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奪われた竜漿兵器の使い道は
「今回は、皆さんに√ドラゴンファンタジーへと向かっていただきます」
アクシア・メロディールーン(はつらつ元気印なルーンソリッド・アクセプター・h01618)がそう言って、口を開いた。
「実は、完成したばかりの高性能な自動詠唱剣が、突如現れたモンスター集団によって、奪われてしまって……それで、皆さんに助けていただきたいんです」
奪われたのは、グリーダル武器商会の運ぶ、自動詠唱剣だ。
幸いにも……かどうか、わからないが、威力が普通の詠唱剣よりも高いらしい。
「それさえ、気を付ければ大丈夫らしいです。ただ……もしかしたら、それを扱う敵によっては、その真の力を発揮させることができるかもしれません。私の方では、どれがどんな力かは見えませんでしたが……その武器を利用して、モンスター集団が町を襲うのが見えました。幸いにも彼らが最初にたどり着いた先はダンジョン。しかも、彼らは金の亡者らしく、ゴールドラッシュ的な洞窟なのだと吹聴すれば、罠に引っかかってくれるようです。皆さんには、その誘導と罠の発動をそれぞれで担っていただけると助かります」
奥へ奥へと向かうほどに、掘れる金の大きさが大きくなるそうだ。それを利用すれば、彼らをとどめることが出来るだろう。
「けど、ここ……実は人食いダンジョンなので、本当に気を付けてくださいね?」
なんだか、物騒な話をしている。
「うまく罠に引っかかったら、今度は私達の出番です! さくっと雑魚敵を始末して、更に彼らの背後にいるボスを倒してください。そうすれば、この戦いは終わります」
アクシアは続けた。
「人の武器を奪って、町を襲うなんて、本当に腹立たしい敵です。ダンジョンの罠にひっかけて、がっつんと痛い目見せてあげてくださいね!! 皆さんのご武運、祈っています!!」
そういって、アクシアは出かける√能力者達を見送ったのだった。
これまでのお話
第1章 冒険 『ゴールドラッシュダンジョン』
外套の裾を翻し、埃に塗れたダンジョンからの帰還者を装うのは、|コルヴス・ペネグリーヌ《Corvus Penegrine》(放蕩鴉・h09224)だ。
「困った話だ。演技は得手ではないのだが」
しかし、やらねばならない。人々の暮らす町を、相手にみすみす奪われる訳にはいかないのだ。
「おい、そこの!! 何をしているっ!?」
どうやら、お目当ての相手に出会えたようだ。敵の手には奪われたと報告のあった自動詠唱剣が握られている。
それを見て、笑みが出そうになるのを堪えつつ、コルヴスは、その両腕を上にあげた。
「降参だ。コレをやる。見逃せ」
コルヴスの手には、錬金術で即席に仕立てた金鉱石を握られており、きらきらと光を反射させていた。そのようにするのが良いと言わんばかりに。
「ほう、良いじゃないか、その金……」
どうやら、上手く乗ってきてくれたようだ。ならばとコルヴスは続ける。
「見逃してくれるなら、金鉱脈まで案内してもいい」
「おお、案内してくれるか……なら、そこまで連れていけ!! これは俺とお前の約束だからな?」
「わかっている」
声が震えてしまっただろうか? いや、気づかれていないのならいい。
しかし……と、コルヴスは思う。
(「例え演技でも、金を、他人に渡すなど! 今の内に精々喜べ。後で対価は支払ってもらうからな」)
煮えたぎる思いを胸に秘め、コルヴスは、目の前の小部隊を、そのまま目的地であるダンジョンへと連れていくのであった。
意識を集中させて、ちょうど良いポイントを──貫く!
アルカウィケ・アーカイック(虚像の追憶・h05390)は、そうやって、このダンジョンの発掘を行っていた。
「採掘もなかなか、楽なお仕事ではないですね。おまけにこの洞窟は、人食いとのいわくつきですし」
と、小さく呟いたそのときだった。
「おい、そこのちっさいの! そこで何をしてるんだ?」
「ってわああ、誰ですか?! 崩れちゃいますよ!!」
アルカウィケは、突然声をかけられ、びくっと飛び上がる。彼の近くにあった箱には、金鉱石が入っていた。ちなみに大きなものは、奥の方から掘り出して持ってきたものだ。
「金鉱石……だと? ここで掘り出せるのか?」
よく見ると、声をかけた冒険者らしき者達は、全て自動詠唱剣を手にしている。
「金は、もっとこういう場所に……といっても、ここら辺はもう、金鉱石でもビーズ大のものしか採れませんけど」
アルカウィケは思う。
(「あれは詠唱剣。確か彼らに会ったら、奥に誘導すればいいんでしたっけ……?」)
だからこそ、こう付け加えた。
「でも……さっきこれくらいの金塊を抱えた人が、あちらから出ていくのを見ましたから、奥にはもっとずっと沢山の金が眠っているはずです」
「なんだとっ!? おい、お前ら、急いで向かうぞ!! おっと、これはお前にはもったいないからもらってくぜ?」
「あ、えっと、お気をつけて……?」
思わず、そのまま見送ってしまったが……。
「……見送ってしまいましたが、今、僕が集めてた金塊石を横領していきましたよね、彼ら」
ちょっぴり、かっちーんと来ながら、アルカウィケは、まんまと奥へと向かう彼らにほくそ笑むのであった。
「ほほぅ……ここが金が沢山掘れるという洞窟ですか。鍛冶屋として、使う金を大量に確保したいものね」
ヘルメットを被り採掘道具一式を腰に巻いてるのは、|杉崎《すぎさき》・ひなの(しがない鍛冶師・h00171)だ。
その重さによろけながら、洞窟に入ろうとする。
「おいお前。そこで何をしている?」
新たな一団を一瞥する。彼らは持っている。あの、自動詠唱剣を。それを確認すると、ひなのは、よろよろとしながらも。
「もしかして……知らないのですか? この洞窟、金がいっぱい掘れるんですよ」
「なに!? それで、嬢ちゃんはもしや……」
そう口にする男に、ひなのはか弱く。
「金が欲しくてぇ……」
というと。
「こんな子が行くのかい? 冗談だろ?」
と、一段の一人がそう呟いたが、そのリーダーは違った。
「どいてな! その金は俺達がもらってやる!! お前はせいぜい、残りカスでも掘ってな!!」
どんと押されて、ひなのはふらふらと道の端っこに追いやられる。
一団はそのまま、洞窟の奥へと向かっていった。
しかし、これこそが、この作戦の重要な部分。ひなのは、ニヤっと笑みを浮かべて、そろそろと引き上げていく。
「ただ、自動詠唱剣はどんなのか気になるかな。もし可能なら、どういう剣でどんな効果なのか、商会から聞いてみたいわ」
どうやら、鍛冶師であるひなのには、彼らの持つ自動詠唱剣の方に興味があるようだった。
第2章 冒険 『ダンジョン内を駆け抜けろ』
√能力者の活躍により、多くの侵略者達を罠に仕掛けることが出来た。
後はこのダンジョンから逃げるのみ。
後方からは、ダンジョンに食べられずに済んだ生き残りが、罠に仕掛けた三人を追いかけてきている。
「貴様ら、逃げるなっ!!」
捕まる前に逃げきれれば、後はどうにでもなるはずだ。しかも、このダンジョン……崩れてはいないか?
とにかく、ダンジョンのトラップを乗り越え、背後に迫る侵略者達に近づかせないよう、このダンジョンから脱出するのだ!!
●マスターより
皆さんを追いかけている追手は少なめです。ですが、捕まったらヤバいので、捕まらないよう、ダンジョン脱出を心がけてください。
また、ダンジョンのトラップを利用して、追手を撒くことも可能です。こちらも良ければご利用ください。
皆さんのダンジョン脱出なプレイング、お待ちしています!!
「ふふ……来たわね。とりあえず逃げますか」
ひなのは、先ほどのか弱い演技はどこ吹く風。ひなのの本来のキビキビとした動きで、他の仲間が選ばなさそうな道を突き進んでいく。
鉱山ダンジョンに入った際に、このダンジョンの罠が仕掛けられていそうなところは、既にピックアップしてある。
その地図を頭の中で思い出しながら、追って来る者達の攻撃を避けていた。
「ほらほら、こっちよっ!!」
「あいつを捕まえろ! 労働力が増えるのはありがたいからな!!」
冗談じゃないわよと、ひなのは心の中で少しむかつきながら、彼らを誘い込む。
ひなのの誘導先は、なんと、ダンジョンの袋小路。少し崩せば先へと進めそうな雰囲気を感じるが……。
「へへっ……覚悟しろよ、嬢ちゃん……」
下衆な笑みを見せる敵を気にせず、ひなのは、その改造カバンから、手にハンマーやツルハシを持った素体が現れた。そう、それがひなのの|お呼び出し《オヨビダシ》なのだ。
「なっ!?」
改造カバンから、手が伸びる。これは、Ankerの姉のものだ。
「はい、どうぞ」「ありがとう、まなみ」
そう、ひなのにもハンマーやツルハシが渡される。それを振り回し、追ってきた者達を追い払う。が、それも一瞬である。
「くそっ!? そんな力があるとは……!!」
気が付けば、素体達は、その先の壁を壊し、次のフロアへとつながる通路に繋げていた。
「それじゃあ、またね。皆さん!!」
そこに設置してある罠を起動させ、ひなのはできた通路を通って、無事にそのダンジョンから逃げ出すことに成功したのだった。
「お、覚えてろよ――!!」
ひなのの背後から、そんな悔しそうな彼らの叫び声が、響いたのだった。
「約束通り案内はした。無事帰してやるとまでは言っていないが」
ダンジョンの最奥へとターゲットを案内したコルヴスは、そう彼らに告げる。
(「優先すべきは脱出だ。いっそトドメは、ダンジョンに任せてしまおうか?」)
そう思いながら、グラグラと壊れ始めたダンジョンからコルヴスは逃げ出す。
「なっ!? まさか、お前……!! 罠にかけたな!! 捕まえろっ!!」
侵略者達は、すぐさま逃げるコルヴスを追いかけ始める。コルヴスは先ほどの調査で得た最短ルートを逆戻りしながら、ダンジョンを駆け抜ける。
もちろん、トラップに引っかかるという間抜けなことはしない。走りながら、愛用の詠唱錬成剣『Azoth-Replica ver2.2』へと早業で薬品を調合した試験管を装填していく。
更に|戦闘錬金術《プロエリウム・アルケミア》を発動させ、詠唱錬成剣『Azoth-Replica ver2.2』を『|対標的必殺兵器《ターゲットスレイヤー》』に変形させ、敵集団目がけて、錬金したばかりの毒の入った特製弾を放った。
「ぐおっ!?」
「うああああっ!!」
気化した錬金毒が爆発的に広がり、敵の動きを鈍らせていく。何故なら、その毒には『特製の麻痺毒に幻覚剤』が入っているのだから。
「迷宮の中で恐怖に惑い、果ててゆけ」
静かにそうコルヴスが言い放つ。その隙にコルヴスはしっかりと撤退し、ダンジョンの外へと無事脱出を遂げる。
「錬金毒の効き目の程度はともかく、撤退できれば問題ないからな」
彼らの最後はわからないが、まあ、精々地獄で楽しんでくれと思いながら、未だ振動し続けるダンジョンを振り返ったのだった。
「このダンジョンとやらから脱出するという任務……いささか難儀なものよ」
しかも、敵はダンジョン内に置いていくというのは、|鬼臨坂《きりんざか》・|弦正《げんじょう》(金輪際・h07880)には、やりづらさを感じていた。
ならばと、見方を変える。
既に弦正は、後もう少しというところで、陣取っている。天井からの崩れを見ると、あまり時間はないようだ。
だが、そんな中でも、逃げようとする侵略者達が迫ってきた。
そう、弦正が選んだのは、|逃げよう《・・・・》とする侵略者達をここに押しとどめる。あるいは切り捨てるということ。
例えそれが、危険なことであろうとも、それが弦正にとっての矜持なのだ。
「よし、出口だ!! このまま逃げる……ぞ……?」
そこにゆらりと立ちはだかるように姿を現すのは、弦正だ。
「御免仕る」
三倍もの俊足で弦正は駆ける。
「なっ……!?」
それだけではない。装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃でもある鬼臨剣法・抜刀術でもって、妖刀『八咫月』で切り捨てたのだ。
「これで憂いは消えたか」
ダンジョンが消えるその前に、ギリギリの所で弦正もまた、出口から飛び出し難を逃れたのだった。
第3章 ボス戦 『堕落騎士『ロード・マグナス』』
「まさか、手配した者共が、こんなダンジョンに誘い出されてしまうとはな……」
そこに現れたのは、この作戦の首謀者でもある堕落騎士『ロード・マグナス』であった。
「まあいい……この剣の威力を確かめるにも良い機会だ。お前達にはその礎となってもらおうか……」
ロード・マグナスの手には、侵略者達が持っていたのと同じ自動詠唱剣が握られていたのだった。
●マスターより
ここでは、自動詠唱剣を手にした堕落騎士『ロード・マグナス』と戦っていただきます。彼は、その剣の真の力を引き出し、通常の√能力にプラスして、3倍の威力のある攻撃を仕掛けてきます。全てかなり手堅い攻撃をしてくると考えて行動をお願いします。
いよいよ最終戦。皆さんの熱いプレイング、お待ちしています!!