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天空ダンジョンの喰竜教団

#√ドラゴンファンタジー #喰竜教団

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●天空ダンジョンの喰竜教団
「みんなは、√ドラゴンファンタジーの『喰竜教団』はもう知ってるかな?」
 そう確認するように√能力者達に確認するのは星詠みのヨーキィ・バージニア(|ワルツを踊るマチルダ《ワルチング・マチルダ》・h01869)だ。
 √ドラゴンファンタジーと呼ばれる√はかつて『|竜《ドラゴン》』が世界を支配していたとされる。
 「喰竜教団」はそんな『|竜《ドラゴン》』を崇める教団である。
「と、ただ崇めてるだけなら良かったんだけどね」
 とヨーキィ。そう、彼らはただ『|竜《ドラゴン》』を崇めるだけの集団ではなかった。
 彼らは「か弱き姿に堕とされたドラゴンプロトコルを殺し、その遺骸を自身の肉体に移植することで、いつか『強き竜の力と姿』を取り戻させる」という狂気とさえ言える教義を持っているのだ。
「ここまで言えばもう想像つくよね。ヨーキィちゃん、今回は、『喰竜教団』が事件を起こす様子を予知しちゃった」
 星詠みと呼ばれる存在はゾディアック・サインから予知を受け取ることがある。今回もまた、ヨーキィが見た「予知」が現実になろうとしている、と言うことだ。

「今回、『喰竜教団』がターゲットにしているのは、駆け出しの冒険者をやってるドラゴンプロトコルの女の子だよ」
 既に冒険者ということで、冒険の知識も戦闘技術も持っている様子だが、腕はまだまだ未熟で、√能力の前にはまだまだ無力だ、とのことだ。
 当然、「喰竜教団」に襲われればひとたまりもないだろう。
「今、件の女の子は、天空ダンジョンに一人で潜ってるみたい。このダンジョンの低層は本来強いモンスターがいないはずで、一人でも安全に実力を積んでいける……はずだったんだけど」
 「喰竜教団」は強めのモンスターを放ち、そのドラゴンプロトコルの少女を襲わせるつもりのようだ。
「まずは、急いで、天空ダンジョンを通り抜けて、彼女の元まで急行してね」
 道中は精霊の力による飛翔が可能だが、大嵐や落雷といった気象現象が襲ってくる。うまく対処しつつ、少女の元に向かう必要があるだろう。
「女の子の元に辿り着いたら、女の子を襲ってる『喰竜教団』が放ったモンスター、『エンジェル・フラットワーム』を倒しちゃって!」
 少女を守りつつ戦うことになるが、少女も多少の戦闘の心得はある。必要によっては少女の力添えも多少は借りられるかもしれない。
「そして、モンスターを倒したら、いよいよ黒幕が現れるはず。『喰竜教団』の、その教祖様本人がね」
 『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』は、何度も√能力者に殺された結果、自身の得てきたドラゴンプロトコルの遺骸を全て失った様だが、それでも強敵には違いない。

「最近、纐月さんが秋葉原で不穏なことが起きる様なことも言ってたし、王権執行者の動向はどうしても気になるよね」
 でも今は、目の前にある敵を倒すしか出来ることはない。少女を救うために戦おう。

●天空ダンジョンで追い詰められて
「ふう、低層も結構危なげなく踏破できる様になってきたかも」
 目標となる光石を地面に置きながら、そう呟くドラゴンプロトコルの少女。

「見つけた。ドラゴンプロトコルの方……」
 その陰で、一人の女性がニヤリと微笑む。
「言って、モンスターども。ドラゴンプロトコルの方を殺すのよ」

「!」
 平べったい形状を生かして突如として接近してきた『エンジェル・フラットワーム』に、少女は咄嗟に反応して詠唱錬成剣を振るう。
「あっ!」
 同時、エンジェル・フラットワームが口を大きく開き、セレスティアルの翼のような複数の触手で、少女に襲いかかる。
 少女の詠唱錬成剣が触手を切り開いていくが、戦闘技能のまだ未熟な少女だ。やがて限界が訪れ、少女の手から詠唱錬成剣が弾き飛ばされる。
「くっ」
 弾き飛ばされた剣の方へ、少女が身を投げ出し、触手を回避する。
 胴体から地面に滑り込んだ少女はそのまま自身の詠唱錬成剣へ手を伸ばすが、エンジェル・フラットワームは一匹ではない。現れたうちの一匹が触手でさらに遠くへと弾き飛ばす。
「何なの、こんなモンスター、この階層で見たことない……」
 武器が遠い。このままでは戦えない。突如として訪れた致命的なピンチに少女は思わずそんな疑問を口にするしかできない。
 √能力者よ、急げ。少女が逃げ惑っていられるそのうちに。

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第1章 冒険 『天空航路』


エアリィ・ウィンディア
ヘリヤ・ブラックダイヤ
御剣・峰

「改めて聞くとわけのわからん連中だな。下らん節介によくもまぁ集まったものだ」
 星詠みの話を聞いて、そう呟くのは『絶大な戦闘力と、生物非生物問わずあらゆるものを黒い結晶に変えるブレスで気ままに暴れ回り、周辺諸国を恐怖に陥れた黒く透けるような美しい鱗を持つドラゴン』……と、伝承だけが残るドラゴンプロトコル、ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)だ。
 下らん節介、とはまさにドラゴンプロトコル当事者にしてみれば、これほどまでに適当な言葉もあるまい。
「というか、まだあのお姉さん頑張っているんだ。そんな努力しなくていいのに……」
 そう呟くのは好奇心旺盛で元気一杯の小柄な女の子、エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)。
「まったくだ。√能力者の不死というのは厄介だな、諦めを知らんやつめ……」
 √能力者達があのお姉さんこと『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』を始めて予兆で見たのはもう今年の二月のこと。その後、多くの√能力者に痛めつけられて、弱体化した姿を予兆で見たのが、三ヶ月後の五月だ。弱体化してから考えてももう五ヶ月近く経っており、半年近い。エアリィではなくとも、よくも頑張るものだ、と思っても不思議はないだろう。
「ふむ。いずれにせよ、今はドラゴンプロトコルの少女がピンチだから、急いで行かねばならないと」
 天武古砕流の正統後継者の一人、御剣・峰(蒼炎の獅子妃・h01206)が状況をまとめる。
「だね」
「あぁ。駆け出しでも踏破できるようなダンジョンだ。嵐や落雷はあるが、抜けるのはそう難しいことではないだろう」
 とすると、問題は、とヘリヤが続ける。
「後はどっちの方向に護衛対象が向かったかどうかだな」
 もちろん、ダンジョンの低階層がそんなに広くないはずなので全域を探し続けてもいいが、効率良く探すならドラゴンプロトコルの少女がどこに向かったかは知る必要があるだろう。
「さて……これで喋れるか?」
 ヘリヤは自身の竜漿をインビジブルに分け与え、小さなドラゴンの姿へと変化させる。√能力『竜活』である。
「ドラゴンプロトコルがここにきているはずだ。どっちに向かった?」
「あぁ、ここに通い詰めてるあの女の子だね? だったら、この浮遊する光石を追いかけると良いよ。あの子はいつも脱出する時に迷わないように、この光石を目標にしてるんだ」
 そう言って、小さなドラゴンが翼で示した先には、光石が浮遊している。一定距離毎に浮かんでおり、奥へと続いていた。
「なるほど、感謝する」
「じゃあ、これを追いかければいいんだね」
「なら、一直線で行くだけだ」
 ヘリヤが感謝を示し、エアリィと峰が頷く。
 後は進むだけだ。ヘリヤは自前の翼で、後の二人は精霊力で、それぞれ空中に飛び上がる。
「助けるためとはいえ、空を一杯飛べるのはすっごくうれしいっ♪」
 空の上で上機嫌に微笑むのはエアリィ。
「せっかくだから、飛翔速度も増してみようかな?」
 そんなことを呟いて、√能力『|精霊翼展開《エレメンタルドライブ・ウイング》』を発動する。
 三対の魔力翼を持つ魔法少女の姿に変身し、エアリィがさらに加速する。
 全員の通るルートは同じ。光石を追いかける最短ルートだ。
 少し違うのは、峰。
「飛翔すると嵐と雷が邪魔をする、と。関係ないな。邪魔をするというなら気候だろうがなんだろうが捻じ伏せて進む」
 目の前に見える嵐や雷雲を他の二人は可能な限り回避しようとするのに対し、峰は魔力と肉体の強度を高めて一気に突入する。
「ふむ、雷を受けると言うのは中々貴重な経験だった。さ、進むか」
 雷から飛び出した峰はなんと言うことはなかったかのように、そう呟く。
「あたしも、突破を視野に入れようかな」
 と、オーラを纏ったエアリィも雷雲に突入する。
 そうして進めば、やがて、『エンジェル・フラットワーム』に追い詰められつつあるドラゴンプロトコルの少女が見えてくる。
「まっててねっ! もうちょっとだからっ!!」
 三人はさらに加速する。
 間も無く、少女の側に至れるだろう。

第2章 集団戦 『エンジェル・フラットワーム』


「はぁ……はぁ……」
 剣を失ったドラゴンプロトコルの少女が壁際に追い詰められる。
 『エンジェル・フラットワーム』がその周囲を囲むように移動し、触手を展開する。
 だが、その触手が少女に届くことはないだろう。
 天空航路を通り抜けた√能力者達が駆けつけてくるからだ。
エアリィ・ウィンディア
御剣・峰
タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ
ヘリヤ・ブラックダイヤ

「今なら間に合う。まだ陽は沈まぬ」
 地上から戦馬型WZ|超重鉄騎《クリバナリウス》と合体した巨大WZ|騎士長官《マギステル・エクィトゥム》に搭乗して天を仰ぐのは決戦型WZ|騎士長官《マギステル・エクィトゥム》の搭乗者にして|屠竜騎士《ドラゴンスレイヤー》、タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ(|大堅果騎士《グランドナッツナイト》・h06466)だ。
「我が盟友よ、疾く駆けよ! 卑劣な者の手が届く前に」
 そう言って、リースケは障害となる雷雲や嵐をものともせず、三人の√能力者に合流してくる。
 かくして、四人となった√能力者はそのまま、少女の元へ駆けつける。
「あれか」
 ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)が最初に少女を視認する。
「そこまでーーっ!!」
 エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)が叫びながら、一気に右手に持つ精霊剣『エレメンティア』で『エンジェル・フラットワーム』を斬り割いて、少女のそばに降り立つ。
 同時、閃光と轟音と共に流星の如くリースケがその場に降り立ち、爆風がエンジェル・フラットワームから撒き散らされる有毒の粘液を吹き飛ばす。
「我が名はタミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ。大堅果騎士のリースケだ」
 堂々たる名乗りを上げるリースケ。
 知能の無さげなエンジェル・フラットワームには通じないかと思いきや、案外、警戒して距離を置いた。つまり、ドラゴンプロトコルの少女からも距離を置いたことを意味する。
「ふぅ、大丈夫? あたしたちが来たから安心してね♪」
 エアリィが笑いかけると、少女もほっとしたような表情を見せる。
「無手でここまで来たのか?」
「いえ、剣を持っていたんですけど、あいつらの攻撃で落としてしまって……」
 同じく、少女とエンジェル・フラットワームの間に割り込んだヘリヤが、少女の手に武器がないことに疑問を抱き、問いかける。
「なるほど、剣を……私のこれはお前には巨大すぎるか。私の手元に予備はないな」
 ヘリヤは自分が右手に持っている魔導機巧剣『竜翼』をチラリと見て、護身用に渡すことも考えたが、扱いきれないであろう武器は却って危険だと判断し、止める。
「とりあえずこれを」
 エアリィが自身の纏っているオーラ防御を少女に付与する。
「あ、ありがとうございます。でも、そうしたらあなたは……?」
「確かに、自分の防御は薄くなるけど、まぁ、それくらいは気合でカバーするっ!」
 そう言って、左手に精霊銃『エレメンタル・シューター』も構えながら、エアリィは元気一杯に宣言する。
「ワームというから芋虫みたいなのを想像してたんだが……」
 さらに同じく、少女とエンジェル・フラットワームの間に割り込んでグラップルの構えを取る御剣・峰(蒼炎の獅子妃・h01206)が呟く。
「あぁ。珍妙な生物だ。作戦のためにドラゴンストーカーがどこからか捕まえてきたのか……? ドラゴンプロトコルの体の移植といい、手間は惜しまん奴だな、相変わらず」
 このダンジョンに通い詰めているらしい少女も見覚えのないと言っていたことからしても、外部から持ち込まれたのは確かだろう。
「まぁ、何でもいい。取り敢えず、お前たちは邪魔だからさっさと消えてくれ」
 峰が地面を蹴って、敵集団に飛び込む。
 エンジェル・フラットワームが口を大きく開いて、敵を捉えて胃袋に放り込むための触手を放つ。
 しかし、峰は攻撃の起こりを完全に見極めて攻撃の起動を読んで、触手をいなして、殴り砕いていく。
「世界を司る六界の精霊達よ、あたしに力を……。精霊達とのコンビネーション、じっくり味わってねっ!」
 そうして、峰が自身にターゲットを集中させている間に、エアリィは高速で詠唱を行い、火・水・風・土・光・闇といった精霊達の力を纏って、戦闘体制を取る。
 精霊銃を乱れ撃ちながら、一気に敵陣に突入しダッシュで撹乱しながら、複合魔力を束ねた斬撃である|六芒星精霊収束斬《ヘキサドライブ・ブースト・スラッシュ》を放って、エンジェル・フラットワームを切り裂いていく。
 確実に数を減らしていくエンジェル・フラットワームだが、あるタイミングで、突如として一斉に動きを変える。
 全員が一斉にドラゴンプロトコルの少女に向けて移動を始めたのだ。
「吹き飛べ……!」
 少女の側で待機していたヘリヤが、『|竜漿竜吼砲《ドラゴンロア・キャノン》』を発動。竜の頭部型の浮遊砲台を一基召喚し、確実に一体一体を撃ち抜いていく。
 ヘリヤ自身も左手に構えた魔導機巧斧『竜吼』からも砲撃を放ち、接近するエンジェル・フラットワームを確実に排除していく。
「少女には近づかせぬ!」
 さらに距離を詰めてくるエンジェル・フラットワームに、リースケが|一切虚無《オムニア・ウァーニタース》で迎撃する。
 エアリィと峰も少女の元にとって返す。
 大口を開けて迫るエンジェル・フラットワームに対し、エアリィはエネルギーバリアを展開しながら割り込んで庇う。
 エネルギーバリアで大口が閉まらなくなっているところへ、|六芒星精霊収束斬《ヘキサドライブ・ブースト・スラッシュ》が振るわれる。
 一方、少女に迫る触手に割り込んだ峰は一瞬拘束されつつも、冷静にエンジェル・フラットワームの口に手を当てて、そのまま真っ二つに引き裂く。
「私にお前たちは釣り合わん。分かったらさっさと消えろ」
 結局、エンジェル・フラットワームは√能力者の尽力により、少女に触手の一本、粘液の一滴も触れることなく、殲滅されたのであった。
 ホッと息を吐く少女。
 しかし、√能力者達はまだ気を抜かない。星詠みの予知によれば、まだこれから敵が現れるはずだからだ。

第3章 ボス戦 『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』弱』


「ドラゴンプロトコルの方を殺害して差し上げる予定が、邪魔が入るとは……」
 ダンジョンの奥から、人影が現れる。身の丈ほどもある大剣を持った褐色肌の女性。
 星詠みの予知にあった『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』だ。
「あぁ、ドラゴンプロトコルの方もいらっしゃいましたね。真竜様のお力を取り戻すためにやっていることなのに、どうして邪魔をされるのです……!」
 そういって、√能力者の一人に向いて喋ったかと思えば。
「まぁ、ドラゴンプロトコルの方が増えたのは助かりますね。これで、より多くの部位を取り込めるというものです!」
 ぶん、と大剣を振り回す。やや大剣の重さに振り回されているようにも見えるが、強敵には違いない。
 √能力者の背後で、無手であるドラゴンプロトコルの少女が怯えている。
 少女を守りつつ、奴を倒すのだ。
御剣・峰
エアリィ・ウィンディア
ヘリヤ・ブラックダイヤ
タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ

「いや、だって。そんな抹殺しますー。って言って、それをさせるわけにはいかないじゃない?」
 そう『喰竜教団教祖『ドラゴンストーカー』』の言葉に応じるのはエアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)だ。
「あなたのようなドラゴンプロトコルならざる虫ケラには分からないかもしれませんが。これはドラゴンプロトコルの皆様のため、真竜様のお力を取り戻すためなのです」
 対するドラゴンストーカーは、エアリィに対し、鋭い目つきで反論し、ドラゴンプロトコルを、そして真竜を讃える言動を取る。
「私たちのためなどというが、そうしたいというお前の欲望でしかない。独善というやつだ。そんなものは知ったことではない」
 だが、そんなドラゴンストーカーの言葉を真正面から切って捨てるのは、他ならぬドラゴンプロトコル当事者の一人、ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)だ。
「そんな……ドラゴンプロトコルの方……。なぜあなたはいつも私の邪魔をされるのです」
「本当にお前は成長しないな」
 ヘリヤに否定されたドラゴンストーカーに、呆れた様子で御剣・峰(蒼炎の獅子妃・h01206)が言葉を投げる。
「成長しないなどと! 真竜様になるための成長の邪魔をしているのはお前達虫ケラ共でしょうに!」
 峰の言葉に、反発した態度を取るドラゴンストーカー。
「まぁ、成長するような余地があったらこんなバカなことはやめてるよな。話をするのも馬鹿らしい。さっさと始めるか」
 ドラゴンストーカーとの会話の成立しない具合に思わず溜息を漏らしかけた峰はそこで話を止め、ファイティングポーズを取る。
「あぁ。何度も敗北し、継ぎ合わせた部位も失ったというのに懲りん奴だ」
 ヘリヤもそれに続く。
「残念だが、私達がいる限り、少女に手出しすることは叶わぬぞ、竜擬きよ」
 タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ(|大堅果騎士《グランドナッツナイト》・h06466)も大剣|一切虚無《オムニア・ウァーニタース》を構え、ドラゴンプロトコルの少女とドラゴンストーカーの間に立つ。
「大丈夫っ! あたし達が何とかするからね。こーみえても強いんだからっ!!」
 エアリィがそう言って、怯えるドラゴンプロトコルの少女に微笑むと、少女は少し安心したような表情を見せる。先ほどの戦いで一行の強さは知っているのだ。
「さ、それじゃやりましょうか、お姉さんっ!」
 そうして、エアリィも精霊剣『エレメンティア』を右手、精霊銃『エレメンタル・シューター』を左手に構える。
 その場にいる一人の√能力者と四人の√能力者がそれぞれ武器を構えて睨み合う。
 先手を取ったのはエアリィ。
「今回はこの手で行くかな」
 剣で以て飛び掛かるエアリィ。対するドラゴンストーカーは大剣でその攻撃を防御し、反撃の機会を窺う。
「世界を司る六界の精霊達よ、銃口に集いてすべてを撃ち抜く力となれっ!!」
 しかし、ドラゴンストーカーが反撃の糸口を見つけるより早く、エアリィの高速詠唱が終わる。
 火・水・風・土・光・闇の複合六属性が精霊銃に装填される。
「いっけーーっ!!」
 放たれるは複合六属性による魔力弾。その名も『|六芒星精霊速射砲《ヘキサドライブ・ソニック・ブラスト》』。
 それはドラゴンストーカーを精密に狙い、負傷を負わせつつ、味方には六属性の精霊の加護を与える。
「しまった。敵の戦場工作を許してしまいました」
 ドラゴンストーカーは失策に気付くが今更遅いというもの。
 焦ったドラゴンストーカーは自身も√能力を発動。
「守るべき対象のいるあなた方ではこの攻撃を防ぎ切れないでしょう!」
 棘付きベルトコスチュームによる範囲攻撃でドラゴンプロトコルの少女諸共全員を二回攻撃する。
 しかし、その程度の動きはとっくに全員が承知していた。
「我が守りは樫のごとし。楽に抜けると思うな」
 一撃目は、リースケが大剣を薙ぎ払って防いだ。
 しかし、二撃目はそれを前提にしてリースケを回避するように少女に迫る。
「以前には遠く及ばないが……、ひれ伏せ」
 対して、ヘリヤが動く。ブラックダイヤのような鱗を持つドラゴンへと変化する。√能力『|黒竜覚醒《ブラックドラゴン・アウェイクン》』だ。
「そのお姿は……、一時的に真竜様の姿を真似たというのですか……!」
 知られざる|龍の記憶《ドラゴンズメモリー》により速度を上昇させたヘリヤは、ドラゴンプロトコルの少女に迫る二撃目に立ち塞がり、大量の竜漿を消費しつつも、その攻撃を完全に無効化する。
「くっ、二重に√能力を駆使して、真竜様の力を再現しているのですか……」
「単純な戦闘では遅れは取らんが……撹乱され回り込まれ、本来の目的を達成されても癪なのでな」
 迂闊にも接近したドラゴンストーカーにヘリヤの尾と爪の一撃が迫る。
 堪らず、ドラゴンストーカーはこれを回避する。真竜に詳しいドラゴンストーカーは今のヘリヤが——何かしらのリスクがあるだろうにせよ——外部からの干渉を完全に無効化できる状態にあると知っているので、変身が解除されるまで回避を続けるしかないと知っていた。
「どうした、逃げてばかりであるか、竜擬きよ」
 そんな逃げ腰のドラゴンストーカーをリースケが外套を投げ捨てながら挑発する。
「この……虫ケラが……っ!」
 そして、余裕を失っていたドラゴンストーカーはその挑発にあっさりと乗ってしまう。
 ドラゴンストーカーの大剣が振るわれる。重過ぎる剣による全力の四倍攻撃。
 それを、リースケは自身の大剣で弾き、真正面から攻撃する。『屠竜宣誓撃
』。
「邪なたくらみごと討たせてもらうぞ、竜擬きよ」
「失敗しました……! 外套を脱いだ時点でこの展開は予想できたはずなのに……っ!」
 ドラゴンストーカーは更なる失策に気付いたがもはや手遅れという他ない。
 リースケはさらにドラゴンストーカーの骨折した右腕側から攻め込み、強く攻め立てる。
「残念であったな。一度滑り落ちた機会というものは、神でさえ取り戻せないものだ」
「くぅ……。まだです! 真竜様なら……!!」
 ドラゴンストーカーは最後の望みを賭けて、思い切った行動に出る。
 もう片腕による大剣による一撃と、棘付きベルトコスチュームで全体攻撃を発動し、再びドラゴンプロトコルの少女を庇わせて、その隙に、一気に後方に飛び下がり、瞑想を開始する。
 |エルフの世界樹《ユグドラシル・メモワール》から真竜を呼び出そうというのだ。
 けれど、それは全員が少女を庇おうとした場合にしか成立しない戦術。
 確かにヘリヤは大剣の一撃を防ぐべく、間に立ち塞がった。
 エアリィはオーラによる防御とエネルギーバリアを全開にして棘付きベルトの攻撃を防ぎに行った。
 リースケも、大剣で棘付きベルトの攻撃を防ぐべく一度後退した。
 だが、こちらの√能力者はそもそも四人いるのだ。
「竜を呼び出す為に瞑想して、その間に攻撃されないと本気で思っているのか?めでたい頭だな。十秒もあればお前を斬るには十分だよ。まぁ、武門の人間でもないお前には、理解できない世界だろうな」
 そう言ったのはこれまで、敢えて、気配を消していた峰であった。
 峰はあえて戦いに参加せず、警戒すべき相手を三人だと誤認させた。
 そして今、『古龍降臨』により、太古の神霊「古龍」を纏った峰は一気に地面を蹴って、ドラゴンストーカーへ肉薄する。
 発動する霊剣術・古龍閃を防ぐ手段は、瞑想しているドラゴンストーカーには存在しなかった。
「今だ」
「あぁ、これで終わらせる」
 ドラゴンとなったヘリヤの必殺技、あらゆるものを黒い結晶に変える黒色のブレスが放たれる。
「あぁ、真竜様のブレスにやられるのであれば、これも悪くはありませんね。ですが、次こそはその美しき部位、私が頂きます」
 そう言い残し、ドラゴンストーカーは人型の黒い結晶へと成り果てた。
「この諦めない根性はすごいなぁ……」
 最後の言葉に、思わず漏らすエアリィ。
「全くだ。こうして単純な作戦ばかりでいてくれると楽ではあるが……あちらも不死ゆえ、どうにかはせねばな」
 ヘリヤが頷く。
「あ、あの! 助けていただき、ありがとうございました」
 戦いが終わって、武器を下ろす四人の√能力者に、ドラゴンプロトコルの少女が礼を言う。
 言い終えると、少女はそのままヘナヘナと地面に尻餅をついた。
「すみません。安心したら、気が抜けちゃって。本当にありがとうございました」
 四人は念のため、少女が安全にダンジョンを脱出したのを見届け、解散したのであった。

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