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だってうさぎだもん

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兎網・真

「と言うことで。
 繰り返しになるが不同意性行の禁止は勿論の事、怪異の能力の漏洩を禁ずる」

 シューという呼吸音と共に、ガスマスクを着けた男が小さな兎獣人の隊員を見下ろす。
 勲章の数が多い……間違いなく上官である。

「上官殿、自分は――」

「顔に書いてあるからだ!
 顔も体も洗って来い!」

「僭越ながら、今しがた入浴したであります!」

「では、何故私がこのような装備でお前に通達していると考える?」

 その問いに、桃色の兎、兎網・真は敬礼して言葉を返す。

「自分、兎網を依代にしている怪異兵器『享楽兎』の管理手順に基づいた行動であります!
 該当怪異は完全に自分の管理下にあり、問題はないと考えるであります!
 しかしながら言葉だけでは足りぬと考え、証拠のため今ここで」

 言葉も顔つきも固い。
 クソ真面目が張り付いたような顔で、真は続ける。

 今ここで、と口にした瞬間、全身から桃色の煙がぽわん、と噴き上がる。
 ナチュラルに服を脱ごうとするが、本人的には至って真面目な行動なのだ。

「訓練が足りないようだな、兎網隊員!
 訓練用品として、バニースーツを支給しておく。
 これは怪異がナイトクラブに出現したという情報が集まっており、次の作戦への準備である!
 すぐに身につけたまえ!」

 真剣な眼差しの上官。
 上官は手元の資料と目の前の桃色兎を交互に見つめて頷く。

「は! では、ここで!」

 ちゃんと命令守ってるつもりで、これだもんなァ……。
 怪異の影響チェックの手順通りではあるけれど、居た堪れないな……。
 敬礼の末、装備をその場に手際よく外していく朴念仁な兎網隊員を放置しつつ、資料を眺める上官の眉が垂れる。

「エロ本の導入かよ……」

 小さな小さな呟きが漏れる。

「エロ!? 破廉恥であります! そのような本、すぐに処分すべきであります!
 自分の所有怪異が暴走する危険が……!」

 兎の耳は地獄耳、当然呟きも聞き逃さない。

「……」

 シュー、と上官のため息がガスマスクから漏れる。

 怪異『享楽兎』
 憑依・感染型。
 憑依対象者を、二足歩行する兎型女性実体へと変質させる。
 憑依者は全身より強度の芳香を放ち、男女問わず影響下にある存在を発情……その……液から……力……奪い取り自身……強化……。

 資料を読む目が理解を拒んで滑る。
 このような場所で読む物ではない気がする。
 これは公的な文書。
 成人向けゲームのおまけについてくるモンスター図鑑ではないのだ……。

「上官殿! 身につけたであります!」

 あー……着ちゃうかぁ……。
 いくら朴念仁でも、何も躊躇わずにバニーは着ないっと……。

 影響度は……8、いや10にしといてもいいかな。
 上官は資料に、小さくメモを書き入れる。
 その下に目を動かす。

 ため息が再び漏れる。

 ◯ ■崎山村での大規模感染記録

 村人、■■■■に怪異『享楽兎』が憑依。
 村内全体に影響が伝播、該当怪異の支配下に。
 後にSNS・配信サイトにて『乱■村』と話題になり、興味本位の若者の失踪が多発。
 怪異制圧部隊『月夜部隊』が突入するものの、村人・失踪者全てが■かつ■■な状態であり数名の隊員は目視だけで影響に曝露。
 該当怪異も、催眠効果への対策として装備していたガスマスクの破壊を執拗に行い、数名が永続的に■■。
 また■■による直接接触による攻撃で2名が■■。

 ……いやあ、ミーム汚染を防ぐのに伏せ字にはするけれど。
 この伏せ方は……影響、受けてるな?
 いや、受けないように必死に抗いすぎてる感じか……。
 露骨すぎる――。

 影響下にある存在全てが該当怪異を死守しようと妨害に加担。
 隊員数名をクヴァリフ注射にて処置。
 月夜部隊全滅寸前、兎網・真へ接触した該当怪異は対象に強い執着を示し、その場で憑依。
 暴動は一瞬にして終――。

 うーん……。
 何も解決してない資料……っていうか気に入られただけじゃん……。

「どうしたでありますか、上官殿!」

 ハッ、と資料から意識を戻すと目の前で敬礼している桃色の兎がくねくね腰を動かしている。

「兎網隊員にはもう一度訓練施設にて――」

 その瞬間、ノックもなく部屋の扉がバカーン! と開く。

「あ、お疲れさんッス! 不知火上官、資料が届いてますよー」

「は、はあ……!? ノックをしろと! 志川、今扉を開けるな――」

「うわ!! うわァ……んへ……」

「お疲れさまであります、志川隊員!
 ハッ……視線が泳いでおります、大丈夫でありますか!」

「兎網、動くな! 離れろ!」

「どうしたでありますか! 上官殿、志川隊員がよろめいてキケンであります!
 自分が支えてベッ」

「ドに行くなあああ!!!!」

 上官は絶叫して続く言葉をかき消す。
 何度死んでも使える真面目な隊員って書いてあったじゃないか!!
 真面目に不真面目すぎる!!!
 これからどうするんだ、このナチュラル不健全兎……!

 頭を抱えて上官はその様子を眺めていた――。

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