シナリオ

一冬の思い出

#√ドラゴンファンタジー #14日終了予定です #お疲れ様でした!

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●ダンジョンとの出会い
「……なにこれ?」
 とある少女は、何かを見つけました。扉を開けようとした瞬間、その向こうが光っていたのかもしれません。それとも、どこかに人が通れそうな穴があったのかもしれません。しかし、一つだけ言えることがありました。それは、その発見は彼女の人生を一つ、大きく変えてしまうということでした。

●ライブハウスにて
「ということで、一人の少女がダンジョンデビューしてるっぽいのよね!」
 💠 長峰・モカ((売れない)(自称)イタズラ女芸人・h02774)は、自分が雇われマスターをしているライブハウスで一人の少女の顔写真をスクリーンに映す。
「……正確には、巻き込まれた、だとは思うんだけど」
 話を聞いてみるに、一人の少女が何らかの方法でダンジョンに入り込んでしまった。のだが。
「この子、すごいやる気なのよねぇ……」
 名前は、エミリスという。歳は17、ごくごく普通の女の子。もちろん√能力者ではないので、ダンジョン攻略なんて単体では出来ないのだが。
「ダンジョンに入っていきたい、って聞かないらしいのよね」
 なんだか、テコでも動かない感じになっているらしい。
「こうなっちゃったら、とりあえずみんなには先輩冒険者として、彼女を導いて欲しいのよね」
 厳しい現実を教えるのか。それとも、彼女も冒険者として活動できるレベルに育てるのか。どうするのかはみなさん次第であろう。しかし、現状では右も左も、上も下もわからない完全な素人である。

●冒険者との出会い
 ダンジョンの入り口。一人の少女が立っている。学校の制服を見にまとい。手には何も持っていない。持っているとしたらスマホぐらいか。
「あ、冒険者さんですか? 私、冒険者になりたいんです! 私に冒険のイロハを教えてください!」

マスターより

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第1章 冒険 『ようこそ、ルーキー』


カイル・フォンテーヌ

「よろしくお願いします! 先輩!」
 エミリスが、カイル・フォンテーヌ(猫系狼少女・h02113)に元気な挨拶。挨拶ができる子はいい子である。
「先輩……! 先輩かぁ!」
 先輩という言葉にワクワクしているフォンテーヌ。先輩と呼ばれることはそれだけの力を持つのだ。
「おー? ぼーけんのいろはは、ボクもあんまりわかんないけど……これの使い方とかなら教えてあげられるから、まずは戦い方を覚えよっかー?」
 そう言いながら、背負っている狙撃銃をエミリスに渡してみせる。
「お……っとっと、お、思ったより重いんですね……」
「そうだね、でもこの重さがいいんだよねぇ」
 なんて会話をしつつ。和やかな雰囲気でこの時間が続いていく。
「もちかたは、こーでー…ここに指を添えて…そーそー。良い感じ。で、このスコープを覗いてねー?あ、今教えている姿勢をきちんと出来るまでおろそかにしないようにねー?ケガしちゃうから」
「はい! こうですか、先輩!」
 むふー。やはりテンションが上がるものである。少し鼻息荒くなりつつ。それこそ手取り足取り。銃に頬付け、スコープを覗き込むところもきちんと体も触って調整する。細かい調整もあるからね。背中に柔らかい何かが触れた気がした、とはエミリス談。
「で、きっちり狙って…呼吸を落ちつけて………こう……」
 指が引き金にかかる。ロックを解除し、その指にわずかに力をかけると。
 ズドン。
 その衝撃に、エミリスは尻餅をつく。的として書いていた丸からは大きく外れている。
「ちょっと見ててね? よっと」
 チョチョイのちょい。フォンテーヌがさっきより13行ぐらい早く準備を整えて。
 「こんな感じ、できるまでやってみよっか?」
 そう言って、エミリスに銃を渡す。的の中心には、さっき放った弾が貫いていた。
 

兎楽・あぶく

「いーじゃんいーじゃん!冒険者になるなんて大体、アコガレか切羽詰まったかどっちかなんだから!」
 兎楽・あぶく(ウタカタ・タタタ・h04885)が、狙撃銃の訓練をひと段落し、休憩をしているエミリスに語りかける。
「まぁ、ヤクザとおんなじだよね! あっ、アタシあぶく。ねー連絡先交換しよ!」
 ……語りかける、ってよりは肩をバンバンしながらウェーイとハイテンションである。
「あ、ありがとうございます、先輩!」
 エミリスもいける口である。話しかけてもらって笑顔で答える。と同時にスマホも構えている。女子高生の嗜みである。
「先輩って、何で冒険者になったんですかー?」
 挙手して、エミリスがあぶくに質問する。ギャルというか、女子高生のノリである。かわいいね。
「んー……」
 少し顎に手を当ててあぶくは考えてみる。こっちもかわいいね。
「アタシは冒険者っていうより流離いの夢追人フリーターってカンジなんだけど……。ま、固定給もらってる冒険者もあんまいないでしょうから似たようなモンしょ!」
 なるほどー、と感心しきりのエミリス。憧れの先輩を見る目である。
「すごいです! さすがです先輩! カッケーっす! です!」
 後輩語が出始めている。エミリスはしっかりと後輩モードである。
「わたしも、先輩みたいに冒険者になれるんですかね?」
 エミリスが、先輩にちょっとアンニュイな顔を見せる。やってみたい、だけで飛び込んだ世界だ。そんなのあるわけないでしょ、とお母さんに呆れられたこともあるのだ。
「えーでもさー、メッチャ憧れてんでしょ?」
 あぶくが、椅子で船漕ぎしながらエミリスにその言葉を突きつける。椅子があるんだ、ここ。教室なのかな? いや、ダンジョンの入り口である。ダンジョンの入り口に椅子があったらダメなんですか?
「ダンジョンの中を見もしないままセンジンノチエで諦めろとか言われんのエミ子ちゃんはヤじゃない?」
「エミ子ちゃん……?」
「あ、ごめん嫌だった? アダ名何がいい? なんて呼ばれてる?」
「い、いやというわけでは……!」
「じゃ、エミ子ちゃん! けってー!」
 キャッキャッ。キャッキャッ。女子高生ぐらいの女の子がキャッキャうふふしているのはかわいいね。目の保養だね。
 よっ、とあぶくは椅子から飛び降りる。椅子ががらんがらんと音を立てて踊っている。
「んー、口で教えられることなんてどーせ響かないもん! いーよいーよ、アタシがパーティ組んだげるから! 一緒に行っちゃおう! ぜい!」
 エミリスの前でピースサイン。
 え、ええと、その、とドギマギするエミリスの手をあぶくは握り。
「よし、けってー! っと、次の人が呼んでるっぽい? それじゃ、後でねー!」
 呼ばれて行ったエミリスを手をぶんぶんしながらあぶくはふぅ、と一息をつく。
「アコガレを追うカワイ~女の子には弱いんだアタシゃ!」
 そう、ひとりごちた。

柳生・友好
八木橋・藍依

「あ、こっちです! こっちですよ!」
 柳生・友好(悠遊・h00718)と八木橋・藍依(常在戦場カメラマン・h00541)が、エミリスに手招きをする。
「私は新聞記者をしている八木橋・藍依といいます」
「僕は柳生・友好。よろしく」
「先輩、よろしくお願いします!」
 エミリスも元気いっぱいである。にこやかだね。
「早速ですが。ダンジョン攻略は簡単ではありません。大怪我を負うなど、取り返しのつかないことになることも珍しくないですよ?」
 初手からの正論である。新聞記者をしている藍依ならではの意見ではあろう。そういうのもいっぱい見てきたのかもしれない。
「あなたにも家族や友人など大切な人もいるでしょう。 それでも決心が変わらない、というのであれば、なたが冒険者として戦えるように手伝いましょう」
 その目は優しく、しかし鋭くエミリスを貫いている。キラキラしたことだけを伝えるのが優しさではないのである。
「……なるほど。それじゃあ、訓練を始めましょう」
 エミリスの目を見て、二人は互いにうなづく。その覚悟を感じ取ったのだろう。
「よし、最初に質問しよう。冒険の中、敵が襲ってきたら君はどうする?」
 エミリスの目をしっかりと捉え、柳生はそう問いかける。
「え、ええと、戦う、ですか?」
「半分正解。受け止めても、避けても、逃げてもよいだろう。しかし、どんな行動を取っても、決して取り乱しちゃダメ」
 毅然とした口調で柳生が説明する。エミリスは少し驚いたような顔だ。思っていた答えとは違っていたのだろうか。
「ビビっちゃダメ、力を無駄に使うことになるから、逆にピンチに陥るよ。傷つく覚悟で、かかってきた攻撃を冷静に見抜いて対応する、これがコツだよ」
「なるほど…… 難しそうです……」
 柳生の説明に、エミリスが少し弱音を吐いている。
「なぁに、難しいかもしれないけどさ、ちゃんとできれば屠竜騎士の十八番の屠竜宣誓撃さえ繰り出せるんだ」
 ニコッ。その爽やかな笑顔が、エミリスを笑顔にする。この人となら、訓練も耐えられそうだ……。
「そこぉ! 足が止まってるぞ! 追加で20周!」
 ……前言撤回。訓練が始まってから柳生は厳しかった。藍依 の考えた訓練メニューを、鬼教官こと柳生が根性論で取り仕切る。恫喝に竹刀、脱感作法まで用意されている。ここは昭和100年ですか?
「大丈夫ですか?」
「は、はひ……、だ、だいじょーぶ……ですぅ……」
 ……明らかに大丈夫ではない。が、諦める様子もない。大丈夫だろう。
「わかりました、とりあえず、この装備を使ってください、サバイバルの訓練をしましょう」
 ナイフや水筒といった、サバイバル装備一式。
「ダンジョン探索は日帰りで行えるものではないですからね。訓練を続けましょう」
 無慈悲にも聞こえる言葉だが、エミリスの顔には笑みが溢れる。厳しいだろう、苦しいだろう。しかし、それ以上に楽しいのだろう。
「「……お疲れ様でした!」」
「は、はひぃ……あ、ありがとうございましゅう……」
 疲労困憊なエミリスだが、その言葉に目の光が戻る。
「辛いことしてすまなかった」
「い、いえ…… わたしのためだと思うので……!」
 エミリスに柳生が謝っているところをにこやかに藍依 が見ている。
「まぁ、これでダンジョンに入るぐらいはできるかな?」
「辛くなったら、ここでのことを思い出すんだ」
 二人の、いや前の訓練も合わせた冒険者たちのお墨付きをもらう。
「……はい!」
 エミリスの返事が、ダンジョンの入り口に響いた。
 

第2章 集団戦 『あばれうしぶたどり』


 そんなことがあった少し後。ダンジョンを進むと、可愛らしいモンスター……? が君たちの目の前に現れる。鶏、牛、豚、全ての家畜の要素を併せ持つかわいいやつだよ。仲良くしてあげてね!
 仲良くしたらやられてしまうので倒してあげてください。
 ちなみに、エミリスさんは皆さんの後ろからついてきているので、合流することは可能だろう。ナイフは持っているのでナイフでの攻撃、および狙撃銃の使い方を教えてもらっていたので、狙撃銃さえあれば使うことはできるかもしれない。
 しかし、できるだけなので、的確に狙うことは難しいだろうし、ナイフでの攻撃も器用に攻撃を避けながら、というのは難しいだろう。普通の人間であることも考えると、ダメージをモロで受けると危険だろう。
 隠れるところはダンジョンに数多にありそうなので、隠れている分には問題なさそうだが、あばれうしぶたどりの周りには隠れるところはなく、戦う場合は隠れることは出来なさそうだ。
 皆さんには、あばれうしぶたどりを倒していただきたい。検討を祈る。
カイル・フォンテーヌ

「おっ、来たかな?」
 後ろから、ここまでの訓練を全て終えたエミリスが走ってくるのを、フォンテーヌはその耳で聞いていた。
「追いついた♪ お疲れ様です先輩♪」
 パァッとエミリスの笑顔が周囲に広がる。いや、他の子が可愛くないわけじゃないのよ。
「しっ!」
 エミリスの言葉を遮るように、フォンテーヌはエミリスの口を手で塞ぐ。
「アレを見て? あばれうしぶたどり」
「あの可愛いやつですか?」
「見た目に騙されちゃダメ。じゃぁ、さっき説明してみせたことを実践してみるからよくみててね?」
 そういうと、エミリスに身を隠させて大地を蹴る。あばれうしぶたどりにその姿を晒すフォンテーヌ。あばれうしぶたどりの目には、フォンテーヌしか映っていない。つまり、その突撃も彼女にしか向かないわけで。
「ホイッと!」
 撃銃を構えて、撃つ。
 構えて、撃つ。
 ただただ、これを繰り返すだけである。
 文字にして書くと簡単に見えるが、相当な訓練の賜物であろう。
「……あぁっ! 先輩!」
 エミリスが危ない! と思うような接近戦になっても、時には銃で、時には体術でその角をいなす。それは踊っているかのy。
「先輩危ないですっ! 後ろ後ろ!」
 地の文の隙をついて背後に向かって突撃するあばれうしぶたどりであったが、次の瞬間にはその顔面にフォンテーヌの足跡がつく。その足跡にかかる衝撃が、あばれうしぶたどりを後ろに飛ばすほどの運動エネルギーとなり、との距離が離れていく。
「ボクは一発の弾丸……。狙い撃つよ」
 それは、パンと乾いた音が鳴った次の瞬間。あばれうしぶたどりの眉間に鉛玉がめり込む。
「と、まぁ……こういう風に出来るように今見たことをちゃんと覚えて練習しようね♪」
「はい!」
 そんな先輩と後輩のやりとりがダンジョンに響くのであった

八木橋・藍依

「あ、エミリスさんここにいたんですね!」
 藍依が、エミリスに手を振る。久方ぶりである。まぁ、30分経ってない気もするけど。
「見えますか? あれがあばれうしぶたどりです…… ほぅ、あの人もいい戦い方をしますねぇ……」
 目の前に繰り広げられるフォンテーヌの振る舞いに、ほう、と顎に手を当てる。なかなk筋が良い、と感心しきりである。
「……まぁ、私も負けませんけどね♪」
 BANG!
 その手に持ったHK416が火を吹く。エミリスを守るように前衛に立ち。時にはその銃口をあばれうしぶたどりにくっつけて。時には十分に間合いをとって。
「藍依さんもすごいです……。でも、あたしには何も……」
 それは、藍依が飛び出す1分ほど前。
「いいですかエミリスさん。見て分かる通り、かなり凶暴なモンスターです。ナイフでは、太刀打ちできないでしょう。ここでみていてください、いいですね?」
 そう強く言い付けられていたのだ。その後に何かごにょごにょ言ってたのは聞き取れなかったけど……。くそう、もう少し高性能のマイクがあれば収音できたのに。
「でも、あたしは見てるだけs……(ちょいちょい) あれ?」
 状況観察をしているエミリスの裾をちょいちょいと引っ張る少女が一人。
「えーと、あなたは……?」
「私は桔梗。姉さんから頼まれてた『素人でも問題なく扱える狙撃銃』、できたから持ってきた」
 その少女の手には、レミントンM700を魔改造したような狙撃銃が握られている。初心者向けである。若葉マークも貼ってある。
 さっきの、マイクで収音できなかった場所。ここで、藍依は妹である桔梗にエミリスへの狙撃銃を発注していたのだ。あのごにょごにょで発注できる方もすごいし、わずかな時間で作り上げるのもすごい。すごいの2乗である。
「我が妹、桔梗よ。協力感謝致します! エミリスさん! 今です! よく狙って!」
「はい!」
 エミリスが、そのスコープ越しにあばれうしぶたどりを見る。次の瞬間、引き金と同時に尻餅をついていた。しかし、その弾丸は的確にあばれうしぶたどりの眉間を貫いていた。
「「ヒュー!」」
 前線に立っていた藍依とフォンテーヌ。目の前にある「エミリスが倒したあばれうしぶたどり」を見て、ついハイタッチなんかしちゃうのであった。

柳生・友好

「なるほど、結構やるね」
 柳生がそう呟く。エミリスの成長を見て感動しているっぽい。
「それじゃあ、僕も、頑張らないとね!」
 先ほど1体倒されたことから、仲間を呼んでいるのか大量のあばれうしぶたどりがなだれ込んでくる。
 しかし、雷霆を身に纏った柳生にはそんなもの敵ではない。そもそも通常の3倍速になっているのだ。柳生のところに傾れ込んでくるあばれうしぶたどりに対してジャストガードのおかげでダメージが受けない。そこに装甲無視の威力2倍も乗っかるのだ。両手にもつ一対の刃が幾重にも重なるあばれうしぶたどりを情け容赦なく切り刻んでいく。こんなに可愛いのを切り刻むだなんて! まるで家畜みたいに! いや、家畜の集合体だけど!
 ……しかし、こんなヤジや可愛さにも惑わされないのが、柳生のいいところである。そもそも、心理戦みたいな計略を厭わないから、可愛らしい外見には惑わされないのだが。
「……普段はちょっと頼れないように見えそうだけどね!」
 おい、どこに向かって喋ってるんだ。
「さて、と。そろそろかな?」
 今度は完全な独り言である。ちょうど1体、いい塩梅に弱まっているあばれうしぶたどり。
「おう、こっちだよ、こっちで遊ぼうぜ?(エミリス、今のうち、今のうち!)」
 へいへいへーい、とあばれうしぶたどりの視線を独占する柳生。そこに、エミリスに目配せしてその銃口を向けさせる。若葉マークのついたその狙撃銃を使いこなしている。
 「よっし、じゃあ、踊ろうぜ?」
 その言葉が合図。鉛玉があばれうしぶたどりの体にめり込む。
「あ、師匠、ありがとうございます!」
 エミリスさん、何気に師匠呼びである。しかし、そこにもあまり違和感がないぐらいである。さすがだな、と柳生は独りごちた。彼女の凄さを改めて実感したのだ。だって、あのしごきを耐えたのだから。昭和100年のシゴキであるわけで。そこに、訓練ではない実際の戦いで身につけた能力で急成長していると感じた柳生であった。

兎楽・あぶく

「エミ子ちゃんウェーイ!」
「ウェーイ!」
 エミリスと合流したあぶくが、戻ってきたエミリスに片手を向ける。パァンと心地よい音が響き、拳をぶつける。あくまでも軽くである。真剣と書いてガチと読むようなやつではない。
「さっきの見てたけどさ、エミ子ちゃんマジヤバじゃない?」
「えー、そんなこと……あるかもw ウェーイ!」
 ワイワイワイ。ワイワイワイ。女子高生(?)二人が闊歩する。若干調子に乗っているエミ子ちゃん可愛いね。
「ねね、エミ子ちゃん。武器見ーせて!」
「んー……いいですよ先輩♪」
 ここはきらら空間ですか? いいえ、ダンジョンです。
「お、ナイフ? いいねぇ、新米冒険者ってカンジだね! それにこれは……狙撃銃? めっちゃカッコいーじゃーん!」
 あぶくちゃんの武器チェックのコーナー! ナイフの研ぎ具合や持ち手、桔梗特製の狙撃銃の隅々までチェックする。
「なるほど、この狙撃銃、若葉マークがすごく可愛くない? すごくいいセンスじゃない?」
 デザイン面でめっちゃ褒められている。桔梗さんやったよ! 大金ぼs……。
「先輩! あれ見てください!」
「うお~~!かわい~~!!」
 しかし、改めて見れば見るほど可愛いですよね、あばれうしぶたどり。全ての家畜のいいとこどりしたみたいな。でも。
「エミ子ちゃん、いける?」
「はい、先輩!」
 元気な挨拶ですね。あぶくさんも、いい先輩感ですね。
「オッケー! アタシはパーティだし先輩だかんね。全力で……君を守るよ」
 トゥンク。エミリスの心が高鳴った……ような気がした。あぶくの指先が、エミリスの顎に触れる。若干背の高いあぶくの顔を正面から捉えるようにエミリスの顔が上を向く。
「せ、せんぱい……?」
「それじゃ、いくよ!」
 そう言って、大地を蹴る。あぶくはその体を宙に浮かせる。
(こっぴどい怪我して冒険者イヤになられちゃってもヤダしなぁ……)
 そんな顔をエミリスにも、カメラにも見せないのは流石のプロ意識である。
 ……先ほど、体を宙に浮かせるとあった。これは、走り出した、ということを表したつもりだったのだが。
「……本当に空を飛んでるみたいです先輩!」
 キラーン! エミ子ちゃんに飛び込んでくるあばれうしぶたどりをその体術で庇いつつ。その可愛い可愛いモンスターに徒手空拳をぶち込むあぶく。その秘密は、重力操作にあった。重力を弱めることで、まるで宙に浮いているようなこともできるのである。さすがあぶくである。最強。
「ほーらほーら、こっちこっちー!」
 あばれうしぶたどりの視線を全て集め、突進してくるものを綺麗にいなす。舞を踊るかのように。さすが。
 「さぁ……! 吹っ飛べ、兎が羨やむ程に」
 一瞬、雰囲気が変わった気がした。今までの明るさ、軽さとは真逆の。真剣な眼差しで、そう呟く。あばれうしぶたどりの目の前に目映い月光が煌めき、ほんの一瞬、その足を止める。……しかし、その足を止めたのは一瞬のはずなのに、その体は動かない。あぶくの身を支える護霊、グレープ・ソーダ。その護霊が、ガッチリと体をホールドしているのだ。
「覚悟はいーい?」
 あぶくの体が縦回転しつつその御御足が牛柄に模様を追加していく。ボディが動かないのも相待って、もう満身創痍である。
「エミ子ちゃん! トドメだぁーー!」
 その言葉と同時に、エミリスはあぶくの背中を蹴る。高く飛び上がったエミリスは、月光を背に黒い影となる。
「いっけぇエエェぇぇぇええぇえええ!」
 護霊の力で動けないあばれうしぶたどりのボディに、そのナイフを突き立てる。ピクピクとけいれんののち、動かなくなる。
「ナーイスぅ!」
「イエー!」
 二人、歓喜の声をあげる。本当はあぶくの背中を蹴って高く飛び上がるとかしなくても行けたのだが、カッコよく決めたいよね、とのこと。月光を背後に置くのもかっこいいよね。ここまで計算済みだったのかな。さすがだね。
「これで、大体は処理しちゃったかな?」
「さすが先輩です!」
「いやー、エミ子ちゃんもすごいよー」
 周囲の安全を確保し、みんなで勝利を分かち合う。そんな幸せな空間が生まれたのだった。

第3章 ボス戦 『堕落騎士『ロード・マグナス』』


 ドドドドドドド、と地面が鳴り響く。
「我の眠りを妨げるのは誰だぁ!」
 多分、テレビだったらエミリスに矢印が出て「こいつです」とか出てくるのかもしれない。出てこないけど。
 激おこである。寝ているところ起こされたらたまらないもんね。仕方ないね。
「……こいつ、すごく強そうっすね、です!」
 エミリスさんの言う通り。少なくとも、エミリスさんだけには手も足も出ないだろう。それに、どれだけ弱体化させたとしても、エミリスさんには決着をつけることは難しいだろう。フィニッシュは君たちにお任せしたい。エミリスさんは君たちのサポートについては、難しい内容でなければ問題なくこなせる……とは思う。
 ここでこのダンジョンは最後である。検討を祈る。
八木橋・藍依
兎楽・あぶく

「こーれは…… ちょーっとガチ目だねー……」
 あぶくが、ほんのすこーしだけ身構えつつ。
「でもだいじょーぶ! エミ子ちんとアタシならね!」
 たらり、と冷や汗が垂れる。それでも、顔は平静を装っている。まあ、身構えているだけで心配はしていないのだけど。
「眠ってる所を起こしてしまいましたか? いやーすみません! 責任もって今度は永遠の眠りにつかせてあげますので!」
 藍依は、目の前のロード・マグナスに挑発する。これも、エミリスに無用な心配をさせまいという意識が働いているのかもしれない。
「おっけーエミ子ちん。狙撃できる?」
 あぶくがその歩を一歩進めr。
「あ、ちょっと待ってください、これを!」
 藍依の手から、ドローンが飛び立つ。千里眼の名に恥じない、死角が全くないそのカメラで、フィールド全体を見ようというのだ。
「なるほどなるほど、これで剣や炎が出るところを見ようと…… さすがあおいっち! さーんきゅ!」
「いえいえ。それじゃあ、いきましょうか。エミリスさんは、後衛をお願いします」
 やることはさっきと同じですよ、と微笑みながら。
 エミ子ちん、頑張ろうね、と微笑みながら。
 あぶくと藍依はエミリスを背にロード・マグナスに対する。
「あおいっち、いける?」
「もちろんですよ、あぶくさん」
 二人の顔からは笑みが消え。真剣そのものである。エミリスにその顔を見せないのはプロ根性というやつだろうか。
「それじゃ、行くよ!」
 あぶくの言葉が、一瞬だけその場にとどまる。その言葉があったところには、炎が一瞬で沸き立っていた。もうコンマ数秒遅ければ、火傷では済まなかっただろう。
「来て、グレープ・ソーダ。あいつ倒すよ」
 一瞬だけ、あぶくの周りが歪んだ、気がする。気がするだけで、歪んでいないのかもしれないが。
 「よ……っと!」
 護霊「グレープ・ソーダ」と完全融合する。それはつまり、重力を「自由に操れる」ということ。周囲の壁や地面を蹴り、ロード・マグナスの周りを飛び回る。
 もちろん、ロード・マグナスもそれに気づいていないわけはない。聖剣を振りかざし、一太刀浴びせようとするが……。
「ほら、あなたの相手はこっちですよ!」
 HK416の銃口が、ロード・マグナスを捉えて離さない。零距離射撃……まではいかないまでも、適切な距離で冷静な射撃を浴びせることができているのは素晴らしい技術であろう。
「ヒュー、あおいっち、やるねぇ!」
 藍依がロード・マグナスの行動をうまく制御し、あぶくはロード・マグナスの周囲を飛ぶことで、ある地点までロード・マグナスを誘導する。それは偶然だったのだろうか、しかし、うまくいっているのは事実である。
「エミ子ちん、撃って!」「エミリスさん、今です!」
 二人の言葉が、シンクロする。ある地点。それは、エミリスの構える狙撃銃の射程圏内。
「よっしゃ、いっけぇ!」
 覚えているだろうか。あぶくが、なぜ飛び回っていられるか。それは、重力を操作しているからである。つまり、それが銃弾に使われたら、どうなるか。
 そう、爆発的な加速度で飛んでいくのである。
「小癪な小童がぁ!」
 ここで初めて喋ったロード・マグナス。ほんの一瞬の隙を突き。その手に持った聖剣がエミリスにむかっt……。
「私がまだ取材してる途中でしょうが!」
 炎とは、また違う光源。それは、まるでフラッシュのような。というかフラッシュが。このフィールド全体を白い光で埋め尽くす。ロード・マグナスは、思わずその手に持った聖剣を落としカランと音がなる。ちなみに3人はサングラスをつけていたので無事だったらしい。
「エミ子ちゃん、アタシはね、エミ子ちゃんに夢を諦めてほしくないのさ。だから絶対にアタシ一人で戦いはしない。あくまでアタシとエミ子ちゃん、いや、ここにいるみんなで勝つ! アタシは! エミ子ちゃんのバディだからね!」
 それは、自分を鼓舞するように。あ、ロード・マグナスが動き出しs。
「おっと、動くなよぉ? エミ子ちゃんの弾が当たんないでしょ?」
 ちょこん、とロード・マグナスの頭にあぶくが乗る。振り落とそうと頭を振るロード・マグナスだが。
 ボコボコボコ。
 頭の上に、嫌な感触。名状し難い感触に不快感を感じる中。急にロード・マグナスが膝をつく。
「……わかるかい、単なる『重力10倍』じゃない。『重力の抵抗力1/10』だよ?」
 あぶくが、ニヤッとしながら、そう問いかける。
「あぁ、なるほど!」
 あぶくの言う内容に気づいた藍依が、膝を叩く。立っていられないほどの重力を感じているロード・マグナスは、そもそも考える余裕はない。
「つまり、アタシが横方向へ重力を付与したあの弾丸……アレへの抵抗力も1/10、なんだよねぇ」
 その言葉に、ロード・マグナスはやっと言われていることを理解する。
「エミ子ちん! やっちゃえぇえ!!」
「はい!」
 若葉マークの狙撃銃。その引き金を、エミリスはゆっくりと、確実にひく。
その弾丸は、通常の10倍の速度で、ロード・マグナスの体を貫く。避ける避けないの問題でもなく、ダメージも強化されているその弾丸を全身で受けて無事であるわけもなく。
 ズズン!
 その体は、地に伏せるのであった。
「「「やったぁー!」」」
 3人の声が、ダンジョンに響き渡る。
「さすがです、さすが私の相棒です!」
「さっすがエミ子ちゃん! バディのアタシも鼻高々だね!」
 藍依とあぶくの言葉に、ぷっと吹き出すエミリス。
「皆さん、本当にありがとうございました!」
 深々と、頭を下げる。
「楽しかった……は少し違う気がする……でも楽しかったし……」
 ううむ、と少し頭を抱えながら。
「……うん、あぶくっちと、藍依さんと……師匠と、先輩も。みんなでこのダンジョンに入って、本当に楽しかったです!」
 エミリスは、そう言って、ダンジョンの出口に向かっていく。このダンジョンをクリアした、と言う事実と共に。
「それでは、またどこかで会いましょう、相棒!」
「アタシは! エミ子ちゃんのバディだからね! 一緒に冒険するんだからね!」
 ダンジョンの外に出ていくエミリス。二人の言葉に、少し微笑んで。
「はい!」
 元気な返事が、ダンジョンの外に響いた。

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