子どもたちの誘拐を阻止せよ
●防ぐべき未来
最初に言おう。これは「何も出来なかった場合」の、星詠みによって予知された未来の光景である。
「ふふん、ざぁ~こ♪」
天気も良く……けれど空気が少しばかり冷たい、冬としては比較的ありがちな……とある日。その場所ではまさに惨劇としか言いようのない光景が広がっていた、
魔力に満ちた血の雨で警察の車両が破壊され、警察官たちも倒れ伏す。
一般人ではどうしようもないレベルの戦力差は、どうしようもないほどの惨状を生み出していた。
「で、なんだっけー? 子どもを攫ってこいだっけ?」
指名手配吸血鬼『マローネ・コール』にデュミナスシャドウはつまらなそうに「フン」と返す。
「くだらん仕事だ。戦闘員どもにやらせておけば充分だろう」
「デマゴーグだっけ、今回の組織。子ども攫って何する気か知らないけど。ま、ザコいこと考えてるんでしょうねー」
響く悲鳴にマローネ・コールもデュミナスシャドウも、何の反応も見せはしない。
どうしようもないほどに思考が「悪」であるからこそ、弱者の悲鳴など鳥の鳴き声よりも気にならない「どうでもいい」ものでしかないからだ。
たとえ聞いてみたとして「それがどうした」くらいの返事しか返っては来ないだろう。
こうして、狙われた小学校から全ての子どもたちは何処かへと攫われ消えていく。
何処かに開いた「入り口」も消え、子どもたちは永遠に帰ってこない。
繰り返すが、これは「何もしなかった場合」の未来だ。
勿論、これは当然の話なのだが。「ゾディアック・サイン」を得た以上は、この未来をそのまま実現させるなどということは絶対にありえない。
こんな未来は砕いて、幸せな未来を手に入れるべきなのだから。
●√EDENに迫るもの
「どうやら悪の組織「デマゴーグ」による誘拐作戦が予定されているようだ」
星詠みの男は、集まった面々を前にそう切り出した。
√EDEN。この地球につけられた名前であり、約束の場所……最も弱く、最も幸せで、最も豊かな略奪対象とされている。
それ故に様々な事件が起こりうるが、今回もそうした事件の1つというわけだ。
今回の事件の黒幕である悪の組織「デマゴーグ」は、プラグマと呼ばれる組織の傘下になる。
全ての悪の組織が忠誠を誓う秘密結社『プラグマ』の最終目的は、「全ての√の完全征服」。という訳で、最も弱く最も豊かな√EDENにも悪の組織の怪人は勿論現れるのだが……デマゴーグもまた、そうした組織の1つというわけだ。
「連中の狙いだが、どうにも小学校の子供たちを丸ごと誘拐するつもりらしい」
そうすることで「何」をするつもりなのかは分からない。しかしどういうつもりであったにせよ、子どもたちの誘拐など許せるはずもない。
だからこそ防がなければならないのだが……幸いにもこの事件は予知できた。
ならば当然、防ぐための手立てもあるということだ。
「どうやら、デマゴーグの連中は何処かに「侵攻のための入り口」となるものを開いているようだ。まずはそれを見つける必要があるだろう」
入り口を開く核のような役割を果たしている首魁がいるはずだが、入り口を見つけて敵をボコスカと倒していけば首魁も現れるはずだ。
「それさえ倒せば、侵攻の入り口も消えるはずだ。そうすれば……この事件は終結するだろう」
未来を担う子どもたちを悪の組織デマゴーグに誘拐されることなど、絶対にあってはならない。
だからこそ、この事件は防がなければならないのだ。
「君たちなら出来るはずだ。頼む……この事件を防いでくれ」
星詠みの男は、そう言って頭を深々と下げるのだった。
第1章 冒険 『入口を探れ』

「ほんっと、碌なコトしないよなーあいつら。腹立つわー」
鴉越・烏夜 (エリラズ・h00852)はそう言いながら、手に入れた地図にエシクーバペンデュラムを垂らしていた。
警視庁異能捜査官の末席に名を連ねている身としては、こんな事件を許すわけにはいかず……失せ物探しの要領で「入り口」を探せないか試してみようとしていたのだ。
まあ、失せ物というかクセモノだし上手くいくかどうかは分からないが、「これ」という場所が見つかれば片っ端から歩いていけばいい。
「なんとなく場所が分かったら、後は直接足を運んでみるとするかねー」
そんなことを言っていると、「やあ」と鳥夜に声がかけられる。
「やっぱりお仲間かあ」
そこにいたのは土方・ユル (ホロケウカムイ・h00104)であり、どうにも同じ事件を捜査しているらしいことはその態度からもよく分かった。
「あー……やっぱり簒奪者の?」
「そういうこと。全く簒奪者は性質の悪いことを行うね」
言いながら、ユルは自分の見解を仲間だという証拠代わりに披露していく。
「今回は『プラグマ』の傘下の組織、と言う事は√マスクドヒーローからの尖兵だね。√エデンを守護する能力者組織の一人として子供達を誘拐させるようなことはさせるわけにはいかないよね」
「確かに。で、一緒に捜査しようってことでいいか?」
「そう、ダウジングしてたのが見えたしね。どうだい?」
「あまり成果が出ているとは言えないな」
「よし、じゃあ学校に行こう!」
「え?」
「なんだって正攻法が効くものさ。一番有効かどうかは場合によるけどね」
そんなことを言いながらユルと鳥夜は小学校に向かい、優しげな笑みで警察手帳を見せる。どちらも警視庁異能捜査官であるからこそ出来る技と言えるだろう。
「最近不審者が目撃されてるから巡回を強化しようかと。先生や保護者目線で誘拐事案が起きそうな要注意箇所があったら目印を付けて頂けると助かります」
「ああ、そうでしたか。こんなご時世ですしねえ。すぐに用意しますね」
きちんと警察手帳を見せて、優しく微笑みながらお願いするから社会的信用もコミュ力的にも大丈夫そうだね……と言っていたユルだが、こんなにもうまくいくものかと鳥夜は舌を巻いてしまう。
「よし、これで準備は出来た! 次はさっきのペンデュラムと合わせて捜査していこうか」
「……ふぅむ、このあたりッスか?」
小学校と住宅街。子どもだけで出歩いても問題がない、比較的治安が良いであろう地域。そこに七槻・早紀(路地裏の遠見・h03535)は立っていた。
きっと昔は馴染のあった場所だろうが、今は……スラム向けな自分の知識はあまり役に立たなそうに早紀には思えた。しかし、だからといって思考放棄するほど早紀はヤワではない。
「まぁそれでも、"裏道"ってのはあるもんで」
そう、何にでも裏道はある。綺麗な町にも汚い町にも、何処にでもだ。
だからこそ、表道に堂々と入口を配置するのは相当に"愚"ではないだろうか。
一般人はともかく、通りがかった√能力者に対処される可能性もあるだろう。
誘拐というところも含め、なるべく人目につかない場所に入口はあるはずだ。
であれば。勝手こそ違えど、普段の生き方の出番だ。そう早紀は結論付ける。
「さぁ考えろ。もし敵がアタシなら、どこに隠す?」
学校への通学路……その途中にある、見つかりにくい場所。それを探して早紀は歩き始めて。
「子供達を狙うなんて許せない! 絶対に未然に防いでやるんだから!」
その一方で、そう気合を入れる太曜・なのか(彼女は太陽なのか・h02984)ではあったが、今回が初出撃とあって、それなりに緊張していた。
オーナーから基本的な調査方法と戦い方は教わったとはいえ、実戦はこれが初めてだ。
(……私も本当に誰かを救う事が出来るのかな)
そんな弱気な気持ちも思わず顔を出して来てしまうが……すぐになのかは気持ちを奮い立たせる。
「ううん、弱気になるななのか! 頑張れなのか!」
そうやって自分を鼓舞すると、小学校の中をうろついたら別の騒ぎが起きちゃうから、となのかは住宅街へ向かっていく。
かつてヒーローだったオーナーから教わった悪の組織の行動パターンを参考に、路地裏や空き家を中心に調べていこうとするが……落とし物や空き家があればその過去の持ち主の記憶に何かを隠すのに適した場所とかが無いか聞いてみようとしていた。
(子供を守る為と説明したら協力してくれる筈よね)
そうして路地裏に顔を突っ込んでいる少女に声をかけると「お?」と振り返る。
「丁度いいっすね。見つけたっすよ、入り口」
路地裏の先……丁度建物に挟まれた、取り残された公園とでも言うべき場所。
そこに「敵の侵入口」が……確かに口を開けていたのだ。
第2章 集団戦 『戦闘員』

侵入口からワラワラと出てきたのは戦闘員たちだった。
どうやら悪の組織「デマゴーグ」の戦闘員たちなのだろう。
指名手配吸血鬼『マローネ・コール』の姿はない……どうやら迅速な操作で敵の侵入口を見つけられたおかげで、デマゴーグ側の準備が整う前に到着することが出来たということなのだろう。
戦闘員たちの表情にも、僅かな驚きがあることがみてとれる。
このチャンスを逃すわけにはいかない……こちらの有利へ持ち込む千載一遇の好機なのだから……!
「別√からの襲撃、それも集団で」
「公園でひそひそとたむろする戦闘員……傍から見ると間抜けかも。親子連れが見たら「ママーあの人達何?」「しっ、見ちゃ駄目」って遣り取りが起きてもおかしくないかな」
「此処が目につきにくい場所でよかったっすね」
「全くだ」
七槻・早紀 (路地裏の遠見・h03535)と土方・ユル (ホロケウカムイ・h00104)はそんなことを言い合うが……こういった目につきにくい場所に侵入口を作るというのは、中々にゾッとする話ではある。「ゾディアック・サイン」を得ることが出来ていなければ、まさに誰にも気づかれずに誘拐の準備が完了していたのは間違いないのだから。
そして戦闘員たちはすでに此方を見ていて、ブツブツと何かを呟いている。
「敵だ……」
「排除しなければ」
「計画の障害……」
武器を次々と構えていくその姿にユルは「来るぞ」と声をあげる。
この戦いの注意点としては兎に角、数が多いから囲まれて袋叩きに遭わない様に動きを止める事だとユルは考える。1人ではない。だからこそ、その手段は有効に働く。
ならば、とユルが取り出し提示するのは警察手帳だ。
「警察だ! Freeze! 捜査第零課だよ、大人しくしなよ!」
当然、そんな言葉1つで大人しくなるはずもないが……これこそがユルの√能力「Freeze!」だ。
悪い事をしてなくても警察に声を掛けられると動きが止まるよね、本当に悪い事をしてるなら言うまでもないかな……というのがユルの説明だが、麻痺した戦闘員たちは確かにその動きをピタリと止める。
(烏合の衆とは言わないけど反応が鈍い相手には効果的に足止め出来て居合わせた仲間が好機を掴んでくれるはず……!)
「やるっすね。対処は……まぁ、援護くらいで勘弁。やることがあるんでね」
見たところ一般戦闘員、となれば倒しても倒しても湧いてくるタイプだろうか。流石にまだ親玉までは揃ってない。おそらくまだ控えてもいないだろう……と、そう早紀は考えていた。
だからこそ、石ころを念動力で浮かせ、気配だけで"こちら"の敵を狙っていく。
(精度は高くないだろうが、ここにいるのはアタシだけじゃない。目の前の存在に対処できる人はここにいる。だから、アタシがするのは、この瞬間、アタシにしかできないことを……!)
戦闘員は、どうやらこれ以上は出てこない。ならばユルの作ってくれたチャンスに応えることこそが、今の早紀がやるべきことだ!
「止まってる的に当てる程度なら楽勝っすよ!」
その攻撃が戦闘員たちを吹っ飛ばしていく。どうやら初撃は大成功のようだ……!
「ひえっ!?いきなりだなんて聞いてないよ! 心の準備!」
とはいえそれは向こうも同じだと、そう太曜・なのか(彼女は太陽なのか・h02984)は思う。
「なら気持ちで負けちゃダメだよね」
「ああ、その通りだ」
鴉越・烏夜 (エリラズ・h00852)も、なのかにそう頷く。
「此処でこいつらは倒なさいとな」
「なら、此処で勝たなきゃ」
キイン、と音をたてて弾かれたのはウェザーフレームバッジ。
なのかはウェザリエドライバーにバッジを装填すると、しっかりとポーズをきめる。
「オーナー見ててください。これが私の、変身!」
- Whethelier,it’s going to be Sunny! -
ウェザリエドライバーから響く音も高らかに、なのかはオレンジ色の装甲を纏うサニーフレームに変身する。
「予報します。今日の天気は日本晴れ。身を焦がす程の強い日差しにご注意ください!」
変身と同時に出現したソードブレイザーに炎を纏わせた斬撃で戦闘員を薙ぎ払えば、鳥夜もコルヴスストールを翻させる。
「はーいどうも残念賞~。こっから先には行かせないからな」
「敵だ。排除せねば」
「敵だ。排除するぞ」
戦闘員たちに対して、コルヴスストールの裾を腕のように異形化させながら声を掛ければ、戦闘員たちは抑揚のない声でそう答える。
「さて、出来るか? そんなことがさ」
√能力、霊震。霊能震動波を放ち引き起こした半径13mの震度6強クラスの揺れは戦闘員たちに行動を困難になるような状態を引き起こし、腕のように異形化させたコルヴスストールで戦闘員たちをぶっ飛ばしていく。
「この世界はお前らのための牧場じゃないんだよ!」
(あ、一人一人気絶させるのは忘れないようにしないと。おれ、戦闘に関しては素人に毛が生えたようなモンだし)
幸いにもこの場には戦闘にこの上なく向いている、なのかがいる。
「今です! 認証チャージ!」
- Whethelier,turns into Leoperseus! -
レオペルセウスを認証チャージしたなのかはイージスレオブレードを手に必殺技発動する。
強化された跳躍力で攻撃を躱し、自由落下しながら剣から放つ光と熱の波動で敵を薙ぎ払えば……戦闘員を全て倒し切っていたのだ。
第3章 ボス戦 『『デュミナスシャドウ』』

戦闘員たちを全て倒し切った、その時。
侵入口から1人のヒーローじみった姿の何者かが現れる。
「……やれやれ。戦闘員どもめ、準備が出来ているどころか倒されているとはな」
呆れたような口調と共に、それは周囲を静かに見回し……自らの「敵」を見据える。
「やったのは貴様等か。だが、丁度いい」
本当にそう思っているかのような楽しげな口調で、それは構えを取る。
「俺はデュミナスシャドウ……さあ、来るがいい√能力者! 貴様らとの闘いを経て、俺はさらに強くなる!」
(……さて、どう戦うか。幸いにして場所は先程までと変わらない)
七槻・早紀(路地裏の遠見・h03535)はデュミナスシャドウを前に、冷静に思考を巡らせる。
相手は強い。それが分かるからこそ、慎重に……けれど、土方・ユル(ホロケウカムイ・h00104)の援護があるとも理解できていた。ならばと、少々無茶することを決めていた。
「そんじゃ! 早速ぶっ飛ばして行くッスよ!!」
まずは石ころ、空き缶、その他有り合わせを念動力でぶつけて弾幕を張る。
本来ならここで切るのが正解だろうが、「路地裏バッドガール」は切らない。そう早紀は判断する。
ならばどうするのか? その答えは、通常の攻撃で一世一代のハッタリをかけることだった。
(相手は距離を詰めようとしてくるだろうが、近距離なら棺桶Jackが間に合うはず。なら相手の初撃を武器受けで流し、弾幕は精度と威力を落としてでも継続しつつ、改めて√能力「怪異殺し」で近接戦に持ち込む……!)
「殴り合いと行こうじゃないッスか!」
「面白い。だが、ケルベロスライブラフォームに着いてこられるか!?」
ケルベロスソーサーを手にしたデュミナスシャドウは速い。しかし怪異殺しを発動した早紀の連続攻撃だって、決して負けはしない。
そして。そんな戦いに、ユルは恐れずに割り込んでいく。
「不思議だね、正義を為すヒーローのみならず悪事を為すヴィランさえも仮面に素顔を隠して戦わなければいけない√世界とは」
√マスクドヒーロー。その世界に想いを僅かに馳せユルは「まぁ良いさ」とそれを断ち切る。
「√エデンの地を守護するボク達能力者組織だってあるんだからキミ達の野望は阻止させて貰うよ。しかし……この目で見ても地獄の番犬と天秤座の力を受けた形態とは厄介だね」
とはいえ、早紀のおかげで「見る」ことは出来た。ならばユルのするべきことは、機を見極めることだ。
だからこそユルは緩急を付けた歩法で最高速度だけでは捉え切れない様に幻惑し、天性とも呼ぶべき勘で致命傷を避ける様に躱していくつもりではあるのだが。
「それで躱せると思うのか?」
ケルベロスソーサーはそんなユルを追い詰めるように命中するが、それでもユルは慌てない。
大切なのは機を捉える事。優勢と敵が慢心した時にこそ攻撃の合間の刹那を見切るとき。そう、だからこそ。
「必殺技とはキミみたいに安易にひけらかすものではないからね」
叩き込むのは天然理心流・無双三段突き。
「穿て、天然理心流奥義・無双三段突き!」
その必殺の三の太刀が叩き込まれて尚……デュミナスシャドウは、確かに笑っていた。
。
「お、ええ感じみたいやな。よっし、ちょっと騒がせに行ったろか」
片町・真澄 (爆音むらさき・h01324)はそう声をあげ、現場へと飛び込んだ。
「……新手か。この素晴らしき時間に割り込むだけの実力はあるんだろうな?」
ここまでの戦いの余韻を楽しむかのようなデュミナスシャドウに、真澄は軽く肩をすくめてみせる。
「さあて、どないやろか。試してみればええんちゃう?」
「ふん、いいだろう」
構えを取るデュミナスシャドウに、真澄は特注回転弾倉式拳銃 "リフューザー"を向ける。
「その辺うるさなるで、"3番"!」
壊音響"3番" 。撃ち込んだ特殊弾の炸裂がトリガーとなるそれはデュミナスシャドウを中心に凄まじい音を響かせて……僅かな音漏れがそれが確実に動作していることを真澄へと知らせてくれる。
だが、それを受けてなおデュミナスシャドウは真澄へとシャドウ・ジャッジメントを放つ!
「なるほど、確かにこれは俺の傲慢だった。良い学びだったぞ……!」
「なによ! デマゴーグだかゴマドーフだか知らないけど(結社に知らせず勝手に計画した)ワタシの通学バスジャックしてピクニックを楽しんじゃおう♪ 計画の邪魔になるじゃない! ちょっと懲らしめてあげるわ!」
アリス・グラブズ (平凡な自称妖怪(怪人見習い)・h03259)が叫ぶが、なんか悪人みたいなことを叫んでいる……秘密結社所属だからだろうか、まあ縄張り争い的なことなのだろう。ひとまずさておこう、この場には警察もいるし。
ah~♪ ah~♪ ah~♪ と秘密結社ディスアーク アリス隊……応援に駆け付けた大勢の戦闘員との連携したバックコーラスをBGMに屋根の上に立つアリスは、すでに戦闘準備は完了している。いや、始まっているのだ。
「はーっはっはっはー! 愚かなマイナー組織の木っ端怪人に告げるわ! ここは我らが秘密結社ディスアークの領土よ! ついさっきワタシが決めた! 死にたくなかったら尻尾をまいて立ち去りなさい!」
「妙な奴が増えたな。だが油断はせん」
そんなデュミナスシャドウの言葉を聞かず、アリスは屋根から「とう!」と飛び立って怪力パンチを打ち下ろす。
戦闘員たちには、デュミナスシャドウを遠巻きに取り囲ませて、罵声を浴びせたり腐った生卵(1か月物)を投げさせたりしてけん制させるが……折角の連携がそれでいいのかは不明だ。
「くだらん攻撃だ……だが、確かにこういう戦い方もあるか……!」
デュミナスシャドウはケルベロスライブラフォームによる攻撃をアリスに叩きつけるが、すでに戦闘員たちも解散しアリスはそれを真正面から受け止める。
「……! やるわね! でもこのくらいじゃワタシを倒せないわよ!」
「どうやらそのようだ。だが、貴様はどうだ? 先程の技では俺は倒せんぞ!」
「勿論、それじゃ終わらないわ!」
アリスアームは簒奪者をも吹き飛ばす。
「良い子になーれ!」
外道大しばき。外道改心ぱんちがデュミナスシャドウに命中し、その身体を吹き飛ばしていく。
「ぐおっ……! なるほど、シンプルな攻撃こそに真理ありか。学んだぞ。俺はこれで、更に強くなる……!」
その言葉を最後にデュミナスシャドウの身体は消えていく。
「よーし、これで早速当初の計画が!」
勿論、そんなわけにはいかないのだけれども。こうして、一時的ではあるのかもしれないが……また1つ、平和が護られたのである。