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幸福と一緒に

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降葩・璃緒

 まだ見ぬ花と出会いを求めての散歩は降葩・璃緒(花ひらり・h07233)の趣味のひとつ。
 今日も気の赴くままに。気儘に日当たりのいいところで昼寝している猫に小さく笑って、ひとびとの日常の傍らを。風のさざめきに誘われるように見つけたのは√だ。
 その道を見つけて、璃緒はぱちりと瞬いた。その先にはどんな場所が広がっているのだろう。
 もしかしたらすぐ閉じてしまうかもしれない。これはきっと一期一会の道と璃緒はその先へ。
 行って大丈夫かな? とちょっとだけ不安も滲んだ。けれどそれよりも、どんな世界が広がっているのだろうかと好奇心が勝ってしまうから、一歩踏み出して。その足はまたすぐ動き出す。
 √を通ったなら――その先は淡い夜が広がっていた。
「わぁ……」
 璃緒は綺麗と、その光景に瞳巡らせる。石造りの塀に囲まれた道。閑静な住宅街と言ったところか――この雰囲気は√ドラゴンファンタジーのどこかと璃緒は察する。
 石造りの塀の間を進んで行くと、ぱっとそれが途切れる。途切れたその先を覗き込むと、きらきらと輝くガラスの温室が見えた。
「!」
 素敵な温室と璃緒の足は吸い寄せられる。
「へへ、温室があるとつい近寄っちゃうんだよ」
 そう零しつつ、誰かいないかと――入って良かったかな? ときょろきょろ。でもそれを確認しようにも人の気配はない。ないまま、温室の入口へと辿り着いていた。
 その入り口には案内の看板がかかっていた。そこに書かれているのは、『どうぞご自由に』の歓迎の言葉。
「あ、看板……良かった、自由に見学して大丈夫みたい」
 璃緒はほっとする。入っちゃダメ、何て事がなくてよかったと。
 そして看板には続きがあった。『鈴蘭の温室へようこそ』、とあった。
「咲いてるのは鈴蘭だけなんだ」
 続く文字を璃緒は追いかける。この温室には鈴蘭のみが咲いていますと。
 鈴蘭には毒がある。花だけ、根だけ、なんてことはなくすべてに。
 ちょっとふれただけでも手洗いは必要。もし動物が口にしたら様々な症状が現れて苦しむことになる。
 だから見るにしても少し注意が必要と璃緒は思った。
 璃緒の目は続きを追いかけて、ぱちりと瞬く。
「全部無毒化されてるから、安心してご覧下さい……へぇ」
 それは、興味深い。一体どんな風に無毒化したんだろう――と、思う。もし温室の主がいたら聞いてみたい。
 璃緒も温室の管理人だ、だから他の温室というものは興味があるし、心躍る場所だ。
「それじゃあお言葉に甘えて、お邪魔しまーすっ!」
 扉を開けると、ちりんちりんと音が鳴る。見れば扉にあるドアベルの音だ。それも鈴蘭の形をしていて、璃緒は小さく笑み零した。
 どんな鈴蘭が咲いているのかとワクワクしながらそっと扉を開く。
 入っただけでわかる。この温室はものすごく手入れが届いている温室だと。
 それは璃緒も温室の管理人だからこそ感じることかもしれない。
 くるりと視線を巡らせるが他には誰もいないようだ。
 なら、とすっと璃緒はこの場の空気を吸い込んだ。
 青々しい香り――その香りは入ったときから感じていた。それを胸いっぱい吸い込んで、そしてゆっくりと吐き出していく。
「良い匂い……無駄に深呼吸しちゃう。ふふ」
 さて、と少し進んだだけで興味が惹かれる鈴蘭ばかり。
 入ってすぐに迎えてくれたのは普通の鈴蘭。
 でもその先には知っているけど知らない顔した鈴蘭が沢山咲いていた。
「見たことのない鈴蘭がいっぱい!」
 ぱっと見るだけでも、真っ白ではなくてカラフルな、赤や黄色、紫にと様々な色をした鈴蘭たち。
 色を付けたのか、それともどこかにもとから色がついた鈴蘭があってそれを持って来たのか――璃緒はこれだけあるなら虹色のもあったりして、なんて笑う。
 その次に璃緒を迎えてくれたのは、鈴蘭だけれども鈴蘭ではない、ガラスのような鈴蘭。
 本当に硝子というわけではなくて、花も茎も、葉も透明でつややかだ。けれどそっと触れてみれば硬いわけではなく植物の感覚。
「不思議……」
 ふと、雨上がりを璃緒は想像した。その中ではきっと雫を纏ってきらきら輝くのだろうと。
 と――りん、りんと小さな音が聞こえた。
 小さくて可愛らしいと音だ。耳を澄ませると自分の後ろから。
 振り向くと、花の重さで自然と揺れる鈴蘭。その花が鳴っているようだ。
「澄んだ音……」
 音が鳴るのも不思議と璃緒はちょっとだけ触れてみる。
 花が揺れて、りん、りんと響く音に耳を澄ませて、いいなぁと鈴蘭は零した。
「この花可愛いんだよー、良いなぁ家でも育ててみたいな」
 ここの鈴蘭、ボクの温室でも育つかな? と零せばまるで返事のようにりんと鳴る。
「今家には鈴蘭は無いからなぁ……今度苗買ってこよっと」
 と、離れた場所にも鈴蘭――それはとても大きい。離れていても自分の身長くらいあるのでは、というくらいに。
 すごい、気になる! と璃緒はその鈴蘭のもとへ。近づけば自分の胸元くらい――でも、その後ろには。
「あ、こっちのはすごい大きいっ! 中覗いちゃお」
 自分の背丈より大きい。見上げる位置にその白い、大きな花がある。
 そうっとその花の中を覗き込むと、きらきらとしたものが見えた。でもそれはぱっと輝いて消えてしまう。
「! 何かいたのかな? いきなり覗いてごめんねっ!」
 それが何かはわからなかったけれど、璃緒は謝ってそっとまた中を覗く。するとちかちか、柔らかな光がその中で再び瞬いた。まるで気にしないでというように。
 璃緒は大きな鈴蘭からゆっくりと離れる。
「静かに見学しなきゃとは思うんだけど、つい興奮しちゃうんだよ」
 落ち着かなきゃ……、とふーと長く息吐いた。大きな鈴蘭の次は、何だか違和感のある鈴蘭が目に留まった。
「この鈴蘭はどんなやつだろ?」
 近くに寄ってみれば、布みたいな質感。造花かな? と思ったけれどそうではないようだ。
 こんな鈴蘭もあるんだと、璃緒はまだまだ知らない花があることを改めて感じていた。
「どれも素敵でずーっも見てられちゃうっ」
 沢山の鈴蘭たち。この温室の主は何を思ってこの花を集めたのだろう――璃緒はそういえば、と思い出す。
「鈴蘭って『幸福を呼ぶ花』って言われてるんだよね」
 幸福を集めたのかな、なんて笑いながら進みつつ、璃緒はうーんと考える。
「師匠にお土産に買って帰れないかな?」
 師匠――それは、璃緒に『幸せ』を教えてくれた人。誰よりも幸せでいて欲しい人だ。
 温室の出口はこちら、という案内が見えて。もうこの温室も終わりかとくるりと振り返る。
 いろんな鈴蘭があったと思い返してふと思う。さっきの大きな鈴蘭の花の中でみた光――あれはもしかして。
「……ここの主だったり……」
 と、口にして。そんなことないか! と璃緒はくるりと背中向ける。
 帰ったら師匠にここの話をしよう。それがお土産――と思いながら外へ出た璃緒。
「ん?」
 すると出てすぐ、足元に一つ鉢植えがあった。まだ花は閉じ、けれどこの温室で見た鈴蘭のひとつだ。
 そしてメッセージカード――『あなたに幸福を』とある。
 誰から、とちょっと不思議だけれど璃緒はその鉢を手にしていた。
「ボクとくる?」
 その声に鈴蘭は小さく揺れる。璃緒は返事ありがとうと紡ぎ笑み深めた。
 師匠にも紹介しなくちゃと璃緒は帰るべき場所へ――その璃緒の姿を、温室からそっと出てきた光は嬉しそうに見送っていた。

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