シナリオ

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上手に焼けますか?

#√妖怪百鬼夜行 #参加者多数につき、再送お願いする場合があります #プレイング募集中:~4/19(土)24:00

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 #√妖怪百鬼夜行
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『|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》』

 日暮れの迫る渓谷に、獣の咆哮が響き渡る。空を震わせ地を揺らす、その大音声こそが復活した巨大妖怪、『マガツヘビ』の雄叫びである。
 山ほどに巨大な体躯と、無限とも称される莫大な妖力を持つその妖怪は、怒りに任せて大暴れしながら血走った眼で辺りを見回す。
『糞糞糞ッ! あの野郎どこ行きやがった!!?』

「おうおう、わかりやすくキレてんなあ」
 マガツヘビの叫びを聞きながら、古妖の一人が苦笑する。山間部を抜けて『狙いの場所』に辿り着いた彼は、事前に配置していた部下達……火鼠の群れに合図を送った。燃える毛皮を赤々と輝かせた火鼠達は、打ち合わせ通りの位置へと駆けていき――炎の列で、ちょっと説明し辛いくらいの罵倒の言葉を形作った。
『ふざけんなよ糞餓鬼ども!! お前ら一匹残らずすり潰してやるからな!!!』
 マガツヘビが体を震わせると、剥がれ落ちた黒い鱗が地へと落ちる。ただの一片にしても普通の人間くらいはありそうなその鱗は、即座に形を変え、小型のマガツヘビへと変化して、火鼠達の方へと這い寄りはじめた。
「おっと、これは……予想外だな」
 火鼠の中でも蒼い炎を纏った大将は、部下達に命令を下して近くに集める。相手も古妖ではあるが、和解や停戦という選択肢はない。『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』、それは古よりの掟なのだから。

●朱に染まる戦場
「皆さん大変です! √妖怪百鬼夜行に、巨大妖怪『マガツヘビ』が現れました!!」
 星詠みの一人、漆乃刃・千鳥(|暗黒レジ打ち《ブラックウィザード》・h00324)が√能力者達にそう呼びかける。
 忌まわしき愚鈍の獣、無限の妖力と矮小なる頭脳の持ち主など散々な呼び方をされているようだが、その実力は本物。古妖ですら単独での撃破は不可能と断じ、こちらとの共闘を申し出てくるほどだ。
「実際のところ、正面から戦り合った場合僕達も勝負になりません! ここは古妖の方々と手を組み、マガツヘビを共に撃破するのが理に適った選択だと思われます!」
 マガツヘビも√能力者ではあるが、短期間で繰り返し幾度も倒せば、やがて蘇生しなくなるようだ。決して油断せず、挑んで欲しいと彼は言う。

「今回協力していただきたいのは『蒼火』という名の古妖さんです。蒼い炎を纏った火鼠で、他の火鼠の親分のような立ち位置にあるようですね」
 部下である火鼠と共にマガツヘビに挑みかかった彼は、√妖怪百鬼夜行の休火山地帯にある『炎獄谷』に誘い出そうとしている。
 火口跡を含む熱泥地帯に形成されたこの場所は、赤胴色の岩肌と、常に立ち上る赤い湯けむりが特徴となっている。冷めない地の熱と独特の光景によって、一種の観光地にされているが、『夕暮れが谷を深紅に染める時、妖の火を投げ入れることで、かつての熱を取り戻す』という言い伝えがある。
「古妖さんが言うには、どうも本当の話みたいです! 敵を谷底に叩き落とし、炎獄谷が噴火時の熱を取り戻せば、さすがのマガツヘビも丸焼きにできるでしょう!!」
 ということでマガツヘビを誘導中の蒼火だが、さすがに一筋縄ではいかないようで。敵の生み出した小型マガツヘビの群れに襲われ、取り囲まれているらしい。
「この古妖さんを助け、小型マガツヘビを倒していけば、業を煮やして本体が向かってくるはずです! どうか協力して、この強大な敵を打ち倒してください!!」

 作戦が上手く運べば、打ち倒したマガツヘビの上を奇妙建築で埋め尽くし、復活を遅らせるべく『魂封じの宴』を催すことになるだろう。
「火鼠さんの話ではここでの『宴』は焼肉だそうです!!! がんばっていきましょう!!!!」
 なぜだかやたら気合の入った声音で、星詠みは一同を送り出した。
これまでのお話

第2章 ボス戦 『マガツヘビ』


●焦熱地獄行
 火鼠達と協力し、√能力者達は小型のマガツヘビを殲滅することに成功した。一段落したところで、燃え盛っていた火鼠達の炎が少しばかり弱まる。多数による群れを成していたそれも、今ではほとんど疎らになっている。その代わりに、傾いた日の光が、断崖を紅く染め上げていた。
 風にたなびく焦げたような獣臭と、草を焼く微かな熱の残り香。その静寂を引き裂いたのは、やはり古妖の叫びだった。
『糞糞糞糞ッ!! どうしてこうも上手くいかねえ!!?』
 同時に、低く重い地鳴りを響かせ、木々を薙ぎ倒しながらそれが迫る。現れたのは、黒光りする鱗の波。
 ――マガツヘビ。
 先程戦った小型のものと形は同じだが、空に伸びるその身の大きさは、比べ物にもなりはしない。
 所詮先程のものなど剥がれ落ちた鱗に過ぎず、まともに組み合えば勝ち目など万に一つもないのだと、この場に居る全員が理解した。
 夕日を隠す巨大な影が落ちるそこで、火鼠の長は一同にだけ聞こえるように口を開いた。

『……さて、ようやく仕事にかかれるな?』
 彼が示したのは、自分達の背後に口を開けた巨大な渓谷、炎獄谷だ。
 この地の言い伝えに関しては、事前に説明があった通り。であれば敵を誘き寄せ、日が沈む前に谷底へ誘導、もしくは突き落とすことができれば、炎獄谷の熱でマガツヘビを焼き殺せるはず。巻き込まれれば当然こちらも耐えられないので、死にたくなければ谷からの脱出も必要事項に加えられるだろうか。

『苛つかせやがって! 此のマガツヘビ様が!! 直々に叩き潰してやるよ!!!』
 こちらの狙いも知らぬまま、強大な古妖が雄叫びを上げる――!