ナイト水族館にて楽しいひと時を
「別れよう、他に好きな人ができたんだ」
それはよくある別れ話であった。
普段見れない夜の水族館。ゆっくり歩くだけでも普段と誓った雰囲気の中、夜行性の魚たちが見れてライトアップもある、それに外では屋台など出ているお祭りも!
人気は巨大たこ焼きだと言うのだからそれでいいのかとも思うがなかなかに楽しそうな雰囲気が伝わってきている。魚釣りならぬ宝石(玩具)釣りなんかもあるらしい。さぁ何をしようか、それとも……とうとう?
これは今日こそは10年以上付き合ってきて結婚の申し出かと喜んでいたところに突然の別れ話である。
これが、せめて20代後半なら泣いて泣いて、それでも前を向けよう、しかしもう私は30後半なのに? 自分は若い子を見つけて?
これが許されてたまるものか、そう思う女性に囁く声がする。
「わたしが話を聞こうか?」
「……貴女は……」
「辛かろう、悔しかろう、わたしが貴女の話をきこうか?」
誰でも良かった、話を聞いてくれるのなら。
私は彼女の手を取りそして……。
「まぁ、そういうわけで人気のないところで話を聞いてやろうと連れていくってわけぇ!」
時間的猶予はまだまだあるという。なぜならまだそれは始まっていないからだ。
紅涙も辛い体験をした女性だ、事が起こってもすぐに女性を殺し男性に襲いにかかりに行くということもないだろう。話をちゃんと聞いてからになるだろうという。
「まぁ、女性の気持ちはわかるつもりだよぉ、でも手を取る相手が悪かったねぇ!」
とけらけら笑う男の手をとるのも大変危険なわけだが、兎に角まだ事は起こっていない。
皆には水族館ナイトツアーという名の夜の水族館を楽しんでもらい、男女のいざこざをさりげなく探して欲しいという。
水族館内で起こったそれはやはり周りがざわめく程度には大きな騒動になるらしいからすぐにわかるだろう。
「あとはわざと人混みの少ない所に誘導されるのを追っていってさくっと倒してもらって、外のお祭りも楽しむといいよぉ!」
クリスマスも近いということでホットワイン(子供にはアルコール抜き)が配られてるってさぁと笑い。
「クリスマス仕様に飾られててね、ぬいぐるみもサンタさん仕様とかだったりするよぉ!」
第1章 日常 『ナイトツアー』
夜の水族館、普段は動かない夜行性の魚コーナーに、幻想的にライトアップされた海月のコーナー、メインの巨大水槽では幻想的にライトアップされて普段見る大きな魚たちもまた違う姿を見られるだろう。
深海魚のコーナーでは、今まさに動こうとしている魚もいるかもしれない。
イルカやペンギンはおやすみ中だ、チケットさえ取れれば眠っている彼らを見ることも可能だろう。
入り口にて販売されているそれらを買うのもいいかもしれない。
夜の水族館でいつも以上にお静かに、そんなご案内と共に貴方達はいざ、夜の水族館へと足を踏み入れる
静かな水族館。昼とは違ったそこは普段見られない魚が泳ぎ、昼も夜もそこは関係なく恋仲同士が楽しげに歩いていく。もちろん子連れも居れば独りで来ているものだっている。アキ・サクラ(のらりくらり・h09479)はどちらかというと、独りは独りでも……。
(とてもロマンチックな空間に一人でいるのはだぁれ? おれー!!)
と心の底から雄叫びをあげる方だった。でもそんな彼も理由なく来ている訳ではない、立派な仕事の一環で来ているのだから泣かなくたっていい。泣かなくたっていいのだ、うん。
依頼を受けたカップルを探しつつ、視線はちらちらと熱帯魚たちのもとへ。綺麗で色鮮やかなそれは美しいが、イワシや秋刀魚はどうしても美味しそうにみえる。
なんならほかほか温かなご飯が欲しいくらいだ。
ちなみに美味しいご飯を与えられている水族館のイワシや秋刀魚はそれはそれは脂が乗って美味しそうだったそうな……。
(と、多分あれかな?)
男の方が女性に何か大声で言っている、女性がぴくんと肩を揺らしたのを見て闇に紛れつつ後を追うアキ。
ちなみにその間もスマホを操作して、お土産を見繕うのは忘れない。
職場のお姉様方というのはいつの世も強いものなのだ。忘れず買いに行かねば人権というものはなくなってしまうのだ!
(カップルのおねーさんに意見聞くのアリ?)
「そこのおねーさーん助けてー」
1人になったところを敢えて能天気に声をかけるアキ。
一体何?! と落ち込んでいる彼女にことの顛末を伝えればぎこちないながらも笑みを浮かべ気丈にも応えてくれるのだった。
(水族館名物、イルカちゃんクッキー期間限定~クリスマスバージョン~かぁ)
紅涙は様子を見ているのだろうか、未だ現れない……。
「依頼の場所についたよ、マスター」
第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)は自分のオペレーターであり、マスターである老人へと報告する。
きらきらがやがや。
イルミネーションがクリスマスバージョンになっているためか赤と白の美しい輝きが魚を照らし出す。
恋仲同士が多いものの、家族連れや独り身のものも数多くいるナイトツアー。
(とりあえず男女のいざこざを見つければいいんだよね)
ちらりと辺りを見渡していた所に報告がはいる。
「えっ!事件が起こるまでは水族館を楽しんでてもいいの!」
(ならサメを見にいこうかなぁ、マスターがよく見てる映画に出てくるけどサメって空をとんだり地中を泳いだりするお魚でしょ?)
確かにサメトルネードになったりサメ人間になったりするかもしれないが、この水族館はどうだろうか。
わくわくと進んだ先、そこには大きなサメがいた。残念ながら斧を生やしたりチェーンソーを生やしても居なかったが、兎に角大きさはこの水族館では1番大きいかもしれない。
それが悠々と泳いでいるのだ、圧巻という他なかった
「凄い……♪」
少しのんびり見たあと、せっかくだからと売店へと向かえば、そこにはサンタさんの格好をしたサメのぬいぐるみがあった。何故か斧を持っている。
斧サメちゃんというグッズらしく、折角だからと買うのだった。
そうしてルーシーは入り口にて買った券にてイルカやペンギンのおやすみショーをゆっくりみていた。
愛らしいペンギンたちは団子になって眠っているし、ゆらゆら揺れながらイルカもいつもと違いのんびりと漂っている。
イルカショーやペンギンショーも悪くないけれど裏側を見れるのは最高に可愛い姿がみれたのだった。
(あ、いた、かも?)
そうして歩いていれば男が女性に大声を上げているシーンに出会う。
さぁ、これからが依頼だ。
どうやら同じ√能力者が声を掛けているのをみながら、ルーシーは周りに気を配る。
何処から紅涙が現れてもいいように、彼女は注意深く辺りを見渡している……。
第2章 ボス戦 『紅涙』
「にくかろう? 苦しかろう?」
敢えて姿を消した先。
紅涙が女性の元へやってくる。
「話を聞こう、泣くだけ泣くがいい」
「私は……」
「あちらで話を聞こう、何私も男に捨てられたんだ」
手を取りともに歩き出すのを見れば、戦いやすい場所に誘導させるように√能力者達も進んでいく。
ここで終わらせなければならない、彼女を更なる不幸に巻き込んではならないのだ……!
「おーい紅涙の姐さん、横入りいくない」
おれが先に声かけましたー順番守ってよー。
そんな風に声をかけながらアキ・サクラ(のらりくらり・h09479)は油断なく彼女たちの元へと駆けつける。
ま、言いたいことわかるよ? とアキは言う。
「おんなじ男のおれでもドン引きだもん。ダチだったら一発殺ってんね」
少々物騒ではあるがその気持ちも分かる、というわけでとアキが微笑む。でもそれは当事者同士で成立する話。ならば外野である我々は黙っているしかない。
「なんで外野どーし紅涙の姐さんはおれの相手して♡」
「わたしの邪魔をするの……?」
紅涙の手は女性を離さない、然し少し離れていてねとの言葉に不穏を感じたのだろう。
妖精銃による牽制にちからが緩んだ瞬間! 女性は手を離れ少し距離を取る。
そこが隙にもなった。ゴミ箱が飛んでくるのを見切り、一気に紅涙のもとへ。
そのままゴミ箱をぶん投げればクリーンヒット!
「やりーヒットー」
「いたい、いたい……!」
紅涙から女性を離すように手を取りアキは後退する。
まだまだ健在、逃げ切れるわけではない。
故に安心させるようにアキは微笑むのだ。
「おねーさん土産選び付き合ってくれっかな?」
安心させるようにそう言って。
巫条・命 (壊された祠の主・h01102)はその日きらきら輝くナイトツアーに参加していた。
もちろんタダで参加していたわけではない、依頼の話をちらりと耳にしたからだ。
そうして水族館を楽しんでいる中、男女の諍いの声、数人様子を伺うような人物を発見したことから、命は今回の依頼の手助けをする事に決めたのだ。
故に命も追いかける、紅涙とその女性を。
そうして着いてみれば、既に戦闘は始まっていて。
(さて、どうしたらいいかしらね?)
男性が1人、ゴミ箱をクリーンヒットさせ女性の手を取ることに成功したのをみて、援護する事に決める。
「来よ 来よ 蜂よ」
それはジャイアントホーネットだった。
針の一撃がゴミ箱にあたり痛みに呻く紅涙に容赦なく刺さっていく。
「|蠑ア縺???>縺倥a縺ッ繝?繝。縺ェ縺ョ繧《弱い者虐めはダメなのよ》」
予想外の方向から来た攻撃に、悶え苦しむ紅涙。然し容赦するという言葉は誰にもないのだった。
(うーんいつも見ているようなサメさんがいなかったのは残念だけど……)
きらきらがやがや、楽しそうな雰囲気から一転、第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)は薄暗い道を歩いていた。
先程見たサメは何も無い“海の中を泳ぐ魚”のサメだったのだ。マスターが見ている映画のようなサメは居なかったのが残念である。
「依頼の対象が現れたみたいだよマスター」
男女のあれこれはわからないけれど、依頼の達成の為に倒させてもらうと、既に戦いが始まっている中を近くに隠しておいたWZに乗り込む。
サブマシンガンによる制圧射撃に紅涙も血霧に霞む愛しき人を召喚し2人で攻撃しようと動こうとした瞬間!
「消えろ、イレギュラー!」
パルスブレ―ドで攻撃し、1人が吹っ飛んでいく。4倍による威力に立ちどころも無く消滅していくのを見てルーシーは小さく笑みを浮かべた。
然しその衝撃にルーシーも無傷ではいられない。
折れた腕、されどもう一度使うことだって出来るし、何より自分は1人ではない。
紅涙は追い詰められていた。
天野・葵 (碧空の操縦者・h06847)と若命・モユル (改造人間のジェム・アクセプター・h02683)はそれぞれ依頼の話しを聞いて、それぞれナイトツアーに足を運んでいた。夜の水族館、海月が漂う幻想的な光景、お土産屋の賑わい、それぞれ少しナイトツアーな水族館を楽しんで。
然し話通り男女のいざこざの後、2人は他の√能力者を見つければ同じように足を進めてついていく。
そうして開けた場所。そこでは既に仲間たちが戦っていて、戦況は√能力者の方に傾いているのがわかった。
それに女性は男性の√能力者が確保したようだ、紅涙も消耗している……然し傷を負った√能力者もいるように見えた。ならば、と葵は1歩前に出る!
「援護します! ここは任せて下さい!」
紅涙にと容赦なく一斉射撃を!
もう1人召喚する紅涙はただやられるわけではない、マンホールが葵と、葵の友達の「碧空」に向かってきてはその身に呪詛もかけていく。然しそこから動かないのはモユルを前に進ませる為だ。
「こいつが元凶か……オイラたちでやるしかないね」
そんな身をはって守ってくれる葵たちの頑張りを無駄にする訳にはいかない。
「ジェム、セットオン! 変身っ!」
炎の重装強化モードに変身するモユル。
その身のまま駆け抜ける! シャクネツブレードに重量攻撃をのせて、まずは一体弾き飛ばしては、その間を葵の援護射撃が通り抜け紅涙を牽制していく。
「ありがとう!」
モユルが、今度は貫通攻撃にて紅涙を貫けば、かはりと紅涙が血を吐いて地面にと崩れ落ちる。
彼女にも同情する余地はあっただろう、けれど、ここで倒さなければ起こるのは惨劇のみだ。
「あっちの女性は……?」
「大丈夫みたいだ」
葵とモユルが確認すれば、女性は男性の√能力者に話しを聞いてもらったのかすっきりした表情をしていた。
どうやら何か間違いが起こることもないだろう。
ならばあとはナイトツアーの続きを楽しむべきである……!
第3章 日常 『おまつり日和』
紅涙も無事に倒して、残りの時間はナイトツアーを、楽しむだけだ!
お土産屋さんで期間限定のお菓子を買うのも、屋台にて色々な食べ物や宝石掴みをするのも悪くないだろう。
なんならもう一度夜の水族館を楽しんだっていい。
好きに時間を過ごすのがお祭りの醍醐味なのだから!
「お、無事に倒せた感じ? みんなマジツエー」
おねーさんと逃げたかいあったわーとアキ・サクラ
(のらりくらり・h09479)は微笑みを浮かべる。
「こっからはー……土産探し時間ー」
というわけで、と女性へ向き直るアキ。
「おれ一人じゃ寂しいからおねーさん一緒いこー?」
「……早紀っていいます」
「早紀さんが教えてくれた土産の名前も覚えられないし、その後お買い物もご一緒するからぁ」
「……ふふ、大丈夫ですよ」
「もちろん、うまいもんも食べよう?」
「ありがとうございます」
ご一緒してくださって、寄り添ってくださってありがとうございます、と早紀が頭を下げる。
色々誘い文句を考えていたアキだったが、それは必要なさそうだ。
じゃぁ行く? と問いかければ早紀は嬉しそうに微笑んでではいきましょうか! とともに歩き出す。
アキの心遣いが、早紀の心を確実に救った瞬間であり、楽しい時間へと……思い出へと変わるのも確実になるだろう。
ちなみにアキはちゃんと職場のお姉様方にお土産を買うのを忘れなかったのだった。
水族館の外も賑やかであった。美味しそうな香りはクレープか、焼きそばか、はたまた名物だというたこ焼きなのか……第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)はあちらこちらを覗き込んでは屋台を楽しんでいた。
あとは帰るだけだけれど寄り道をしたっていいだろうと歩いているのだが、その片手にはホットワインを持っている。
シナモンとスパイスの効いたそれは寒い中、身体を暖めてくれるし、今買ったクレープにもよく合うお味である。
美味しいもの巡り……と他にも林檎飴や串に巻かれたお好み焼きなんかを見ていれば、名物だという巨大たこ焼き屋の前に!
巨大たこ焼きというだけあり、ひとつが拳大ある。
「ひとつ下さい!」
そうして待つこと数分、ルーシーの前には巨大たこ焼きが。
うずらの卵やタコも大きなものがゴロゴロと入っているそれは、小さな箱に入っていて、食べやすい。
「いただきます」
帰るまであともう少し。
ゆっくりとほかほかなたこ焼きを食べながら次は何を食べようかと算段するのだった。