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 ‪夏も終わり?いやいや、まだまだ夏は終わらない!?
 ‪√‬ドラゴンファンタジーで多くの人が賑わうエリアに、突如現れた新しいダンジョン。

 中に入ってみると──そこには、見渡す限りたくさんのプール!

 ウォータースライダーが楽しめるプール、流れるプール、温水プールはもちろん、特殊な力が働く深海プールなど、定番なものから珍しいものまで様々。
 まさにこのダンジョンは、ウォーターテーマパーク!

 飲食も出来る露店も数多く、たくさん泳いでお腹が空いても大丈夫!
 ダンジョン内は外の時間に合わせて昼と夜のモードがあるようで、気温は暑すぎずプールが楽しめるくらい。

 一般人でも賑わうウォーターダンジョンへ、みんなもご招待!


「夏が終わるって言っても、まだまだ遊び足りなくね?どうせなら、もっと遊びたいよな♪」

 明るく話すルーチェ・モルフロテ(Lupus Caelestis・h01114)は、ニッと満面の笑みを浮かべながらオススメのダンジョンがあると話していく。

「何かいろんなプールがあるらしくてさ!せっかく新しい水着を仕立てた人も多いだろうし、ここでめいっぱい遊び尽くそうぜ♪」

 コンテストの熱も冷めやらぬ今、新調した水着を着てプールを心ゆくまで楽しむにはうってつけ!
 日々忙しくする√‬能力者にとって、良い休みになるはず!とも付け足した。

「あ!ここのダンジョンにボスはいるみたいだけど、特に何かしてくる感じもないっぽいし、もしかしたら一緒に遊んでくれっかも?」

 よほどな事が無い限り危険が無いことも伝えてから、楽しんでこいよー!と片翼天使は元気に見送るのだった。

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第1章 冒険 『水中ダンジョン』



 照り付ける太陽、けれど暑すぎず過ごしやすい。そんなダンジョン内には、見渡す限りたくさんのプールが!

 ゆったり広々と泳げる広いプール。泳ぐのが苦手、背の低い子供でも安心して楽しめるようになっている。
 ウォータースライダーのあるプールにはいくつか種類があり、曲線や直線のスリルあるコースが用意されている。ボディスライダーや1〜2人で楽しめる浮き輪スライダーとなっているので、好きな方を選べるようだ。
 その他には冷えた体をあたためられる温水プールや、流れに身を任せて楽しむ流水プールもある。

 だが、それだけではない。このダンジョンにしかない珍しいプールがあり、それは深海プールというものだ。
 かなり深くまで潜る事が出来、特殊な力が働いているのもあって、酸素ボンベなどの道具が無くとも水中で呼吸は出来る仕様となっている。
 更には、熱帯魚やミズクラゲといったインビジブルも多く、イルカのインビジブルもいるため、幻想的な光景を楽しんだり、イルカに乗って泳ぐことも出来る。

 プールで泳ぎ疲れたら、プールサイドに設置されたビーチチェアで寛いだり、露店で美味しいものを食べるのもいいだろう。
 焼きそばやたこ焼き、フライドチキン、フライドポテトといったご飯系や、ソフトクリームやかき氷、フローズンドリンクといったスイーツ系も。

 さぁ、みんなはどのプールから楽しんでみる?


【補足】
 二章もこの断章で記載した同じ内容で楽しめる形となります!
青空・レミーファ


 夏の終わり、もっと遊びたい!と青空・レミーファ(ややこしい子・h00871)が訪れたダンジョンは、見渡す限り色んなプールの数々!

 これだけの種類があると、どれから遊んでいいか迷ってしまう。レミーファは早速更衣室で鮮やかな赤の水着に着替え、まず向かったのはウォータースライダー。浮き輪を使うものから、何も使わずに滑るものもあり、いっそ両方楽しんじゃえ!と最初は浮き輪スライダーへ。

「どんな感じのコースかな?ワクワクしちゃうね!」

 スタッフから説明を受けた後、浮き輪に座ってレッツスタート!
 勢いよく直線を滑ったと思えば、ぐるんと曲線を曲がる。曲がると浮き輪も遠心力からクルリと向きが変わり、スリリングなコースを流れ──ばっしゃああんっとプールへダイブ!

「ぷはぁ、っ!あはは、すっごい楽しい!面白いね、どんどん遊ぼう!」

 着水してから一度プールサイドに上がると、今度はボディスライダーにチャレンジ!こっちのスライダーもまたスリリングなコースとなっていて、流れに身を任せ、そのまま再び勢いよくプールへダイブ!

 あれもこれもまだまだ楽しみたいけれど、レミーファのお腹からくぅ…と空腹を伝える腹の虫が鳴き出した。

「お腹空いたなぁ……ビーフステーキはないかな?」

 腹が減っては遊びも出来ぬ。というようにプールの近くに並ぶ露店へと足を運べば、いろんなお店から香ばしい匂いが漂ってくる。ビーフステーキは無かったけれど、揚げたてジューシーな唐揚げを見つけたレミーファは「唐揚げ一つください!」と注文。
 手のひらサイズで深めの紙皿に盛られた唐揚げを受け取り、別の店でトロピカルジュースも買ってから休憩スペースへ。空いてる席に座り、まずは乾いた喉をジュースで潤した。

「ん〜、冷たくて美味しい!今度は揚げたて唐揚げ、いっただきまーす!」

 プラスチックのフォークで差し、ふぅふぅと冷ましてパクッと一口食べればジュワっと肉汁が口いっぱいに広がり、アツアツだけれど美味しいと落ちそうな頬に手を添える。

「あつ、っ…!でも、すっごく美味しい!たくさん食べて、まだまだ遊ばなきゃね!」

 食べ物も充実しているのもあり、休憩する時に色々食べ歩くのも良さそう。そのためにも、めいっぱい遊び尽くさなきゃ!と意気込みを見せる。
 唐揚げとトロピカルジュースでお腹を満たした後、「ごちそうさま!」と空の容器を捨てに備え付けのゴミ箱へ。

 今度はどのプールで遊ぼうかな?と考えながら、レミーファはプールエリアへと再び向かうのだった。

キュロス・ラビュリントス


 山のような荷物を運びながら、キュロス・ラヴュリントス(雷蹄の銃剣士・h08660)はプールダンジョンにやって来た。

 泳ぎに来たというには、少々雰囲気の違う様子。
 それもそのはず。運んできた荷物を露店近くに広げ、せっせと準備を整えて出来たのは──出張コンビニ屋台【雷蹄の翼】の開店!

「出張コンビニ屋台【雷蹄の翼】で買い物していかないっすかー?」

“冒険者たちのかゆいところに手が届く”が【雷蹄の翼】店長のモットー。とはいえ、今回は発注数のケタを大きく間違えてしまい、本店のバックヤードを埋め尽くしてしまった浮き輪やビーチボール等、今この場所で使えそうな夏のグッズを売り尽くし大セール!
 度々と店長がやらかしてしまうが、キュロスはその度に様々なダンジョンへ赴いて屋台を出し売り尽くす。モンスターやダンジョンの観察を趣味にしているのもあり、こうした商売は利害の一致になるし一石二鳥。しかも特別ボーナスも出るんだから、この仕事は得でしかないわけで。

「らっしゃいませ。買わなくていいから、手にとって見てくださいっす」

 取り扱う商品は最新デザインで浮遊・速乾の効果付き。今回のプールはもちろん、この先どんなダンジョンへ冒険したとしても役に立つ時も来るはず。

 色んな露店に混ざって商売をしていれば、プールに遊びに来た冒険者がキュロスの店の前に立ち止まって商品を眺めていた。そして、浮き輪を手に取り「すいませーん」と声掛けられれば、にこやかに対応する。

「これ欲しいんだけど、ちょっと高いなぁって思ってて……少しまけてもらえたりしない?」
「価格は、勉強させてもらうっす。数量限定、急がないと売り切れるっすよー!」
「数量限定なら尚のこと気になる!頼む、少し交渉させてくれ!」

 人は、不思議と数量限定という言葉に弱いもの。慣れた様子で商売をするキュロスだからこそ、持ち運んできた商品は次々と売れていく。
 売れれば売れるほどボーナスも増し増しになるからこそ、密かにウッシッシと笑いが出てしまいそうになる。

 冒険者だけでなく、一般客も遊びに来ている事から売れ行きは上々。このままいけば、早めに完売出来るかもとキュロスは満足そうに頷く。

「うんうん、いい感じっす。早くに売り切れたら、自分もプールで遊んでもいいかもしれないっすね」

 まずは完売を目標に、そのあと少し遊んだとしてもバチは当たらないはず。店長のため、自分のボーナスのため、キュロスは出張コンビニ屋台の営業を頑張るのだった。

冷・紫薇


「な、な、なにコレ〜〜!?見たことないヤツいっぱい!」

 目に映る新鮮な光景に、冷・紫薇(沦落織女・h07634)は紅瞳をキラキラと輝かせながら、見渡す限り様々なプールにテンションは爆上がり!
 紫薇の生きていた時代には無かった遊び。これら全て紫薇の思うままに、自由に遊んでいいなんて夢のような光景だ。

 どれも興味があるが、特に気になったのはスライダープール。流れる水に身を任せてダイブする人達を見て驚きとワクワクは高まるばかり。自分も体験したいと思えば、早速選んだのはボディスライダーで。

「水が流れてるの!?えっ滑っていいの!?まずはボディスライダーにれっつらゴー!」

 スタッフに遊び方をレクチャーしてもらい、仰向けになっていざチャレンジ!

「うわっめっちゃ滑る待って待ってうわああああ怖い!!!!」

 かなりのスピードで滑り始めたかと思えばカーブで体は揺られ、終始スリリングな気分のまま勢いよく水へと飛び込む。

 ──ばっしゃーーん

「…びっしょびしょでとんでもない速さで怖かった。しんだかと思った」

 死んでるから幽霊だとか、そんなツッコミ入れたくなるような言葉を口にしながら、紫薇はゆらゆらとプールから這い上がって一息つく。けど、違うスライダーなら楽しいかもしれないと思えば、そのままスライダーエリアへUターン。

「今度は浮き輪スライダーにしよ!」

 次に選んだのは、浮き輪を使って滑るスライダー。早速浮き輪に座ってレッツゴー!と滑り始めると、遠心力でクルクルと回ったりしながらもキャーキャーはしゃいで、再び浮き輪と一緒に浮き輪でダイブ!

「あっ、こっちならいける!楽し!」

 そんなこんなと気付けば浮き輪スライダーを5回ほど楽しんでいて、流石に疲れてきたのもあり水分補給しようと露店側に向かうのだが──。

「あれ、アルコールはないカンジ!?おっとっと〜それは困ったぞ」

 残念そうにするけれど、代わりのものを飲めばいいじゃない?と選んだのは涼やかなソーダ。

「まぁいっかー、シュワシュワで実質サワー!気分だけでもテンアゲ!」

 これはこれで最高だし?とご機嫌に、休憩スペースで座りながらソーダを楽しむ。シュワシュワとした喉越しもソーダというリゾート感も最高♪とご機嫌な様子のまま、次のプールはどれにしようと考えていて。
 ふと視線を向けた先に見えたプール、ゆらゆらと流れるように泳ぐ人達を見て、次は流れるプールにしようかな?と考えていた。

「あとはー、流水プールでゆったりどんぶらこしてこ。少しでも水の中で痩せようね」

 誰も見てないのを確認してから、自分のお腹を少しつまんでみる。プールで泳ぐのはダイエットにもなるというのをどこかで見た気がすると、紫薇は密かに気合を入れて。
 とはいえ遊びを兼ねる方が楽しめると思いながら、喉を潤した紫薇は流れるプールへと向かうのだった。

イノリ・ウァヴネイア


 イノリ・ウァヴネイア(幽玄の霊嬢・h01144)は、目の前の光景に目を丸くしていた。ここはダンジョン、ダンジョンに来たはずなのだが──見渡す限りプールで遊ぶ人達で賑わっていて、何でもアリなんだと改めて再確認していた。

「ダンジョン…ダンジョンですか…ダンジョンですか……?いえ、なんというか…もうレジャー施設というか…はい…ダンジョンって色々っていうか、なんでもありですね…」

 普段住む‪√‬EDENと違う雰囲気だからこそ、イノリと行動を|共にしている《憑いている》幽霊に視線を向け、少しくらい羽目を外したっていいのかなと思っていた。
 だが、これだけたくさんの人が種族関係なく遊んでいるのなら自分だっていいはずと思えば、イノリは早速水着に着替えようと更衣室へ向かう。

「ウォータースライダーっていうの…ちょっとやってみたかったんですよね…」

 色んなプールがある中で、一番人気を博していたのはウォータースライダー。イノリも経験したことなかったのもあり、早速幽霊達と一緒にチャレンジする事に。
 種類もあるけれど、イノリ達が選んだのは浮き輪スライダー。だが浮き輪のサイズを見て、イノリはうーんと首を傾げる。

「|全員《みんな》で乗れるでしょうか…浮き輪スライダー…」

 結構人数いるけど大丈夫かな?と心配になるけれど、何とか一つの浮き輪に乗って、いざチャレンジ!──するのだが、滑り始めてからイノリはハッと目を見開いた。

「…あっ、ちょっと待って…『足立さん』…いくら|幽霊だ《ぶつかりはしない》からって、逆走しようとしないでください……」

 急に逆走し始める【足立さん】を何とか制止しているところに、今度は滑りが悪くなってるのに気付いた。

「『手越さん』…!対抗して、壁を掴んで流れるのを止められるかチャレンジしないでください…!」

 【足立さん】に何故か対抗意識を持った【手越さん】は、スライダーの壁を掴んでいて、滑りが遅くなってきていたところに当然ながら後ろから他の客が滑ってくるのもあり、事故になる前にと急いで手を離させた。
 そんな中で、今度はド派手なBGMが近いところから聞こえてきて。

「お、『音坂さん』…バトルじゃないんですから、勢いのいいBGM流さないでください…余計に収拾が……」

 【足立さん】と【手越さん】のバトル(?)にBGM付けないでと宥めてるところに、あれ?とイノリは人数が足りないのに気付く。

「…あれ?『夢路さん』…?どこ行きました…?まさかまた|観察対象《カップル》についていって……」

 何でこうもみんな自由なのか。羽目を外しに来たはずが、カオスな状況になっていて、そんなこんなしてるうちに勢いよくプールへダイブ!

 ばっしゃーーん!と派手な水音と共に着水し、浮き輪に乗ったままイノリはぐったりしていた。

「あの…私もちょっとぐらい羽目を外したいんですけど……!」

 気が気じゃない初体験のウォータースライダーは、楽しめたかと言われたら疑問が残ってしまうけれど。
 時間はまだある、次こそはゆったり楽しめるはず…!寧ろ楽しませて!という願望を胸に、ぷかぷかと浮き輪に乗ったままプールを漂うのだった。

エレノール・ムーンレイカー
ミモザ・ブルーミン


 最近なかなか忙しく、ようやく時間が取れたのもあってエレノール・ムーンレイカー(怯懦の精霊銃士・h05517)は、ミモザブルーミン(明朗快活な花妖精・h05534)を連れてプールダンジョンへとやって来た。
 構って貰えず寂しかったミモザにとって、エレノールから今回誘ってくれたのはすごく嬉しい。今日は時間が許す限り遊んで夏の思い出を作ろうねと、来る道中もワクワクしていたのだ。

 エレノールは緑のチェック柄に月の飾りがワンポイントの水着、ミモザはピンクの花柄にフリルいっぱいの水着とそれぞれ着替え終え、エレノールが指さしたのは最初の目的地。

「やはり、ウォータースライダーは行かねばならないでしょう」

 早速目玉の一つで最長にして最恐のウォータースライダーへと向かう事に。やはり人気というのもあり、多くの人で行列が出来るほど。自分達の順番になるまでの待ち時間の間も聞こえてくる楽しそうな声にワクワク感は高まっていく。

「おおぅ……。妖精サイズのウォータースライダーの経験はあるけれど、これだけ大きいのは初めてだなぁ。うん、わくわくしちゃうね!」

 自分達の番になり、エレノールが先に浮き輪に乗ってその上にミモザが真似るように横になる。そして、落ちないようにとしっかり抱えて、いざ発進!
 最長最恐と銘打つウォータースライダーはその名の通り、二人の想像を超えるスピードで滑りながら、ぐるんと急カーブがあったりとかなりのスリリング!エレノールとミモザは悲鳴をあげながら滑っていき、そして勢いよくプールへ着水!

「ふふ、思った以上に怖かったけど楽しかったです」
「あー楽しかった!意外と怖くなかったし、いけるもんだね!」

 あまりのスピードと急カーブに怖さもありながらも、そんなスリリングさが楽しくて。長蛇の列になるくらい人気なのも納得しながら、ミモザは次はどうする?とソワソワするけれど。

「でもさすがに疲れたから、次はどこかで休みましょう」
「ん、休憩するの?おっけーおっけー、ついでに屋台も見て腹ごしらえでもしましょ!」

 いっぱい叫んで少し疲れたエレノールは休憩を提案すれば、近くにたくさんの屋台があるのを見てミモザも賛成と頷く。
 あちこちからイイ匂いしてくる屋台に、二人のお腹もくぅ…と鳴き始めて。二人でシェア出来るようにとフライドポテトや唐揚げを選び、飲み物はトロピカルソーダを選んで休憩スペースへ。

「まだまだ色んなプールがあるみたいですし、休憩終わったら他のにも行ってみましょうね」
「うんうんっ!きっとどれも楽しいから、制覇する勢いで遊ぼうね!」

 次はどれにしよう?二人はそんな話をしながら、美味しいものでお腹を満たしていくのだった。

第2章 冒険 『蒼の領域』


冷・紫薇


 冷たいドリンクで喉を潤した後、紫薇は大人一人ゆったり横になれるフロートをレンタルして流れるプールへ足を運んだ。
 フロートに乗っかり、ゆったり水の流れに任せて。たくさんの人がはしゃぐ声を聞きながら、心地良い疲れからウトウト夢うつつ。ダイエットはまた今度頑張ればいいや、なんても考えちゃうけれど。

「しっかし青いなぁ、キレーだなぁ。こんな素敵な景色を生きてるうち……いや、意識のあるうちに見れるとはね」

 フロートの上で寝転びながら見上げてみると、綺麗な青空が広がっていた。外の時間とリンクしているダンジョン内の空は青空と、少しずつ橙に染まり始めてもいる。
 不思議な世界で見る景色はとても綺麗で。人間として生きているわけではないにしても、一人の幽霊として意識はしっかりある。ただ漂うだけの存在だったら、今この景色も遊びも楽しめなかったかもしれない。テンション上げて振舞っていても、ふとした時に考えてしまう。
 微睡む意識の中で考えていたが、思わずハッとして起き上がる。

「……ん?今夢じゃないよね!?どっち!?」

 自分の頬をぱちんっと両手で叩いてみる。じんわり痛い、夢じゃないと確認出来た。

「ダイジョブ、ちゃんと現実だ」

 ホッと一息ついて、再び空を見上げたりしてみる。徐々に橙に染まり始める空、楽しい思い出を作る多くの人達。嘗て生きていた時代から考えられなかった光景に、紫薇は感慨深くなった。

「不思議だなー、元々超田舎か宮殿の中しか知らなかったあたしが、どんどん知らない世界に踏み込んでるの。ちょい痛むとはいえ実体化もできるしね、実質人間だわ」

 貧しい田舎で暮らし、そこから宮殿で過ごしてきたけれど、最期は幸せと言えるものでは無かった。でも今は、幽霊だとしても新しい人生を謳歌出来ている。
 紫薇が思っていた以上に広い世界で、楽しい事も誰かを守る事も出来るなら、この姿になった事に悲観する必要も無いから。

「生きてる?ってサイコー! ……って、うわわわっ!?」

 テンションアゲアゲで楽しんじゃえ!と両手を上げてはしゃぐと同時にフロートは傾いて──ばっしゃーんと流れるプールへ落ちてしまった。

「ぷは、っ!あはは、やっちゃった。あーっ、あたしのフロートが流されてくっ?!待ってー!」

 バシャバシャと流れに乗るように泳ぎながら、どんぶらこと流れていくフロートを追いかける。ようやく追いついて手で押さえると、そのまま流れるプールから離れて。

「また少し休憩したら、違うプール楽しんじゃうのもアリだよね!何かお店増えて無いかなー?」

 フロートを返却して今度は空腹を満たしてもいいかも?と考えたりしながら、紫薇は少し露店巡りしようと足を運ぶのだった。

エレノール・ムーンレイカー
ミモザ・ブルーミン


 美味しいものをシェアして楽しんだ後、エレノールとミモザは次のプールへ向かっていた。

「次はこのダンジョンにしかないという深海プールとやらに行ってみましょうか」
「深海プールかぁ。あたし、深海に潜るのは初めてだから、どんな景色が見られるのかすっごく楽しみ!」

 このダンジョンには目玉プールの一つとして、深海プールという特殊なプールがある。何でも水中でも呼吸が出来ることから、特殊な道具が無くても深くまで泳いで潜れるのだ。
 不思議な世界だからこそ、貴重な体験は二人の心は惹かれるばかり。思い出作りに来たからこそ、新しい事へのチャレンジも素敵な思い出になるはず。

 プールに着くとここでもスタッフからの軽い説明を受けた二人は、まずどれだけ深いのだろうと軽く覗いて見た。肉眼で見える限りでは底が見えない。「うわぁ…!」と自然と二人の声もハモってしまう。
 二人は顔を見合せ、ゆっくりと深海プールの中へ。底へと向かうように泳いでいく最中も呼吸が出来る事に、説明を聞いた上でもミモザは驚きを隠せずにいた。

「わっ、本当に息が苦しくない!水の中で呼吸できるなんて信じられないよ」

 この不思議な体験に驚いていたが、少し深く泳いだ先で二人の目の前に広がる光景はまた格別なものだった。
 虹色に煌めく小魚のインビジブルの群れ、ふわふわと漂うインビジブル達が間近で泳ぐ風景はとても幻想的。二人の周りを歓迎するように泳いだり、手を伸ばせばインビジブル達からも指先に触れてくれる。こんな体験は、確かにここでしか出来ないと納得出来るものだった。

「これは、すごいですね。こんな幻想的な風景が間近で見られるなんて」
「まるで自然映像のワンシーンみたい。はあ、感動しちゃうなぁ……」

 煌めき揺らめくインビジブル達が優雅に泳ぐ風景を眺めていると《キュイキュイ》と声が聞こえてくる。声のした方へと視線を向ければイルカのインビジブルが二人の目の前に泳いできた。

「あら?イルカさんがこちらに来ましたね。ふふ、折角だし、一緒に乗りましょう、ミモザ」
「え?エレノール?イルカに一緒に乗ろうって?うん、いいよ♪」

 エレノールが先にイルカに乗ると、背中を預ける形でミモザも乗っかれば《キュイッ♪》と人懐っこい鳴き声を出しながら、ゆっくりと二人を背に乗せて泳ぎ始める。
 ゆっくり泳いだり、水中を駈けるように泳いだり。深く進む先もたくさんのインビジブルが水中を照らしているようにも見え、その光景はまるで夜空を泳いでいるよう。イルカも二人と共にいるのが楽しいというようにはしゃいでいて。

(凄い。この風景と体験は、一生忘れることが出来なさそう。来てよかった……)
(はあ、凄いなぁ……今日の体験、友達のみんなに絶対自慢しちゃおうっ♪)

 二人は顔を見合わせるとクスクスと楽しそうに微笑む。今日見たこの光景も体験も、間違いなく忘れられない思い出になったから。
 イルカやたくさんのインビジブルと共に楽しむ深海は、二人の心にキラリと煌めき続けていた。

キュロス・ラビュリントス


 出張コンビニ屋台【雷蹄の翼】を開店して数時間ほど、キュロスは最後に来店してくれたお客さんに商品を手渡し終えれば、本日の営業は終了!
 溢れ返ってた商品を全て捌き切った事でボーナス確定し、この後は自由にエンジョイするぞと、荷物や貴重品を黒いスライムの【|雷蹄の庭師《愛称:ニワちゃん》】に預けてバカンスを楽しむことに。

 時間は夕方になりつつあった事からアルコールを取り扱うお店もチラホラと出てきて、キュロスは迷わずビールを注文する。ジョッキで運ばれてきたのを受け取ると、喉越しを楽しむ勢いでそのまま一気飲み。

「だはぁ、うんまーいっ!五臓六腑に染みわたるっす」

 同じお店で買ったタコ焼きはニワちゃんと分け合い、出来たて焼きたてをハフハフと食べながら、柔らかなスライムの体を撫でてあげて。

「ニワちゃんも、頑張ったっす。えらいえらい。ぷにぷに~なでなで~」

 喉を潤し、空腹を満たした後はウォータースライダーへ直行。ボディースライダーも浮き輪スライダーも全部制覇する勢いで滑れば、想像以上のスピードを楽しみ爽快感を堪能する。
 その流れで次に足を運んだのは深海プール。あまりに珍しいため、どんなものなんだろうとワクワクしながら潜ってみると──。

「深海プール、本当に息ができるっす!不思議っすね」

 普通なら特殊な装置などを使わないと深くまで潜れないけれど、不思議な力が働くこのプールは、どれだけ深く潜っても苦しくない。
 そして潜った先には、インビジブルの魚達やクラゲがキュロスを出迎える。さらにはイルカからの歓迎も受け、ニワちゃんをビーチボール代わりに遊んだり、背中に乗りながら勢いよく泳ぐとプールから顔を出して高くジャンプ!水飛沫が小さな虹を描き、周りの冒険者や遊びに来ていた人達も思わず目を奪われる。

 その後は流れるプールへ。ニワちゃんは浮き輪のように空気を取り込んで膨らんでくれればその上に寝転がり、水の流れに流れるままにゆったりゆったりプールの上で寛ぐ。

「疲れた。けども、心地いいっす」

 商売からスタートして、そのまま遊び尽くして。疲れはあるけれど、それは心地良いもので。たくさんのお客さんと出会い、感謝の言葉や笑顔をたくさんもらえたのも、キュロスにとってボーナス以上の価値がある。
 こういうのがあるから出張販売は止められない。ダンジョンのことを知れるだけでないからこそ、また次の楽しみも増えていく。

 心地良い疲れと水の音に、キュロスは自然とウトウトしてしまう。このままもう少し、ゆったりと過ごしてから遊んでもいいかもと思いながら、のんびり流れるプールを楽しむのだった。

第3章 ボス戦 『熾天狼『アーセナル・キーパー』』



 時間を忘れて遊んでいれば、いつのまにかダンジョン内は夜モードへと変わっていた。

 薄暗くなった段階でそれぞれのプールはライトアップされ、今度はナイトプールも楽しめちゃう!
 露店ではアルコール、食べ物もお酒に合うメニューを取り扱う店も増えるため、成人してる人はお酒を飲みながらプールを楽しめる。未成年でも楽しめるようにモクテルの提供もあるため、年齢問わず遊べる点もまた安心だ。

 ライトアップされた事で今まで遊んでいたプールも華やかな雰囲気へと変わり、更には打ち上げ花火まで楽しめるという豪華な演出で盛り上げてくれる。
 時間が許す限り、めいっぱいプールを楽しもう!
エレノール・ムーンレイカー
ミモザ・ブルーミン


 あらゆるプールを楽しんでいると、いつしかダンジョン内は夜モードへと変わっていた。暗くなってくると同時にライトアップされ、更には打ち上げ花火も上がり始めていた。
 エレノールとミモザの二人は、露店でフローズンドリンクとトロピカルジュースを買って、プールサイドにあるビーチチェアで寛ぐことに。ミモザのためにとスタッフに声掛けて小さめのビーチチェアも用意してもらい、エレノールの隣へと並べてもらった。

 色とりどりの花火がダンジョン内を彩る風景を眺めながら、遊び尽くして心地良い疲れを感じていて。そんな中、エレノールはふと隣にいるミモザへ気になる事を聞いてみた。

「今日、どうだった?楽しかった?」

 美味しい♪とトロピカルジュースを飲んでいたミモザは、エレノールからの質問を聞くと、サイドテーブルにカップを置いて満面の笑みを浮かべて大きく頷いてみせる。

「うん、とっても楽しかったよ。いい思い出が出来ちゃった」

 ウォータースライダーでめいっぱいはしゃぎ、幻想的な魚やクラゲのインビジブル達、イルカと戯れた深海プールを楽しんで。
 構ってあげられなかったというキッカケから出かけたダンジョンで刻まれた思い出はとても印象的で、かけがえのないものとなった。
 ミモザからのその答えを聞いて、エレノールは安心したように微笑んだ。寂しい思いをさせてしまっていたからこそ、こうしてミモザに喜んでもらえたのが何よりも嬉しかった。

 カラフルな花火は時折いろんな形を描いていて、火花の弾ける響く音と光のイルミネーションを二人は静かに眺める。言葉を交わさなくとも、不思議とその時間は心地良くて。
 契約主と使い魔という関係でありながらも、対等な友人として傍にいる間柄だ。普段、エレノールに記憶を共有してもらう事でミモザも他√‬世界での出来事を観測出来ている。けれど、今日のこの思い出はしっかりと心に刻まれた。今日だけではない。これから先の楽しい事だって、二人で思い出を共有出来るはず。

 花火の合間に二人は目が合うと、楽しそうに笑い合う。
 楽しかったね、また来ようね。言葉にしなくても、伝わり合う思いは確かにここにあるから。

 時間も遅くなっていき、もうすぐ花火も終わってしまう。
 最後の花火が打ち上がるまで、二人はその光景を眺め続けるのだった。

キュロス・ラビュリントス


 ダンジョンの中はすっかり夜モードになり、プールや露店などがライトアップされて、色とりどりな花火が打ち上がっていた。

 露店のラインナップにお酒が増えていて、それに合うおツマミを取り扱っているのを見たキュロスは、まるで財宝の山を見たかのように赤い瞳をキラキラさせてテンションは爆上がり!

「財宝を収める胃袋は有限っすから、露店の一押しを制覇っすね」

 早速様々な|財宝《お酒》を注文し、飲みながら店主や他のお客さんとの会話を楽しむ。お客さん達との会話は、お互いにほろ酔いだからこそ盛り上がった。
 弾む会話の中で、このダンジョンにはボスがいるという話題が出てくる。どうやら敵意はないらしく、もしかしたら守り人みたいな感じかもという話を聞いていると、ニワちゃんがソワソワとし始めていて。

「ん?ニワちゃん、もしかしてここのボスに会いたいっすか?」

 早く早く!と急かしてくるなら、飲みかけだったお酒を飲み干して会話していた人達と別れてボス探しをする事に。
 どうやら、ニワちゃんはこのプールダンジョンに住むボスと遊びたい様子。さっきの人達から聞いた話通りなら、ボスに敵意は無く危険が無いらしい。話が通じるなら、もしかしたら遊んでくれるかもしれない。

「遊べるといいっすね。自分もボスをスマホで撮影したいっす」

 ニワちゃんは少し体の形を変えて翼ぽいのをつくるとパタパタさせていて、ボスと一緒に空を飛びたいんだというのが伝わった。

「うんうん。自分もいつかは空を飛びたいっす」

 空を飛ぶってどんな感じだろう?きっと、体いっぱいに風を受けて気持ちいいはず。空を飛ぶ想像をしながら、打ち上げ花火やたくさんの人達で賑わう様子をスマホで写真撮っていく。たくさんの写真を撮って、自分達と遊んで欲しいってナンパする時に見せたら、興味を持ってくれるだろうか。

 ダンジョン内を歩いていると、少し奥まったところで静かに座って賑わう人達を眺める『熾天狼『アーセナル・キーパー』』の姿があった。
 キュロスとニワちゃんが来た事で視線は二人に向けると静かに見定めていたが安全だと分かると、変わらず景色を眺め始める。そんな中でニワちゃんが『アーセナル・キーパー』の近くへ行くと、遊んで欲しいというようにアピールし始めた。

「ニワちゃん、遊んで欲しいみたいっす。良かったら、自分達と遊んで欲しいっす」

 その言葉を聞いた熾天狼は、背中に乗っていいというように体を伏せる。我先にとニワちゃんが乗っかり、遅れてキュロスも背中に乗れば、二人を背に乗せたままダンジョンの中を悠々と飛び始めた。
 少し高いところから眺める数々のプールや露店、たくさんの人が賑わう姿が少し小さく見える。このダンジョンならではの光景にキュロスとニワちゃんは目を奪われた。

 ダンジョンによって、危険も楽しみもそれぞれ。これはこれで貴重な体験が出来たと思いながら、二人は『アーセナル・キーパー』と共に楽しい時間を共有するのだった。

冷・紫薇


 すっかり夜モードなダンジョン内。
 たくさんプールで楽しんで、のんびりウトウトして過ごしていた紫薇のお腹は何か食べたいと訴えかけていた。

 あちこちの露店から良い匂いが漂ってくると、ますます空腹感は増していく。どれ食べよっかなぁ?と悩んでいる中で、ふと何かの気配を感じた。もしかしたらと思い気配を辿れば、人の少ないところで佇む体の大きな白い狼が香箱座りで賑やかなプールの方を眺めていた。そう、その正体はこのダンジョンのボス《熾天狼『アーセナル・キーパー』》である。
 白い毛並みに純白の翼、まるで澄んだ水のような青い瞳に、足には金の腕輪が輝いていた。その綺麗な見た目の白狼に、紫薇の赤瞳はキラキラと輝いた。

「青色のおめめがとっても綺麗だねぇ。毛並みも光り輝いてるし、なによりその腕輪!かっこいい〜シビれる〜!!」

 キャッキャとはしゃいでいたけれど、良いこと考えた!というように一つ閃く。そのまま紫薇は『アーセナル・キーパー』にこんな質問をしてみた。

「ところで、キミはお腹すいてない?あたしはちょっと、美味しいもの飲みながらつまみたい気分なんだァ。付き合ってくれる?」

 ダメ?と首を傾げてみる。すると|白天狼《アーセナル・キーパー》はゆっくりと立ち上がり、紫薇に近付いて真っ直ぐ見つめてきた。話せるわけではないが、人の言葉は理解してくれているらしい。敵意が無いと判断してくれたと思えば、ニッコリ満面の笑みを浮かべて一緒に露店へ向かう事に。
 今度は『アーセナル・キーパー』と共に露店を巡り、紫薇は小さなグラス入ったカクテル《ホワイト・レディ》を選んだ。ここまではいいものの、問題は|白天狼《アーセナル・キーパー》の分である。

「えっと、キミは飲めるやつでいいからね……ペット用の牛乳とかの方がいいのかな?」

 どうしようと紫薇が悩んでいると、カクテルを買った露店の店主がサービスでと紙皿に乗せたフルーツを出してくれた。おつまみにもなるが、共に行動している『アーセナル・キーパー』が食べれるようにと用意してくれたのだ

「お客さん、これ良ければ!美味しい新鮮なフルーツだから、たんとお食べ!」
「わぁ、ありがとー!」

 良かったねと笑いかければ、鼻を鳴らしてフルーツの匂いを嗅いでみる。食べていいのだろうかと視線を向けてくるのを見つつ、その近くにあった椅子に腰かけてからカクテルグラスを軽く掲げて。

「アーセナル・キーパーちゃんとの出会いに、かんぱーい!」

 そう言って一口飲むと、幸せいっぱいな表情を浮かべる。やっぱりお酒が飲めるってサイコー!と上機嫌に飲んでる横で、|白天狼《アーセナル・キーパー》もフルーツを口にし始めた。瑞々しいフルーツの甘さに、どこか穏やかな表情を浮かべているようにも見えると、それがとても微笑ましいなと眺めている。

「ふふ、美味しい?あたしが昔飼ってた猫は、柿が大好きだったよ」

 懐かしいなと生前の記憶を思い出す。色々と波乱万丈と言える人生だった中の穏やかな思い出は、今でもハッキリと思い出せる。
 しみじみとしてしまうけれど、今は楽しむ時間。それに『アーセナル・キーパー』を退屈させたくないと考えれば、このプールに来てからの話を話し始めた。

「ねぇ、ウォータースライダー知ってる?勢いよく水を滑るんだけど、すっごく怖くって!でも、浮き輪使うやつは楽しかったんだ!」

 ボディースライダーは思い出すだけでも勢いの怖さはインパクトがあった。それでも、その後に楽しんだ浮き輪を使うスライダーは楽しかったと振り返る。

「あとさっきさぁ、フロートでうとうとしてたらヘマしちゃったんだ。なんかしながら寝るのは気をつけとこ!いくら安全っぽいとはいえ、ダンジョン?だもんね?」

 うっかりフロート流されちゃったと話しながら、それでもずっと充実してたなぁと思えば自然と笑みを浮かべていた。その表情から、このダンジョンのボスとしても安心したように優しい眼差しを向けてくれる。

 紫薇が楽しそうに話していると、どーんという大きな音と共に色とりどりの花火がライトアップされたプールを更に彩り始めた。突然の大きな音に紫薇の体が大きく跳ねて、思わず『アーセナル・キーパー』に抱き着く。包み込む大きな体、ふわっとした毛並みが気持ち良い。
 生きていた頃には無かったけど?!と驚きは隠せないけれど、抱き着いたまま改めて見てみる。形も色も様々な光の大輪は、とても華やかで、とても綺麗で。この光景も幽霊となった今だからこそ楽しめるんだと、改めてしみじみと感傷に浸る。

「いやー、なんでもある華やかで便利な時代になったもんだよね。そんな時代に、キミと出会えたことにかんぱい!」

 |白天狼《アーセナル・キーパー》はさっきも乾杯したよね?という眼差しを向けるけれど、気にしちゃダメだよと満面の笑み。楽しい事には、何度だって乾杯したっていいんだから。
 程よく酔っ払ってイイ気分♪とご機嫌な様子で、花火が終わる時間まで満喫する。

 ひと夏の思い出は初体験がいっぱいで。
 どうやら、この先も楽しい事が控えてる様子。せっかくの第二の人生謳歌しちゃおうと心に決めながら、美味しいお酒と共に華やかな光彩を楽しむのだった。

イノリ・ウァヴネイア


 自由気ままな幽霊達に振り回され、ようやくそれぞれが満足したのか落ち着いてくれたことに一安心するイノリ。これで羽目を外して遊べると思っていたところで、何やら訴えてくる声が。

「えっ、『牙谷さん』も羽目を外したい?ま、まぁ…『牙谷さん』は普段から結構大人しくしてくれてますし……」

 先程までマイペースな行動をしていた幽霊達と違い、【牙谷さん】は食欲が旺盛なくらいで比較的大人しい方だ。それなら振り回されること無く過ごせそうだと考えていたが、次に聞こえた言葉には、イノリは思わず目を丸くしてしまう。

「えっ、|幽霊再回帰し《生前の姿で遊び》たい!?そ、そう来ましたか……」

 ただ、生前の姿はとてつもなく巨体を持っている【牙谷さん】が遊べるとなると、どうしても場所が限られてしまう。
 だがしかし、ここは‪√‬ドラゴンファンタジー。世界の名前にもあるようにドラゴンが住まう世界なら、規格外の大きさを誇るプールがあったっておかしくないはず。そう思えば、大きな体でも楽しめるプールを探そうとダンジョン内を歩く事に。

 人間が楽しめるプールが多かったが、そんな中で見つけたのは深海プール。ダンジョンならばトラップにもなりえそうだが、此処では水中でも呼吸が出来るという特殊な力が働くプールとなっている様子。
 ふと覗いてみれば、広さも深さも文句なし。ここならどうだろうと提案すると【牙谷さん】も満足そう。それならと、さらなる注文が聞こえてきた。

「お酒も持っていく?ま、まぁ、私は享年合わせてもまだ飲めませんが、『牙谷さん』用なら…樽でもらっていきましょうか……」

 近くにある露店で樽に入ったビールを注文するが、イノリ自身が未成年というのもあり、店主は首を横に振って。

「お嬢さん、未成年だろ?お酒は売ってあげれないぞ」
「の、飲むのは私じゃなくて…|同行《憑依》している人が飲むんですが、ダメでしょうか?」
「おつかい?それなら構わないよ!樽はこのサイズになるけど、大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です……ありがとうございます」

 何とか購入出来て深海プールまで運んでもらうと、イノリは【|幽霊再回帰《ゴーストグレス》】を発動。

「あなたの力、幻想はばたく|再回帰《リグレッション》……」

 イノリの力を元に【牙谷さん】は生前の姿である【炎魂竜】へと変われば、そのまま楽しむぞ!と言わんばかりに深海プールへとダイブしようとして──。

「…あっ、待ってください…いくら羽目を外すって言っても、その質量で飛び込んだら……」

 ──ザッバーーーン!

 大きな波の如く水飛沫を上げた事で、プールに入っていない人達や露店まで全身びしょ濡れに。慌ててイノリはペコペコ頭を下げて謝っていく。

「こ、これじゃ…羽目外すどころか、逆に疲れる気が……」

 盛大な溜め息をつくイノリを横目に、のんびりゆったり悠々自適に【|炎魂竜《牙谷さん》】はプールを楽しみながら、おいでというように手招き。
 楽しんでいるなら結果良し?と考える事にしたイノリは、手招きされるままに深海プールへ。

 ライトアップされた事で、より幻想的な風景を見せる水の中を【|炎魂竜《牙谷さん》】と泳ぎながら、今年の夏最後の思い出作りをしていくのだった。

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