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色は匂へど、春ならず。

#√ドラゴンファンタジー #プレイング受付【2/20(金)8:31-】

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 氷がグラスの中で鳴った音は、春の気配に似ていた。

 「季節が、前のめりに転んでるようなんです」

 琥珀色の灯りに満ちたバーのカウンター。その奥で、如月・縁は目を細める。視線は窓の向こう、空の向こうへ伸びていた。星詠みは、夜更けの静けさほどよく見える。見えすぎる、と言ってもいい。

 縁が傾けるグラスは淡い桜色のカクテル。香りは甘く、後味にかすかな苦味が残る。
 舌先でほどけるその苦味が、今夜の予感の輪郭と重なった。

 最近、街でひそかに話題になっている場所がある。
 “季節より少し早く、桜が咲いている”――そんな噂が、花見客の足を誘っていた。誰かが大げさに言っただけの春待ちだろう。最初は皆そう笑った。だからこそ厄介だ。人は「綺麗」と言われたものに、警戒を置き去りにする。

 「早咲き桜の森、最近ウワサになっているのはご存知ですか」

 グラスの縁に指を滑らせ、縁は穏やかに笑う。

 「夜桜の名所となっているそうで、多くの人が集まっています。でも実のところ、一般人が行方不明になっている。行ったきり帰ってこない人が、少しずつ増えているのに、噂は消えない。むしろ甘くなる。誰かが――“もっと来て”って囁いてるみたいにね」

 言葉の最後に、氷がまた小さく鳴った。

 「花が早いんじゃない。早く咲いてる“ふり”をさせられてる。……そして、そこに集まった人の“気持ち”が、どこかへ吸い込まれている」

 基本的に敵に害意は読めないものの、森の最奥に見えるのは――。

 「――残念ながら、森の最奥にシルメリア・ゴーストの姿が見えました。星詠みとして皆さんにお願いです」

 シルメリア、といえば未知√から侵略を目的に現れた天女のことだ。
 これまで多くの撃破報告が出ているとはいえ、完全に滅したわけではない。

 縁は一度、目を伏せた。次に上げた瞳は、いつものように柔らかい。

 「皆様は最初は能力者じゃなくて、ただの花見客として行ってみてください。桜を見に行く一般人として。浮かれて、笑って、写真でも撮って。――油断してるふりをして、悪い妖精さんを見つけてください」

 桜色のカクテルを、縁はもう一口。

 「森では小さいながら露店もあるそうですよ。桜スイーツに桜色のドリンク、アクセサリーもあるそうです」

 せっかくだ。頃合いまでは我々も桜を楽しみましょう――と、縁は微笑む。

 外ではまだ冬の名残が冷たいのに、噂の桜はもう咲いている。
 花の下で、何が待っているのか――。

 色は匂へど、春ならず。

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第1章 冒険 『妖精の森』