シナリオ

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まるうま、にじゅうろっぴき。

#√妖怪百鬼夜行 #えとまいり #リプレイ執筆中

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「やあ、新年あけましておめでとう、だ。」
 ティーサロンのカウンタ席で貴方を待っていた星詠みのノイル・S・リース=ロスはひらりと白い手を振った。
「ふふ、そんなに警戒しないでも、依頼とは云え厄介事ではないから安心して欲しい。」
 貴方の顔色を見てノイルは楽しそうに笑う。

「頼みたい事は、年神様の処にいる使い、みたいな子達の面倒を見る事なんだけど……先ずは折角だから年神様の処にご挨拶に行っておいで。」
 件の年神様を祀る神社は√妖怪百鬼夜行の山の上。緩やかな石段沿いに色々な屋台も並んでいる。
「初詣、にしてはちょっと出遅れだけど、丁度年神様も各御家庭から帰ってくる頃だし。」
 参拝者にはお神酒や甘酒が振舞われ、餅つき等の催し物も開かれると云う。
 おみくじで新年を占い、お守りを頂くのも良いだろう。

 そうして思い思いに過ごして午後からは。
「神社の山の裏手に、その年の神使を放牧してる場処が在って、」
 神使を放牧。
 余り聞かないワードが出たが一旦スルーする。
「まるっとした……馬……うまの様な……何か……。」
 突然ノイルの言葉がぼんやりした。
「否、干支に倣っているから午の筈なんだけど……、」
 一度考える素振りをしたが、諦めたのか言葉を続ける。
「馬を模したらしい、まるっともっちり小さな神使が26匹、放牧されていて。その子達の遊び相手兼、厩舎へ集める作業をお願いしたいんだよね。」
 『まるうま』――名が体を表すその使い達は賢く温厚で、此方から手を出さなければ攻撃はしてこない。が26匹もいれば性格は色々。毛並みも色々。相性の合う子のお世話をして上げて欲しい。
「宮司さんの手が足りないらしくてね、お手伝いをお願いするよ。」
 まるうま達と遊んで、お家に返して、ご飯を上げた後は自分達のお楽しみ。

「お仕事が終われば打ち上げだよ。」
 新しい年を迎えたならば、憂いなく過ぎた年を見送らなければ。
 昨年の干支の化身としての『八岐大蛇之姫巫女』を、2025年に思いを馳せながら見送るのだ。
「方法は何でも良いよ。|饗《もてな》すのでも、語り合うのでも、拳を交えるのでも。」
 打ち上げ会場には、宴会仕出しの食事も用意されている。
「まぁ難しい事は考えず、昨年への思いを昇華して、今年をより良い年に出来る様に。――そんな思いで愉しめば良いと思うよ。」
 そう云って黒い影は微笑んだ。
これまでのお話

第3章 ボス戦 『八岐大蛇之姫巫女』


●ゆく年は晴れやかに
 まるうま達をお家に返して、時は夕刻。
 参集殿の大広間にお手伝いのお礼、打ち上げの振舞いとして宴会の準備がされている。
 宴会仕出しの食事と、お酒やジュース等のドリンク類。
 上座には昨年の干支の化身としての『八岐大蛇之姫巫女』が控えている。
 2025年に思いを馳せながら、彼女を見送ろう。
 方法は思い思いに過ごして貰えれば良い。
 彼女に手料理を振舞ったり、思い出を語ったり、拳を交えて思いを発散したり。
 そんな他の参加者を眺めながら宴会料理を楽しんでも良い。

 星詠みの云った通り『昨年への思いを昇華して、今年をより良い年に出来る様に。――そんな思いで愉しめば良い』のだ。
一筆・双羽
ヴォルフガング・ローゼンクロイツ
エレクトラ・テスタロッサ

 宴会場となった大広間には料理と人が並び、穏やかな賑やかさで満ちている。
 その雰囲気に少し押されながら、一筆・双羽(群青世界・h10157)は上座に座る『八岐大蛇之姫巫女』に近付いた。
 去年の干支は蛇……綺麗な方だな、と思いながら丁寧に頭を下げて「はじめまして、」と挨拶すると、姫巫女もにっこりと「はい、初めまして。」と返す。
「蛇神さまも宴会料理は召し上がるかな? ボク一人で食べても美味しくないから……よければご一緒に。」
 料理に視線を送りながらそう誘ってみると、姫巫女は自身の隣をぽんと叩いた。
「ええよ、うちの隣においで。」
 その答えに双羽はぺこりと頭を下げて「お料理取って来ますね、」と気になった料理を見繕って、自分と姫巫女の分を持ってくる。
「どうぞ。」
「おおきに。」
 席に着くと姫巫女の前にお銚子があるのに気付いて、それを掲げると姫巫女もお猪口を取ってそれを受けた。
 まだ双羽は飲めないお酒を美味しそうに飲む姫巫女を眺めて、どんな味なんだろうと想像する。
 それは未来の話。けれど今は|過去《去年》を思わなければ。
「去年、かぁ……ボクは付喪神になったのが昨年末なんだ。」
 ぽつりと語られる話を、姫巫女は頷いて聞いている。
「去年はまだ羽ペンでご主人さまが描かれる世界をただ夢見ていたっけ。」
 双羽はそう云って眼を閉じた。あの時夢見た世界はいつでも思い出せる。
「ご主人様は去年、亡くなってね。遺されたボクは付喪神になって今、ご主人さまの描いた世界を見て回ってる。」
 今の双羽は世界の彩を、風を、香りを、自身の身体で感じることが出来る。
「世界は、本当に綺麗だね。そんな旅の途中にご挨拶できてよかったと思ってるよ。……ありがとう、蛇神さま。」
「……ふふ、おおきに。」
 畏まったお礼に、姫巫女もくすぐったそうに笑う。
「どうぞ、蛇神さまの過ごす年も素敵なものでありますように。」
 そう云って微笑んだ双羽は、辺りが特に賑やかになったのに気付いて視線をそちらに向けた。

 時間を少しさかのぼって。
「ふむふむ。宴会だ。色々ご馳走があるな。トラちゃん、何にしようかなあ。」
 そう云いながらも既に肉料理をもぐもぐしているヴォルフガング・ローゼンクロイツ(螺旋の錬金術師|『万物回天』《オムニア・レヴェルシオー》・h02692)は、まるうまと戯れた時の通称『ヴォル太』と呼ばれる小さな姿のままだった。
「ヴォルフ何頬張ってるのよ。まだちっこいまんまだし。」
 エレクトラ・テスタロッサ(赤雷の精霊・h03015)はドリンクで喉を潤しながら、その姿を見守っている。
 ヴォルフガングは辺りを見回し、会話や料理を楽しんでいる人々を眺める。
「余興があったほうがいいかな。トラちゃん歌ったらどうだ。」
 その方がもっと盛り上がるに違いない。そう思ってエレクトラを見上げると、彼女は眼を丸くした。
「え、何? 歌を歌えって!? 宴会の余興にどうかって? ……まあ、最近カラオケで歌ってたりはしたけど。」
 満更でもなさそうな様子を見て、ヴォルフガングは早速準備を始める。
「よいしょっと! 【|精霊歌唱《ゲイスターゲザング》】!」
 ヴォルフガングの√能力により|赤雷の精霊《エレクトラ》はアイドル衣装を纏い、舞台の幻影が現れる。
 突然出現したステージと、流れ出すイントロに周囲が騒めく中、ヴォルフガングは錬金術で創り出したマイクをエレクトラに渡した。
「ほい、トラちゃん。」
「しょうがないわね! わかったわ! じゃ【愛と勇気の御伽噺】いくわよ!」
 ビシッと指差し、曲に合わせて歌い出すエレクトラ。
「ほら、そこのおねーさん達も。」
 ヴォルフガングは同じく錬金術で創り出したペンライトを姫巫女と双羽に渡すと、それを振って応援する。
「トラちゃーん! いいぞー!」
「え、え? と、トラちゃーん!」
 突然ペンライトを渡された双羽は見様見真似でエレクトラを応援する。
「アイドルライブなんて初めてだ……。」
 最初は戸惑っていた双羽も、歌い踊るアイドルのキラキラを見てこれも美しい世界の一つだなと嬉しくなった。
 盛り上がるラスサビを抜けて、曲は次第にラストに近付いていく。
「――今年も良い年で!」
 最後にまたビシッと振り付けて曲を終えると、会場は拍手に包まれた。
「やったぜトラちゃーん!」
 エレクトラがこのままアイドルレビューを目指すかどうかは別の話。

見下・七三子
イヴォシル・フロイデ
見下・ハヤタ

 宴会場となった大広間には料理と人が並び、穏やかな賑やかさで満ちている。
「わあ、きれいな方ですね。」
 その賑やかさから一歩引いた縁側に腰を落ち着けて、見下・七三子(使い捨ての戦闘員・h00338)は『八岐大蛇之姫巫女』を眺める。しかしその美しい姿を見ていると、とある疑問が浮かんできた。
「昨年の干支の化身……あの、今年の化身というか、神使さんは、まるうまさんたち、なんですよね? ……なんでしょうか、だいぶ、方向性が違いますね!」
 お昼に戯れたまるうま達はあんなにもまるまるとしてもちもちでぎゅっぎゅだったのに。
「……きっと、化身と、神使で、神格が違うのかもしれないね。もしかしたら、もちもちした蛇が大量にいたのかもしれないよ、昨年は。」
 その疑問にイヴォシル・フロイデ(|鷹追い《たかおい》・h06554)が一つの可能性を答える。
 それを聞いて想像した姿に「もちもちの蛇……ツチノコみたいですね……、」と呟いている七三子に、足元で大人しく尻尾をぶん回している見下・ハヤタ(弾丸黒柴号・h07903)がわふわふと話し掛けた。
「うん? どうしたね、ハヤタ。」
「わんわん! ……きゅーん?」
 動物会話でハヤタの云いたい事を理解したイヴは、眼を細めてハヤタの頭をぽんぽんと撫でた。
「……あそこまで丸くなると、おそらく健康に悪いからね。やめておきなさい。君は多分、今のままでも十分主人を癒しているよ。」
 そしてその侭イヴはふたりに問い掛ける。
「処で君たちは宴会に参加しなくていいのかい?」
 縁側の小さなテーブルセットにお茶と軽食だけ用意して、七三子もハヤタを撫でた。
「ハヤタさんもいますし、あんまりお食事の場にいない方がいいかな、と。ここでお見送りしましょうか。」
「わうん!」
 ハヤタは最後自分に向けられた言葉に「わかりました!」とばかりに返事して、嬉しそうに撫でられている。
「イヴは行かないんですか?」
「私? 私はまあ、にぎやかな場は今一つ合わないからねえ。」
 同じく縁側でのんびりしていたイヴは返された問いに苦笑した。
「ふふ、楽しそうな声が聞こえてきて、ここでもすっごく楽しい気分になりますね。……わ、凄い! ライブが始まりましたよ!?」
 他の参加者が余興として始めたアイドルライブのステージが見えて、七三子は目を丸くする。きらきらした音や光が此方まで届いた。
「まあ、ここでも楽しめるなら何よりだよ。」
 楽しそうにそのステージを見ている七三子を眺めて、イヴはソファに背を預ける。
 曲が終わり、盛り上がりの余韻が満ちている空間で、七三子はお茶を飲んで一息吐いた。思い出すのは去年の事。
「2025年かあ……。うん、いろいろありましたね。無事にケガが治って、EDENとして活動するようになって。」
 七三子が√EDENを始めとする此の世界に来たのは故郷で起こった騒動が発端で、その時彼女は死に直面していた。
「七三子君を拾ったのは、一昨年か。自分で言うのもなんだが、あの処置でよく生き延びたものだ。」
「本当ですよ……。」
 そんな七三子を当時助けたのはイヴだが、その時の扱いと云えば、本当に|看《・》|病《・》ではなく|処《・》|置《・》だった。
 七三子からすれば自身がEDENになった事と元々身体が丈夫で助かったなあという感想しかない。
「でもおかげでいろんな人と、いろんな思い出もできました。」
 時間にすれば一年程だが、本当に沢山の人達と出会い、沢山の思い出を積み重ねた。
 大切な存在も出来て――足元の小さな家族もそのひとり。
「えへへ、ハヤタさんとも会えましたしね!」
「わん!」
 ごしゅじんの笑顔を見てハヤタは嬉しそうに返事をして、尻尾をプロペラの様に回す。
「ふふ、仲睦まじくて、良いことだね。家族というのは、得難いものだよ。お互い大切にしなさい。」
 そんな二人の様子を眩しそうに眺めながら、イヴは笑ってお茶を啜った。