遊郭より愛をこめて
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√妖怪百鬼夜行。
大正|浪漫《ロマン》の風情ある都市の景観を、妖艶な月光が照らしている。
大勢の|物見遊山《ものみゆさん》の客達が、足を揃えて向かう場所は、男にとっての極楽であり、女にとっての|苦界《くがい》であった。
そこは春を|鬻《ひさ》ぐ者達が、一夜の甘い夢を魅せてくれる場所である。
色と欲。情と念とが|蜷局《とぐろ》を巻く、その場所を、かつては椿之遊廓と呼称したのだという。
それも今は遥かなる昔の話だ。
椿之遊廓を支配した大悪妖、椿太夫。|傾城《けいせい》の美貌と、|傾国《けいこく》の|奸智《かんち》とを武器にして、数多の男達を破滅させたのだという。
その大悪妖が封印されてより既に幾年月。廃墟と化した椿之遊廓に過日の面影はない。
風雨に色褪せるままに、朽ち逝くままに放置された廃屋の群れは、悪妖と、その眷属達の墓標のようでもあった。
事実、椿太夫が封印された後に、椿之遊廓の跡地に踏み入った者はいない。
そこは椿太夫の怨念が濃密に|凝《こご》る土地であるとして、禁足の場所に指定された。
しかし――。
星の|亡《な》い夜。墨染の空に、白銀の月が昇る。
|妖《あや》しいまでに眩い月の光が、廃墟に降り積もった年月という埃を洗い流していく。
朽ちた建物と|掏《す》り|替《かわ》るようにして姿を現わしたものは、|贅《ぜい》を凝らした造りの、立派な|楼閣《ろうかく》であった。
男達は、椿の紋様が描かれた門扉の内側へと、その歩みを進めていく。
生気の失せた顔。焦点の合わぬ瞳。覚束ない足取りは、燭台の炎に誘われる虫のようだ。
今宵の客達を前にして、椿之遊廓の|妓女《ぎじょ》達は、魔性の微笑みを口許に貼りつけた。
「また、わっちに逢いに来てくれたのでありんすえ。
此処は俗世の苦悩とは無縁の場所。あらゆる|情念《よくぼう》を肯定する喜悦の楽土。
夜が明けるまで存分に、わっちに、|主様《ぬしさま》の|生命《すべて》を注いでおくんなんし。
その見返りに――|主様《ぬしさま》には、至上の快楽を与えてさしあげんすよ」
遊郭の一室に|衣擦《きぬず》れの音が響く。
ほどなくして理性を|喪失《うし》ない、獣と化した男と女の嬌声が、薄い|襖紙《ふすまがみ》越しに漏れ聞こえてきた。
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「余は此度、星の導きを得た。
場所は√妖怪百鬼夜行。日本の、とある地方都市の郊外に、霊域指定地帯として禁足地に定められた土地が存在している。そこは、かつては椿之遊廓と呼ばれていた場所――余と同じく星詠みの|能力《ちから》を有する古妖、椿太夫が支配していた土地のひとつだ。
支配者である椿太夫が封印されて以来、訪れる者もなく廃墟となっていた場所ではあるのだが――どうやら男達の情念が、椿太夫と、その眷属達の封印を解放してしまったようだな」
竜帝――パトリシア・ドラゴン・ルーラーは、椿太夫の封印を破ったという男達の情念が、どういった類のものであるのか――それを言葉にするのは、|些《いささ》か|野暮《やぼ》が過ぎるというものだろうと、呆れたように溜息を吐いた。
「男達の情念により封印から逃れた椿太夫ではあるが、その力は全盛期の頃よりも大きく減退しているようだ。
過日の力を取り戻す為に、夜毎に遊廓に男達を招き入れては、その精気を吸い取ることに励んでいる――眷属達も一緒にな。
これまでにも数多くの男達を、美貌と色香で惑わせては、破滅させてきた者達だ。
男達の劣情を煽り、骨抜きにすることなど、赤子の手を捻るようなものであろうな」
椿之遊廓の客として招かれた男達は、夜毎に、精魂尽き果てるまでに搾り取られているようだ。
このままでは、犠牲者の総数は、鼠算式に増加していくことだろう。
そして椿太夫は、遠くないうちに、全盛期の力を取り戻してしまうに違いない。
「その前に何としても椿之遊廓へと踏み込んで、客とされている男達の目を覚まさせてやる必要があるだろう。
椿太夫と、その眷属達を討伐し、これらを再封印する必要がある」
しかし、椿之遊廓は、禁足地に定められる程の強大なる呪詛によって汚染された土地――霊域指定地帯の内部に存在している。
客として招かれた者であるならば|兎《と》も|角《かく》として、土地の支配者である椿太夫の敵対者に対しては、その呪詛が容赦なく降り掛かってくることだろう。
「土地を汚染する呪詛の効力は、端的に説明するのであれば、侵入者の精神を幻惑せしめるというものだ。
認識を阻害することで椿之遊廓の位置を判らなくさせたり――素養のある者の記憶を混濁させて、理性を喪失させることで、椿之遊廓の客に変えてしまったりな」
つまりは日頃から邪な気持ちを抱いている者であるならば、|木乃伊《ミイラ》取りが|木乃伊《ミイラ》になってしまうという可能性も、決して|零《ゼロ》ではないという訳だ。
悪妖に対して、欲望のままに精気を捧げる存在へと、堕してしまう危険性も孕んでいる。
「流石に余の|能力《ちから》をもってしても、この呪詛に対抗する手段までは、|確《しか》とは予知できなかった。
すまぬが、こればかりは、各自の意志の強靭さや、あるいは何らかの工夫に期待するしかないようだ」
霊域指定地帯を踏破して、椿之遊廓にまで辿り着くことが出来れば、その支配者である古妖と、雌雄を決することも敵うだろう。
椿太夫を打倒することが出来れば、惑わされている男達も、恐らくは正気を取り戻すに違いない。
「頼むぞ――其方達の闘争に、いと高き星の恩寵があらんことを」
第1章 冒険 『霊域指定地帯』
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禁足地の外側から幾ら目を凝らしてみても、その区画には、ただ墓標のような廃屋の群れが朽ち逝くままに放置されているだけである。
虚ろな眼をした男達が、それでも表情にだけは薄ら笑いを貼りつけながら、酒精に酔っているかのように覚束ない足取りで、列を成して、廃墟の内部へと踏み込んでいく。
その後を追い掛けて、禁足地へと潜り込んだ者は、その光景を目の当たりにすることになるだろう。
過日の姿のままに、大勢の客達で賑わう豪華絢爛なる色町の姿を。
脳髄を痺れさせる程に甘い香りが漂っている通りには、|妓女《ぎじょ》という極彩色の花達が、それぞれの美しく着飾った姿を、競い合うようにしながら咲き誇っている。
「そこの素敵な御兄さん。少し遊んでいきましょう」
「私と素敵な夢を見ませんか」
「此処では何を望んでも許される」
「嗚呼――今宵も満員御礼。働く娘の数は、幾らいても足りやしない」
「そこの娘よ。一体、何をしているんだい――ここは椿之遊廓。
ここに居る全ての女が春を|鬻《ひさ》ぎ、そして太夫の為に精気を集めるんだよ」
|妖《あや》しく嗤う遊女達の言葉の意味を正しく理解できるものは、この遊廓全域を支配する、悪妖の呪詛に抗える者だけだ。
抗えぬ男は――咲き誇る花達の誘惑に屈して、椿之遊廓に招かれた客の列に並ぶことになるだろう。
抗えぬ女は――咲き誇る花達の一輪に堕して、椿之遊廓で夜毎に客を取ることになるだろう。
悪妖の呪詛を打ち破り、この禁足地の支配者である、椿太夫の楼閣へと辿り着かなくてはならない。
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大気に重く|凝《こご》っている濃密なる魔の気配。|如何《いか》にもな|妖《あや》しい雰囲気は、まるで自分の事を誘っている様でもあるとアルテナ・ヴェルゼルには思えてならなかった。
快楽を魔力に変換する術を身に修めた魔女。豊満なる肢体を惜し気もなく曝け出している|煽情《せんじょう》的な装いは、数多の|妓楼《ぎろう》が立ち並んでいる遊廓の通りにあっても、男達の|邪《よこしま》な視線を惹きつけずには居られなかった。
「この遊廓に集められた男達。
太夫の糧となる前に、果たして、どれほどまでに濃密な精気魔力を集める事が出来るのでしょうか。試してみるのも一興ではありますわね。
無論、わたくしの|処女《じゅんけつ》を何処の馬の骨とも判らぬ輩に売る気は御座いませんけれども」
禁足地である遊廓に足を踏み入れた者の意識を混濁させて、その認知を改竄せしめる効力を有する悪妖の呪詛は、しかしアルテナの精神に対しては何らの影響も及ぼさなかった。
当然の様な顔をして手近な妓楼へと入店するアルテナの姿を、その店で春を|鬻《ひさ》いでいる大勢の遊女達が、口元に嘲る様な笑みを貼りつけたままに見詰めている。
(この方々は椿太夫の眷属ですのね。流石に綺麗所を取り揃えておりますわ。
わたくしが呪詛の影響を受けているのだと誤認しておりますのね)
「おや。新参者でありんすか。
丁度良い。ちょっと、わっちの傍にまで来なんし」
眷属達の誤解を敢えて指摘しようとも思わないアルテナに対して、遊女の中のひとりが声を掛けてきた。
周囲の遊女達は、その者の行いを「また始まった」という様子で黙認している。
「わたくしで御座いますかしら。いったい何の御用ですの?」
問い掛けるアルテナの前で、その遊女は、自ら着物の帯を解いてみせた。
美しく着つけられていた着物が乱れて、遊女の股間に|熱《いき》り立つ、逞しい肉竿が露わになる。
「新参者の具合は、わっちが確かめる事になっていんす。
けれども、おまえは、どうやら|生娘《きむすめ》の様でありんすね。
それだけ男受けの良さそうな身体をしているというのに勿体のない事。
とはいえ|新鉢《あらばち》は客の為に取って置かねばなりんせんからね。
仕方のないことでありんすえ。
その口で、わっちの|魔羅《まら》を、しゃぶりなんし。
新参者に、この妓楼での作法を叩き込んであげんすよ」
「まあ。逞しいモノを御持ちで御座いますのね。
仰る通りに、わたくしは、まだ殿方との経験は御座いませんけれども。
それを御望みであるというのであれば、精一杯、御奉仕をさせて頂きますわ」
アルテナは、遊女の前に跪くと、猛々しく屹立している|魔羅《まら》を頬張った。
経験こそ無いものの、知識としては、男の悦ばせ方については心得ている。
また女と閨を共にした経験は豊富でもあった。
たっぷりの唾液で肉竿の滑りを良くしながら、上目遣いに遊女の反応を伺うと、見様見真似ではあるものの懸命な舌遣いで奉仕を行なう。
(大きくて、逞しいですわね……本物の殿方の肉棒も、このような感じなのでしょうか。
ふふ。この反応は……先端の所が気持ち良いのですわね。
平静を装っていても、その反応だけで判ってしまいますわ)
男の反応から快楽を推し量る術を心得てはいないが、女の|蕩《とろ》ける反応を読み解くのには馴れている。
アルテナの舌は、淫猥な蛇の様に蠢いて、遊女の|魔羅《まら》を的確に責め立てていった。
奉仕の始まりこそ、あれこれとアルテナに注文をつけていた遊女ではあったが、今では|堪《たま》らずに零れそうになる吐息を噛み殺しながら、自ら腰を突き出している。
「んんっ! な、なかなか……上手いものでありんすえ。
初めてで、これならば、なかなかに……んっ、くぅぅっ!
そう、そこでありんすぅ……もっと、もっと強く……吸いあげてっ……! あ、あぁっ……!」
じゅるり、れろり、ねろり、ぬらり……粘ついた水音は、アルテナの唾液によるものだけではない。
遊女の肉棒。その先端から、涙の様に、とめどなく溢れだしている先走りの粘液によるものも混じっていた。
(コツを掴めば容易いものですわね。
眷属とはいえ、やはり魔性の者。実に濃密な精気魔力ですわ。
あらあら。口数が少なくなったかと思えば、腰を振りだして……可愛らしいこと。
根本も膨らんできて……そろそろ、御漏らしの時間ですかしら)
アルテナの口戯によって齎される、腰が溶けてしまいそうになる程の心地良さを味わいながら、遊女は吐精の為に腰を動かすようになっていた。
アルテナは密かに腕を持ちあげると、遊女の肉付きの良い尻の谷間に指先を滑り込ませては、そこにある秘密の|窄《すぼ》まりを|突《つつ》く事で刺激する。
「あ、くぅ、あっ――!」
その瞬間。
遊女は、自身の肉体を走り抜けた雷の様な快感の前に、思わず腰を前方に突きだすと、口淫奉仕を行なっているアルテナの頭を、強く抑えつけた。
「くぅっ、出る――!
そのままでありんすよ……新参者の口一杯に、わっちの種を注いでやりんす……!
あっ、あっ、あっ……あ、あぁぁぁぁっ……!」
アルテナの口腔内に迸った白濁液は、まさしく男が放出するものと寸分違わぬ味と、匂いと、濃さを伴って、勢い良く喉奥にまで流れ込んできた。
(まあ……もの凄い量ですわね。
それに気持ち良さそうな表情をされて――わたくしの御奉仕を、そんなにも気に入って頂けましたのね。
この様子であれば、上手くすれば、他の眷属達についても手玉に取る事が出来ますかしらね)
アルテナは、遊女の吐き出した精汁を、こくりと喉を鳴らして|嚥下《えんげ》しながら、その様な事を考えていた。
吐精を終えた遊女が、アルテナの口から、まだまだ固く反り返っている逸物を引き抜いた。
「はぁ、はぁ……!
まさか、わっちが、新参者の生娘の口で、こうも早く出してしまうだなんて。
おまえには、どうやら素質がある様でありんすな。
これからも精進を続けて、立派な遊女になるのでありんすよ」
まずは腕試しとばかりに、悪妖の眷属の内の一体から精気魔力を吸収したアルテナは、確かな手応えを感じていた。
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大勢の男達が行き交う、椿之遊廓の正面通り。
その|人熱《ひといき》れを避けるようにして、立ち並ぶ遊女屋の裏手に|蟠《わだかま》る影の暗がりに、息を潜めながらに身を隠している女の姿があった。
朱鷺色の髪と瞳を持つ、小柄な体躯の女だ。
全身を覆う、これも、やはり朱鷺色のストライドスーツを着用している。
|錫柄《すずつか》|鴇羽《ときは》は、熱光学迷彩外套である『逃げ水』を羽織ることで、遊廓内を徘徊している簒奪者の眷属達の監視の目から逃れていた。
(さて。敵地への潜入工作任務が初めてと言う訳ではありませんけれども――妖力だの呪詛だのは、私の√で発達している科学技術とは真逆の|理《ことわり》によるものですからね。
この迷彩も、どこまで効果を発揮しているものか)
鴇羽は、その身体の周囲に浮遊、待機させている小型無人機群――レギオンが観測した、自身の|生命情報《バイタルデータ》を確認した。
(血圧、心拍数、呼吸回数――その、どれにも異常な数値は確認できず。
客観的に分析して、普段と比較して異常な行動をとる様子も無い。
少なくとも現時点においては、呪詛の影響を受けずに済んでいるのだと判断しましょうか)
悪妖の呪詛が、どのようにして他者の認識に作用するのかは依然として不明なままだ。
それの影響を受けているであろう男達の様子を観察するに、その原理は催眠術の一種だろうか。
鴇羽は、常に自分の行動を|観測《モニタリング》する『眼』を別途に用意する事で、呪詛による影響を客観的に判断できる様に工夫を凝らしていた。
(一先ずは椿太夫の位置を捕捉する事が最優先です。
申し訳ありませんけれども、現時点では操られている方々については放置の一択ですね。
下手に騒ぎを起こして眷属達の注意を集めるような真似は避けたいですし――)
鴇羽は再度、自身を戒めるように呼吸を整えた。
現在、身を潜めている場所が遊女屋の裏手という事もあり、耳を澄ませば、男と女が睦み合う時の艶めかしい声が漏れ聞こえてくる。
(正直。私が呪詛の影響を受けてしまったら、如何なってしまうのかの想像がついてしまうのですよね。
そちらの方面の事が嫌いな訳ではないですし――)
最近、肉体面の欲求に関しては、それを積極的に発散する様な出逢いが少なかった事も多少の影響をしているのだろう。
閨から漏れ聞こえてくる甘い声に、どうしても想像力を働かせてしまう。
(何処も彼処も御盛んな事ですね。
このような声ばかりを耳にしていると――流石に悶々としてきます。
一刻でも早く、椿太夫の居場所を突きとめないと)
鴇羽は、これでは駄目だと自身に活を入れ直して、物音を立てる事の無い様に細心の注意を払いながら、探索活動を再開した。
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(さて。上手く事が運ぶだろうか)
御巫朔夜は、椿之遊廓に立ち並ぶ遊女屋の物陰に潜みながら、秘密裏に行動していた。
通りに満ちている、大勢の客や遊女達による華やかな賑わいからは、距離を置いている。
椿太夫は、この遊廓の支配者にして、|奸智《かんち》に富む、傾国の悪妖であるとの噂だ。それが往年の力を取り戻したとあっては、|碌《ろく》な事態にならないであろう事は、想像に難くない。敵うのであれば、今の内に倒してしまいたい|処《ところ》ではある。
(しかし、何処に潜んでいるのやら――これも認識を阻害するという呪詛の影響か。一刻も早く椿太夫の楼閣を発見しなくてはならない言うのに、それらしい建物を、まるで発見する事が出来ないとはな)
だからと言って、客や遊女達に、|迂闊《うかつ》な接触をする事も出来ない。必然的に情報を獲得する手段としては、こうして物陰に身を潜めながらにして聞き耳を|攲《そばだ》てると言う、|迂遠《うえん》な方法に頼らざるを得なくなっている。
それでも無為に時間を浪費する事だけは避けたいという状況だ。
朔夜の過去の記憶は、繰り返された肉体改造手術の影響によるものか、非常に|曖昧《あいまい》|模糊《もこ》としている。それでも自分と言う精神の有り様が、他者からの干渉により、望まぬ方向へと変容させられてしまう事だけは避けたかった。
遊廓という場所柄、男女が睦み合う声や音については、そうと意識せずとも耳に響いてくる。
朔夜としては、そうした行為については、然程の親しみがあると言う訳ではない。それを求めて止まない人種と言うものが、一定数、存在しているのだと言う事については理解している。状況次第では、それを利用できる場合もあるだろう。その気になれば、自分の容姿や身体。行為を強力な武器として活用できる状況が訪れる時もあるかも知れない。
(だとしてもだ。私は、私の意志に基づいて、それを選択する。理性を|喪失《うし》ない、欲望に溺れて、妓女として客の相手をさせられるだ等と――断固として拒絶する)
朔夜は鋼鉄にも匹敵する矜持と克己心をもって、遊廓中に蔓延する悪妖の呪詛による精神汚染の影響を退けていた。
やがて、その堅実な諜報活動が実を結んだのか、朔夜の聴覚が、遊女達の会話の中から有益な情報を拾い上げる。
「太夫が、新たなる星を詠み解いた様でありんすえ」
「聞きんした。この椿之遊廓に、|野暮天《やぼてん》な御客人が踏み込むとの事でありんしょう?」
「それが何者であれ、太夫の|御座《おわ》す店を見つける事が出来るとは思いんせんけれどもね」
「太夫の店に上がる事を許されているのは『椿之手形』を持つ御客人だけでありんすよ。それを持たない|野暮天《やぼてん》は、ただ、ぐるうりと遊廓の中で迷い続けるのみ。後は放って置くだけで、太夫の香りに冒されて、わっちらの|同胞《はらから》と成り果てるだけでありんす」
(『椿之手形』か。確か先頃、|身形《みなり》の良い男が、遊女の一人に、何やら手形らしき物を提示している|処《ところ》を目撃したが――詳しく調べてみる価値はある様だな)
朔夜は、物陰に潜んでいる自身の気配に気付いた様子も無い|儘《まま》に会話を続けている遊女達の傍を離れると、それらしい手形を所持している男の事を捜索し始めた。
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果たして此処は何処なのだろうか。
目覚めた女は、|敬虔《けいけん》なる修道女の装いである、袖のついたトゥニカを着て、頭にはウィンプルを被っていた。
女の、豊満な乳房によって膨らんでいる修道服の胸元には、遥かなる|古《いにしえ》の時代に君臨した|真竜《トゥルー・ドラゴン》を、神として|奉《たてまつ》る宗派の|聖印《ホーリー・シンボル》が揺れている。
その装いを見れば、自身の身分が修道女であろう事については、おおよその察しがつくのだが、|如何《いかん》せん脳裏に霞がかかっていて、判然としない事が多すぎる。
そもそも自分は何者であり、どうして、この様な――まるで見覚えの無い場所で意識を|喪失《うしな》っていたのだろうか。
女が、不思議そうに首を傾げていると、華やかな柄の着物を纏っている、妖艶な女が声を掛けてきた。
「何を|呆《ほう》けているでありんすか。|早《はよ》う|菖蒲《しょうぶ》之間に行きなんし。今宵も|見世《みせ》は|満員《まんいん》|御礼《おんれい》。客人を何時までも待たせるものではありんせんよ。太夫が過日の力を取り戻す為には――活きの良い雄の精気は幾らあっても足りんせんのですから」
目覚めたばかりの女は、その言葉に得心がいった。
太夫の為に精気を集める――それこそが自分の成すべき事であるのだと。
相も変わらずに自分の事ばかりは、どれだけ過去の記憶を|浚《さら》った|処《ところ》で判然としないが。
これまでにも幾人もの男と肌を重ねて、それを悦ばせてきた記憶だけは鮮明に思い返す事が出来た。
ふと、自分の唇を指先でなぞってみる。
女の唇は亀裂の様な笑みの形に吊り上がっていた。
「まあ。私は、どうやら淫らな女であった様子ですね。此処に堕ちる前から――期待に、濡らしてしまっていたのではありませんか」
思い出せない過去の自分の姿を嘲笑う姿は、その|淫猥《いんわい》さ|故《ゆえ》に、いっそ神々しくさえあった。
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|菖蒲《しょうぶ》之間での宴は盛況だった。
女が身に修めていた礼儀作法や、歌唱の技芸は、客の男を魅了するには充分な代物だった。
そして、何よりも――受け入れた雄の生殖器を悦ばせる為だけにあるような、至高の名器こそが、男を|虜《とりこ》にした。
知性さえ|喪失《な》くして、ただ一心不乱に腰を動かすだけの獣と化した男の痴態を、女は慈しむ様な眼差しで見詰めていた。
肉孔の根本まで勢い良く突き入れては、引き抜けてしまう寸前まで腰を引く。
パン、パンと、肉同士が衝突する乾いた音に、グチュリ、グチュリと、粘性のある水音が入り混じる。
男は、既に女の|膣内《なか》に三度も子種を放出していた。
だと言うのに、まるで萎える気配がない。
一突き毎に新たなる欲望が身体の奥底から湧きあがってきて、それが無尽蔵の精力へと転じている様だ。
「ふふ。|如何《いかが》で御座いますか。私の『千の円環』――殿方を法悦に導く名器の心地は。どうやら、普段の私は――無意識にコレを使っていた様で御座いますね。だからなのでしょう。私と一度、肌を重ねた後で――二度、三度と、関係を求めてくる方が後を絶たないのは」
女は、過去の自分の所業を顧みながら、男の逸物を絶妙な加減で絞めつけている肉孔に、僅かな力を篭めた。
変幻自在。それだけで複雑に形状を変えた蜜壺は、男を四度目の吐精へと導いた。
男の表情が、|陰嚢《いんのう》から直接、搾り取られているかの|如《ごと》き法悦によって、だらしなく崩れる。
「嗚呼、美味しい――この極上の精気、太夫に献上するのは勿体無いですね。やはり、私は|膣内《なか》に|吐精《だ》されるのが|殊《こと》の|他《ほか》に好きな様です。それなのに何故――普段の私は、殿方の求めを、駄目ですとか、いけませんとか――形だけでも拒絶しようとするのでしょうね? どうせ最後には――自分から、はしたなく|強請《ねだ》ってしまうのが常であると言うのに」
肉の交わりに溺れる獣へと成り果てた男には、女の言葉の意味が|理解《わか》らない。
雄叫びの様な声をあげながら、五度目の放出を迎えた。
流石に精も根も尽き果てて、意識を手放す男の身体を、女の豊満な裸体による抱擁が受け止める。
「あら。流石に搾り取り過ぎてしまいましたか――申し訳御座いませんね。ゆっくりと御休みくださいませ。私には、まだ果たさなければならない使命が残っておりますので」
男の逸物が引き抜かれた、女の秘部からは、濃厚な白濁液が、どろりと滴り落ちていた。
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「……あら? 此処は……? 私は一体、何をしていたのでしょうか……?」
修道服を纏う女――マジィ・メッサ・デカメロンは、現状を把握しようとして、周囲を見回した。
甘い椿の香りに包まれている、華やかなりし|傾城町《けいせいまち》。通りを行き交う男たちは、皆一様に虚ろな眼をしながらも、履物の前の布地を欲望の形に盛り上がらせている。
「此処は、どうやら、悪妖が支配すると言う椿之遊廓の様ですね。何と言う――妖気に塗れた土地なのでしょうか。気を確かに持ちませんと、この香りに取り込まれてしまいそうです。|真竜《トゥルー・ドラゴン》様。|敬虔《けいけん》なりし信徒に、どうか、不浄を払う加護を御与えください」
マジィは胸元に揺れる|聖印《ホーリー・シンボル》を強く握り締めながら、祈りの言葉を唱えると、迷い無く足を踏み出した。
一片の曇りも無き信仰心は、悪妖の呪詛を退ける奇跡を地上に顕現させて、修道女の肉体を守護している。
「私に人心を惑わせる妖術の|類《たぐい》は効きませんよ。この心に一切の|邪《よこしま》なる思いが存在していない以上――私の信仰が揺らぐ事など有り得ないのですから」
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急に|平衡《へいこう》感覚が|喪失《うし》なわれた。
視界が、ぐらりと傾いたかと思えば、|真直《まっす》ぐに歩く事も|儘《まま》ならずに、手近な壁へと手をついてしまう。
思考が一意に定まらない。
鼻腔を刺す濃密な椿の香りは、既に全身へと絡みついてくる様な粘度を伴っていた。
「おや。いったい、どうしたでありんすか?」
先導する|妓女《ぎじょ》の口許は、嘲笑の形に歪んでいる。
アーシャ・ヴァリアントは、その問い掛けに応える事も無く――遂には、その場へと崩れ落ちた。
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此処は何処なのだろう。
アーシャは目覚めると、まずは|胡乱《うろん》な思考に活をいれる様にして立ち上がった。
次いで自分の恰好を確認する。
華やかな柄の着物。綺麗に結い上げられた髪。|細緻《さいち》な飾りが施されている|簪《かんざし》には、恐らくは何らかの妖術が籠められているのだろう。
(……私の|竜斬爪《ぶき》や|竜皮衣《ドレス》は何処に……いつ着替えたのかしら……?)
不可解ではあるが、その疑問も一瞬の後には自己解決する。
(此処は……椿之遊廓よね。ええ。|それは分かるわ《・・・・・・・》。後は……そう。|働かないと《・・・・・》。私は|妓女なのだから《・・・・・・・》。|椿太夫の為に《・・・・・・》|精気を集めないと《・・・・・・・・》。)
自分の仕事の事を思えば、現在の|此《こ》の格好も、疑問を生じさせるものではないと思えた。
アーシャ・ヴァリアントは椿之遊廓で客をとる|妓女《ぎじょ》の一人なのだ。
それならば、無骨や得物や、飾り気の無い戦装束を纏った状態で、客の前に姿を見せる方が、遥かに|野暮《やぼ》と言うものだろう。
アーシャは、ふと、隣で笑いを|堪《こら》えている様な仕草をしている、|妓女《ぎじょ》の一人に目を止めた。
「……何よ? 何か面白い事でもあったの?」
「ありんしたよ。何事も力任せに解決できると考えている|猪武者《いのししむしゃ》を、手玉に取ると言うのは、実に胸がすく思いがいたしんす」
「……良く分からないけれど、あんまり良い趣味とは言えないわね。ま。あたしは客の|処《ところ》に行ってくるわ。月待之間よね?」
「あい。あの御客人は精気は漲っていんすが、なかなかに激しく求めてくる御仁でありんすから。せいぜい、壊されない様に気をつけるでありんすよ」
「大丈夫よ。アタシは――」
アーシャは、その続きを口にしようとした|処《ところ》で、何か大切な事を|忘却《わす》れているのでは無いかと言う、漠然とした思いに囚われた。
しかし幾ら過去の記憶を|浚《さら》ってみた処で、その様に感じてしまった理由を発見する事は出来ない。
ただ――。
『――御|義姉《ねえ》ちゃん』
自分と同じ色の瞳を持つ、金色の髪の少女の笑顔が、一瞬だけ脳裏を|過《よぎ》り去った。
「どうかしたで、ありんすか?」
「――大丈夫よ。ちょっと|眩暈《めまい》がしただけ。客の相手をしてくるわ。アタシは――男を悦ばせる為に居るんだから」
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「ああっ!❤ あっ、激しっ!❤ もっと、もっと、もっと突いてぇっ!❤ あっ、あっ、あっ、あぁっ!❤ イく、イく、またイッちゃううぅっ!❤ あ、あぁぁぁぁぁっーーーーっ!?❤」
月待之間。|此《こ》の|妓楼《ぎろう》に数多く用意されている部屋の中でも、特別に濃い椿の香が焚かれている部屋である。
アーシャの嬌声は、その部屋を仕切る、薄い障子紙を貫いて、廊下にまで漏れ聞こえてきていた。
揺らめく|行燈《あんどん》の灯に照らされて、長く伸びた女の影は、獣の様に四つん這いの姿勢をとっている。
客の男は、突き出された尻に向かって、腰を前後に激しく動かしては、煮え滾る欲望をぶつけていた。
部屋の前を通りかかった|妓女《ぎじょ》が、アーシャの、肉欲のままに男を求める声を耳にして、意地悪く微笑む。
「椿之遊廓での仕事。随分と気にいってくれた様でありんすな。あんな無粋な|得物《ぶき》で、わっちの玉の肌に傷をつけてくれた礼でありんす。遠慮はいりんせん。そのまま、男に抱かれる快楽に溺れ続けて――淫らな肉の人形へと成り果てなんし」
●
|妓楼《ぎろう》とは、男と女が、そういう事をする為の場所だ。
だからこそ、|殊更《ことさら》に耳を澄ませてみる必要すらも無く、|其処《そこ》|彼処《かしこ》から男女の嬌声が漏れ聞こえてくる。
(あうぅ……|何処《どこ》も激しいって言うか……もう少し気を|遣《つか》ったりしないのかな……)
|神咲《しんざき》|七十《なと》は、その行為の激しさを|否《いや》が|応《おう》でも想像させる、あられもない声を耳にしては赤面した。
七十の|初心《うぶ》な反応を、その周囲にいる|妓女《ぎじょ》たちが|揶揄《からか》う様な笑みを浮かべながらに見詰めている。
(どうしよう……やっぱり私には、あんな|行為《こと》をするのは無理かも……)
七十は、そもそもが極度に人見知りする|質《たち》なのだ。
幾ら|妓女《ぎじょ》としての務めとは言え、初対面の男と、そうした行為に及ぶ事には抵抗がある。
やはり自分には無理だと訴えようとするのだが――その言葉さえも、咄嗟には出て来なかった。
愛用のメッセージボード――七十は初対面の相手とは筆談により意志疎通を図ろうとする癖がある――を探すも、それは妓女の内の一人の手の中にあった。
「困りんしたねぇ。こんなものに頼っている様では、何時までたっても|見世《みせ》で働く事は出来んせん。御客の旦那様がたも興醒めでありんす。これは|躾《しつけ》が必要でありんすな」
七十の眼前で|妓女《ぎじょ》の一人が着物の帯を解いた。
その股間には男の生殖器が、逞しく反り返っている。
(えっ……女の人なのに、どうして男の人のモノが……? それに……凄く大きい……いや、それよりも、どうして、こんな大勢の前で着物を脱いで……?)
七十は、いきなりの事態に遭遇した事で混乱して、思わず、|援《たす》けを求める様に視線を彷徨わせてしまう。
しかし、その周囲を取り巻く妓女たちは、|斯様《かよう》な七十の様子を、くすくすと笑いながらに見詰めているばかり。
肉棒を勃起させている|妓女《ぎじょ》は、恥じらう素振りすらも無く、逸物を、七十の口許へと突きつけた。
「わっちの魔羅をしゃぶりなんし。これは|躾《しつけ》でありんすえ。わっちらが|妓女《ぎじょ》としての心構えを教えてあげんすよ」
(え……? これをしゃぶれって……こんな大勢の見ている前で……? そんな、無理……)
「――はよう、しなんし。それとも折檻の方が御望みでありんすか?」
七十は、苛立ちを交え始めた|妓女《ぎじょ》の言葉に急かされて、仕方なしに|魔羅《まら》を握り締めた。
そのまま、恐る恐るとした動きではあるが、逸物を口腔内に頬張ると、懸命に舌を遣った奉仕を行なう。
「んっ❤ なかなか気持ち良いでありんすよ❤ もっと根元まで、音を立てる様にして、しゃぶりなんし❤」
|妓女《ぎじょ》たちの好機の視線に晒されながら、逞しい|魔羅《まら》に奉仕をしていると、頭の奥が痺れる様な感覚に襲われる。
鼻腔を|擽《くすぐ》る椿の香りが、正常な思考を麻痺させると同時に、身体の奥底から燃え盛る様な衝動が湧き上がってくる。
何時しか、百戦錬磨の|妓女《ぎじょ》の表情を快感で|蕩《とろ》かせてしまう程に、夢中になって|魔羅《まら》に奉仕を行なっていた。
(あ、うぅ……❤ 見られているのに……駄目……❤ 舌の動きが、止まらない……❤ アソコが、ムズムズして……うぅ、もう、下着まで……ぐっしょりと……❤)
粘ついた淫猥な水音を立てながら、男根への奉仕は続けられた。
「あぁんっ、うぅっ……!❤」
七十の身体に、何者かの手が伸びてきて、乱暴に下着を剥ぎ取っていく。
濡れて、蜜を垂らしてしまっている秘部を衆目に晒されても、口一杯に頬張った肉棒を吐き出す事はしなかった。
気がつけば、|妓女《ぎじょ》たちの中から、また新たな一人が進み出てきている。
その女も、股間に逞しい逸物を生やしていた。
七十の秘部に、亀頭が押し当てられる。
「はぁ、んっ……❤ まだ、わっちが|躾《しつけ》ている途中でありんすえ……❤」
「ふん❤ 愉しんでいる様にしか見えんせんよ❤ わっちも、何やら辛抱|堪《たま》らなくなってきたでありんすから❤ ほら、さっさと股を開きなんし❤ わっちのも気持ち良くして貰いんすよ❤」
「ん、んんんんーーーーっ!?❤」
七十の潤みきった雌穴は、屹立した肉棒を、その根本まで容易く咥え込むに至った。
全身を激しい電流の様な快感が走り抜けたかと思うと、無意識にか、舌の動きが、ますます淫猥なものになってしまう。
|妓女《ぎじょ》の腰遣いに応えるかの様に、自らの意志で、腰を卑猥に動かしていた。
「くぅぅ……❤ |女陰《ほと》の奥が、いやらしく締まりんす……❤ これは立派な|妓女《ぎじょ》になれんすよ……!❤ あっ、あっ!❤」
「はぁ、はぁ……❤ わっちも……そろそろ限界でありんすっ!❤ 出しすんよ……❤ そのまま……口の中に種を注がれる悦びを、教え込んであげんす……!❤」
七十の口内と膣内とで、|妓女《ぎじょ》の男根が同時に跳ねた。
精汁が放出されると同時に、それを受け止めた者も、絶頂へと押し上げられる。
「はっ、あぁっ、あぁぁぁぁーーーーんっっっっ!!❤ イ、イクゥッ、イッちゃ、うぅぅぅぅっ…………!!❤」
七十は期せずして、|妓女《ぎじょ》としての|天稟《てんぴん》を発揮した。
そして|躾《しつけ》と教育の名目のもと、大勢の|妓女《ぎじょ》たちの欲望の捌け口として、その身体を、白濁液と淫蜜とに染め上げられてしまったのである。
●
(遊廓で働いてこい――|宿敵《ごしゅじんさま》の|命令《おねがい》で来てみたのだけれども、これは。なるほどね。つまりは此処で少しは|訓練《ちょうきょう》されてこいと言うことかな❤)
時任桃花は、その豊満な肢体を、周囲に誇示するかの|如《ごと》き卑猥な衣装を着用していた。
普段は|凛然《りんぜん》とした立ち居振る舞いで、周囲からは物語の中の王子様然とした印象を持たれている桃花だが、現在の、全身から淫気を立ち昇らせている様な痴態を前にしては、そうした平時の姿を想起する事は困難を極めた。
椿之遊廓の正門から伸びる大通りの左右には何軒もの遊女屋が立ち並び、その店先には幾人もの華やかな|妓女《ぎじょ》たちが競い合う様にして、行き交う客たちの興味を惹こうとしている。
それでも雄の劣情を煽る様な桃花の姿に、男たちの|下卑《げび》た視線は揃って釘づけとなっていた。
(嗚呼❤ 大勢の男の人にジロジロと見られちゃってる❤ こんなにも恥ずかしい恰好をしているのを❤ うう❤ ドキドキが止まらない❤ 身体が疼いて――オマ〇コ、もうトロトロになっちゃってるよ❤ それどころか股間が、もう御漏らしでもしたみたいに濡れて――布地が、ぴったりと貼りついて❤ 絶対にバレてる――僕のオマ〇コがチ〇ポを|挿入《い》れる準備が出来てしまっている事、此処に居る男の人、全員にバレちゃってる❤)
桃花としては正直、その場に居る男たちの誰を相手に股を開いたとしても良かったのだが――結局は|如何《いか》にもな|助平《すけべい》心を剥きだしにしている、肥満体の中年男の相手を務める事になった。
これは最初に声を掛けてくれたというだけの理由である。
そして、桃花は、遊女屋や出合茶屋に入店する事も無く、ただ通りの裏手に入ったばかりの所で裸に剥かれて、発情しきった肉体を、巧みな愛撫によって開花させられてしまった。
「ん、おぉっ!❤ す、凄いぃっ!❤ ぼ、僕のオマ〇コが、グチュグチュってぇっ、凄くエッチな音をしちゃってるぅぅっ!❤ ん、おぉぉぉっ!❤」
中年男の指は、桃花の弱点である陥没乳首や肉芽を丹念に刺激して、既に女の悦びを幾度にも渡って教え込まれた事のある肉体を屈服させていく。
桃花の秘部は、淫蜜を湧き水の様に|滾々《こんこん》と溢れさせていて、逞しく屹立した肉棒を挿入するのにも支障は無かった。
中年男の|魔羅《まら》は、その先端が臍にまで届く程の巨根であり、深く落とした腰による一突きで、桃花の身体を官能の渦へと叩き落す。
子宮の入口を亀頭で押し広げて、その奥に、濃厚な種を注ぎ込もうとしている男の腰遣いに、桃花は人目も|憚《はばか》らずに嬌声をあげた。
「ほっ、おぉぉっ!❤ おおおおっ!❤ このチ〇ポ、すっごいぃぃぃっ❤ 僕のオマ〇コの奥まで届くぅっ!♥ 御腹に、ズンズンと響いてるよぉっ❤ あ、あぁぁっ!❤ イクッ、イクッ!❤ イッちゃううぅっ!❤ また、またイッちゃうよぉぉっ!❤ あぁっ、あぁぁぁっ!❤ さっきから、ずっとっ、イイクのが止まんないぃぃぃぃっ!❤」
桃花は、男との結合部から、法悦の証である蜜を撒き散らしながら、想像を絶する快感に酔い痴れた。
想像を絶する快楽に|頭蓋《ずがい》の内側が|蕩《とろ》けて、思考に桃色の霞がかかっていく。
(またイカされちゃった❤ 僕のエッチな御潮が――また噴く、噴いちゃうっ!❤ この男の人、本当に凄いかも――馴れてるどころじゃないよ❤ 只者じゃない❤ 女を雌に堕とす方法を心得ているみたい❤ こんな、熟練の業で、じっくりと躾けられたら――僕の身体、ますますエッチに仕上がっちゃうよっ❤ あっ、あっ、あっ!❤ チ〇ポが、僕の中で膨らんでぇっ❤ |吐精《だ》されちゃうっ❤ 僕の子宮に、おじさんのオチ〇ポミルクが、たっぷりと注がれちゃうよぉっ❤)
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁつっ……!❤ き、気持ち、良いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!❤ また、いくぅっ!❤ いっちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ……!!❤」
桃花は、男の肉棒から放出された子種の熱さと濃厚さに胎の奥を|灼《や》かれながら、遊廓に満ちる悪妖の呪詛が、自分の身体を淫らに塗り替えていくのを感じとっていた。
●
睦み合う男と女の甘い声が、|妓楼《ぎろう》の|其処《そこ》|彼処《かしこ》から漏れ聞こえてくる。
ミネタニ・ケイは、虚ろな眼をしながら通りを歩いている男たちの中に、明らかに、精気の枯れ果てた者が幾人か混じっているのに気がついていた。
(あっちと、そっちと――あそこの人もかな。気持ち良さそうな顔をしているけれども。随分と激しく|搾《しぼ》り取られたみたいだね。|殆《ほとん》ど生ける|屍《しかばね》じゃあないか)
これが悪妖と、その眷属たちに精気を奪われると言う事なのだろう。
夜が更けていくに連れて、客の男たちが果てるにつれて、遊廓を取り巻く呪詛の濃度が高まっていく。
(時間を掛ければ、掛けるだけ、相手が精気を蓄えて強大になっていく――速攻で、片をつけたい|処《ところ》ではあるのだけれども。肝心の椿太夫の|見世《みせ》の位置は未だに判明せずと)
ケイも先頃から隠されている|見世《みせ》の探索に注力しているのだが、|如何《いかん》せん、荒事の方を得手としている身だ。
苦手な分野に注力するよりも、得意な分野で力を発揮してこそ、共に潜入した仲間たちの行動の|援《たす》けになるのではないかと考えた。
(要はさ。悪妖の眷属たちに、精気を渡さない様にすればいいんだよね)
ケイは、その様に考えると――通りを歩いている男の内の一人に、目を止めた。
少なくとも視認できる範囲において、その男以上に精気を|漲《みなぎ》らせている者は他にいない。
ケイは、くすりと微笑んだ。
周囲の視線を惹きつけて止む事は無い豊満すぎる乳房を、|殊更《ことさら》に強調する姿勢をとる。
男の歩みを遮ると、甘く媚びを売る様な声音で誘いをかけた。
「ねえ。ボクと遊ばない? 御代は構わないよ――君、とっても良い感じだしね」
美形の少女から声を掛けられて、しかも、遊ぶのに金銭も必要ないのだと言う。
男は望外の幸運に一も二も無く飛びついた。
そして、二人、連れだって路地裏へと姿を消していく。
間も無くして、暗がりから、男と女の甘い声が響いてきた。
「ふふ――気持ち良い?❤ もっと、もっと、ボクのオッパイで感じて欲しいな❤」
ケイの|撓《たわ》わな二つの果実に挟まれて、男の|熱《いき》り立つ肉槍は|蕩《とろ》ける様な心地を味わっている。
|魔羅《まら》の先端から根本までを濡らす白い液体は、男が分泌したものでは無い。
ケイの乳房から分泌された母乳である。
男は、母乳に塗れて滑りが良くなった肉槍を、乳房の谷間で摩擦される快感と興奮に、我慢し切れずに吐精した。
ケイは、濃厚な白濁液を開いた口の中で受け止めながら、そこに込められた情念を自らの糧に変換していく。
「あはっ❤ 一杯、出たね。でも、まだガチガチに勃起してる――ねえ。今度はボクのオマ〇コの中に、一杯、濃いのを注いで欲しいな❤」
ケイは、路地裏の壁に手を突くと、乳房に劣らずに豊満な尻を男の方へと突き出した。
淫猥に腰をくねらせれば、誘う様に尻肉が揺れる。
男は|堪《たま》らずに、ケイの腰を掴むと、濡れそぼる秘貝の中心に、肉槍の先端を押し当てた。
腰を落として、前方へと突き出し、温かく卑猥な感触の|膣内《なか》に押し入ってくる。
「あんっ❤ 凄い――逞しいよっ❤ ん、ボクの|膣内《なか》でオチ〇ポがピクピク震えて、膨らんで――頑張って❤ まだ出しちゃ駄目だよ❤ あ、ああーんっ!❤」
サキュバスであるケイの蜜壺は極上の名器だ。
吸いついて溶けあう様な締めつけ。粘度の強い、たっぷりの潤滑油。男を、|忽《たちま》ちの内に頂上へと押し上げる。
男は、数回ほど腰を振っただけでも、心の奥底からの悦びの声を上げた。
先のものよりも遥かに濃く、量も多い、精汁を放出する。
ケイも、また甘い官能の吐息を漏らして、その肢体を|戦慄《わなな》かせた。
|胎《はら》の奥にまで届く雄の熱さを、余す|処《ところ》なく堪能する。
(まずは一人と。後、四、五人くらいは活きの良い人がいるかな。その次は――うん。古妖の眷属の遊女からも精気を頂いちゃおうか。敵は弱くなり、ボクは強くなる。それに気持ち良い――良い事尽くめだね)
ケイは、満足した様子の男を、路地裏に置き去りとしたままで、次の相手を求めて歩き出した。
●
|何処《どこ》も|彼処《かしこ》も、|噎《む》せ返る様な、男と女の情念に満ちている。
アリス・アストレアハートは、椿之遊廓の正面通りを歩きながら、大気に|凝《こご》る悪妖の呪詛に|辟易《へきえき》していた。
傍目には童女としか映らない背格好のアリスが、遊廓の内部を歩いていても見咎められる事の無い理由は、時折、擦れ違う、同じ位の背格好をした遊女達が原因だろう。
他者の欲望を|弄《もてあそ》ぶ悪妖が経営する花街では、そうした特殊な趣味を持つ客の相手を務める|妓女《ぎじょ》も存在しているらしかった。
自分の娘はおろか孫ほどにも外見上の年齢が離れている|妓女《ぎじょ》と連れ立って歩いている|老爺《ろうや》もいる。
幼いと言う形容をしても何らの不思議も無い、あの娘が、これから男を受け入れては快楽に喘ぐのだろうか。
その可憐な花の蕾を思わせる唇で、|熱《いき》り立つ肉棒に丁寧な奉仕を行なうのだろうか。
(何か……変な気分に……なってきちゃったかも……❤)
アリスが、不意に沸き起こった悶々とした衝動を扱いかねていると。
「アリス……此処は私に任せて。それ以上、変な事になっちゃわない内に此の場所から抜けないと……」
傍らを歩む、アリスの鏡像が実体化したのかと|見紛《みまご》う程に近似した容姿を持つ童女――護霊である『何者でもないメアリーアン』が、静かに耳打ちをしてきた。
「ふぇっ……!? 護霊ちゃん……!?」
アリスは『何者でもないメアリーアン』の言葉に、自分が何時の間にやら悪妖の呪詛の影響下に置かれようとしていたのだと認識する。
「アリスから、すっごくエッチな匂いとか、気配とかを感じちゃったからね……❤ 私も、ちょっと|拙《まず》いかも……❤ だから……アリスは先にいって……❤ 私が、その間は、御兄さんや御姉さん達を抑えつけておくからさ……❤」
「でも、それじゃあ護霊ちゃんが……!」
「私なら大丈夫だって……❤ それに、このままだと二人まとめて囚われちゃうし、そっちの方が駄目でしょ……❤ それに……私の方で少しでも発散しておけば、アリスも多少はマシになるかもだよ……❤」
アリスは『何者でもないメアリーアン』の言葉に懊悩する様子を隠せないでいる。
護霊の童女は、|星乙女《アストレア》の家名を背負う幼姫の決断を促す様に、再び耳元に内緒話を囁いた。
「こんな場所で|初体験《ロスト・ヴァージン》とか、アリスだって嫌でしょ……❤ それに、そろそろ我慢の限界……エッチしたいから、アリスには先に行ってって御願いしてるの……❤ ほら。私……昨日は、アリスみたいに、ひとりエッチはしていないからさ……❤」
『何者でもないメアリーアン』からの予期せぬ言葉に、アリスの表情に驚愕が浮かび、同時に、その頬が羞恥の朱色に染まっていく。
「ちょっ、ちょっと護霊ちゃん……!❤」
「はい……❤ と言う訳で、さっさと先に進む事……❤ 最近、ひとりエッチの回数が増えてばっかりの、いやらしくて、いけない女の子になっちゃったアリスちゃんには、此処の呪詛は致命的だよ……❤」
「うぅ……❤」
アリスは言い返す事も出来ないままに、後ろ髪を引かれる思いで、その背に負う『無垢なる翼』を広げた。
まさしく宗教画に描かれた天使そのものの光輝を纏いながら上空へと舞い上がる。
「護霊ちゃん……御免なさい……!」
アリスは謝罪の言葉だけを後に残して、椿之遊廓の|宙《そら》を貫く一条の流星を化した。
その光を、静かに見送った『何者でもないメアリーアン』は。
「頑張ってね……アリス……❤ さてと、それじゃあ……❤」
幼い容姿に似つかわしくない、|淫蕩《いんとう》なる微笑みを、その口許に刻みつけた。
視線が交錯した、手近な男へと興味を向ける。
「ふふ❤ 御兄さん……❤ さっきから、ずっと、私とアリスの事を見ていたよね……?❤ 誤魔化しても駄目だよ……❤ もう、そんなにもギンギンにオチン〇ンを勃起させちゃってるんだから……❤ 説得力なんて無いよ……❤ アリスは、もう先に行っちゃったけれども……私だけでも良かったら……❤ 今から……一緒に気持ち良くなっちゃう……?❤」
やがて遊女屋の一室からは、客と|妓女《ぎじょ》とが互いに奏で合う、淫らな音色が響いてきた。
●
通りの両脇に立ち並ぶ幾つもの茶屋。着飾った美しい遊女たちが競い合う様にして客を引いている。
町の至る|処《ところ》には花が飾られていて、耳に心地の良い音楽が流れている。
脳髄を痺れさせる様な甘い花の香りが|其処《そこ》|彼処《かしこ》に漂っていた。その香りに誘われる虫たちの様に、虚ろな眼をした大勢の男たちが、夢遊病者の様な足取りで通りを行き交っている。
煌びやかではあるが、どこか|妖《あや》しく、|爛《ただ》れた雰囲気を|孕《はら》んだ夜の街。それに、どうしようも無く惹かれている自分がいる。
同時に、それが、支配者である古妖を討てば|終幕《おわり》を迎える刹那の夢であるとも理解している。
|氷原《ひのはら》|明日里《あすり》は、だからこそ、この|椿之遊廓《ゆめ》の虜囚となった者たちを、速やかに解放しなくてはならないのだと、決意を新たにした。
その|為《ため》にも、遊廓の支配者である椿太夫の隠れ潜む|妓楼《ぎろう》を、一刻も早く見つけ出さなくてはならない。
「あぁぁっ!❤ は、激しいでありんすぅっ!❤ わっちは、わっちはぁ……もう気を遣ってしまいんすぅぅぅっ!❤」
「んんっ!❤ 凄い締めつけ……❤ 僕も、このまま御姉さんの|膣内《なか》に|吐精《だ》しますね……!❤」
だから、この行為は情報蒐集の一環であるのだ――決して欲望に流されるが|儘《まま》の行為では無い。
明日里は、|褥《しとね》に横たわり股を広げている遊女の秘部へと、逞しく怒張した己自身を埋没させていた。
男性ではあるが、可憐と形容するのが相応しい、繊細な容姿を持つ明日里である。
しかし、その股間に備えた雄の生殖器は、女を喘がせるのには充分なだけの太さと硬さを有していた。
場数も相当に踏んで来たのだろう。女体の扱いについても堂に入ったものであり、その腰使いは、抱いている女の官能に火をつけるものだった。
遊女は、|既《すで》に快楽の|虜《とりこ》となって、甘い声をあげながらも、粘膜の摩擦を求める様に、いやらしく腰をくねらせている。
「あ、あっ、あぁぁっ……!❤ 坊ちゃんっ、こんなっ、可愛らしい御顔をしているのにっ!❤ こっちは、もう立派な男でありんすぅっ!❤ あ、あぁぁっ……!❤ ま、また果てて、しまいんすよぉっ!❤」
明日里が腰を突き出す度に、肉と肉とがぶつかりあう、パンパンと言う小気味の良いの音が鳴り響いている。
蜜に塗れて、|妖《あや》しく、ヌラヌラと光る肉の竿が、その不規則な音に合わせて、遊女の肉穴に出入りしていた。
「はっ、はっ……❤ そろそろ、教えてくれませんか……❤ んん、し、締まるっ……!❤」
明日里の、熱を帯びた吐息と共に囁かれる問い掛けの言葉に、|遂《つい》には主人である古妖への義理立てを放棄してしまう。
「あひぃぃっ!❤ わ、わかりんしたっ!❤ お、教えんすっ!❤ 椿太夫の|見世《みせ》は、あ、あぁっ!❤ |仲《なか》の|町《ちょう》の突き当りっ!❤ そこに、手形を持つ者だけが見える、|見世《みせ》がありんすぅっ!❤ は、はやくぅ、わっちの|膣内《なか》に、坊ちゃんの、熱い種を注いでくんなましぃぃっ!❤」
「ありがとうございます……❤ それじゃあ、約束通り、いっぱい気持ち良くしてあげますねっ……❤ 我慢してきた分……一番、濃いのを……|膣奥《おく》で|吐精《だ》してあげますね……!❤ んん、トロトロのオマ〇コ、とっても気持ち良いです……!❤ 出る、出るっ……!❤ んんんんんんっ……!❤」
明日里の腰の動きが、吐精を求める様に激しくなり、それと同時に、遊女の嬌声も、甲高く甘い響きを帯びていく。
明日里は、遂には絶頂へと至ると、遊女の最奥に、濃厚な白濁液を放出した。
ドクリ、ドクリと、腰から下が溶け落ちていくかの様な快楽を感じる。
遊女も、また、多量の子種を|胎《はら》に浴びて絶頂を迎えた。
「あっ、あぁぁっー!❤ いくぅぅっ、いくっ、いくぅぅぅぅぅぅぅぅっ……!❤」
遊女の、汗と淫蜜に塗れた肢体が、ぶるぶると震えて、悲鳴にも似た嬌声があがる。
そのまま、法悦の表情を浮かべると、操り糸が切れた人形の様に、|褥《しとね》へと崩れ落ちた。
明日里が、硬く反り返った男根を、遊女の膣から引き抜くと、ひくつく雌穴の奥からは、その内部に収まりきらない程の多量の精汁が、ドロリと流れ出してくる。
「ふう……❤ ありがとうございました……❤ 本当は、もっと、もっと一緒に愉しみたい|処《ところ》ではあるのですけれども……僕には、まだ、成すべき事が有りますからね❤」
明日里は、激しい交合の余韻に浸っている遊女の頬に、軽やかな|接吻《くちづけ》を一つ送ると、身支度を整えてから、その部屋を後にした。
●
「ん……❤」
自分は何故、見知らぬ男に|接吻《くちづけ》を求められて、それに応じているのだろうか。
|篠宮《しのみや》|詩乃《しの》は、脳髄を痺れさせる様な甘い椿の香りに包まれながら、抵抗する為の力が、自分の身体から抜け落ちていくのを感じていた。
桜色の唇を強引に押し開いて、口腔内への侵入を試みている男の舌には、その寸前まで飲んでいた酒の風味が残されている。
一度、舌同士を絡め合う事を許してしまえば、男の求めは、ますます積極的かつ直接的なものになっていった。
不浄とは無縁な筈の退魔巫女の装束――その胸元の生地を内側から盛り上げている、豊かな乳房の膨らみが、男の掌に込められた力によって形を歪められた時。詩乃の身体の内側を一瞬にして走り抜けた刺激は、誤魔化し様も無い、性の快感だった。
(私は、どうしてしまったのでしょうか……❤ この様な真似をしている場合では無いと言うのに……❤)
詩乃は、一刻前までは確かに椿之遊廓に潜む悪妖の捜索を行っていた筈だ。
そこを遊廓を訪れていた客の一人に見初められた事により、酌の相手を求められた。
下手に断る事で、男の機嫌を損ねて、騒ぎを引き起こす様な真似をしたくは無かったので、酌だけであるのならばと相手をする事にしたのだ。
後にして思えば――その時から既に、自分は呪詛の影響下にあったのだろう。
(だって……この遊廓の其処彼処では、殿方と遊女とが……激しく睦み合っていて……❤ この耳には、甘く蕩ける様な声ばかりが届いてしまって……❤)
連れだって入った妓楼の個室で、見知らぬ男と二人きり。
最初こそは約束の通りに酌の相手をしているだけではあったが――それでも、時折、男が自身の肢体に注いでくる|邪《よこしま》な視線を意識していた。
だからだろう――男と|接吻《くちづけ》を交わして、身体を弄られても、抵抗しようと気にならなかったのは。
退魔の一族である篠宮家の一員としては、悪妖を討つ為に毅然とした行動をとらなくては、いけなかったのだ。
だと、言うのに――詩乃の裸体は、布団の上に横たえられていた。
その傍らに、丁寧に折り畳まれた状態で置かれている退魔装束は、それが男の手によって脱がされたものではなく、詩乃が自らの意志によって脱いだものであるという証左になっていた。
詩乃の前で、着物を脱いで裸になっている男の股間には、逞しく反り返っている雄の証がある。
亀頭から根本までもが唾液に濡れて、妖しく光っているのは、先程まで詩乃の口が、それに熱心な奉仕を行なっていた所為だろう。
既に一度、放出された白濁の欲望は一滴も残らずに、詩乃の胃の中へと納まっている。
(いけません……❤ 見知らぬ殿方の|魔羅《まら》を口で奉仕するばかりか……裸になって、この様に、ふしだらな真似を……これでは本当に|妓女《ぎじょ》の振る舞いではありませんか……❤ 断りませんと……❤ 私は退魔の巫女として、|斯様《かよう》に、浅ましい衝動に流されてしまう訳には……❤)
「あっ!♥ あっ!❤ あっ!❤ は、激し過ぎますっ!❤ もう二度も、私の|膣内《なか》に……!❤ だと言うのに、全然、萎える気配もっ!❤ あ、あぁっ!❤ 駄目っ、私も、また気を遣って、しまいそうに……!❤ は、あぁぁ、あぁぁぁぁぁんっ……!❤」
内心の言葉とは裏腹に。
男に組み伏せられるのではなく、その腰の上に跨る事で男を組み伏せて、激しくも淫らな動きで尻を振る。
長い黒髪を振り乱して、豊満な肢体を汗と淫蜜とで濡らしながら、男との行為によって|齎《もたら》される快感に溺れる。
退魔の巫女ではなく、一匹の雌へと堕した詩乃の痴態が、そこには存在していた。
●
|白銀《しろがね》|雅《みやび》は、悪妖の呪詛が|充溢《じゅういつ》する|傾城町《けいせいまち》の内部を、優雅な足取りで進んでいる。
その姿が、果たして客の目には、どの様に映るのか――指先から爪先まで一部の隙も無い|妓女《ぎじょ》としての立ち居振る舞いには、貫禄さえも感じさせた。
雅は三百の|齢《よわい》を越えて生き続けてきた銀毛の妖狐である。
自らも妓楼を経営しており、これまでにも多くの男たちの夜を妖しく彩ってきた。
雅にとっては遊廓という特殊な空間は、自宅の庭内も同然である。
通りを行き交う男たちの頬を流し目の一つで朱色に染め、静かに微笑みかけるだけでも恋に堕とす。
古妖の眷属である|妓女《ぎじょ》たちと擦れ違ったとしても、怪しまれるどころか、その年季の入った堂々とした姿に感嘆されるばかりである。
もっとも雅に言わせるのであれば――。
「まるで作法がなっていませんね。御客人を道具か何かとしか思っていないから、その性根の醜さが、所作の端々に出てしまうんですよ。遊廓としては、見てくれだけは御立派なものですけれども――仮にも太夫ともあろう者が、まさか、ここまで下の者への|躾《しつけ》を怠っているだなんて。この呪詛よりも、いちいち小言を我慢する方に忍耐を使いますね」
雅は幾人かの|妓女《ぎじょ》と擦れ違った後に、人知れず溜息を吐いた。
雅の|見世《みせ》の規模は|大見世《おおみせ》ほどでは無いにしろ、|余所《よそ》の|見世《みせ》から侮られる様な仕事はしていないと、誇りをもって断言できる。
「まあ。思う|処《ところ》は多々あれども、|余所《よそ》の|見世《みせ》の事ですからね。それに今宵限りで畳む事になる|見世《みせ》です。いちいち目くじらを立てるのも|野暮天《やぼてん》と言うものでしょう」
雅の、これまでにも数多くの男を見てきた審美眼は、一際、|身形《みなり》の良い客に狙いを定めた。
匂い立つ様な色香と、甘い言葉で|篭絡《ろうらく》して、瞬く間に、その懐へと入り込む。
「さあ。それでは参りましょうか。その椿が描かれている通行手形――貴方様は太夫の|見世《みせ》に入る事を許された、数少ない方の一人であると御見受けしましたよ」
隣に寄り添う雅の色香に酔い痴れて、今にも、はち切れんばかりに履物の股布の前を膨らませている男の姿を申し訳なさそうに見ながら、雅は歩みを進めていた。
(申し訳ありませんねえ。私としても御相手を務めて差し上げたい気持ちはあるのですけれども。時と場合は弁える|質《たち》なものですから。)
椿太夫の潜む|見世《みせ》の位置は、遊廓を包み込む、濃厚な椿の香りによって隠されている。
仮に侵入者の認識を阻害する呪詛の影響を免れる事が出来たとしても、その正確な位置を特定する事は困難を極めた。
(まあ。この遊廓の造りから、おおよその推量は出来ていたのですけれどもね。隣を歩く男の足取りにも迷いはありませんし――やっぱり、この通りの先でしたか。私の目には、まだ見えない――いいえ。多分、見えてはいるのだけれども、そうだと、認識できない様にされているのでしょう。)
しかし、雅の目は、遠からずに、椿太夫の隠れ潜む|大見世《おおみせ》の全容を捉える事だろう。
●
遊廓は|既《すで》に悪妖の支配下にある様子だった。
大気に|凝《こご》る、甘く濃密な椿の香り。典雅でありながらも、聴覚から侵入して思考を搔き乱す魔性の楽音。通りを歩く男たちは、一様に虚ろな眼をしており、その股間にある逸物を逞しくさせている。
(酷い有様ですね。こう言っては何ですけれども、今回は、星詠みの予知も遅きに失したと言う|処《ところ》でしょうか)
|音取《ねとり》|容子《ようこ》は、想像を絶する光景を前にして嘆息した。
|遊廓《ゆうかく》全体を包み込む悪妖の呪詛は、容子の肉体にも影響を及ぼしている。
とは言え、今の|処《ところ》は、理性を|喪失《なく》したり、認知を改竄されたりといった大きな変化は無い様だ。
精々が――容子の肉体に融合している色欲の悪魔が、無性に腹を空かせている程度だろう。
普段であれば活動するのに支障が無い程度の精気を蓄えてはいるのだが――悪魔が目覚めたとなれば話は別だ。
通常の食事では決して満たされる事の無い飢えと渇きが、未亡人の熟れた肢体を突き動かす。
(誰にしましょうか――あら?)
不意に擦れ違った男の気配が、容子と――その身に融け合う悪魔の欲望を刺激した。
(身形からして、まだ学生でしょうか――恐らくは童貞でしょうね。嗚呼――美味しそう。)
容子は、その内心では舌なめずりをしながらも、あくまでも、表に現れる所作は、たおやかなるままで――男の袖を引いて、声を掛けた。
「もし――よろしければ、どうでしょうか? 私と、|其方《そちら》で御茶でも飲んでいきませんか?」
容子の指し示す方向には一件の出逢い茶屋――男と女が逢引きをする為の店がある。
どこか憂いを帯びた未亡人の色香を前に、男は、ゴクリと音を立てて唾を飲んだ。
男の股間は、今にも履物の生地を突き破らんとするほどに勃起していた。
●
「んっ、んっ……あんっ……❤」
容子の口淫奉仕により、男は呆気ない程に容易く吐精した。
事前の見立て通りに、これまで、女性との性交渉の経験が無かった清童の身だ。
容子の、並の女では、その足元にも及ばないであろう技術――それが望んで得たものでは無いとは言え――の前には我慢する事も許されなかった。
獣の咆哮にも似た声を漏らしながら、周囲に飛び散らせる程の勢いで放出された白濁液。それを一滴も余さずに口腔内で受け止めると、そこに籠められている精気を、己の内に取り込んでいく。
遊廓を支配する悪妖の糧として献上する心算はない。
煮え滾る男の欲望も、醸成された精気も、全て自らのものとする腹積もりだった。
まだ、男の逸物が萎える気配は無い。
容子は、その口許に|妖《あや》しい微笑みを貼りつけると、秘部を見せつける様に股を開いた。
|女陰《ほと》は、たっぷりの蜜を滴らせて、卑猥な入口を蠢かせている。
「ふふ❤ そんなに、がっつかなくても大丈夫ですよ❤ 逃げたりしませんから……あんっ❤ そう、そこですよ❤ オマ〇コに、オチン〇ンの先っぽを、しっかりと当てがって……❤ そう、上手よ……❤ そのまま、腰を突き出してみて……あ、ああんっ!❤」
奉仕の技術だけでなく、肉体に備わっている生殖器官も、男を虜とする為だけに成長したのかと思える程の名器だった。
たっぷりの蜜に包まれる事で滑りが良くなり、柔らかく温かな肉壁が、挿入された男根全体にぴったりと吸いついてくる。蠢く肉襞は、その一枚一枚が自らの意志を持つ、卑猥な生き物の様だ。
男は初体験の感動に打ち震える間もなく、初めて堪能する快感に恍惚の表情を浮かべて、欲望のままに腰を振るだけの獣へと成り下がる。
出逢い茶屋の一室に、男と女の、汗と蜜の香りが混合された淫臭が立ち込めた。
「あっ!❤ あぁっ!❤ 激しい……それに、とっても上手よ!❤ もっと、もっと動いてっ……!❤ あ、あぁ……私の|膣内《なか》で、貴方のオチン〇ンが震えて、膨らんでいるわっ……!❤ で、出ちゃいそうなのの……いいわよ、何時でも、好きな時に、|膣内《なか》に出してぇっ……!❤」
容子は、以前に愛する夫を亡くしている女であるとは、到底、信じられぬ程に貪欲な腰遣いで男を夢中にさせている。
貞節を欠落しているが故に、夫への真実の愛を、その胸中に抱いたままに、見知らぬ男との刹那的な快楽に溺れる――淫蕩なる女悪魔の姿が、其処にはあった。
●
悪妖の支配地として、色と欲とを盟友にして繁栄してきた椿之遊廓ではあるが、その領内の全てが賑わっている訳ではない。
大通りの喧騒から離れた場所では、朽ち逝くままに放棄されている空き家が点在している。
その内の一軒に、パトリシア・バークリーと、アリア・ベレスフォードの姿があった。
√能力者として、悪妖の呪詛の中にあっても理性を保持しているパトリシアと異なり、アリアはと言うと、既に呪詛の影響に拠るものか|妓女《ぎじょ》としての振る舞いをしていた。
とは言え、それは、かつてのアリアの境遇に立ち返っただけとも言える。
馴れた振る舞いで、|忽《たちま》ちの内に男たちを誘惑せしめると、こうして遊廓の外れにある空き家にまで誘い出してきた。
遊廓の外れにある空き家では、さしもの椿太夫の香りも薄い。
耐性の無い者は、それでも認識を改竄されてしまうだろうが――効果が弱まるという事は、それだけ付け入る隙が生じるという事だ。
パトリシアは、誘いに乗って来た男たちの身体に、しなだれかかった。
隣ではアリアも、男の着衣を、馴れた手つきで脱がせにかかっている。
(男の人たちの目に光が戻りつつあるね――この様子なら、もう少し強い刺激を与えてあげれば、椿太夫の術による|情報封鎖《プロテクト》も突破できるかな? とは言え、ゆっくりと時間を掛けていたら椿太夫に気づかれてしまうかも知れないしね。そこは時間との勝負だけど。アリアさんは――うん。楽しんでいるみたいだね❤ そのまま頑張って貰うとしようかな❤)
パトリシアの思惑とは関係なく、アリアは|妓女《ぎじょ》として振る舞いながら、男の肉棒を口一杯に頬張っていた。
それどころか、左右それぞれの手に違う男の|魔羅《まら》を握り締めては、それを淀みなく上下に扱き上げている。
複数人の男を同時に相手にする経験が、その過去に無い訳では無いのだろう。
パトリシアも、また、裸になった男の腰の上に跨ると、今にも、はちきれんばかりに勃起している肉棒の先端を、自身の秘部の入口へと導いた。
そのまま、ゆっくりと腰を落としていく。
「あ、はぁ……!❤ 大きぃ……❤」
濡れそぼる|女陰《ほと》の奥まで、ズブリと、一息に包まれた肉棒は、締め付けの快楽に打ち震えた。
パトリシアが腰を振れば、パンパンと、肉と肉とがぶつかる音が響き渡る。
グチュグチュという粘ついた水音は、パトリシアだけのものではない。
口と左右の手で|魔羅《まら》に奉仕を行なっているアリアの股座には、また異なる男が、その顔を突っ込んでは、一心不乱に舌を動かしていた。
男に跨って腰を打ち付けているパトリシアの眼前にも、違う男の、勃起した肉棒が突きつけられる。
それを躊躇う事もなく口に含んだ。
淫蕩を美徳とする√に生を受けた身だ。
|妓女《ぎじょ》という立場でなくとも――本能のままに性を貪る行為に耽る事を、恥だとは思わない。
「あっ❤ あっ❤ あっ❤ ボクの|膣内《なか》、硬いオチン〇ンで一杯になってるよぉっ……❤ ふ、んんっ……このオチン〇ンも、美味しい……❤ 先っぽ、嘗められるのが好きなのかな……?❤ んんっ、いつでも出していいよ……❤ 全部、ボクが飲んであげるから、ね……❤ あ、あぁっ!❤ は、激しいっ!❤ もっと、もっと力強く、突き上げてぇっ!❤」
空き家に響く、男と女の饗宴の席に満ちる甘い声は、まだ収まる気配を見せない。
パトリシアは、肉の悦びを心の赴くままに堪能した末の褒賞として、寝物語に男の口から語られた、椿太夫の|見世《みせ》についての情報を獲得した。
●
――オン・マリシエイ・ソワカ。
|摩利支天《まりしてん》の加護を|此処《ここ》に。
真言を唱えて、指で印を結ぶ。
天部の一尊。陽炎の神格化とも謳われる日天の妃の加護を賜り、その身は如何なる呪詛からも隠される事になる。
|高峰《たかみね》|茉莉花《まりか》は、その身に修めた忍者としての技巧を駆使して、物陰から物陰へと、音も無く移動していた。
人目を避ける事は、忍者としては基礎の業である。
視界の端を刹那の間だけ横切る娘の影を、怪しみ、足を止める者はいない。
客の袖を引く事に夢中になっている悪妖の眷属たちが、|見世《みせ》の内部に、音も無く潜り込んでいく者の姿を見咎める事は無い。
それは遊廓全体を包み込む悪妖の呪詛とて同じ事だ。
摩利支天の加護は、悪妖の第二の眼とも言うべき香りによる支配から、見事に、茉莉花の姿を隠していた。
片端から|見世《みせ》の中でも立派な造りをしている建物の中に潜入して、位の高そうな遊女と客との逢瀬を覗き見ていく。
(うわぁ……! 場所が場所だけに仕方がないけれども、こうして見ると、御盛んって言うか……激しいなあ……! 私も遊女になったら、ああいう事をしなくちゃいけないわけ……?)
天井裏に息を潜めながらに身を隠して、眼下で繰り広げられている、男と女の激しい情交の有様を観察していれば、どうしても、故郷での修行の事を思い出す。
茉莉花はくノ一だ。無論の事、女である身にのみ許された忍びの業――男を骨抜きとする色香の術も学んではいる。
(とはいえ――|房中術《そっち》も一通り教わったけれども。結局、実践する機会は訪れなかったんだよね。頭領は生娘であるならば、それはそれで、得難い武器になると言ってくれたけれども――)
茉莉花に覗き見られている事など知る|由《よし》もない遊女が、熟練した口淫の業で、男の屹立した肉棒から精を搾り取っている。
(うわぁ。あんなに激しく舌を動かして――音も立てて、しゃぶるんだね。男を抜く方法は一通り座学で学んだけれども――やっぱり本職は違うなぁ。)
精気を絞られている男からすれば、天国と地獄を同時に味わっているような心地だろうが――それでも、思わず感心してしまう他にない。
それどころか眼下の淫気にあてられてしまったかの様に、下腹から、思いがけない悶々とした衝動が湧き上がってくる。
(――駄目! 煩悩退散。煩悩退散。今は御仕事中、御仕事中。オン・マリシエイ・ソワカ。|天《てん》|清浄《しょうじょう》、|地《ち》|清浄《しょうじょう》、|内外《ないげ》|清浄《しょうじょう》、|六根《ろっこん》|清浄《しょうじょう》――と。此処も外れかな。でも、もう他に、めぼしい|見世《みせ》も無さそうだし――)
茉莉花が、どうするべきかと悩んでいると、これも摩利支天の加護であろうか。
男を弄んでいた遊女の口から、求めていた情報が零れ落ちた。
「――ふふ❤ 旦那様も、もう、此処に通って長いでありんすね❤ もう、そろそろ太夫の|見世《みせ》に招かれても、良い頃合でありんす❤ 前々から欲しがられていた椿之手形――後程、渡してさしあげんすよ❤ だけど、その前に――わっちのここを、旦那様のモノで、掻き回しておくんなんし❤」
(椿之手形――多分、それが椿太夫の|見世《みせ》への鍵になるものかな。盗みだせば――まだ早いか。|情事《こと》が終わった後、油断している|処《ところ》を狙う方が確実かな。でも、それじゃあ――まだ暫く、これを見ていないと駄目な訳だね。て言うか、当然の様に御尻の方に――あの二人、何時も、そっちの方でしてるんだ――)
茉莉花の眼下で繰り広げられている男と女の情交は、まずます激しさを増して、不浄の穴での結合を愉しむ甘い声が、天井裏にまで響いてくる。
茉莉花は暫くの間、その行為が終わる時を沈黙のままに待っていたのだが。
やがては、そろりそろりと、くノ一仕様に改造されたセーラー服のスカートの内側に、僅かな罪悪感と共に指を忍ばさせていく。
(……我ながら、修行不足だよね……❤ でも、これも、椿太夫の呪詛の影響という事で……うん。せめて、声だけは我慢しないとね……❤)
「っ……!❤ っ、っ、っ……ん、んんんっ……!❤ んっ、っ、んんっ~~~~っ!!❤」
やがては天井裏の、ひっそりと静まり返った空気の中に、茉莉花の、押し殺した様な甘い吐息と、クチュクチュという微かな水音とが響き渡った。
●
「次の御客人が待っていんすよ。|早《はよ》う身体を拭いて、向かいなんし」
「……嗚呼、御免なさいね。少し|呆《ぼう》としていたみたい。ええ。すぐに行くわ」
アスカ・アルティマは、自分よりも長く、この|見世《みせ》で働いている遊女の言葉に頷いた。
先程まで相手をしていた客が、自分の身体に、そして|胎《はら》の奥深くに、欲望の|儘《まま》に放出した種が粘着している。
それを|懐紙《かいし》で拭き取り、指で掻き出してから、身支度を整えた。
アスカは、この|見世《みせ》では、まだ一番の新参者だ。
遊女としての地位も低く、作法や技術など、覚えるべき事は山の様に存在している。
とはいえ、ありがたいことに、これまでに相手をした客達からの評判は上々だ。
今日も、既に、三人の男に一時の夢を提供している。
次の相手は、仲の良い大工が二人――同時に相手をして欲しいという申出だった。
「頑張りなんし。これからも太夫の遊廓は繁盛を続ける。男は幾らでも訪れる様になりんす。遊女の数は幾らいても足りんせんからね」
|見世《みせ》の廊下には、薄い|襖《ふすま》を通り抜けた、遊女たちの嬌声が満ちている。
自分と同じ様に遊女になったばかりの娘達――休む事も許されずに、男達の獣欲の慰み者とされている者達の、けれども官能の吐息が幾重にも折り重なっていた。
(|此処《ここ》の女性は皆、大変な思いをしているわよね――私も頑張らないと。立派な遊女になる|為《ため》、に――?)
アスカは、|其処《そこ》で自分の思考を疑う様に足を止めた。
「――|如何《どう》かしたでありんすか?」
廊下で擦れ違う遊女の一人に声を掛けられて、何でも無いと答える。
(おかしいわね――さっきも、そうだったけれども。思考が上手く纏まらない様な。仕事の疲れが出ているのかしら。いえ。これは、どちらと言えば――昔、スペル星系第七惑星人の光線のを浴びた時の様な――駄目ね。思い出せないわ。)
アスカは、|此《こ》の太陽系第三惑星に飛来する前に経験した、激しい戦闘の記憶を想起しようとしたが、それも濃厚な椿の香りの中に掻き消されていく。
見失ってしまった記憶の追跡を終える前に、客の待つ部屋へと辿り着いてしまった。
(仕方がないか――仕事の時間だわ。この男たちを悦ばせる事に集中しないと――)
アスカは、襖を開けるなり、欲望にぎらついた視線を向けてくる男たちに微笑みを向けると、その身体を差し出した。
女の身体への配慮など、まるでない乱暴な愛撫に身を委ねていく。
挨拶もそこそこに、眼前に突きつけられた肉棒を、気持ち良くさせる|為《ため》だけに口と舌を遣って奉仕を行なう。
「んっ、ふぅ……じゅる……❤ ん、この先が、気持ち良いのね……オチン〇ン、震えているわよ……❤ まだ我慢してね……ん、根本まで……しゃぶってあげる……❤ あ、んんっ……!❤ 激しいっ……❤」
片方の男の前で、獣の様な四つん這いの姿勢となり、尻を突き出しては、濡れそぼる秘部を曝け出す。
上の口では男の|魔羅《まら》に奉仕を行ないながら、下の口は、違う男の|魔羅《まら》を受け入れる快感に涎を零していた。
乳房を乱暴に揉まれたかと思えば、時折、張り詰めた尻肉を掌で叩かれる。
呼吸さえも|儘《まま》ならない程に激しい行為の中で、汗と蜜に塗れながらに絡み合う男女の身体から立ち昇る淫臭が、悪妖の呪詛を媒介する椿の香りを薄れさせていく。
「はっ、はっ、あっ、あぁっ!❤ あ、イ、イクゥッ!❤ オマ〇コ、気持ち良くて、イッちゃうぅぅっ!❤」
(――この感覚。そうだわ。これ洗脳光線を浴びた時の――どうして忘れていたのかしら❤ あの時も、私は、星人たちの慰みものに――あ、駄目❤ |膣内《なか》に出されて、イク――❤)
二人の男が、獣の様な唸り声を上げて、同時に吐精した。
一人の精は喉奥に流しこまれ、もう一人の精は勢い良く子宮にまで届く。
アスカの脳裏で、遊女として客と交わっている現在の自分の姿と、過去に敵対した星人たちに凌辱された記憶とが入り混じった時、その肉体は激しい絶頂を迎えていた。
「……あ、あぁぁぁぁぁぁっ……!!❤ イ、イクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ……!!❤」
嬌声と共に淫蜜を噴き散らす女の肢体を、濃厚な雄の種が白濁に染め上げていく。
アスカは、精汁の香りに包まれながら、|褥《しとね》へと崩れ落ちた。
(――どれだけ、時間を無駄にしてしまったのかしらね? でも、何とか正気に立ち返る事は出来たわ。生憎だったわね、椿太夫――)
その目には、確かに、正気と理性の光が戻っていた。
●
妖星衆――√マスクドヒーローに|於《お》いては、それは、歴史の裏で暗躍してきた忍者たちの一党であると言われている。
先祖代々、伝承されてきた忍びの技術や心得を、善なる行ないの|為《ため》にではなく、それぞれの私利私欲の|為《ため》にこそ行使する、悪の秘密結社だ。
しかし、それも、かつての話だ。
組織の一員であった一人の娘の足抜けを切っ掛けとして、その後を追う者が続出した事により、ほどなくして組織自体が崩壊した。
現在の妖星衆に、かつての栄光の面影は無い。
「それも、これも、全ては、あの馬鹿弟子の|所為《せい》だ! |夜魅《やみ》の奴め――今頃、|何処《どこ》で何をしているのだ!」
|妖星《あやぼし》|九曜《くよう》は、その額に青筋を浮かべながら、組織の裏切者である、かつての弟子の姿を探して|東奔西走《とうほんせいそう》していた。
「夜魅の奴めが――|界渡りの術《√間移動》は、本来であれば妖星衆の秘伝であると言うのに! 上忍である私でさえ、自由自在とはいかぬ高難易度の術を、どうして、あやつは使いこなせるのだ!」
裏切者の所在が、常に一つの世界の内部を転々としているのであれば、如何に落ち目であるとは言えども、妖星衆の情報網で捕捉できぬ筈は無い。
問題は、その一党を足抜けした、くノ一が√能力者という、一つの世界の枠に留まらぬ存在であったが故だ。
異なる√間の移動については、妖星衆秘伝の術を駆使すれば、決して不可能な所業では無いのだが――それにより異なる√に渡る事と、術者が、その√での記憶を維持し続ける事が出来るかどうかは、また別の問題である。
九曜は妖星衆上忍の地位にあるとはいえ、こと界渡りの術の素質については、かつての弟子を|後塵《こうじん》を|拝《はい》しているのだと認めざるを得ない。
それでも一党の衰退の原因である裏切者への復讐の一念を胸に秘めて、こうして各√を渡り歩いているのではあるが。
「ええい! この色町に夜魅のアホンダラがいると耳にしてみれば――何だ、この椿の香りは! 恐らくは嗅覚から相手の認識を改竄する香毒の類だろうが――その|所為《せい》で誰も彼もが、まともな思考をしていない! これでは話を聴く事も|儘《まま》ならんではないか!」
古妖の呪詛を媒介する香りに包まれながらも、それに取り込まれる気配が無いのは、流石と評する他に無い。
とはいえ、それも何時まで持つか――裏切り者の捜索も手詰まりではあるし、これは、今回も無駄足に終わる可能性が濃厚となってきた。
九曜の足並みが苛立ちに乱れていると――ふと、一人の男が声を掛けてきた。
通りを行き交う大勢の男たちと同様に、その目は虚ろではあるが、理性を失くしている分、本能に根差した欲望には忠実である様子だ。
くノ一の術の内では基礎となるもの――色香の術を最大限に発揮する|為《ため》に、あえて肌を露出させている九曜の恰好を前にして、逸物を硬く、逞しくしている。
とは言え、自分は、妓女では無いのだが――と、男の求めを断ろうとして。
「――いや。構わぬか。いいだろう。相手をしてやろう」
思い直して、男の相手を務める事を了承した。
「丁度、苛々としていたからな。久しぶりに男遊びもいいだろう。一度や二度では済まないと思えよ――枯れ果てても、文句は、あのアホンダラの馬鹿弟子に言え」
●
「――どうした、どうした❤ まだ三回しか達していないだろう❤ もっと気合いを入れて突け❤ 男だろうが!❤ くぅ、久しぶりのチ〇ポが――なかなかにクるな❤」
薄い|襖《ふすま》を隔てて、漏れ聞こえてくる、聞き覚えのある女の声。男に啼かされているのではなく、男を喰い荒らしては啼かせているのだと予想がついた。
(……|拙《まず》いぜ。なんだって九曜師匠が此処に? 見つかったら、絶対にヤバいよな……?)
|妖星《あやぼし》|夜魅《やみ》は、襖の奥で男と愉しんでいるであろう、かつての師匠の気配を間近にして、内心では冷や汗を流していた。
どうして、この様な窮地に追い込まれてしまったのだろう。
自分は、確か、追手から身を隠す為に、この|見世《みせ》に|妓女《ぎじょ》として隠れ潜んでいた筈だ。
椿太夫の支配下にあるという遊廓に潜入したまでは良い。
だが、そこで、かつての古巣の仲間たちの姿を目撃する事になろうとは思ってもいなかった。
明らかに自分を探している同輩たち――一党を足抜けした自分を追跡する者たちであるのは、想像に難く無い。
仕方が無しに、ほとぼりが冷めるまでは身を潜めていようと、手近な|妓楼《ぎろう》に潜り込んだ。
遊女としての仕事も、かつて一党から逃げ出した直後は、金銭を代価として身体を売る行為を行なっていた時期もあったので、さほど苦では無かった。
生来の性格や口調から、一般的な遊女としての堅苦しい振る舞いは身につかなかったが――逆に、それが肩が凝らないから良いのだという酔狂な客もつく様になった。
暫くは遊女として振る舞いつつ、ここで椿太夫に繋がる|為《ため》の情報蒐集に勤しんでいようかと考えていた矢先の事である。
|妓女《ぎじょ》――椿太夫の眷属の一人から、違う|見世《みせ》に応援に行って欲しいのだと頼まれた。
何でも大勢の客の精気を食い荒らしている女がいる――椿太夫の部下でも無い様であるし、ただの淫乱な流れ者だろう。ここはひとつ、遊女としての格の違いを見せつけて来いとの事だった。
潜入している身であるので、断る事で無用の騒ぎを起こす訳にもいかないだろうと引き受けはしたものの。
(――まさかの師匠だったのかよ。体術や戦闘術の方が得意だったとは言え、房中術の腕前も相当だったもんなぁ。それは並の男が束になっても敵わない訳だぜ。)
夜魅が、襖の前で、どうするかを迷っていると。
「うん?❤ そこの者、遠慮せずに入って来い❤ あっ❤ 私は、まだまだイケるが……如何せん、男の数に対して、穴も、手も足りていないからな❤ く、あぁっ……❤ 不浄の穴も、久しぶりだ……❤ 夜魅の奴め……❤ 見つけたら、貴様も、こんな風に犯してやる……❤ 泣いて許しを乞うまで、滅茶苦茶にしてやるからな……!❤」
(――うわぁ、おっかないぜ。とは言え、これは、もう逃げる方が怪しまれるよな――ええい、南無三っ! 女は度胸だぜ!)
「し、失礼するぜ……いや、します……『ヒカリ』です……」
夜魅は咄嗟に変化術を使用すると、髪を金色に変えてから、襖を開けた。
そこには獣の様に四つん這いになりながら、秘所と肛門とに、違う男の逸物を同時に咥え込んでいる、かつての師匠の姿がある。
「ヒカリか……褐色の肌の遊女……❤ 惜しいな……❤ 髪が黒であれば、ますます似ていたものを……❤ だが、いいぞ……ヒカリとやら、こっちに来るが良い……❤」
怪しまれている様子はない。
どうやら咄嗟の変化術は上手く機能している様だ。
或いは、それは、この遊廓を包み込む椿太夫の呪詛が、九曜の認知に僅かにでも影響を与えている|為《ため》であるのかも知れなかった。
夜魅の前で、九曜は、瞬く間に二人の男を吐精に導くと、他の男には目もくれずに『ヒカリ』の傍に寄って来る。
「……ど、どうかしたんだぜ? いや、しましたか……?」
「――ふん❤ 馴れぬのであれば、無理に口調を改めずとも良い❤ しかし、言葉遣いまで、あのアホンダラそっくりか……❤ よし……お前、私に向かって尻を突き出せ……❤ コレをぶちこんでやろう……❤」
それは変化の術の応用だろうか。
九曜の股間には、並の男の逸物など足下にも及ばないであろう、逞しい魔羅が生えて、屹立していた。
「え……いや、でもオレは客の相手を……!」
「この部屋の男たちは、私が、一通り|搾《しぼ》り終わっている。暫くは|魔羅《まら》も勃たぬさ❤ それよりも『ヒカリ』……早くしろ❤ 二度は言わんぞ……恨むのであれば、あの馬鹿弟子にそっくりな自分の容姿を恨め……❤ 本来ならば、これは、あのアホンダラに注いでやろうと溜めこんでいたものだが……❤ お前に、すべて受け止めて貰うとしよう……❤」
(これは……逆らわない方がいいな……❤ というか、師匠の……オレの知っている頃よりもデカくなってないか……❤ この、ぶっといチ〇ポに、師匠のテクニックがあわさったら……オレ、耐えられるか……?❤)
九曜の言いつけの通りに、尻を突き出す格好となった『ヒカリ』の秘部に、ぐりぐりと、勃起した|魔羅《まら》の先端が押し当てられる。
「ん?❤ もう|女陰《ほと》が、いやらしい蜜でヌルヌルじゃあないか❤ この馬鹿弟子めが……❤ さあ、折檻の時間だ……貴様の|所為《せい》で零落れた妖星衆の恨み……私のチ〇ポで思い知らせてやるぞ……!❤」
九曜の、恨みつらみと共に激しく突き出された腰は、夜魅の雌穴の奥にまで、一呼吸で巨根を到達させた。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっっっっっっっ!❤」
堪らずに嬌声を上げる『ヒカリ』の腰を暴れださない様に両手で掴み、九曜は、ますます激しく腰を打ち付けた。
一突き毎に灼熱の棒が肉壁を擦り上げて、放出する白濁の種が子宮を叩く。
「くっ❤ マ〇コの具合まで、馬鹿弟子にそっくりかっ!❤ これはケツ穴への折檻も、今から愉しみだだ……!❤ どうだ!❤ 貴様の裏切り以来、貯めに貯めた特濃のザー〇ンだ!❤ くぅぅ、小便の様に出るぅぅぅっ……!❤ くぅぅ、夜魅っ!❤ 貴様も何時か、私のチ〇ポっと、ザー〇ンで、折檻してくれるぅっ!❤ この、馬鹿弟子めがぁぁぁぁぁっ……!❤」
「あひぃっ!❤ ひ、あぁっ、あぁんっ!❤ は、激し過ぎるぅっ!❤ ゆ、許して、許してぇぇ……あぁぁ、イ、イクゥゥゥゥゥッ……!❤」
閨を共にするのは房中術の基礎を教え込まれた時以来か。
かつての弟子は、久しぶりに挿入された師の魔羅の逞しさと、吐精の勢いに酔い痴れ。
かつての師匠は、久しぶりに挿入する弟子の蜜壺のうねりと、締め付けの具合を堪能する。
その再会が、血によって彩られたものでない事は、御互いにとっては幸運であったに違いない。
●
『嗚呼……もう、もう許してくださいませ……!❤ なります……貴方様の奴隷に……身も心も、全てを捧げる|女卑《めひ》として|傅《かしず》きますっ……!❤ ですから、どうか……どうか……!❤ わたくしを憐れと思うのであれば……イカせてっ!❤ イカセてくださいませぇぇぇぇっ……!❤』
百の歳月を越えて鳴り続ける胸の鼓動。永遠とも思える吸血鬼の生は、栄光の日々よりも、男たちの慰み者とされる|虜囚《りょしゅう》の身に甘んじている期間の方が|永《なが》かった。
その中でも|現在《いま》も|此《こ》の身と戒め続けるのは、鮮烈に過ぎる屈服の記憶。既に幾人もの男を受け入れてきた経験をもってしても、抗う事が出来ない程の快感に、理性と|矜持《きょうじ》とを微塵に砕かれた、甘い夜の思い出だった。
あの日、ルージュ・フォン・シャッテンブルク――|影《ロード・》|の城の主《オブ・シャッテンブルク》の魂は、自身の年齢の半分にも満たぬ|定命の者《にんげん》の小僧の前に平伏してしまったのだ。
それも力によるものではなく――浅ましいまでの雌としての悦びによって。
その時の事を思い返す度に、|女陰《ほと》は、ふしだらな蜜を溢れさせてしまう。
主人に抱かれぬ夜に寝所にて自らを慰めた事も一度や二度では無い。
「嗚呼……もう、もう果ててしまいんすぅっ!❤ 許して、もう堪忍して欲しいでありんすぅぅぅっ……!❤」
今、襖を隔てた隣の部屋で、周囲を|憚《はばか》らぬ嬌声を上げながらに悶えているであろう|妓女《ぎじょ》も同様の末路を辿るのだろう。
主人の寵愛を受けている見知らぬ女への嫉妬心を押し殺しながら――ルージュは、その目前で罰の悪そうな顔をしている同族の男を見詰めた。
「随分と|零落《おちぶ》れた者ですわね――わたくしも、そして貴方も」
|妓楼《ぎろう》の一室でルージュと向き合っている男の顔を見るのは、数十年、或いは数百年ぶりの事だろうか。
かつては影の城の主として玉座にあった自身の姿――その傍らにあった騎士の名前は、時を経ても鮮明に思い出す事が出来た。
「どの様に数奇な運命を辿ったものかは知らないのですけれども――堅物で有名だった貴方が、まさか、この様な店で女遊びをしているとは。我が目を疑いましたわよ」
かつては、男の前では決して見せる事の無かったであろう淫蕩な笑みを口許に浮かべながら、ルージュは、その身を飾り立てる豪奢なドレスを脱ぎ去った。
騎士としての忠誠を捧げていた女の肌を前にして、男は表情を曇らせる。
しかし、その内心の葛藤とは裏腹に――雄としての本能は、その股間にある生殖器を硬く屹立させていた。
「ル、ルージュ様……」と漸くの事で、それだけを絞り出した男の前で、ルージュは、躊躇う素振りすらも無く、ドレスどころか下着すらも脱ぎ捨てて、裸体を曝け出した。
「わたくしに今更、敬称など不要ですわ―――|影《ロード・》|の城の主《オブ・シャッテンブルク》。それは今は亡き女王の称号。かつての騎士を前に肌を晒す事さえ厭わなくなる程に堕ちきった雌の肩書」
ルージュは謳う様に呟きながら、既に先端から汁を溢れさせる程に興奮している、男の逸物を手に取った。
「ライゼも、レギンも、アーサーも。皆、此処を硬くして、わたくしを嬲りましたわ。夜が果てる時まで、わたくしを|守護《まも》ると、騎士の誓いを述べた、その口で。女王である、わたくしを|売女《ばいた》と、淫売と罵りながら……この身を犯しぬきましたわ……んっ、んんっ……❤」
ルージュの口腔内の粘膜に、勃起した男根が包み込まれた時、騎士の口から吐息が漏れた。
熟練の娼婦も顔負けの口淫奉仕の技術を前に、腰が引けていく。
「当然ですわよね……❤ だって、わたくし……自分から股を開いてしまいましたもの……❤ それどころか不浄の穴まで曝け出して……昨日まで仕えてくれた騎士たちに、卑俗な言葉で命じて、|強請《ねだ》りさえしましたのよ……貴方たちの逞しいオチ〇ポで……わたくしを、犯して欲しいと……❤ ……あら?❤ もう、お漏らししてしまいまたのね……❤ やっぱり、どの男も……ご主人様より、ずっと、早漏ですわ……❤」
ルージュは、男の呻き声と共に放出された白濁液を、馴れた様子で、表情一つ変えずに嚥下しながら、まだ硬いままの肉棒を口腔内から引き抜いた。
上目遣いに様子を窺えば、男は、吐精の快楽に息を荒げながら「この様な女が……我らが|影《ロード・》|の城の主《オブ・シャッテンブルク》か……!」と、嚇怒と劣情に濁り切った眼差しをむけてくる。
ルージュは心底から嘲る様な笑みを向けると。
「――口が過ぎますわよ。早漏の堕犬の分際で」
男を、かつて玉座にありし日の威厳に満ちた声で一喝し、その身体を引き倒した。
男の腰に跨り、萎える気配の無い男根を掴み、自らの秘所へと当てがう。
「悦びなさいませ。あの惨めな滅びより幾星霜。他の騎士たちと同じ穴兄弟になれますわよ……|影《ロード・》|の城の主《オブ・シャッテンブルク》のオマ〇コ……堪能させてさしあげますわ❤ だから……ええ。わたくしが果てるよりも先に漏らしたら……どうなるか、わかっていますわね……?❤ あ、あぁ……あぁぁんっ……!❤ わたくしの騎士のチ〇ポが……は、|挿入《はい》ってきますわ……!❤ もっと、もっとぉ……!❤」
|妓楼《ぎろう》の一室に響く吸血鬼の女王の甘い声。部屋全体をギシギシと軋ませる様な激しくも淫らな腰遣いの音。「淫売め……いいのか! 俺のチ〇ポがいいのか……! 出してやる……女王のマ〇コに、俺のザー〇ンを注いでやる……!」と、|獣《けだもの》にも似た欲望を言葉にして叩き付ける騎士の、荒い息遣い。
「ふふ❤ その程度の腰遣いでは騎士の称号が泣きますわよ、駄犬❤ ほら、次は、わたくしの御尻を犯しますのよ❤ わたくしのオマ〇コや子宮だけでは無く……御尻にも、沢山、沢山、御漏らしなさいませ……❤」
その夜。
運命の悪戯か、再び巡り合った女王と騎士は、失望と、欲望とに彩られた退廃的な交わりに永く溺れたのだった。
●
「――ルージュの奴。偶々でも知った顔と出合えて、随分と羽目を外しているみたいだな。いいね。あいつの口から、直接、感想を訊くのが愉しみでならない」
「あっ、んっ……❤ ふ、んんっ……❤」
|九門《くもん》|絢介《けんすけ》は、先程まで散々に嬲り抜いた|妓女《ぎじょ》に、未だに萎えぬ男根を口で奉仕させながら、襖を隔てた隣の部屋から漏れ聞こえてくる|性奴隷《ルージュ》の甘い声を堪能していた。
夢中になって肉棒を舐め、しゃぶっている|妓女《ぎじょ》の肢体には、アウルム・テンタクロス――金色に輝く触手群が絡みつき、絶えず敏感な箇所を責め立てている。
「そう、そこだ……よーし、いい子だぞ。そのまま、そこを舐め続けな。ルージュとは違う、この舌遣いが堪らんね。偶には違う女で遊ぶのもいいもんだ。遊廓という雰囲気も良いし……なにより綺麗所に不自由しないのが良い」
長く艶やかな黒髪をした|妓女《ぎじょ》の頭を撫でながら、触手の内の一本に僅かに力を篭める。
乳首、肉芽、菊門――同時に責めている箇所は幾つもあるが、この女が一番の反応を見せるのは肉芽であると見抜いていた。
「ふ、あぁっ……!❤ あ、あぁぁぁぁぁぁっ……!?❤」
剛直を頬張り続ける事も出来ずに、勢い良く蜜を噴き散らす女の姿を、可笑しそうに見詰める。
「おいおい。オレは、まだまだイってないぜ。おしゃぶりしたいって御願いしてきたのは、御前の方だろう? それとも――そろそろ、欲しくなったかな?」
四肢を拘束する触手を器用に操り、女の体勢を入れ替えてやると、目の前には、もの欲しそうに蜜を零しながら、卑猥にひくついている肉穴が、だらしなく開かれていた。
剛直の先端を押し当ててやると、辛抱|堪《たま》らないのか、腰を卑猥に躍らせては挿入を強請る。
触手によって戒められた|妓女《ぎじょ》の身体は、己の意志では自由に動く事もままならない。
焦らされる事は、既に快感ではなく苦痛に変わり、潤んだ眼差しと共に懇願の言葉を吐き出させた。
「御願いでありんすぅ……❤ 何でもしんすからぁ……❤ 旦那様の|魔羅《まら》を……わっちに、わっちにぃ……❤ もう狂ってしまいそうで、ありんすぅ……❤」
「そうかい? けれど、この勝負は御前から先に挑んできたんだろう。何だったかな――『極楽に逝かせてあげんすよ』――だったかな? オレは、まだ極楽と云える程の快感を味わってないんだが――さて、どうするか」
軽く腰を突き出してやれば、|女陰《ほと》の浅い位置を、亀頭が刺激する。
それだけで、決して深くまで望むものが与えられる事の無い、もどかしさに、遂に黒髪の|妓女《ぎじょ》は屈服した。
汗と、蜜と、触手の粘液に塗れた、しなやかな裸体を戦慄かせて、涙ながらに懇願する。
「許して……もう、許してぇ……❤ 教えんす……❤ 太夫の|見世《みせ》の位置も、何もかも……❤ だから、だからぁ……!❤ |魔羅《まら》を……❤ わっちを、旦那様の、奴隷として飼って欲しいでありんすぅ……!❤」
その言葉が訊きたかったのだと、絢介は、我慢の限界をむかえた女が発狂してしまう前に、勢い良く腰を前に突き出す事で、それが望む|逸物《もの》を雌穴の最奥にまで届かせた。
「あ、あぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!❤ き、きたでありんすぅぅぅぅっ!!!!!❤ 旦那様の、|魔羅《まら》がぁ、わっちの|膣内《なか》、掻き回してるぅぅぅぅぅぅっ!!!!!❤」
一突き毎に結合部から蜜を噴き出し、黒髪を振り乱しては悶える|妓女《ぎじょ》の痴態と、悦びにうねる肉穴の感触を堪能した。
「いい締めつけだ。熱く、いやらしくうねって……分かるか? オレの|逸物《もの》が子宮にまで届いているぜ。入口が亀頭を絞めつけてきて、孕ませて欲しいと云ってるみたいじゃあないか。御褒美に、このまま奥に、たっぷりと注いでやるとするか――どうだ、ルージュ。そっちの具合は?」
襖越しに隣室に声を掛けると、熱を帯びている奴隷の言葉が返ってくる。
『全然、駄目ですわね❤ やはり、わたくしは御主人様のオチ〇ポでないと満足できませんわ❤ ねぇ――その|妓女《ぎじょ》の次は、わたくしに、御恵みを頂けるのでしょう?❤』
「さて、どうするかな――この女は、オレの種を根こそぎ搾り取ってやると豪語していたしな。まぁ、その自信が本物か否か、これからって|処《ところ》だ。暫くは昔馴染みと愉しんでな――お。締りが、また強くなってきた。イクかな――それじゃあ、オレも、そろそろ|吐精《だ》させて貰うとするかな」
「あ、あひぃぃぃぃぃぃっ!❤ また、また|魔羅《まら》が、わっちの|膣内《なか》で、膨らんでぇぇぇっ!❤ ああ、果てる!❤ 旦那様の精を注がれて、あぁっ、わっち、わっちぃ……❤ イ、イッてしまいんすぅぅぅっ……!❤ あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっーーーー!!!!❤」
絢介は、|妓女《ぎじょ》が法悦の絶叫を上げると同時に、その子宮へと大量の精を放出した。
同時に、隣室からは。
『あっ……!❤ 早漏の、堕犬の分際で……❤ 少しは、頑張ります、わね……!❤ あ、くぅぅっ……!❤ わたくしが、御主人様の隣で……堕犬のオチ〇ポで、イ、イカされる、などっ……!❤ あ、あぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ……!!!!❤』
ルージュも、また、絶頂を迎えて嬌声を漏らす。
絢介は、どくり、どくりと、濃厚な白濁液を、女の|胎《はら》に注ぎ込む心地良さを堪能しながらも、まだ自分の欲望に衰える気配が微塵も無い事を感じ取っていた。
「さて――次は、どの|遊女《めす》と遊ぶとするかね?」
第2章 集団戦 『飛縁魔』
●
「――精気が足りんせん」
椿太夫は、御気に入りの|客《おとこ》を閨の中で弄びながら、その美貌を不機嫌そうに歪めた。
今宵の椿之遊廓は何かがおかしい――自分の元に集まってくる筈の雄の精気が、明らかに減退している。
先日、星を詠み解いた結果、自分が支配する遊廓の内部に、招かれざる異邦からの客人たちが|侵入《もぐ》り込む事は判っていた。
しかし、それにしても――こうまで自分に捧げられるべき|精気《かて》を好き放題に横取りされるとは。
「わっちは他人の星の運命を捻じ曲げる事は好きでありんすが――この、わっち自身の星を捻じ曲げられるのは、我慢がなりんせん」
忌々しそうに吐き捨てると、閨の外へと声を掛ける。
|其処《そこ》には、常に自らの眷属である|妓女《ぎじょ》――|飛縁魔《ひのえんま》の内の|何《いず》れかが控えていた。
その美貌や、妖力、男を篭絡して骨抜きとする手練手管は椿太夫には及ばないが。
それでも並の妖怪を容易く手玉に取るだけの力を有している。
「太夫。御呼びでありんすか?」
「耳障りな羽虫が、わっちの|見世《みせ》の中を好き勝手に飛び回っていんす。一匹残らずに、潰しなんし」
「あい。|承《うけたまわ》りんした。|何処《どこ》の馬の骨とも判らぬ|野暮天《やぼてん》には――火の閻魔が、地獄の沙汰をくだしんす」
飛縁魔――それは男を喰い潰すと云う魔性の女怪。悪妖が支配する遊廓に|蔓延《はびこ》る|妓女《ぎじょ》にして、主人に仇名す者たちの息の根を止める、冷血無惨の刺客である。
●
(先程から何やら騒がしいですわね。それに空気も随分と剣呑な気配に張り詰めていますわ。簒奪者側も本気になったと云う事ですかしらね?)
アルテナ・ヴェルゼルは、|妓楼《ぎろう》の|其処《そこ》|彼処《かしこ》に|気息奄々《きそくえんえん》として倒れ伏している遊女たちの姿を見回した。
軽く見積もっても一〇人以上。取り敢えずは悪妖の眷属たちから精気魔力を収奪して、自身の力に変えて貯蔵した。
その精気魔力は、これからの戦いに|於《お》いてアルテナの強力な武器となる筈だ。
(それでは、わたくしも行動を開始しましょうかしらね。これだけの精気魔力があれば簒奪者の幻惑結界も打ち破れるでしょうし――あら。)
魔女であるアルテナが突如として知覚した、何者かが魔術――|此《こ》の√に|於《お》いては妖術と呼称される――を行使する時に発生する魔力の乱れ。
迅速な対応は日頃から魔術に慣れ親しんでいるが|故《ゆえ》だろう。
魔導書に精気魔力を注ぎ込む事で対抗魔術を発動させる。
アルテナの眼前で炎の雨を降らせる筈だった古妖の術が砕け散った。
「わっちの|妹分《いもうとぶん》たちを随分と可愛がってくれた様でありんすね」
現れたのは妖艶な雰囲気を漂わせた遊女だった。
身に纏う着物の上等さや、保有する妖力の量から、これまでの相手よりも明確に位が上の存在なのだと理解できた。
「太夫の遊廓に許しも無く踏み込んだ|野暮天《やぼてん》は、皆、地獄の炎に焼かれる定めでありんすよ」
再び炎の妖術を行使しようとする|妓女《ぎじょ》へと、思い留まる様に声を掛ける。
「まぁ。思慮が足りませんわね。|此処《ここ》で、わたくしと貴女が魔術の腕前を競い合えば、|此《こ》の|見世《みせ》が火事になるだけでは済みませんわよ。御客様たちも巻き込んでしまいますわ。精気魔力を搾り取る為の贄――貴女の一存で間引いてしまっても、よろしいのですかしらね?」
それよりもと、アルテナは、自身の股間に猛々しい肉槍を生やしてみせた。
並の男の逸物よりも遥かに長く、太さも備えている|魔羅《まら》を片手で握り締めて、見せつける様に上下に扱いている。
「貴女の妹分から頂いた精気魔力は|此処《ここ》に……たっぷりと貯蔵されていますわよ❤ どうですかしら……|野暮《やぼ》な争いではなく、純粋に|妓女《ぎじょ》としての技量で、わたくしと競ってみませんこと?❤」
「この肉体変異の魔術は、貴女の妹分から教わったものですのよ」と、アルテナは肉棒を扱き続けながらに云った。
流石に一〇体を超える人妖から蒐集した精気魔力を集中させただけの事はある。
熱を帯びた疑似男根は、今にも、はち切れんばかりの勢いで膨張している。
「――良いでありんす。御前が、わっちの妹分から奪い取った精気も、本来は全て太夫の為のもの。その|魔羅《まら》が、もう|勃起《た》たなくなるまで徹底的に搾り取って差し上げんすよ❤」
|妓女《ぎじょ》――|飛縁魔《ひのえんま》は、アルテナとの雌雄を閨の業で決する事にした。
幸いな事に、|妓楼《ぎろう》には空いている部屋が沢山、存在した。
布団の上で股を開いている女の秘唇に、肉棒の先端を押し当てる。
自分にも備わっている生殖器であると云うのに――そこから溢れ出す淫蜜も、自分の身体が分泌するものと同様であると云うのに。
肉花の柔らかさも、愛液の滑りも、それを男根を通して感じ取るのであれば、|此《こ》れまでに経験した事が無い様な昂奮を|齎《もたら》した。
「あんっ❤ 亀頭に、いやらしい御肉が吸いついてくる様ですわ❤ それに、こんなにも温かな粘液がヌルヌルと絡みついてきて❤ 童貞を卒業される殿方とは、この様な気持ちなのですわね❤ はぁあ……❤ オチ〇ポを生やしただけですのに、もう、それだけしか考えられないぐらい❤ このギンギンに勃起した童貞オチ〇ポで、淫乱オマ〇コの中を滅茶苦茶に掻き回してやりたいですわ……❤」
「まるで覚えたての御猿さんの様でありんすね……❤ わっちにとっては好都合……|此《こ》の世の極楽を味わわせて差し上げんす……❤ わっちの|女陰《ほと》に|挿入《い》れて、無様に撒き散らしなんし……❤ あっ、あぁ、くっ、あぁぁっ……!?❤」
アルテナが、|妓女《ぎじょ》の挑発に応えて腰を突き出すと、逞しく|熱《いき》り立った男根が、幾重にも連なる|肉襞《にくひだ》の洞穴を押し広げていく。
女の身体でありながらにして堪能する男としての快楽は、少しでも気を抜けば、貯めに貯めた精気魔力を呆気なく漏らしてしまいそうになる程に鮮烈だった。
「あ、くぅっ……!❤ 凄く熱くて、絞めつけてきます、わっ……❤ これが殿方の、オチ〇ポの快楽ですのね……!❤ か、感動ですわっ……!❤ でも、まだまだ……!❤ この、いやらしく蕩けたオマ〇コの奥の奥まで徹底的に蹂躙して……わたくしのザー〇ンで、種つけをして、さしあげますわっ……!❤」
「くっ、ひっ、あぁっ!❤ こ、こんな、激しっ……!❤ こ、のっ……!❤ き、|生娘《きむすめ》の分際で……!❤ あ、くぅぅっ……!❤ わっちの、|膣内《なか》が……グリグリと、擦られて、ぇ……!❤」
「あ、んっ……❤ ふふっ……❤ 御顔が、いやらしく蕩けていましてよ……❤ これが殿方のオチ〇ポの使い方ですのね……❤ 貴女、|此処《ここ》が弱いのですかしら……ここを、先端で突いてさしあげますちと……❤ あっ、んんんっ……!❤ ほら……また、オマ〇コが締まりましたわ……❤ 気持ち良い……もうすぐ、|吐精《だ》しますわよ……!❤ わたくしの魔力を、貴女の弱い|処《ところ》に、たっぷりと注いで、さしあげます、わ……!❤ あ、あ、あっ……!❤ オチ〇ポの根本から、込み上がって、きますわっ……!❤ わたくしの、初、吐精っ……!❤ くる、くる、くるぅ……!❤ い、くぅぅ……!❤ チ〇ポ、から、もうすぐ……!❤ あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!!❤」
その瞬間を求めて、激しく腰を動かしていたアルテナが、宙を仰ぎ見る様に頭を跳ね上げた。
一際、激しく腰を打ち付けると、熱い白濁液と化した精気魔力が、疑似男根の内側を、出口を求めて迸る快感に恍惚となる。
「き、ひぃぃっ!❤ な、なんでありんすかぁっ、この、熱い精気はぁっ!❤ こんな、もの、一度に注がれたらぁ……っ!❤ あぁ、|灼《や》けるぅっ!❤ わっちの|女陰《ほと》が、子宮がぁっ!❤ あ、ひぃぃっ!❤ た、たすけてぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!!!❤」
一度に多量の精気魔力を身体の奥底に注ぎ込まれては、さしもの百戦錬磨の古妖とて耐え切れる筈も無い。
|褥《しとね》の中で激しく身悶えた後に、救いを求める様な嬌声を喉奥から絞り出しては、疑似男根を咥え込む秘唇から、勢い良く潮を噴き散らした。
そのまま、暫く、汗と蜜に塗れた身体を痙攣させると、やがては糸の切れた人形の様に全身を脱力させた。
どうやら、だらしなく失神してしまったらしい。
アルテナは、激しい運動により乱れた呼吸を整えると、|妓女《ぎじょ》の雌穴から疑似男根を引き抜いた。
「ふぅ……❤ 気持ち良かったですわ❤ これは殿方も御猿さんになってしまう訳ですわね……❤ あらあら……意識を失って、完全に無防備となっているでは御座いませんの❤ そんな有様では……悪い魔女に|悪戯《いたずら》をされてしまいますわよ?❤」
アルテナは魔導書を開くと、そこに刻まれた秘呪文の詠唱を開始する。
「わたくしの魔力が、たっぷりと注ぎ込まれた子宮……❤ |此《こ》の術の行使に、これほど相応しい触媒はありませんものね❤ 何を孕んだとしても恨まないでくださいませ❤ まぁ、でも……わたくしと、貴女との間に生まれる|存在《もの》ですもの❤ きっと……とても素敵な|使い魔《子供》になりますわよ……❤」
●
(|何処《どこ》に連れて行かれるのかしら?)
アーシャ・ヴァリアントは、椿之遊廓で|妓女《ぎじょ》として働き始めてから|暫《しばら》くして、とある|見世《みせ》の奥にある部屋へと連れて来られた。
|其処《そこ》にはアーシャと同じ様に|見世《みせ》で|客《おとこ》の相手をしている|妓女《ぎじょ》たちの内の何人かが揃っている。
それらは皆、一様に口許へと|嗜虐《しぎゃく》的な笑みを貼りつけていた。
「|御前《おまえ》も随分と|此処《ここ》での仕事に馴れた様でありんすね」
「それはね。あれだけ客を取っていれば嫌でも覚えるわよ。ところで、これは何なのかしら? 太夫への精気なら、さっき献上したばかりだし……」
「ふふ。恨むのであれば|御前《おまえ》の仲間を恨みなんし。太夫の領地を好き勝手に踏み荒らしてくれたでありんすからね。全て始末しろとの|御達《おたっ》しでありんす。|冥土《めいど》の土産に、たっぷりと気持ち良くしてあげんすよ」
「……? だから、いったい何の事を言って……ん、んんっ……!?❤」
椿太夫の認知改竄の香毒に浸りきった頭では|妓女《ぎじょ》たちの言葉の意味を理解する事は出来ない。
いきなりに唇を奪われて、その四肢を女たちの腕によって拘束されたとしても、すぐに反応する事は出来なかった。
口腔内に無理矢理に押し入ってきた|妓女《ぎじょ》の舌が熟練の動きで、甘い唾液を喉の奥へと流し込んでくる。
身体が燃える様に熱くなった。
「は、んっ……あ、あぁっ……!❤」
|忽《たちま》ちの内に腰砕けとなってしまい、その場へと座り込んでしまう。
「|如何《いかが》でありんすか? 太夫特性の媚薬の御味は。もうコレの事しか考えられないでありんしょう?」
アーシャの唇を奪った|妓女《ぎじょ》が着物を脱ぐ。
その股間には本来の女体には存在していない筈の器官――雄の生殖器が屹立していた。
それは|妓女《ぎじょ》として客を取っているアーシャからすれば見慣れたものだ。
薬の影響で火照っている身体は、その逞しさに貫かれる事を欲して止まない。
「はぁ、あぁ……御願いよ……それ、頂戴……❤ 犯して……犯してぇ……❤」
恥も外聞もなく自らの意志で股を開くと、たっぷりと蜜を滴らせた|女陰《ほと》の入口をひくつかせた。
「ふふ❤ 薬の影響とは言え、もう、こんなにも潤ませて❤ 相変わらずの好き者でありんすね❤」
「わっちは上の可愛らしい御口を頂きんす❤ さぁ……頬張りなんし❤」
股間に肉槍を構えている|妓女《ぎじょ》は一人だけではない。
アーシャを取り囲む|妓女《ぎじょ》たちは、その全てが、客として相手をする男よりも硬く逞しい逸物を持っていた。
間近にある一本を口の中に頬張りながら、左右それぞれの手の中に一本ずつを握り締める。
ジュルジュルと音を立てて舐めながら、シュッ、シュッと、激しく上下に扱いていく。
一人で複数の|魔羅《まら》へと奉仕をするのは、これが初めての経験ではない。
犯され、貫かれる快感に咽び泣きながらでも、自然と雄を吐精に導く舌遣いや、手淫を行なう事が出来る。
「はぁ、はぁっ、あっ、あぁっ……!❤ 気持ち、いいっ……!❤ あ、うぅ……!❤ あ、あぁぁーっ!❤」
「んっ……❤ 鍛えられていて、実に良い締めつけでありんす……❤ これは男であれば|堪《たま》りんせんでしょうな……❤ 精気も濃いでありんす……❤ 吸う度に、わっちが潤っていくぅ……!❤」
「あっ、扱き方も、なかなか堂に入ったものでありんす❤ 随分と、沢山の|魔羅《まら》を扱いてきた様でありんすえ❤ ん、少し早いでありんすが……わっちは、あぁ、|吐精《だ》しんすよ……❤ ん、ん、んんっ……!❤」
「あ、うぅ……❤ わっちも……そろそろ……❤ 舌が、|魔羅《まら》に絡みついてきて……❤ まったく……惜しいでありんすな……❤ 上手くすれば太夫の側近にさえ、なれたでありんしょうに……❤ あ、う……|吐精《で》るっ……!❤」
|妓女《ぎじょ》たちが何を話しているのかは相変わらず判然としない。
ただ自分の|胎《はら》の中を掻き回す肉棒の熱さ。
自分の顔と肌を汚す様に掛けられる種の濃さ。
全身を駆け巡る雌としての快楽が、アーシャの動きと声を、ますます淫らなものへと変貌させていく。
肉体という器に注がれるものが快感であるのならば、その代わりに奪われていくものは精気であり、生命力だった。
ドラゴンプロトコルの無尽蔵の体力――それは一日の内に何人もの|客《おとこ》を相手にしてもなお、さしたる疲労を感じない程のものであったのだが。
魔羅を一扱きする毎に、一舐めする毎に――そして一突きされる毎に。
自分という器の底が抜けて、そこに満たされていた何かが零れ落ちていく。
それを明確に実感でき、焦燥感すら覚えるというのに――行為を、途中で止める事が出来ない。
「あっ❤ あっ❤ あっ❤ あっ❤ あっ❤ あ、あぁーんっっっ!!!!!!❤」
(拙い……!❤ 身体に、力が、入らないっ……❤ でも、でも、無理ぃっ!❤ チ、チ〇ポ、熱すぎて、気持ち、よすぎてぇっ……!❤ あぁっ、イクッ!❤ またイクッ!❤ か、掛けてぇっ!❤ もっと、もっとアタシに、濃いザー〇ンをっ……!❤ 隅から隅まで、アタシを穢してぇっ……!❤)
媚薬の効能と、大勢の|妓女《ぎじょ》から輪姦される事による|被虐《ひぎゃく》的な悦びとが合わさって、アーシャの反骨精神を挫いていく。
|魔羅《まら》を根元まで咥え込んだ|女陰《ほと》は、先程から自分の意志を離れた様にギュウギュウと勝手に収縮していて、より一層に濃い種を搾り取ろうとしていた。
「んんっ……!❤ わっちも、そろそろ……!❤ たっぷりと|膣内《なか》に|吐精《だ》してあげんすよ……!❤ くぅぅ、|御前《おまえ》の為にっ、貯めた種でありんすっ……!❤ 無様に、みっともなく、声をあげて果てなんしっ……!❤」
|魔羅《まら》を挿入している|妓女《ぎじょ》の腰遣いが激しいものになる。
その動きに着物の帯が解けて、汗をかいて紅潮した、艶めかしい肌が露わになった。
女の肌に遺されているのは――鋭い刃物によって斬り裂かれた様な、深く、痛々しい傷痕。
(……その、傷……まさか。アタシの……爪の痕……? でも、どうして……アタシ……|此奴《こいつ》と、前に、闘った事が……駄目……❤ イクッ……!❤ また、潮、噴いちゃっ……!❤ 思い出せない……あぁ、イクッ、イクッ!❤ す、凄いのがくるぅ……!❤ も……駄目……!❤)
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ……………!!!!!!❤」
全身を快楽と呼ぶ事すらも生温い、想像を絶する様な灼熱の奔流が駆け巡る。
思考が|真白《まっしろ》に漂白されて、|胎《はら》の奥を満たす白濁液の奔流に酔い知れた。
嬌声と同時に潮を噴き散らしては、深い水の底で溺れる様な酸欠の苦しさに身悶える。
視界に映る映像が淡い滲み絵となっていき、意識が徐々に薄れていく。
「ふぅ……❤ これだけ精気を奪い取っても、まだ枯死しないでありんすか……❤ 流石は異邦の竜でありんすね……❤ けれども、もう動く事も|儘《まま》ならないでありんしょう❤ |御前《おまえ》の生命は、太夫が血の一滴、|魂魄《こんぱく》の一欠片に到るまで、余さず頂いてくれるでありんすよ❤ 星詠みの悪妖の糧になれる栄誉を噛み締めなんし❤ さぁ。この|阿婆擦《あばず》れを太夫の|見世《みせ》にまで運ぶでありんすよ❤」
●
その時点を|端境《はざかい》として、途端に空気が剣呑さを帯びた。
一見して、景色には何も変わった|処《ところ》が無いと云うのに、徘徊する|妓女《ぎじょ》たちの意識が、先刻までとは、まるで比べものにならない程に鋭く研ぎ澄まされている。
これは色里ではなく、嗅ぎ馴れた戦場の空気だと、|錫柄《すずつか》|鴇羽《ときは》は瞬時に悟った。
(これは侵入がばれましたね。隠れ切れるとは思っていませんでしたけれども。想定以上に早い……これ以上、警戒網を密にされたら|堪《たま》ったものではありません。仕方がないですね……この|経路《ルート》は諦めましょう。別方面から……)
「例え異邦の|技術《からくり》で姿を隠せたとしても……雌の匂いまでは消せぬでありんすよ」
「っ……!?」
熱光学迷彩外套『逃げ水』を羽織り、暗がりに潜んでいる鴇羽の背後へと不意に投げ掛けられる女の声。その場から、咄嗟の判断で飛び退くも、伸びてきた女の指先が僅かに掠めた。
それだけで、活動の為に必要となる気力や体力が、ごっそりと抜け落ちた様な感覚に捕らわれてしまう。
鴇羽は外套を脱ぎ捨てると、周囲に|小型無人兵器群《レギオン》を展開しながら、油断なく構えた。
眼前には|飛縁魔《ひのえんま》――悪妖の眷属である女怪が佇んでいる。
(まったく認識できませんでしたね……|小型無人兵器群《レギオン》の|感知装置《センサー》にも反応はありませんでしたし。何かの妖術の類でしょうか……で、あるとしても、どうやって私の位置を……臭い……?)
現在の状況を冷静に分析しようと試みている鴇羽に対する解答の様に、飛縁魔は口許に|妖《あや》しい嘲笑を浮かべると、伸ばした指先で、ある一点を指し示した。
鴇羽は僅かに視線を落として、刺された一点を確認する。
朱鷺色に染められたストライドスーツ。鴇羽の肢体に密着して、その柔らかな女性的曲線を強調している戦闘服の股間の布地は微かに沁みが出来ていた。
「女の悦びを知っている者が太夫の香りの中で、そう長く耐えられる筈もありんせん。|女陰《ほと》が疼いて仕方ないでありんしょう? はしたない蜜の匂いを、ぷぅんとさせて……わっちでなくとも気づきんす」
「そうですか。今度からは消臭剤を用意しておきますよ――|破《ハ》ッ!」
目視できる範囲に存在している敵は一人だけ。
それならば速やかに排除さえすれば撤退についての障害は無くなる。
鴇羽は、そう判断すると、|小型無人兵器群《レギオン》では無く、徒手空拳による制圧を選択した。
無音で、一撃のもとに相手の意識を刈り取る以外に状況を打開する手段はない。
現状、|小型無人兵器群《レギオン》に搭載されている兵装では、必要以上の騒音を発生させてしまうか、或いは広範囲を無用に破壊してしまう事だろう。
渾身の力を籠めた炎の拳撃をもって、目前の女へと痛打を見舞おうと試みる。
しかし――。
「大人しく降参すれば良いものを。愚かでありんすね。わっちの身体に生身で触れると|如何《どう》なるか――先程、身をもって教えてあげたというのに」
鴇羽の拳打は、確かに飛縁魔の肉体に触れた。
だが、そこに人体を破壊する確かな手応えは無い。
軽やかな羽毛を殴りつけた様だ。
(違いますね……これは。さっきの感覚……そして今も……触れた拳を介して、私の身体から……何かが吸われ……て……)
視界が、ぐらりと傾いたかと思えば、両足が自分の体重を支える事も出来なくなる。
地に倒れ伏したのだと思った瞬間、髪を乱暴に掴まれて、頭を無理矢理に引き起こされた。
「さて。このまま太夫の|処《ところ》に連れていってあげても構いんすが……|女陰《ほと》から、それだけ溢れさせていては苦しいでありんしょうからね。たっぷりと……|此《こ》の世の|地獄《ごくらく》を堪能させてあげんすよ」
精気を根こそぎに|収奪《うば》われて脱力しきった身体へと、大勢の|妓女《ぎじょ》たちが群がってきた。
●
「あっ!❤ あぁっ!❤ ひ、あぁっ、あっ!❤ あ、あぁーんっ!❤」
糸の切れた人形の様に、|碌《ろく》に力も籠められない身体を組み伏せられたかと思えば、数人がかりで犯される。
前戯も何も無い強引な挿入であると云うのに、悪妖の呪詛に浸り切った肉体は、想像を絶する快楽を生み出した。
喉奥から嬌声が|迸《ほとばし》り出て、結合部からは滝の様に蜜が流れ落ちる。
自分でも淫らだと思う程に、肉穴が悦びに打ち震えていた。
(気持ち良い……快感に、脳が|灼《や》かれる……! 逆らえない……! 力が、まるで入らない……!)
「あ、うぅっ……!❤ あっ❤ あっ❤ あっ、はぁぁ……!❤ 太いのが、あぁっ……私の、|膣内《なか》にぃっ……!❤ お、御尻に、もぉ……!❤」
鴇羽の身体を|代《か》わる|代《が》わるに|嬲《なぶ》りぬいている飛縁魔たちの股間には、逞しい逸物が備わっていた。
その太さも、硬さも、並の男の|魔羅《まら》を凌駕している。
普段、戦場という過酷な環境の中に身を置いている女の身体を、快楽により悶えさせていた。
勢い良く叩きつける様な腰遣いと共に突き出された肉槍に、秘洞を抉り、掻き回される。
本来は排泄の為の器官である筈の肛門さえ、女体を知り尽くした|妓女《ぎじょ》の手に掛かれば、柔らかに解き解されて、巨根を咥え込む為の淫らな穴とされてしまう。
総身を打ち据える快感は絶え間なく、絶頂には果てが無かった。
自分の口が、どれほどに淫らな声を漏らしているのかさえも判然としない。
一方的に与えられる快楽の対価として、生命そのものが奪われていく。
「はっ、あっ、あっ、あっ……!❤ は、ひぃ……❤ ひっ、あ、あっ……!❤」
陸に打ち上げられた魚の様だ。
意味のある言葉さえも発せなくなり、自分の意志では指一本、動かす事も出来なくなる。
薄れていく意識の中、肉槍の先端から放出された濃厚な子種が、自分の身体を白く染め上げていくのが分かった。
「|女陰《ほと》も、尻も、なかなかに良い具合でありんすな❤ 良い|妓女《ぎじょ》になれたでありんしょうに……勿体の無い事❤ もう動く事も出来ない様子❤ 搾りかすではありんすが……残りは太夫に献上するとしんしょうか❤」
生と死の境目で、ただ呼吸をしているだけの肉の塊と化した鴇羽の身体は、そのまま遊廓の奥に存在する悪妖の|見世《みせ》へと運ばれていった。
(あー……呪詛の影響もありますけれども……そもそもセッ〇ス自体が久しぶり過ぎて……イカされ過ぎて……もう、何も考えられませんね……❤ これは、本当に駄目かも……❤)
意識が完全なる暗闇に閉ざされてしまう間際。無意識に伸ばした指先が、白濁液に塗れたストライドスーツの忍ばせてある『黄泉竈食ひ』――高カロリーを誇る携行用タブレットのケースに触れていた。
●
(椿太夫の|見世《みせ》に入る|為《ため》には『椿之手形』が必要との事だが。果たして、それを、どうやって入手するかだな)
|御巫《みかなぎ》|朔夜《さくや》は、|漸《ようや》くの事で掴んだ悪妖の|棲家《すみか》へと到達する為の手段について思いを巡らせていた。
必要な|道具《もの》は判然としたが、問題は、それを獲得する|為《ため》の方法だ。
(わざわざ結界の奥に隠れ潜む程度には|奸智《かんち》に|長《た》ける相手だ。その手形とやらも恐らくは御気に入りの客にしか発行されていないだろうな。正攻法で入手する手段は無い。そうなると……極力、|迂闊《うかつ》な接触については避けたくはあるのだが……既に所持している者の|懐《ふところ》から|拝借《くす》ねる以外には無いか)
|件《くだん》の手形らしきものを所持していると思わしき|身形《みなり》の良い男を、先頃、酔客たちの喧噪の中で見掛けたばかりだ。
その男を探すとしよう――朔夜が、その様に考えた次の瞬間。首筋に冷たい刃を押し当てられている様な感覚に襲われて、思考するよりも先に身体が動いた。
前方への跳躍。強く地面を蹴り付けた反動で距離を稼ぐのと同時に、まだ身体が中空にある内に|拳銃嚢《ホルスター》から銃を抜く。
気配のみを頼りにして背後へと銃口を向ければ、|安全装置《セーフティ》の解除と、|引鉄《トリガー》を絞る動作とは、ほぼ同時に行なわれた。
狙いをつけた訳では無い、牽制の為の三連射。雷鳴にも似た銃声の響きの中に、死角からの襲撃者の忌まわしそうな舌打ちが混じる。
銃口を向けたままに振り返れば、果たして|其処《そこ》には悪妖の眷属である|妓女《ぎじょ》――|飛縁魔《ひのえんま》が佇んでいた。
「感の良い娘でありんすね。大人しくしていれば苦痛を感じる間もなく冥土へと送って差し上げんしたのに」
「|生憎《あいにく》と今は|六文銭《ろくもんせん》の持ち合わせがなくてな」
「ならば、わっちが立て替えて差し上げんす。遠慮するもんではありんせんよ!」
|飛縁魔《ひのえんま》は、その白く|嫋《たお》やかな繊手に妖力を籠めると、狩猟犬の|如《ごと》き俊敏さを|以《もっ》て襲い掛かってくる。
今度こそ狙いを定めて拳銃の|引鉄《トリガー》を絞るも、発射された弾丸は、その|悉《ことごと》くが|虚空《くう》を射抜いた。
(想像以上に早いな――今の銃声を聞きつけて他の者たちが集まってくる可能性もある。速やかに制圧しなければならないのだが――仕方が無い)
朔夜の判断は一秒にも満たない僅かな時間の中で下された。
繰り出される妖力を籠めた|妓女《ぎじょ》の手刀の到達を目前にして、全弾を撃ち尽くした拳銃から手を離す。
下手に後退するのでは無く、果敢にも前方へと進み出て、|妓女《ぎじょ》の|懐《ふところ》へと飛び込んだ。
その一閃に最大の威力が乗る寸前に、自身の身体で|敢《あ》えて攻撃を受け止める。
それは妖精族の因子を|基盤《ベース》として強化された、自身の肉体の耐久性を頼みとする賭けだった。
振り下ろされた|妓女《ぎじょ》の手刀が肉体に突き刺さる。
|其処《そこ》には身構えていた衝撃も無ければ、痛覚への刺激も無い。
外部から何らかの力が加えられるのでは無く――逆に身体の奥底に|漲《みなぎ》る活力というものが|収奪《うば》われていく様だ。
それと引き換えにして、甘く痺れる様な快感が下腹部に奔る。
痛みにのみ警戒をしていた身体は、危うく、熱を帯びた吐息を|零《こぼ》しそうになった。
(悪妖の呪詛の影響か……それとも、この人妖の|能力《ちから》に|拠《よ》るものか……だが……!)
予想外の刺激に、思わず膝から崩れ落ちてしまいそうになるが、それを寸前の|処《ところ》で踏み|止《とど》なる。
生死を|秤《はかり》に掛けた戦闘の最中であると云うのに、自分の中に眠っている女が|覚醒《めざ》めて、蜜を分泌するのが自覚できた。
それに身を委ねれば、恐らくは正体を失くしてしまう程の快感を貪る事が出来るのだろう。
|妖《あや》しき堕落への誘いを、|鋼鉄《はがね》の克己心を|以《もっ》て退けると、そのまま|飛縁魔《ひのえんま》の手首を掴み、腕ごと捻り上げる。
「くっ、ああっ……! 何を……!?」
「惑わされているだけの者ならば、いざ知らず。眷属の女怪が相手であれば加減をする理由も無い――その腕、|破壊《いただ》くぞ」
本来、曲がらぬ方向へと無理矢理に関節を捩じり上げる人体破壊の業。それは鈍い音と共に|妓女《ぎじょ》の腕の骨を破壊した。
「ぎあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!?」
瞬間、耳を|劈《つんざ》く様な悲鳴が上がる。
痛みに耐え兼ねて、その美貌を醜く歪める|飛縁魔《ひのえんま》の意識を、続く顎への|掌打《しょうだ》が無慈悲にも刈り取った。
頭蓋の内部。脳を直接に揺らす一撃は、人妖を相手にしても効果|覿面《てきめん》だった。
糸が切れた人形の様に、地に倒れ伏す|妓女《ぎじょ》の|懐《ふところ》から、大輪の椿の花が描かれている手形が|零《こぼ》れ落ちる。
「これは|僥倖《ぎょうこう》。まさか探している|手形《もの》を持っていたとはな。ありがたく|拝借《ちょうだい》させて貰うとしようか」
銃声に加えて、先の悲鳴。また新たなる敵が集まってこないとは限らない。
朔夜は『椿之手形』を拾い上げると、速やかに、その場を離脱した。
●
椿之遊廓に数多、存在している遊女屋の内のひとつ。
その広間で、マジィ・メッサ・デカメロンは、悪妖の眷属である|飛縁魔《ひのえんま》と対峙していた。
男の心を惑わせる|妖《あや》しき美貌も、その表情が殺意によって歪んでいる今となっては醜悪と評するのが相応しい。
マジィは、女の内面に潜む|夜叉《やしゃ》と相対している様な心持ちだった。
「愛は互いに分かち合うものです。それを一方的に精気を奪うなど、決して許されません。その過ちを此処に正しましょう――穢れなき聖剣の威光を|以《もっ》て!」
マジィが携える武具は、遥かなる悠久の時を得ても|尚《なお》、選定の岩に刺さり続けたという伝説の聖剣。それは|未《いま》だに鞘の中に収まっている状態であるのにも関わらずに、剣身に宿した荘厳なる神気を|以《もっ》て周囲の妖気を払拭していた。
|真竜《トゥルー・ドラゴン》への信仰に生涯を奉げし者の証左である法衣の腰巻は、|既《すで》に大きく捲り上げられていて、腰の部分で締め直されている。
聖剣を振るうに際して、足下で優雅に翻る布地が、その動きを阻害してしまう為だ。
遊廓の支配者である椿太夫が相手であれば、いざ知らず、その眷属に過ぎない|飛縁魔《ひのえんま》など聖剣の威光を前にしては抗う術すら持ち合わせてはいないだろう。
マジィは速やかなる降伏を相手に進めようとして――着物の袖で口元を隠しながらの密かな笑い声を上げている|妓女《ぎじょ》の様子を不思議に思った。
「西洋の棒振りにも居合の業があるとは寡聞にして知りんせんでしたね。それとも聖剣とやらは鞘のままでも相手を断てんすので?」
「えっ……」
マジィは、その指摘に、思わず赤面した。
日頃から武器の柄を握っての戦いに慣れ親しんでいる訳ではない。
肝心な場面で失態を演じてしまった事による内心の動揺が、続く行動を緩慢にさせた。
慌てて、聖剣を鞘から抜き放とうと試みるが、それよりも先に、畳の上を滑る様に移動する|飛縁魔《ひのえんま》が|懐《ふところ》に飛び込んでくる。
「きゃあっ……!?」
まさしく一瞬の早業で、その腕が聖剣を取り上げると、無垢なる|抜身《ぬきみ》の剣は|飛縁魔《ひのえんま》の掌中で輝きを放っていた。
「……なかなかの業物ではありんすが。やはり西洋の|長刀《なががたな》は武骨で好きになりんせん。それにしても血の痕も、脂の曇りもありんせんね……ぬしは、どうやら、まだ人を斬る事については|未通女《おぼこ》の様でありんすね」
「……っ!」
マジィは、|妓女《ぎじょ》の言葉に図星を指されて沈黙する。
聖剣を奪われるという失態に内心で歯噛みをしていると。
「|後生大事《ごしょうだいじ》に鞘に納めておくばかりでは何の意味もありんせん。人斬りの得物は血に濡れてこそ……わっちが使い方を教えて差し上げんすよ。その身体に良く刻み付けなんし」
無造作に振るわれた聖剣の切先が銀色の弧を描いて、マジィの身体を通り抜けた。
しかし、そこに肉を裂き、骨を断つ手応えは無い。
血飛沫はおろか、皮膚の薄皮さえも傷ついてはいない。
「……おや?」
その余りの手応えの無さに、|飛縁魔《ひのえんま》が思わず|零《こぼ》した疑念の呟きに。
「は、あぁぁぁぁんっ……!♥」
予想外の刺激に身体を震わせながら、思わず畳の上に膝をついてしまったマジィの官能的な叫びとが重なった。
「これは……見掛け倒しの|鈍《なまく》らと思いんしたが。斬るべき者と、そうでない者とを、この剣自体が選んでいる様でありんすな。その甘い声……どうやら、この剣では、ぬしの肉も骨も断てぬ様でありんすが……この剣の力と、ぬし自身の肉体とが|衝突《ぶつ》かりあえば、そこには快楽が生じる様子。これはこれで面白い趣向になりそうでありんす……ほら」
|飛縁魔《ひのえんま》の手首が返り、聖剣による一斬が、再びマジィの身体を通り抜ける。
その瞬間、マジィの子宮が燃える様な熱を湧き上がらせた。
悦楽の雷が総身を|灼《や》き、全身の神経を過敏にする。
「あ、あぁっ! ふ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ……!!❤」
|堪《たま》らずに声を上げてしまえば、秘部から勢い良く噴き出した蜜が、まるで粗相をしてしまったかの様に下着を濡らした。
法悦の表情を浮かべて、だらしなく筋肉を弛緩させるマジィの痴態を、|飛縁魔《ひのえんま》が嗜虐的な眼差しで見詰めている。
「おや。もう果てんしたか。しかし、まだ序の口でありんすえ。もう二度と太夫に歯向かえない様に、たっぷりと女の悦びを教え込んであげんすよ……」
三度、聖剣を振り上げる|飛縁魔《ひのえんま》の前で、マジィは、息も絶え絶えとなりながらも起死回生の手段を行使した。
震える唇が、|真竜《トゥルー・ドラゴン》への祈りの聖句を紡ぐ。
「……っ……!? これは、何でありんすか……剣の柄が、わっちの手と、融け合って……!」
「……はぁ、はぁ……聖剣の、融合です……剣に宿る聖性は、貴女の邪悪な力を浄化して……やがては、存在そのものを、無に帰します……それが嫌ならば……どうか、降参して下さい……御願い致します……」
マジィは、|未《いま》だ絶頂の余韻が残る身体を、意志の力だけで強引に立ち上がらせながらに呟いた。
|飛縁魔《ひのえんま》は必死になって聖剣の柄から手を放そうとして悪戦苦闘しているが、自らの肉と融け合い、骨と一体になった存在より逃れる事は敵わない。
「重ねて御願い致します……どうか私に、貴女の生命を、奪わせないで下さい……!」
真摯にして切実なる懇願。それを前にして、遂に|飛縁魔《ひのえんま》は自らの敗北を認めた。
●
「おらっ! さっさと歩くんだよ!」
「っ、う……! 乱暴は、よしておくんなんし!」
|槍田《うつだ》|陵志《りょうじ》は、一人の遊女の手首を掴み、|妓楼《ぎろう》の奥へと強引に連れ込もうとしていた。
椿之遊廓の支配者である悪妖の眷属――|飛縁魔《ひのえんま》。これまでにも数多くの男を、その美貌によって|籠絡《ろうらく》してきた女怪の身体には、先の激しい戦闘の痕跡が生々しく刻み付けられている。
陵志と歩調を合わせるのが|漸《ようや》くという程に深く疲労している様子であり、身に纏う|艶《あで》やかな着物の上質な生地も、その|処々《ところどころ》が引き裂かれていた。
「はんっ。こっちの|生命《タマ》を狙ってきたのは|手前《てめぇ》の方じゃねぇか。今更、そんな事が言えた義理かよっ!」
陵志としては、これから御楽しみという|処《ところ》で邪魔が入ったのだ。
恐らくは先に潜入していた他の√能力者たちが騒ぎを起こしたのだろうが。
|妓女《ぎじょ》の一人から、いきなり襲撃を受けたりと散々な目に遭わされた。
勝者の特権として、この溜まりに溜まった|欲求《フラストレーション》を解消して貰わなくてはならない。
「と、この部屋が良さそうだな。さっさと入りな。二度と俺に逆らえなくなるまで調教してやるぜ」
陵志は邪魔が入らなさそうな手頃な部屋を見つけると、勢い良く、その扉を開いた。
そこには――。
「――うわっ!?」
いきなりの乱入者に驚愕の声を漏らす、一組の先客の姿があった。
可憐な少女と見紛うばかりの容姿を持つ青髪の少年が、裸に剥いた|妓女《ぎじょ》に獣の如き四つん這いの姿勢を取らせている。
硬く屹立した肉槍で、女の濡れそぼる秘部の入口を、今まさに貫こうとしている寸前だった。
「おっと。|悪《わり》ぃな。先客がいたのか」
陵志が、にやにやとした笑みを青髪の少年――|氷原《ひのはら》|明日里《あすり》へと向ける。
「いえ。ちょっと驚いただけですから……❤ 陵志さんの御相手も、凄い綺麗な|女《ひと》ですね❤」
「おう。いきなり殺す気で襲い掛かってきてくれたがな。見ての通りに、顔といい、身体といい、極上の女だぜ。明日里も、なかなか良い女を捕まえたじゃねぇか。後から俺にも味見させろよ」
「それは構いませんけれども……❤ じゃあ僕の方も、その|女《ひと》と遊ばせてくださいね……んっ❤」
明日里は、陵志の存在を気にした様子もなく腰を突き出した。
可憐と評するに相応しい外見に|似付《につ》かわしくない逞しき|逸物《いちもつ》が、|妓女《ぎじょ》の|女陰《ほと》に飲み込まれていく。
明日里は猛然と腰を使い出した。
その下腹部が、女の豊満な尻肉と|衝突《ぶつ》かり、パンパンという音を立てる。
「あぁっ!❤ ひ、あぁぁっ!❤ こんな太い……!❤ わっちの|膣内《なか》がぁ、掻き回されてるぅっ!❤」
明日里の相手を務めている|妓女《ぎじょ》は、|媾《まじわ》る姿を乱入者の前に曝け出している事にも構わずに、甘い声を上げている。
陵志も、その痴態を目前にすれば|辛抱《しんぼう》する事が出来なくなってくる。
先程から|洋袴《ズボン》の内側では、硬く屹立した肉棒が、女の温もりを求めて滾っていた。
「俺も失礼させて貰うぜ。さっさと股を開きやがれっ!」
「はぁっ!? ちょっと……何もこんな|処《ところ》で……あっ! い、嫌でありんすっ……きゃあっ!?」
此処まで強引に引き連れて来た|妓女《ぎじょ》の着物を無理矢理に剥ぎ取ると、その身体を力任せに押し倒す。
女の、なけなしの力を振り絞っての抵抗についても意に介した様子は無い。
股を開かせると、露わになった秘唇の入口へと向かって猛る肉槍を突き出していく。
「あっ、あぁぁぁぁ……!?❤」
「へっ。何が嫌だよ。もうグショグショに濡らしやがって。口ばっかりじゃねぇか! オラ、オラッ! いい具合のマ〇コだぜっ! 俺のチ〇ポを美味そうに咥え込んで、離しやがらねぇっ!」
「はっ、あぁっ!♥ 激しっ、あっ、あっ、あぁっ!❤ あ、うぅぅぅっ……!❤」
陵志の荒々しくも漢らしい腰遣いが|齎《もたら》す快感を前にして、|飛縁魔《ひのえんま》は高波に翻弄される小舟の|如《ごと》くに悶え狂った。
「あはっ❤ 御隣さんに触発されたんですかね?❤ んん、こっちも凄く締まる❤ それとも此処が弱いんですかね?❤」
「あっ、あぁぁぁぁぁっ!❤ そこぉっ、そんなに押し込まれたらぁっ!❤ あ、あひぃぃぃぃぃんっ!❤」
明日里は女の感じる箇所を、これまでの反応から探り当てた。|其処《そこ》を、グリグリと亀頭で擦り上げる様にしてやると、閨での行為については百戦錬磨である筈の|妓女《ぎじょ》が、経験の浅い小娘であるかの様に激しく乱れた。
貪欲に男根へと絡みつく幾重もの肉襞が複雑に戦慄く心地良さに、下半身から甘く痺れる様な快感の波が全身に広がっていく。
「流石は人妖の女だぜ。すんなりと奥まで咥え込む癖に、引き抜こうとすると、名残惜しそうに全体が絞めつけてきやがるっ! おらっ! 嫌がっていても、この反応が|手前《てめぇ》の本音だろうがよっ! 俺のチ〇ポが欲しいなら、もっと厭らしく|尻《ケツ》を振りやがれっ!」
「あ、あぁぁぁぁっ!❤ あっ、おっ、おぉっ!❤ ひぃっ!❤ ふ、太い|魔羅《まら》がぁ、わっちの|膣内《なか》で暴れていんすぅっ!❤ 駄目っ、き、気持ち良いっ!❤ あぁぁっ、もっと、もっとでありんすぅぅぅぅぅっ!❤」
陵志の逞しさの前に成す|術《すべ》もなく雌に|変貌《か》えられた|飛縁魔《ひのえんま》は、恥も外聞も無く、更なる喜悦を求めて声を上げた。
「んっ❤ 気持ち良いですよ❤ 気づいていますか?❤ さっきから、大きなオッパイがプルンプルンと揺れて❤ ほら。乳首も、こんなに硬くなっています❤」
「あひぃっ!❤ あ、あぁぁ、そこぉ、そんな、弄られたらぁ……!❤ は、果ててしまいんすぅっ!❤」
明日里は背後から女を貫きながら、行為の激しさによって|弾《はず》む|撓《たわ》わな膨らみへと手を伸ばして、それを揉みしだいている。
指先は器用にも頂点にある突起を挟み込み、クリクリと弄り上げていた。
乳首への刺激に、膣内の締めつけが一層に窮屈になり、明日里の肉棒を心地良く包み込んでいく。
女が絶頂の予感に身体を打ち震わせているのと時を同じくして、明日里も、また、限界が近づいているかの様に腰遣いを激しくしていく。
隣では陵志の動きも放出を求めるものになっていた。
「そろそろイクぜっ! |手前《てめぇ》のスケベなマ〇コの奥に、俺のザー〇ンを注いでやるからよっ! おらっ、おらっ、おらっ! う、おぉぉぉっ!」
「ひぃぃっ!❤ あぁ、わっちの中に、沢山、出ていんすぅっ!❤ あ、ぁ、あぁっ!❤ わっちも、わっちもイクゥゥゥゥッ!❤ あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!❤」
「く、おっ! 締まる、締まるぜぇっ! チ〇ポ、喰い千切られそうだっ! おぉ、小便みたいに出やがるっ! 止まんねぇっ!」
陵志が溜まりに溜まった欲望を放出すれば、明日里も、女の最奥に白濁液を解き放っていた。
「うぅっ❤ くぅぅぅぅっ!❤ 出る、出ますよっ!♥ あ、はぁぁ……気持ち良いっ……❤」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!❤ イク、イク、イクイクイクッ、イ、クゥゥゥゥゥゥゥゥッ!❤」
男たちが放出したのも同時なら、女が蜜を噴き出しながら法悦の表情を浮かべたのも同時だった。
嬌声をあげて、痴態を晒し、男たちの精を存分に浴びながらに快楽の頂点を極める。
「んんっ……はぁ、はぁ……❤ 凄く気持ち良かったですよ……❤ でも、隣で、あんなに激しくされてた所為かな?❤ まだまだ、全然、元気なままです……❤」
「こっちもだぜ。一発だした程度じゃあ、全然、萎える気配がねぇ。おい、明日里。そろそろ、そっちの女を貸して貰うぜ」
「はい❤ じゃあ、僕も……そっちの|女《ひと》を御貸りしますね……❤」
男たちの行為の激しさに息も絶え絶えといった状態で、脱力しきっている二人の|妓女《ぎじょ》たち。その姿とは対照的に、二人の男の股間に屹立する|逸物《いちもつ》は、まだまだ欲望を放出し足りないのか、高く天を衝く様に反り返っていた。
ほどなくして、交わる男を取り替えた|妓女《ぎじょ》たちの喜悦の声が、遊廓の奥に響き渡り始めた。
●
|篠宮《しのみや》|詩乃《しの》は退魔巫衣の乱れを直しながらも、先頃までの自身の痴態を脳裏に思い浮かべていた。退魔の一族にあるまじき姿を晒してしまった事を恥じ入る様に、その頬を朱色に染めている。
(私とした事が……不覚です。猛省いたしませんと……)
椿之遊廓を支配する悪妖の呪詛の影響を受けてしまい、見知らぬ男を相手に|妓女《ぎじょ》としての振る舞いをしてしまった。|現在《いま》は、かろうじて正気に立ち返っている。しかし身体の|其処《そこ》|彼処《かしこ》には、先頃まで自分の|肢体《からだ》を|恣《ほしいまま》にしていた男の痕跡が刻みこまれていた。
もっとも身体を穢されてしまったからといって、退魔の一族としての務めを放棄する訳にもいかない。
詩乃は意識を改めると篠宮家の一員として、世の安寧を搔き乱す悪妖を討伐する為に行動を再開した。
そして、悪妖の眷属である女怪――|飛縁魔《ひのえんま》と遭遇する。
詩乃は油断なく薙刀――神薙・幽月を構えた。
「|飛縁魔《ひのえんま》ですね。御覚悟っ!」
先手必勝とばかりに、洗練された所作で薙刀を振るう。
気剣一体。刃筋は乱れなく真直ぐに。日頃の鍛錬の成果を遺憾なく発揮する操作術は、流麗な軌跡を虚空に描いた。
「霊力の宿る業物でありんすか。それは、わっちの様な妖怪の天敵でありんすえ。仕方がありんせん」
|飛縁魔《ひのえんま》は、霊力を宿した薙刀による連撃から、身を|翻《ひるがえ》す事で逃れようとする。
詩乃は、それを許すまじと、更に間合いを詰める|為《ため》に踏み込もうとした。
その瞬間、三人の男たちが、|飛縁魔《ひのえんま》を|守護《まも》ろうとするかの様に立ち塞がる。
男たちの瞳に理性の光は|喪失《な》い。悪妖の呪詛に捕らわれた犠牲者たちなのだと即座に看破できた。
流石に、幽月の刃を、操られているだけの者たちの血で曇らせる訳にもいかない。
「くっ……卑怯者!」
詩乃は、|無辜《むこ》の者を|楯《たて》とする悪辣なる所業を前にして、怒りを露わにした。
|飛縁魔《ひのえんま》は、それを意に介した様子もなく、唇を嘲笑の形に歪めている。
「卑怯? わっちの閨の業で虜とした男たちでありんす。|誹《そし》られる|謂《いわ》れはありんせん。この男たちを斬り捨てるのが嫌だというのであれば、|主《ぬし》も、わっちと同じ様に身体を張る事でありんすな。もしかしたら正気に立ち戻るかも知りんせんよ。先程の客の様に、この男たちも満足させてあげなんし」
「なっ……!?」
詩乃は、その言葉に、激しく動揺した。
頬を羞恥によって朱色に染めあげる。思わず身体を硬直させた。
男たちが、その一瞬の、しかし致命的な隙を見逃さずに襲い掛かってくる。
詩乃は、慌てて薙刀を構え直そうとするのだが、その刃を振るう訳にもいかない。
判断の遅れは更なる状況の悪化を招いた。
男たちの手で床に組み伏せられてしまうと、整えたばかりの退魔巫衣を強引に脱がされてしまう。
「あ、いやっ……! やめてください……! だ、だめぇ……!」
詩乃は、裸に剥かれながら、悲鳴をあげた。
|飛縁魔《ひのえんま》は、その様子を見詰めながら、可笑しそうに|嘲笑《わら》っている。
「何を今更。男の前で自分から股を開いて、激しく尻を振っていた淫売でありんしょうに。今更、カマトトぶっても遅いでありんすえ」
「……っ! 違います……! あれは……先程の事は、呪詛の影響で……私の本意では……あっ……! だ、めぇ……!♥」
詩乃は、男たちの愛撫を受けると身悶えた。
口では否定しても、既に女としての悦びを知ってしまっている若い身体は、僅かの刺激にも鋭敏に反応する。
先刻まで男を相手にして乱れていた記憶が生々しく残っている|現在《いま》、無理矢理の愛撫に対しても|女陰《ほと》は淫蜜を滲ませてしまう。
詩乃は、さほどの時間を置かずして、またも見知らぬ男の逸物を受け入れてしまっていた。
左右の手に異なる男の|魔羅《まら》を握り締めながら、器用にも上下に摩擦している。
男の逸物を根本まで咥えこんでいる雌穴は、それが引き抜かれ様とする度に、貪欲なひくつきを見せていた。
「はっ、あっ、あっ!♥ あ、うぅ、うっ、あぁっ!♥ あ、あぁぁぁっ!♥ 駄目です、この様な事……私は、こんなっ、快感に、流されるなどっ……!♥ あ、あぁぁぁっ……!♥」
「美味そうに|魔羅《まら》を咥えこんで喘いでいる癖に、往生際が悪いでありんすよ。しかし不可解でありんすな。この得物といい、装束といい……わっちらが忌み嫌う陽の霊力を宿しているものに相違ありんせん
。だと云うのに……|主《ぬし》の身体に宿る力には|寧《むし》ろ、わっちらと近しいものを感じるでありんすえ……興味深いでありんすな」
「あっ!♥ あっ!♥ あ、はぁぁっ!♥ だ、めぇ……頭の中が、|真白《まっしろ》になってぇ……!♥ あ、あ、あっ!♥ はっ、私の奥まで、あぁっ、掻き回されてるぅっ……!♥ あ、あぁぁっ!♥ い、くっ……いって、しまいますぅぅぅ……!♥ あ、あぁぁぁぁぁぁっ……!♥」
詩乃が絶頂の嬌声をあげるのと同時に、男も、また獣の様な呻き声を漏らした。
その奥深くまで届く程に強く腰を打ちつけたかと思えば、窮屈な膣壁に絞めあげられた肉槍の先端からは多量の精汁が放出される。
同時に左右の手で、それぞれに扱かれている二人の男たちも限界を迎えた。
詩乃の美貌に、剥き出しの乳房の上に、白濁した熱い雄液が飛び散り、卑猥な化粧を施していく。
「あっ、あっ、あっ!♥ あ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!♥」
詩乃の腰が浮いて、雄の肉槍に貫かれて栓をされている結合部から、勢い良く蜜を噴き撒いた。
|飛縁魔《ひのえんま》の冷酷なる視線が、法悦の表情を浮かべたまま淫獄へと堕ちていく詩乃の痴態を射抜いている。
「この娘……ことによれば太夫の御気に召す存在やも。わっちの一存で始末する訳にもいきんせんね。後の処遇は太夫の判断を仰ぐとしんしょうか」
詩乃の意識は、その言葉を最後に闇色の水底へと沈んだ。
●
自身を守護する護霊『何者でもないメアリーアン』との精神的な繋がりが不意に切断された。正確には完全に切断された訳ではないが、それでも、意識を集中しなければ感じ取る事が出来ない程に弱体化している。
アリス・アストレアハートは残してきた護霊の事が心配になり、進んでいた道を引き返した。
得体の知れない嫌な焦燥感に突き動かされる様にして、今にも千切れてしまいそうな程に、か細い繋がりだけを頼りにして駆け抜ける。
その果てに――。
「そんな……護霊ちゃん……!」
「アリスの|御《お》|莫迦《ばか》さん……何で戻ってきちゃうかな……❤」
『何者でもないメアリーアン』が、法悦の表情で男達から精気を吸い取っている姿と相対した。
守護するべき対象である筈のアリスの前で、複数人の男達を相手にしながら、退廃的な行為に酔い痴れている。
「そんな事しちゃ駄目だよ……! 待ってて……! 今すぐに浄化してあげ……きゃあっ……!?」
アリスは、護霊の存在を汚染して、自身との繋がりを断たんとしている悪妖の呪詛を払う為《ため》にに、穢れなき天司神姫の力を解放しようとする。
しかし、それを許さぬ者が物陰に潜んでいた。
悪妖の眷属である|飛縁魔《ひのえんま》は、アリスが浄化の力を解放する一瞬の隙をついて、その矮躯を捕らえた。
|飛縁魔《ひのえんま》の腕が肌に触れた瞬間に、浄化の力が、ごっそりと抜け落ちていく。
「護霊を見捨てられぬ甘さと、目先の事象に囚われて周囲の警戒を怠る迂闊さ。その力は、かなりのものでありんすが……やはり、まだまだ子供でありんすな。けれども、これだけ|吸収《す》い上げても|尚《なお》、干乾びる気配もなし。太夫の糧としては極上でありんすな。どうれ……」
|飛縁魔《ひのえんま》の掌が、アリスの下腹部を卑猥な卑猥に撫であげた。
「ふぁっ……やぁっ……❤ な、何か御股が、ムズムズするよぉ……!❤ あ、あぁぁっ……!❤」
アリスは不意に訪れた自身の身体の変化に戸惑いの声をあげる。
次の瞬間、童話の中の少女を思わせる可憐なドレスの下では、女の身体には備わっていない筈の雄の生殖器が|勃起《た》ちあがっていた。
「ふふ❤ 流石に|姿形《なり》が子供でありんすから、生えてきた|魔羅《まら》も粗末に皮を被っているでありんすな❤ とはいえ放出する量に変わりはなし……その力、最後の一滴まで気持ち良く|吐精《だ》しなんし❤」
「ふ、あぁ……❤ やぁ、そんな、オチン〇ン掴んじゃ……擦っちゃ、駄目ぇ……!❤ うぅぅ、で、でちゃううぅ……!❤ 護霊ちゃんっ……!❤」
「もう……だから戻ってきちゃ駄目だったのにね❤ アリス……でも気持ちいいでしょう?❤ あはっ❤ アリスのオチン〇ン、包茎なのに、元気良くピクピクと震えてる❤ すっごくエッチ❤」
アリスは皮に包まれている肉棒を扱かれる心地良さに腰砕けとなると、甘い声をあげながら悶えた。
その様子を見た|飛縁魔《ひのえんま》は着物を|開《はだ》けると、アリスの股間で屹立している|逸物《いちもつ》の先端を、自らの秘部に擦りつけていく。
「さぁ……|搾《しぼ》りとってあげんすよ……❤ 無様に漏らしなんし……あ、あぁぁ……!❤」
|飛縁魔《ひのえんま》が腰を落とすと、たっぷりとした潤滑油で滑りが良くなっている肉穴が、アリスの疑似男根を包み込みながら締めあげた。
「ふぁぁ……❤ だ、駄目っ……!❤ こんなの、腰、勝手に動いちゃっ……!❤ あ、あぁぁぁぁっ!❤ なにか、なにかでちゃうよぉぉっ……!❤ あ、あぁぁぁぁぁんっ!❤」
アリスは挿入から、さほどの時間を置かずして我慢の限界を迎えた。
浄化の力が、穢れた|魔羅《まら》の根本で、ドロドロとした白濁の欲望に変換される。
それを女の|胎《はら》の奥に放出する事の快感に酔い痴れながら、更なる刺激を求めて、いやらしく腰を躍らせてしまう。
「あはっ❤ アリスってば包茎なだけじゃなくて、我慢も出来ない早漏オチン〇ンなんだね❤ みっともない❤ でも、まだまだ凄く元気みたい❤ ほら、もっと頑張って腰を動かさないと❤ 気持ち良くなれないよ❤」
「う、ぅぅ、護霊ちゃん、護霊ちゃん……❤ あ、あぁぁんっ!❤ また、でるっ、でちゃうぅぅぅぅっ!❤」
アリスは|飛縁魔《ひのえんま》が満足するまで浄化の力を無理矢理に吸収されると、護霊共々に椿之遊廓の支配者である悪妖の元へと連行された。
●
「んぉぉ、おっ、ん、あぁぁぁぁんんっ!❤」
獣の呻き声を思わせる女の嬌声が、明り取りの窓さえも無い座敷牢の中に響いていた。
|時任《ときとう》|桃花《ももか》は虜囚の身となり、悪妖の眷属である|飛縁魔《ひのえんま》に尋問されている。
理性を|喪失《な》くした男達に輪姦されながら、その身体は幾度もの絶頂に追い遣られていた。
「強情でありんすね。はよう、全てを洗い浚いに話してしまった方が楽になるでありんしょうに」
「はぁーっ、はぁーっ……あ、おぉぉぉ、う、おぉぉんっ……!❤ だからぁ、何も知らないってぇ……僕は、ただっ、|宿敵《ごしゅじんさま》の命令でぇ、あ、お、おっ!❤ せっ、くすっ、を、するためにぃっ、来ただけぇ……!❤」
桃花は、雌穴と尻穴とを屹立した男根によって同時に串刺しにされる快楽に酔い痴れながら、幾度目かも判らない言葉を繰り返す。
しかし、その弁に納得する|飛縁魔《ひのえんま》ではない。
「まだ、そのような戯言を。どうやら躾が足りぬ様でありんすえ」
従えている男達に命令を下すと、桃花を責める行為は、ますます激しさを増していく。
「あぅ、おっ、おっ、おぉぉぉっ!❤ 凄いっ、僕の御腹も、御尻も、奥まで掻き回されてるぅっ……!❤ こんなにエッチなチ〇ポで突かれたらぁ、あぁぁ、おかしくなっちゃうよぉぉぉっ!❤」
桃花との行為が|齎《もたら》す快感によって男達が限界の時を迎える。
放出される白濁液は勢い良く飛び散り、桃花の裸体に卑猥な化粧を施していく。
驚く程に多量の欲望を解き放っても|尚《なお》、男達の逸物は萎える気配がない。
「あ、はぁぁっ……❤ すっごいよぉ……❤ まだオチ〇ポ、こんなにビンビンに勃起してる……❤ 御主人様のオマ〇コより、僕の方が気持ち良かったのかな?❤ ん、ザー〇ン塗れの雄臭いチ〇ポ、ペロペロしてあげるね……❤」
桃花は、男達の玩具として扱われている事に|寧《むし》ろ悦びを覚えながら、その|魔羅《まら》に対して積極的に奉仕を行なっている。
肉体を苛む劣情が口をついて出た様な言葉は、しかし、男達の主人である|飛縁魔《ひのえんま》の誇りを傷つけた様だ。
口許には笑みを称えながらも、刃の様に細められた目には剣呑な光が宿っている。
「|阿婆擦《あばず》れが。|御不洒落《おぶしゃり》ざんすな。どうやら、もう少し手荒い折檻が御望みの様でありんすえ」
「んおっ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ……!?❤ この香り、び、媚薬ぅっ……!?❤ あうぅぅぅぅぅ、いく、いく、いくっ!❤ 御潮、噴いちゃうぅぅぅぅぅぅっ!❤ ドピュドピュってぇ、あぁぁ、き、気持ち良いぃぃぃぃぃぃぃっ……!!❤」
|飛縁魔《ひのえんま》の感情の昂ぶりに呼応したかの様に、更に濃度を増していく悪妖の呪詛。脳髄を痺れさせて、女の身体の奥底へと官能の火種を煽る薪を焼べる。
堕ちた雌と云うのが相応しいだろう嬌声を喉奥から迸らせて、淫らな潮を噴き散らす桃花の痴態に、涎を垂らした男達が群がっていく。
|飛縁魔《ひのえんま》の尋問による快楽を、全身で堪能する桃花の姿が、そこにはあった。
●
「何だか騒がしいね。それに空気が変わったみたいだ。これはボクたちの存在に気づかれちゃったかな?」
ミネタニ・ケイが周囲の気配の変化を敏感に察知して足を止めた。
「どうしましょうか? 此処は|妓楼《ぎろう》の中です。周囲には呪詛の影響で正気を失くしている方が、まだ大勢いるみたいですし。荒事になるのであれば、その方々を人質に取られてしまう危険もありますけれども?」
|傍《かたわ》らにいる|白銀《しろがね》|雅《みやび》が、ケイへと問い掛けた。
「ボクは、この|妓楼《ばしょ》の流儀に|則《のっと》った|戦闘《たたか》いでも構わないのだけれども。雅さんはどうだろう? やっぱり|妓女《プロ》としては、仕事以外では、そういう事はしたくなかったりする?」
「私の事でしたら御気になさらずに。椿太夫の良い様にされるのが気にいらなかっただけですから。それに、この呪詛と、|其処《そこ》|彼処《かしこ》から|漂《ただよ》ってくる雄と雌の|淫臭《にお》い。私も|昂《たかぶ》っていない訳ではないのですよ」
雅の言葉により、二人の方針は決定された。
それから、さほどの時間を置かずして、悪妖の眷属である女怪――|飛縁魔《ひのえんま》が|出現《あらわ》れる。|妓楼《ぎろう》の内部に侵入している二人の女を前にして、|妖《あや》しく微笑んだ。
「おや。どうやら抵抗する気は無い様でありんすね。これは助かりんした。わっち|等《ら》も無益な殺生は嫌いでありんすからね。そのまま大人しくしていれば、女としての|悦《よろこ》びを存分に味あわせてあげんすよ。その精気を快楽の中で吸い取って差しあげんす」
二人の女は、接敵しても|尚《なお》、武力を行使する|為《ため》の構えを取る気配さえもない。
|飛縁魔《ひのえんま》は、それを降伏の|証明《あかし》であると判断した。
自身の肉体を妖術により変貌させて、吸精の|為《ため》の器官を生成した。雄の|逸物《いちもつ》と比べても遜色のない、逞しく反り返った肉槍が、股間に|聳《そび》え立つ。
二人の女は、複数体の女怪に取り囲まれながらも、何処か余裕のある表情や態度を崩してはいない。
「この|見世《みせ》の|技巧《テク》と具合を勉強させて貰おうかな」
ケイは、その豊満と呼ぶ事さえも|躊躇《ためら》われる、|双《ふた》つの|撓《たわ》わな果実を求める|飛縁魔《ひのえんま》たちを前にして、微笑みを浮かべた。
迫力さえも感じさせる圧倒的な膨らみは、たとえ女であったとしても、それを求めずにはいられなくさせる。
「精を吸い取る器官という割には|魔羅《まら》の様な形状をしているのですね❤ 果たして、その機能も同じなのか……試して差し上げましょう❤」
雅も|飛縁魔《ひのえんま》の内の一体を惹きつけていた。
その股間に生やされた吸精男根を、繊細な指遣いで刺激すると、絶妙な力加減で握り締める。そのまま熟練の技術を披露するかの様に、竿を上下に扱き出した。
柔らかな掌に包まれながら摩擦される心地良さに、女怪の表情が甘く蕩けていく。
「あ、うぅぅ……!❤ わっちの精気が、逆に、す、吸われるでありんすぅ……!❤ う、あぁ……我慢、できんせんっ……!❤ ひうぅぅぅっ……!❤」
雅は、熟練の業に甘い声を漏らす|飛縁魔《ひのえんま》の股間に|聳《そび》える疑似男根を、根元まで咥えこむと、激しい吸い上げと、卑猥に蠢く舌とで責め上げた。
どちらも遊女という職に就いている人妖の女。快楽によって相手を|虜《とりこ》とする|手練《てれん》|手管《てくだ》に関しては、雅の方に一日の長がある様だった。
熟練の口淫奉仕で、|飛縁魔《ひのえんま》を|翻弄《ほんろう》している。
雅のそれは、相手の欲する快楽を薄紙一枚の|処《ところ》で、わざと与えずして|懊悩《おうのう》させるのが極意であるかの様だった。
男性器を模した吸精器官により、相手の精気を収奪しようと試みた筈の|飛縁魔《ひのえんま》は、逆に更なる快楽を求めて、腰を前後に動かしている。
「ん、ん、んっ……ふふ❤ 切なそうに御汁が滲んできていますね❤ あっさりと肉欲に溺れてしまうなど|妓女《ぎじょ》としての基本がなっていない証拠ですよ。第一、そんなに、みっともなく腰を動かして……恥ずかしいと思いませんか?❤」
「く、あぁ……!❤ そうは云っても、わっちの|魔羅《まら》が……|蕩《とろ》けそうでありんすぅっ……!❤ は、うぅ……果てれない、出せない……❤ こんなに腰を振っているのに、どうしてぇ……!❤ あぁぁ、後生でありんすからぁ、いかせておくんなんしぃっ……!❤」
「んんっ……❤ 堪え性がないですね……仕方がないですから、そろそろ果てさせて差し上げましょうか……❤ はい❤ 私の|乳房《むね》、たっぷりと堪能してくださいね❤」
雅は|開《はだ》けた着物の胸元から覗いている膨らみの谷間に、今にも、はちきれそうな程に|熱《いき》りたっている肉棒を挟みこむ。
滑らかな肌の吸いつきと、極上の柔らかさに圧迫される心地良さに、|飛縁魔《ひのえんま》は耐えきれずに吐精した。
これまでに大勢の男たちを|籠絡《ろうらく》して、それ等から奪いとってきた精気を、疑似男根の先端から惜し気もなく放出する快楽に酔い痴れる。
「あ、うぅ……これが妖狐の乳房……!❤ は、我慢できんせんっ……!❤ あ、うぅぅぅっ……全部、漏らしてしまいんすぅぅぅっ……!❤」
「あ、あはぁっ……!❤ 雅さん、んっ、凄いね……隣で、そんな姿を見せられたら……ボクも熱くなっちゃうよ❤ あ、あぁ、あっ!❤ あ、凄い……本物の男の|逸物《もの》よりも気持ち良いかも……❤」
ケイは、その巨大な乳房と、熱い蜜を滴らせている膣とを駆使して、同時に二体の|飛縁魔《ひのえんま》を相手にしていた。
ケイ自身の母乳が潤滑油となり、滑りが良くなっている谷間に疑似男根を挟み込むと、その強烈な圧をもって激しく扱きあげる。
同時に並の女を遥かに越える締まりの良い名器の奥に、別の女の|逸物《いちもつ》を咥えこむと、淫らな腰遣いをもって|翻弄《ほんろう》していた。
二体の|飛縁魔《ひのえんま》が、快感に表情を弛緩させながら、吐精へと目掛けて腰を振るだけの情けない姿を晒している。
「はぁぁ、あうぅぅ❤ |姐《ねぇ》さん……わっちは、わっちは……もう耐えられぬでありんすぅ……!❤ こんなに絞めつけてくる、いやらしい|女陰《ほと》……うぅ、出てしまいんすっ……!❤」
「あっ……!❤ わっちも……母乳で、ぬるぬると、滑ってぇ……あっ、あっ、あっ!❤ 太夫の為に集めた精気がぁ……!❤ あ、うぅ、吸いだされるぅっ……!❤」
ケイの乳房による扱きあげに我慢の限界を迎えた|飛縁魔《ひのえんま》が、貯まりに貯まった精気を白濁液として放出する。勢い良く飛び散ったそれは、|既《すで》に母乳に塗れている巨大な乳房へと降り掛かり、淫猥な化粧を施した。
同時に、もう一人の|妓女《ぎじょ》も腰を深く突き出して、ケイの、もっとも深い場所に欲望を放出する。
「ああぁ……!❤ んんっ……|逸物《もの》は立派だけど精気の方は、ちょっと薄めかな❤ でも、充分に美味しいよ……❤」
「こっちも打ち止めみたいです……この程度で|勃起《た》たなくなるとか、まだまだですね❤」
|飛縁魔《ひのえんま》を、暴力に|拠《よ》らずに、|妓楼《ぎろう》の作法に則った手段で返り討ちにした二人の女。色事においては現役の|妓女《ぎじょ》たちですら遠く及ばない程の技量を有するケイと雅は、多量の精気を逆に奪取すると、その場を後にした。
●
「此処より先は三途の川でありんすえ」
|九門《くもん》|絢介《けんすけ》と、その従僕であるルージュ・フォン・シャッテンブルクの行く手を阻む者は、星詠みの悪妖の眷属である女怪――|飛縁魔《ひのえんま》。男を惑わせる美貌の|妓女《ぎじょ》たちが人垣を築いている|様《さま》は壮観でさえあった。
「また雑兵どもが数を頼りに……どうなさいますか、御主人様?」
ルージュの問い掛けに、絢介は、色とりどりの花達を愛でる様な表情で応えた。
「相手が女なら|犯《や》る事は一緒だな。ルージュ。邪魔をするなよ?」
「|畏《かしこ》まりましたわ、御主人様。どうか存分に馳走を御召しあがり下さいませ」
豪奢な夜色のドレスを纏いながら、|恭《うやうや》しく頭を下げるルージュの言葉に、絢介は笑みを深める。
「何なら|御前《おまえ》も愉しんでいいぞ。さっきから雌の臭いをぷんぷんとさせて。そんなに、さっきのが良かったのか?」
「まぁ。御冗談を。確かに我が騎士との邂逅は予想外ではありましたけれども……わたくしの心が、そう容易く御主人様より離れると御思いですの? だとしたら心外で御座いますわ。今は、ほんの少しだけ……余熱が残っているだけで御座います」
大勢を前にしても平時の如き態度を崩さない二人を前にして、|飛縁魔《ひのえんま》達が殺気立つ。
「身の程を知りんせんね。主従諸共に干乾びさせてあげんすよ」
殺到してくる|飛縁魔《ひのえんま》を前に、二人は不敵な笑みを浮かべる。
「愚かしい事ですわ。此処は|既《すで》に、わたくしの領地で御座いますのに」
「――あれ?」
何処か間の抜けた声と同時に襲撃を掛けてきた|飛縁魔《ひのえんま》達の内の何体かの身体が、細切れの肉片と化した。
ルージュの操る|単分子《モノフィラメント》|鞭《・ウィップ》が|既《すで》に蜘蛛の巣の|如《ごと》くに張り巡らされていたのだ。
仲間の一人が肉片に変わった事により、続く|飛縁魔《ひのえんま》達が警戒して足を止める。
その背後に――。
「当然。わたくしの領地であると云う事は――領主である、わたくしの歩みを阻める者は居ないという事ですわ」
「何時の間に|背後《うしろ》に――!?」
それが夜陰に溶け消える不可視化の魔術に|拠《よ》るものだと気づいた者は居なかった。同時に周囲の影から滲み出てくる男性系の従者たちが、一斉に、混乱の渦中にある|飛縁魔《ひのえんま》達を押し倒す。
それは、かつては影の城の城主に仕えた騎士達の魂の残滓。肉体が滅びても|尚《なお》、ルージュに付き従う従僕達である。
「ふふ。貴方達も滾っているでしょう。貴方達の同胞に抱かれて喘いでいる、わたくしの痴態を、影の中で見詰めていたのですから。遠慮はいりませんわ。その欲望の捌け口となる贄が、こんなにもいますもの」
|出現《あら》われた影の騎士達は|飛縁魔《ひのえんま》の着物を力任せに剥ぎ取ると、その豊満な肢体を求めて、幽鬼の如くに腕を伸ばした。
忠誠を誓う女主人の嬌態を間近で見せつけられる事で、肉体に溜まった熱を鎮める為だけに、女達を凌辱にかかる。
「ひっ、あぁっ!❤ あ、くぅぅ、おっ、あぁっ!❤ ら、乱暴にしないでおくんなんし……あ、あぁぁっ!❤」
「んっ、んんんっ……❤ あぁぁっ!❤ 壊れる……壊れてしまいんすぅっ!❤ そ、そこは不浄の……!❤ き、ひぃぃっー!❤」
|其処《そこ》|彼処《かしこ》で、口と、膣と、肛門を犯されて嬌声を上げる|飛縁魔《ひのえんま》達の痴態を、ルージュは可笑しそうに見詰めている。
「あらあら❤ |妓女《ぎじょ》ともあろう者が、この程度で音をあげますの?❤ 我が城を|陥落《おと》された時の、わたくしが味わった恥辱は、その程度ではありませんわよ?❤ さぁ、もっと大きな声で喘ぎなさいませ❤ かつての、わたくしの様に……その魂までも堕ちた、淫らな肉の人形に成り果てなさいませ❤」
ルージュも、また、魔術により股間に逞しい逸物を生み出すと、それで手近な|妓女《ぎじょ》を犯していた。
濡れそぼる雌穴に疑似男根を突き入れながら、喘ぐ女が、その口と手を駆使して、影の従者に奉仕を行なっている様を見詰めている。
「いい締りですわね❤ 貴女……わたくしと同じ臭いが致しますわ❤ 所作の端々に滲み出る気品❤ わたくしと同じように貴い生まれの血が、その身に流れている様ですわね❤ あ、んっ、それが……ふふ❤ こうして、チ〇ポを突っ込まれて、無様に喘いで……みっともないとは思いませんことっ……!❤」
その女が、何故に|妓女《ぎじょ》という立場に身を置いているのかは知る由もない。
ルージュは、嗜虐的な悦びを味わいながら、猛る逸物を突き入れた。
「あんっ❤ 女としてではなく、殿方としての悦びは、久しぶりですわ❤ 腰が止まりませんわねっ……❤ そろそろ果てますわよっ……❤ 貴女の、あさましいオマ〇コを、わたくしの熱いもので、御仕置をしてさしあげますわっ……!❤ は、んんっ、あっ……!❤ でる、でますわぁっ……!❤」
ルージュは、遂に限界を迎えて、その疑似男根から大量の白濁液を放出する。
その周囲では影の従者達も、日頃は発散できぬ欲望を思いの|儘《まま》に吐き出していた。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!❤ また、また果ててしまいんすぅっ!❤」
ルージュと、その騎士達が性の饗宴を愉しんでいる|傍《かたわ》らで、絢介も、また幾人かの|妓女《ぎじょ》を弄んでいた。
幾本もの蠢く触手が、ぬらつく粘液と媚毒を分泌しながら、豊満な女体に絡みついている。
「おいおい……オレはまだ触るだけしかしてないんだがねぇ? 敏感だねぇ」
絢介の意の|儘《まま》に動く無数の触手は、あるものは女の乳房に巻きつき、また、あるものは乳首の先端を擽っていた。秘部と肉芽を同時に擦り上げながら、女の身体に官能の火をつけていく。
幾人もの女の股間から滴り落ちる蜜は洪水の様になっていた。
どの女も酸欠になったかの様に、呼吸を求めて、激しく喘いでいる。
「あっ、あっ、あっ!❤ お願いで、ありんすぅ……!❤ もう我慢できんせんっ……!❤ |魔羅《まら》を、その逞しい|魔羅《まら》を、|挿入《い》れておくんなましぃ……!❤」
「ず、ずるいでありんすぅ……!❤ わっちに、わっちに先にぃ……!❤ |挿入《い》れて、|挿入《い》れてくんなんしぃ……!❤」
正体を|喪失《なく》してしまう程の猛烈な肉欲に苛まれて、口々に絢介の肉棒を強請る|飛縁魔《ひのえんま》達。それぞれの痴態を値踏みする様に見詰めてから、健介は、股間に屹立する男根を取り出した。
「いいぜ……じゃあ、まずは……一番濡れている|御前《おまえ》からだな。どこを気持ち良くして欲しい?」
「あ、あぁ……全部、全部でありんすぅっ!❤ わっちの乳も、|女陰《ほと》も、御尻もぉ……!❤ 全部、全部、|主《ぬし》様の|魔羅《まら》で、気持ち良くしてくんなましぃ……!❤」
「欲張りだねぇ……じゃあ、こうだ、なっ……!」
触手によって拘束された|飛縁魔《ひのえんま》は宙吊りの状態になっている。
絢介は、その股を開かせると、怒張した肉槍を勢い良く突き出した。
爛れた膣肉を貫くと同時に、触手が、菊門へと潜り込む。
「あ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ……!❤ は、|挿入《はい》ってきたでぇ、ありんすぅっ!❤ ああ、は、果てるぅっ!❤ わっちの女陰も、尻も、熱く焼けて、蕩けてしまいんすぅぅぅぅっ!❤」
二穴を同時に犯される喜悦に酔い痴れる|妓女《ぎじょ》の姿に、他の女達も羨望の眼差しを向ける。
「はぁ、はぁ……わっちにも、わっちにもぉ……!❤」
「何でもいたしんすぅ……だから、ああぁ、わっちにおくんなましぃぃぃぃっ……!❤」
絢介は発情した雌へと変わり果てて、自身の肉棒を窮屈に絞め上げてくる女に対して、激しく腰を使いながら問い掛けた。
「おっ、いい具合だねぇ。オレのをギュウギュウと締めつけてくるぜ。どうだい? 敬愛する太夫と、オレのと……どっちが良い?」
「く、はぁぁっ!❤ 比べものになりんせんっ!❤ |主《ぬし》の、|魔羅《まら》の方がずっと、ずっと気持ち良いでありんすぅぅぅっ……! あ、あ、あ、あっ!❤ また果ててしまいんすぅっ!❤」
主人への忠節も捨て去って、我欲の|儘《まま》に快楽を貪る|飛縁魔《ひのえんま》達の姿。それを満足そうに眺めながら、絢介は、その言葉に褒美に、女が最も欲しているものを与えてやろうとして、濃厚な白濁液を子宮に目掛けて放出した。
●
「さてと。椿太夫には気付かれちゃったみたいだけれども。でもアスカと合流できたのは|幸運《ラッキー》かな。それじゃあ、ここからは一緒に行きましょうか?」
「そうね。でもパティ。早速だけれども御客様よ。それも大勢。多分、椿太夫の配下よね。どうしましょうか? 逃げようにも既に包囲されているみたいだけれども……パティ?」
アスカ・アルティマは、たっぷりと雄汁の臭いが沁み込んでいる衣服を躊躇いも無く脱ぎ捨てて裸体を曝け出すパトリシア・バークリーの姿を、不思議そうに見詰めた。
「ベトベトしていて動き辛いからね。これで身軽になった――それでは! |天星弓《スターボウ》が団長、パトリシア・バークリー! あたしは逃げも隠れもしない! 推して参る!」
パトリシアの、隠すべき箇所を隠そうともせずに堂々と見せつけているかの如き見事な態度は、その身が淫蕩をこそ美徳とする|√《世界》の出身者である為だ。
他|√《世界》の出身者とは、まるで異なっているパトリシアの貞操観念を前にして、アスカは仕方が無いとでも言いたそうに溜息を吐く。
「敵が敵だから裸になったりしたら……そっち方面の攻撃しかしてこなくなるでしょうに。流石に、あの人数を同時に相手にするのは、幾らパットでも大変なのではない?」
アスカの疑問に、パトリシアは不思議そうに首を傾げる。
「アスカがいるでしょ?」
至極、当然の様に言い放つパトリシアの言葉に、アスカは再び溜息を吐いた。
「そうね。私がいるのだったわね。仕方が無い……付き合うわ」
二人は何時も通りの態度で言葉を交わしながら、自分達を包囲せんとして迫ってくる|飛縁魔《ひのえんま》達へと立ち向かった。
若く、健康的で、溌剌としているパトリシアの裸体は、目にした者を|虜《とりこ》とする魅力に溢れている。
張りがあり、それでいて形の良い乳房は、同性であっても見惚れてしまう程だ。
共に並び立つアスカの肢体も、豊満な曲線を描いている。
二人の女の身体は、|飛縁魔《ひのえんま》達の欲望を煽るのに充分なだけの美しさを誇っていた。
誰もが股間に男の生殖器にも似た|逸物《いちもつ》を備えており、それを欲望に屹立させていた。
「うんうん。やっぱり生やすくらいの事は出来るよね❤ それじゃあ……あたしが一滴残らずに搾り取ってあげる❤ あ、あぁっ!❤ 凄い、これ、本物のチ〇ポと遜色ないかも……❤」
手近な女の疑似男根を口腔内に頬張り、左右の手で異なる者の|逸物《いちもつ》を掴んで扱き上げ、更には|女陰《ほと》で|魔羅《まら》を咥え込むパトリシア。忽ちの内に快楽に蕩けた声が|飛縁魔《ひのえんま》達の口から零れる。
「あ、うぅ❤ 舌が絡みついてくるでありんすっ❤」
「はぁ、はぁっ❤ 指先が、亀頭に絡み付いてくるっ……❤ う、あっ、出してしまいんすよっ……!❤」
「あ、あぁぁっ……❤ 締まるぅ……!❤ 幾つもの肉襞が、蠢いて……❤ あうぅぅっ……!❤ も、漏れちまいんすぅぅっ!❤」
「あはっ❤ 我慢できないなら出しちゃってもいいよっ❤ ほら、いっちゃえ❤ あっ、あっ、あっ!❤ あたしも、あぁ、凄く気持ち良いよぉっ……!❤」
快楽に身悶えている三人の|妓女《ぎじょ》達の姿を横目で見ながら、アスカもまた、その技巧を駆使して一人の女を捕らえていた。
女の肉棒を膣で受け入れながら、反撃とばかりに伸ばした指で、その秘部を弄っている。
「ん、ふふ……❤ あっ、んっ❤ 本当、本物にそっくり……❤ 硬さも、太さも、なかなか良いかも……❤ ん、でも、女の方の器官は、そのままなのね……❤ もう、いやらしい液で、トロトロになっているわよ……❤」
「あ、うぅぅっ!❤ そこを弄られるとぉっ……!❤ はっ、あっ、わっちの|魔羅《まら》が、敏感になってしまいんすぅ……!❤ あ、あっ、あっ!❤ 駄目でありんすぅっ!❤」
アスカの|女陰《ほと》の締めつけに我慢できなくなった|飛縁魔《ひのえんま》が、激しく腰を動かし始めた。
その傍らで、パトリシアとの行為に溺れている女達が、一足早く限界を迎えて嬌声を上げる。
三人の女達が同時に絶頂を迎えて、濃厚な白濁液が飛び散り、パトリシアの裸体を淫猥に化粧した。
「あはぁっ!❤ すっ、ごぉい……!❤ 濃いのが、あたしの顔にも、おっぱいにも、オマ〇コにも、沢山……!❤ あぁんっ、あたしも、いっちゃっ……!❤ あぁぁぁぁんっ……!❤」
その淫靡な景色と声に触発された様に、アスカと交わっている女も、激しい絶頂に昇りつめようとしていた。
「は、はっ、はぅっ❤ 姐さん達が、果てて……うぅ❤ わっちも、わっちも……だ、出したいでありんすぅっ!❤」
「んっ、じゃあ……出せばいいじゃないの❤ 私が受け止めてあげるわよ❤ ほら、他の子達は皆、漏らしちゃったのだし❤ 貴女も我慢しないで……ほら❤ こうして……クリト〇スを弄ってあげれば……❤」
「あひぃぃぃっ!❤ あ、あぁぁぁ、は、果ててしまいんすぅぅぅぅぅっ!❤ あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ……!❤」
男と女の快楽を同時に味あわされた|飛縁魔《ひのえんま》は、これまでに溜め込んだ精気を穢れた雄汁に変えて、それを一滴残らずに吐き出してしまう。
その大量の吐精を膣奥で受け止めながら、アスカも、また絶頂に身を震わせた。
「ん、んんんんんんっ……!❤ 凄い勢いね……❤ あぁ、まだ、まだ出てるわ……全然、終わる気配がない……あぁ、気持ち良いっ……!❤」
長く続いた吐精が終わると、|飛縁魔《ひのえんま》は、アスカの秘所から疑似男根を引き抜いて、忘我の表情で虚空を見詰めた。
腰が抜けてしまったのだろうか、立つ事さえ儘ならない様子で、口の端から涎さえ垂らしている。
「アスカ。そっちはどう?」
「うわ。パティ……全身、精汁塗れじゃないの。随分と搾り取ったわね。こっちは……うん。もう勃たないみたい。腰も抜けているみたいだし。しばらくは安全じゃないかしら」
乱れた呼吸を整えているアスカの膣からは、放出された多量の精汁が、だらだらと流れ出ている。
パトリシアは、その様子を見て、淫蕩に微笑んだ。
「勿体ないよ❤ アスカ、じっとしてて❤ あたしが、綺麗にしてあげる❤」
「パティ……今は、そんな事をしている場合じゃ……あ、んっ❤ ちょっと、話を聞いて……あ、あぁんっ……!❤」
アスカの股座に顔を埋めて、伸ばした舌先で蜜を掬い取る様に、流れ出る白濁液を舐めとるパトリシア。その舌業の前に身を震わせるアスカの嬌声が、夜陰に響いた。
●
|如何《どう》やら|神咲《しんざき》|七十《なと》には|妓女《ぎじょ》としての才能がある様だった。
それは色事に関しては百戦錬磨の|筈《はず》の娘達であっても|忽《たちま》ちの内に|虜《とりこ》にしてみせた、七十の技術を一度でも味わえば実感できるだろう。
男の精気を|容易《たやす》く|搾《しぼ》り取る熟練の|業《わざ》。それを七十は教えられる事も無く、自然なものとして使い|熟《こな》している。まさしく|天稟《てんぴん》の|持主《もちぬし》だった。
|此程《これほど》の才能に恵まれている娘であれば、今更に|手解《てほど》きをするまでも無いだろう。|直《す》ぐにでも客を取らせて、|遊廓《ゆうかく》の支配者である椿太夫の|為《ため》に働かせるべきだ。
それは椿太夫の|眷属《けんぞく》である|飛縁魔《ひのえんま》達の共通認識でもある。
その|筈《はず》なのだが――。
「ん、んんぅ……こう、ですか……? |此処《ここ》が気持ち良いんですか……?」
「あ、くぅぅ……そう、そこで、ありんすよ……! もっと舌を絡めるでありんす……はぁ、はぁ、んっ……!」
|飛縁魔《ひのえんま》の股間に|熱《いき》り|立《た》つ吸精器官――男性器に酷似している、それを、七十は夢中になって頬張っている。
眼前に突き出された|逸物《いちもつ》に奉仕を行ないながらも、また違う|飛縁魔《ひのえんま》の腰の上に跨っては、濡れそぼる秘穴の奥にまで|屹立《きつりつ》した疑似男根を咥え込んでいた。
「はぁ、あっ、くぅっ、うぅ……まったく……! 相変わらずの好き者でありんすな……|躾《しつけ》であると云うのに、わっちの|魔羅《まら》を締め付けて離そうとしんせん……! あ、う……そろそろ、出しんすよ……!」
「んん、|姐《あね》さんに抱かれながらも、舌が、ますます、いやらしく動いて……! こっちも|搾《しぼ》り取られそうでありんすぅ……! 本当に|腎張《じんば》りな女でありんすえ……!」
昂奮の|儘《まま》に七十へと|侮蔑《ぶべつ》を交えた言葉を投げ掛ける|飛縁魔《ひのえんま》達の眼前で、それでも若い女の身体は官能的な|悦《よろこ》びに|咽《むせ》び泣いている。
「やだぁ……ん、そんな事、言わないでください……あ、ん、んっ、んんんっ……!」
「あっ、そうは云っても、|女陰《ほと》の奥から、たっぷりと熱い蜜が溢れていんすよ……腰遣いも、激しくなって……好き者なのは、本当の事でありんしょう……!」
「はぁっ、はぁっ……あ、んっ……だって、凄く気持ち良い……やぁ、もう無理ですぅ……そんなに奥まで、突いちゃ嫌ぁ……!」
汗と淫蜜に塗れて|艶々《つやつや》と濡れ光る七十の身体は、|飛縁魔《ひのえんま》達の性の捌け口として|粗略《そりゃく》に扱われていた。
|躾《しつけ》と称して|見世《みせ》の奥に連れ込まれてから、もう何時間もの間、幾人もの女達の相手をさせられている。
奉仕をした男根の数は|既《すで》に、その正確な数さえも判らない程になっていた。
一人が満足をすれば、また一人。時には|現在《いま》の様に二人、三人と同時に相手をさせられる。
また本人の|嗜虐心《しぎゃくしん》を|煽《あお》る様な態度と反応が、|飛縁魔《ひのえんま》達の行為の激しさを助長させていた。
休む間も無く与えられ続ける快楽は、遥かなる昔に苦痛へと|掏《す》り|替《かわ》っている。
「あ、あぁん……! 駄目ぇ、いっちゃう、また、いっちゃうぅ……! あ、あぁぁんっ!」
「果てる時の声にも品がありんせんねぇ……うっ! さぁ、わっちの子種で、その顔を化粧してあげんすよ……! 有難く受け取りなんし……!」
七十に口淫奉仕をさせていた|飛縁魔《ひのえんま》は絶頂の寸前に腰を引くと、唾液に塗れた肉竿を勢い良く手で|扱《しご》いた。
限界も間近であった肉竿は手淫の刺激に勢い良く跳ねて、溜まりに溜まった昂奮を濃厚な白濁液と変えて放出する。飛び散った精汁は、七十の美貌を穢して、その鼻腔を青臭い香りで一杯にした。
「あぁっ! あぁ、臭い……凄い匂い……! あ、あぁぁぁ……!」
「あうっ! この娘、ますます締りんした……顔にかけられて昂奮したでありんすか……! うぅ、わっちも、出すでありんすよっ……! この|魔羅《まら》を見境無しに咥え込む|女陰《ほと》の奥に出してあげんす……! あ、くぅぅぅぅ……!」
「やぁ、あぁ、あっ! 駄目ぇ、いったばかりなのにぃ……そ、そんな事、云わないでぇぇっ……! あ、あぁぁぁ、また、また、いっ、ちゃうぅぅぅぅっ!」
七十の絶頂と同時に|飛縁魔《ひのえんま》も、また快感の頂点を極めた。
驚く程に濃厚な、それでいて多量の精汁が迸り出たかと思えば、それは灼熱の奔流と化して子宮へと注ぎ込まれる。
嬌声と同時に噴き出した潮は、七十の理性と肉体が、快楽を前にして完全なる屈服を迎えた事を言外に示すものだった。
第3章 ボス戦 『星詠みの悪妖『椿太夫』』
●
上空の風が暑い雲を運び、妖艶なる月の姿を覆い隠す。
遮られた月光に変わって、夜陰の支配が土地を席巻する。
絢爛豪華なる椿之遊廓の喧騒が不意に掻き消えた。
通りに立ち並んでいた幾つもの立派な|見世《みせ》が|忽《たちま》ちの内に廃墟へと|掏《す》り|替《かわ》る。
瀟洒な楽音も一斉に鳴り止み、吹き荒ぶ冷たい風が燈火を掻き消した。
豪華絢爛なる|遊廓《ゆうかく》の姿が虚飾を剝がされて、墓標の様に廃屋が立ち並ぶだけの真実の姿を曝け出す。
その只中に、無数の椿の花が寄り集まった蛇体をくねらせている、妖艶なる美女が存在していた。
女の周囲には|木乃伊《ミイラ》の様に干乾びた男達の|骸《むくろ》が散乱している。
「――術が解けてしまいんしたか。わっちの眷属が集めた精気を好き勝手に喰い荒らしてくれた輩の|所為《せい》でありんすね」
|煙管《キセル》を口許に運ぶ事さえも億劫であるかの様に、気怠そうな仕草で身体を起こすと、煙草の香りを堪能する。
「さて。わっちの|遊廓《ゆうかく》を好き勝手に荒らしてくれた|野暮天《やぼてん》を叩き出すとしんしょうか。光栄に思いなんし。太夫である、わっちが初回の客の相手をするなんぞ、本来であれば沽券に関わる事でありんすからね」
煙草の煙が吐き出されると同時に、濃密な椿の香りが廃屋へと満ちていく。
星詠みの悪妖、椿太夫は√能力者達を前にして酷薄に嗤っていた。
●
椿太夫の|繊細《せんさい》な指先が|篠宮《しのみや》|詩乃《しの》の肢体を|愛撫《あいぶ》している。
詩乃の目蓋は閉ざされていて、その意識は闇に沈み込んでいるのだが、他人の指が肌を這う感触に、時折、心地良さそうに身体を震わせていた。
「はっ、あっ、ん……あぁ……んん、んっ……❤」
詩乃の唇からは官能的な声と吐息とが一緒になって零れ落ちている。
椿太夫の指先が|女陰《ほと》を弄ると、そこは|既《すで》に|夥《おびただ》しい量の淫蜜を溢れさせていた。
くちゅり、くちゅりと、卑猥な水音が奏でられている。
「あ、あぁ、ぁぁぁぁぁっ……!❤ ああ、うぅぅぅっ……!❤ う、あっ……ここ、は……?❤ は、あぁぁぁんっ……!?❤」
詩乃の意識が、その肉体に間断なく与えられ続けている刺激によって覚醒した。
自身の状況を目が覚めると同時に認識して、思いがけずに困惑の声を上げる。
椿太夫は焦燥に支配されている、その顔を|可笑《おか》しそうに覗き込んだ。
「|漸《ようや》く目が覚めた様でありんすね。しかし、なかなかに面白い存在でありんすな。|飛縁魔《ひのえんま》共の報告にあった様に、退魔師でありながらにして、その力の源泉は陽ではなく陰……わっち等と同様の魔に属するもの……感じれば感じる程に、わっち好みの精気を放出するでありんすな」
椿太夫は指先から女を狂わせる媚薬毒を分泌させながら、詩乃の肉体を弄んでいく。
その熟練の指遣いは、女の身体の敏感な箇所を的確に探り当てていた。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ……!?❤」
詩乃の腰が、その意識から離れた|処《ところ》で勝手に浮き上がる。
淫猥にひくついている|女陰《ほと》の奥からは、淫らな潮が、勢い良く|迸《ほとばし》り出た。
同時に、その身体からは魔性の存在が好む陰の精気が立ち昇り、椿太夫に更なる力を漲らせる。
「並の男を|玩《もてあそ》ぶよりも遥かに美味な精気でありんすな。わっちの|同胞《はらから》になりなんし。そうすれば、この法悦を好きなだけ味あわせてあげんすよ」
「は、あぁ、く、うぅ……!❤ だ、誰が……私は、篠宮家の退魔師として、あっ、|斯様《かよう》な甘言に、など……う、うぅ……!❤ 退きなさい、悪妖……!❤」
詩乃の|双眸《そうぼう》に、視認した者を呪殺せしめる呪いが宿った。
明確なる殺意を籠めて椿太夫の瞳を射抜く。
しかし――。
「……どうやら、素直になる為には、少しばかり手荒い|躾《しつけ》をする必要がありんすな」
詩乃の呪殺の視線は、椿太夫の想像を絶する妖力の前に脆くも砕け散る。
「……そんな、私の邪視が……あ、あぁっ……!❤」
椿太夫の愛撫は、ますます激しいものになっていった。
指による愛撫で丹念に|女陰《ほと》を解すと、その股間に逞しい|逸物《いちもつ》を生み出して、濡れそぼる入口へと押し当てる。
妖力により生み出された疑似男根の先端から滲み出る透明な液体は、指先から分泌していたものよりも遥かに濃度を増した媚薬毒だ。
「女の身であれば、細い指よりも、太い|魔羅《まら》の方が欲しくて|堪《たま》らぬでありんしょう。思う存分に狂い果てなんし。淫らな肉の人形に造り替えてあげんすよ」
椿太夫が腰を前方へと向かって突き出す。
並の男の|逸物《いちもつ》よりも遥かに太く、逞しい肉棒が、焼け爛れた肉穴を押し拡げながらに貫いた。
「あ、あぁぁーっ!❤ は、あぁ、凄い、凄いぃぃぃっ!?❤ こんな、ああ、もう、私、果ててしまいますぅっ!?❤ あ、あぁぁぁぁぁぁぁっ……!?❤」
詩乃は挿入と同時に、周囲に蜜を噴き散らしては、恥も外聞もない法悦の声を上げながらの絶頂を迎えた。
椿太夫の言葉の通りに、篠宮家の退魔師としての矜持が砕け散り、自ら快楽を求めてしまう様になるまで、然程の時間は掛からない。
詩乃は倫理観の全てが快楽によって塗り潰された忘我の境地で、ただ甘い声を上げながらに、椿太夫の|逸物《いちもつ》を求めては、自分から腰を躍らせていた。
●
「あっ、あっ、あっ!❤ ん、おぉぉぉぉぉんっ!❤」
|時任《ときとう》|桃花《ももか》の|嬌声《きょうせい》が、幻惑の妖術が解けて、廃墟としての実像を露見させた|遊廓《ゆうかく》の内部に響き渡っている。
桃花の肢体を|玩《もてあそ》んでいた男達の姿は、何時の間にか、悪妖の|眷属《けんぞく》である小鬼達へと|掏《す》り|替《か》わっていた。
「あ、く、おぉぉぉっ!❤ 凄いよぉっ!❤ チ〇ポ良いっ、気持ち良いっ!❤」
相手が変わったとしても、それで行為の内容が変化する訳ではない。
桃花の|女陰《ほと》と肛門を、小鬼達の股間に|屹立《きつりつ》している肉棒が刺し貫いている。
人間との違いは、異様な程に|巨《おお》きな|逸物《いちもつ》と、その先端から分泌される媚薬毒だ。
桃花の身体に、女の理性を融かす事で、淫らな雌へと変貌させる毒液が浸透していく。
桃花は、二穴を剛直に|蹂躙《じゅうりん》される喜悦に、あられもない声を上げた。
椿太夫は、その痴態を、|煙草《たばこ》を|燻《くゆ》らせながら見詰めている。
「|随分《ずいぶん》と小鬼共の|魔羅《まら》が気に入った様でありんすな。そのまま狂い果てなんし。|主《ぬし》の精気、わっちが一滴残らずに吸い取ってあげんすよ」
椿太夫は、桃花の身体から放出される精気を吸収しながら、|酷薄《こくはく》な笑みを浮かべていた。
「あ、おぉっ、あっ、おっ、お、おぉぉぉっ!❤ ひぃ、ひぃっ、あっ、あぁぁっ!❤ ズコズコ来るっ!❤ 僕のマ〇コ、|莫迦《ばか》になっちゃうよぉっ!❤ あぁぁぁっ、いっ、ちゃうぅぅぅっ!❤ ア、アクメしちゃうぅぅぅぅぅっ!?❤」
桃花の肉体は、小鬼達に輪姦される事により、幾度もの絶頂へと無理矢理に押し上げられた。
全身を|戦慄《わなな》かせては|潮《しお》を噴き、法悦の声を上げる度に、ごっそりと体力が削られていく。
正常な精神が官能の炎に飲み込まれて、意識が|朦朧《もうろう》としてくる。
それでも|尚《なお》――桃花は正気を|喪失《なく》さずにいた。
(嗚呼、気持ち良い……でも。それだけだよね。こんなもの……僕の|宿敵《ごしゅじんさま》に比べたら……うん、全然、温いや……)
椿太夫は、並の女であれば|既《すで》に狂い死にしているであろう快楽の獄中にあっても|尚《なお》、余力を残した様子で|魔羅《まら》に酔い痴れている桃花の態度に、僅かに眉を潜める。
瞬間、背筋にヒヤリとしたものを感じた。
椿の花が寄り集まった蛇体を躍らせて、急ぎ、その場より離れる。
椿太夫の目前で、夢中になって桃花の肢体を嬲っていた小鬼達の身体が、突如として|顕現《けんげん》した|七つ首の剣竜《セブンソード・ドラゴン》によって串刺しにされた。
「……小鬼共との繋がりが断たれた……? まさか、わっちの術の|軛《くびき》から解き放たれたとでも……?」
椿太夫は、有り得ざる事態を前にして警戒を厳にする。
悪妖の妖術による支配から解放された小鬼達は、これまでに散々に|嬲《なぶ》り抜いた桃花を、今度は護る様にして、椿太夫へと向き直った。
「ねぇ、君も僕と一緒に愉しもうよ❤ 二人で、何処までも|堕落《お》ちていこう……きっと、とっても気持ちが良いよ❤」
桃花は|淫蕩《いんとう》な笑みを口許に貼り付けて、椿太夫を、|妖《あや》しく誘う様に手招きをする。
椿太夫の表情が、忌まわしそうに歪んだ。
「成る程。|既《すで》に何者かの手に|拠《よ》る|躾《しつけ》がされた雌でありんしたか。この気配……|何処《いずこ》かの神性と見たでありんす。小鬼共では荷が勝ちすぎていんしたね。わっちは壊れている玩具に興味はありんせん」
椿太夫は、自身の術の支配から逃れた小鬼達に護られている桃花の前より姿を消した。
●
アリス・アストレアハートと、その護霊である「何者でないメアリーアン」は、|飛縁魔《ひのえんま》達の手により、椿太夫の元にまで連行された。
アリスは、幻惑の妖術が解けた廃墟の中で悠然と蛇体を躍らせている椿太夫の姿を、深い悲しみを湛えた眼差しで見詰めた。
「椿太夫さん……マガツヘビさんとの事では互いに手を取り合う事も出来たのに……」
椿太夫は、その言葉に、嘲笑と侮蔑の感情を混合した表情を返した。
「嗚呼、成程。わっちの各地に封印されている肉片のひとつとでも共闘したでありんすか。マガツヘビが関わる事であれば、それも不思議ではありんせんが……生憎と、わっちは、その事については知りんせん。わっちにとっての|主《ぬし》は、この遊廓を好き勝手に踏み荒らしてくれた野暮天の一人……それ以上でも、それ以下でも、ありんせんね」
椿太夫は冷酷なる断交の意志を言葉に籠めた。
アリスは、その取り付く島も無い無慈悲なる言葉を前に悄然とした。
椿太夫は詰まらなさそうな表情で|煙草《たばこ》を|喫《の》むと、配下である|飛縁魔《ひのえんま》達に命令を下した。
それに従う|眷属《けんぞく》達の手によって、「何者でないメアリーアン」の身体が地に組み伏せられた。
「……!? 護霊ちゃん……あっ……!?❤」
アリスの視線が、いきなりの|狼藉《ろうぜき》を働く|飛縁魔《ひのえんま》達の元に吸い寄せられた。その次の瞬間には、蛇体をくねらせながら音もなく近付いてきた椿太夫の腕の中に、身体を捕らわれていた。
椿太夫の繊細な指が、アリスの華奢な身体を弄び始めた。
「あ、あっ……い、いやぁ……❤ は、んっ……そんなとこぉ、触っちゃあ……!❤ あぁぁ……❤」
椿太夫の、女の身体の感じる箇所を的確に探り当てては、そこを絶妙な力加減で|愛撫《あいぶ》する熟練の|業《わざ》に|翻弄《ほんろう》されてしまい、アリスの身体からは抵抗する為の力が抜けていった。
「見た目は|童《わらべ》でありんすが、どうして、なかなかに強い力を秘めている様でありんすね……大人しくしていれば極楽に連れていってあげんすよ。|主《ぬし》も嫌いではないでありんしょう? 素直になりなんし……」
椿太夫の指先に禍々しい妖力が凝縮されて、アリスの股間を卑猥に弄った。
アリスは、下腹部に猛烈な疼きを覚えてしまい、|堪《たま》らずに腰を浮かせてしまう。
「う、あぅぅぅ……やぁ、これぇ、またぁ……❤ い、いやらしいモノがぁ……❤」
アリスの股間に生み出された疑似男根は、雄々しく天を衝く様に反り返っていた。
|屹立《きつりつ》した肉棒の先端に、卑猥に蠢く肉穴の入口が押し当てられた。
椿太夫の、これまでにも幾人もの男の精気を搾り取ってきた|女陰《ほと》の入口が、たっぷりの蜜と媚薬毒を滴らせて、アリスの欲望を飲み込もうとしている。
「だ、駄目です……❤ こんな、こんなことぉ……あぁっ……!❤ あ、うぅ……やぁ……❤ 凄いっ……こんなの、直ぐに、漏れちゃっ……!❤」
椿太夫は、アリスの言葉など意に介した様子もなく、腰を落とす。その瞬間、強烈な締め付けによる快感が、アリスの下半身を蕩かせた。
我慢できる筈もなく、疑似男根の根元からは熱く白濁した欲望が、迫り上がってくる。
「好きなだけ漏らしなんし❤ わっちが全て吸い上げてあげんすよ❤」
椿太夫が蛇体をくねらせると、人体の腰遣いによるものとは比べものにならない程に柔軟かつ複雑な|女陰《ほと》の締め付けが、咥え込んだ疑似男根を散々に|玩《もてあそ》ぶ。その快楽は|眷属《けんぞく》により与えられたものとは比較にならない程に鮮烈だった。
「ほら❤ 素直になりなんし……もう持たないでありんしょう?❤」
「う、うぅ……駄目ぇ……!❤ あぁぁ、何か出ちゃうぅぅぅぅぅっ……!❤」
アリスは遂に快楽に降参して、疑似男根を咥え込んでいる椿太夫の|膣内《なか》に精気を放出した。自身の力の源が奪い尽くされていく虚脱感。それと引き換えに与えられる多量の精汁を撒き散らす法悦。口の端から涎を垂らしながら、悪妖の胎に種を注ぎ込む快感に酔い痴れた。
「はぁー、はぁー……❤ 気持ち、良い……❤」
アリスの唇から思いがけずに零れ落ちた言葉を耳にして、椿太夫は酷薄な笑みを口許に貼り付けた。
「この|魔羅《まら》は精気が枯れ果てるまで萎える事はありんせん……❤ この様子ならば、まだまだ強い力を絞り取れる事でありんしょう……良かったでありんすな……これから、もっと、もっと気持ち良くなれんすよ……!❤」
椿太夫の蛇体が、再び踊り出す。
「あぁぁーっ!❤ 凄いぃ……!❤ こんな、またぁ、で、出ちゃうぅぅぅっ……!?❤」
アリスの尽きる事の無い嬌声が廃墟に響き渡っていた。
●
|神咲《しんざき》|七十《なと》が意識を回復させた時。|既《すで》に遊女屋の内装は朽ちた廃屋の、それに|掏《す》り|替《か》わっていた。
七十の身体を|折檻《せっかん》と称して|嬲《なぶ》っていた|飛縁魔《ひのえんま》達の姿も何処かに消え失せている。四肢を戒めている鉄鎖だけは変わらずに冷たくも鈍い輝きを放っていた。
隙間風が吹き込む廃屋の片隅に|蟠《わだかま》る夜陰の中に何者かが潜んでいる。それは無数の椿の花が寄り集まった蛇体で地面を這い進みながら、七十の傍にまで近付いてきた。
「うぅ……誰……? まだ終わらないの……?」
七十の身体の|其処《そこ》|彼処《かしこ》には|飛縁魔《ひのえんま》達が放出した白濁液が付着している。
周囲に充満する椿の花の匂いが、精汁の青臭い残り香を塗り替えた。
|脳髄《のうずい》を痺れさせる様な甘い匂いに包まれていると、不思議と心地が良くなってくる。
「わっちに|主《ぬし》の最も感じる|箇所《ばしょ》を教えなんし」
「……感じる……一番弱いのは、尻尾……あぁんっ……!❤」
七十は近付いてきた何者か――椿太夫の問い掛けに正直に答えた瞬間に、敏感な尻尾を指先で|玩《もてあそ》ばれる快感に甘い声を上げた。
椿太夫は、その反応を確認すると、偽りでは無さそうだなと、満足気な笑みを口許に貼り付ける。
椿太夫の異形の蛇体が、七十の尻尾に絡み付いてきた。
七十は、その敏感な器官に巻きつかれて、扱き上げられてしまい、口から甘い声を零す。
「あ、あぁぁ、駄目ぇっ……!❤ ふ、あぁ、い、くっ、いっちゃうぅぅぅぅっ……!❤」
七十は尻尾の刺激により、然程の時間を置かずして絶頂を迎えてしまい、秘部から蜜を溢れさせた。
想像を絶する快楽の前に情けなく喘いでいると、拘束されたままの両脚を抱き抱えられて、持ち上げられる。そのまま身体を折り曲げられれば、持ち上げられた足を、頭の方にまで押しやられてしまう。
七十の視線の先では絶頂を迎えたばかりの自身の雌穴が、ふしだらな蜜を溢れさせながらも、卑猥な口を開いていた。
「あ、うぅ……こんな格好、恥ずかしい……見ない、でぇ……!❤ あ、あぁぁ……!❤」
「見ないでと言いんすが……|主《ぬし》の|女陰《ほと》は、もっと見て欲しいとでも言いたそうに、ぱっくりと開いていんすよ。わっちの指を……ほら、容易く咥え込んでいきんす……❤」
「あ、あぁ……!❤ あぁぁぁんっ……!❤ 駄目ぇ、子宮が……熱い、熱くて、死んじゃうぅぅぅっ……!❤」
椿太夫の指が、七十の濡れそぼる肉唇の内部へと侵入する。
七十は悪妖が分泌する媚薬毒を直接、子宮に流し込まれて、苦悶の声を上げた。身体が燃える様に熱くなり、淫水は尽きる事なく溢れだしてしまう。
「あ、あぁぁ、駄目ぇ、こんな、おかしくなっちゃうぅぅぅ……!❤ 頂戴、もっと、もっと太いものぉっ……!❤ もっとオマ〇コ突いてぇ、滅茶苦茶に掻き回してぇっ……!❤ 何でもするからぁっ、もう、我慢できないよぉっ……!❤」
「おや。もう堕ちてしまいんしたか。|飛縁魔《ひのえんま》共に可愛がられた後とはいえ、こうも容易いと拍子抜けでありんすな」
七十の瞳を潤ませながらの懇願に、椿太夫は、それが欲している|逸物《いちもつ》を股間に生み出す事で応えた。
七十の身体に覆い被さる様にしながら、並の男の|魔羅《まら》よりも遥かに逞しい肉槍で、雌穴を刺し貫く。
無数の椿の花が寄り集まった異形の蛇体は強靭であり、しなやかだ。
無茶な体勢であっても、女を悦ばせる為の的確な腰遣いを容易く行う。
七十は、悪妖の|魔羅《まら》に|女陰《ほと》の中を掻き回されながら、敏感な尻尾に異形の蛇尾が絡み付いてくる刺激に、理性が焼き切れる程の法悦を味わっていた。
「あ、あぁぁっ!❤ ひぃ、あぁっ!❤ 気持ち良いっ、あぁ、いっちゃう、いっちゃうぅっ!❤ あっ、あぁぁっ、ありがとう、ございますぅ……!❤ ひぃん、あっ、あぁぁーっ、もう許してぇ、死んじゃうっ!❤ 気持ち良すぎて、死んじゃうぅっ!?❤」
七十は、|飛縁魔《ひのえんま》達から与えられたものとは、まるで比べものにならない程の快楽に溺れながら嬌声を上げ続ける。
椿太夫は、肉槍の一突き毎に|随喜《ずいき》の涙で頬を濡らし、噴き出した潮で自身の身体を淫猥に飾り立てていく七十の痴態を|可笑《おか》しそうに見詰めながら、その子宮を目掛けて|夥《おびただ》しい量の精汁を解き放った。
●
アルテナ・ヴェルゼルは、その|胎《はら》の中に新しい生命を宿している|飛縁魔《ひのえんま》達を引き連れて、椿太夫の前に姿を現わした。
無数の椿の花が寄り集まった異形の蛇体を持つ星詠みの悪妖は、自身の|眷属《けんぞく》達の不甲斐ない姿に深く嘆息する。
「客から|収奪《うば》う筈の精気を逆に吸い取られたばかりか、|何処《どこ》の馬の骨とも知れぬ|輩《やから》の子まで|孕《はら》まされるとは……わっちの前に、よう顔を出せたものでありんすな」
椿太夫の怒気が宿る視線に射抜かれても、|飛縁魔《ひのえんま》達に反応はない。ただ大きく膨らんだ腹を労わる様に撫でながら、虚ろな眼差しと共に身体を揺らすのみだ。
「……これは|主《ぬし》の仕業でありんすね。随分と好き勝手に振る舞ってくれた様でありんすが……遊女を傷物にされたとあっては見過ごす訳にはいきんせん」
椿太夫の双眸が、|飛縁魔《ひのえんま》達を周囲に|侍《はべ》らせているアルテナの姿を捉える。
豪奢な黄金の巻き髪を夜風に靡かせている妖艶なる魔女の口許に|驕慢《きょうまん》の笑みが貼り付けられた。
「アルテナ・ヴェルゼルと申しますわ。椿太夫様。今宵は、わたくしの|為《ため》に精気と、それを活用する事が出来る健康なる母胎を用意して下さいまして、まことに感謝に堪えませんわ。御覧の通りに。彼女達は、きっと良い|仔《こ》を産み落とす事でしょう。今から、その時が愉しみで仕方がありませんわ……もっとも、わたくしと、いたしましては、強い力を有する母胎は幾らあっても困りませんからね。貴女も孕みたいというのであれば歓迎いたしますわよ?」
椿太夫は、身の程を弁えていない慮外者の言葉に対して怒気を露わにする。全身から発せられる妖気が、周囲の夜気を極北の息吹も同然に凍えさせた。
「わっちを、こうまで|嘲弄《ちょうろう》してくれた|野暮天《やぼてん》は初めてでありんすな。|婢女《はしため》風情が。|御不洒落《おぶしゃれ》ざんすな。|御前《おまえ》達もでありんすよ。その見苦しい|胎《はら》、片端から引き裂いてあげんす。母子共々に大路へと吊るしてやりんすよ!」
椿太夫の蛇体を構成する大輪の椿の花が、その妖気に呼応して宙を舞い踊る。
「あら。怖いですわね。ですけれども……ふふ。すぐに貴女も、わたくしの|虜《とりこ》にして差し上げますわ」
アルテナは数多の|飛縁魔《ひのえんま》達を快楽に溺れさせて、その|胎《はら》に種を注ぎ込んだ疑似男根を再び生み出した。
魔女の豊満な肢体から発せられる淫気が、悪妖の呪詛と衝突して、周辺の空気を淫獄のそれへと変貌させた。
「嗚呼。噎せ返る程に濃密な椿の香り。わたくしの魔羅が疼いてしまいますわ。御覧になって下さいませ。貴女に種付けをしたいと、こんなにも滾っておりますの。ほら。貴女達も、その子等の兄弟が欲しいとは思いませんこと?」
アルテナの股間に|聳《そび》える淫欲の肉槍は、椿太夫の美貌を前にして天を衝くかの様な立派さで反り返っている。これ見よがしに|逸物《いちもつ》を手で扱いている魔女の言葉に、その周囲に|侍《はべ》る妊婦達が動き出した。
椿太夫を包囲する様に、亡者を思わせる足取りで円陣を組んでいく。
「ふふ。この方々が|孕《はら》んだ子等が地に生まれ落ちるには、まだ幾許かの精気が必要ですの。それを手に入れる為でしたら、ええ。例え、それの|持主《もちぬし》が、かつての主であろうとも躊躇なく群がり、貪り尽くす事でしょう。嗚呼。わたくしも我慢できませんわ。早く|吐精《だ》したい……この、溜まりに溜まった欲望の全てを、貴女の|胎《はら》に注いで差し上げますわ」
アルテナは、|胎《はら》の中の子供の為に精気を求める亡者と化した|飛縁魔《ひのえんま》達に取り囲まれている椿太夫の元に悠然とした足取りで近付いていった。
●
椿之遊廓を支配していた幻惑の術が紐解かれても、その残滓は濃密な椿の香りとなって、夜気の中に色濃く漂っていた。
その香りが、汗と、淫蜜と、精汁と、鉄錆の臭いと混合される事で、何とも形容する事ができない酷い悪臭と化している。
「これでは酒の匂いも判りません……鼻が利くのも考え物ですね……」
白銀雅は口許に酒杯を運ぼうとしたが思い留まった。
これでは折角の美酒を堪能する事は出来ない。
情交により火照った肌を、夏の夜風が冷ましていく。
裸身を愛撫する月光を心地良いと感じた。
とは言え、それだけで身体の芯に灯る火が、完全に消えてしまうという訳でも無し。
偶には、この疼きに身を委ねて、野卑なる獣に立ち返るのも良いだろう。
雅は、廃墟を染め上げる血溜まりの中に倒れ伏している|飛縁魔《ひのえんま》達の骸を一瞥した。
視線を上げて、雑兵共をけしかけてきた椿太夫の姿を見詰める。
無数の椿の花を寄り集めた異形の蛇体を持つ悪妖は、その表情を怒りの余りに蒼白としていた。
「足止めにもならないとは。本当に使いものにならない愚図共でありんすね」
「あらあら。貴女の為に生命を張った方々に対して、それは余りにも酷な言い様でしょう。それに全くの無力でもありませんでしたよ。久しぶりに全力で暴れたので……恥ずかしながら、少し濡れてしまいました❤」
雅の肉付きの良い腿の間には、一筋の女蜜が糸を引きながら伝い落ちている。
闘争という美酒に酔い痴れる妖狐の姿は、見惚れる程の妖しさを秘めていた。
「今宵の|見世《みせ》の|御代《おあし》がわりに三途の川の六文銭は支払って差し上げましょう。それなりには愉しめましたからね❤」
雅の裸の足が、軽やかに地を蹴る。
深紅の血溜まりの表面に波紋のひとつも立てずに、妖狐の裸身は銀の閃光と化した。
「……がっ、あっ……!?」
次の瞬間、椿太夫は、腹部に突き刺さった蹴撃の威力に肺腑に溜まった空気の全てを吐き出していた。
のみならず、豪快に背後へと蹴り飛ばされては、朽ち逝くままに捨て置かれている廃屋の内の一つに、その身を叩き付けられる。
廃屋が衝撃により崩れ去り、|濛々《もうもう》とした土煙が上がった。
「……く、あっ……小狐、風情が……今少し精気があれば……!」
「嗚呼、太夫……! 無事でありんすか……!」
よろめきながら身体を起こす椿太夫の元へと、その眷属である|飛縁魔《ひのえんま》の内の一人が走り寄る。
飛縁魔は、主人の身体を慌てて助け起こそうとして――怒気に満ちた一喝を賜る事になった。
「無用でありんす! それよりも、わっちに精気を寄越しなんし! あの|阿婆擦《あばず》れを、わっちの手で引き裂いて……!」
その美貌を羅刹に変えて怒号を発した椿太夫は、しかし、次の瞬間には呆けた様な声を上げる。
腹部に感じる灼熱感。視線を落とせば、自身の|眷属《けんぞく》である筈の|飛縁魔《ひのえんま》の手が何時の間にやら一振りの刀を握り締めており、その刃で自身の|胎《はら》を深く貫いていた。
ただの刀ではない。摩利支天の加護を受けた霊験あらたかなる刀だ。
それは断じて陰の気質を持つ妖異、化生の類が握る事が出来る武具では無い。
「お、|御前《おまえ》、は……!」
「|高峰《たかみね》|茉莉花《まりか》は忍者でござる……なーんてね!」
変化の術を駆使して|飛縁魔《ひのえんま》に擬態していた少女が術を解いて、その姿を現わした。
茉莉花は霊忍刀――陽炎丸の刀身を椿太夫の身体から引き抜くと、一瞬にして背後へと跳躍して距離を取る。
「こ、の……卑怯者……!」
殺意さえ籠めて睨み付けてくる椿太夫の視線を、茉莉花は、しかし誉れだという様に堂々たる態度で受け止めた。
「忍者に卑怯も何もないでしょ。それに着物と簡単な化粧だけの拙い変装だよ。良く見ていれば気付けたと思うけど。部下の事を使い捨ての道具としてしか見ていないから、この程度の子供騙しに引っ掛かるんだよ!」
茉莉花の痛烈な言葉に、椿太夫の表情が憎悪に歪む。
そして、それが、更に悪妖の視座を狭いものとした。
「こ、の……! その生意気な口、わっちの手で直々に引き裂いて……!」
――銃声。
大気の壁を一直線に貫き、音という|鈍間《のろま》な減少を置き去りにして、高速で飛来した一発の|飛礫《つぶて》が、椿太夫の眉間を確実に撃ち抜いた。
雅、茉莉花の遥かに後方。朽ちた建物の屋根の上で、御巫朔夜が狙撃用のガンライフルを構えている。
その筒先からは一条の硝煙が立ち昇っていた。
「……命中。どれほどに強大な力を有する簒奪者であろうと怒りに視野が狭くなれば、目前の敵のみを注視する事になる。それは戦場では命取りだ」
朔夜が覗き込む|照準器《スコープ》の中、眉間を穿たれて、脳漿を撒き散らした椿太夫の身体がぐらりと崩れ落ちる。
しかし――。
「……しぶといな。流石に簒奪者というべきか」
椿太夫の異形の蛇体は苦悶にのたうち回りながらも、|尚《なお》も周囲の|見えない怪物《インビジブル》を急速に取り込みながら、その傷を癒そうと悪足掻きを続けていた。
朔夜は、椿太夫の再生の前に更なる致命の一射を加えようとしてガンライフルに新たな銃弾を装填しようとする。
その時、意識の死角からの強襲により椿太夫の打倒を試みる、もう一人の刺客の存在に気が付いた。
波間に漂う|海月《くらげ》の様に宙を浮遊する二基の決戦兵器「曙光」と、それを疲労困憊の状態でありながらも正確に操作している歴戦の勇士、|錫柄《すずつか》|鴇羽《ときは》の存在にである。
「栄養失調、睡眠不足、過重労働……これは完全に救護施設送りが確定ですね。また死ぬかも……」
持ち得る限りの戦闘用糧食を片端から摂取する事で、今にも干乾びてしまいそうな身体を、衰弱死の瀬戸際で踏みとどまらせている。
放置しておいても害にはならないと判断されて捨て置かれていたのだろう。
椿太夫も、その眷属達も、精気の大半を奪われて、動く事さえ|儘《まま》ならなくなっている鴇羽の存在を意識の片隅にさえ昇らせなかった。
その油断が、この土壇場での致命傷に繋がる事になるのだとは想像さえもしていないのだろう。
僅か二機の決戦兵器は中天に冴え冴えと輝く月光を一点に収束させて、地上でのたうつ異形の蛇体を標的として降り注いだ。
銀色の光柱が、悪妖の執念を目映く、白く、灼き清めていく。
「あ、あぁぁぁぁぁ……!? わっちが、わっちが熔ける……お、のれぇぇぇぇぇ……!」
椿太夫の末期の叫びが、見てくれだけは豪奢な鍍金の全てを剥ぎ取られた廃墟の中に響き渡った。
「……敵、完全消滅を……確認……戦闘行動、終了と……。ああ、眠い……眠いけど、目を閉じたら……絶対に死ぬ……死ぬけど、動けない……誰か、救援を求めます……」
ぐったりとして地面に倒れ伏している鴇羽の、霞む視界の中で、その功績を湛える√能力者達が駆け寄ってくる姿が、淡い滲み絵となっていた。