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冬の暖、一時の幸せ

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薄野・実


 空の青が白み日が暮れかけた頃、薄野・実が白い息を吐きながら街路を歩いていると道の脇に雀が落ちているのを見つけた。
 体を膨らませふっくらとしたそのフォルムはまさに福良雀と呼ぶにふさわしいフォルム。だがその場でうずくまる姿はあまり調子が良さそうとは言えない。
 寒さにやられたのだろうか、実は案じてその場でじっとしている雀に声をかける。
「キュルル……(大丈夫か……)」
「ぴぃっく!(ひゃっほーそらがあおいぜー!)」
 実が心配げに声をかけると雀はヒャックリとも言えぬ変な鳴き声をあげると、きゅるんと小さく首を傾げる。
「ちゅぴー(楽しいし目の前の人間に振りまいとくか、かわいさ……)」
「キュイ?(あ、ありがとう……?)」
「チチ? チュチュチュ!(ん? お前もしかして言葉喋られるの!?)」
「キュッキュ(少しね)」
 実は朱雀怪人細胞を植え付けれた影響で鳥の言葉も分かるし話しもできる、まさに鳥語ネイティブな人間。
 今までそんな存在が居なかったからか、慌てた雀は逃げようと羽ばたく――が、もはやジャンプした位の飛距離でべシャリと地面に落ちた。
 これはアレだ。それは夜の繫華街で見かける、アレだ。
(これは、酔っ払ってるな……)
「キュ、キュイイ?(いつからそんなに酔っぱらってるんだい?)」
「チュチュ~(昼に見かけた木になっている柿の色がよ~一等濃く見えてさ~食べたら変なにおいするけど甘くて甘くて。んで食べたら体がポカポカしてふわふわ~っと気持ちいいからここで幸せを堪能してたってワケ)」
「キュキュイ(なるほど、柿が発酵したわけか)」
 柿やリンゴなどの木の実を樹に成らせたままにしておくと気候条件等々で発酵する事がある。
 警戒心が高い雀が人が行き来する場所で無警戒にいる理由が何となくわかったところで、実は次はどうするか思案する。
 介抱するか、このまま酔いが醒めるまで待つか――。
「チュチュ(あーいた。探したよ)」
 少し離れた木の上の雀が声をかけてきた。
「ルルル……(友達かい? この子酔っ払ってしまっているみたいだから近くにいてあげて欲しい)」
「チチ!(人間が……! って、酔っ払っているの!? だから食べ過ぎないでって言ったのに!)」
「ちゅぴー!(しかたねーじゃん! うめーんだもん!!)」
 近くまで飛んできた雀が酔っ払った個体を突き、喧嘩が始まりそうだったので実は慌てて止めに入る。
「キュイ(まぁまぁ……それよりもここは人や動物の往来が多いから急いで隠れた方がいいよ)」
「チチ!(はっ……!確かにそうですね、ありがとうございました。お兄さんもお気をつけて帰ってくださいね)」
 後から来た雀が小さく首を傾げる礼を示すとと茂みに入っていき、
「ちゅいー!(じゃあのー!)」
 その後を酔っ払った雀が千鳥足で追いかけていった。

「酔っ払ってるのには驚いたけど、楽しそうで良かった……」
 雀の去った方を見てしばらくしてから実は再び歩き出す。
 遠くから聞こえる音楽が年の瀬を知らせていた。

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