華麗なる?|鍛冶職人《ブラックスミス》の戦い方
●Anker候補『鍛冶職人』
「ねえ、知ってる? 鍛治って『かぬち』とも読むらしいよ。律令制のあった時代……平安とかだと、鍛冶司って役所での仕事だって」
|亜双義《あそうぎ》・|幸雄《ゆきお》(ペストマスクの男・h01143)の知識マウント……もとい、話を聞いて『だからどうした?』という感想が大半だろう。
いわく、この前置きは必要なものだとか。
「√ウォーゾーンにも居るのよ。由緒ある『|鍛冶職人《ブラックスミス》』のAnker候補がね、そいつがAnker抹殺計画のターゲットになった。サイコブレイドの“Ankerを探知する能力”ってのは、見分けがつかないハズの人、物、概念からAnker候補を見抜く」
厄介なモンだ、と呟きながら電子タバコの蒸気を吹きだす。
今回発見された人物は、√ウォーゾーンで鍛冶技術を受け継ぐドイツ人の一族だという。
「名前は『ギルベルダ・シュミーデ・ローゼンハイム』、10代女性だよ。ドイツの人類居住区にいる学徒兵で、兵科は『工兵』だね。技術班の一人として、WZや武装製造に関わってるよ……本人は鍛冶に向いてないと思ってるけどね」
戦闘機械群によって母と兄を奪われ、今や父娘の二人家族。
残されたギルベルダは、後継者の重責を感じていた。
「実際は、お父さんも臨時講師の一人として、鍛冶技術を兵員に教えてるのよ。技術は広めないと残らない。引き継がないと断絶しちゃうからね。娘の|本音《苦悩》に気付いている、ってのが一番だろう」
だが、鍛冶とは金属を赤熱させるほどの、高熱をもちいる危険作業。
|不幸な事故《・・・・・》が起きても、おかしくはない。
「実行部隊は、ギルベルダが鍛造機械を操作してるときに、誤作動を誘発するつもりだ。鍛造機械……ドロップハンマー、スプリングハンマー、それにプレス機。当たれば即死だ、頭蓋骨が陥没しちまう」
ギルベルダにとって、それが職務である以上、持ち場から離れさせることは出来ない。
であれば、√能力者が持ち場に入ればいい。
一時的に学徒兵に加わってもいいし、気付かれないように潜りこんで、サポートしてもいい。
「抹殺計画が失敗したとなれば、指揮官も黙ってないだろう。最終手段として、ギルベルダへの直接攻撃を狙うから、あとは√能力者が守りながら指揮官を撃破してくれ」
各√は分岐した世界そのもの、と言える。国外にも危険がある。
「ギルベルダのいる人類居住区はドイツ語圏だけど、多言語翻訳ツールがあればどうにかなる。意思疎通する気があれば、相手も理解に努めるもんよ……魚心あれば水心あり、だね」
心配することはない、と幸雄は保証する。
「√ウォーゾーンだから観光も食事も楽しめないけど、学徒兵に混ざって遅いアオハルを体験したり、WZ開発メソッドを学ぶ機会もある。一番大切なことは……“日常にさりげなく紛れこむこと”だから、ね?」
第1章 日常 『格納庫清掃』
●独逸圏・第×人類居住区
法で定めてきた、歴史ある美しい街並みも、今や無粋な金属によって塗り潰された。
あの美しい伝統建築も、|保存記録《アーカイブ》を閲覧しなければ見られない。
だが、まだ誇りが残っている。
ルールに忠実で、時間厳守。静穏な生活と、家族と過ごす時間を大切にする。
それは、戦闘機械群が現れてからも変わらない――少なくとも、|Anker《ギルベルダ》の属する独逸人類居住区では。
ドイツ人の朝は早い。
企業すら8時前には始業しているなど、日本人には考えられないことだろう。
代わりに終業時間も極めて早く、飲食店すら閉店後は休息を優先し、客を相手にしない。
――それでも『“ルール”なら従う』というのが、ドイツ人の傾向だ。
そのルールこそ、ギルベルダ・シュミーデ・ローゼンハイムを悩ませている原因でもある。
「あのWZの駆動部、モーターが異音を出すのをどうにかしないと。機械って量産には向いてるけど、微調整がイメージ通りにいかないんだよね」
朝8時に始まる朝礼に向け、通学する学徒兵の中にAnker候補・ギルベルダの姿があった。
どうやら機体部品の改善を考えているようだが、
「出来るか解らないけど……手作業で調整してみるか、試運転を手伝ってくれる人が見つかるといいけど」
憂鬱そうな顔で溜め息をこぼし、ギルベルダは校門を通り抜けていく。
観光資源は潰えた。食糧供給は運び屋次第、運任せ。
これがかつての経済大国にして、職人大国ドイツの名残の一部分。
人類最盛期の30%を下回るうちの、数%の|欧羅巴《ヨーロッパ》系が寄せ集まった人類居住区である。
とはいえ、ごく少数ながらアジア系の人員も在籍するようだ。
訪れた√能力者は、この人類居住区へ|さりげなく《・・・・・》溶け込めるだろうか?
●あるいは
人類存亡の最中に、転入、および編入制度は残っているのだろうか。
今回は学校が舞台とあって、レナ・マイヤー(設計された子供・h00030)が、溶け込みやすい環境には違いない。
(「転校生気分を味わえるなんて、新鮮ですね。ワクワクします」)
レギオンに対する大部分の認識は“戦闘機械群の放った、人類殲滅兵器”だろう。
大勢のレギオンを連れると目立ってしまうため、潜入中はリーダー機のみに留めることに。
ぬいぐるみのように抱え、レナもAnker・ギルベルダが在籍する学舎へ向かう。
ひとまずレナは工兵科に編入すると、同級生の少女たちに声をかけられた。
「他にもいっぱいレギオンが?」
「制御するだけでも命懸けなのに、もしかして心臓がクロム製なの?」
物珍しさもあっただろうが、声をかけてくれたなら興味があることは間違いなく、レナも笑顔で応対する。
「無理やり制御しようとした訳ではなく……目が合ったから、でしょうか。今では家族のような存在ですよ」
よしよし、とレナがレギオンを撫でると、単眼を一文字にしてご満悦。
あまりピンと来なかったのか、少女達は不思議そうに顔を見合わせる。
「レナが“大物”ってことはよく解った、これから頼りにさせてもらうね!」
その一言にレナの青い瞳が僅かに見開いた。
誰かに認めてもらえることは、それだけで自信に繋がる。
(「私自身は、できることが少ないと思っていたのですが……」)
「はい! みんなと一緒にがんばろう、ね?」
眩しいほどに可憐な笑みを、レナがレギオンに向ける。
これは潜入なのだと、つい忘れてしまうほどに。
――そして、朝礼を告げる呼子が鳴らされた。
●体力育成
(「世を忍ぶ仮の姿、いつ如何なる時も保てなければヒーローは務まらぬのじゃ」)
√ウォーゾーン、しかも欧州圏での活動であっても、マイティー・ソル(正義の秘密組織オリュンポスのヒーロー・h02117)の立ち振る舞いは変わらない。
目立つ耳と尻尾は、帽子や上着を腰に巻いて隠しつつ、歩兵科の教育課程を受けていた。
次は別クラスとの合同ワークアウトで、教官から「ペアを組んで」と指示される。
誰と組むか迷っていたマイティー・ソルだが、護衛対象のAnker候補・ギルベルダの存在に気付く。
「もし。まだ相手がおらぬなら、妾と組まぬか?」
いまは本名の『ヒミコ』を名乗り、編入生として振る舞い続ける。
隠れた善行なれど、ペア探しに難航していたギルベルダは、マイティー・ソルの声がけに感謝していた。
パートナーを肩に担いでグラウンド10周、というメニューをマイティー・ソルは軽々とこなし、息切れもなくギルベルダを下ろす。
「す、すごい……ヒミコって、実は優秀な学徒動員兵?」
「修練は欠かしておらぬよ、それよりギルベルダの番じゃ」
適当にはぐらかしつつ、マイティー・ソルが担ぐよう促す。
ギルベルダの初速はお世辞にも速いとは言い難く、どうやら肉付きの悪い体質のようだ。
「ハァ、ぅ……っ」
「足が重かろうと歩みを止めてはならぬ。前進し続けるのじゃ!」
戦場では気力が尽きた瞬間、死の恐怖に屈してしまう。
マイティー・ソルが叱咤激励し続け、授業が終わる直前にギルベルダも完走。
「は、初めて、授業時間に、終わったぁ……!」
膝に手をつき、荒い呼吸を整えるギルベルダは、汗だくで笑みを浮かべる。
「努力の賜物じゃな、妾も負けておれぬのう」
「ふふ、ヒミコが励ましてくれたからよ。……そうだ、今日の放課後って予定ある?」
『WZの部品改良を行うので、試運転に協力してくれる人を探している』
まさしく困っている人なのだが、果たしてマイティー・ソルはどう動くか。
●聞き込み
|紙蚊帳吊《かみがやつり》・スズコ(人妖「ハシビロコウ」紙と万年筆専門ネットショップ「紙葦カミイ」店主・h00760)は運び屋を装い、資材搬入として整備区画に訪れていた。
(「Ankerのことは少し解ったけれど、犯行現場について解っていないのよね。内情が解れば、有利に進められると思うけれど」)
WZや装甲車を整備するブルーカラーが顔を突きあわせる中、小休憩していた整備兵を見つけると、スズコは柔らかな微笑とともに声をかける。
《|無有表裏《キョゾウコウチク》》の煙管をとりだし、一服しているよう装いつつ、整備兵に探りを入れ始めた。
「ここって大きな施設があるようね。こんなに車両が揃った居住区は初めて見るわ」
「デカい鍛造施設があるからな、屑鉄も装甲に早変わりだぞ」
「確かに下手な工場より立派そうだわ。どんな設備があるの?」
気だるげな仕草を見せつつ、スズコがおだて気味に促すと、気を良くした整備兵の口が軽くなる。
「金属の|靭性《粘り強さ》を高める鍛造プレス機とか、成形用のハンマーとか……あと、部品に使う歯車の転造盤もあるんだ。事故が多いし、これもある意味“戦場”って呼べるかもな」
それ以外にもありそうだが、おそらくよく使うモノは上記の三種だろう。
スズコ自身が気になったのは、その中で暗殺計画に組み込まれそうな機械だった。
「危険作業だものね、ヒヤッとすることもあるでしょ?」
心配そうな表情を浮かべるスズコに、整備兵は気まずそうに頬を掻く。
「まあ、ね? 上着が巻き込まれたときはさすがに焦ったなぁ……|ウィンチ《巻上機》のチェーンに引っかかってさ。咄嗟に脱ぎ捨てて、事なきを得たけど、あやうく歯車に挽き潰されるとこだった」
今でこそ笑い話なのだろうが、巻き込まれていたら大怪我を負ったかもしれない。
――それも、原形を留めていたか怪しいほどに。
話もそこそこに切り上げ、スズコは建物の陰に入ると、情報を手書きで書きだしていく。
すると、聞き込み内容に妙な繋がりを感じた。
(「歯車、チェーン、巻き込まれ――どうも気になるわね」)
第2章 冒険 『危険物質の広がりを止めろ!』
●完全犯罪計画
警報がなることなく、平穏な1日を過ごした学徒兵は校舎を出ると、各々の時間を過ごすことになる。
ある者は自主学習に励み。ある者は自己研鑽に精を出し……ある者は、責務を全うするために時間を費やす。
|護衛対象《ギルベルダ》は施設前で、手書きの資料とにらめっこしていた。
施設そのものは体育館ほどだが、窓はないし、鉄の箱のように見える。
「異音の原因はモーターだと思うけど、接続異常かもしれないし……どのみちパーツを手直しするしかないよね」
資材もそう多くはない。
ムダ遣いを防ぐためにも、WZから部品を外すつもりのようだ――だが。
「まさか、予備の作業着が持ち出されるなんて……変な趣味の人でもいるのかな?」
実行部隊に持ち去られてしまったのか。
ギルベルダの服装は厚手のツナギではなく、体育で着るためのジャージ。
危険作業であることは、ギルベルダも自認していたが、
「……外して再調整するだけだし、すぐに終わるよね」
大仕事ではないから――そう判断して、ギルベルダは鍛造施設に入ってしまった。
多くの鍛造機械は重厚な外観で、WZの規格に合わせるためか、数メートルはある大型機械も備えられている。
沈黙する機械達は、次の職務を静かに待つ。さながら寡黙な職人のよう。
「まずは――」
施設に入った直後、ギルベルダめがけて脚立が傾く。
慌てて飛び退いたものの、それが“抹殺計画”の始まりだった。
「な、なにこれ? ……え?」
誰かが故意に備え付けた、鉄の枷や首輪がギルベルダを捕まえる。
ギョッとしている間に、今度はウィンチが独りでに動き始め――手枷や首輪を引っぱり出す。
為す術なく引き寄せられる先には、やはり稼働し始めた鍛造機械の数々。
機械は壊されても復旧という手段が残るが、生命は壊されたら元に戻らない。
鍛造機械の|強制停止《破壊》。シンプルだからこそ、これが最速の救出手段となるだろう。
●物作りへの共感
|柳檀峰《りゅうだんほう》・|祇雅乃《ぎがの》(おもちゃ屋の魔女・h00217)は鍛造施設に飛びこみ、状況を直感的に理解する。
(「おもちゃと武装……製造目的は真逆だとしても、誰かを守るために存在するモノよね」)
「大人の一員として、もう立派に働いているでしょうけど……私にしてみれば、まだ子供のうちよ!」
身体能力には自信があるものの、工場機械の危険性も理解している。
だからこそ、《擬竜の息吹》で召喚した竜型ゴーレムを先行させ、稼働し始めた鍛造機械への攻撃指示を出す。
ゴーレム達が一斉に食らいつき、プレス機の圧縮にも怯むことなく、強制的に稼働停止させる。
「助け、て……っ」
「待ってて、ギルベルダさん。チェーンの巻き上げを止めるから!」
重厚な鋼鉄製の魔導書を軽々と持ち上げ、祇雅乃は巻き上げる歯車のひとつを、魔導書で乱暴に殴りつける。
ガキン! 金属同士が衝突し、火花が散ろうと構わずもう一撃。
巻き上げる歯車自体に、仕込みはなかったらしく、祇雅乃の単純な暴力で歪ませられた。
「緊急事態だもの、人命救助を優先しないとね?」
●鍛冶屋の在り方
生まれは違えど、鍛冶に携わる|黄昏《たそがれ》・|剱《つるぎ》(鋼焔の後継・h09087)にとって、他人事ではなかった。
鍛造するための機械を悪用し、人命を奪おうという暴挙――到底、許されるモノではない!
(「潜入は、あくまで“√能力者の存在を簒奪者に気取られないため”の作戦……今から介入するなら、もう敵の目を掻い潜る必要はない」)
剱は《|鍛冶の神域《ブラック・ゴッド・エリア》》を展開し、想い描く鍛冶場を形成しようと語り始める。
「基本的な道具を作りたいんだ。量産できて、人々を自然に支えるような道具を。その施設は勿論、人を害したりはしない」
金属を火と水で加工する――“たったそれだけの技術”だからこそ、何十年と技術を磨いてなお、満足できずに鎚を打ち続けるのだ。
剱の語る言葉に呼応し、鍛造施設の内部が、変化していく。
見習い職人であれ、熟達した鍛冶屋であれ、その手で扱う道具は同じ。
プレス機は金槌と金床、冷却水を入れた大きな水桶に。研磨機は砥石に。溶鉱炉は、窯状の炉に姿を変えた。
「何が起きてるの? 鍛造用の機械が、旧世代型の鍛冶場になった……?」
ギルベルダを拘束していた鉄枷や首輪も、地金や鋼となって地べたに転がっていく。
剱がすぐに駆け寄り、ギルベルダを立たせる。
「信じてくれるか解らないけど、あなたの命を狙っている組織があるんだ。……心当たりはない?」
そう指摘され、彼女は身につけているジャージに手を当てた。
所々に穴が空いてしまった上に――本来、作業を行う際は、作業着に着替えねばならない。
「もしかして、作業着を盗んだのも?」
各自に支給されるだろう衣類を盗む理由はない。後ろめたいことがなければ、本人に頼めばいいのだから。
しっかりと心当たりのあったギルベルダが、剱の言葉を信用するには充分すぎる。
(「抹殺計画が頓挫したとなれば、直接介入してくるはず」)
「気を付けて、まだ隙を窺っているハズ――」
剱が周囲に意識を集中させ、警戒していると、突如現れた漆黒の触手が伸び上がった。
すかさず《|錬成鋼射出《アーセナル》》で再形成した、鋼属性の弾丸で撃ち抜いていく。
飛沫となった流体金属が屋内に飛び散り、ギルベルダに付着したモノは衣類に【装甲付与】を施した――しかし、敵の目的は√能力者の撃破ではなく、Anler抹殺。
「きゃあっ!?」
時間差で現れた漆黒の触手が、ギルベルダの動体に巻きついて、壁面めがけて投げ放った。
衝突するより早く、世界の亀裂から伸びた漆黒の触手が捕らえ、彼女を磔にしていく。
「ふぅん……油臭い工場よりは、マシな光景になっているね」
世界の亀裂の向こう側は、どうやら廃工場になっているらしい。
|人質《Anker》の傍らには、|サイコブレイド《刀剣》の峰を撫でながら、妖艶に笑う|薔薇と蠍の合成怪人《マンティコラ・ルベル》の姿がある。
第3章 ボス戦 『『マンティコラ・ルベル』』
●鉄火より鋭く
√能力者が√ウォーゾーンから、√マスクド・ヒーローへ渡っていく。
廃工場の中には、放置された鉄骨にカバーが掛けられていたり、空のドラム缶などが転がっていた。
錆びついている状態から察して、放棄されて久しく、一般人が紛れこむような事態は起きないだろう。
亀裂の向こう側を見ていたマンティコラ・ルベルは、囚われたギルベルダの頬を撫でながら、口の端を上げる。
「施設の機械……全部、壊れてしまったようね? あの√だと、大部分はどうにでもなりそうだけど」
マンティコラは婀娜っぽい微笑を浮かべ、|サイコブレイド《刀剣》の切っ先を床に這わせた。
黒板を引っ掻くような、不快な音を立てて、バイザー越しに√能力者を注視する。
「でも、困るのよね。抹殺計画を邪魔するなんて……皮肉の効いた、美しくも残酷な死に様だったでしょうに」
両手両足を漆黒の触手に拘束され、藻掻くAnkerを尻目に蠍の尾を揺らす。
「殺人儀式ほど華やかではないけれど、たまには密やかに執り行うのも一興ね」
壁に磔にされたままでは、簒奪者が流れ弾でAnkerを殺害するかもしれない。
彼女を守りながら、拘束を外す必要がありそうだ。
艶めかしい薔薇の香りを漂わせた、マンティコラ・ルベルとの決戦が始まる。
(希望者がいらっしゃいましたら、『プレイング内へ【Anker希望】と記載』してください。
リプレイの最終行でAnker『ギルベルダ・シュミーデ・ローゼンハイム』の作成権利を差し上げます。
1PCのみとなりますため、ご理解のほどお願いいたします)
●報復
自分達の暮らす|世界《√》を荒らされ、見過ごしてやるほど、√ウォーゾーンは生温くない。
人類存続を賭けて挑む者達ならば、一矢報いてやろうと思っても不思議ではなかった。
リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)が高らかに名告りを上げ、
「これより交戦を開始します。各友軍へ通達、私に続いてください!」
大型ブレードでもあるエネルギー砲を肩に担ぎ、マンティコラ・ルベルへ一直線に迫る、
「闇雲に迫れば良いと思わないことね」
サソリの尾針が髪鞭を振り上げた直後、《|LXシリーズ・先制離脱モード《アサルト・アンド・ステルス》》を発動。
前進気勢を乗せた跳躍で、一瞬にして間合いを詰めるや、大型ブレードによる斬撃を叩きこむ。
それと同時に、ボディースーツに搭載された【光学迷彩】を起動し、一時的に視認性を著しく低下させる。
「友軍に続く。優先目標は――“Anker救出および防衛”」
さらに世界の亀裂から、タイミングを見計らっていた第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)も、愛機である量産型WZ『ブッタ』に搭乗し、戦場へ飛びこんでいく。
パルスブレードによる《|一閃《イッセン》》を見舞い、マンティコラ・ルベルの死角から強襲をかける。
√能力による代償として、過重負荷により腕部パーツが片方、使用不能となったが、
(「作戦に影響なし、優先目標の達成こそ大前提」)
囚われたギルベルダのほうを一瞥すると、【光学迷彩】で姿を消していたリズが、拘束する触手を全て切断していた。
「レプリノイドが、|超心理学的な《オカルトじみた》機能を……?」
「不思議に思うでしょうが、ここは戦場です。今は身の安全を確保しましょう」
動揺するギルベルダを、リズは冷静に諭して、遮へい物に身を隠すよう促す。
Ankerを奪取されたことに気づき、マンティコラ・ルベルの口元が苦々しく歪み、
「一方が押さえに回って、もう一方が救助に走る……なかなか小癪なマネをするわね」
髪鞭で資材ごと叩き潰そうとするマンティコラ・ルベルだが、それをルーシーのパルスブレードが弾き飛ばし、軌道がそれた髪鞭は薄汚れたコンクリートの床に亀裂を残す。
「優先目標の一部達成を確認」
「これより指揮官の撃破へ移行するであります!」
●鋼刃の一太刀
「確かに鍛冶は危険が伴う仕事さ……でもね、危険を顧みずに打ち込む生業なんだ!」
《|鋼焔の鬼神《アーキタイプ》》を発動し、|黄昏《たそがれ》・|剱《つるぎ》(鋼焔の後継・h09087)は鋼の外骨格を纏う鬼へと変ずる。
焔を纏いし両刃の大剣を携え、応戦するマンティコラ・ルベルめがけて斬りかかり、サソリの尾針がついた髪鞭とぶつかり合って火花を散らす。
「ヒーローではなさそうね。かと言って、怪人でもない」
「|サソリと薔薇の合成怪人《後天的な雑ぜ物》とは違ってね。――僕は、僕だ」
ギルベルダを射線へ巻き込まないよう、位置取りに注意しながら、劔は大剣で髪鞭をいなして《|鋼鬼の狩爪《オウガ・ハント》》による、空間引き寄せ能力で無理やり間合いに引きずり込む。
「そっちの|趣味《ペース》に付き合ってやる義理はないな!」
部位切断を狙って振り下ろされる髪鞭に対し、劔は転がるドラム缶を跳ね上げて防ぎ、空振りさせた隙に髪束を掴んで投げ飛ばす。
地べたを跳ね転がらせるも、マンティコラ・ルベルが片膝をついて体勢を立て直し、
「狙いは√能力者じゃないもの。Ankerさえ殺ってしまえば、私の勝利よ!」
《スコーピオン・ローズ》で薔薇マーク付き蠍型メカを放つ。
(「攻撃か、索敵か……解らない以上、一瞬で終わらせる必要がある」)
「ギルベルダさん、目を瞑っていて――すぐに終わるから」
これから始まる光景はあまりに刺激が強すぎる。
劔は警告したのち、《|禁断の鍛冶儀式《サクリファイス》》を発動――インビジブルの群れが、一斉に劔の肉体に食らいつく。
「戦闘中に何をやっているのかしら? そんなことをして……」
マンティコラ・ルベルは冷笑を浮かべたが、その笑みはすぐに凍りつく。
劔の儀式によって現れた、無敵の獣【いずれ武具に宿る神獣】が、蠍型メカを一瞬にして吸引してみせたのだ。
「――殺人儀式を行うことがあるんだってね。僕の儀式はどう?」
√能力による“即時蘇生効果”により、食い破られたハズの劔の肉体は、変身こそ解けていたが、食い破られる直前の状態に戻っていた。
「日曜日の朝に活躍する変身ヒーローのつもり? お次は巨大なロボットを出してくるのかしら」
皮肉をこぼすマンティコラ・ルベルに、神獣は再度の吸い込みを始める。
周囲の放棄された鉄くず諸共、引き込もうとする勢いに舌打ちをこぼすマンティコラ・ルベルめがけ、《鋼焔の鬼神》で巨躯の鋼鬼に再び姿を変えた劔が迫る。
「あなたはどんな武器になりそうかな、鞭? 蠍らしく|刺突剣《フルーレ》もいいかもしれないね」
髪鞭で対抗しようとするマンティコラ・ルベルだが、それを神獣が吸い込み、引っ張られたところを劔が両断する。
体勢が崩れた瞬間、マンティコラ・ルベルは神獣の口の中へ吸い込まれていき……悲鳴をあげる間もなく退場することとなった。
●
ギルベルダの無事を確認すると、劔は世界の亀裂との境界に彼女を立たせた。
「……その、ありがとう。こっちに行けば帰れる、んだよね?」
世界の亀裂が見えない上に、見慣れない光景に戸惑うギルベルダだが、説明してもいずれ忘れてしまう。
『忘れようとする力』とは、そういうものなのだ。
「試行錯誤の成果、出るといいね」
去り際のギルベルダに励ましの言葉を送り、Anker抹殺計画は阻止された。