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迫撃! クリムゾン隊!
●画期的新戦術!?
「|2号機《ツヴァイ》、|3号機《ドライ》、奴に|三位一体攻撃《読みはご想像にお任せします》を仕掛けるぞ!」
「「|了解《ラジャー》!」」
先頭を行く|1号機《アイン》の号令に合わせるように続く|2号機《ツヴァイ》と|3号機《ドライ》が隊列を組む。
鮮やかな赤色の機体が3機で連なって疾駆する様はまるで赤い3連星のようだ。
先頭の|1号機《アイン》が|自律戦闘端末《読みはご想像にお任せします》を素早く展開すると標的と思しき相手に一斉にビームを浴びせかける。
たまらず回避運動をした相手に対してすでに狙いをつけて構えていた|2号機《ツヴァイ》が即座にバズーカを発射!
直撃を免れたものの至近距離からの爆風で体勢を崩した相手に|3号機《ドライ》がバーニアを噴射して一気に迫るとビームサーベルで一刀のもとに切り伏せた。
「ふっふっふっ、√EDENの√能力者どもめ、先日は不覚を取ったが我々が新たに編み出した新戦術をもってすればたちどころにあの脆弱な世界なぞ征服してくれるわ!」
「「おおーーーーー!」」
実験台とされた哀れな標的の残骸を前に、赤き戦闘機械群は雄たけびをあげるのだった。
●クリスマスには赤が似合う
「みんな、クリスマスシーズン真っ只中だけど事件だよ!」
集まった√能力者たちに予知した事件の説明をするのは可憐で大胆なミニスカサンタ服に身を包んだ『星詠み』のシュネー・リースリング(受付の可愛いお姉さん・h06135)だ。
ちなみに『星詠み』とは特殊な√能力者で、十二星座から『ゾディアック・サイン』を得て、将来起こり得る事件や悲劇を予知することができる。
「わたしたちの大勝利に終わった王劍戦争――王劍『|明呪倶利伽羅《みょうじゅくりから》』を確保した大妖『|禍津鬼荒覇吐《まがつおにあらはばき》』によって引き起こされた『|秋葉原荒覇吐戦《あきはばらあらはばきのいくさ》』のこと――で√ウォーゾーンから侵攻してきた戦闘機械群の中に『クリムゾン隊』っていう出オチで倒された部隊がいたんだけど」
覚えているだろうか、威勢よく颯爽と現れ華々しく敗れ去った彼らを。
「その『クリムゾン隊』がまたしてもクリスマスシーズンの東京に現れるの。しかも前回の敗北の経験を糧に編み出した新戦術を引っ提げてね」
負けてもへこたれず改善し改めて挑んでくる、まるで悪の組織の鑑のような連中だった。
「困ったことに都心のど真ん中、新宿御苑の玉藻池付近に出現するわ。幸い立ち入り禁止エリアだから一般人はいないけど、周囲に侵攻しだす前に撃破してくれると被害は最小限に抑えられると思う」
今回はなんと空飛ぶ戦闘母艦まで投入されていて、クリムゾン隊の支援のために突入してくるらしい。
「手早く倒さないとせっかくのクリスマスが台無しになっちゃう! みんな、よろしくお願いね!」
シュネーは可憐で大胆なミニスカサンタ服姿のまま可愛くお願いすると、√能力者を送り出す。
「そういえばついさっき変な予兆が見えたような……」
しかし、誰にともなくこぼしたシュネーのつぶやきは、師走の喧騒の中に溶けていくのだった。
これまでのお話
第1章 集団戦 『クリムゾン隊』
「以前とは違う場所に出たな」
「そうだな。だが今は√EDENはクリスマスと呼ばれるシーズン。サンタなる赤装束が街を闊歩しているから赤い迷彩はカムフラージュに役立つだろう」
「さすが|1号機《アイン》、詳しいな」
何やら中途半端に情報が伝わっているようで、戦闘機械群は微妙な勘違いをしつつ新宿御苑の玉藻池付近に降り立つ。
だが場所が公園だけに緑ならともかく赤なんて目立って仕方がないのではなかろうか。
「しかしこのくそ寒い時期に何が悲しくて冬の北半球で戦場に出なければならんのか……」
「どうした|3号機《ドライ》?」
「クリスマスは√EDENでは|若い男女《カップル》が街でイチャつくけしからん時期と聞く」
「「な、なんだってー!」」
なぜか驚愕する|1号機《アイン》と|2号機《ツヴァイ》。
「おのれ、√EDENのリア充どもめ……」
「「「クリスマスを貴様らの血で赤く染めてやるわ!」」」
フルフルと怒りで肩を震わせる|1号機《アイン》の怨嗟の声に続けて、3機の声が重なり、無人の玉藻池に響き渡るのだった。
※攻め込んできたのは3機だけということではなくて|1号機《アイン》、|2号機《ツヴァイ》、|3号機《ドライ》の3機編成の小隊がいっぱい来てますので相手が不足することはございません。
ご安心ください。
まじめな侵攻に見せかけたTWクリスマス名物のRBシナリオです。
リア充アピールすると優先して攻撃してきます。
ぼっちを煽るとムキになって攻撃してきます。
同志をアピールしても結局は攻撃してきます。
もちろん普通に戦っても大丈夫です。
クリムゾン隊が√EDENのリア充たちに嫉妬の炎を燃やし大声で騒いでいるすぐそばで
1機のウォーゾーンが待機状態を解除して臨戦態勢へ移行していた。
「またあいつらなの……」
コックピットでため息を漏らしながら呆れを孕んだつぶやきをもらすのは森屋・巳琥(人間(√ウォーゾーン)の量産型WZ「ウォズ」・h02210)。
彼らが言うところの『|先日の戦い《秋葉原荒覇吐戦》』の現場にいたうちの一人だ。
あちこちで様々な√の簒奪者相手に人知れず戦闘が行われている√EDENで全く同じ相手と出くわす確率を思うと引きの強さを喜ぶべきか運の無駄遣いを嘆くべきか。
どうせ当たりを引くなら宝くじのほうがよかったのに……遥かな高みの高級ウォーゾーンに思いをはせながら適当な相手に照準を合わせると狙撃中の引き金を引く。
多少騒がしい玉藻池にあっても発砲音はひときわ大きく響き、クリムゾン隊が反応する間もなく狙った1機の頭部に大穴を穿つ。
「えっ?」
目の前の味方の頭部が撃ち抜かれ、一瞬の沈黙ののち、撃ち込まれた炸裂弾が大爆発をおこした。
「敵襲―!」
各機が一斉に発砲方向に向き直ると近くにいた小隊が巳琥の搭乗するウォーゾーンの迎撃に向かってくる。
「あ、あいつはあの時の!」
「おのれ、またしても不意打ちとは卑怯な!」
「ここで会ったが百年目! 我らの新たな力を思い知らせてやる!」
どうやら先方も巳琥のことを覚えていたようで、秋葉原での借りを返そうとフォーメーションを組む。
「覚えていてくれて光栄よ。さあ今日も戦闘をしましょう」
ちなみに撃破された機体の他の小隊機は「|1号機《アイン》ー! メディーック!」などと戦争映画さながらの救護活動を行っている。
「気をつけろよ、あの狙撃銃は近接も兼用だ!」
「手の内がわかっていれば問題ない!」
秋葉原で食らった零距離射撃を根に持っているのか|3号機《ドライ》が小隊に注意喚起をするが、|1号機《アイン》は新戦術によほど自信をもっているのか奇襲を終えて正面からの戦闘態勢をとる巳琥に必殺の|三位一体攻撃《読みはご想像にお任せ》をかける。
星詠みからの情報通り展開される|自律戦闘端末《読みはご想像にお任せ》を難なく躱すと、ここまでは敵にとっても予定通りとばかりに続けて|2号機《ツヴァイ》がバズーカを発射、直撃はもちろん避けても|3号機《ドライ》がとどめを刺すべく迫ってきていた。
この厄介な攻撃に巳琥はあろうことかバズーカの直撃コースをとる。
「わざわざ当たりに来るとは、馬鹿なやつだ!」
「あらそう?」
勝利を確信したクリムゾン隊の目の前で巳琥はウォーゾーンのコックピットハッチを開くと迫りくる砲弾に右手を伸ばす。
「なにぃーー!」
「えっ、あれに乗ってるのって、あんなガキ!?」
あまりに予想外の展開に驚きが隠せないクリムゾン隊。
もはや直撃は不可避、なのに|3号機《ドライ》の脳裏によぎるのはあの時の記憶。
「……どっかで見たぞ、この流れ」
巳琥は右掌を砲弾にかざしながら叫ぶ。
「望む|未来《先》を掴むために!」
巳琥の|貫き通す意地《ツラヌキトオス・イジ》はその右掌で触れた√能力を無効化する。
そして迫る砲弾は|2号機《ツヴァイ》が√能力で発射したもの、つまり――消える砲弾、正面に狙撃銃を構える巳琥のウォーゾーン、そしてそこへ向かって一直線に全速力で突進する|3号機《ドライ》。
「また俺なのかよー!」
直撃を受けて爆発四散する|3号機《ドライ》の炎に照らされて浮かび上がる量産型ウォーゾーンは次弾を装填すると銃口を次の敵に向けた。
「ずいぶん楽しそうなことしているな。私も混ぜてもらっていいかね?」
バーニアで機動するウォーゾーン同士が撃ち合う炸裂弾と爆裂弾が飛び交い、ときにビームや爆発の輝きや轟音が響く鉄火場と化した新宿御苑玉藻池に、これまた鉄火場が似合う男が参入してきた。
いかにもその筋の者といった趣の九・白(壊し屋・h01980)だ。
「|何奴《なにやつ》!?」
侵入者に気づいた1機が誰何の声を上げる。
状況的に敵以外ありえないが声をかけられたらついつい聞いてしまうものなのだ。
「私か? 問われて名乗るもおこがましいが、九・白だ。東條探偵事務所、所長代理兼荒ごと担当ってところだね」
自身の身長を超える巨大な戦闘機械からバズーカの銃口を向けられても臆することもなく平然と答える。
「な、なんだこいつは!?」
「気をつけろ、スキンヘッドにサングラス、浅黒い肌の巨漢とくれば手練れと相場が決まっている」
いったいどこで仕入れた知識なのか、白の立ち振る舞いにクリムゾン隊は油断できない相手だと判断する。
スキンヘッドにサングラス、浅黒い肌の巨漢が黒のスーツを着て卒塔婆を担いでいるのだ。クリムゾン隊でなくともその尋常でない覇気を感じ取るであろう。
「この年の瀬にわざわざ騒ぎを起こしに来るな。戦争なら|手前《てめえ》の√でやってくれ。時間外労働させられて迷惑だ」
宣戦布告の気の利いた言い回し……と思いきや、白にとっては額面通りの意味であった。
もうすぐ推しのライブ配信が始まってしまうからさっさと倒さないと間に合わないし都心で騒ぎが起きたら配信が延期されてしまうかもしれない。
この強面でバーチャルライバー沼にしっかり沈んでいる白にしてみれば推しのライブ視聴の妨害をする者は誰であれ敵なのだ。
「時間がないから手早く済ますぞ」
白はクリムゾン隊にそう告げると目の前の敵がうっとおしいという感情を隠そうともせず卒塔婆を構える。
「こ、こいつ、精鋭部隊たる我らに何たる言いよう! 絶対に生かして帰さん!」
精鋭という自負があるだけに踏みつぶすのもめんどくさい雑魚扱いされ赤き戦闘機械もさすがに激昂。
「あの世で後悔するがいい!」
いかに強面といえど所詮は人類。
この生意気な生肉風情を|全方位飽和攻撃《読みはご想像にお任せ》でウェルダンに変えるべく|自律戦闘端末《読みはご想像にお任せ》を展開する。
「ナウマク サマンダ バザラ ダン カン」
|自律戦闘端末《読みはご想像にお任せ》が白を取り囲むように配置される中、指で印を結んだ白は真言を唱え、心を穏やかにすると卒塔婆が|黄昏色の炎《迦楼羅炎》を纏う。
|全方位飽和攻撃《読みはご想像にお任せ》が開始されるその刹那、静から動へ、白が駆ける。
標的の機体目掛け、神がかったような文字通りの神速で。
予想外の速さに|自律戦闘端末《読みはご想像にお任せ》の放つビームはことごとく狙いを違え、ただ公園の芝生を焦がすのみ。
「は、速い!?」
「これは……通常の3倍です!」
目前まで迫った白にろくに反応できない戦闘機械へ、倶利伽羅剣・抜刀を叩き込む。
「遅い」
|黄昏色の炎《迦楼羅炎》を纏った卒塔婆はまるで紙でも切り裂くように戦闘機械の装甲を一刀のもとに切り裂くと、断面に沿って上半分が地面に滑り落ちる。
まだ敵機は残っている。
ライブ配信開始予定時刻を気にしながら白は卒塔婆を振るうのだった。
「おかしいモグ……」
モコ・ブラウン(化けモグラ・h00344)は本来であれば今頃は飲み屋でただ酒にありついていたはずなのだ。
それなのに気が付けば新宿御苑に迷い込んでいた。
しかも茂みの向こうからは何か巨大な機械が駆動する音や火器の射撃音や爆発音が聞こえてくる。
「これはただの喧嘩じゃなさそうモグ」
具体的にはEDENと簒奪者が戦ってそうだ。
見なかったことにしてもよかったが飲み会をする飲み屋はこの近く、付近に流れ弾でも当たってただ酒がおじゃんになるのも困るし、何より自分の不作為で死傷者が出ては酒が不味くなる。
「お仕事するモグよ」
まずは状況確認とばかりに茂みに隠れながら向こうを伺うと。
「集中、集中……!」
白い髪の少年が赤い戦闘機械群と思しき相手に奮戦していた。
どれほど戦っていたのか、ところどころ破れた服からはいくつもの血が滲んだ傷が見える。
「堅実に確実に、一体でも多く敵を無力化する……!」
後続の為に一体でも多くの敵を戦闘不能にすべく自身の数倍もの大きさの戦闘機械群に立ち向かっていたのは冬夜・響(ルートブレイカー・h00516)だ。
動きの機敏さで対等に渡り合っていたが体格差は大きく、致命的な打撃を与えられないでいた。
響自身にもそれはわかっているだろう、だが――
「僕に出来ることは、まだあるはずだから!」
たとえ力の差があっても√EDENを守るために懸命に立ち向かう少年。
「モグはこういうのに弱いモグよ」
モコは響を援護すると決めると√能力を発動する。
「モグーラ・チェーンジ!」
モコが念じるとその姿は都市部で真価を発揮する装甲車、機動戦闘車に変わる。
どこかモグラっぽさが残るシルエットだが侮るなかれ、キャタピラこそついていなくとも一撃必殺の砲塔を持つ立派な戦闘車両なのだ!
いまだ見つかっていない利点を活かすべく、茂みから戦闘機械へ砲塔を向けて狙いをすます。
その状況を知ってか知らずか、響が再び勝負をかける。
「僕に、出来ることを!」
担いでいた殴り棺桶を地面すれすれで薙ぐと脚部を急襲された戦闘機械がバランスを崩す。
すかさず鎖をまとわりつかせその動きを制限すると位置が低くなった頭部めがけて殴り棺桶で思いっきり殴りつけたのだ。
頭部に衝撃を受けて一瞬動きが止まるものの撃破には至らなかったのか、強かに痛撃を加えてきた響へ戦闘機械は報復のバズーカをお見舞いすべく銃口を向ける。
万事休すと思われたが。
「いまモグ!」
転倒した戦闘機械に照準を合わせていたモコこと機動戦闘車の主砲が火を噴いた。
「なっ!?」
モコの砲弾はまさかの砲撃に驚く戦闘機械に一直線に突き刺さると装甲を貫き内部で爆発を起こす。
だが、自身の死を悟った戦闘機械はせめて響を道連れにせんと最後の力を振り絞ってバズーカの引き金を引いたのだ。
銃口の目の前にいる響は思わず顔を両手で庇った、だがしかし、砲弾が響を捉えることはなかった。
発砲の瞬間に急発進で走りこんできたモコの機動戦闘車が立ちはだかり、響の盾となったのだ。
爆発の衝撃で吹き飛んだモコこと機動戦闘車は地面をゴロゴロ転がりながら、変身が解けたのかモグラの姿に戻ったが。
「……間一髪モグけど、何とかなったモグ」
体についた土を払いながら努めて朗らかに無事をアピール。
礼を述べる響と健闘を称えあうと共に残った敵の撃破に向かっていくのだった。
玉藻池での戦闘がいよいよ乱戦となってきた頃、上空から接近する機体があった。
伊藤・ 毅(空飛ぶ大家さん・h01088)が搭乗する重戦闘機形態の大型ウォーゾーン『WZF-204スレイヤー』である。
「シングルベール、シングルベール、鈴ならず~……マスターアーム点火、LANDLOAD、エンゲイジ……はあ、クリスマスに何やってんだろ、俺」
そしてクリムゾン隊に負けず劣らずクリスマスに戦争をすることに寂寥感を覚えている男だった。
家賃収入で生きている自称高等遊民なプー太郎にしてみれば四季も平日も休日も同じようなものに思えるかもしれないが、やはり人並みにクリスマスを楽しみたいもの。
それなのにクリスマスにこうして空の上でひとり、簒奪者と戦うことになってしまっている。
ほどなく玉藻池上空に到着すると3機で連携して戦う敵の姿が見えた。
「いいよなお前らは、3人一緒にいれて……」
星詠みの情報によれば3機で小隊を編成して攻めてきているようだが、つるむ相手さえいない 毅にしてみればそれすらも自分にはないクリスマスの醍醐味。
さしあたっては自分のやるべきことをと、応戦の構えを見せる戦闘機械群に、画期的新戦術と彼らが自画自賛する|三位一体攻撃《読みはご想像にお任せ》のフォーメーションを分断し連携を断つようにミサイルを効果的に撃ち込んでいく。
戦術的には当然の攻撃ではある。
だが、 毅には自覚がなかったかもしれないが、この戦法を選んだのはもしかしたら3人一緒にいるクリムゾン隊への妬みだったかもしれない。
実際にどうだったかはともかく攻撃は狙った効果を発揮し、フォーメーションを崩された敵は一時的に連携を欠く状況になった。
そこを 毅は見逃さず、ウォーゾーンを変形させて最も近い敵機に組み付くと格闘技の関節技もかくやという体固めを極める。
ここでもろとも撃てば 毅を撃破できただろうが、通常の戦闘機械群の雑兵ならいざ知らず、相互に戦友意識のあるクリムゾン隊は仲間を撃つことに躊躇しているのが見て取れた。
攻撃が来ないことを確認するともがく戦闘機械の中枢部へ銃口を押し付けて引き金を引く。
「ほれ、クリスマスプレゼントの鉛玉だ……」
致命傷を受けて事切れた戦闘機械の残骸を蹴り飛ばしながら再び重戦闘機形態に変形しながら上昇すると、チャフやフレアをまき散らしながら一時離脱する。
怒りに燃えるクリムゾン隊は 毅へありったけの罵詈雑言とスプレッド・バズーカを浴びせたが、ついぞ撃墜には至らず、 毅は安全域へ離脱した。
その後、地上の味方と連携しながら一撃離脱を繰り返すのである。
第2章 ボス戦 『剣聖天女『シルメリア・ゴースト』』
「クリムゾン隊、全滅! 敵部隊は依然として突入先にあり!」
戦況報告を受けた戦闘機械群は√EDENの防衛力に驚きを禁じ得なかったが、精鋭部隊たるクリムゾン隊を突入させたのだから敵の損害も少なくないはずで、さらに強力なひと押しをもって防衛部隊を粉砕すべく攻略部隊の旗艦が新宿御苑の上空にその姿を現した。
深いグレーの艦体に無数の砲を持つ巨艦の威容はまさしく侵略者としての堂々たる姿であったが――。
突如としてその巨艦を眩いばかりの|光条《レーザー》が貫いた。
|光条《レーザー》が消えしばし沈黙の後、空を覆わんばかりの巨艦は大爆発を起こすと、飛び散った破片や艦体がインビジブルとなって消えていく。
現実離れした光景に全員があっけにとられていると、ふいに現れた溢れる光から、一見すると中華風と思しき女がひとり。
「なるほどのお。彼奴らの口ぶりから察するに、ここが|楽園《EDEN》やもしれぬと」
上半身を覆う青い何かや手に持つ不思議な光を放つ拳銃からして、只者ではないことがわかる。
「さきほどの戦いぶり見事じゃった。そんなそなたらに不躾な頼みじゃがぜひ手合わせを願いたい」
いうが早いか女は拳銃を構える。
頼みや願いと言いつつ、こちらに拒否権はないのだろう。
そして手合わせといっても実際には試合ではなくどちらかが斃れるまで終わらない死合であることは考えるまでもない。
突如として現れた相手に、EDENはいかに相対するのか。