シナリオ

第501WZ大隊

#√ウォーゾーン

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 #√ウォーゾーン

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●√ウォーゾーン、戦闘機械都市・防衛軍駐屯地
 駐屯地内に警報が響き渡る。都市が敵からのハッキングを受け、その隙を突いて敵軍が襲撃してきたのである。
 しかし人類とて、むざむざと戦闘機械どもに蹂躙されるばかりではない。この駐屯地こそ、都市防衛の要となる第501WZ大隊の拠点なのである。
 とはいえ。100番台は近衛大隊と名前だけは勇ましい、実戦には殆ど出ない旧式ポンコツ部隊、200番台はWZ大隊とは名ばかりで輸送トラックや作業用車両が大半を占め事実上の新兵訓練部隊、そして300と400番台は壊滅・再編されて欠番、ついでに言えば502大隊以下は存在しないという、たったひとつの実戦部隊ではあるのだが。
 それでも精兵にはちがいない。
「回せーッ!」
 パイロットたちがヘルメットを抱え、愛機に向かって駆けていく。
 電源車に接続されている機体もあるが、圧倒的に数が足りない。多くは爆発式の始動機で強制的にエンジンを起動させている。機体の寿命は短くなるが、致し方ない。
 起動した機体から順に、誘導員の振るライトスティックに導かれて走行、あるいは離陸体勢に入る。出撃した機体はそれぞれの小隊ごとに隊列を成し、襲い来る戦闘機械どもの迎撃に向かった。

●作戦会議室(ブリーフィングルーム)
「こちらの戦闘機械都市が、敵戦闘機械群の攻撃を受けた」
 綾咲・アンジェリカ(誇り高きWZ搭乗者・h02516)の言葉に、一同には緊張が走った。しかしアンジェリカはそれをなだめるように手を振って、
「いや、幸いなことに都市のWZ大隊の奮闘により、敵の第一波を食い止めることには成功した……たいしたものだ」
 と、奮闘した兵士たちに素直に賛辞を送る。
「しかし、こちらの損害もかなりのものになった。そこで皆には、急ぎ大隊の駐屯地に向かってもらい、整備や損傷した機体の修理にあたってもらいたい。敵は、また現れるだろう。そのときまでに戦力を整え直さねばらないからな」
 アンジェリカ自身も、決戦型WZ『インビンシブル』を駆るパイロットである。それだけに、その扱いには長けているし部隊がどのようなものかも、よく理解していた。
「どんな機体も十分な整備がなければ動かない。戦いの栄光はパイロットだけではなく、整備兵など多くの者たちにも与えられるものなのだ。
 さぁ、栄光ある戦いを始めようではないか!」

●√ウォーゾーン、戦闘機械都市外縁部
「突破できなかったか。……ははは、敵もなかなかやる!」
 侵攻軍を指揮する『DEM-504』は、さして悔しくもなさそうに笑った。
「やはり、指揮官機が撃破されたことが悪かったな。少しは慎重に行くとしよう」
 その周りを囲んでいるのは、人型戦闘機械が登場するWZ・『レオボルト』である。新たに任命した指揮官機に今度は突出せぬように指令を出したDEM-504は、
「さぁ、今度は防ぎきれるかな?」
 と、愉しげに都市を見やった。

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第1章 冒険 『整備!WZ』


タマミ・ハチクロ
白神・明日斗

「誰かッ!」
 駐屯地を守る門衛が、誰何の声をあげた。
「タマミ・ハチクロであります。支援に参りました……激戦、お疲れ様であります」
 タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)はピシッと敬礼を見せつつ、最後にゆるりと口元を緩めた。
「同じく、白神・明日斗だ。武装の開発のためにいろんな√の機械技術は学んでるからな。任せてくれ」
 と、白神・明日斗(歩み続けるもの・h02596)はニヤリと笑った。普段から戦闘用4輪バイク『アルファルク』の整備や武装の開発を行なっているのである。
「おぉ! お待ちしておりました! どうぞ、こちらへ!」
 案内の兵がすぐに現れ、ふたりをハンガーへと導く。そこには、無数のWZが整備中であった。
 それを見渡したタマミは、
「ふむ……被害はそうとうに大きかったようでありますな」
 とても楽観できるものではないことを確認した。無傷の機体などひとつもないと言ってよい。
 しかし明日斗は恐れを見せず、
「大量の修理に整備か。知識の活用どころだな」
 と、さっそく1機に駆け寄っていった。
「見たところ中破……といったところだな。
 ハード面は俺が。システム面は『ファム』、お前がやるのが早い。数も多いんだ、効率的に行くぞ相棒!」
 と、人格搭載式学習型サポートAIに呼びかける。妖精のアバターは画面の中で頷いて、さっそく診断を開始した。
 『ファム』がシステムの解析を行っている間に明日斗は、
「手が多ければ多いほど作業は捗るってものだ」
 手のひらサイズのサポートメカも繰り出して、破損した部品を次々と排除していく。
「こちらも、負けてはいられませんな。『少女分隊』、揃っているでありますな?」
 タマミの背後には、ずらりと同じ姿の少女が並んでいた。
「各員、持ち場につくであります! メカニックとしての腕を、見せてやるでありますよ!」
 すぐさま役割を分担して動き始める『少女分隊』。少しばかり気だるそうな1体を小突きながら、タマミ自身も『マルチツールロザリオ』を手に、作業に取り掛かる。
「エンジンを開けてみるであります……あぁ、砲弾の破片が入り込んでいますな」
 いとも容易く問題箇所を発見したタマミはそれを取り除き、分隊のひとりに交換部品を持って来させた。
「すごいですね」
 感心する整備兵に、
「小生、こう見えて工兵人形でありまして。兵器の構造は脳に焼き込み済みなのであります」
 応えている間に、部品を交換し終えてしまった。
「システムを起動させてみてほしいのであります。それで問題がなければ」
「了解しました!」
 あとは整備員に任せつつ、すぐに次の機体に取り掛かる。
「そちらはどうでありますか?」
「ここにあるのは、だいたい同型機と、その派生型だからな。一度やり始めたら、早い」
 工具でそれらを指し示した明日斗。中破していた最初の機体も、システムにエラーが出ていた腕周りを応急処置で取り外せば、問題なく動いた。とりあえずは、片腕のままでも戦力にはなるだろう。
「敵は、待ってはくれませんからな」
「まぁな。戦場に部品が転がってりゃ、拾ってきたいところでもあるが」
 少しでも戦力化できるよう、ふたり……と、そのバックアップ素体やサポートメカは、休む間もなく駆け回った。

ダリィ・フランソワ
アステリア・セントリオン

「現着! アリア、気合い入れていくッスよ!」
 『WZ輸送車』に自らのウォーゾーン『ティターン』を搭載し、ダリィ・フランソワ(旅する少女人形レプリノイド・h07420)は駐屯地へと乗り込んだ。
 のんびりしてはいられぬと、駐車スペースの白線をいささか跨ぐようにして輸送車を止め、飛び降りる。
「えぇ、もちろんですわダリィ!」
 と、アステリア・セントリオン(戦車系令嬢・h08352)も助手席の側から飛び出した。
「あたし、けっこうやるッスよ? 量産型WZで、修理面倒なの回してくださいッス!」
「わかりました。こちらです!」
 工具箱を手に、案内されたハンガーへ飛び込んでいくダリィ。
 一方でアステリアは、
「WZだけが戦力の中核なのではなくってよ! 戦車だって勝るとも劣りませんのよ? 見くびらないでくださいませ」
 と、戦車など戦闘車両の方へと駆けていった。
 大隊ではWZがやはり主力なのであって、支援車両も兵員輸送/偵察車両やトラックが中心である。しかし、戦車など戦闘車両がないわけでもない。いささか脇に追いやられてはいるが。
 そのせいか。整った眉をキリリと吊り上げた少女に、
「おぉ、言ってくれ言ってくれ!」
 と、兵士たちは喝采を送った。しかしアステリアはそちらにも厳しい視線を向けて、
「なんですの、これは。激戦続きで満足がいく整備を受けられなかったのはわかりますのよ? でも、これは……」
 と、傷ついた戦車を見渡す。
「もうッ! 仕方ありませんわね。これでは戦車がかわいそうですから、私が整備しますわ。手伝ってくださいませ!」
「ははは、言ってくれたな。よぉし、お嬢様の仰せだ。皆、お手伝いしろ!」
 無精髭の戦車長が笑うと、搭乗員たちも次々と立ち上がった。
 まずは履帯が切れた車両の修復である。しかしよく見れば、側面から破片を浴びたせいで転輪も破損している。
「……これは、交換するしかありませんわね」
「だな。おぉい!」
 工作車両にも不足がある。戦車兵たちに混じってアステリアも汗を流し、部品を運んだ。
「……アリア、頑張ってるッスね」
 こちらも負けてはいられない。ダリィは動かすたびにガリガリと異音を発する機体を見やって、
「これは……無理な格闘したッスね? 腕、取り替えッス」
 と、ため息をついた。とりあえず腕を取り外し、交換はまた後回しだ。
 もう1機は損傷激しく、コックピットが無事であったためになんとか生還できたが、それにしたところで他の機体に抱えられるようにしてであったという。
「これ、フレーム逝ってる」
「駄目か、やっぱり」
「駄目ッスね。バラして補修パーツに回すッス」
 と、ダリィはため息をついた。
 構造を熟知したWZである。『クラフト・アンド・デストロイ』によって、瞬く間に解体していくダリィ。
「さて……」
 硬化した補修材をピシャリと叩いたダリィはまたも、外を見やった。
 アリアがハッチから出たり入ったりしているのは、主砲の照準が何度やっても定まらないためであった。
「アリア、そのセンサーは焼けてるッス。この、WZのパーツで代用するから、手伝うッス」
「……そうですわね。皆さん、もう一息ですわ。この車両、生き返らせますわよ!」
「おぉ!」
 歓声を上げる戦車兵たち。もちろんアステリアも気づいていたが、彼らも身体のあちこちに包帯を巻いているのである。
「本当は私と同じで、√能力者でもないのに……」
 戦い抜き、生きて返ってきたのだ、彼らは。アステリアは心の奥で、彼らに賛辞を送っていた。
「私の整備はお高いのですが……特別サービスですの!」
「ははは、こいつが大隊一の高級車両だな!」

ルスキニア・フローレンス・シノワズリ
澄月・澪

「この前の作戦で完全機械への道は遅らせたっていうのに、またこんなことを……!」
 澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)は戦闘の傷も深い駐屯地の様子を見渡しながら、憤然としていた。
「どこのレリギオスなんだろ……?」
 何気なく傍らを振り返ったが、長いストレートヘアを揺らした女は、かぶりを振る。
「さぁ。当機体には、わかりかねます」
「あ、そうだね。でもそういう意味でもなくて」
 半笑いで頬をかく澪。そのとき、
「ナイチンゲール……!」
 行き交う兵士たちがその姿を認め、身構えた。
「はい。羅紗魔術運用型ナイチンゲール、ルスキニア・フローレンス・シノワズリ……ただいま登場しました」
 ルスキニア・フローレンス・シノワズリ(羅沙魔術運用型ナイチンゲール・h08845)は慇懃に名乗って、兵士たちに頭を下げる。
 兵士たちが毒気を抜かれたように顔を見合わせ、思い出したように力を抜く。
「あぁ、そうだった。すまん。よろしく頼むよ」
「はい。もともとナイチンゲールですので、機械の整備は自己管理のために行なっていました。お任せください」
 彼らもどこかで、ルスキニアのかつての「同胞」と戦ったことがあるのかもしれない。驚くのも無理はない。彼女自身は√汎神解剖機関の羅沙魔術を組み込まれるなどいろいろあった結果、しばらくはスクラップとして放置されていたのだから、彼らと刃を交えてはいないだろう。
 双方はそれ以上のわだかまりもなく、ルスキニアもハンガーへと足を向ける。
「当機体は整備を手伝いますが、澪はどうしますか?」
「う~ん、まずは皆に休んでもらわないと、だね。私はそっちを手伝うね」
「わかりました。では、また後で」
「うん」
 ルスキニアと別れた澪は、炊事場へと案内してもらった。なにしろ大隊規模ともなれば、人数もかなりのものになる。ひとりのパイロットと1機のWZの後ろには、それを支える多くの整備兵や基地要員がいる。
 吹いてくる風に、澪は僅かに首をすくめた。9月も下旬ともなれば、吹いてくる風にも涼しさが混じっている。
「ちょっと涼しくなってきたし……すいとんにしよっか」
 ごぼうと人参、あとは大根。それらを手早く切っていって、ごぼうは水にさらす。借りた大鍋は、ここで一番大きなもの。野菜を入れて煮込み、えのきと油揚げも、そして沸いてきたところで豚肉を入れ、灰汁を取っていく。
 その間に生地をこねて、平たく伸ばして鍋にいれる。
 しょうゆとみりんを加えると、なんとも言えぬ香りが辺りに漂った。
「あぁ、いい匂いだなぁ。腹、減ってきた」
「そうですね」
 応じはしたが、ルスキニアの意識は目の前のWZに向いている。
 数も必要だろうが、質が悪くては話にならない。ルスキニアは、そのへこんだ装甲に触れた。すると機体を所有していた者の記憶が蘇り、彼女はその手助けを得つつ整備していった。他の機体や車両も同様に。
 そこに、澪の声が聞こえてきた。
「ご飯だよ! みんな。ひと休みしてね!」
 各自の持つ汁椀が、すいとんで満たされる。このところ戦闘糧食しか口にしていなかった兵士たちは「美味い美味い」と、胃袋を満たした。
「いやぁ、美味かった」
「気力が満たされるぜ。作業、続けないとな!」
 満足気にくつろぐ兵士たちを見渡した澪は、下唇を噛みながら『忘れようとする力』を発動させた。傷つきながらも働き戦う兵士たちの傷が癒えていく。それは、彼らをまた戦場へと駆り立てることになるのだが。
「それは嫌だけど……私も、戦うから」
 同時に、ルスキニアも戦いへの決意を高めていた。ひとりハンガーに残り、羅紗魔術の準備、そして飛行能力に問題がないかを確認した。
「ルスキニア・フローレンス・シノワズリ。出撃準備が整いました、オーバー」

明日守・シキ
リネス・アルティス

「さぁ、美味い飯も食ったし、午後からも頑張るぞ!」
 整備兵たちは元気も百倍、WZや支援車両へと駆け寄っていく。しかし、なにしろ人手が足りないのである。パイロットたちも我慢できずに飛び出していこうとするが、
「あなたたちは、休んでおいて。この前の戦闘の疲労だってあるんだから」
 明日守・シキ(運命改竄者フェイトシフター・h02761)が、そんな彼らを押し留めた。
「いや、しかし……」
「……どうやら私の想像以上に損害を受けてるみたいね。だからその気持ちも、わからなくはないけれど」
 リネス・アルティス(自由を求める生体CPU・h07876)は辺りを見渡して、ため息をついた。
 √能力者たちの奮闘で戦闘状態にまで戻せた機体は多いが、それでもまだ、損傷した機体は多い。
 パイロットたちも休息を取っておくべきなのはわかっているが、居ても立っても居られないのであろう。自身の機体がまだ、動かせない者も多い。
「それでも、だよ。遠くない未来、あなたたちにも頼ることになる」
 シキはそう言って、
「あたしの技術や知識は本職のメカニックに及ばないけれど。それでも、√EDENに来たあとも自分のWZをひとりでメンテナンスしてきたんだ。
 作業の手伝い程度なら、普通にこなせるよ」
「それでもまだ心配?」
 リネスが笑みを見せる。その表情は明るく照らされていた。彼女を中心に、白く輝く炎が沸き起こったのである。
「わぁ!」
 驚くパイロットたちであったが、
「安心して。私の炎は攻撃だけじゃないの!」
 炎は周囲にいたパイロットや整備兵たち、そしてWZや車両までも包んでいく。この『エナジーフレア』に包まれたものは人間であれ物質であれ、活力を増すのである。
「さぁ、この炎に包まれたなら、どんな損傷や破壊痕もたちどころに修復されるはずよ!」
「おぉッ!」
 歓声を上げる兵士たち。
「まだまだ働いてもらわないといけないんだから」
 もっとも、「死んだ」機体の方もどうにかしなければならない。整備兵たちはそちらをなんとか動かせるようにしようと、悪戦苦闘している。
「ん。その工具、ちょっと貸してみ」
 シキはそう言って、怪訝そうな整備兵からガス式の切断機を取り上げた。それに『強制進歩ビーム』を照射すると、見た目にはまったく変化がないがその技術には十数年の進歩が見られた。その火力で、散弾を浴びて穴だらけになり除装できなくなった装甲板を焼き切っていく。
「よーし! すぐにエンジンから確認だ!」
 歓声を上げながら、機体を分解していく整備兵たち。そのひとりが、振り返った。
「シキさん、あなたのWZ……『アスクエスタ』の方は、大丈夫なんですか?」
「うん、バッテリーの充電だけさせてもらえば、それで十分。なんだったら、それも後回しでいいよ」
 と、シキは整備兵に笑みを返した。
「点検整備はすでに済ませてあるし、実弾兵器もほとんど積んでないから、弾薬の補給もいらない。
 だから、大隊のみんなの機体を優先しよ!」
「リネスさん、ここお願いできないですか!」
「了解、任せて」
 WZの腕を分解していたのだが、それを運ぶ作業車が出払っている。リネスは整備兵の求めに応じて、精霊機『フォルブレイズ』で部品を持ち上げた。
「……そういや、フレーム歪んでバラした機体の腕、余ってたね」
「そうだね。見てこよう」
シキはそう言って、駆けだした。

第2章 集団戦 『レオボルト』


 駐屯地に突如として、激しく警報が鳴り響いた。
「敵、戦闘機械群が都市に接近中! 都市に接近中!」
 整備兵もパイロットたちも、表情を一変させて立ち上がる。
「WZ隊、出撃準備! 出られる者から展開して、戦闘に備えろ!」
「支援部隊、WZのあとから出るぞ、遅れるな!」
 WZのパイロットたちはヘルメットを手に、愛機へと乗り込んでいく。接続されたままのケーブルを整備兵が慌てて取り外し、進路から弾薬だの部品だのを取り除いた。
 さて、√能力者たちは。
 実のところ、彼らの間でも意見は分かれた。率先して迎撃に向かうか、それともサルベージを優先し迎撃は大隊に任せるかで。
 しかしながら彼らの中にもWZ乗りは多く、戦闘は得意とするところである。
 大隊のWZが次々と発進していくのに突き動かされるように、彼らも声を張り上げた。
「回せーッ!」
タマミ・ハチクロ
ルスキニア・フローレンス・シノワズリ
明日守・シキ

「おいでなすったでありますな」
 迫るレオボルトの姿を遠望し、タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)は自動拳銃『TMAM896』に『カービンキット』を一瞬のうちに装着した。込められた弾丸は『徹甲弾』である。これならばたとえ敵に強固な装甲があったとしても、ただでは済むまい。
「『少女分隊』、戦闘準備!」
 『少女分隊』もタマミと同じく銃を構え、進撃の態勢を整えていた。
「随伴歩兵役は、小生らにお任せを。あの種の敵との交戦経験は、持っているであります」
「それは心強いね。なにしろこっちはポンコツ量産機を改修した、『手足のついたタイムマシン』だからさ」
「ご謙遜ですな」
「いやいや、本当に」
 苦笑しつつ、そのWZ-03TS『アスクエスタ』に乗り込んで、明日守・シキ(運命改竄者・h02761)もまた敵群を遠望した。
 人間型戦闘機械が搭乗しているという敵機は、素早く展開しつつ都市に迫っている。
「思ったよりも数が多いな。いやでも、それ以上に……」
 連携の完成度といい、かなりの練度であると、シキは見た。
「……敵ながら、見事なもんだわ」
「かつての同胞とはいえ、褒めてばかりもいられません。シキ、当機体も随伴します」
 ルスキニア・フローレンス・シノワズリ(羅沙魔術運用型ナイチンゲール・h08845)は『サイコメトリーシステム』を起動させつつ、前進を開始した。
「わかった。よろしく」
 シキが先陣を切り、大隊のWZもあとに続く。それを支えるのはタマミとルスキニアである。
 ところが敵は隠密行動を取り、こちら側のセンサーから消えた。
「な、なんだ……!」
 狼狽する大隊各機であったが、
「慌てる必要はありません。当機が対応します」
 ルスキニアの羅紗に刻まれた古代√能力者の記憶が、彼女の電子頭脳に流れ込んでくる。『融合魔術体』と変じた彼女もまた、敵のセンサー群から姿を隠した。
 だが、ルスキニアの目はしっかりと敵を捉えている。
「そこです」
「了解。時律制御、展開!」
 敵もこちらに気づいていたようだ。しかしシキは周囲の時間の流れを減速させ……つまり相対的には一気に加速し、敵群へと襲いかかった。
 至近距離からレーザー銃が連射され、レオボルトの装甲で爆ぜる。それだけでは貫通にまでは至らなかったようだが、
「えぇいッ!」
 高圧プラズマを纏う鞭が、敵機の脚を払う。強烈な電撃を浴びた脚部からは火花と煙が生じて、敵機はバランスを崩した。
「パワー不足で一撃必殺とはいかないけれど……!」
 足並みを乱せば、十分のはず。
 そのとおり、大隊各機が次々と砲撃を浴びせ、敵を退けていく。
 その中に、
「……あれは、当機体が調整したWZですね」
 ルスキニアが見つけたのはたしかに、さきほどへこんだ装甲を打ち直し、半ば無理矢理に貼り付け直した機体である。彼も、奮闘しているようだ。
 敵も簡単に崩れはせず、側方から攻撃をかけてこようとしたが。
「隠れたつもりでも、小生の目には丸見えであります!」
 タマミと彼女の『少女分隊』は敵の接近を許さない。WZのセンサーが役に立たない敵のステルス機能であるが、そのために彼女らはそばについているのである。
 『フェザーレイン』から放たれたレーザーが雨あられと降り注ぎ、徹甲弾が敵機のコックピットを貫いた。バックアップ素体の1体が「Woohoo!」とガッツポーズを見せた。
「WZ部隊の皆様方、あちらに援護射撃をお願いするであります!」
「任せろ!」
 火砲が敵群に襲いかかる。
 WZ大隊の奮闘を見守りつつ、ルスキニアもナイチンゲールの翼を広げて空へと舞い上がった。「何か」が変わってしまった自分だが、この空だけは変わらず澄んでいる。
 上空から敵の姿を捉えつつ、攻撃を仕掛けるルスキニア。敵も応戦してくるが、ルスキニアはひらりとそれを避け、再び攻撃の隙を窺った。
 しかしながら敵もなすがままにはされず、その口に『電磁パルスブレード』を装備して躍りかかってきた。
「く……ッ!」
 咄嗟に姿勢を低くしたシキ。しかし『アスクエスタ』の装甲は激しく火花を散らし、深々と抉られる。凄まじい威力である。
 戦闘継続に問題はない。しかし、
「戦場で、あんまり無理はさせられないんだ」
 次々と襲い来る敵機をあしらいつつ、距離を取るシキ。
「……小隊長機の指示ですね」
 ルスキニアの腕にも、敵と同じ『電磁パルスブレード』が装着されていた。それで敵を薙ぎ払いつつ先を窺うが、小隊長機の姿は確認できない。
「なに、小生たちだけでは手が足りませぬが、バックアップも総動員中。
 数には数で対抗でありますよ!」
 タマミが射撃しながら声を張り上げる。
 √能力者に、大隊各機。まだまだ多くの仲間が共に戦っているのだ。

リネス・アルティス
アステリア・セントリオン
ダリィ・フランソワ

「私も『フォルブレイズ』で迎撃するわ!」
 リネス・アルティス(自由を求める生体CPU・h07876)は精霊機のハッチを閉じ、一気に出力を上げた。
 敵の数は多く、完全に回復していない防衛部隊だけでは心許ない……いや、たとえ万全であったとしても、支えきれるかどうか。少なくとも、多くの犠牲を払うことになるだろう。
 敵の姿を捉えながら、リネスは通信機に向かって声を張り上げた。
「相手は集団に長けたWZ。ならばこちらも、できるだけの連携が不可欠だわ。
 私が味方の盾になるから、後方支援、任せたわよ!」
「お任せくださいな! とはいえ我がセントリオン・インダストリー社が誇る巡航戦車は、WZに遅れは取りませんわよ!」
 と、アステリア・セントリオン(戦車系令嬢・h08352)は車上のハッチから身を乗り出し、リネス機に指を突きつけた。
「ははは……期待してるわ」
 これは、「愉しい」という感情なのだろうか?
「なんとも頼もしいッスね」
 笑うダリィ・フランソワ(旅する少女人形レプリノイド・h07420)をよそにアステリアは、彼女自身も修理に加わった戦車、そして装輪戦闘車などを率いて進軍する。
 彼女自身が乗る『CT25 Celestial Mk.1』には、乗る車両を失った戦車兵が数名、搭乗していた。
「操作はおわかりになります?」
「任せてくださいよ、お嬢。前に乗ってたのと似たようなもん……こっちの方が扱いやすいくらいです」
 工場から出てきたばかりかと思うほど、完璧に整備された車体である。
 彼らに操縦手と砲手を任せ、自身は車長に専念することにしたアステリア。
「けっこうよ。
 私が出るからには全員で生還しますわよ! 誰ひとり欠けることは許しませんわ!」
「おーう!」
 意気揚々と出撃していく戦車隊。
「……じゃあ、あたしは空から支援するッス」
 ちょっと圧倒されながら、ダリィは量産型ウォーゾーン『ティターン』の背から噴射炎を吹き出しながら空中へと駆け上がった。
 リネス機に、レオボルトが次々と躍りかかってくる。
「くッ!」
 リネスは機体の左腕に装備した『リフレクターシールド』をかざして、レオボルトの『電磁パルスブレード』を弾いた。装備箇所のせいで、こちらを食い破らんとするかに思える敵の攻撃である。
「そっちがその気なら……こっちも本気で行くよ! イグニッション!」
 リネスのWZが炎を纏う。その機体は真紅に輝き、敵は思わずたじろいだ。『イグナイト・モード』へと変形したリネス機は一気に加速して敵の包囲から飛び出しつつ、『WZ用ミサイル・ポッド』を構えた。無数のミサイルが尾を引きながら襲いかかり、敵機を撃破する。
「敵の小隊長はどこ……?」
 周囲を窺いつつリネスは再びミサイルを発射して、周囲の敵群を薙ぎ払った。
「隠密機能が厄介とはいえ、武器は接近戦用のみ……? ずいぶん、戦車を甘く見た設計思想のようで!」
 キューポラ(展望塔)からわずかに顔を出し、周囲を窺うアステリア。敵の密集したところに向かって、一斉に射撃を開始した。
「やったぜ!」
 隊列を組む味方の戦車。そこと繋がった通信機が、車長の声を伝えてきた。
 しかし、だ。巻き上がる土煙の中から、1機の敵が飛び込んできたのである。
「うぉ……」
「そっちにもいたのね!」
 眉間に皺を寄せたリネスは大型の『エレメンタル・ライフル』を向けて、その敵を撃ち抜いた。
 しかし戦車は履帯を切られて擱座し、燃料が漏れ出していた。
「まだ、砲台代わりにはなる……!」
「駄目ですわ! 私たちは、√能力者ではないのです。各々の命を最優先に。優秀な人材以上に、替えの効かないものなどなくってよ!」
 Ankerであるアステリアが、声を張り上げる。
「しかし……」
「でも、最後の1発くらいはお見舞いしたいッスよね? ……んじゃあ、通信回線お借りするッス」
 ダリィの声に続いて、意味のわからない音声が聞こえてきた。それはダリィ機に搭載されたAIが発する、謎の言語の歌声である。
「なんだこりゃ……?」
 奇妙な電子音声、そしてそばに現れた『電子妖精プロトコル』に戸惑う戦車兵たち。
「心霊現象じゃないッスよ。電子妖精の歌声が聞こえたなら、確率の女神様はこっちの恋人ッス」
 ダリィは笑いながら、敵の姿を探し求める。
「いくら隠密モードでも、慌てて土煙を上げてたらバレバレッスよ。さあ戦車隊、ぶち転がしてやるッスよ!」
「了解ですわ。さぁよく狙って……撃てぇッ!」
 アステリアの声とともに戦車隊も装輪戦闘車たちも、次々と砲撃、あるいは銃撃を開始した。
 √能力者ではない彼らでも、いや彼らだからこそ歌声は威力を発揮し、狙いは100%外れることなく敵群に襲いかかったのである。
 敵は劣勢と見たか、態勢を立て直し再集結せんと退き始めた。
「そうはいかないッス。戦車隊へ再砲撃要請! 砲撃ポイントと弾道計算送るッス」
 砲塔を仰角に向け、再び砲撃する戦車隊。
「だんちゃーく!」
 ダリィが歓声を上げた。
「よーし、逃げろ!」
 擱座した戦車から、兵たちがわらわらと飛び出していった。
 ところで。退いていく敵群の中に、挙動の違う機体が1機あったことを、ダリィは確認していた。
「それね! それが小隊長機に違いないわ!」
 リネスが敵を突き崩さんと、再び突進した。ライフルから伸びた光芒が先頭の1機を貫き、ミサイル群はさらなる敵を求めて襲いかかる。
 しかし敵も小隊長を失っては敗北は必至と、懸命の抵抗を見せた。

澄月・澪
白神・明日斗
常夢・ラディエ

「……部隊の被害を考えると迎撃優先、となるのもやむなしか。この現状じゃあな」
 白神・明日斗(歩み続けるもの・h02596)はサルベージに僅かな未練を残しながらも、
「WZは持っていないが……まぁ、『アルファルク』がWZにけっして劣ってないことでも証明するか」
 気を取り直して戦闘用4輪バイク『アルファルク』のアクセルを握りしめ、エンジンを吹かす。吹き抜ける音は今日も快調、一気に加速して後退しつつあるレオボルトの一団を追った。
「よし、それじゃあ私も……戦いますッ」
 澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)がお玉から持ち替えたのは、魔剣『オブリビオン』である。
「魔剣執行。因果を断て、忘却の魔剣『オブリビオン』!」
 『魔剣執行者』となった澪は愛くるしい少女から発せられるとはとうてい思えぬ強烈なプレッシャーを纏い、駆け出した。
「それじゃあ……行ってきますッ」
 その速さは、先行する明日斗の『アルファルク』にも見劣りしないほどである。
「やるね。じゃあ俺も、出力全開。接近戦で喰らいつく!」
 高機動近接戦闘モードに変形する『アルファルク』。車体から突き出たガトリングガンが火を噴けば、弾丸は再集結せんとするレオボルトどもに次々と命中した。
 無数の銃弾が装甲を穿ち爆発を起こさせる中、
「サルベージは苦手だけど……戦いなら!」
 敵中に飛び込んだ澪は魔剣を大上段に構え、搭乗する人型戦闘機械ごとレオボルトを斬り捨てた。
 凄まじい威力を持つこの一撃こそ、『魔剣執行・断罪』である。
 敵は発するすべての光を消して逃れようとしたが、
「そうはいきませんッ!」
 澪の目はそれを見逃さず、さらに剣を振る。
 もちろん明日斗も敵陣の混乱を見逃すはずはなく、前の2輪を浮かせる勢いでバイクを突っ込ませた。敵の眼前で後輪をスライドさせて方向を変えると、車体の左右から突き出した青い刃が敵機を深々と抉る。
「機動戦なら、俺たちの得意分野だ。WZが相手だろうが、負けはしねぇ!」
 敵も『電磁パルスブレード』で応戦してくるが、ふたりは機動力を生かして敵陣をかき乱している。しかし、なかなか潰走とまでは至らない。
「敵の指揮官はどこでしょう?」
「見つからないな……」
 澪が敵陣を窺うが、見当たらない。明日斗もかぶりを振った。
「WZ隊! そっちからはどうだ?」
「いえ、確認できていませんが……!」
 明日斗の問いに答える、WZ大隊の各機。ふたりがかき乱したところに火力を集中させ、また数機を屠る。
 今回の攻勢で新たに任命された小隊長機は『DEM-504』に指示された通り、味方機の中に紛れて後方にあり、なかなか姿を見せなかった。
 それゆえか、はじめにそれを発見したのは少し遅れて攻撃に参加した常夢・ラディエ(惰眠・h08858)であった。敵が必死にこちらの攻勢を防いでいたために、「まだ味方が攻撃を仕掛けていない方向」から乗り込んだラディエが、かえって敵の目につかないまま奥まで入り込んだようである。
 小隊長機も他の機体と形はまったく同じだが、左右にいた機体が突進していったときにだけ、僅かに目に当たる部分を光らせた。味方機に指示を出したのであろう。
「おぉ~……なんかカッコいい」
 ラディエは眠たげな目をしたまま、敵機を見やる。
「けど、悪いことしようとしてるんだよねぇ? 駐屯地の子たちを危ない目に遭わせられないし、ちゃんと懲らしめてあげないとね~」
 のんびりと言いながら、なんとまっすぐに敵に向かっていくラディエ。当然ながら敵も気がついて、パルスブレードを閃かせながら襲いかかってくる。
 ラディエの姿が異様だったのは、のんびりと敵に立ち向かっていったばかりではない。その背には、クイーンサイズのベッドが負われていたのである。
「囲んでくれた方がやりやすいかもね~」
 ラディエは大きなベッドを軽々と振り回し、襲い来る刃を弾いていく。
「そこのレオボルトちゃんにぶつけたいんだけど~」
 ベッドには鎖が繋がれている。ラディエはそれを握ってベッドを振り回し、周囲の敵機を蹴散らした。そしてブンッと投じ、小隊長機に命中させたのである。
「あら、ラッキー。
 あの子がそうみたい、みんなもわかった~?」
「はい! ありがとうございます!」
 魔剣を振り上げ、澪が突進する。
「そう、よかった~」
 横合いから飛び込んできたレオボルトの鼻ッ柱を鷲掴みにするラディエ。
「ちょっとごめんね~」
 つかんで、たたく。単純な動作であるが、怪力によって頭部を鷲掴みにされたうえ振り回された敵機は、激しく殴打されてフレームを砕かれたのか、動力を失ってだらりと斃れた。
「やぁッ!」
 振り下ろされた澪の魔剣が、よろめく小隊長機を両断した。すると敵群は明らかに統率を失い、留まって戦おうとするもの、背を向けようとするもの、様々となった。
「ははは、やったな!」
 明日斗は笑い、残った敵を蹴散らしていく。WZ大隊の各機もここが勝負どころと、ありったけの火器を敵へと叩き込んだ。
 √能力者たちと大隊の攻勢によって、敵は大きく戦力を減らしていた。そこに小隊長機まで失ったのだから……敵の全滅が確認されたのは、間もなくのことである。

第3章 ボス戦 『DEM-504』


タマミ・ハチクロ
明日守・シキ

「全滅! レオボルトが全滅か!」
 『DEM-504』は驚きの声を上げたが、それと同時に。
「ハハハ! 我々の本気の攻撃を退けるなんて、人間もなかなかやるじゃないか!」
 と、愉しげに笑ったのである。
「さて……そういうことならば俺が出ないわけにはいかんな!」
「うん、知ってる。このポンコツじゃ、歯が立ちそうにないってこともね。残念だけど」
「む……ッ!」
 DEM-504のような指揮官であれば、そう来るであろう。明日守・シキ(運命改竄者・h02761)は「実体験」から、それを予測していた。一気に敵へと迫り、その背後からWZ-03TS『アスクエスタ』は躍りかかる。
「ただいまー。それでは早速、攻略開始!」
 時間跳躍して、未来を覗いてきたシキ。普通の戦法で歯が立たずとも、これならば。
 連射したレーザー銃が、敵の装甲で爆ぜた。しかし敵機はすぐさまこちらに向き直り、手にしたライフルで応戦してくる。
 とはいえ、これは牽制にちがいない。「わかっている」。シキは避けて回りながら様子を窺う。本命は……!
「避けられるかッ?」
 敵は一気に距離を詰めてくる。これもまた、シキの予想通り。しかし計算違いだったのは、敵もまたこちらの牽制射撃を読んでいたかのように、バーニアを噴射して跳躍したのだ。シキの見てきた未来の体験を、敵機は上回ったのである。
「えぇッ?」
 『アスクエスタ』が吸い寄せられる。指向性の重力操作が、機体を捉えたのだ。
「くぅ……ッ!」
 渾身の力で振りほどこうとするシキ。すでに出力は全開である。
「『少女分隊』ッ!」
 タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)が、そのバックアップ素体とともに飛び込んできた。
「さすが親玉の登場でありますな……!」
 『TMAM896』に装着した銃床をしっかりと肩に当て、タマミは引き金を引く。『少女分隊』も一斉にそれに倣った。
「ち」
 銃弾を防ぎつつ、いったん退くDEM-504。『アスクエスタ』を捉えていた重力も弱まり、シキはすかさずレーザーを撃ち込んだ。
「ウロチョロと! 逃げていたほうがいいのだぞ?」
 迫ってくるシキに舌打ちしつつ、敵は『少女分隊』の射撃を防ぎながら強引に踏み込んできて、『ダブルパルスブレード』を叩きつけてきた。
 が。先に敵を捉えたのは、シキの方であった。
 刃をかいくぐって放ったパンチが、敵機の頭部センサーに叩きつけられたのである。
「ぐ……ッ!」
「……こんな感じで、出鼻をくじく。性能差を考えたら上出来でしょ?」
 と、嘯くシキ。
 一度はよろめいた敵機であったが、
「ハハハ、たしかにその通り! 戦い方というものをよくわかっているな、さすがだ!」
 などと爽やかに笑いつつ、再びバーニアを噴射して襲いかかってくる。
 その機体が真紅に光り輝き、その速度は捉えきれぬほどに速くなる。
「赤く輝く敵機、お決まりの強化モードでありますな……!」
 長くは保たないだろうが、はたしてその間を凌ぎきれるかどうか。
 タマミは『プロテクトバリア』からバリアを発生させ、ライフルから放たれた敵弾を弾いた。
 バリアを張った外から『フェザーレイン』から射撃を行うのだが、敵は凄まじい速さで機体を左右に振り、なんとか1発が当たったかと思っても肩の装甲で弾けただけである。
「その程度か?」
 敵の反撃の方が凄まじい。弾幕を抜け、ライフル弾と腰のミサイルを放ちながら襲いかかってくる。
「……逃げていたほうが、身のためだと思うが」
「隊の皆さまを、やらせるわけにはいきませぬゆえ!」
 身を挺して、『少女分隊』を庇うタマミ。しかし『エネルギーバリア』の出力はもう限界で、防ぎきれなかった衝撃に尻餅をついた。
「一斉射撃と行くでありますよ!」
 それでも腹に力を込め、声を張り上げる。1体も欠けることのなかったバックアップ素体たちが、敵機に向けて弾丸を放った。

白神・明日斗
常夢・ラディエ

「それでこそ、俺麾下の兵を撃破した√能力者だ!」
 銃弾を浴びても、『DEM-504』は愉しげに声を張り上げつつ戦場を駆け巡っている。
「あれが指揮官か。……高機動タイプか?」
 戦闘用4輪バイク『アルファルク』に跨った白神・明日斗(歩み続けるもの・h02596)が、渋面をつくった。
「動きが速くて大変そうだね~」
 常夢・ラディエ(惰眠・h08858)がこくりこくりと頭を揺らしながら、「にへら」と笑った。
「レオボルトちゃんはもういないみたいだから~あとはあの、でっかい子だけだね~?
 最後まで頑張ろうねぇ」
「もちろんだ!」
 前輪を浮かせ、一気に加速する『アルファルク』。
「ハハハ、威勢はいいが俺に追いつけるかな?」
 敵機は笑いながらバーニアを全開にする。『決戦モード』が解除されたあとでも、機動力は目を見張るものがある。戦場を駆けながら襲い来る銃弾を、明日斗は右に左とハンドルを操って避けてはいるが……。
「遠距離火力では、どうやったって俺は劣る」
 という、分析である。
「う~ん……あの子、持ってる銃とかが怖いね~」
 ラディエも眉を寄せた。彼女も、遠距離戦はさほど得手としていない。
「どうした、避けているばかりか?」
 敵機の周囲の空気が揺らめいたように思えた。敵が『重力慣性制御力場』を起動させたのだ。するとその速度はさらに増し、
「喰らえッ!」
 一瞬にして、追ってきていたラディエの方に飛びかかっていった。
 しかしながらラディエも反応はして、
「えぇ~い!」
 と、鎖付きのベッドを叩きつける。しかしDEM-504の拳が繰り出した『慣性増幅打撃』は、敵に叩きつけても壊れないラディエのベッドに、大穴を開けてしまったのである。
「あぁ~!」
 すかさず巨大なスレッジハンマーに持ち替えるラディエ。すごく悪い子でも寝かしつけてしまう「寝具」だが、これも敵はかいくぐって距離を取られてしまう。
「ハハハ、危ない、危ない!」
「肉薄して、奴に自由に動き回らせないようにするしかないな。
 出力全開、近接戦で喰らいつく!」
 『アルファルク』が蒼穹に輝き、『高機動近接戦闘モード』へと変形する。その驚異的な加速で接近して至近距離からガトリングガンを放つのだが、その加速をもってしても、敵の速さを捉えることは容易ではなかった。
「なんだっけ~……さっきのひゅんひゅん飛び回るやつ。あれをまた使われちゃうと、叩きにくいよね~」
 ラディエが小首を傾げる。そしていいことを思いついたとばかりに、ぽん、と手を打った。
「そしたらぼくもちょっと手を変えて~……がまん比べをしようかなぁ」
 閉ざされていたラディエの目が開かれる。その視線は射抜くかのように、敵機を凝視した。ラディエひとりのはずである。それなのに、無数の視線が敵機を凝視しているのだ。
 すると、なんと。その腰部に装備されていたバーニアのひとつがガタガタと鳴り、風化していったではないか。
「なにッ!」
 さすがにこれには、DEM-504も驚愕した。ガクンと、機体がつんのめる。
 飛び下がろうとしたところを、明日斗が追いすがる。車体から突き出た青い刃が風化したバーニアに食い込むと、それはあっさりと砕けて散った。
 敵は銃を向けてくるが、
「高機動のクロスレンジ戦は、俺らの主戦場だ。ここは退かずに……喰らいつくぜ!」
 明日斗はその懐になおも飛び込み、散弾銃に取り付けられた銃剣を薙刀へと変形させて、バーニアをもうひとつ、斬り裂いた。

ダリィ・フランソワ
アステリア・セントリオン

「う、おお……ッ!」
 腰部後方に配置されたバーニアを破壊された『DEM-504』が、フラフラと怪しい挙動を起こす。
「捉えましたわよ指揮官機!」
 そこにアステリア・セントリオン(戦車系令嬢・h08352)が戦車隊を率い、猛然と前進してくる。
「お嬢!」
 アステリアの足元にある席から、砲手が声を張り上げた。
「えぇ! 撃てーッ!」
 火砲が次々に火を噴き、もうもうと立ち上る爆炎の中に敵機は消える。しかし敵は腰部以外に残されたバーニアを全開にしつつ、そこから逃れていった。
「待てッ!」
 それを捉えたのはWZ大隊の1機である。僚機2機とともに敵を追ったが、
「その程度の速さでは!」
 DEM-504はライフルを斉射した。その狙いは正確で、3機は瞬く間に脱落する。
「あちゃー」
 ダリィ・フランソワ(旅する少女人形レプリノイド・h07420)が量産型ウォーゾーン『ティターン』のコックピットで額を抑えた。
「あの機体、戦力予測値ばりヤベェな……けっこうなダメージ喰らってるはずなのに」
 そう、機体の各所には少なからぬ破損が見えるし、自慢の機動力も十分に発揮できないはずである。それでも敵の出力そのものにはまだゆとりがあり、素早く姿勢制御を計算し直したのであった。
「迂闊に出たら、危ないッス。大隊のWZも戦車隊も下がって。今度はあたしが前に出るッス!」
 と、ダリィは機体を突進させた。
「アリア、砲撃頼むッス!
 さぁ電子妖精、お前の声を聞かせてやれ!」
 『ティターン』に搭載されたAIが、また電子音声の歌声を響かせた。
「仕方がありませんわね……!」
 歯噛みするアステリア。しかし敵の指揮官機を相手にしては、いくら士気が高いといっても大隊のWZや戦車では分が悪い。
「お嬢」
「えぇ。求めるのは全員生還の完全勝利……WZ頼りとは悔しいところではありますが……ここは任せましたわよ、ダリィ。
 各車、転進! 遮蔽物に車体を隠して、防衛戦術でいきますわ!」
「おーう!」
「なるほどなるほど、弱卒も数を揃えてうまく使えば、戦いになるというわけか!」
 感心しつつDEM-504は姿勢を低くして体勢を整え、腰部からミサイルを発射した。白煙の帯を残しながらダリィに迫ってくるミサイル群。その着弾を待たずして、敵機は間合いを詰めんと出力を上げてくる。
「リリィ、エンゲージ!」
 しかし、ダリィの機体は地を蹴って宙を舞い、ミサイルは瓦礫を吹き飛ばしただけに終わる。視界内のインビジブルの位置まで、一気にブースターを全開にしたのである。
「なにッ?」
 突進が空振りしたDEM-504が、天を仰いだ。
「喰らうッスよ!」
 両腕に構えた2丁の『レーザーライフル』を、それぞれ散弾モードと連射モードとで撃ちまくるダリィ。レーザーが次々と敵の装甲を穿っていく。
 さらに追撃……と行きたいところであったが。
「電子妖精が処理能力食ってるから、2回攻撃プログラムが動かねぇか……!」
「それだけ敵に喰らいつけば十分ですわ! 全車、どんどん砲撃を叩き込んでくださいまし!」
「うおおッ!」
 DEM-504もダリィ機ばかりを追っているわけにはいかない。戦車隊に背面を向ければ、薄い装甲を貫かれてしまう。
 もちろんそれはアステリアもダリィも承知しているのであって、
「あたしの火力は雑魚だが、戦車隊の砲撃は必中だぜ?」
 と、ダリィは敵機に纏わりついて体勢を整えさせない。
「く……どうやら本気で相手をする価値があるようだ!」
 DEM-504の機体が真紅に輝く。増幅した機動力で照準とダリィを振り切った敵機は、戦車隊に向かって凄まじい銃撃を加えてきた。遮蔽物に潜んでいようとお構い無しに敵機は攻撃を仕掛けてくる。先の戦いで破壊された車両から漏れ出た燃料に引火し、激しい爆発が起こる。これでは隠れ続けるわけにもいかず、動いたところを狙われた。車内まで貫通された車両は幸いにしていないようだが、砲身は次々と破壊され、また履帯を破壊され横倒しになった車両もある。
「数が多いのは面倒だ。まずはそちらから排除するとしよう!」
「撃ち放題……とはさせてくれませんわね。各車は後退を。よろしくて? 私たちが囮になりますわ!」
 通信機からは狼狽の声がいくつも聞こえてきたが、
「こちらは快速自慢の巡航戦車、追いかけっこならいくらでも付き合えますわ!」
 と、アステリアは『CT25 Celestial Mk.1』を急発進させた。
「逃がすか!」
 真紅に輝くWZが追ってくる。それは死神としか思えない姿に見えたが……。
「追いつかれても……こっちにはダリィがいるんですわよ!」
「アリアのところには行かせねぇッて!」
 敵機のライフルがアステリアの車両を捉えんとしている。いちいち照準を合わせている暇はないと、ダリィは機体ごと敵に向かって突っ込んでいった。
「わぁ!」
「うおおッ!」
 もんどり打って倒れる双方の機体。
 起き上がったはダリィのほうが先であった。
「あたしを雑魚の豆鉄砲って、油断したな? この距離でこの出力……痛いぜ?」
 銃口を押し付けるようにして放った1発。ゼロ距離から放たれたレーザーが、敵の頭部を吹き飛ばした。
「今ですわ! 超信地旋回ッ!」
 履帯を左右で逆に回転させて急ターンする『CT25 Celestial Mk.1』。車体が激しく揺れて搭乗員の身体が浮く。アステリアも激しく尻を打ったが、泣いている場合ではない。
「研ぎ澄まされた一撃を。撃てぇッ!」
 背後から放たれた砲弾は……√能力者たちの度重なる攻撃で装甲はえぐれ、おそらく機構にも幾分の異常が出ていたであろう。それでも健在な敵の左腕に命中し、ついにそれを吹き飛ばした。
「……残念ながら、今回は俺の負けのようだ!」
 敵機の『決戦モード』も残り数秒。しかしその数秒のうちに、DEM-504はダリィを押しのけライフルを叩き込み、急加速で離れていく。
「待つッス!」
 追おうとしたダリィだが、機体がガリガリと異音を上げて立ち上がれない。どうやら敵の1発が、脚部の駆動部に命中してしまったらしい。
「あああ、これじゃ修理費が……うわーん、またこの展開ッス!」
 コックピットでひっくひっくと泣くダリィをよそにアステリアは、
「……私たちの戦いはここまでです。戦車部隊の大勝利ですわ! 祝杯を上げましょう!」
 と、車内に置かれたポットで紅茶を入れたのだった。ティーセットを「装備」しておくなど、基本的な嗜みである。

リネス・アルティス
澄月・澪
ルスキニア・フローレンス・シノワズリ

 敵戦闘機械による都市への侵攻を食い止めたのであるから、作戦目標としては成功したと言える。しかし侵攻軍の指揮を取った『DEM-504』を取り逃がしたとあっては、両手を上げて喜ぶというわけにもいくまい。√能力者たちは撤退する敵指揮官を追っていく。
「みつけたッ、隊長機!」
 半ば崩落したビル群の間を逃走する敵機を発見したのは、澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)であった。
「あれが今回の指揮官機ね。なるほど、いかにも強そうな機体じゃない! もう大破状態とはいえ、最後まで楽しませてくれそうだわ!」
 リネス・アルティス(自由を求める生体CPU・h07876)が駆る精霊機『フォルブレイズ』のセンサー、異世界技術を融合させたそれも、敵機の姿を捉えている。
「魔剣執行。因果を断て、忘却の魔剣『オブリビオン』!」
「相手にとって不足なし! こっちも本気で行くよ!イグニッション!」
 澪の手には忘却の力を持つ魔剣があり、速度を誇る敵機に遅れることなく距離を詰めてきた。同じくリネスの『フォルブレイズ』も炎を纏い真紅に輝き、DEM-504へと迫ったのである。
 澪が首を傾げた。
「あっちのほうが、速度は上かと思ったけれど……」
「えぇ。機動力を得意とした戦法が得意のようね。見た限り、推進系にダメージを受けて全力は出せないみたいだけど」
 リネスは少し残念そうに、眉を寄せた。
「相手の得意とする分野で打倒してこそ、面白いのだけれど」
「しつこい奴らだ……!」
 さすがにゆとりを失っているのか、人間ならば舌打ち混じりにといった様子で半身をひねり、ライフルを突きつけてきた。
 機体出力もすでに限界が近いはずである。いや、すでに超えているかもしれない。それでも敵機は『重力慣性制御力場』を纏って距離を取った……かと思いきや、急旋回して一気に距離を詰めてきたではないか!
 ライフル弾を乱射しながら襲い来るDEM-504。リネスは左腕に装着した『リフレクターシールド』をかざしてそれを防ぎつつ、
「上等。さぁ、やり合おうじゃない!」
 と、迎え撃った。
 手にしていたライフルを腰にマウントする敵機。『慣性増幅打撃』を繰り出してくるつもりにちがいない。
 しかし、リネスが放ったおびただしい量のミサイルが、容易く接近することを許さなかった。
「くッ……!」
 敵の頭部はすでに吹き飛んでいる。ミサイルはすぐそばにあったコックピットハッチをも吹き飛ばし、中から覗いたのは少女人形型の生体コアユニットであった。
「女の子……?」
 澪が目を見張る。
「ハハハ、俺もここが死に場所のようだが……簡単にやられはせんぞ!」
 少女人形が、こちらを睨みながら愛らしい声を張り上げた。真紅に輝くDEM-504。もっとも、その輝きはゆらゆらと安定せず、あまりにも燃え尽きる寸前の蝋燭に似すぎてはいたが。
 それでも甘く見るわけにはいかない。猛然と突進してくる敵機の攻撃を、澪は『オブリビオン』で防ぎ続ける。
 それはあまりにも苦しい。しかし、
「あなたたちの目指す完全機械にどういう価値があるのか、私にはきっとわからない。
 それでも、こんなやり方は間違ってると思うから……あなたを、止める!」
 自分の防戦が仲間たちの仕掛ける隙になればよいと、澪は小さな体躯で健気に応戦していた。
 その甲斐は十分すぎるほどあったと言えるだろう。
「羅紗魔術励起。我が同胞よ、いざこの空に」
 風切る音も高らかに飛来したのは、ルスキニア・フローレンス・シノワズリ(羅沙魔術運用型ナイチンゲール・h08845)である。彼女は無数のナイチンゲールを召喚し、編隊を組んでこの戦場に現れた。
 リネスも澪も、その機影を眩しげに見上げる。
「当機体も、及ばずながら参戦します。今日は羅紗と空の調子がよいですから」
 やはり、空にあってこそのナイチンゲールなのだろうか。聞こえてくるその声も、どことなく愉しげに聞こえた。
 しかし、その攻撃となると苛烈の一言に尽きる。
 ルスキニアは隷下のナイチンゲールたちに向けて翼を振り、
「天井から裁きを下す使徒の雷が如く、鉄火と砲火を地上に降り注ぎ殲滅を成すのだ」
 と、眼下の敵機に向かって手を振り下ろしたのである。
 召喚されたナイチンゲールは全て、空対地戦用の装備をしている。ヒュウッという音とともに爆弾が次々と降り注ぎ、辺りは爆炎に包まれていく。
「く、そ……ッ!」
「ナイチンゲール部隊!」
 来る。『G・コンビネーション』であろう。部隊に注意を促しつつ、ルスキニアは大きく旋回した。
 バーニアを全開に噴かした敵機は大きく跳躍し、至近距離から『パルスブレード』を抜いたが……。
「まさしく片手落ち、というものです」
 残った右腕だけでは「ダブル」とはいかない。羅紗の防御結界で防ぎつつ、ルスキニアは重力操作をかいくぐりつつ敵機のすぐそばをすり抜けた。
「重武装も重力操作も確かに驚異的な代物ですが……種が割れていれば、やりようはいくらでも存在します」
「く……!」
 グシャリと、墜落するように着地するDEM-504。もはやその推力にも限界が来ていた。真紅の光がチカチカと、最後の明滅をする。
 それでも敵機はライフルを向けてくるが、リネスの放ったミサイルが、それを吹き飛ばした。
「あぁ……ッ!」
 破片を浴びたか、生体ユニットのこめかみからは赤い液体が流れる。
「生体ユニットはお互い様だから、遠慮はできないよ」
 厳しい目を向けるリネス。
 敵も今出せる限界まで速度を上げるが、
「このコンボで追い込む!」
 リネスは敵機が飛び下がろうとする先をミサイルで抑えつつ、敵機以上に速度を上げて一気に間合いを詰めた。
 『フォルブレイズ』の腰部から伸びたのは、捕縛を目的としたワイヤークローである。それは敵機の太ももあたりに食い込んで捕らえ、敵はバランスを崩す。
 それでも敵は、ライフルを失った拳を振り上げた。
「そんなボロボロの拳で殴ったら、そっちだってただじゃすまないわよ」
 呆れたような感心したような呟きを漏らすリネス。ワイヤーをさらに引くと、敵は拳を地面について、機体を支えるしかなかった。
「今だ……!」
 剣を振り上げ、澪が懐に飛び込む。敵の装甲に、振り下ろした刃は弾かれた。
「そんな一撃……!」
 睨み返してくる生体ユニット。
 しかし澪は、
「一撃じゃないよ。あなたは忘れてるだろうけど……これで、300ッ!」
 一撃一撃はたしかに軽い。しかし息継ぎさえせぬままに立て続けに叩きつけられた澪の刃は、敵生体ユニットの記憶に障害を与えて数秒間の記憶を失わせ続けたまま、300回も振り下ろされたのである。装甲は砕け、機体各部の駆動部は破壊されてバチバチと火花を上げている。
「そん、な……!」
 信じられぬとばかりにかぶりを振る生体ユニット。
その頭上に、影がさした。
「私の自由を邪魔するなら、容赦しないわ。『バーニング・ナックル』をお見舞いしてあげる!」
 影は、振り上げられた『フォルブレイズ』の拳であった。叩きつけられた拳は生体ユニットごと、コックピットを粉砕した。

 それはまさに、凱旋と呼ぶに相応しい。
 見事に敵戦闘機械の侵攻を食い止めた大隊のWZも戦車・支援車両も、列を成して進んでいくたび沿道に集まった人々が歓呼の声でそれを迎えた。
 それぞれにハッチを開けて敬礼し、兵士たちはそれに応えている。その表情はみな誇らしげであった。もちろん、最も奮闘した√能力者たちもこの列の中にいる。彼らもまた、晴れやかな表情を浮かべていた。
 √能力者たちと第501WZ大隊、全員の奮闘が都市を救ったのだ。

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