√NoBuddy knows『君だけがいない』
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予め言っておく。
これは面倒な仕事だ。
けったいな仕事だと言い換えてもいいだろうが、生憎とこれが仕事なのだからこなさねばならない。仕事とはそういうものだ。生きる意義だと言ってもいいだろう。
事件が解決されねばならないことと同じだ。
特に怪異絡みの事件は徹底的に浚わねばならない。
何故だと?
そんなものは当然だ。
全て詳らかにしなければ、『怪異の仕業でした』などと説明して納得などできはしないからだ。
だから、とっとと仕事をしなければならない。
いいか。
最初に言っておく。
馴れ馴れしくするな。お前の調子のいいやり口というものを俺は好ましく思っていないし、絆されることなどない。
せいぜい働くことだな。
そうであれば、お前の監視役などという仕事にも張り合いが出るというものだ。
だが面倒を起こすな。
お前たち怪異というのは、全て――。
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それは殺意にも似た感情なのだと知った。
柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・h00126)はしかし、人を愛する。人の文化を愛する。
もちろん、自分たちを語り継いでくれる存在なのだから、愛おしいと思う感情は生まれて当然だった。
彼が特殊捜査四課に保護されてから、監視役がつくことは予想していた。
そうなるだろうな、とも思っていた。
特殊捜査四課とは異能捜査官の部署の一つだ。
依月は、この特殊捜査四課に協力する見返りとして人間社会の立場を得ている。地位でないところが味噌である。
こういう抜け目のないところが人間らしいな、と彼は思っていたし、好意的に解釈していた。
けれど、自分を監視する四季宮・昴生(蛇神憑きの警視庁異能捜査官・h02517)は、前述した通り殺意めいた感情を向けてきた。
後から知ったことであるが、彼の妻は怪異事件によって落命していたのだという。
なるほど、と思った。
あの刺すような感情は彼の心のささくれだったのだ、と。
出会いとしては最悪の部類であただろう。
だが、人と人とのコミュニケーションというのは、常に距離感なのだ。
距離の詰め方は千差万別だ。
人間という一括りで『こうだ』と考えるのは軽率だし、ハッキリ言って愚かだ。
怪異だって一括りにはできないのだから。
「よ、相棒♪」
特殊捜査四課の詰め所に依月は軽やかな足取りで踏み出す。
できるだけ足音を立てた。
自分は此処だと示さなければならない。足音を消して近づくと昴生は、酷く苛立つからだ。これも覚えたことだ。
「何度言えばいいんだ? 監視役だ、俺は」
落ち着いた声色。
お、今日はご機嫌が比較的よい方だ。
デスクに山積した書類の山の合間から、ジロリとした視線がよこされて肩をすくめる。
「誕生日おめでとさん!」
は? と昴生の顔が歪む。
その顔は面白い顔だな、と思った。なるほど、サプライズをするとこういう顔をするのか。
「おい、どこで知った……? そもそも怪異から祝われるなど。いらん」
「なんで? 甘いのは苦手そうだなって思って甘さ控えめって評判のチョコケーキにしたんだよ?」
「いらんものは……――」
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「覚えておいて欲しいことは、私がそうしたいっていうこと」
「私の幸せなあなたの幸せだっていうこと」
「私がおばあちゃんになった時、あなたの今の顔を思い出したいということ」
「あなたの全部が私の宝物だっていうこと」
「あなたが此処にいてくれることが嬉しいということ」
「それだけで十分なの」
「だから、ね――?」
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きっとこれは幻視だ。
妻は、何故こんな自分と付き合おうと思ったのか。面白みのない男だ、自分は。
同じように誕生日を祝ってくれた彼女に、心無いことを言ったのを覚えている。けれど、彼女はそういったのだ。
思い出した。
忘れてはならないことだったのに、日常の喧騒と非日常の忙しなさにかまけて、大切な思い出すら押し流されていたのだ。
目の前の男は怪異だ。
絆されることはない。
だが。
「……さっさと皿でも用意しろ。お前のことだ、どうせそこまで気が回っていないのだろう」
「失敬だなぁ!」
できらい! と依月がまた調子よく詰め所のあちこちを引っ掻き回している。
少し此方を不思議な目で見てきたが、さもありなん。
自分だって複雑な気持ちなのだ。
今更だ。
生まれた日を祝われたところで……。
そう思う。
けれど、思い出すことができた。
彼女があの日、己に言ったことを。それもまた彼女の望みだったのかもしれない。
息が緩む。
「あ! 今笑ったな? 笑ったな!? なあ、笑ったよな?」
「調子に乗るな」
「いーや、絶対絶対に笑ったよ。ああくそ、こういう時に限って俺ってやつは特殊通信端末しか持っていないんだろうか! 欲しいよ、スマホ!」
「ろくなことにならん。却下だ」
彼女は、こんな己を見てなんと言うだろうか。
わからない。
けれど。
『仲良しのワンちゃん同士ね』
「……気の所為か――」