シナリオ

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策謀、もふもふ、大乱戦――しかる後に

#√仙術サイバー #3章、断章投下しました #🔵3章、プレイング受付開始⇒3/25の8:31〜

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 #√仙術サイバー
 #3章、断章投下しました
 #🔵3章、プレイング受付開始⇒3/25の8:31〜

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「やあ、お集まりいただき感謝する。私は椎宮・紫水。僭越ながら星詠みの端くれだ」
 椎宮・紫水(シセキエイ・h12162)は帽子をとって、恭しく一礼する。ゆっくりと姿勢を戻した後、紫水がEDENの√能力者達を見渡してから、告げた。
「それでは聞いていただけるかい? |ゾディアック・サイン《星》の導きを」


「此度の星の導く先は『√仙術サイバー』。つい先日、√EDENと繋がった新√だね」
 そういってから紫水がばさっと紙を広げる。超簡易的な地図の様だ。そしてその地図の一点を指さす。
「町の名はセイデン。階層はⅣ。武強主義はあるものの、こじんまりとした比較的穏やかな町だ」
 そうなったのは理由がある。これまで抗争に巻き込まれる回数が少なかったからだ。

 何故かといえば、これまでカリスマと力を持った『一強』がこの町を支配していたから。守護神とも逆らえぬ悪鬼とも言われてはいたが、事実として町の秩序を正しく敷き、周囲の脅威から守る、一柱の強者であった。
「『清電大侠』という方がいらっしゃったのだが……急な病を得て、先日お亡くなりになったようだ」
 これにより、セイデンの町が一気に緊張に満ちた状態となった。
「清電大侠殿の後継はいらっしゃるようだが、まだ町を支配するまでは至っておらず、周囲のマフィアからの介入を防げずにいる」
 周囲のマフィアからすれば、意図せず支配の空白が生まれたのだ、狙わない理由が無い。
「とはいえ、ただ武力で侵略しては反発があるかもしれない。その為、奴らは『切欠』作りに策を弄している様だ」
 どういう事かと言えば――『大事』を起こして、それを解決すべく町に侵入する、という作戦。
「自分達が原因のくせに、恩着せがましく町に入るわけだ。そういうのはちょーーーっと違うんじゃないかと思うわけだよ、私としては」
 そういって紫水がにやりと笑う。
「存分に壊してくれないか? |奴ら《マフィア》の策謀」


「まず、町に敷かれている陰陽五行陣のバランスを正してほしい」
 どういうことかと言えば、この町を包むように、陰陽五行の五行を示す『かごめ紋』が敷かれているらしい。
「もちろん、マフィアの仕業だ。元々こんなものをはなかったので破壊してもいいのだが……」
 知っての通り、五行は隣接あるいは向かい合った属性と密接に関係している。そこを考慮せず破壊すれば、町に被害が出るかもしれない。
「それに陣を正せば、それを『鍵』にして妖魔が召喚される仕組みだ。奴らを呼び寄せる意味でも破壊よりは策に攻略したほうが良い、というわけだね」

 では何をするかと言えば――。
「現在、陰陽五行陣によって、『火の陽』が非常に強くなっている状態だ。このままでは大火事ないしは大爆発が発生してしまう」
 それは唐突に、町を飲み込み、人々の生活を破壊するだろう。そしてそれを『助ける』項目でマフィア達は侵略してくるのだ。
「なので、それが起こらぬ様、火の|気《け》を抑え込んでほしい」
 五行でいえば、水克火。あるいは木生火を利用する。
 陰陽でいえば、陽の気を陰の気に転ずる。
「なに、難しく考える事は無い。火は水で消えるし、火が大きくなるには燃える物がいるという話だ」
 つまり、水気を増やす――水撒きするとか雨を降らすとか。氷を置いて回ってもいい。とにかく火を抑え込む水を、町中に用意してほしい。
 あるいは、燃える物を遠ざける。町の中のゴミを処分したり、燃えそうな廃屋を破壊したり。風が通らない様に何かで道をふさぐ、というのも手だ。
「陽から陰への転気ならば、火を使ってしまえばいい」
 火を使う――大道芸で火を噴いてもいいし、花火で遊んでもいい(後始末はしっかり!)。一番簡単なのは料理だろうか。少し火力が強くなるかもだが、その分火の気は抑えられるだろう。

「そんな感じで、陰陽五行のバランスが整うと、大火事や大爆発の危険は無くなる……代わりに妖魔が召喚される」
 そう、妖魔が……『妖魔シュエバオ・マオマオ』が召喚される。
「もふもふだ。ユキヒョウの子供に近い外見だろうか? たぶん……退治は容易だ。なんなら遊び倒せるかもしれない」
 きっと陰陽五行が正された影響なのだろう。こんな可愛い妖魔が出てくる。そしてもふもふだ。もふもふなのだ(大事なことなので2回言いました)
 最後にはちゃんとお別れ(?)する必要があるものの、シュエバオ・マオマオが町に被害を及ばさないならば、倒しても遊んでいてももふもふしていてもいい。とにかく召喚時間が終わるまで最低限足止めを。

「そしてシュエバオ・マオマオをどうにかできれば、『異変が起こらない』という異変を察知してマフィアが雇った傭兵が現れる」
 この傭兵達は金で雇われた者達だ。善悪など関係なく金が全て。雇われた以上、全力で襲ってくるだろう。
「この頃には住民達も危険を察知して家の中に引きこもっているはずだ。町の中を存分に使って、傭兵達を倒してくれ」
 町の中は√仙術サイバーにありがちな風景。広場もあれば、物がごったごたに置いてある路地もあるし、街路樹が生えている道もある。好きな所で戦うといいだろう。

「というわけだ。後はお任せしてもいいかい?」
 そう言って紫水がセイデンに繋がる『√』を示す。
「それではよろしくお願いする。良い『√』選択をどうか」
 EDEN達を見送る紫水。
 √を潜り抜けた先には、セイデンの町がある。
これまでのお話

第3章 集団戦 『フリーファイター』



 セイデンの町を『襲うはずだった』脅威――陰陽五行陣による大火、そして妖魔召喚陣による妖魔。これらはEDEN達の活躍によって完全なまで阻止された。セイデンの町は今日も何事も無く、賑やかに日常を過ごしている。

 しかし、最後の策謀が訪れる。

 セイデンの町の入り口に立つ、金で雇われた傭兵【フリーファイター】達は眼前にて健在のセイデンを見て驚愕していた。

「これはどういうことだい?」
「聞いてた話と違うじゃあないか」

 聞いていた話と違う――セイデンの町は大火事や大爆発に巻き込まれ、その混乱の中を妖魔に襲われ、大混乱と化しているはずだった。
 それを『制圧』する事で、この町で幅を利かせるつもりだったのだ。
 ところがどうだ、セイデンの町の状況は聞いていた話と全く違うではないか。

 だが傭兵達は一切動じていなかった。
 確かに聞いていた『混乱』『混沌』は無い。だが、此処は『武強主義』が絶対正義の地。まどっろこしい事などせず、ただ力で蹂躙すればいいだけだ。
「生温い策と思っていたのだ、我が武で叩き伏せてみせよう」
「そうだな。此れよりの戦果でさらに金を貰うとしようか」
「そういう事だ、ご同輩。事が此処に至って遠慮もあるまい」
「片っ端から壊して潰して、叩きのめす。なんと簡単な事か」
「ならば、此処からは自由に動くとしよう。ああ、同士討ちだけは無しだ。雇い主が煩くなる」
「心得た。ならば……!」
 数人が伝令に走る。しばし後、空にあがる花火。
 その合図を見て、フリーファイター達がセイデンの町へ足を踏み入れる。と同時に目についた物を破壊し始めた。門、モニュメント、そして品物を並べている軒先の台。

「何してんだアンタら!?」
「うるさいっ!」
 その暴挙を止めようとした人もぶっ飛ばして、悠々とフリーファイター達が進む。

「我ら|黒天幇《コクテンホウ》がこの地を蹂躙する!! 文句があるならかかってこい!!」

 白昼堂々と行われる侵略。
 その騒ぎをEDEN達もまた聞きつける。

 最後に少しばかり、セイデンの町を守る為に力を貸してくれないだろうか? 
 武強主義だというなら、その主義にのっとって力で叩きのめしてあげてほしい。


※シナリオ補足※
 集団戦になります。フリーファイター達を倒してください!
 フリーファイター達は町の入り口(東西南の門)から堂々と町中に入ってきて町の蹂躙を始めています
 本来であれば、清電大侠の元、しっかりと町の警備も行われているのですが、今は統率が取れておらず、うまく北におびき出された後、3方の門から同時突入という嫌らしい侵入をしてきています。
 町の人々は退避しつつ、清電大侠の部下だった者達へ助けを呼びに行っていますが、その間も町は破壊されてしまいます。
 今なら被害を最小限にぶっ飛ばせるでしょう。皆さんの力を貸してください。

 フリーファイター達の現在地点は各門を入ったところにある大きな通路上。此処から分散していくようです。
 現状の通路上でも戦闘できるくらい広いのでそのまま戦闘も可能ですし、建物が並んでいる関係で門まで一直線です。纏めて何かで吹っ飛ばして外に追いやってもいいでしょう。また、挑発して狭い通路に連れ込む事も可能です。
 広い通路は通路脇に街路樹が立っている事と、その外に建物(お店)が並んでいる程度で障害物も少ないですが、広い分囲まれる可能性があります。
 狭い通路は建物と建物の間に入っていく為、囲まれる心配はありませんが、資材(木材や廃棄予定の什器など)が置いてあってなかなかに狭いです。その代わり、壁を駆け上がるなどすれば3次元的な行動が可能で、そこらにあるもので殴る、とかできます(戦闘前に拾っていってもいいです)
 範囲攻撃は使用可能。ですが、建物が跡形もなく無くなる様な威力や効果は禁止とします(建物の死とみなす)。大きく壊れても直るよ『忘れようとする力』でたぶんめいびー。ということで禁止を除き、攻撃に遠慮はいりません。

 あとはきっちりフリーファイター達を倒してください。
 よろしくお願いします!
天咲・ケイ


 様々な策謀が仕掛けられていたセイデンの町。その悉くがEDEN達によって阻止され、排除され、このまま平和な時間となる予定だった町に『フリーファイター』達は不躾に踏み込む。
「おらぁっ! 抵抗すらしねぇのかよ!」
「弱ぇなぁ」
「平和ボケしてるからこうなるんだよォ!」
 其処に『有る』もの全てを破壊しながら進むフリーファイター達。
 清電大侠の息のかかった物などいらぬ。全て破壊して、人を支配して、そして|黒天幇《コクテンホウ》が支配するのだ。

 町を破壊する喧騒を耳にして、天咲・ケイ(人間(√ドラゴンファンタジー)の黄龍拳|格闘者《エアガイツ》・h00722)は息を吐く。
「さて、ここからが本番というわけですね」
 立ち上がり、駆けだす。その後を愛馬の『ウインドローズ』が駆ける。
 喧騒の大元、町の入り口まで駆け付ければ、見えてくるフリーファイター達の横暴。
(しかし、敵のやり方も場当たり的というか何というか……)
 知略などあったものではない。ただただ破壊――力が全ての『武強主義』。
「考えなしに暴れられても困るので早急に対処しましょう」
 フリーファイター達の視界に入らない様に注意しつつ、一度立ち止まり。ウインドローズを近くの路地に待機させる。此処なら少し距離はあるものの、奴らの目に入る事も無く、またケイの声も聞こえるだろう。
「では、後ほど。頼りにしていますよ」
 ウインドローズに声をかけて、大通りに出たケイは一直線にフリーファイター達の元へ駆けていく。
「……!? なんっ?!」
 最後まで言い切る事は出来ない。
 駆けながらも気を練っていたケイが懐に踏み込むと同時に、掌底の一撃を叩き込んだからだ。漫画みたいに体を九の字にして吹っ飛ぶフリーファイター。

「其処までです。私が相手をしましょう」

 構えるケイ。
「ケッ。まぁいい、稼ぎが増える」
 恐らく。チャイナ服姿のケイ――見た目、強そうに見えない、が首を突っ込んできたのが面白くないのだろう。強さが全てならば、こその考え方。だが同輩が一撃で吹き飛んだのも見ている。強い者を倒した、といえば報酬が上がる、そういう仕組みだ。
「やっちまうぞ!」
 一斉に構えて、ケイへ襲い掛かるフリーファイター達。
「……!」
 素早く接近してきたフリーファイターがトンファーを振るってくる。殴るような一撃から伸び切った腕を支点にトンファーをくるりと回転させれば、さらに伸びる様な一撃となる。
 素早く見切り大きく後方へ回避するケイ。数度下がって、街路樹を背にしたところで、止まる。
「ハハッ。終わりだっ!」
 一気に間合いを詰めて逃げられない様に鋭く横薙ぎのトンファー。樹に当たらない絶妙な一撃……を、しかしケイはそれよりも早く踏み込む。
「破ッ!」
 悲鳴より早く吹き飛ぶフリーファイター。石畳を踏み割り、練り上げた気功で以て叩きつけられた気功拳が突き刺さったのだ。
「囲め!」
「させません」
 散開しようとしたフリーファイター達に対して、回し蹴り。蹴りそのものは空を切ってもその軌道に放たれる衝撃波で以てフリーファイター達の態勢を崩して蹴散らす。躊躇ったその隙へ肉薄、腕を掴んで極めながら投げ、石畳に叩きつけるケイ。
 しかし、いかに奮戦しようとも多勢に無勢という事実はある。ケイがフリーファイターを倒していく数より駆け付ける数の方が多ければ、そのうち囲まれてしまう。
 だが、それすらも計算の内。
「今です! ウインドローズ!」
 声を張り上げるケイ。
 その声に応じて、路地から愛馬のウインドローズが駆けだしてくる。真っ直ぐケイの元へ駆け付けたウインドローズは前脚をあげて、フリーファイター達を威嚇して、そのまま蹴散らす。
「くっ、なんだっ?!」
 突如として自身達の後方で起こった喧騒に思わず気を取られたり足を止めたりするフリーファイター達を視認してから。
 呼吸を調えたケイが踏み込む。
「では、いきますよ」
 息をはきだすとともに踏み込み、脚から螺旋を描いてイメージとともに自身に流れる気を込めて掌底――黄龍掌波で眼前のフリーファイターを弾き飛ばし、空いた視界に次に入ってきたフリーファイターを、跳躍からの飛び蹴り、龍星脚で蹴り抜く。着地と同時にすぐ側のフリーファイターへ肉薄、そして黄龍掌波、続く龍星脚――流れる様な連撃【|黄龍の連撃《コウリュウノレンゲキ》】がケイの周りに集まっていたフリーファイター達の悉くを仕留めていく。
 敵を前にして隙を見せるほうが悪い。
 程なくして、周囲のフリーファイター達を一掃するケイ。もちろんウインドローズも数体踏み抜き、蹴り飛ばした。
「武を誇る割には、武に精通していないようですね」
 自身の服を整えながら立ち上がったケイは、地面に倒れ伏すフリーファイター達にそう告げて。
「ありがとうございました」
 甘える様にすり寄ってきた愛馬の首をやさしく撫でるのであった。

クラウス・イーザリー


 セイデンの町を覆っていた様々な策謀。それらが覆された後、俄かに騒がしくなるセイデンの町。騒動を起こしているのは『フリーファイター』達。すなわち、マフィア|黒天幇《コクテンホウ》に雇われた傭兵達。
 元の『混乱に乗じて制圧し、権限を一部強奪する』という作戦が瓦解した為か、己の武で以て直接攻撃を仕掛けてきている。
 だが、この町にはまだEDEN達が居る。

「そぉらっ!」
「後で直してやるよ。ただし、黒天幇の|管理下《シマ》としてな!」

 暴力のまま、町を破壊していくフリーファイター達。
 そこへ駆け付けたのは。

「目論見が外れて残念だったね」

 クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)の声に、フリーファイター達が振り向く。訝しげな視線、嘲笑う視線……いずれにしてもクラウスを値踏みすらせず、『叩きのめせる相手』と侮っている姿。
(目論見が外れて、それで諦めるような弱腰の相手ではなかったみたいだけど……)
 冷静に周囲を確認するクラウス。巻き込んでしまう様な人はおらず、眼前のフリーファイター達を叩きのめせば、事は片付きそうだ。
 『武強主義』によって退く事を知らない、武で以て全てを掌握しようとするフリーファイター達。
「最後は力で決着を付けるのならわかりやすくていいね」
 魔導書を手に、クラウスもまた臨戦態勢へ移行。
 戦闘が始まる。

 フリーファイター達が一斉にクラウス目掛けて駆けだす。
「……!」
 魔導書に指先を添わせながら、腰を落として迎撃態勢のクラウス。
(速い)
 とはいってもそこらの一般人に比べてだ。クラウスのレベルなら十分に対応できるし、何なら妙な気を纏っているのも視認している。
「ハッ!」
 振るわれる拳。それを見切って回避しながら、クラウスは相手の纏う気へと視線を遣る。バチバチッと弾ける様は電気の様。いや、まさしく電磁の力なのだろう。
(レイン砲台の接近は危ない……なら)
 迫りくる拳の連打を数発、回避して小さく後退。
「ハッ! 逃げるしか能がないのかよ!」
「逃げも隠れもしないよ」
 攻撃を回避しきって街路樹まで下がった所で、魔力を開放するクラウス。そう、『何もしていない』とは言っていない。
「【|茨の蔓を操る魔法《シュタルテン》】」
 クラウスの【茨の蔓を操る魔法】が成る。
 直後、自身や背後の街路樹、そして周囲にある建物の『影』から、黒い茨の蔓が伸び、瞬く間に周囲を埋める。無差別に伸びている訳ではなく、意志を持った様にフリーファイター達の足元へ迫り、その足元を掬う。
「くっ、このっ!」
 蔓を引きちぎろうとするフリーファイター達の体へ蔓がさらに巻き付き締め付け、行動すらを制限していく。
 間髪を入れず、空に待機させていたレイン砲台を呼び、空よりレーザー射撃で攻撃させるクラウス。間断なく放たれるレーザーが順番にフリーファイター達を焼いていく。
 しかし、蔓の拘束を免れた者は巧みにクラウスへ肉薄する。
「接近されたら弱いってことだろ!」
「……そんな事も言っていない」
 拳や蹴りを回避しつつ、注意をひきつけて……死角から蔓の一撃で意識を刈り取る。
 魔法使いが動けない、なんて事は無い。

 完全に場を支配しながら、油断なく茨の蔓を生み出し、次のフリーファイターへ差し向けるクラウス。
「悪いことを企む奴に雇われると碌なことが無いね」
 告げながら、クラウスに容赦はない。しっかりと仕留めながら、内心で思う。
(雇い主はよく選んだ方がいいよ)
 それは傭兵としての助言だ。

神隠祇・境華


 スザク、もふもふ、を経て、セイデンの町は平和へと調えられた。其処まで至れば、仕込んだ策謀の悉くを阻止されれば、普通ならば撤退を選び、策を練り直すはずだ。
 現地にいるのが黒幕たる|黒天幇《コクテンホウ》の者であれば、その様に動いたのかもしれない。しかし、今、町にいるのは金で雇われた傭兵『フリーファイター』達だ。武を示し、金を得る。シンプルな方針であるが故に、目の前の策が崩れようとも武で制圧しようとする。
「ハッハァ!!」
「目障りだな。全部潰しちまえ!」
 手あたり次第、目につき次第、自身の武で破壊の限りを尽くすフリーファイター達。

「乗じる混乱も無いというのに……武強主義はどうにも一方的ですね」

 ふわり、とそよぐ風と共に。神隠祇・境華(金瞳の御伽守・h10121)が駆け付ける。友人のココを見送った後、すぐさま急行してきた彼女に注意を向けた為、フリーファイター達の手が止まる。
 その視線を受け止めて、しかし一歩も退く事無く、境華は書を携え、構える。
「日常を壊すだけの武など、誇るに値しません。ここで止まってもらいます」
「出来るもんならやってみなっ!」
 境華目掛けてフリーファイター達が殺到する。握った拳に宿る気が電磁を帯び、機械類を問答無用で破壊する凶器へと化す。
 されど、境華の得物にそのようなものは無い――ただ威力の上がった拳や蹴り。ならば。

「物語は我が手に──蓮華の子が携えし綾よ。その仙の舞、いま一時だけ我が背より現れ、敵を縛したまえ」

 境華の紡ぐ言葉が【|御伽「天を綾なす宝帯」《コンテンリョウ》】を語る。直後、境華の後ろの空間から幾本の霊布が伸び、その内の数本が境華の霊剣『御伽霊刀「紡ぎ」』へと連なる。霊剣と霊布が連なり、顕現するは哪吒の槍。
「――!」
 境華が瞬く間に、彼女の意思に応じた霊布によって哪吒の槍が振るわれる。放たれた鋭い一閃がフリーファイター達をなぎ払う。
「ぐぁっ!?」
 境華に攻撃しようとしていたフリーファイター達を一掃する一撃。間髪を入れず、境華は動く。哪吒の槍による攻撃は継続しつつ、境華を視界に収めていないフリーファイターを狙って霊布を飛ばす。
「ちぃっ! うっとうしい!」
 霊布の攻撃を振り払いつつ、しかし店の破壊を優先するフリーファイター。魂胆としては壊して直してしまえば権利を主張できるから。
 だがそれを境華は許さない。
「小娘如きも相手できませんか? 武強主義が聞いて呆れます」
「……!」
 ビキッ、とこめかみに青筋を立てたフリーファイター達。霊布の攻撃と口での挑発で、強引に注意を自身へと向かわせた境華。
 しかし、今の境華相手に『手足を止める』という事は自殺行為だ。
 その止まった隙へ、木材や廃棄什器を掴んだ霊布が強烈な打撃を叩き込む。
「っ!?」
 完全に無防備になった其処へ霊布を新たに飛ばし、ぐっるぐる巻きにして拘束して放置。あるいはその拘束したフリーファイター自体を新たな武器としてフリーファイター達の群れへとぶん投げる!
「ちっ、囲め!」
「……!」
 声を出すと同時に素早く境華を囲むフリーファイター達。だが、境華も素早く脱出する。背後からの霊布を複数直立させてその間を蹴りあがっていく境華。すとん、と店の屋根に着地した境華は、そこから霊布を飛ばしてフリーファイター達を殴打してぶっ飛ばしていく。
「まだやりますか? 大人しく降参してみては?」
 そう言いながら店の前に飛び降りた境華。
継戦の意思を見せたフリーファイター達を見て、境華は霊布で牽制しつつ、路地へと逃げ込む。
「追え!!」
 武を誇るフリーファイター達としては、このまま引き下がる訳にはいかないのだろう。 素早く境華を追って路地へ入り……愕然とする。

 眼前に織り成された綾の紋様。それは美しい蜘蛛の巣にも似て、しかし全く異なる、フリーファイター達にとっての。
「ようこそ。あなた方の終わりを綴りましょう」
 哪吒の槍が鋭く突き抜ける。
 反転しようとしたフリーファイター達に対して、地を蹴った境華が狭い路地の壁と霊布を利用して素早く回り込み、無防備な体へ掌底の一撃を叩き込む。その間にも哪吒の槍がフリーファイターを貫いていく。

 程なくして、物語にピリオドが打たれる。もちろん、境華の完全勝利である。

紬・レン


 俄かに騒がしくなるセイデンの町。それは全ての策謀を潰され、無策にも『フリーファイター』達が突入してきた証。
 罵声とともに手あたり次第破壊していくフリーファイター達は傭兵というよりは無法者だ。
「全く、物騒な奴らが来たな。まだ俺はマオマオ達との別れを引きずってるっていうのに…!」
 紬・レン(骨董品店「つむぎや」看板店主・h06148)はゆっくりと立ち上がる。もふもふなマオマオ達との楽しい時間、そして優しい鳴き声とともに消えていった別れ……そんな余韻をぶち壊す喧騒はとても歓迎できそうにない。
(…けどな)
 レンが踵を返す。迷う事無く、フリーファイター達が暴れている場所へと赴く。
「何だ? 我ら|黒天幇《コクテンホウ》の行いに文句でもあるっていうのか!?」
 フリーファイター達がレンの姿を認めて、視線を注ぎ、問いかける。
 間合いを測りながら、ざっ、と立ち止まったレンは……顎の下へずらしていた黒いマスクへと指をかけながら、告げる。

「文句なら大アリだ。街の人達を危険に晒したお前達を見過ごす訳にはいかない」

 マスクで口元を隠して臨戦態勢となったレンが、『霊剣"|花霞《はながすみ》"』の柄に手をかける。

 ――抜けば花舞う桜の刃。

 すらり、と抜き構えた先に霊気の花が彩っていく。これはレンが修練を重ね、花開いた努力の一太刀。
「穢れ無き花、清浄なる風───無数の敵を斬り祓え」
 その刀身に、重ね重ねと桜の花弁のような姿で具現化した『百花の霊気』と纏う【|風花繚斬《フウカリョウザン》】。
「やろうってか!」
「手加減してもらえると思ってるなら大間違いだぜ!」
 フリーファイター達が一足飛びに間合いを詰めてくる。握る拳に宿る気は、パチパチと電磁を帯びて、威力と機会を破壊する力を宿す。
 しかし、その拳が届くより早く。
「行くぜ!」
 レンが上段から素早く一閃する。間合いに入ってきたフリーファイターへ斬撃を叩き込むと同時に、刃の軌跡から逆巻く様に神秘の風が霊力の渦を作って周りのフリーファイター達も巻き込んで迎撃する。
「くっ」
「見え見えだ!」
 霊力の渦を無理やり突破して、拳を叩きつけるフリーファイター。その攻撃をレンは、百花の霊気を八重に九重に重ねる事でガード。
(壊れて困るような機械は無いが!)
 極力ダメージは抑えたい。完全に威力を削いだフリーファイターの拳を百花の霊気で押し返すレン。
「ちぃっ!!」
「怯むな!」
 レンの繰り出す攻防に先手を取られて浮足立ったフリーファイター達が態勢を立て直さんと距離を取る。
 そこへ。

「俺の霊気とお前たちの気、どちらが強いか試してみようぜ」

 レンが花霞の切っ先を突き付け、言葉を放つ。
(……って、何だか武強主義に寄ってきた気がするな、俺)
 不意にそんな考えがよぎったが。
「こっちの数の方が多い。一気に畳みかけるぞ!」
 レンを取り囲んだフリーファイター達が一斉に攻撃を仕掛ける。
 だが、修練を積んだ連携ではない。それぞれの考えが微妙なズレを発生させて。
「――!」
 その隙を見出し、見切るレン。サイドから迫る拳をステップを踏んで回避、身を翻しながら百花の霊気を振りまき、フリーファイターの視界を惑わす。怯んだその隙へ。レンが踏み込みながら花霞の切っ先を滑り込ませる。流れる様な一閃が鋭い刺突となってフリーファイターへ直撃、その勢いでフリーファイターを吹っ飛ばす。
「けれど。此処では、より力の強い者が正義なんだろう」
 そう言いながら身を翻し、背後に迫っていたフリーファイターに斬撃を叩き込む。上から斬りつけ、返す刀で次なるフリーファイターを。刃の軌跡を追う様に百花の霊気が逆巻き、近づくフリーファイターを飲み込み、地へ叩き伏せる――レンの【風花繚斬】によって、迫りくるフリーファイターの悉くを倒していくレン。
「だったらそれに則って蹴散らすまでさ!」
 花舞う桜の刃が全てを一掃していくのであった。

神喰・蛙蟋
レイラ・ウー


 陰陽五行陣を経て妖魔召喚陣への対応までも完膚なきまでに行った結果、セイデンの町に訪れる筈だった混沌は霧散した。されど、『武強主義』は引き下がるを良しとせず、『フリーファイター』達はセイデンの町を破壊せんと押し入る。

「予定通り、おでましにゃ。」
 マオマオ達とのひと時を過ごした神喰・蛙蟋(紫煙の売人🚬・h01810)が耳ざとく喧騒をかぎつける。
 傍にいたレイラ・ウー(|契約至上主義のアウトロー武侠《ウラギリハユルサナイ》・h12286)もまた騒がしき喧騒を耳にして、ゆっくりと立ち上がり、その先を一瞥する。
「……騒がしいのが来たネ」
 軽く肩を竦めてそう告げれば。
「んにゃ~暴れますかにゃあ? お前さん、一緒に行くにゃ?」
 そう言う蛙蟋の言葉に頷きを返すレイラ。
 歩き出すレイラに連れ添う様に、蛙蟋も歩き出す。

 向かう先は、フリーファイター達が暴れている町の入り口だ。

 すぐに見えてくる騒動の大元。町の入り口付近で暴れていたフリーファイター達は視界に入るものを片っ端から破壊していた。それを|黒天幇《コクテンホウ》の手で直せば、権利を主張して無理やり押し入る事が出来るという寸法だ。
 そのフリーファイター達がレイラと蛙蟋の存在に気づく。
「あぁ?! どういう了見だ?」
「やろうってんなら遠慮はしねぇぜ?」
 拳とトンファーを構えるフリーファイター達が油断なくレイラと蛙蟋を見据える。
 相対した状態で、レイラが愛銃を抜き、ゆっくりと構える。
「暴れたいなら、相手するヨ」
 両手にそれぞれ構えた大型カスタム拳銃『オートファイアM17大型カスタム【ジョン】』と『オートファイアM17大型カスタム【スミス】』の銃口が真っ直ぐフリーファイター達に突きつけられる。
 その横で蛙蟋が『シリンジシューター』を構える。霊薬・毒薬・怪異の肉片等を詰めた注射器を射出する、連装式の大型ガトリングガンを向けられて、フリーファイター達が一瞬怯むが、引き下がる事は無い。武で押されたならば、何の力も無くなる、これがこの世界のルール。
「……」
 無言で間合いを測りながら、横目で蛙蟋に合図を送るレイラ。その合図を受けてか、蛙蟋もまた『戦闘態勢』を整えながら、銃口をフリーファイター達へ突きつける。
 フリーファイター達が動く……よりも早く。
「シッ――!」
 レイラが双銃から銃弾をばらまく。弾幕がフリーファイター達の足元に突き刺さり、動きをけん制する。そこへ蛙蟋のシリンジが飛来して、フリーファイター達へ直撃していく。
「何が入ってるかは当たってからのお楽しみにゃ」
 蛙蟋もよくわかってない。いや、何があるかはわかっているが、状況に合わせて付け替えて狙い撃つ、とか日本の警察みたいなマメさはない。いや、要らない。突き刺さり、中身が敵を害せばいい。麻痺毒なり呪詛なり……被害の低いところでニコチンなりタールなりだが、食らった方がまともに立っていられるかといえばノーだ。
 がくり、と膝をつくフリーファイター達が壁になって、後続の動きが鈍る。
「ご店主」
「任せろにゃ」
 短いやり取りの後、レイラが跳躍する。着地する先は蛙蟋の背中。先の視線で送った合図――【目的地は敵の土手っ腹】で突っ込む算段。
「蛙蟋の背中ほど安全な移動手段はないにゃ! 過度のG負荷、激しい揺れ、横転に目をつぶればにゃ」
「ご店主、飛ばすネ!」
 真っ直ぐ突進する蛙蟋の背中から、曲芸騎乗の如く身体を使いこなして四方へ銃撃を叩き込むレイラ。
 動きを制限する様に撃ち込み、敵の足並みを崩して分断。次いで、突出した敵を優先して撃ち落としていく。
 しかし真っ直ぐに突っ込んでくる蛙蟋は狙いやすい。
「もらったぁ!」
 どうにかレイラの銃撃をしのいだフリーファイターが勢い込んでトンファーを叩きつけんと肉薄する。しかし。
「ウー嬢、喋ると舌噛むにゃ」
 と告げて、次の瞬間、蛙蟋の体が宙に舞う。曲芸の様に上下を入れ替える蛙蟋。当然背中のレイラも同じように動くわけで、どうにか蛙蟋の背中に掴まりながら、真下へ銃口を向けて数度トリガーを引けば、眼下のフリーファイター達が崩れ落ちていく。
「焦ると損するヨ」
 着地した蛙蟋の背中でレイラが告げる。空からの弾幕で倒し切れなかったフリーファイターへは蛙蟋が速攻で肉薄してシリンジシューターを突き付け、至近距離からのシリンジで黙らせる。
「下からやれ! 足を奪え!」
 レイラが主軸で蛙蟋がフォローの形、を見て取ったフリーファイター達は蛙蟋へ攻撃を集中させる。とはいっても接近戦しか手がないフリーファイター達は踏み込むしかないが、その踏み込みを許さないと蛙蟋のシリンジシューターが弾幕の如く注射器をばらまいて。嫌らしく、うざったらしく、呪詛や毒などをばらまき、フリーファイター達の動きを制限していく。
 蛙蟋との連携によってフリーファイター達を蹂躙するレイラ。
「……見えたネ」
 二人の攻撃によって、弱り切ったフリーファイター。そこへレイラが【|幸運の一撃《ラッキーストライク》】を叩き込む。
「いい|幻想《ゆめ》見るネ!」
 幸運の弾丸が直撃したフリーファイターへレイラが告げる言葉は、死の宣告。自らの欲望が叶った幻想に耽溺していくフリーファイターが立ち上がる事はもう無い。

 ダッシュに空中移動に縦横無尽に駆け回る蛙蟋によって、包囲陣系も縦列陣形もとれず、ただただかき乱されていくフリーファイター達。浮足立ったそこへレイラと蛙蟋からそれぞれ弾幕を叩き込まれ、フリーファイター達は動く事すら出来なくなっている。
「欲張りすぎネ」
 とレイラが【幸運の一撃】で以て確実に仕留め。
「まだまだあるにゃ。遠慮するにゃ」
 と蛙蟋もシリンジをばらまけば、死ななくとも地に倒れ伏すフリーファイター。しかし、いずれ死に至った方が幸せかもしれない。
「死な無けりゃ、苦しんで貰う他無いにゃ」
 蛙蟋にとって、『|新鮮なお残り《実験材料》』はいつでも入り用だ。にっこりしながら回収していくだろう。
「次、行くヨ」
 と冷静にトドメを刺していくレイラの手にかかるのとどちらがいいか。それはもう天運に任せるしかない。

 油断せず、崩れた所へ的確にトドメを差し込み、全体を見渡して、弾幕を叩き込んでいくふたり。
 程なくして、あっさりと制圧が完了したという。

エアリィ・ウィンディア


 陰陽五行陣の調律を経て、妖魔召喚陣で召喚されたマオマオ達との交戦(?)。それはエアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)にとっても余韻の残るものであった。
「もふもふさんかわいかったなー」
 もっふもふ。もふ、もふもふ。
 まだ指先に残っているかのようなもふもふ感……に浸っている暇もなく、セイデンの町が俄かに慌ただしくなっていく。『フリーファイター』達がセイデンの町へ押し入ってきたからだ。
「――」
 聞こえてくる喧騒にエアリィは、ふぅ、とひと息ついて、呼吸を調える。直後、ふわり、と浮き上がる体は精霊の力によって、騒動の元へと飛翔していく。
 程なくして眼下に見える騒動。
 フリーファイター達が町にある建物や建造物を破壊している光景。フリーファイター達の視界に入る様にして、ふわり、建物の上に舞い降りるエアリィ。
「なんだ!?」
 手を止め、警戒しながらフリーファイター達がエアリィを見上げる。
 対してエアリィは上から見下ろす形で……次の瞬間、エアリィが楽し気に笑う。
「傭兵さん達、わざわざやられに来てくれてありがとっ!」
「なっ」
 軽く言葉のジャブを放つエアリィ。
 とっても楽し気な笑顔でそんな言葉が飛んでくるとは思わなかったのだろう、一瞬フリーファイター達の動きが止まる。
 その隙に。
 エアリィが建物の上からフリーファイター達の前に着地。ふわり、と風の精霊が勢いを受け止めて、すたっと着地したエアリィはわき目も振らずダッシュで地を蹴る。
「あたしと戦いたいなら、まずは追いついて見せてっ! 追いつけないと思うけど!」
 完全なる挑発である。
 言い捨てる様に、しかしエアリィは猫もかくやという勢いで路地の中へ消えていく。
 この後、どう展開しても、現状は良い様にあしらわれた形。それがフリーファイター達の怒りに繋がる。
「追え!」
「絶対に逃がすな!」
 散開していたフリーファイター達が順番を競うようにして路地の中へ飛び込んでいく。前を走るエアリィ、その背は追いつける位置にある。
 たたたたっ、とエアリィが駆けていく。路地に置いてある資材を軽やかに飛び越えて、奥へ奥へと進む。
「このまま追い込め!」
 そんな言葉が後ろから聞こえてくるが、エアリィは構わず突き進み。
「……あれ?」
 たっ、と足を止める。エアリィの眼前には大きな壁……つまり、行き止まり。
「今だ!」
「虚仮にしやがって、ただで済むと思うなよ!」
 エアリィの足が止まったのを好機と見做したのだろう。
 後ろから追いすがるフリーファイター達が拳に気を込め、その気が電磁の力を帯びて威力を増す。
「えーと、どうしよっ?!」
 そう言いながら振り向き、困った顔を見せるエアリィ。困った風に口元に手を当てて悩む……振り。手の中で小さく、小さく言葉を紡ぎあげる――それは通常の声量であっても聞き取れないだろう。それほどの速度で以て紡ぎあげられた|力ある言葉《詠唱》、精霊に呼びかける声。
 傍目、エアリィは『困って足を止めて悩んでる』風にしか見えないだろう。
 だから。フリーファイター達はニヤリと笑いながら距離を詰めて拳を振りかざす!
「後悔しな!!」
「……どっちが?」
 飛び掛かってくるフリーファイターに対して、エアリィがこてんと首を傾げて問いかける。
 直後、触れるだけで機械類を故障させる電磁を纏う拳をかいくぐりながら。
 エアリィが腰に帯剣していた精霊刃『エレメンティア・ティアーズ』を引き抜く。居合い抜きの要領でフリーファイターとすれ違い、その刃を振り抜くエアリィ。
「……?!」
 声も無く崩れ落ちるのはフリーファイターだ。
 対してエアリィは止まる事無く振り向きすらせず、地を蹴って跳躍する。同時に精霊銃『エレメンタル・シューター』も引き抜いて、空中を移動しながら斉射。先鋒が成す術もなく倒された事に動揺しているフリーファイター達の中へ精霊魔力弾を叩き込んでさらに混乱させる。
 たっ、たっ、と狭い路地の壁を利用して跳び上がるエアリィ。壁の間を反復して駆けあがればフリーファイター達の頭上を取る事は容易い。その間にも精霊銃からの弾幕は間断なく。手にした精霊刃が纏う虹色の――【|六芒星増幅術精霊斬《ヘキサドライブ・ブースト・スラッシュ》】によって六属性精霊の複合魔力を束ねた力が空から煌めき、軌跡を描く。
「精霊達とのコンビネーション、じっくり味わってねっ!」
 振るわれる斬撃は六芒星精霊収束斬。魔力が弾けるとか精霊力の奔流とかの派手さはなくとも、重厚なまでに束ねられた精霊達の複合魔力は、一閃でフリーファイターをなぎ倒す力がある。
 小柄な体格も利用して、フリーファイター達の間へ飛び込んだエアリィが縦横に精霊刃を振るえば、その軌道にいたフリーファイター達が倒れていく。
「くっ……!」
 狭い路地では不利だと思ったのだろうか、踵を返そうとするフリーファイター。それを視認したエアリィは壁に向かって跳びあがり、着地と同時に壁に立てかけてあった棒を蹴り飛ばして牽制する。
「うわっ」
 不意に飛んできた棒を叩き落とすフリーファイター。その叩き落としている『間』にエアリィが左右の壁を利用して速度を上げつつ突っ込んでくる。
「逃がさないよっ」
 フリーファイターの横を声がすり抜け、数瞬遅れて全身を走るダメージに膝を折るフリーファイター。
「さ、まだやる? とことん付き合うよ♪」
 楽しそうに――エアリィを叩きのめす、その気持ちが前面に出すぎていたフリーファイター達を、魔力を纏わせた精霊刃でざっくり! と倒し続けるエアリィがそこにいたのでした。