シナリオ

全ての玩具は我らの物

#√マスクド・ヒーロー #朧魔機関

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√マスクド・ヒーロー
 #朧魔機関

※あなたはタグを編集できません。


 戦いはあっけなく終わった。
「勝負あったな・・・」
 黒服の怪人が無感情な声で目の前の敵…幼き少年に自身の勝利を告げた。そこには嘲笑などなくただ当然の結果であるという認識のみであり少年を敵とすら思っていない。
「ち、ちくしょう!」
 敗北した少年は悔し涙を流すがもはや抵抗する意思はなく力なくうなだれるだけそれほど圧倒的な実力差であった。
「では貴様の玩具いただいていくぞ。」
 言うや否や返事を待たず玩具を取り上げ戦利品を無造作にケースに放り込んでいく
「もはや|ここ《玩具屋》にあるものは全て押収したようだな。ならばここに用はない。」
 そう言って怪人は自身の得物…ベーゴマを掲げて高らかに告げる。
「ここの玩具は全て我ら朧魔機関が頂いた!」
 それはまぎれもない勝利宣言であった。


「皆さん、初めまして。私は座頭・瑞稀と申します。今回の√マスク・ド・ヒーローで起きる事件のご案内を務めさせていただきます。」
 開口一番自己紹介した黒髪の少女座頭・瑞稀(ザッパ・h02618)はぺこりと一礼すると早口気味に概要の説明を始める。
「あと5分くらいで皆さんの右手側に見える玩具屋さんが朧魔機関という名の悪の組織に襲撃されます。」
 随分と急な話だが悪の組織は猛スピードのトラックが如く急に表れるものだ。
 朧魔機関という名は聞きなれないがプラグマの下部組織の一つと思われる。
「彼らはこのまま放置しておくと来店している子供たちの持っている玩具も含めて全て強奪し撤退してしまいます。そうなる前に彼らに戦いを挑み撃破してください。」
 そういうと一息入れた彼女は自身の右手にあるものを掲げて
「ベーゴマ対決で!」
 等と他人目を憚らずにそう宣う。
「というのも怪人達は子供達にベーゴマで勝負を挑みますからいきなり暴力で挑もうとすると相手は襲撃場所を変えてしまってまずいことになります。ですから皆さんには子供達に代わって怪人達にベーゴマ対決を挑み勝利してほしいのです。」 
 因みにベーゴマで対決するのであれば種類は問わないらしい。
「え?ベーゴマってそんなにたくさんの種類があるのですか?・・・と、ともかく皆さんがこの対決に勝てば敵はいよいよ実力行使をしてくる・・・・かもしれません。」
 何故か曖昧な物言いをする瑞稀。というのも
「要するに皆さんの頑張り次第で相手のが行動を変えてくるのではっきりとは言えないのです。場合によっては現場指揮官が出てくるかもしれません。いずれにしても彼らを倒せば今回の事件の首謀者が出てきますのでその人を倒せば解決になります。」
 と言って時計を眺めた彼女は
「嗚呼!すいません、もう時間が迫ってますので急いで現場へ向かってください!皆さんならきっとできます!!」
 などと早口で捲し立て皆を送り出したのである。

マスターより

開く

読み物モードを解除し、マスターより・プレイング・フラグメントの詳細・成功度を表示します。
よろしいですか?

第1章 冒険 『玩具で世界征服』


コマンダー・オルクス


「む?何者だ貴様?」
 玩具屋に入った怪人の第一声はそれであった。当初の予定では子供を相手にするはずであったが目の前の男はどう見ても小学生とか幼稚園児ではない!
「フハハハ、我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大幹部、コマンダー・オルクス!!」
 戸惑う怪人達に高らかに名乗り上げるのは高天原…もといコマンダー・オルクス
(悪の秘密結社オリュンポスの大幹部・h01483)!!!PR会社「オリュンポス」に所蔵する戦闘主任(自称)である。あくまで自称なので実際の役職は不明だ。
「ほう、ベーゴマで世界征服とな?
最近のベーなんとかをチョイスするのではなく、敢えて、伝統文化を選ぶとは、中々の選択だ!」
 手にしたスーツケースを床に置き怪人達が持つベーゴマと敵の方針を称える?コマンダーに怪人達は満更でもなさそうで
「その通り。ベーゴマは古き時代よりある遊具これを一か所に集めれば膨大なエネルギーを得られる。それを用いれば我らの悲願達成に近づくのだからな!」
 悪の組織の伝統とばかりに自分達の目的をつらつらと語るが守秘義務とかないのだろうか?
「面白い…その企み、同じ悪の組織を名乗る者として、競合他社は、駆逐してやらねばな! 」
 それが悪の礼儀というものだ!とばかりにスーツケースから取り出すのは一つのベーゴマ。
「ではこのハヤブサがお相手しよう。」
 怪人の一人が名乗り上げオルクスと決戦の舞台である遊戯台を挟んで対峙する。
 互いにベーゴマに紐を巻き付けいつでも放てるように構え
「行くぞ」
「見よ、あやとりで鍛えた、我が駒捌きを!」
 放ったのは同時であった。
 遊戯台に降り立ったベーゴマたちは勢いよく激突し互いに相手を弾き飛ばそうと鎬を削る!
「そして、見せて貰おうか、お前のベーゴマの性能とやらを!!」
「な、なんだと!?私のベーゴマが押されている!?」
 そう怪人の放ったベーゴマは最初の激突から強く弾かれ追い込まれつつあるのにオルクスのベーゴマは小動もしない。
 彼のベーゴマは一般にある鋳物製ベーゴマではない。下錐部分に鑢掛けして背を低くしさらに上面に溶かしたロウを流し込んで重心を頭上にあげることで倒れにくく相手を弾き飛ばすことに特化したガチバトル仕様。これを作り出すまでのどれほどの時間とベーゴマを犠牲にしたか想像もできない!!!

 そして
 決着は一瞬であった

「バ、馬鹿なぁ!!」
 遊戯台から弾き飛ばされたハヤブサを名乗る怪人のベーゴマは宙を舞いそのまま床に力なく落ちていく。
「フフフ、フフッ、フハハハハハ!この勝負私の勝ちだな!これで世界征服するにふさわしいのは我らオリュンポスであることが証明された!」
 勝利に只管テンションが上がるオルクスの勝利宣言が店内に木霊し周りの子供たちの
 スゲーとか
 カッコいい!などの黄色い声援をオルクスに送った。
 どうやら見た目のせいか襲撃とかではなく何かのイベントと思われているようだがそんなことはオリュンポスの戦闘主任である彼には些末事なのだろう、多分――

第四世代型・ルーシー


『依頼の場所についたよ、マスター』
 その声を聴いた怪人達は振り向いた先には帽子被った一人の少女が虚空に向けて喋っていたところであった。
『こちらでも把握した。仕事にかかれルーシー』
 その声に返事を返したのはハンドラー・リバティ(第四世代型・ルーシーのAnkerのマスター兼オペレーター・h04505)、今怪人達と対峙する少女第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)のマスターである。
『ベーゴマって知ってる?マスター』
 首肯しながらベーゴマという未知の存在に関しての情報提供を要請する少女に対してマスターは穏やかに答える。
『ああ、知っている。極東地域で古くからある遊具の一種だ。ベーゴマ本体に紐を巻き付けてその状態で紐を一気に引いて投げる。遊戯台上でそれをお互いにぶつけあい弾き飛ばしたほうが勝利となる。』
 簡単にまとめた情報を提供された少女は情報通りに紐を巻き付けながら
「力をこめたらよく回るのかな? たぶんWZのパワーがあればよく回ってくれるはずよね。」
そう言いながら自身のWZ(ブッダ)にベーゴマを持たせようとすると
『待つのだルーシー。WZのパワーでは強力すぎて逆に戦うことはできない。おまえ自身の手で回すのだ。』
 リバティの指示に従い自身の手で回そうとするルーシーだが
『どうすればうまく回せる?マスター」
 この戦いには勝たねばならない。だが、自分にはベーゴマを回した経験などない。マスターであるリバティなら知っているのかと思い発した問いかけにリバティは
『・・・・無駄に力を入れる必要はない。ただ、この戦いに勝つ。その意思を込めて投げるがいい。』
 その言葉を聞いたルーシーはふっと肩の力が抜けたような気がした。
「準備はできたか?ならば貴様の相手はこのゴウリキが致そう!」
 律儀に待っていた怪人がベーゴマを放ちルーシーもまた続き互いのベーゴマが遊戯台上で火花を散らす。
「ぬう・・・私の負けだ。」
 数度の激突の末弾き飛ばされたのはゴウリキの方であった。
「本来なら子供達から奪った玩具返してもらうつもりだったけどそれは阻止されているから。ここで引くのなら追いはしない。」
 役目を終え力なく転がる自身の駒を回収しながらルーシーは怪人達に言葉を投げかける。それが無意味と知りながらも。
「ま、まだだ。まだこの私ライデンがいる。まだ終わらんぞ!」
 当然怪人達に後退はない。最後の怪人はベーゴマを手に戦場に立つのであった――

雨深・希海


「ベーゴマ、知ってるよ。小学生の時に、昔の遊びを調べようって授業で遊んだことがある。」
 雨深・希海 (星繋ぐ剣・h00017)はベーゴマを選びながら怪人に視線を向け
「遊びは楽しいけど、勝ったら人のものを取るとか、そういうのは今時流行らないよ」
 ぴしゃりと言い放つが対する|怪人《ライデン》は
「ふ、他人より良いものが欲しい。より強いものが欲しい、高いものが欲しい。そうやって人は高みに上り続けてきた。玩具でもそれは変わらない。」
 希海の言葉を青臭いとばかりに鼻で嗤って反論する。
「・・・・・(さて、まずはベーゴマを選ばないとね。)」
 希海は怪人の反論に一瞥をくれてそれ以上は何も言わず売り場からベーゴマの選定に入る。
「えーと、平べったいのと背が高いのがあるんだっけ。」
 手に取りながら事前に調べた知識を動員して勝てるものを見出そうと思索に沈み
「うーん……重心がしっかりしてて、重そうなのがいいな。」
 そうして手に取ったベーゴマを手に
「よし、巻き方を教えて。」
 手近な子供に教えを乞うた。
「ふん、そんなことも知らずに私の前に立ち塞がるとはな・・・・」
 呆れたと言わんばかりの態度をとるライデンに構わずに子供の教えを聞きながら
「……なるほど、こうやって紐を結んでコブを作るんだ。」
 そうして紐を巻き終えゆっくりと向き直る希海は
「初心者だからって舐めないでよね」
 ベーゴマを構え遊戯台を挟んでライデンと対峙する。見得を切るさまはなかなか似合っていた。
「こういうのは……手のスナップが肝心って……ねっ。」
「なんの!」
 互いにスナップをきかせたベーゴマは遊戯台の上で激しくぶつかり合い弾き飛ばす!
「・・・・」
「・・・・!」
 互いにやるべきことをやり手に汗握りながら見守る二人の目の前で決着の時が訪れ
「くっ!・・・・私が負けるとは!!」
 幾度の衝突の果てに先に力尽きたのはライデンのベーゴマであった。
「さて、この勝負はぼく達の勝利だから諦めて帰ってくれないかな?」
 自身のベーゴマを返却しながら敢えて忠告する希海。
 だがそれが意味をなさないことは誰よりも分かっていた――

第2章 ボス戦 『外星体『ズウォーム』』



「ええい!こういう手段はとりたくなかったがーー」
「お待ちなさい。」
 やぶれかぶれになり殺気を高めていた三人を諫める声が店内に響き渡る。その声の先にいるのは一人の異形。
 見た目はごく普通のスーツを着こなした成人男性だ。首から下は。
 だが首から上の昆虫のような頭部はどう見ても地球の生き物ではない。
 彼は外星体ズウォーム。地球を愛するが故に地球侵略に加担する簒奪者である。
「血を流さずに戦い雌雄を決することができるのにそれを放棄するのは無粋の極みでは?」
 そう言いながら彼が手にするのはやはりベーゴマ!
「ここはわたしが参りましょう。」

*MSから
・引き続きベーゴマ対決となりますが判定自体は戦闘と同じですので√能力はプレイングでしておいてください。その属性で判定を行います。
・普通に戦闘してもOKです。その場合敵はベーゴマを通して反撃します。
・戦闘する場合店内の子供達や店員は避難しておらず周囲にいますのでその点はご注意ください。
コマンダー・オルクス


「ほう、新手のプレイヤーのお出ましか…しかも、此奴、デキる!?」
 コマンダー・オルクス(悪の秘密結社オリュンポスの大幹部・h01483)は目の前にいる簒奪者のプレッシャーを感じて戦慄した。先に戦った怪人達も手練れであったがこいつはその比ではない。
「ほう、私をそこまで評価していただけるとは。ならば貴方を失望させないように全力で戦わねばなりませんな。」
 彼の反応が嬉しかったのかズウォームはベーゴマを持つ手に力が入り戦意を高める。いかなる状況であろうと相手に敬意をはらえることができる敵は多くはない。
ならば互いに悔いなく全力で戦うのみ!
「なるほど、そのベーゴマ…ズウォーム仕様という奴か。ならばこちらも、少し、本気を出さねばなるまい!」
 その闘志に充てられたのかオルクスもまた戦意を高ぶらせ遊戯台の前に立つ!
「地球への愛は賞賛するが、果たしてそれで、ベーゴマ文化を真に理解しているのかな?」
 ベーゴマに紐を巻き付けながら敢えて挑発を叩きつけるオルクスに
「それは・・・・この戦いで証明するとしましょう!」
 既に準備万端のズウォームはベーゴマを構えそれをいなす。
「見せてやろう、性能が決定的差でないことをなっ!」
「見せてあげましょう、圧倒的性能差を!」
 二人が同時に放ったベーゴマは互いを落とすべく激突・・・・
「しないだと!?」
 ズウォームは驚愕する。なんとオルクスの放ったベーゴマ真正面から激突せずに相手の駒に側面から背後を取るように動いているではないか!
 これぞコマンダー・オルクスがあやとりで鍛え上げた駒回しの真髄。相手の勢いのある状態での激突を避け逆にその勢いを利用し背後から激突する!
「な、なんと!」
 ズウォームは見た。自身のベーゴマが放った勢い其のままに相手のベーゴマに背後から突かれ遊戯台から飛び出る光景を!
「まさか、このような戦い方があるとは・・・・この星にはまだ私の知らぬことがあるのですね。」
 自身に予想外の戦いを披露したオルクスに勝算の言葉を贈り手元に落とされたベーゴマを呼び戻す。
「とはいえまだ私は戦えますよ。さあ、次の相手はどなたですか?」
 その闘志は衰えるどころか更に高まるズウォーム。
「何度でもかかって来るがいい。我らが同胞の力は私の比ではないぞ!」
 ノリと勢いで高らかに挑発するオルクスを子供たちの喝さいが、華麗なベーゴマテクニックに魅せられた大人たちの惜しみない拍手が包み込んだ。

 やはり何かのイベントだと思われているようだ。店員は誰も突っ込まない――

雨深・希海


「ベーゴマで対決なんて、なかなか面白いことを考えるね。受けて立つよ。」
 そう言って雨深・希海 (星繋ぐ剣・h00017)は先の戦いで使用したベーゴマを手に遊戯台の前に立った。√能力者として命を懸けた戦いに身を投じる彼女だがむやみに血を流すのを好むわけではない。寧ろ
「ぼくも戦うよりは、こういう方が気が楽だし。こういうバトルってなんかマンガみたいでわくわくする。」
ウキウキしながら遊戯台の前でズウォームと対峙する。
「フフフ、そうです。血を流さずに勝敗を決せられる。これは誇るべきことですよ?私がこの星が好きな理由です。」
そんな様子を見ながら微笑むズウォームは回収した自らのベーゴマを構えいつでも飛ばせる体勢になる。
(回してみてちょっとコツを掴んだ感じもあるから、きっと次はもっとうまく回せるね。)
 前回の結果を踏まえ自信をつけた彼女の構えは前より洗練されたものになっていた。
「「勝負!」」
 奇しくも声が重なった二人は同時に手首のスナップを効かせてベーゴマを放ち互いに相手を弾き飛ばすべく勢いをつけながら向かって行く。
(ぼくのベーゴマは重みがあるから、素早く、強く回すことでもっとパワーが大きくなるはず。)
 とは言え相手のベーゴマも同様の物の可能性がある。勝負はおそらくただ一度きり。
その時がもうそこまで迫り
(がんばれ、ぼくのベーゴマ……!)
「あいつも、蹴散らしちゃえ!」
「生憎、蹴散らされるのは貴方です!」
 言葉と共に互いのベーゴマがぶつかり合い…
 激突によってバランスを崩した一方が回転力を失い倒れもう一方ももつれあうように後を追う。
 最初に倒れたのは・・・
「・・・・お見事です。技術やベーゴマそのもので後れを取っていたとは思いませんが貴方の情熱にはかなわなかったようです。」
 敗北の屈辱は当然あったであろう。それを飲み込み勝者を称えるズウォーム。
「~~~!やったぁぁぁぁぁっ!!」
 しばし緊張の後自身の勝利を実感した希海の勝鬨が店内に木霊するのであった――

カリカ・オフィーリア
獅猩鴉馬・かろん
ラージニー・スバルナンガーニ


「それでは」
 カリカ・オフィーリア(機械の歌姫・h02523)はベーゴマを手に
「さいごは」
 獅猩鴉馬(大神憑き・h02154)もベーゴマを手に楽しそうに
「私達3人でお相手しましょう。・・卑怯と言っても構いませんよ?」
 |ラージニー・スバルナンガーニ 《黄金の四肢を纏いし歌姫》(|電脳皇帝《インフォメーション・オーヴァーロード》・h00140)もまたベーゴマを手に遊戯台の前に立ちはだかった。ただ、他の二人と違いヒーローを志している彼女はちょっとばかり後ろめたそうであったが。
「いえ、お気になさらずに。別に1対1でなければならないと決めているわけではありませんし戦いである以上は卑怯も何もありません。自身の持てる全てを使って戦うのに変わりませんからね。最も・・・・・」
 ズウォームは特に咎めることもなく淡々として応対するその手にはいつの間にか取りだした三つのベーゴマが!
「こちらも一度にお相手する以上は相応に行かせていただきますよ。数には数で行かせていただきます。」
 ベーゴマ戦士としての誇りか或いは単に1対1の繰り返しが面倒と思ったか凄まじい殺意を漲らせて構えをとった。
「それならまずは私から!」
 最初にそう言ってスナップを効かせたのはラージニー。彼女の投げたベーゴマは勢いよく遊戯台に投げ出されて回転する。
「なら次は私が行きます!」
 次に投げたのはカリカ、ラージニーのそれを参照して投げたベーゴマもまた勢いよく投げ出されラージニーのそれと挟み撃ちするかのような軌道を描く。
「それじゃあ、かろんもなげるぞ~!そ~れ」
 二人に続かの様にかろんも投げるが遊びと思っているのか(そうだけど)技術も何もないただ勢い良く投げただけだ。
 かくして三人が揃った。ラージニーのベーゴマが他の二人の盾になるように動きカリカのはその背後に控えかろんのベーゴマは割と適当に回っていた。彼らのベーゴマが所狭しと遊戯台の上を回りただ|敵《ベーゴマ》が投げ込まれるのを待っている。
「では参りますよ!」
 万を期してズウォームはベーゴマ3連投を華麗に決める。そのどれもがスナップを効かせただけでなく着地地点も工夫した必殺の布陣である。
「まず一つ!」
 最初に狙われるのは皆の盾になっているラージニー!彼女のベーゴマに側面から回り込み激突そのままもつれ合うように回転力を失い倒れ逝く。
「相打ち!?」
「ですがまだこれからです!」
 ズウォームの言葉に応えるかのように彼の二個目のベーゴマはカリカのそれを倒すべく正面ともう一方から挟み撃ちにしようとする!
 結果、カリカのベーゴマは最初に激突したベーゴマを倒すも勢いを失い続いてぶつかってきたベーゴマに弾かれ倒れ伏す。
「さあ、最後は貴方ですよ!」
 そうして最後に1対1で対峙するのはかろんのベーゴマ。もはや互いに遮るものがない真っ向勝負!
「いけー! やっちゃえー!」
 かろんの応援に応えたわけではないだろうが彼女のベーゴマは勢いを減じることなく回転し待ちうける。対するズウォームのベーゴマはカリカとの激突を経て多少は勢いを弱めながらも回転軸は一切ぶれずにかろんに向かっていく…そして
「・・・やはり、些か無謀でしたな。」
 そう言って肩を竦めたズウォームはどこか悟ったような態度であった。彼の目の前には力なく倒れた彼のベーゴマ。
 やはり勢いを弱めていたのが原因であろうか。かろんとの激突した瞬間彼のベーゴマは力尽きたかのように倒れ転がり伏したのだ。
「やったー!かったぞーー!」
 勝負に勝ったのだけは理解できたかろんは既に力尽きて倒れた自身のベーゴマを誇らしげに掲げ店内に轟く勝鬨を上げる。
 この後に来るものの存在を知らぬまま――

第3章 ボス戦 『朧魔妲姫』



「残念ですが今回は我らの敗北です。潔く」
 ―引くとしましょう―
 そう言おうとしたズウォームの言葉を遮るようにガラスが割れるけたたましい音が店内に鳴り響き
「何をやっているのよぉ、あんた達はぁぁぁぁぁっ!?」
 ガチギレした女の怒号が店内に木霊した。
 全員が音のした入り口に目を向けるとそこには八尾の尾を持った狐耳の女がこめかみに青筋浮かべて仁王立ちしていた。
「これはこれは朧魔妲己様、どうかされまし」
「どうかされましたか?じゃないわよ!!お任せくださいと言うから任せてみたら何ベーゴマ勝負やって負けて勝手に引こうとしているのよ?!おもちゃを奪えという命令を忘れたの!?」
 ズウォームの言葉をぶった切るかのように早口でまくし立てる妲己相当に機嫌が悪いようだ。
「もちろん承知しておりますとも。方法は任せるとも。だからこそ血の流れない方法で相手を制し任務を果たそうとしたのです。力及ばず破れはしましたが」
「もういい!!あんた達に頼った私がばかだったわ!!私がやるから役立たずなあんた達はそこで見ていなさい!」
 弁明をぶった切り√能力者達と対峙する妲己は殺気を漲らせている。
「そうですか。では後学のために見学させていただきますよ。」
 酷評に憮然となったズウォームはそういうとそのままスタスタと壁際に寄って見学の姿勢に入る。配下のハヤブサ、ゴウリキ、何やら店員に耳打ちしてからライデンもそれに続く。
「さあ、ここの玩具を全て寄こしなさい。全ては我らの主朧魔鬼神様の為に!」
 整然と避難する人々を尻目に響く妲己の言葉が戦いの始まりを告げたのだ。

*MSから
・今回は純戦となります。舞台の店内は戦いに支障のないくらい広いです。
・ズウォームと怪人達は完全に背景です。こちらの妨害は一切せず味方の朧魔妲己に援護もしません。戦いが終わればそのまま撤退します。
・子供達をはじめ一般人は既に店員達によって全員避難済みなので一般人の被害はありません。
コマンダー・オルクス


「フハハハ、同業者がおもちゃを奪う計画を何故実行しているのか不審に思ったが、なるほど! 朧魔機関の首魁の為だったか。戦闘しか能がない奴だとばかり思っていたが、裏では子供遊びの達人とな? ククク、朧魔鬼神も存外話の分かる奴め!」
 ここにはいない組織の首魁に謎のシンパシーを覚えたコマンダー・オルクス(悪の秘密結社オリュンポスの大幹部・h01483)はさらにテンションを高めていた。
「勝手なことぬかすなぁ!!我らが主朧魔鬼神様がそんな俗な趣味を持っているわけがないだろう!?」
 登場してからこの方きれていないことがない朧魔妲己(以降面倒なので妲己)は更に青筋を増やして尻尾が荒ぶる。
「残念なことだ。遊び心がない者が部下では朧魔鬼神も浮かばれまい。ならば!この私コマンダー・オルクスが敬意を以てあやとりで貴様を倒すとしよう!」
 そう言いながら様々なあやとりの型を披露しつつその決意を語るオルクス。なんだか妙にかっこいいと思うのは気のせいだろうか?
「ふざけたことぬかすなぁ、このくそ野郎がぁ!!」
 罵声を浴びせながら妲己は八尾を伸ばし鞭のように撓らせオルクスを叩きのめさんとするが…
「行儀の悪い奴め。ならば遊びを極めるとどこまでできるのか教えてやろう!」
 そう言い放つオルクスは文字通り四方八方から襲い掛かる鞭の如き尾をあやとりで受け止めいなしそして徐々に絡め捕っていく。
「な、何!?ただの紐で私の尻尾を捉えられるはずが!?」
 まさかの事態に動揺する妲己。だってただのあやとりで受け止められるどころか絡みつかれるなんて思わないだろうし。
「驚いたかな?ならば続けて見よ、我があやとりの妙技『揺籃の綾取』を!」
 そう言い放ち繰り出される秘儀の前に妲己はなすすべなく絡めとられ動きを封じられていく!
「フハハハ、そのじゃじゃ馬な尻尾ごと拘束だ!」
「こ、こんなことが!!あり得るわけが!!」
 動揺を隠せぬ妲己に勝ち誇るオルクスは更に束縛を強め終には天井からつるし上げしまうという悪の拘束術の見本を披露して見せる。
「やはり悪の女幹部を縛り上げるまでがお約束だな!!」
 勝利宣言?を上げるオルクス。その背後で
「痛い!体に食い込んで・・・・このままだとちぎれちゃう!!お願いほどいてぇ!!」
 紐が体に食い込んで服どころか体が切断されそうになっていた妲己の悲鳴が店内に木霊していたのであった――

天宮院・流王


「ひいっ、ふう・・・・死ぬかと思ったぁ。お?」
 なんとか拘束から抜け出した妲己の前にひょこっと現れた可愛らしい少年。天宮院・流王 (人妖「天狐」の御伽使い・h01026)は
「えっと・・・・お姉ちゃんが悪い人ですか?貴方を倒しに来ました天空院・流王と言います。よろしく…」
「するかボケぇぇぇぇぇ!死にやがれクソガキィ!!」
 律儀な挨拶を罵声で返した(もう罵声しか挙げていない気がする)妲己はその怒りを糧に災餓天金狐に変身し炎のブレスで少年を焼き払おうとするが
「あの、ぼくの話を聞いてくださいますか?」
 途端に始まるのは少年が語る怪談『番町皿屋敷』。かの有名な皿を数える幽霊が出る怪談を語りだすと周囲一帯がおどろおどろしい武家屋敷へと変わりだす。
「な!?だが、こんなもので私が怯むと思うなよ!」
 妲己は驚いたがだからと言って怯むことはない。周囲が変わったところで自身に何か不利益があるわけではないからだ。そう思っていると
「お皿が一枚」
 少年の言葉と共に妲己に落ちる皿が皿とは思えない重い音を響かせ頭に落ちる。
「ぐぇっ!」
「お皿が二枚三枚」
 珍妙な悲鳴を上げる妲己に次々と追い打ちをかけ落ちてくる皿。語りが始まれば彼の領域である。逃げ場などない。
「こ、このガキっ!調子に・・・うひゃあ!」
 何とか反撃しようとする妲己だが唐突に足元に現れた井戸の底に落とされそのまま時間切れで力と意識を失い水底に沈んでいくのである――

茶来・優志郎


「げはっ!・・・・はぁ、ふぅ・・・・死ぬかと思った」
 井戸の底に落ちて溺死しかけた妲己はいかなる理屈か水浸しのまま宙から落ちてきて息も絶え絶えに起き上がる。
 そこに現れたのはぱっと見軽い感じのする優男茶来・優志郎(人間(√EDEN)のカード・アクセプター・h04369)
「ウェーイw悪党くん見てるぅ?ww」
 等と軽薄な感じで妲己に声をかける優志郎。
「なんだ貴様は!?いきなり面前に現れて何を言っている!?」
「うわw切れてるよwいや、挨拶は大事でしょ?w例えこれから倒そうとする敵であってもさ・・・ここからはオレが相手だ──変身!!」
 ぶちぎれ続けて血管が切れるのでは?な勢いに激高する妲己に優志郎は次第に落ちついた物言いとなり親友の形見であるベルトにカードを装填、しし座の戦士に姿を変えてソードブレイザーを手に妲己に立ち向かう。
「ふん、芝居をやめたか?ならそのまま死ぬがいい!」
 妲己は尻尾を撓らせ優志郎を仕留めんとするが優志郎は難なくそれをいなし自身の間合いに捉え一閃!妲己の腹を薙いでみせたのだ――

夢野・きらら


 夢野・きらら(獣妖「紙魚」の|古代語魔術師《ブラックウィザード》・h00004)は決断した。
「おいで。マスコバイト!」
 一気に片を付けることを。そもそも彼女は見た目こそ幼い少女だがその本質は知識を食らう獣妖である。ここには得るほどの知識はもはやない。ただ倒すべき敵がいるだけである。そしてその敵からは食らうほど|価値あるもの《知識》もなさそうであった。
「ということだから、あなたはここで終わらせるよ。観念して頂戴。」
「するかボケがぁ!!次から次へとうっとおしいんだよお前たちはぁ!!」
 腹を薙がれても尚妲己の戦意は衰えない。寧ろ不退転の決意が高まりそれが狂暴性となって表れていた。
「消えサルガイイ!」
 その狂暴性は災餓天金狐に変じたことでさらに高まり炎を吐き散らしながら全てを焼き払わんとする。
「権限掌握、行くよ。」
 迫る炎を前にきららは慌てることなく量産型WZ12体を召喚しマスコバイトの前に隊列を組ませエネルギーバリアを張りながら前進し身をもって炎を防ぎ続け主たちを守り消耗を強いる。
「ウッ・・・ガッ!」
 連戦で消耗している妲己は遂に闘気が尽き量産型WZの壁を突破できぬまま本来の姿に戻り膝をつく。
「悪いけどその隙もらうよ。やっちゃえマスコバイト!」
 彼女の声に応えマスコバイトが繰り出す渾身の一撃が妲己を壁際まで吹き飛ばすのはこの直後である――

ラージニー・スバルナンガーニ


 妲己が壁に吹き飛ばされたのを見届けた|ラージニー・スバルナンガーニ《 黄金の四肢を纏いし歌姫》(|電脳皇帝《インフォメーション・オーヴァーロード》・h00140)は彼女が追い詰められていることを確認し次の手を打つ為に動き出す。
「私では彼女に決定的な打撃は与えられません・・・ですが」
 彼女は戦闘に秀でているわけではない。勇気に不足はないけどそれは戦闘力をカバーすることはない。
「次へ繋げることはできます。」
「繋げさせんよ。ここで死ねぇ!」
 もはや後がないと分かっている妲己は焦りながら無数に分裂した尾を振り回し何としても叩き伏せようとする。

―せわしなく動く脚、高鳴る心臓の鼓動、まるで恋に落ちたような錯覚―

 ラージニーは其れに引くことなく思い切り前にでて歌いながら戦場を舞う。

―鋭い眼光は獲物の動きを掴んで離すことはない。お前は私のものだとー

 繰り出される無数の尾の乱舞を躱し歌声は止まることなく戦場に響き渡り繋がっていくこの戦場の全ての者達と――

ソノ・ヴァーベナ


 そして、その繋がりは一人の少女に集約する。
  彼女、ソノ・ヴァーベナ(ギャウエルフ・h00244)は再び災餓天金狐と化した妲己に狙いを定め
「それじゃ、ぜんぶ砕くよー!必殺の!オーバードライブ・ブロー!」
 両手に魔法のガントレット背中に光の翼を生やして目にも止まらぬ速さで一気に突撃!そのまま両の拳を叩き付け怒涛のラッシュを妲己に叩きこむ。
「グウっ!貴様ァ、この程度でやられる私だとでも!?」
「思っているよ!!だってさっきからあなたの動きが鈍くなっているじゃん的な!」
 本来ソノが得意とするのは遠距離戦だ。其の身に宿る魔力を弾丸として撃ち敵の攻撃には鉄壁の防御で立ち回る堅実な戦い。それが彼女本来のスタイルだ。だが
「貴方みたいな子供達の楽しいこと邪魔する人なんて許せるわけないでしょ!?」
 その怒りが彼女を前へと飛び出す力を与えていた。怒りをこれまでにないほどの膨大な魔力に変え拳に宿し闘気が尽き生身となった妲己に突き立てる!
「こんな…!申し訳・・・」
 体を貫かれ血を吐きながら主に詫びる妲己は倒れ伏し、それを見届けたズウォーム達は静かにその場を去っていく。
 こうして今回の事件は終わりを告げた。後は荒れ果てた店内を片付けねばならないだろうがなかなか骨が折れる作業であったのは別の話――

挿絵申請あり!

挿絵申請がありました! 承認/却下を選んでください。

挿絵イラスト