潮風が紡ぐあたたかな絆
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水着コンテストが無事終わり、柳・依月(ただのオカルト好きの大学生・h00126)と柳・弥月(人妖「交通事故の地縛霊」の心霊テロリスト・h05779)は、人が疎らになり始めていた海辺でゆったりと歩いていた。
怒涛の二日間、多くの人で賑わいお祭り騒ぎだった余韻を残し、ザザ…と波の音を聞きながら依月はにこやかは笑みを浮かべる。
「水着コンテストお疲れさん!お互い入賞出来て良かったな」
「お、お疲れ……って、疲れてるのは兄さん、なんじゃ……?ぼく、やっぱりなかなか自由が許されてなくて、宣伝ほぼ任せちゃったし……」
心霊テロリストとして過去に多くの被害を出してしまった事から、特殊捜査四課の管理される日々。そんな中で依月に任せきりだったのが申し訳ないと俯いていると、ぽすぽすと頭を撫でてくれた。
「うん?いやいいんだよ。俺が好きでやってることだからな。色んな人と遊んで、色んなものを食べられたし、楽しかったぜ?」
依月は二人で入賞するためにあちこち顔を出す中、美味しいものを食べたり、ちょっとしたアトラクションを楽しんだり、ハプニングに巻き込まれるような事もあったりしたと振り返る。
話してくれる内容はどれも楽しそうなものばかりで、聞いてるだけでもワクワクしたりハラハラしたり、いつしか弥月の表情に笑顔が見えた。
「ほら、色々お土産もあるぞ。スイカ味のカチワリ氷とか、ハムサンドとか。その他いろいろなアイスとかもろもろ」
「えっ…!ありがとう、兄さん。次があるなら、ぼくももっと回れたらいいな」
「そうだな、来年は弥月とも見て回りたい」
来年は二人で一大イベントを楽しむ。
楽しい目標があればこれから先も頑張れるしと話してくれる依月の思い。それに応えるために、自由に行動出来るようになるために頑張ろうと弥月も心に決めて。
「というか、せっかく水着なんだし。泳ごうぜ?」
「そ、そうだね……泳ごう、かな。海って、危ない気がしてちょっと不安だけど……」
“交通事故”を軸とした怪異でもある弥月にとって、水難事故になってしまわないかと不安そうにしていたが、依月は小さく笑って大丈夫だと伝えて。
「危険?俺たちでそんなことないだろ。いや、どっかの海辺の会場が危険すぎて流されたことはあったけどさ……普通あんなことないから」
「ホント?兄さんが言うなら、きっと大丈夫……だよね」
「大丈夫、大丈夫。ほら、泳ごうぜ」
せっかく仕立てた水着があるなら、泳がずにいるなんて勿体ない。
まずは依月から海に足を浸け、ゆっくりと体が浮くくらいまで入っていけばユラユラと泳ぎ始める。それを見て、弥月もまた恐る恐る海に足を浸けて。大丈夫って言ってくれた言葉を胸に、依月が泳ぐところまで進む。
暑さで火照る身体は海の心地良い冷たさにホッと一息つきながら、二人はゆったりゆったりと泳ぐ。波に漂いながら、夏の終わりを感じながら。
泳ぎ疲れたら、依月がお土産にと持ってきてくれたアイスを二人で分け合いながら食べる事に。ひんやり冷たく、甘いアイスに弥月は幸せそうに食べながら夏を感じて。
依月と弥月は血の繋がった兄弟ではない。二人には親がいない、それぞれ別の形で生まれた怪異である事。共通点を持ちながら、とある事がキッカケでこうして一緒に過ごす様になった。弥月には名も人格も無かったけれど、依月と同じ柳という姓を使って名前を付けて兄弟にしてくれた。不確かな存在から輪郭を持たせてくれて、今日もこうしてイベントを楽しませてくれた。
兄さんには感謝しかないな……そう思いながら、お土産のアイスを大切に食べ進める。
「これ食べたら、もう少し泳ぎたい……いい、かな?」
「もちろん。じゃあ、これ食べたらもうひと泳ぎするか」
提案に賛成と、笑顔を見せてくれた依月に釣られるように弥月も微笑む。やはり、兄さんには感謝しかない。弥月は静かに心の中で思う。
夏の最後にイベントでの入賞と、二人で過ごす海での思い出は色鮮やかに。また楽しいイベントにも二人で参加したい、そんな話をしながら時間が許す限り、夏の海を楽しむのだった。