シナリオ

妖精の国の収穫祭

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 秋。それは実りの季節。
 色々な地域がこぞって収穫祭を開催する季節。
 妖精が集う国でもそれは例外ではなく。
 毎年行われるこの収穫祭は、恵みもたらす世界樹に感謝し、これからの豊穣を永く享受する為の祭りだ。
 この時期は、国一番の盛況ぶりを見せる時期でもあった。

 色とりどりの花が咲きそろう見事な花壇、噴水や休憩スポットが点在し、祭りでなくても年中華やかなこの国は、よく観光の名所として名をあげられる。
 そんな国の収穫祭となれば尚更華やかさが段違いだ。
 花や植物で飾りつけされた出店が建ち並び、食事やその年育った植物、お土産に適した商品が売られ、喫茶店や果物店、日用品店でさえもこの日の為に準備した飾りなんかをこぞって出品する。
 それは後述するとして。

 まずは最終的な目標の説明をしよう。
 そう語るのはヴェルタ・ヴルヴァール(故郷無き狼・h03819)。
 自分も行きたかった、と若干へちゃれ気味な耳をしていた。しかし、詠んでしまったものは仕方がないのだ。
 気を取り直して、魔法使いで錬金術師の狼は話し始めた。

 元々、竜が住まう地であったこの土地では、年中旱魃が起こる事で有名な土地であった。それ故に人も妖精も寄り付かず、発展という発展もなされず、稀に物好きが野営地にするくらいであった。
 竜しか住まないのであれば、竜さえ気を付ければ他に寄り付く魔物もいない。一晩明かすには絶好の土地だった、というわけである。
 それが覆されたのは、一人の大精霊が訪れ、竜を討伐し、そこへ一本の木を植えたことからだ。
 竜の血を養分として育ったその木は今や世界樹となり、妖精をも集め、恵みをもたらすようになった。
 そこから凄まじい発展を見せた土地は、国までに成長し、妖精が住まう自然豊かな国として観光が盛んになった。
 人が集まれば、いい事ばかり起こるようになるかと言えば、決してそうではなく。
 人が増えれば増えるほど、比例して問題は増える一方だった。妖精達も手をこまねいているのだ。
 それに怒っているのは世界樹の精霊『リュグドラシェル』だ。恵みをもたらしてきた世界樹が、怒るとどうなるか。
 過分な恵みにより、逆に土地が荒れ果てるのだ。
 それは、世界樹の周りだけでなく、段々と都市へと侵食してきており、異常に繁茂する植物たちが文明をも滅ぼそうとその手を伸ばしている。
 まだ表には出てきてはないが、裏路地や、人の寄り付かない場所には蔦が伸びている所もあるらしい。
 妖精や、精霊の類は人には無い残酷さがある。
 リュグドラシェルは、それこそ精霊らしく頑固な所があり、自然と調和している状態が一番心地好く、人の愚かさや争いは今ある文明を滅ぼさんとする程度には嫌いだ。
 そう。この国に起こっていること、それは人の悪い部分が齎した物が蓄積されて、普段穏やかな精霊の堪忍袋の緒が切れたことにより始まってしまったのだ。

 それをおさめてほしい。世界樹は尊大だ。ちょっとやそっとじゃ怒りをおさめてくれないだろう。
 ショック療法ではないが、多少戦闘で発散すれば、冷静に話を聞いてくれるようになるはずだ。
 とりあえず、お祭りを楽しんで貰えたら一番何よりだが、少しでもリュグドラシェルの怒りを鎮める手伝いをしてくれると嬉しい。
 そう締めくくり、ヴェルタは皆を送り出そうとした所で、肝心な祭りの内容を言うのを忘れていた、と自分に呆れたような笑いを見せた。

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第1章 日常 『妖精の国を見て回ろう』


恵みあるところに収穫祭あり。
妖精の国でもそこに住む人々が精霊に、世界樹に感謝し、秋になると毎年行っている恒例の行事である。
色とりどりの花、色とりどりの妖精、色とりどりの飾り。
散歩するだけでも楽しめる、そんな祭りだ。
妖精がはっきりと見える人もいるらしいが、エルフや精霊にまつわる種族や職業の人以外は、光の玉に羽が生えた様な姿で見えるだろう。

食べ物や飲み物、土産物なんかも売っている。
花屋では季節問わず欲しい花が手に入るだろうし、ハーバリウムや花冠、フラワーリースなど、そのお店の人が丹精込めて作ったものが売っている。
喫茶店などでは、紅茶は勿論のこと、店先でスミレの砂糖菓子や、エディブルフラワーのゼリー、花を象ったクッキーに薔薇のジャム、花のシロップのキャンディスが。
薬草店には各種ハーブティーの茶葉や薬草など。
少し小道に入ったところにあるおしゃれなバーでは、花を飾ったカクテルや、花のシロップを使ったカクテル、オリジナルの薬草を入れたジンなども提供されている。

目で見て、食べても飲んでも楽しい、そんな祭りだ。
夜になるとまた違った雰囲気になるとか。
まずはめいっぱい、楽しんでもらいたい。
アンミタート・アケーディア

アンミタート・アケーディア(愛を求める羅紗魔術士・h08844)は妖精がいる国があるという噂を聞きつけて収穫祭へやってきていた。
それはなぜか。
運命の人を見つけるためである。
「嗚呼、これほど美しい国ならば私の求める女性はきっといるはず……!」
アンミタートは色とりどりの花壇や噴水の広場を歩き、眼福だと微笑む。
そこに、ふわりと妖精が通りかかった。
エメラルドの様な緑のワンピース、輝く長い金の髪、日を透かしたような葉の色の瞳、そしてちいさな桃色の髪飾りを右耳の上につけた、小さくも愛らしい妖精。
その妖精と、目が、あった。運命だと感じた。
「……なんて麗しいのだろう」
意識せずとも口からこぼれ出た言葉。それは妖精にも聞こえていたようで。
「あら、わたし?」
そう言いながらそばに寄ってくる妖精は満更でもなさそうな様子だった。
「そう、貴女です。貴女のその翼の輝きは、まるで朝露の宝石のよう……」
「うふふ、上手ねあなた!」
うっとり微笑みと褒めるアンミタートは妖精へと手を差しのべる。
「さあ、私を導いてくださいませんか、麗しの乙女。お恥ずかしながら妖精の国に来るのは初めてで、この国には疎いのです」
「もちろんよ、まかせて頂戴!」
妖精はアンミタートの手に座る。ワンピースの柔らかさが、妖精の暖かさが手に伝わってくる。
それだけでアンミタートはときめいた。なんと、自分の手の上に麗しの妖精が座ってくれるなどと……!
「私、インウィディア!あなたは?」
「インウィディアさん……!素敵な名です。申し遅れました。私はアンミタートと申します。お見知りおきを、姫」
うふふ!インウィディアは鈴を転がすような声で笑う。
「案内してほしいのよね、アンミタート!」
嗚呼、麗しの姫が私の名を……!アンミタートの気分は絶好調だった。
「そうでございます。妖精の国の美しさを、貴女と一緒にこの目に焼きつけたいのです」
「じゃあ私のとっておきの場所を教えてあげるわ!いい?遅れずついてきてね?」
インウィディアは手から飛び立つ。一抹の名残惜しさを感じるが、まだ時間はいくらでもある。
たくさん触れ合えばいいのだ。
「わかりました。お手柔らかにお願いしますね」
「ふふふ!さあ、こっちよ!」
アンミタートはインウィディアの導きにより、壮観な花畑や小高い丘からの景色など、一日中楽しむことができたのだ。
それもこれもインウィディアのおかげだ。感謝してもしたりない。アンミタートはちいさな手にキスを一つおとす。
インウィディアのころころとした笑い声が耳に残った。

ルナ・ルーナ・オルフェア・ノクス・エル・セレナータ・ユグドラシル
エレノール・ムーンレイカー
ステラ・ノート
エアリィ・ウィンディア
タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ

「皆で収穫祭にいかないかい?」
ステラ・ノート(星の音の魔法使い・h02321)は良く行く博物館の面々に声をかけた。
「いいねいいね!皆で行こうよ!」
その誘いにいち早く乗ったのはエアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)。
ルナ・ルーナ・オルフェア・ノクス・エル・セレナータ・ユグドラシル(|星樹《ホシトキ》の言葉紡ぐ|妖精姫《ハイエルフ》・h02999)もいいね、と頬笑んで。妖精の国なら尚更行きたい、とばかりに乗り気であった。
エレノール・ムーンレイカー(蒼月の|守護者《ガーディアン》・h05517)や、タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ(|大堅果騎士《グランドナッツナイト》・h06466)もぜひとも行きたい、と集まって、総勢五人でのお祭り巡りとしゃれこむことになった。



「成程、この国は世界樹の恩恵によって栄えているのですね」
遠くに聳え立つ大きな世界樹を眺めエレノールは頷いた。しかし、今あの樹の下では怒った精霊がいるのだろう……精霊使いであり、世界樹の力を扱う者としても見逃すわけにはいかないのだが――。
「ここまでの世界樹になるには長い歴史があったのだろう」
石碑かガイドはないのか?そうエレノールの肩へ座っているタミアスが答えた。
「その辺りの妖精に頼めば教えてくれそうではありますね」
「うむ。また後で話を聞いてみることにしよう」
今は収穫祭を楽しむことに努めよう、微笑んで仲間たちと共に散策する二人。
「収穫祭っ♪妖精さんたちも楽しそう!」
るんるん、先頭を陽気に進むのはエアリィだ。
折角ならば【|精霊交信《エレメンタル・コンタクト》】で精霊さんも一緒に楽しんで欲しい、と各属性ごとに連れ出して歩いている。
楽しそうにエアリィやほかのみんなの周りをくるくるとまわっている。
「……久しぶりにみんなとのお出かけだ」
ルナは周囲を見渡しながら他の人達についてあるいた。
収穫祭のおかげか妖精の数が多い。故郷の森を思い出してかふふ、と笑う。
「賑やかで幸福な音が溢れていて、なんだかわくわくしちゃう。ねえ、どこから見て回ろうか?」
その前で|後ろ《みんな》を見ながら語りかけるのはステラだ。
「まずは出店がいいでしょうか」
そう提案するのはエレノール。
「どこのお店も色とりどりのお花が綺麗で見て回りたくなってしまうね」
続いて頷いてステラが言う。
「あたし、お土産買いたいな、せっかくだし!はーばりうむ?だっけ?」
「ボクも読書のお供にクッキーやハーブティーなんかを見繕いたいな」
エアリィが、ルナがそれぞれ意見を出した。
そこへステラが思いついたと考えを持ちかける。
「ならまず花飾りとかどうかな、みんなでお揃いで付けて廻れたら楽しさも倍以上になるかもって思ってね」
「それ、素敵かもっ!」
「いいですね、お土産にもいくつか買いたいです」
「うん、いいね。帰っても部屋に飾れるだろうし、ボクも賛成かな」
「ふふ、この国にしかない花もあるだろうし、きっと気に入るものが見つかると思うよ」
「|私《リス》サイズの花飾りもあるだろうか」
口々に同意する仲間たちにステラも嬉しそうに笑う。
「もし荷物持ちが必要ならWZ騎士長官を出そう」
タミアスは遠慮なく言ってくれ、と声をかけた。

花飾りも色とりどりであった。
赤白、ピンクに黄色、紫や青、緑まで。
「わあ、綺麗……!」
「素敵だね」
「みんなはどれにするんだい?」
「じゃあわたしはこれで……」
エレノールが選んだのは紫色の花飾りだった。
「わ、差し色になってとっても似合ってる!」
褒めるエアリィにエレノールは少し照れくさそうにする。
「じゃああたしは白!」
「わたしは黄色がいいかな」
「ボクは赤がいいな」
「私はこの……ちいさな緑の花飾りにしよう」
それぞれ選んで耳の上に飾って、笑いあう。うん、みんな似合ってる。

「ここのお店、ハーバリウム売ってるみたいですよ」
「本当?見てってもいいかな」
「勿論!あ、この花冠可愛い……!」
「いろんなものが売っているね、目移りしてしまうよ」

皆が土産選びに夢中になる中。
「あの世界樹に実はなるのだろうか。なるのなら持ち帰って丁重に保存するのも吝かでないのだが……」
タミアスは一人、動物たちと交流をしていた。
「あの樹はね、花はなるけどすぐに雫になって地面に染みちゃうんだよ」
ちちち、小鳥が囀る。
「ふむ、そうか、それは残念だ」
「それに今はリュグ様がお怒りだから、ツタだらけで僕らしか近づけないんだ」
「そうだよ、ニンゲンなんか近づいたらツタに絡まれて動けなくなっちゃうよ」
にゃあお、猫が鳴く。
「なるほどツタ……情報感謝する」
「行くなら気をつけるんだよ〜」


「たくさん買ったね〜!」
「お腹もすいたことだし、喫茶店にでも行こうか?」
「いいですね、皆さんのお土産も見せてください」
きゃっきゃ、話に花を咲かせながら花飾りを付けた五人組は喫茶店へ向かう。
色々な出店やお土産で素敵だねと褒められたのは数しれず。妖精たちも寄ってきて祝福をくれたとか。
練り歩いて十分に楽しんだあとは疲れを癒やすに限るのだ。
「いらっしゃいませ。五名様ですね。こちらへどうぞ」
からりとベルを鳴らしながら扉をくぐると店員が席を案内してくれる。
お土産の入った花柄の紙袋を側に置いて、それぞれの席へと座った。
「美味しそうなものがいっぱいだね」
メニューを広げながらルナが言う。みんなで囲んでわいわい。
「どれにする?あたしはクッキーと紅茶!薔薇のジャムもつけちゃおうっと」
「わたしもお花のクッキーと薔薇のジャムを入れた紅茶にするよ」
「ではわたしもクッキーと紅茶を」
「ボクはエディブルフラワーのゼリーと、アップルティーを頼もう」
「私はスミレの砂糖漬けを紅茶と共に頂こう。|私《リス》サイズで。あと、段ボールにスミレの砂糖漬けを詰めてもらおうか」
注文して、品が届くまでお土産を見せ合うことに。
「みんなどんなの買ったの?あたしは後でクッキーとか紅茶とか買うつもりだよー」
だって、もういい匂いがするんだもん!とエアリィ。
「わたしは青とピンクのお花が入ったハーバリウムだよ。パパとママの瞳の色みたいで綺麗だったから、つい買っちゃった」
少しだけ恥ずかしそうにステラが言う。
「ボクはハーブティーをいくつかと、この後クッキーを買う予定だよ」
好きなものを箱に詰め合わせてもらったらしく、花のついたリボンで飾られた青いボックスを見せたルナ。
「わたしもハーバリウムを買いました。それと、花飾りを。正直、どれもこれも素敵で迷いました……」
苦笑交じりながらも嬉しそうに言うはエレノール。
「私はスミレの砂糖漬けだな」
小さい身体で胸を張ったタミアス。荷物持ちが大活躍で少しうれしそうだ。
「それと、世界樹に関するちょっとした情報ももってきたぞ」
「ああ、だから途中いなかったんだね。流石タミアスさんっ!」
頼りになる〜。なんて話していればあっという間にみんなの頼んだものが届けられて、舌鼓を打ったり、紅茶の匂いに心が癒やされたりして。
薔薇のジャムを入れた紅茶も甘くて、華やかな香りがプラスされて、身も心も温まる心地だった。

タミアスが食べるスミレの砂糖漬けのサクサクという音にみんな食べたくなって、ちょっともらったのはここだけの話。

少し開いた窓から、さわさわと葉の音と可憐な花の匂いが入り込んで、癒やしのひとときを更に満喫させてくれる、そんな時間。

第2章 冒険 『異常繁茂する植物』


目一杯収穫祭を楽しんだ能力者達。
そのまま泊まる人も、帰る人もいるだろう。

――その夜。
にじり寄る植物が、少しずつ、少しずつ街を侵略しようと蠢いていた。

朝は明けて。
妖精たちは慌てていた。
言うにはこうだ。
「リュグ様が!リュグ様がお怒りなの!」
今やもう、路地裏だけでなく、表通りまで蔦が伸び始めている。
人には被害は出ていないが、それは大精霊の微かに残る優しい心なのか、それとも。
人間達も困惑している。今まで加護してくださっていた大精霊様がどうして。
――精霊や妖精の類は自分の意思を通そうとする節がある。
そして実力行使が出来てしまうのが大精霊という存在だ。

人間達も妖精達も力は遠く及ばない。
いつしか大精霊の怒りは大爆発してしまうだろう。
その前に止めなくてはならない。能力者達は世界樹へ向かう必要があった。
しかし、まずは蔦をどうにかしなければ近づくことすら敵わないようだ。
エレノール・ムーンレイカー

「もう、ここまで……」
蔦を目の前にエルフが呟く。
エレノール・ムーンレイカー(蒼月の|守護者《ガーディアン》・h05517)は起きるなり身支度も程々に外へ出ていた。
彼女はよく妖精の国へ訪れており、この土地の地理には詳しく、だからこそこの蔦の大繁茂の異常性には――収穫祭中も蔦の異変を時折観察していたわけだが――眉を顰め苦渋の色を示した。
|一晩でこれだ《街中まで蔦が来ている》。
この状況は極めて不味い。何とかして大精霊様の怒りを鎮めなければ、いずれこの国は蔦に覆われてしまうことだろう。
苦い表情のまま口元へと手をやる。
星詠みはこう言っていた筈だ。人の成すことによって今回の異変を引き起こしているのだと。
そう。そもそもの話として。
|リュグドラシェル《竜血樹の大精霊》、妖精、人間との間の諸問題により軋轢が生まれ、そこからこの異変に繋がってしまったとするならば、原因であるものを根本から改善しない限り、異変の収束は難しい。
たとい何もせず今回上手く収まったとしても、再び異変が起きてしまうことは大いに考えられる。
さて、どうするか。

――国である限り、治める者は確実に存在している。どんな国であろうとも。
考えた末、エレノールは国の長である大妖精の元へと向かうことに決めた。
代表へ面会し、妖精の国が抱えている問題を聞き出さなければ解決の糸口は見えてこない。
それに、此方――妖精、人間側から歩み寄る姿勢を見せなければ、リュグドラシェルとの溝が埋まることは到底無いと言っていい。
つまるところ、改善案を提示してもらわない限りリュグドラシェルの怒りを治める方法はないということだ。

大精霊の住む所。政府のような役割の建物かと思いきや、小さな豪邸の様なものだった。
|政《まつりごと》やそれに関係するものは人間が担っているのだとか。妖精は気ままなものなのだ。統治なぞ向いている筈がなかった。
急に来たにも関わらず、妖精達は快く大精霊のもとへエレノールを招き入れる。妖精曰くエルフは友達、なのだそうだ。
「突然の訪問でしたのに、受け入れてくださりありがとうございます」
大妖精の前へ片膝を付き礼をするエレノールに大妖精――妖精達はサージュ様と言っていた――は困った笑みを浮かべ手を横に振った。
「やめてちょうだい、アタシそんなに畏まられるような妖精じゃないわ」
はて、人間から聞いた話では大精霊は男ではなかったか。見た目も中性的だが、確かに男のように見えたはずだ。
「ほら、立って?なんならソファに座って?話があるんでしょう?」
大方想像はついてるけれど。いえ、十中八九アレのことでしょうけど。
言いつつ、サージュが促した。
「んふふ、驚いたわよね。アタシのこと」
サージュは先にソファへ座って悪戯に笑う。エレノールも言葉に甘え、向かいのソファへと座る。
すると小さな妖精がやってきて、紅茶を置いていった。
「……いえ、そんな」
「正直に言って?」
「……少し」
まずは軽いやり取りから。エレノールの答えにサージュは満足そうに口角を上げ、紅茶を飲み、それから本題を切り出した。
「リュグ様の事でしょう?蔦、あんなに伸ばしちゃって、今回は相当お怒りのようね」
「……前にもあったのですか」
嫌よ、楽に喋ってちょうだいな。……わかりました。
「そうなの。これが初めてじゃないのよね。困ったことに」
「お怒りになられた心当たりは……?」
「そうね。こちらもわかっているのよ。本来妖精も自然を尊ぶ生き物。けれど人間が観光に手を付けてから、世界樹の機嫌が悪くなることが増えたわ」
アタシの代じゃないのだけれどね。資金繰りで楽できるのと、楽しいことが好きな性格が悪い方向に働いちゃって。
サージュが眉を下げる。
「妖精達にも掃除とか、整備とか頼んでいるのよ?もちろん人間にも。でもほら、この国に来るってことは|そういうこと《妖精に気質が似ている》じゃない?」
「それは確かに、国民性となりうる要因ではありますね」
「……こんなこと、外のアナタに聞かせるものではないのだけど」
エレノールは紅茶に手を付ける。ちょうどいい温度だった。
「人間の好き勝手を野放しにしてしまったのがいけないわね。アタシも悪いわ。妖精だから許して……なんて言える立場にないわ。
けど、人間の力なくしてここまで国を大きくすることは出来なかったし、存続も出来ていないし、でもリュグ様は今までで一番お怒りだし」
ああもう、とサージュは頭を振るった。
「お互い、歩み寄るしかないでしょう。決めるものをきっちりと決めて、実行する。そうすれば、きっといい方向に向かうはずです」
きっぱりとエレノールは伝える。妖精の国がなくなってしまうのが一番いけないことだから。
「そうね、そうよね。なんでアタシ妖精なのかしら。もっとこう、種族が違えばこんなこと起こらなかったのに」
「話しましょう。人間とも。妖精も人間も、大精霊も、もっと対話が必要だと、私は思います」
エルフの真っ直ぐな目に射抜かれて、大妖精はバツが悪そうに頭を掻くしか出来ない。
「……部外者が偉そうに言って申し訳ありません」
真っ直ぐな目が逸らされて、そして口から出た謝罪。サージュはいいのよ、と言った。
「言い訳がましくなっちゃうけれど……妖精は好き勝手する子供みたいなものなの。多分に漏れずアタシもそうなんだけど……統率するのって難しいのよ。慕われてるはずなんだけどね」
「それは、人間だって難しいでしょう」
「上に立つ妖精じゃないのよ。アタシはね」
それだけ自覚出来ているならいいことだと思って?
「それだけ自覚出来ているなら出来るはずです」
サージュは穏やかな顔を浮かべ。
「そうね」
それだけ言って紅茶を飲み干した。

アタシ、人間と話してくるから。リュグ様のことよろしく頼んでいいかしら。
一方的とも取れる事を一方的に言うだけ言って、エレノールを見送りがてらサージュは飛んでいった。
うーん、確かに妖精だなあ……。もう見えなくなった背中にエレノールは苦笑しつつも頷いて、世界樹の方向へ歩を進める。
蔦をかき分けたどり着いた|行き止まり《蔦の壁》。
【|神聖竜詠唱《ドラグナーズ・アリア》】を発動させ、蔦を通じて|世界樹《リュグドラシェル》とのコンタクトが取れるよう願う。
エレノールは目を瞑り静かに手を組んだ。
「リュグドラシェルよ。あなたの怒りはごもっともです。しかし我々もこの状況に深く反省をしております。どうか、対話の為に道を開いてくださいませんか」
確かな祈り。通じたのかどうかはわからないが、人ひとり通れるくらいの道が出来た。
もしかしたら、大妖精の言葉を、自分の言葉を、世界樹も聞いていたのかもしれない。穏やかな対話を願って、エレノールは足を踏み出した。

エアリィ・ウィンディア

蔦の状況を知り動いたのは一人だけではなかった。
同じくして収穫祭を楽しんだエアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)も、大精霊と話し合いをするべく世界樹へ向かって歩くが、如何せん蔦が絡まり合い行く手を塞いでいる。
昨日までなかったものがある。それは大精霊の魔力が強いことを示していた。
(……大精霊、か)
兎にも角にも世界樹へたどり着かなければ始まらない。
こくりとエアリィは頷くと空中へ浮遊する。蔦の中心点、そこには確実に空白がある。すなわちそこが世界樹の根本だ。
上から見下ろす形となった蔦は、広がり方が視覚的にわかりやすくなり、その範囲の異常さが余計に際立った。
「うーん、とっても怒ってるのだけはわかるなあ」
眉を下げながらエアリィは蔦の元へ目を走らせる。
――みつけた。
そのまま空間へと降下していく。近づけば黄緑の髪をゆるく二つに結んだ少女が、樹の枝へ座っていた。頭からは枝の角が、腰からは樹の幹の様な尻尾まで生えており、精霊というより竜の風貌に近い印象を受ける。
エアリィはそっと着地すると優しく話しかけた。
「こんにちは。あなたが大精霊さん、だよね?」
上からちらりと青い少女を一瞥した緑の少女は、静かに口を開く。
「……そう。リュグはリュグドラシェル。あなたはなんの用で来たの」
さっきも話したいって人がいたから通してあげたんだけど。そのうちくるんじゃない。
リュグドラシェルはぶっきらぼうに言いながら目をそらした。どう見たって怒ってますよな態度だった。
「あたしはエアリィ。大精霊さんが怒ってるってきいたから、何があったかよかったら教えてほしいの。だめ、かな」
首を傾げ、心配そうに話すエアリィに、リュグドラシェルはだんまりを決め込んでいる。
「……そうだよね。あたしとは初対面だし……それなら、あたしのとっておきの話をしようかな」
と言っても、日常の話なんだけどね。
少し悲しい気分を切り替えてエアリィは世界樹の根本へ腰掛けた。
そうして目を閉じ、手を組む。ふわり、精霊がエアリィの周りへ集まってきた。
赤、青、緑、白、黄。色とりどりの光達はエアリィに寄り添うように空中へ留まっている。片手を伸ばし光に触れたエルフは、くすぐったそうに笑う。
「ふふ。うん。楽しい話をしよう」
まずはね――精霊達と一緒に鬼ごっこをした話からね。
それから、魔法の練習をした話、悪戯をして精霊と一緒に母親に怒られた話――時に懐かしそうな目をしながら、時に苦笑交じりの顔をしながら、大精霊に楽しい気持ちを思い出して欲しいと、自分はあなたの力になりたいのだと想いを込めてエアリィは語る。
話を何も言わずに聞いていたリュグドラシェルにはしっかりと見えていた。腰掛けたエルフが精霊達と笑いあっている光景が。
それにつられてか少しだけ、リュグドラシェルの口元が緩む。
「……教えてほしいな。あなたになにがあったのか。困ってることがあるならお話を聞くし、相談にも乗れるかもしれないから」
自分の話を語り終えたエアリィは膝を抱えて再び大精霊へ呼びかける。声には心配の色が乗っていた。
数秒の沈黙の後。
「……キミがはなしてくれたなら。リュグもはなしてあげる」
大精霊は口を開いた。上から声が降ってくる。
ドラゴンを倒し、この地をおさめた時のこと。妖精たちによって発展していく街のこと。人間が入り込んできて好き勝手やり始めた時のこと。
最初は優しい語り口だったものが段々と怒りを帯びていく。
「ニンゲンはきらい。争う。自然を汚す。途中はよかったのに。調子にのったらすぐに何もかもをこわしていく。リュグの|もの《土地》なのに」
リュグドラシェルはぎゅうと尻尾を握りしめる。エアリィは魔力の高まりを感じた。
「リュグ、もう我慢できない」
純粋な怒り。きっと街では蔓が蠢いていると容易に想像が出来た。
「ま、まって、そんなに力を込めたら……!」
遠くから響いてくる破壊音。エアリィは慌てて立ち上がった。
事が起こってしまった以上、怪我人がいないことを願うしかできない。そんな自分が歯がゆい。
「こんな|もの《建物》、いらない」
いらない。いらないの。樹の枝に座ったまま少女はつぶやく。
エアリィは樹を見上げ、曇った顔でリュグドラシェルを視界に――入れる前に蠢く蔦に足を絡め取られそうになり、第六感により勘づき空中へ逃げ、浮遊したまま見やすくなった大精霊の様子を確認する。
リュグドラシェルは怒りに囚われている様子だった。エアリィは声をかける。名前を呼ぶ。
しかし、返事は返ってこない。それでも声をかけ続ける。
戻ってきてくれる事を願って。
お願いだから。これ以上は。
――これ以上は、あなたまで壊れちゃう――!

第3章 ボス戦 『竜血樹の精霊・リュグドラシェル』


ミシミシと音を立てながら幹に罅が入っていく。
リュグドラシェルの放つ怒りの魔力は色濃く、遠くにある街の方まで届いていることだろう。
再び、街の方で何かが壊れる音がした。土煙が上がっているのが確認できるかもしれない。一体街ではどれだけの被害が起きているのか。
大妖精の胃が心配になるが、大元を断たなければ元も子もない。

リュグドラシェルはドラゴンを倒す程の力を持っている。
少しくらい力を入れすぎたって大丈夫なはずだ。
正気を、冷静さを取り戻させなければきっと、街は、国は、崩壊の一途を辿るだろう。

蔦が、根が、感情を現すかのようにうねっている。
人と、妖精と、大精霊との調和を取り戻さねば。
エレノール・ムーンレイカー
エアリィ・ウィンディア

エレノール・ムーンレイカー(蒼月の守護者・h05517)は道を走っていた。幸いにも開けた蔦は閉じようとはしていない。
リュグドラシェルが怒りの頂点に達しようと、興味は人間の、いや、街の方にあるらしい。裏を返せば、それほどまでに人工物に恨みがあるということなのだが。
遠くで建物の崩れる音が此方まで響いて来る。きっと大妖精がどうにかしてくれていることを、そして巻き込まれた人がいない事を願って、エレノールは険しい顔で先を急ぐ。
……後で大妖精には胃薬でも渡したほうがいいかもしれない。
それに、先程知り合いの精霊使いが空を飛んでいるのを見た。恐らくもう既にリュグドラシェルと相対しているだろう。密かに魔力を探知する。リュグドラシェルの魔力に隠れているが、確かにいることを確認した。
尚更、急がなければ。
話をするにも、どうにかこの状況を打破しないと始まらない。
対話の道を切り開くため、リュグドラシェルによる慈悲の上で開かれた道を進む。

「わぁっ!?」
遠くから聞こえる地響き、近くで湧き上がる濃密な魔力。エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)は驚きの声をあげた。
流石にこれは……街が崩れてしまうし、リュグドラシェルも潰れてしまう可能性もある。
エアリィは上を、リュグドラシェルを見上げる。地を蹴り大精霊の元へ飛んだ。近くへ、声の届く場所へ。
「ね、ねえ!話を聞いてっ!そんなに怒ったら精霊たちも怯えちゃうから……!」
目を合わせる。見えたのは怒りに満ちた瞳。目の前のエアリィなんてちっとも目線に入っていないようだった。声も然り。
「やっぱり……ううん、諦めちゃだめ。届かないなら、怒りで冷静になれてないのなら!」
思いっ切りぶん殴って正気に戻すしかない!

エアリィが息を吸い込む。口から飛び出てくるは高速詠唱の乗った調べ。
先ほどとは違う内容の|六芒星空想黙示録《ヘキサドライブ・エピックリンカー》。戦闘向けに語られるそれは、エアリィと精霊たちの覚悟が詰まっていた。
広がる草原、沢山の精霊たち。こんなにもエアリィに勇気を与えてくれる存在は他にはない。
精霊銃を構え、ためらいもなく撃つ。狙うは腕と脚。
それくらいじゃどうにもならない相手だと言うことは分かっているけど。
腕、脚を撃たれた大精霊が呻く。エアリィがやっと視界に止まった。
お返しとばかりにリュグドラシェルは霧状のブレスをエアリィに浴びせかけ……霧に含まれる腐食性の高い胞子が迫る。エアリィは咄嗟に距離を取ろうと空を蹴ったーーそこへ白い髪が割り込んだ。
エアリィが目を見開く。
「エレノールさん……!」
そこには、空に浮かびながら、右手に|魔法陣《ルートブレイカー》を浮かべ、霧状のブレスへ向けているエレノールがいた。
「すみません、エアさん。おそく、なりました」
不可視の炎がブレスを飲み込んでいく。これで緑腐のブレスはもう使えない。
エアリィの安心したような、元気な声がエレノールへと返る。
「ううんっ、そんなことない!来てくれたんだね、とっても助かるよ!」
二人は目を合わせ、微笑みあう。仲間がいるって、こんなに心強い。
「どうして、じゃまをするの」
リュグドラシェルが不機嫌な声で言う。攻撃を防がれて初めて声を発したのだ。
「どうしてって……あなたを止めるためだよ」
「言ったはずです。わたしはあなたと話したいと」
改めて距離を取った二人は口々にそう伝える。
リュグドラシェルは首を横に振った。
「リュグ、いまは話したくない。壊さなきゃ、いけないから」
そうして目を細めるとまた口を噤む。濃密な魔力が揺らぐ。また遠くから何かが壊れる音が聞こえた。しかし目線は二人を捉えていた。
「……致し方ありません。エアさん、協力をお願い出来ますか」
「もちろんだよ!リュグドラシェルさんを正気に戻さないと、お話してくれないみたいだしね」
二人がうなずきあう。この状況を長引かせない為にも、一撃で大きなダメージを与える必要があった。
「接近するなら速さが必要だね。撹乱も含めて、あたしにまかせて!」
「ではわたしは、少しだけ時間をいただきますね」
「じゃあ、作戦開始、だね!」
エアリィとエレノールが二手に分かれる。大精霊の眉間に皺が寄った。何をする気だ。
すかさずエアリィが高速詠唱を始める。隙は少ないほうが良い。
エアリィの周りに六色の光が集まり、力を与えていく。身体が軽くなる感覚。に、と思わず笑顔が浮かんだ。
「リュグドラシェルさん、こっちだよ!ほらほら、捕まえてみて!」
空中を飛び回る。残像が尾を引く。蔦が空を切る。さあ、鬼ごっこの始まりだ。
それはエレノールの準備が整うまでの時間稼ぎ。

一方、エレノールは錬成剣をすらりと抜きさり、剣へ周りのインビジブルのエネルギーを吸収させていく。どうやら精霊も力を貸してくれているようだった。
だが、そのエネルギーはリュグドラシェルの興味を少なからず惹いてしまう。
エレノールは予想していたのか、襲い来る蔦や根を躱していく。第六感も大いに役にたっていた。が。
「……うるさい。うるさい、うるさい。リュグの、じゃましないで!」
リュグドラシェルが耐えかねて叫んだ。叫ぶ度、木の蔓で編まれた竜の翼が、尻尾が、碧焔色に輝いていく。どうやら本気で此方を潰しにかかろうとし始めたようだ。
まずい。エアリィが止めに入ろうと接近する。しかしエレノールはこれをも読んでいた。
即座にその身体から|聖なる波動《ホーリー・ウェーブ》を放つ。光輝く波動が、リュグドラシェルを通過する。ちょこざいな。リュグドラシェルは迎え撃とうとしてーー碧焔が消え去っていることに目を見開いた。まさか。
「お待たせしました。エアさん」
エネルギーチャージし光の刃を携えエレノールが空を蹴る。
「うん。一気に決める!」
魔力溜めをし浄化の力を込め、全力魔法で強化十分な剣を手にエアリィも空を蹴る。
二人は各々に輝く剣を構え、リュグドラシェルへと迫っていく。そして。
「ーー霊光剣・星割りの光刃」
「ーーいくよっ、|六芒星増幅術精霊斬《ヘキサドライブ・ブースト・スラッシュ》!」
二方向からの光の剣がリュグドラシェルを斬り去った。
リュグドラシェルは、何も出来ず、ただ光に呑まれてーー

「ふう……リュグドラシェルさん、正気に戻った、かな」
地に伏せた大精霊を優しく起こしながらエアリィは語りかける。
「……リュグ、は、リュグは……」
起こされてへたり込みながらうつむくリュグドラシェルにエレノールも声をかけた。
「……どうか、聞いてください。リュグドラシェル」
リュグドラシェルは身を固くした。怒られる、と思っているようだ。エレノールが少しだけ苦笑した。
「リュグドラシェル。確かに、彼らはあなたの恵みを当然のものとし、好き勝手をして調和を乱してきました。あなたの怒りはきっと、正しいのだと思います」
思わず、といった様子で大精霊は顔を上げる。怒らないの?と表情が語っていた。
「ですがーー今回の件を受け、大妖精も流石に深く反省し、人と妖精の間できちんと話し合いをし、これからの在り方を共に模索し始めています」
エレノールは大妖精へ目線を合わせるようにしゃがむと慈愛の表情を向ける。
「ですから、どうか彼らをまだ見切らないでもらいたいのです」
「そうだね。人間は確かに自然を汚すことはあるけど……でも、同時に自然を生もうとする人もいるんだよ」
大妖精の隣で優しく微笑むエアリィもまた、リュグドラシェルの顔を見つめていた。
「ええ。そして再び人と妖精が、そして世界樹が調和する未来があるのならば」
エアリィの言葉に頷いたエレノールが続ける。
「あなたの方からも、それを示していただきたいのです」
この願いを、受け入れてはいただけませんか。言い、そして微笑んだ。
主に大妖精の為にも。
静かに話を聞いていたリュグドラシェルが口を開いた。
「……リュグは、なにをしたら、いい?」
弱々しい声だった。
「そうだなぁ。怒れることも沢山あると思うけど、見守っててくれるととっても嬉しいな」
エアリィはむむ、と考えるような顔の後、首をゆるく傾げ、再び笑顔を浮かべる。
「みまもる……怒れたら、どうすれば、いい?」
「大妖精に伝えて……いえ、リュグドラシェルもお話しましょう。お互いの考えを知らないと、前に進めませんから」
「そうだねっ、お話、大事かも!今のあたし達みたいに!」
「うん、話す。リュグも話す。あと、ごめんなさいしないと、いけないね」
リュグドラシェルは何度も頷いた。さあ、考えがまとまったなら、実践しないとね。

それから、エレノールとエアリィの働きによって、人間の長、シジマと大妖精、サージュ、そして大精霊、リュグドラシェルの三人のお話し会が取りなされることとなった。
世界樹の下。紅茶を飲みながら穏やかに話し合いは進み、これからの展望がまとまっていく。一番の大きな決まりごとはお互い連絡を欠かさないこと。
定期的にお話し会を開催すること。そして、自然に敬意を払うこと。
話し合う皆は笑顔だった。
主にサージュが良い舵取りとして働いてくれたのは大きかっただろう。
リュグドラシェルが謝って建物を直すことを言い出したのもいい空気の切っ掛けになったかもしれない。
兎にも角にも、この先平和が続くことは決まったようなものだ。

こうして、めでたくこの話はこれでおしまいとなる。
優しい世界がまた一つ、保たれることとなったのだ。



ーー余談だが、皆が集まった時にサージュが「いや〜ん、リュグ様〜!」と見るなり感極まって速攻抱きつきに行こうとしていたとか、なんとか。

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