シナリオ

怪しい集団を追いかけて

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●地竜が受け取った予知
「皆さん、いらっしゃい。手伝って欲しい事があるの。」
 マントの裾からチラリと蛇腹の尻尾を見せるドラゴンプロトコルの長身な少女コルネリア・ランメルツがぽんやりした雰囲気で集まってくれた人たちを見ている。鬢から垂れる後れ毛を弄りながらちょっと宙に視線をやって続ける。
「√ドラゴンファンタジーのある街の近くで人攫いの集団がいるの。そのアジトを突き止めて捕らえて欲しい。街にはすでに人攫いの噂が出回ってるから、そこで情報収集して、アジトを特定して乗り込むって手はずで進めて。」
 言い終わったら一同の方に視線を向ける。
「直接攫っていったり、どこかに誘導して人を集めてるみたいね。大体は男性みたいだけど、女性もいるそうよ。その辺りをしっかり聞き込みして対応を考えておいてね。」
 すすっと√ドラゴンファンタジーの通貨をいくらか差し出すコルネリア。
「色んな人が集まる大きな酒場があるから、そこで聞き込むのがいいよ。ちょっとだけどわたしから軍資金を渡しておくね。
 どんな人にどういう内容を聞きたいのか、聞き出す為に何をするのかが大事。何かを奢ったり、プレゼントしたり、おだてたり、方法は相手に合わせてね。」
 一歩下がって虚空に顔を向けてうんうん頷くコルネリア。再び皆に顔を向けて、
「流れてる噂をちょっとだけ仕入れたよ。近くにはいくつかダンジョンがあるとか、最近ナンパが多いとか、街の外に見かけない長耳がうろうろしてる、って言ってる。」
 何が言ってるの!?と思いつつもうちょっと手がかりをと求められてコルネリアは首を捻る。
「そうだね、性格までは分からないけど酒場にいる目立つ人の特徴を教えるね。
 3人組の冒険者、休憩中の歌い手女性、カウンターで酔ってる木こり、羽振りの良い行商人。他にも色んな人がいるよ。」
 いってらっしゃい、とゆっくり手を振ってコルネリアは出掛けていく√能力者達を見送った。

マスターより

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第1章 日常 『お話を聞いてみよう!』


八木橋・藍依

●ジャーナリスト魂
 夜の食事時を少し過ぎた時間にも関わらず賑わいを見せる酒場に入って八木橋・藍依(常在戦場カメラマン・h00541)は周囲を見渡す。目的の人物は…、
「おや、君はこれから食事かい?ならこちらに来ると良い。今宵は私の奢りだ!」
 探し人から声を掛けてもらえた。これ幸いと失礼にならない様に態度を気をつけて隣の席に座る。
「ご親切にどうも。何か良い事があったのですか?」
 年単位の大口契約と取れたと上機嫌に答える男に藍依はすかさず言葉を差し挟む。
「貴方はもしや豪商の○○さんですか?光栄です!私はこういう者でして。」
 名刺を渡すとそれを見て商人はにやりと笑う。
「これはこれは、何かの縁だろうからインタビューにも答えるぞ?あはは。」
 藍依は食事をしつつ、しばし商人からインタビューして特ダネを得た。

 食事が終わりかけた頃、藍依はそっと通貨を差し出す。
「む?ここは奢りと言ったぞ?」
「いえいえ、ここからは商売と言う事で。」
 得心して商人は頷き表情を引き締めた。目で先を促す。
「この近辺に人攫いが出るみたいですが、手がかりなんてお持ちですか?例えば、アジトとか…。」
「俺は遭遇していないが、未踏破のダンジョン周辺に多いという噂だ。」
 積んだ通貨から一枚取り上げる商人。まだ聞ける。
「それはどんな所ですか?」
「入った事がある奴が言うには氷の中の様に寒い、足場が悪い、罠もあるって事で装備をしっかり調える必要があるとよ。」
 通貨を二枚取り上げる。次が最後になりそうだ。
「最後に、ダンジョンに行く際に準備が必要な装備・道具などは無いでしょうか。そのようなアイテムがあれば購入したいのですが。」
「いいだろう。防寒着にアイゼン、松明、目印、探検用に揃える。明日ここに取りに来てくれ。明細もその時。料金は今もらった。」
 指を2本通貨の上で見せる。残りに2枚追加すると商人はそれを取り上げて懐に仕舞った。ギリギリ、星詠みからもらった分で足りて藍依は内心ホッとしている。
「交渉成立、ですね。」
「おう、俺の事もそっちの取材も、良い記事書いてくれよ?」
 記者と商人はがっちりと握手を交わした。

雨神・死々美

●正しい酒場のコミュニケーション
 雨神・死々美(紫相の忌術師・h05391)は早めに酒場に入ってちびちびやりつつ目的の集団を待っていた。
「あ、お兄さんたちこっちこっち、相席どうぞっす!」
 にこやかに手招きしたのは3人組の冒険者。訝しげな表情をするも店内はそこそこ混んでいるので相席のお誘いは有り難かった様で口々にお礼を言って席に着く。
 死々美は身を乗り出して愛想良く笑う。
「あー、私は|毒使い《ヴェネフィック》のシジミっす。近いうち、この辺で商売始めるつもりでさ。冒険者にサンプル配ってんだ。」
 こつん、こつん、と麻痺毒の【試験管】を1本ずつ胸元の前に置いてみる。冒険者たちは気まずそうに視線を逸らす。なにせ死々美の格好がサラシの上にぶかぶかの黒い外套という扇情的な格好だからだ。もっとも、死々美は分かってやっているのだが…。
 そうして興味を引いたら一本ずつそれぞれの手前に置き直す。
「得物に塗ってヨシ、罠のエサに仕込んでヨシ。まずは、お試しあれ。」
 背もたれに背を預けてにこやかに笑う。試験管をそれぞれが手に取ったらすかさず、
「あ、好きなモン頼んじゃってください。未来のお得意様にね、サービスってコトで……、お酒もやっちゃってくださいな。」
 大盤振る舞いに盛り上がって勢いよく注文し出す冒険者たち。死々美は資金が足りるかどうか気が気じゃなかった。

 宴会の様相を呈するテーブルで、死々美は程よく酔いが回り気分が良くなっている冒険者たちに本題を切り出すことにする。
「んぁ?人攫い?そうだなぁ、俺たちは遭遇してないが、美人のねーちゃんに誘われてどっかの洞窟に入ったら出てこれないとか言うあの噂かな?あそこどこだっけ?」
「あー、最近見つかったダンジョン付近だな。クエスト出てた。」
「受理して帰ってきた奴がいないから詳細がわからないって冒険者ギルドが言ってたぞ。」
「ダンジョン、行ってみたらどうだ?防寒着必須だって話だけどな。」
 酔いどれ冒険者たちにお礼を言ってここまでの会計を済ませて死々美は手を振ってにこやかに酒場を出た。
「うーん、聞く相手を間違えたかな?でも出没場所は分かったからいっか。」
 とりあえず冒険者ギルドで話を聞いておこうと思った死々美だった。

第2章 冒険 『ひんやり、アイスダンジョン!』


●人攫いのアジトは極寒のダンジョン
 そのダンジョンは入り口こそ通常の遺跡である。しかし、一度足を踏み入れると瞬く間に氷が支配する空間となる。防寒着無しでは徐々に体温を奪われ動きが鈍り、幻覚幻聴に悩まされ、そして息絶えてしまう事だろう。
 そんな極寒ダンジョンには寒さ以上に厄介な事がある。滑りやすく崩れやすい足場、上下から突き出る鋭い氷柱、そして明らかに人の手による発動式の魔法罠。
 その最奥に何かを隠しているかの様に、未踏破の筈のダンジョンに人為的な意図が潜んでいる。この危険なダンジョンに入ろうと思う者は進み出よ。
~~冒険者ギルドのクエスト説明文章より

POW:ダンジョンを熟知したダークエルフの女性戦士たちが襲撃してきます。滑りやすい足下に注意しつつ撃退してください。
SPD:滑りやすい足下を利用して一気に滑走しましょう。ただし、崩れや突き出る氷柱に対応しないと致命傷を受けます。
WIZ:極寒ダンジョンならではの魔法罠を掻い潜ってください。射出される氷柱、割れて落とし穴になる道、ダストシュートよろしく堆積した氷粒の中に突っ込ませて凍らせる物などなどあります。発動型なので発動体を探してみるのもありです。壊しても良いでしょう。

●MSより
 アジト(ダンジョン)攻略となりました。お好きな能力値を選んでそれぞれの状況にご対応ください。
 やりたい事を明確にして頂けると助かります。
 よろしくお願いします。
八木橋・藍依

●氷洞Sleigh Ride
「なるほど、そう来ましたか。」
 昨晩商人から買った防寒着を着込んだ八木橋・藍依 (常在戦場カメラマン・h00541)は目の前の光景をカメラに収める。確かに床はもちろん壁も天井も凍っていたが、ここまでは至って普通の洞窟だった。しかし、今目の前には青白い光を放つ氷柱だらけの空間が広がっている。あまりに幻想的な光景だったので本能的にシャッターを切っていたのだ。

「こんなこともあろうかと無理を言っておいて正解でした。我が妹、桔梗よ。協力感謝致します!」
 Anchorである妹に依頼して一晩で作ってもらった“そり”の準備をする。今までは荷物運搬に活用していたが、ここからは乗っていった方が地形的にも良さそうだった。明かりは不要なくらいだったが念のためランタンに灯を点して前方を照らし、後部からは一定距離で目印の塗料が噴射されるように器具を調整する。大きなザックに荷物をまとめて散らばりにくくして背負い、藍依はそりに乗る。アイゼンがしっかり固定されているかを確認して、道になっている坂に繰り出した。

「おお、結構なスピードが出ますね。慎重な操作が要りますよ。」
 妹お手製のそりは氷柱による擦過傷を抑えるために曲面のガードを左右に装備している。力を分散し反らすことで刺さったり切れたりしにくくしている。それは派手に壊して道が塞がったりする事を危惧していた藍依に都合よく働く。どうしても避けられない氷柱が存在していても接触してしまったその先端部分だけが折れるのだ。
「流石ですね。何かお土産を買って帰ってあげませんとね。」
 巧みなブレーキワークと装着した足のアイゼンも駆使して曲がりくねった坂道をそりは快調に滑り降りていった。

「おや?なにやら祭壇めいたものが見えますね…。」
 大空洞の壁沿いの下り坂に出た藍依は底の方に人工物を発見する。どこかおどろおどろしい造形を見下ろしながら引き続き慎重にそりを滑らせて行ったのだった。

雨神・死々美

●氷洞の死合い
「う~、|寒《さみ》…。こんな所に隠れてるとか厄介っすね…。」
 雨神・死々美(紫相の忌術師・h05391)はガウンコートの前を掻き合わせてブルブル震えながら洞窟内を歩いていた。足下からは指の間に挟んだ釘が氷を穿つざくざくという音が聞こえる。包帯ぐるぐるにして足裏の凍傷はカバーしているが、毒躰術の真価を発揮する為にかなりの薄着なのが堪える。さっさと攻略して帰りたい所…。そこに話し声が聞こえた。
「…!見付けたっすよ…。」
 死々美はにやぁっと笑った。

「"長耳"で……"美人のねーちゃん"。あんた等っすかね、人攫いってのは。
ちゃっちゃと闘りましょ。ここは|寒《さみ》いや……。」
 隠れる事無く堂々と姿を晒す死々美。ダークエルフの女たちは驚いた様に振り返る。死々美は間髪入れずPETボトルの毒爆弾を足下に叩き付ける。途端に周囲には赤いガスが充満しダークエルフたちは激しく咳き込んで涙を流す。
「ちょいと数が多いんで…。」
 スパイク代わりにした釘でしっかり氷の床を踏みしめて手近な1人の背後に回って麻痺毒を纏った手刀を首に叩き込む。即効性のある毒は即座に筋肉を弛緩させてダークエルフを失神させる。同じように2人、3人と失神させていくが…。
「おっとと、効果切れか…。」
 振り抜かれるロングソードを躱した死々美が催涙ガスから復帰するダークエルフたちを見やる。そして徐にPETボトルの中身を煽る。死々美がここまで寒さを耐えられた理由の1つ、体を内側から温める『酒』である。と、同時に…、
「はは、マジ冷えてきた。……ここいらで、いっちょ|暖《あった》めっか!」
 それを口から霧状に噴き出して下顎の中切歯と歯槽骨にし込んでいる着火装置で引火させる。一瞬炎が上がり周囲が眩しく光る。炎に巻かれたダークエルフが転がる所へ近くにあった氷柱を折って投げつけ脚を貫いて縫い止める。痛みは鈍いはずだ。何せ発火させたのは酩酊毒。その臭気が彼女たちから思考や体の感覚を麻痺させているのだ。

「あなたが最後っすね。倒れてない根性は買うっす。だから、全力だ。」
 一際(色々な部位が)大きくがっつり鎧を着込んだダークエルフのお姉様が自由の利かない体を引き摺って大剣を振り上げる。そんな相手に死々美は敬意を持って鋭く踏み込んで抜き手を放つ。それは鎧をぶち抜いてダークエルフの体に麻痺毒を浸透させる。
 昏倒して崩れ落ちる体を支えて抜き手を引き抜く。
「痛ってぇ〜〜……!……でも、これだけ捕まえたら懸賞金がっぽりでしょ。」
 痛む指にむち打って死々美はダークエルフのねーちゃんたちを捕縛していった。
「にしても、この|寒《さみ》い所にこんな格好で転がしといて平気かな?」
 自分の事は棚上げして、ほぼビキニアーマーみたいな寒そうなセクシーおねーちゃんたちを心配する死々美だった。

エーリカ・メーインヘイム

●危険な氷洞トラップ
 エーリカ・メーインヘイム(あなたの帰りを待つ母艦・h06669)は本来8mの身長を誇るベルセルクマシンなのだが、さすがにダンジョン内ではその巨体では不便なので160㎝ほどの少女の姿を取って内部に入っていった。
 機械であるエーリカには極寒による影響は低く、足下にスパイクを装備して対策しつつ進んで行く。エーリカの周辺には小型無人兵器「レギオン」が21体動き回っていて、備え付けの超感覚センサーで周辺索敵をしている。と、一番先行していた1体が止まってエーリカに信号を送る。トラップを検知したようだ。サーチライトで照らされた場所には小さく魔法陣が置いてあって、この上を通過すると何かが発動する様だ。
 エーリカは危険を承知で発見したレギオンを魔法陣を避けて先に進ませる。幸いトラップは作動せず、周辺に通路向きに伸びる大量の氷柱が発見された。槍衾と言ったところか。
 慎重に進みつつまたトラップを発見、今度は機械さえ凍らせる程の寒風が吹き荒れる魔法罠だ。これは危険すぎるので泣く泣くレギオンの1体を使って仕掛けを破壊した。

 エーリカとレギオンたちは一つずつ罠を見付けて無効化し、目印を付けて進んで行く。彼女たちの活躍でこのダンジョンのマップもつつがなく完成することだろう。

第3章 ボス戦 『ジャンパー・イン・ザ・ダーク『ロクヨウ』』


●最奥で待つ存在
 氷洞の奥へ、下へと進んだ先には何らかの祭壇の様な空間があった。そこにはミイラ化していたり白骨化している遺体が転がっている。見るからに嫌な儀式が行われていたのは間違いない。
 慎重に儀式場に近づくと、奥に横穴があってその中から異様な気配を感じ取れる。それがどんどん近づいてくる。蹄の音と共に。
 姿を現したのは極寒の氷洞の中で何も身に付けていない、病的に白い肌と青黒い毛並みの4脚、青い目に白い瞳。鹿の頭蓋骨を胸に抱いた獣人の様な存在であった。
『オマエタチ…ツギノ、ニエカ?』
 人とは違う器官で、人の言葉を無理矢理発している様な不快な音で話し掛けてくる。それで確信する。コイツがダークエルフの女性たちを従えて人攫いをしていた張本人だと。
 √能力者たちは武器を構えた。

●MSより
 ボス、ジャンパー・イン・ザ・ダーク『ロクヨウ』との戦闘となります。身体能力は高く、厄介な力を持っています。多少の話は出来ますが戦闘は避けられません。
 ギミックなどはありませんので、力を尽くして討伐してください。
八木橋・藍依

●特ダネを撃射せよ!
 そりを安全な場所に隠して八木橋・藍依(常在戦場カメラマン・h00541)は物陰からロクヨウを窺う。相手はこちらの気配を察しているようで周辺をうろうろしている。何をするにも気を反らす必要を藍依は感じていた。
 そこで、そりに搭載している数基の千里眼カメラを起動させる。ローター音を響かせながら四方に散らばり撮影を開始する。ロクヨウがそれに気を取られて背を向けると同時に藍依は愛銃HK416を構えて遮蔽から身を乗り出し射撃開始。リコイルの影響を考えた3連射を数回繰り返す。
 ロクヨウは最初こそ被弾するが強靭な四足で地を蹴り狙いを絞らさない様に動き回る。
「流石によく動き回りますね!」
 藍依は狙いにくいと判断して即排莢、マガジンを入れ替えて今度はフルバーストし面制圧を狙う。避け切れないと判断したロクヨウは手に持つ鹿の頭骨を頭に被る。それは蒼白に輝き鋭い角を持った鹿野仮面となる。その頭を下げて藍依に突進してくる。その仮面は銃弾を弾き、ロクヨウの速度も跳ね上がっている。藍依は慌てて横に飛ぶとさっきまで隠れていた遮蔽をぶち抜いてきた。藍依は牽制射撃しながら後退して遮蔽の反対側に移動する。さすがに速度が乗っていなければぶち抜くことは出来まい。そのまま儀式場の反対まで全力で走る藍依の上を跳躍で飛び越えてロクヨウが立ちはだかった。
『オマエ…ハムカッタ…ユルサン…。』
 左手を腰の後ろに回しながら、じり、と一歩下がる藍依。それを4方向から捉える千里眼カメラたち。
 ロクヨウはぐっと足を曲げて溜を作り、弾けるようにダッシュ。
「散々人を食ってきたんだ、逃がしはしませんよ。」
 腰の後ろから閃光手榴弾を抜いて投擲、藍依はすぐ伏せて耳を塞ぐ。そして線香と轟音。頭上を高速で何かが通過する気配。起き上がった藍依は背後で目を抑えてのたうつロクヨウを確認する。
「この瞬間を待ってました!あと10秒……3……2……1……ゼロ!|衝撃の瞬間《シャッターチャンス》!!」
 カメラを構え走り寄りながら藍依はカウントダウンし、0と同時にシャッターを切る。強力な必殺フラッシュがロクヨウを包み込む。
『グォォ!?バカ、ナ…っ!』
 閃光が治まるとその姿は消えてなくなっていた。

「さすがに生き残りの方は居ませんでしたか、残念です。でも、この人たちだけでも弔ってあげませんとね。」
 千里眼カメラの収めた画像を確認して藍依はため息を吐き、回収できる範囲の遺体を丁重に葬ることにしたのだった。
「しかし、果たしてあの1体だけだったのでしょうか…?」

マイティー・ソル

●星雲と太陽の|光《チカラ》
「妾の名は、正義の秘密組織オリュンポスの使徒にして、光明太陽神が末裔、マイティー・ソル!」
 ババーンというBGMでも背負っていそうな格好いいポーズを決めてマイティー・ソル
(正義の秘密組織オリュンポスのヒーロー・h02117)がロクヨウの前に現れる。
「フン、ウルサイノガ…キタ。」
 ロクヨウは下半身の毛皮にある斑点から光の波を放つ。それはまるで星空の様に煌めいてロクヨウを包み込んでいる。
「世界平和の為に、覚悟!」
 マイティー・ソルは停車しておいたフライトフォックス・ヴィークルからクールナールブレイドを引き抜いて斬り掛かる。ロクヨウは微動だにせずその斬撃を受け止める。文字通り、無抵抗で受け止めたのだ。斬撃は効果なしとみてマイティー・ソルは奥の手を繰り出す。
「これが、正義の使徒の全力じゃ!受けてみよ!」
 熱き叫びに応じて喚び出される|正義と不敗の光明太陽神《ジャスティス・ソル・インウィクトゥス》、すなわちソル・フレア・バーストキャノン!3基召喚されたそれが一斉に火を噴き、ロクヨウを襲う。
 星の光と太陽の光が鬩ぎ合う。そして、正義の光が星を打ち砕いたのだった。

堂本・龍永

●武人の獣退治
 堂本・龍永(無為拳魔・h06951)は堂々とロクヨウの前に立つ。強き者、特に手心の必要が無い邪悪が相手ならばこそ身を隠す必要は龍永には皆無なのだ。
「其方が人を攫い喰らっている者か?」
『ダトスレバ、ドウスル?』
 不快に響く声にも動じない龍永、これは会話をしているのではなく只の確認である。
「然らば、屠るのみ。」
 息吹から静止、構えを取って気を練る。ロクヨウは訝しそうに首を傾げた後即座に飛び掛かる。龍永は流水の如き身のこなしで蹄の踏みつけをいなしながら獣の胴体に掌を押し当てる。
「波っ!」
 ズムっと掌がめり込み大きく重いロクヨウの体が押した方向にズレる。咄嗟に飛びすさったロクヨウは体中の斑点から光を放ち纏う。龍永は好機と見て即座に踏み込み拳を突き出すが、それを胸で受けたロクヨウが今度は微動だにしない。
 手応えと相手の気の流れを読み取った龍永は構えを変える。深く息を吸い込み、両手をロクヨウの光に押しつける様に突き出し裂帛の気合いを解放する。
「覇!」
 ロクヨウはその意力に押されて下がるがその弱気を龍永は見逃さない。一歩踏み込み拳を突き出す。拳は光を突き破りロクヨウの腹を突く。もう一歩踏み出し肘で顎を跳ね上げる。更に一歩、前足の肩に蹴りを入れる。蹴り脚を引き着地と共に体を半回転させ鉄山靠。龍永はゆっくりと型を取って残心。
「意を以て為すが儘に。」
 ロクヨウはその場に崩れ落ちた。

鳳・楸

●鋭き小花
 鳳・楸(源流滅壊者ルートブレイカー・h00145)は静かに合金鍛造刀«緋閃»を抜き放つ。ロクヨウはすでに満身創痍でその目は血走り、凄まじい敵意と殺意が汲み取れる。
『ガキガ…、キサマヲクッテ、チカラヲトリモドス!』
 震える脚で立ち上がるロクヨウ。追い詰められた獣の獰猛さを楸は涼しい顔で受け流す。その小柄で可憐な少女の容姿からは想像も付かないほどの静謐さを湛え、体格に比すると大太刀に見える刀を構える。刃を天に、切っ先をロクヨウに向け、目線の高さに掲げ顔の横に構える。
 ロクヨウは大きく吠えて突進する。その速力は人を大きく超え、向けられる蹄は鋼の如く、脚力は楸くらいの少女なら容易く潰せる物。その脅威を真正面に見据えて楸は動く。蹄に刀を合わせていなし、バランスを崩すロクヨウの胸元に刀の刃を滑り込ませる。
 2人が交錯してロクヨウは通り過ぎて倒れる。胸元からは血が溢れ出て呻き声が絶えない。ずりずりと這いずる様に遠ざかりながら体の斑点から光を放って守りに入る。
「残念ですが、逃しません。せめて介錯してあげます。」
 楸は無造作に歩み寄る。ロクヨウの顔には恐怖が浮かぶ。その頭に楸は手を伸し触れる。そして、光が弾けて消えた。

竜雅・兎羽

●優しき竜の子守歌
 竜雅・兎羽(歌うたいの桃色兎・h00514)は血塗れで倒れているロクヨウに哀れみを感じていた。その相手が人をダークエルフたちに攫わせて食べていた悪だとしても。
 すでに動く事もままならないのか、体の斑点から弱々しい光を放って纏い低く呻っている。兎羽にはそれが怯えと恐怖だと感じ取った。どう見ても助かる傷ではない。ならば、せめて心安らかな最後を、そう考えた。
「おいでませ、竜兎♪」
 兎羽は護霊の兎で竜な見た目の竜兎を呼び出す。竜兎が翼を広げて直立したら、兎羽は目を閉じて歌い出す。それはどこでも歌われる優しい唄。母親が子どもを寝かしつける時の定番の唄。
 兎羽の翼が歌声に共鳴して辺り一帯に響かせる。竜兎の翼も同じように共鳴する。寒く暗い洞窟の底に慈愛が溢れていく。
 ロクヨウは目を見開き、そして、ゆっくりと閉じる。兎羽は竜兎に頷くと竜兎はロクヨウに近寄り頭を抱き締める。そのまますぅーっと溶け合って融合する。
 もう動く事が出来なかったロクヨウは存在が透明になっていく。そして消滅していった。最後のその顔には穏やかな笑みが浮かんでいた。
「おやすみなさい。」

●エピローグ
 事の真相と顛末は、数名の√能力者によってギルドに報告され、追加調査を経て解決となった。女性ダークエルフの賊は指名手配され続々と掴まっている様子。
 踏破された氷のダンジョンは地図が作られて新たな資源となった。その最奥、ロクヨウの居た祭壇の間には、犠牲者慰霊の為の祠が建てられたのだった。

挿絵申請あり!

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挿絵イラスト