かった――。

●公園
「うわっ建物が崩れてくる!」
「逃げろぉおおおお!」
「ああ、街の人たちが……私が繁華街なんかに逃げ込んだから……」
 建物が崩れて巻き込まれ怪我をする人が見えると、エッダが顔を歪めて泣きそうになる。
「悪いのは襲ってきた相手で、あなたはただの被害者です」
「その通りだ。心痛む光景だけど心を強く持たねばな」
 ミンシュトアとリューリアがエッダを励ます。そうしていると蓮と風の援護もあって無事に公園へと辿り着いた。
 そこにも一般人が多くいるが、開けた場所である為に行き止まりなどはなく、逃げるには困らない。
 街中では比較的被害が出にくい場所でエッダを狙うオルガノン・セラフィム達を迎え撃つ準備をする――。
「天使……」
「嗚呼……天使……美味しそう……」
 どこに潜んでいたのか、多くのオルガノン・セラフィム達が天使を喰らおうと公園に集まって来る。
「ここからは殲滅戦だね」
「一体も逃さない」
 そこへ蓮と風も追い付いて、オルガノン・セラフィムを迎撃しようと身構えた。
「どうして、どうして私を狙うの? こんな変な身体になってしまったから?」
「天使……食べる……」
「足りない………食べないと……天使…………」
 エッダが問いかけるが、既に身も心も変貌してしまったオルガノン・セラフィム達はただただ天使を求める飢餓に突き動かされ、その身を喰らおうと近づいてくる――。
 しかしそうはさせないと√能力者達はエッダを守るべく武器を構えた!

第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』


雪願・リューリア
朝霞・風
朝霞・蓮
ミンシュトア・ジューヌ
轟・豪太郎

●出来損ないの天使
「アマランス・フューリーとやらが現れる前に、オルガノン・セラフィム達を退けなければな」
 |雪願《ゆきねがい》・リューリア(願い届けし者・h01522)は公園を見渡し、こちらに向かってくるオルガノン・セラフィムと、まだ何が起きているか理解していない一般人の姿も見えた。
「皆! テロリストが無差別テロを行おうとしている! 公園から逃げるんだ!」
「テロ!?」
「そういえば向こうで騒動が起きてたような……」
 人々が理解しやすいように、テロが起きると呼びかけて一般人を公園から避難させようとする。

「激しい戦闘になりそうなので、助っ人を呼んでおきました!」
「助っ人?」
 【ウィザードブルーム「銀鷹七三ニ式」】で飛ぶミンシュトア・ジューヌ(知識の探索者ナリッジ・シーカー・h00399)がそう言うと共に馬蹄の音が響く。後ろに乗っている天使のエッダがそちらに顔を向けた。
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!!」
 馬の嘶きと共に|轟・豪太郎《とどろきごうたろう》(剛拳番長・h06191)が新しい相棒の【|番長馬《バンチョウホース》「|白毫號《ビャクゴウゴウ》」】に乗って参上する!
「さあ豪太郎、こらしめてあげなさい!!」
 まるで使い魔扱いでミンシュトアがビシッとオルガノン・セラフィムを指差す。
「白馬の王子さま!?」
「王子というより軍人さんかしら?」
(窮地に駆けつけたワシは、この場にいる女子達からは白馬の王子様のように見えていることであろう。王子ではなく番長だがな!)
 馬上の豪太郎が目立って人々の視線を集めていた。
「今からここは戦場になるから危険だ! 逃げろ!」
 そして大きな声で言葉は通じずとも身振り手振りで示し、一般人に避難するように指示する。
「……彼の心の声が聞こえたような気がしますが、アレは白馬の王子様なんていいものじゃありませんから」
 ツッコミを入れつつも、ミンシュトアは近づいてくる敵から豪太郎を壁にするように距離を取り、オルガノン・セラフィム達の注意を引き付けた。

「危ないって言ってるみたい、逃げよう!」
 リューリアと豪太郎が逃げるように促すと、人々は危険を感じて逃げ出す。しかしその近くにもう天使になれなかった怪物達が近づいていた……。
「みんな逃げて! 怪物が!」
「天使……天使、喰らう」
「嗚呼……天使を喰って……この身に……」
 天使のエッダが怯えた声を出すと、オルガノン・セラフィム達が一般人の前に姿を現す。
「な、なにこれっ!」
「モンスター!?」
 怪物を近くに見た一般人が驚愕して足を止めてしまう。
「危ない!」
「大丈夫だ。他の人々も守ってみせる」
 リューリアが自信を持った態度で心配するエッダを安心させ、√能力『波動弾』を発動して霊能波と電撃の力が込められた無数の弾丸を放ち、一般人を障害物として排除しようとするオルガノン・セラフィムの全身を蜂の巣にして粉砕した!
「きゃああああ!」
 それを見た一般人の女性は悲鳴を上げて逃げていった。
「よかった……」
 エッダは無事に一般人達が逃げていく姿を見て安堵する。

「天使……天使をちょうだい……」
「満たされない……天使がほしい……」
 倒れたオルガノン・セラフィム達は祝福を受けて自らの傷を癒し、ただただ天使を求める欲求だけに突き動かされ、エッダを喰らおうと這って手を伸ばす。
「ちょっと揺れますよ……シートベルトは付いていないので、わたしにしっかりつかまっていてくださいね」
「は、はい!」
 エッダがぎゅっと腰に腕を回して掴まると、ミンシュトアは飛びながら魔法で炎や電撃を放って浴びせる。
「グギギ……天使………」
 被弾しながらもオルガノン・セラフィムの意識は天使にだけ向けられていた。
「天使……食らう……!」
「行かせん!」
 オルガノン・セラフィムが跳躍しようとするが、そこへ馬を跳び降りた豪太郎が蹴り飛ばして地面に叩きつけた!
「ア、アア……邪魔、するな………!」
 オルガノン・セラフィムが爪を伸ばして斬り掛かると、豪太郎は√能力『|番長吃驚掌《バンチョウビックリショー》』を発動して右手で触れる。すると爪が縮んでオルガノン・セラフィムの√能力が無効化された。
「ァア……?」
「貴様らこそ、人に迷惑を掛けるな!!」
 豪太郎が拳がオルガノン・セラフィムの顔に食い込み、粉砕しながら吹き飛ばした!
「天使……天使……」
「食べたい……天使を……食べたい………」
 湧き上り続ける欲求にオルガノン・セラフィムは仲間が倒れようとも気にも留めず、天使を喰らうことしか頭にない。
「集まって来てますね。まとめて一網打尽にしましょうか!」
 ミンシュトアが√能力『邪風の爪』を発動し、疾風属性の魔弾を敵の中心に撃ち込み、無数のカマイタチを発生させてオルガノン・セラフィム達をズダズダに切り裂く! そしてその風は追風と竜巻になって仲間のスピードを上げる。
「おお、身体が軽くなった。しかしバフはありがたいが、いつぞやのように吹き飛ばしからのボウリングはもうこりごりだぞ?」
「いつぞやのように吹き飛ばしたりしませんから、思う存分戦ってください!!」
 ちょっぴり心配そうな豪太郎に、ミンシュトアは今回は悪ふざけなしだと伝える。
「ならば全力でいこうか!!」
 追風に押されて加速した豪太郎がオルガノン・セラフィムを蹴りつけ、飛んで来るはらわたと引き千切り、ぶん殴るという喧嘩殺法で暴れ回って薙ぎ倒した!

●速攻
「天使……」
 それでもしぶとくオルガノン・セラフィム達は張ってでも天使を求める。
「戦闘が長引くと次が来て、敵が強化されるにもかかわらず、速度で攻めようとするとパッシブで先制されるうえに、隠密状態になるのか」
 仲間達と戦う敵の能力を見た朝霞・蓮(遺失の御子・h02828)はその厄介さに顔をしかめる。
「おまけに自己回復持ちと……こいつは困ったな……」
 どうしたものかと手を考え、回復を上回る速攻が必要であると結論に至る。
「ということは、常に相手の攻撃を予測して効果的な反撃を繰り返し、全快する10分以内に決着をつけなければならないと。風だけじゃなくて、私も攻撃しなければならないようですね」
「んー……今回は蓮も前に出るから、間違えて切りつけないように気を付けよう」
 その作戦を聞いた朝霞・風(忘失の竜姫・h02825)は兄を巻き込まないようにしようと注意する。
「蓮と連携して近接するのはいいけれど、実弾が当たったら痛いよね……まぁ蓮のこと信じてるよ」
「今更混戦で誤射とかしないし、連携の練習は2人でやってきたから多分大丈夫だろう」
 そして流れ弾が当たる可能性にも思い至るが、兄なら当てるようなことはしないだろうと信じて前を向き、蓮も練習通りにやれば問題ないと精霊銃を構えた。
「伸び縮みする爪は弾けばなんとかなるけれど、蠢くはらわたの捕縛はどうしよっかな……んー、交互に連携してカバーすれば何とかなるか」
 敵の厄介な攻撃にどう対処するかを考え、連携すればどうにでもなるだろうと楽観的に作戦を立てる。
「あとは、自己再生があるから一気に高い火力で押さないといけないみたいだから、【屠竜宣誓撃】でささっと火力を出そう」
「短期決戦でいくよ」
 やることが決まれば行動は早い。打ち合わせが終るとすぐに風が屠竜大剣を担いで飛び出していく。それに続いて蓮も駆け出して敵へと距離を詰める――。

「天使……天使ィイ………ッ」
 オルガノン・セラフィム達が爪を伸ばして跳躍しエッダに襲い掛かる!
「ひっ!」
「その子を襲いたいなら、ぼくを倒していくんだね」
 そこへ同じように跳んで割り込んだ風が屠竜大剣を振るい腕を弾く。
「嗚呼……天使ィ………」
「邪魔、するなぁ……!」
 すると着地したオルガノン・セラフィムが蠢くはらわたを一斉に飛ばして巻き付けようとする。
「巻き付かれると厄介ですね。阻止するとしましょう」
 接近した蓮が√能力『エレメンタルバレット『雷霆万鈞』』を発動し、雷属性の魔弾を放ってはらわたに撃ち込み、爆発を起こしてはらわたごとオルガノン・セラフィム達を吹き飛ばした!
「ガァッ!!」
「……う、があ………」
 至近距離での爆発を受けたオルガノン・セラフィム達が薙ぎ倒されて地面を転がった。さらに攻撃だけでなく電気が広がって仲間の活力を高めるバフを与える。
「ぼくも続いて攻撃するよ」
 電気によって神経の鋭さを増した風が屠龍大剣を手に宣言し、堂々と敵の正面に構える。
「邪魔……するなら……殺す………!!」
 障害となる者を排除しようとオルガノン・セラフィムが飛び掛かる! 振るわれる爪を風は容易く屠龍大剣で弾き、横一閃にオルガノン・セラフィムの胴を断ち切った!
「よし、この調子で天使の少女に近づかせないように仕留めていこう」
「うん、わかった。全力で倒していくよ」
 蓮と風は連携し、銃弾と大剣を浴びせてオルガノン・セラフィム達が回復する間もなく確実に仕留めていった。

「天使………!」
「指一本触れさせんよ」
 妨害する√能力者達を跳び越え、オルガノン・セラフィムが跳躍して腕を伸ばすと、リューリアはエッダを守りに自律式機械剣【ヴォルテクスブレイド】を浮かべ弾いた。仲間の突風と電気のバフを受けてその威力は増し、余裕を持って対処することができた。
「邪魔……するな……」
「天使を……寄越せ………」
 オルガノン・セラフィム達が虹色の燐光を纏い透明化する。
「隠れたか、だが見えなくなっても居なくなった訳ではない」
 虹色の燐光を目印にリューリアは無数の弾丸を浴びせる! するとぼろぼろになったオルガノン・セラフィムが姿を見せて倒れた。
「姿を消そうとも、範囲攻撃なら問題はない」
 続けて蓮が魔弾を姿を見せた辺りに撃ち込み、爆発を起こして薙ぎ払う!
「ググ……ガ………」
 するとダメージを負ったオルガノン・セラフィム達が体勢を崩し姿を見せた。
「見えた――」
 その隙を見逃さず、風が踏み込むと屠龍大剣を横薙ぎに振るって纏めて上半身を粉砕した!

「これで終わりだッ!!」
 豪太郎の拳が最後のオルガノン・セラフィムの胸を貫き、身体がバラバラになって散らばった。√能力者達は協力して短時間の内に敵を全滅させた。
「す、すごい……怪物を倒しちゃった……!」
 その√能力者達の活躍を見てエッダが感嘆の声を上げる。
「……どうやら殲滅できたようだな」
 リューリアが注意深く周囲を警戒して確かめ、もうオルガノン・セラフィムが残っていないのを確認した。
「なにか……気配を感じる……?」
「次の敵が来たようだね。来る前にオルガノン・セラフィムを倒せてよかったよ」
 しかし風が肌を刺すような殺気を感じ、蓮が周囲を見渡して新たなる敵の存在に気付いた。
 そこには『羅紗の魔術塔』の魔術士の姿があった……。

第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』


●天使を狙う羅紗の魔術士
「まさか……オルガノン・セラフィムを追って本物の天使に出会えるとは……まだこの世界も捨てたものではないということか」
 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』の視線が箒に乗って空に浮かんでいる天使のエッダに向けられる。戦闘中にフードが外れ、人とは違う様相になってしまった顔が露わになっていた。
「オルガノン・セラフィムは手に入れ損ねたが、天使の方が遥かに価値が高い。『羅紗の魔術塔』に連れ帰るとしよう」
 アマランスは身に纏う「羅紗」に魔力を込める。
「天使はお前達には過ぎたるもの。我ら『羅紗の魔術塔』で預からせてもらおう」
 天使を守ろうとする√能力者達に向け、アマランスは殺気を放って実力行使に出る!
雪願・リューリア
朝霞・風
朝霞・蓮
ミンシュトア・ジューヌ
轟・豪太郎

●天使の守護者
「あれが羅紗の魔術士……厄介そうな相手のようだ」
 |雪願《ゆきねがい》・リューリア(願い届けし者・h01522)は魔力が込められた羅紗を纏う敵から強者の気配を感じ取る。
「だがエッダを渡すわけにはいかないぞ」
 ちらりと天使の少女を見やり、渡せば碌な事にならないと察して精神エネルギーと電力を合わせたエナジー【エレクトリカル・エナジー】を纏って後衛から戦闘態勢に入る。

「ここからは飛んでいる方が危険そうです。降りて戦いましょう」
「うん……あの怖そうな女の人。私を狙ってるんだ……」
 箒で空を飛んでいたミンシュトア・ジューヌ(|知識の探索者《ナリッジ・シーカー》・h00399)が地上に降り、後ろに乗せていた天使のエッダを下す。エッダは不安そうに自分をじっと獲物のように見つめるアマランスを見て震えた。
「もう少しだけ待っていてください。悪い魔法使いを倒してきます。それにあなたを守る護衛はもう揃っていますから」
「え?」
 そんな不安を取り除くように、ミンシュトは笑顔を見せて敵との間に立った。
「ワシが剛拳番長轟豪太郎である!!」
 先陣を切る|轟・豪太郎《とどろきごうたろう》(剛拳番長・h06191)が名乗りを上げ、その正面に立つ! その周りには√能力『|番長特攻行進曲《バンチョウブッコミマーチ》』によって呼び出した男臭い応援団員達を引きつれていた!
「エッダには指一本触れさせるな!」
「「応!!!!!!!」」
 豪太郎が指示を出すと、応援団がずらりと並び厚い肉の壁となってエッダを守る
「え? ええ!?」
 エッダは突然現れたその暑苦しい集団に囲まれて困惑していた。
「これでワシもミンシュトアも、そして他の者達も攻撃に専念できるというもの!」
 闘志と共に身体能力を高めた豪太郎はアマランスを睨みつけ、拳を強く握った。
「邪魔をするというのなら、死を覚悟するがいい」
 『アマランス・フューリー』は√能力者を排除するべく臨戦態勢となって魔力を高めていく――。

「なんか、すごい物騒なこと言ってるお姉さんが出てきたけれど……エッダちゃん(さん?)を狙うならやるしかないか。会話の意思もなさそうだし」
 朝霞・蓮(遺失の御子・h02828)は自分と同い年か少し上に見える天使を守るべく、精霊銃を構えて敵に狙いをつけた。
「羅紗って厚手の毛織物だっけ? それの魔術塔って……どんなところか少し気になるけど、きっと質問してもまともに答えは返してくれないよね。やっちゃおう」
 その隣に立つ朝霞・風(忘失の竜姫・h02825)は敵が纏う不思議な文字が描かれた布がそれかと思うが、既にこちらと戦う気になっている相手に身構える。
「精神攻撃タイプが多いみたいだけど、術者と同等の強さを持つ敵も出てくるんだ。普通に戦っていたら急に死ぬパターンが多そうだけど、羅紗の魔術士が【知られざる古代の怪異】を1体召喚してきたときに注意すれば何とかなる……はずだ」
 後衛から戦場を俯瞰するように、注意深くアマランスの動きを観察する。

「希少な天使は羅紗の魔術塔が管理する。邪魔する者は排除するのみ――純白の騒霊よここへ」
 アマランスが奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、精神に影響を及ぼす嘆きの光を放つ!
「エッダは後方へ。融合されると厄介だからその前に倒さねばな」
 エナジーで光から身を守るリューリアが意識を保ち、自律式機械剣【ヴォルテクスブレイド】を遠隔操作で飛ばして怪異を切り裂き牽制する。

「あの手の魔術師が単体で戦闘を仕掛けてくるのってとっても珍しいよね。前衛なしで戦うのに不安はないのかな……あ、だから召喚してくるのか。納得」
 一人納得しながら風は照射される光を屠龍大剣の大きな刀身を盾にして受け止める。
「だったら前衛から叩こうか。怪異を排除して正面から叩き斬るよ」
 風が√能力『屠竜宣誓撃』を発動して堂々と攻撃を宣言し、真っ直ぐに踏み出す――。
「止めなさい」
 アマランスが指示を出すとレムレース・アルブスがさらに輝きを増す。それを大剣で受け止めながら風は前進し、振り抜いてレムレース・アルブスをぶった切り、アマランスにまで刃を届かせた!
「ぐぅっ!!」
 肩から胸を裂かれてアマランスが呻いて血を流す。それでも戦意を失わずに新たな術を成す。
「もう少し強力な怪異が必要か……」
 アマランスが目を閉じると羅紗の記憶海から禍々しい古代の怪異が召喚され、植物のような身体から触手のように蔓を操り周囲を薙ぎ払う! さらには何本かがエッダを捕えようと伸びた。しかしそれは応援団員に阻まれその筋肉質な体に巻き付いていた。
「新手の怪異か、仲間が動きやすいように牽制する」
 リューリアはヴォルテクスブレイドを高速回転させ蔓を斬り払っていく。しかし怪異も蔓を次々と伸ばしてリューリアを捕まえようとしていた。

「現れたな。弱点は――」
 即座に蓮は√能力『竜漿魔眼』を発動し、体内の竜漿を集めた右目を燃え上がらせ、怪異の「隙」を探る――。
「……中心部に、核のようなものがある。そこを撃ち抜ければ倒せるはず」
 右目を見開き核の位置を捕捉し、銃を構えると狙い定めて引金を引く。放たれた銃弾は狙い通りに怪異の核を撃ち抜いた!
「グガアアアアアアアアアアアアアッ!!」
 苦しそうに怪異がもがき、蔓が萎れるように細くなり、全身も枯れ果てて動かなくなった。
「まさか、怪異の心臓を見抜いたというのか!」
 アマランスが驚きの目を蓮に向ける。
「ほっ……どうやら正解だったみたいだね」
 蓮は安堵してアマランスへと銃口を向けた。
「ならばもう一度呼び出すまで――」
「「隙」が見えたよ。瞑想を阻止して呼び出させなければいい――」
「そっか、それなら簡単だね」
 瞑想を始めるアマランスを見た蓮がそう口にして発砲すると、同時に風が疾風のように飛び出して屠龍大剣を横薙ぎに振るう!
「ちっ、接近されたか!」
 瞑想を止めて銃弾を防いだアマランスが羅紗で大剣も受け止めるが、勢いに負けて吹き飛ばされた。
「ぐはっ!」
 木にぶつかったアマランスが血を吐く。しかしそれでも意識を飛ばさずに立ち上がる。
「これほどの遣い手とはな。私よりも先に天使を手にしているのは偶然ではないということか」
 アマランスは目の前の√能力者達への警戒度を上げ、怪異を呼び出そうと魔力を集める。

「新たな怪異を召喚する時間は与えません――|天地《アメツチ》ノ狭間治ムル|颶風龍《グフウリュウ》 我ガ身ニ宿リ其ノ威ヲ示セ」
 ミンシュトアが√能力『邪風の牙』を発動し、風の神霊「颶風龍」を纏うスピードを上げて接近すると、錬成した剣ですれ違いながら斬り裂き、そのまま動きを止めずに離れてはまた違う方向から斬り込み、ヒットアンドアウェイで全身に傷を刻んでいく。
「速いっ、しかし反応できないほどではない」
 スピードに慣れ始めたアマランスが羅紗で斬撃を受け止め、反撃に怪異を召喚しようとする。
「させるかァ!!」
「ぐっ! がはっ!」
 そこへ豪太郎が突っ込み、腹にボディブローをぶち込み、さらに顔面を羅紗のガードの上から殴りつけ、よろめいたところに心臓に拳を打ち込む! 
「どうした! 反応できるのならしてみせろ!!」
 反撃の間を与えずにラッシュを叩き込みアマランスの身体を吹き飛ばした!
「ぐぁっ……むぐぅっ………」
 地面を転がったアマランスは目を閉じて動かない。
「もう終わりか? 思ったよりも歯ごたえがないな!」
「……いいえ、これは召喚しているようです!」
 豪太郎が一方的に殴って終わりかと思ったところで、ミンシュトアが敵が倒れたまま瞑想していることに気付き声を上げる。
「ガアァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
 それと同時にオーガの如き巨躯の怪異が咆哮と共に召喚された。
「まだ終わりではない。天使は私のものだ――」
 アマランスがむくりと起き上がると、オーガの怪異が咆えながら突っ込んで巨大な拳を放つ!
「むぅっ!!!」
 その拳を豪太郎が腕で受け止め、凄まじい衝撃に足が地面を削って後退していく。
「どうやら今度の怪異は殴り合いを得意としているようです」
 敵の能力を推測しながらミンシュトアが背後から斬り込むと、オーガは片腕でその斬撃を受け止める。
「面白い! ならば正面から打ち破ってやるのじゃぁ!!」
 豪太郎が嬉々として正面から殴り合い、防御を捨ててオーガを殴って殴って殴りまくる!!
「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
 負けじとオーガも拳で返答し、殴っては殴られ、殴られては殴り、互いに防御せずただただ殴り続ける。
「接近戦を得意とした怪異でも互角とは……ならば数を用意して押し切るか」
 アマランスがオーガを盾にしつつ新たに怪異を増やそうとする――。

「押し切れないか、ならこの膠着を打開する一手を打とう。隙を作る、そこを突いてくれ」
 リューリアが仲間に呼び掛け、√能力『|位置強奪《ソコカワッテ》』を発動し敵の背後に居るインビジブルと自身の居場所を入れ替える。そしてヴォルテクスブレイドを矢のように放ち背中に突き刺した!
「ぐっ! いつの間に!? 瞬間移動か!」
「今だ!」
 アマランスが思わず振り返りリューリアに視線を向けてしまう。その隙に仲間達が一斉に攻撃を仕掛ける。
「これ以上の召喚は阻止しないとね」
 側面に回り込んだ蓮が銃弾を連射して、休まず撃ち込んで敵が術に集中する時間を与えない。
「拙い……即死を狙うか……」
 窮地に追い込まれたアマランスは羅紗の文字を輝かせ、負傷している豪太郎に文字列を放って形勢逆転を可能とする即死効果を狙う。
「『命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。』って文章が危険な香りがするけど、当たらなければどうということはない……たぶん、ね」
 風は危険を感じながらも、オーガと殴り合って傷ついている豪太郎が喰らうのは危険だと飛び出し、屠龍大剣を振るって文字を掻き消した!
「これで終わりだァァーーーーーッ!!!!」
 豪太郎がオーガの顔面に拳をめり込ませ、頭部を粉砕して巨体を倒す。
「怯える天使を無理矢理連れて行かせはしません」
 オーガの邪魔がなくなるとミンシュトアが正面から突っ込み、風の魔剣を手に【魔剣技・|風龍牙流《フリューゲル》】を放ち、身を守る羅紗を破りアマランスの胸を貫いた!
「ごふっ……私が負けるとは………ただの√能力者ではないな………天使の守護者だとでも、いうつもりか………」
 羅紗を血に染めたアマランスが倒れ、息絶えると大地に鮮血が広がっていった……。

「もう大丈夫だ。エッダも怪我はしてないな?」
「う、うん……だいじょううぅうううっ」
 リューリアがエッダに尋ねると、エッダは気が抜けたのか泣きだした。
「怖かったですよね……安心してださい。あなたを狙っていた悪い魔法使いはもういませんから」
 ミンシュトアがもうここに悪党は居ないと優しく慰める。
「でも、私がいたら、また怪物が現れるんじゃ……」
「うん、それはそうかも」
「こら、言い方――大丈夫ですよ。僕たち√能力者が居る場所なら安全ですから、そこに避難しましょう」
 また狙われるかもと不安そうなエッダに風がうっかり本当の事を言うと、蓮が慌ててフォローする。√能力者が集まる場所は幾つもある。そのどこかに匿っておけば一先ず安全だろう。
「でも、迷惑になるんじゃ……」
「迷惑なぞ誰もが掛けるもんじゃ! そんなもんを気にしてたら喧嘩の一つもできんぞ!」
 豪太郎が弱気など吹き飛ばすように豪快に笑った。普段から盛大な迷惑を掛けている番長が言うと説得力があった。
「さあ、行こう」
 リューリアが手を伸ばすとおずおずとエッダも手を伸ばす。
「あ、ありがとう。助けてくれて」
 ようやく心が晴れたようにエッダが天使の笑みを浮かべ、手を重ねて人の温かさに触れた。

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挿絵イラスト