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不実に燻す

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薄野・実

 竜巻に囚われたのだと――蒼白にされたのだと――意識をする事が出来たのは数分前であったのか。或いは、数秒前、未だに朦朧としている頭とやらをハッキリさせようと試みた。試みたのだが、酷使しようとしたのだが、如何にも、嫌な予感からは逃れられない。逃れようとしても、足掻こうとしても、全ては薄野・実、己の蒔いた種であった。いや、勿論、これはガラクタを、石ころを、ダイヤモンドにするかのような所業である。これは非合法を、混沌を、形作る為の儀式である。つまりは、僕は『取引に応じて』しまったんだ。取引に応じて、幼馴染と別れた後、滅裂な道とやらを這いずるかのように進んできたのだ。今の僕はいったい、どのようにされている。まさか、理解出来ていないとは、口が裂けても。四肢を拘束されているんだ。取引の『通り』にされているんだ。即ち、此処は暗黒商社アルコル――秘密結社プラグマ傘下――の拠点。手術台、磔にされている哀れな犠牲者は、つまり僕は……渾沌のように回れもしない。
 四肢が動かせないのなら、あとは目の玉をぐるりとやる他にない。痛いほどに、ブレるほどに、眼球を右か左へ転がしてみた。さて、ようやく、見えてきたのは白衣を着ている|戦闘員《なにもの》か。在り来たりな、よくある『お返事』をしたところで威圧的な気配を覚える。|怪人《●●》だ。爺さんと取引をして、僕とも取引をした死の商人。ブルースクリーンでも凝視しているかのような、そんな不快感にさせられる龍の輪郭。嘲笑するかのように揺れていたのは、果たして、精神的なものか、振盪していたのか。『やれやれ、此処まで運ぶ身にもなってほしいものだ。しかし、このディーファ、怪人として、|白青龍《プラチナムドラゴン》として、仲間を歓迎する準備程度は惜しまない』取引の内容は覚えていた。今から僕は怪人細胞を植え付けられ、僕ではなくなっていくんだ。確かに、最終的には、僕は僕を失くしてしまうかもしれない。けれども、易々と、僕を手放すつもりはないと言っておいた。『申し訳ないが、我々は、其処までの技術を有していない。何せ、お前にはしっかりと怪人をしてもらう予定なのだ。じっくりと、英雄気取りのように、馴染ませてやるから我慢しない方が身の為よ』戦闘員どもの手によって得体の知れないものが、怪人細胞が注射された。『馴染むまでの時間が気になるのか。個体差によるが……お前の場合は、細胞が細胞故に。長引く可能性か高い。せいぜい、愉しんでくれると良い』声が、跫音が、遠退いていく。戦闘員どもの影も失せ、最早、オマエが只のひとつ。
 孤独……もしくは、細胞単位で行われている、蟲毒。それと並行しているのが頭蓋の開きであったのか。怪人が居なくとも、戦闘員が居なくとも、麻酔が無くとも、|洗脳指令装置《デウス・エクス・マキナ》を埋め込む事など造作もない。……僕は……僕の頭は今……いったい、どうなって……! 見たくないし、聞きたくもないし、触れたくもない。されど、ぬちゃぬちゃと、弄られ、痛めつけられる感覚を殺す事などは出来ない。むしろ、如何して自分が息絶えていないのか不可思議なくらいだ。ああ、いっそ狂えるほどなら良かったのに。いいや、この程度で屈するだなんて、絶対に嫌だ。僕は、たとえ、地獄を味わう事になっても最後の最後まで抗い続けると、誰かに誓ったのだから。徐々に、徐々に、脳天が元通りに。ちかちか、ちくたく、まるで時計のように……頭の中、心地の良いリズムが……。
 いやだ……もう、いやだ。僕の身体を、僕の頭の中を、滅茶苦茶にしないでくれ……。何日経ったのか、何週間経ったのか、最早、数える事を辞めた脳髄は装置と同化しつつあった。ついでに、同化ではなく、侵略されつつある細胞が|産声《●●》のようなものをあげていく。僕は……僕はどうして、こんなにも、楽しくて、嬉しくて仕方がないんだ。囀りたくて、途轍もなく、燃えるような……。事実、細胞は燃えていたのだ。燃えて、炭となって、秒とも掛からず再生していくのだ。繰り返し、繰り返し、膨張していく苦痛とやらは愈々、阿鼻叫喚めいた沸騰を全身に巡らせる。きっと『これ』が最大火力なのだ。きっと『これ』が地獄門なのだ。性質的にはコキュートスと、裏切り者の地獄と、真逆だが、それでも、幼馴染を置いていった事に変わりはない。僕は……もしかして、誠を、裏切ったのか……? 助ける為ではなく? 庇うわけでもなく? 僕は……崖下へと、落とすかのように……? 卵は要らない。ユリカゴも要らない。黄金色、光輝し、精神、饕餮の餌として。
 私は|金朱雀《ヘリオフェニクス》、ファルド。暗黒商社アルコルの幹部、と、謂えばわかりますでしょうか? では、これから、英雄気取りどもを焼殺しに参りましょう。わかっています、|白青龍《プラチナムドラゴン》。
 私は欠片の容赦も知りませんので。

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