シナリオ

ダークエルフゾンビ

#√ドラゴンファンタジー #ゾンビ #ラフェンドラ・オピオイド

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 ぴゅうぴゅ、ぴゅぴゅう~♪
 荒野に口笛が聞こえてきた。けっこう、風が吹いてるけど。
 バサバサとなびくマントを、内側からしっかりと押さえて、星詠みの|昭月・和子《あきづき・かずこ》(しょうわ仮面・h00863)が歩いてくる。
「しょうわ仮面のおねえさま、顏を隠して正義を助ける、いい|女《ひと》よ♪」
 自分のテーマソングが、自己紹介である。
 焚火を囲んでいた冒険者風の能力者たちのなかには、√マスクド・ヒーローの流儀に面食らった者もいただろう。しょうわ仮面はちっとも構わずに、ゾディアック・サインに見た予知内容を説明する。
「とあるダンジョンに、大量の『ゾンビ化モンスター』が出現したとの報告がありました。『ゾンビ』は、ごく最近になってから√ドラゴンファンタジーで確認されるようになった存在です」
 その怪物の性質が、映画等の創作物に出てくるゾンビとあまりに似ている事からそう名付けられたという。
 似ている性質とは、『ゾンビに噛まれるとゾンビになる』こと。
「この恐るべき特性により、ダンジョンにはゾンビと化してますます手のつけられなくなったモンスターで溢れかえり、とうとうダンジョンの外にも溢れ出しそうな勢いなのです。もしゾンビ化モンスターが人里にまで達してしまえば、最悪の事態となるでしょう。みなさんにはこれを食い止めていただきたいのです」
 場所については渡された地図ですぐわかる。
 ダンジョン内部も深さはあるが複雑な仕掛けはない。
「予知によれば、モンスター化したエルフが拠点としていました。いまでは、そのダークエルフがゾンビになってしまったのです。噛まれないように気を付けながら、まずはこのダークエルフゾンビを殲滅してください。その後は、ゾンビ化現象の手掛かりを得るために、ダンジョンの奥へと探索を進めましょう。よろしくお願いします」
 寒風が吹き、しょうわ仮面はマントをひるがえしながら、焚火の前から去る。

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第1章 集団戦 『ダークエルフ』


第四世代型・ルーシー

「依頼の場所に到着したよ、マスター」
 第四世代型・ルーシー(独立傭兵・h01868)は、量産型ウォーゾーン「ブッタ」のコクピット内で発声した。電脳を使って直接オンライン化されているが、彼女の唇は動く。
 赤外線暗視装置に、門扉に描かれた伝統的な紋章が映し出される。ルーシーはこれら映像も、データとして電脳が『見ている』。
「最近巷を騒がせているゾンビ関連の依頼だね、ぱぱっと片付けちゃうよ!」
 『|閃闘機動《エンゲージ》』により、"WZ"オーバードブーストによる超加速がかかった。”WZ"4連装ミサイルランチャーを一度に発射すると、門扉は爆破されて内側に吹き飛ばされる。
 入口付近にいたのであろう人影が、4つに割れた板の下敷きになっていた。
 「ブッタ」の二足はそれらを踏み越えて、ダンジョンに突入する。
 石組みの通路が続き、湿度は高いものの、ルーシーの肌がそれを感じることはない。通常のヒューマノイドでも走るのに難儀しそうな入り組んだ迷路を、超加速のウォーゾーンが大股で走破する。
 時には壁を蹴って角を曲がり、跳ねた拍子に天井へと|手《マニュピレータ》をついて段差やヘコミを乗り越えた。
 あるいは、胸壁のような防御設備や、落とし戸らしきトラップのたぐいだったかもしれない。
 そんな些末よりも、一定間隔で壁に設えられている紋章つきの扉だ。
 開いて人影がでてくることも、閉じたままのものもある。
「蹴散らしていくよ」
 ルーシーはすべての扉に、”WZ”サブマシンガンと"WZ"レーザードローンによる射撃を加えた。任務は最深部までの通り道を切り開くこと。
 残敵の検索は、後続のメンバーが務めてくれる。
 |WZ《ウォーゾーン》が駆け抜けたあとに、敷石に倒れた人影――女性のエルフの肌は、灰色だった。
 ダークエルフだからか、ゾンビ化によるものか、はたまた銃弾を受けて死亡したからか。

サリエ・オースティン
青木・緋翠
星峰・アトラ
シルヴィア・ノーチェイサー

「状況開始。只今より作戦を支援致します」
 ドローンから、サリエ・オースティン(アパセティック・h05195)の声が響いた。彼女は√ウォーゾーンのオペレーター。『能力者』ではないが、ドラゴンファンタジーでの作戦に違和感は抱いていない様子だ。
 ダンジョン内を飛び回る小型機器たちが、通路やトラップ跡のマッピングをしてくれる。同行の味方へのナビゲートも。
「敵勢力。接近アラート。……人型数体」
 サリエの|冷淡《アパセティック》な声を聞き、シルヴィア・ノーチェイサー(人として・h09162)は、頷く。
 同郷の人間、戦線工兵には要領がわかっている。
 より怪物然としたエルフたちが奇声を上げて攻め寄せてくるならば、殲滅するまでだ。
「この身、託しますよ。|風妖精《シルフィード》」
 『|風を纏いて《シルフィード・ドライブ》』を発動し、|剣《エアリアル》が矛と盾とに変形した。
 傍らでは、星峰・アトラ(葬送歌・h04702)が妖剣《ルシター》を構えている。
「私はムカつく敵を殺すだけ」
 小さな女の子だが、露出度の多い踊り子衣装に身を包んでいる。まぁ、ゾンビのエルフも似たようなものだ。細剣で突いてくる敵に、アトラは舞う様にして挑む。
 そして、ダークエルフゾンビたちの動きは揃っていた。
 シルヴィアは気流を操作し、敵の連携を崩させる。ダンジョン内はずっと低い天井が続いていたが、ここには太い円柱が並んでいて、まるでカテドラルのように高い天井を支えていた。
 上から吹き付けられる風がある。
 気流でバランスを保てないゾンビへと順番に矛を突き刺していくだけだ。シルヴィアは自身には追い風をまとうことで、機動力を倍増できる。
 最後の一体に盾をたたきつけ、沈黙させた。
 と、ここでサリエからの警告メッセージ。
「右奥、紋章つきの扉内に同タイプの敵性存在の可能性。電子機器ではないため、ハッキングは不可、開錠不能……」
「ほほう」
 |青木・緋翠《あおきひすい》(ほんわかパソコン・h00827)が進みでた。
「|魔術《マジック》にして|技術《テクノロジー》の産物、俺の出番みたいですね」
 パーカーのポケットから、|3.5インチFD《フロッピーディスク》を取り出す。それを見た、というかドローンのカメラを通じて確認したサリエは、短く応える。
「お願いします」
 本当は、|古いメディア《プラスチック板》への関心と、通じないはずのデジタルとの矛盾でせめぎ合っていたのだが。
 現場の緋翠には聞こえない。それよりも、扉の陰にかくれたゾンビエルフたちだ。
「せっかく攻め込めたんだから。打ち漏らしがあったんじゃ、ふもとの人々の迷惑になる」
 そう言いながら、アトラとシルヴィアに目配せした。
 紋章扉が開いたら、手早く片付けるよう合図だ。緋翠の見立てでは、ダークエルフたちは|精神感応魔法《ヴィシャス・リンケージ》で、扉のこちら側の状況を把握しているはず。奇襲されるのは自分たちのがわなのだ。
「さきほどの連携攻撃も、その能力ゆえでしたか」
 シルヴィアは納得し、エアリアルをふたたび準備する。アトラの手にも妖剣が。
「>|起動《start》古代語魔法 "工業モード"」
 パソコンの付喪神はどうやったのか、FDを取り込み、開錠を果たした。
 破られたことはご承知と、戸口をまたいで突撃してくる残りのダークエルフ。シルヴィアは風を、直接そのゾンビたちに吹き付けて、動きをせき止める。
 アトラは残敵にウインクしてみせる。
「ごめんなさい。あなたたちの最期なのに私の踊りをちゃんと見せられなくて」
 可愛らしいつもりだろうが、ちょっと笑みに|邪《よこしま》さが。改造人間の職業暗殺者は、風の壁を瞬時に越えると、敵の背後に降り立った。
 『|暗殺舞踏《ステルス・ブレイド》』、|妖剣《ルシター》の一閃により、ゾンビたちに死を与える。
「状況終了。各自任意に帰投して下さい。お疲れ様でした」
 サリエからの通信で、後続の部隊との交代を知らされる。
 その後、ダンジョン最深部へとむかった能力者たちは、通路に立ちふさがる『竜漿狩り『ブラン・アリア・カーミラ』』と遭遇したのだった。

第2章 ボス戦 『竜漿狩り『ブラン・アリア・カーミラ』』


ネザロス・ラファード
星越・イサ
フーディア・エレクトラムリーグ
不酒・杉留
志藤・遙斗
青木・緋翠

 |青木・緋翠《あおきひすい》(ほんわかパソコン・h00827)は、改めて依頼のデータを閲覧してみた。
「このダンジョンって、エルフがモンスター化して住み着いたんでしたよね?」
 仲間にむかって話すような口ぶりで、赤い瞳は『ブラン・アリア・カーミラ』のほうへと横目でむく。
「じゃあ、吸血姫さんは、なにしてるんでしょうか」
「そりゃあ、中ボスとして、通路を通せんぼしてるんだろ」
 あまりにも的確な返答をかえす、|不酒・杉留《ふざけ・すぎる》(巫山戯過ぎる・h05097)。それでも意に介さず、漆黒の翼をもつ少女は、にこりと笑った。
「新たに得た力を、あなたたちのような下っ端で試すためよ」
 なじる声すら、美しい。
 少女の姿の簒奪者は、人の心をひきつける。
「……と、データにもありますよ。皆さん、気をつけてくださいね」
 注意事項をあげたあと、緋翠は12個の箱型機器を呼び出す。
「>|召喚《call》ヘルプキャラ:二足歩行ロボ」
 ぜんぶの箱から足が生え、カーミラへと向かっていった。いっぽうで、杉留は口を閉じない。
「ご忠告ありがとう。わたしも社交で戦うたちなんでね。……新たな力というのは、ゾンビ化のことかな、カーミラちゃん?」
「ええ、不死の身体、増殖する眷属、世界は私のモノ。私だけを見ていなさいッ」
 『カーミラ・オンステージ』が発動した。
 二足ロボの列が、ギシギシときしんで前進を止める。操る緋翠がマヒを受けていたのだ。
「言わんこっちゃ、なかったですね。お手上げです」
 眼球すら自由にならない。けれども喋ることはできる。さして悲嘆もせず、不格好なまま降参した。
「なんと、緋翠くん。わたしよりも面白いことを!」
 杉留はさらに変なポーズで固まっていた。
「皆様が、小娘の誘惑にのせられてしまいましたわ~」
 |フーディア・エレクトラムリーグ《"Who's the Dear crawled outof my Electrum League?"》(暴食汚職暴力お嬢・h01783)だけはマヒを免れる。
「だって、緋翠様が助言くださいましたし……ホントはよそ見してたんですの」
「では、あなたから噛みついて、ゾンビにしてあげましょうか」
 牙をのぞかせ、大鎌を構えるカーミラに、フーディアはふふんと鼻をならした。
「わたくしに噛みつく~? 御冗談でしょお~。食欲で負けることなどありえませんわ~」
 彼女の正体は、獣妖「流麗なる白銀の蜘蛛」である。
 クモ糸をとばす体勢をとりながら、大鎌に注意をむける。互いに相手の出先をとらえたいのだ。にらみ合うのも危険なので、フーディアのほうがやや分が悪い。
 そして、『ブラン・アリア・カーミラ』の二つ名は竜漿狩り。
 相手が挑んでこないと見て取ると、ほかのマヒさせた能力者の血を得るべく、立ち位置をずらしてきた。
「わぁ、こ、怖い」
 ネザロス・ラファード(ナイチンゲールのレインメーカー・h08846)が、棒読みの悲鳴をあげる。
「大丈夫ですか、ネザロスさん! むむ、俺の指がもうちょっとでも動けば……!」
 |志藤・遙斗《しどう・はると》(普通の警察官・h01920)は、片腕を突き出した姿勢でマヒしていた。ゾンビか吸血鬼かしらないが、抵抗もできずに仲間が堕とされるのは|警視庁異能捜査官《カミガリ》としては看過できない。
「……激しい感情の表れだとはわかる……気がする。ボクもああなりたい。『恐怖』の実演をしている場合じゃないな……」
 ナイチンゲールのネザロスは、自身の感情にまだ確証が持てないのだ。
 吸血姫の美しい顔が間近になり、相手の息が頬にかかってもドキドキしてくれない。たぶん噛まれたところで血はでない。ならば、吸血もされないはずだが、これは簒奪者の√能力だ。カーミラに力を与えてしまうだろう。
 実際、かたわらで黒いエネルギー球が、膨らみだす。
「あらら~。暴発しましたわ~?」
 素っ頓狂な叫びとともに、フーディアがクモの糸を天井にむけて誤射していた。
 べたっと張り付いたそこに、転移現象が起こる。元はといえば、ぐるぐる巻きにしたヤクザに金をもってこさせる√能力『|お財布召喚《コール・ルーザー・ヤクザ》』だった。
「おヤクザ様~?!」
 逆さに落ちてきた黒服の男は、遙斗が伸ばしていた腕に頭をぶつけた。マヒしたままの遙斗の指が、ぴたりと狙いを定める。
「容赦はしない! |制圧行動《テイコウスルナ》!」
 霊的疑似振動を放つ。
 カーミラにだけ振動が与えられた。
「うっ、竜漿を狩り取るあいだは、いかなる攻撃も無効のはずなのに……!」
 振動をさけ、牙を安定させるために、吸血姫はネザロスの身体にギュッと抱き着いた。偶然にも、彼の右掌が触れる。
「ル……ルートブレイカー……」
 ネザロスは声を絞りだす。
 青白い光がはじけ、カーミラが竜漿炎のチャージから造っていた超重力の黒球が、キャンセルされて霧散してしまった。√能力の無効化能力である。
「ネザロスさんから、離れなさい!」
 遙斗の与えられる振動が、最大震度となる。たまらずよろめくカーミラだが、器用にも視線は維持していた。
「いやあ、まてまて」
 変なポーズの杉留が、ふたたびしゃべり始めた。
「そもそもゾンビと吸血鬼なんて特性がかぶってるじゃないか、ぜんぜんパワーアップしてねぇぞ?」
「はあっ!? いーじゃない!」
 このツッコミは、カーミラのなかの何かを動かしたらしい。
「なーんてな」
 隙をつき、杉留の『|ギャグ世界の住人《ギャグセカイノジュウニンハシナナイ》』が、ダンジョンの一部をネタ空間に書き換えた。
 意地になる、吸血姫。
「属性に属性を重ねて、わたしは最強になるんだから!」
 かぶりをふった拍子に、視線のマヒ効果が消失する。
「>|再起動《restart》」
 緋翠の命令で動き出したロボたちが、カーミラの手足を拘束する。うっかり噛まれてもロボだから平気だ。12体のあいだにフーディアが挟まって、吸血姫に噛みついた。
「アンタなんかモグモグですわよ~」
「いやぁッ! 覚えてらっしゃいッ!」
 カーミラの最期は、ロボ集団に囲まれていて、よく見えなかった。ダンジョンは照明が不足しているし。
「助かりましたよ、フーディアさん」
 遙斗は、口元をぬぐった妖獣に礼を言うが、きょとんとしている。ネザロスは真顔で。
「ボクの右手が敵に触れたのも……偶然でした」
「偶然……そうか、星越さんですね?」
 サイコメトラーにして霊能力者の名をよんだ。|星越・イサ《ほしごえ いさ》(狂者の確信・h06387)は、どこかからダンジョン内を霊視していたのだ。
「はい。超知覚が私にもたらしたものを、分け与えただけ。声も聞こえてはいないでしょう。私がいるだけで、ノイズは生じ、秩序は乱され、運命は捩れる。そういうものなのです」
 『|運命の捩れ《ツイステッド・フェイト》』は、極めて低確率でのみ起こる事象の観測である。
 フーディアのよそ見から始まってクモ糸の暴発、あとは運命の導き。
「いえ、より皆さんの意思の強さが、いざなったのです。さぁ、ダンジョンの最深部へ……」
 通路をふさぐ中ボスは退けられたのだ。
 しかしながら、杉留の言葉どおりとはいかなかった。研究所はすでに放棄されたあとで、実験の産物として残された、『ゴブリンゾンビ』が巣くっている。
 ゾンビの感染力と、ゴブリンの繁殖力が合わされば、大変な被害となろう。ダークエルフゾンビの討伐作戦だったが、真に被害を食い止めるためには、ゴブリンゾンビこそが討伐目標だったのである。

第3章 集団戦 『ゴブリン』


第四世代型・ルーシー
レイシー・トラヴァース
川西・エミリー
廻夜・歌留多
青木・緋翠
玖珂津・胡々乃香

 ダンジョン内の廃墟には、第四世代型・ルーシー (レベル44 女)が到着していたが。
「慎重なゴブリンと私とでは、相性が悪かったよ」
 量産型WZ「ブッタ」の内部から詫びる。
 というのも、ウジャウジャいそうなこの小型モンスターに狩猟の体勢をとられると、途端に見つけづらくなるのだ。
「あー、わかるわー。めんどくせーもんな」
 黒髪に指をとおす、レイシー・トラヴァース(星天を駆ける・h00972)。
「アレでしょ。機械やカメラごしだと、余計に探知無効にされるヤツでしょ?」
 |廻夜・歌留多《やどなし・かるた》(真っ赤な嘘のイカサマ師・h06203)もうんざりした様子だが、野良ギャンブラーには何か考えがあるようだ。
「おっと、走るときは心得ってもんがあんの!」
 面倒だから突っ込んじゃおうとする仲間を制する。
「そーなんだ?」
 駆け出しポーズのまま固まって、レイシーは悪戯っぽく笑う
 |玖珂津・胡々乃香《クガツ・ココノカ》(正体不明な妖怪探偵・h02098)は、しげしげと歌留多を眺めた。
「囮役になるってこと? ギャンブラーさん?」
 意向を確認するようでいて、では自分たちの仕事はなにかと問うている。
「たぶんだけどね。うまくいけばゴブリンは一か所に集中攻撃するから、あとはみんなで料理してちょうだいな」
「あぶないことをされるのでは、ないですか?」
 |川西《かわにし》・エミリー(|晴空に響き渡る歌劇《フォーミダブル・レヴュー》・h04862)は、心配げな声になった。
 |二式飛行艇《H8K》の性能を具現化した|少女人形《レプリノイド》は重武装でも、このなかでは容姿も実年齢もいちばん若い。
 |青木・緋翠《あおきひすい》(ほんわかパソコン・h00827)がその肩に手をおく。
「任せてみましょう。戸口で相談している俺たちにゴブリンは仕掛けてこない。ゾンビ化しても狡猾さは残るらしい。誰かが誘いに乗るのも作戦です」
 信任、信頼を受け、歌留多はしかし、ブラっとした感じで実験室廃墟に入っていった。
 壊れた設備、元のダンジョンの建材、遮蔽物のそこかしこから、ゾンビの気配がする。槍を構えて飛び出してくるもの、矢をつがえて立ち上がるもの。
「|野良ギャンブラー心得:負けが込んだら逃げろ《ルーザー・グレート・エスケープ》!」
 能力発動とともに、歌留多は棒立ちとなり、槍やら矢やらで串刺しになった。
(「逃げるが勝ち! 捕まってなければ勝ち!」)
 インビジブルに自分と同じ姿をとらせ、本人はゴブリンに見とがめられることなく、安全圏まで全力ダッシュしている。
「いいですね! 俺が引き継ぎましょう」
 緋翠が『フロッピーディスク』をゴブリンの数だけ放った。
 まるでスロットでも設えられていたかのように、薄い方形はカシャカシャとモンスターたちの体内に差し込まれる。
「>|実行《execute》 古代語魔法 “|広域震動《コウイキシンドウ》”」
 魔術のプログラムにより、各個体にだけ激しい振動が起こった。
 武器を取り落とし、地面に四つん這いになり、あるいは何かにつかまろうと両手で宙をかく。いずれにせよ物陰に潜む猶予はない。
「やっとゾンビらしい動きになってきたじゃないですか。さぁ、みなさん!」
 緋翠は術を維持する。ゴブリンへの振動は続く。
「ありがとうございます」
 ルーシーは、乗機越しに礼を言い、マシンの腕で『WZサブマシンガン』を構えた。
「|硝煙弾雨《バラージレイン》!」
 まずは、身代わりのインビジブルを目印にして銃弾を撃ちこむ。
 その人型は、制限時間がきて透明になっていったが、周囲でもがいているゴブリンには実体弾があたりまくる。
「ひとつずつ落としていこう」
 銃身をふって、敵を順番に撃破、ダメ押しに同じ個体にも二度あてた。
 モンスターの身体は、通常の生物とあまりかわらないように思う。墓場からよみがえったわけではないから、着衣がボロボロなのはゾンビ化と無関係だろう。デッドマンとは違う。
 血を吹いて、槍持ちの敵は倒れる。
「手近な敵は無力化。前進可能」
 WZの腕が前に振られた。
「苦手な相手に頑張ったわね、ルーシーちゃん。お言葉に甘えて、出張らせていただくわ」
 胡々乃香が、妖刀《山茶牙》を抜いて跳ねる。実験室跡の奥まで一息。
「疾駆する刃は翻す燕が如く。|妖流抜刀術《燕返し》《アヤカシリュウバットウジュツ・ツバメガエシ》!」
 途中にいたゴブリンゾンビも含めて、すれ違いざまに斬り捨てていく。
 なかには震えながら弓を引き絞る狩人もいたものの狙いは外れ、胡々乃香から離れた位置をひゅっと矢がすり抜けただけだった。
「ほほう。でも、毒が塗ってあるのよね。刺さったら……」
 妖刀が、狩人の首をはねる。
「あぶないじゃないの!」
 凄めば、残ったゴブリンたちに躊躇がみえた。もちろん、人間の街を守るためにはここで全滅させるつもりだ。胡々乃香が納刀したのは次の居合切りのためと、作戦の功労者を見つけたからだった。
「エミリーさん! ちょっと助けてあげて!」
「え? ……は、はい!」
 囮役の姿が、|少女人形《レプリノイド》にも見えた。歌留多は退避するさいに、味方の一斉攻撃の邪魔にならないよう、奥のほうへと進んでいたのだった。
 インビジブルの効果がなくなったら、やはりあぶない。毒矢の一本を肩に受けている。
「準備はしていました。『|昭明と協和の新世界《エル・ドラード》』」
 豊富な武装は火を吹かず、かわって黄金の光で味方を照らす。
「白き祈りを捧げ、失われた世界をこの手に取り戻しましょう」
 光を浴びれば、怪我も毒からも回復できる。
 また元気に反撃する歌留多をみて、レイシーは野良ギャンブラーのしぶとさを認める。
「走るときの心得ねー。ま、あたしは走らずに戦うことにするよ!」
 ダッシュポーズをとったまま静止して、レイシーは『|本の虫《ブック・バタフライ》』を発動した。
 というよりも、この√能力は移動していては使えない。
「魔法は便利に使ってこそだぜ!」
 集中して詠唱する。
 蝶のようにヒラヒラと、開いた書物が羽ばたいて、レイシーのそばから敵のほうへと飛んでいく。
 |本の虫《ブック・バタフライ》は次々と送り込まれて、ゴブリンゾンビの掃討を果たす。
 ふたたび集結した能力者たちは、実験室跡の一応の調査をし、ダンジョンの通路へと戻る。ふもとの街がゾンビに襲撃される事態は防がれたのだ。

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